説明

燃料電池システム

【課題】燃料電池を搭載した車両周辺の環境に関する情報を取得し、車両周辺の環境が水素ガスが滞留しやすい環境であるか否かを判断し、水素ガスが滞留しやすい環境である場合には、水素ガスを大気中に放出しないようにして、前記車両周辺における水素ガスの濃度が増大することを防止し、安全性を高めることができるようにする。
【解決手段】電解質層を燃料極と酸素極とで狭持した燃料電池が、前記燃料極に沿って燃料ガス流路が形成されたセパレータを挟んで積層され、車両に搭載された燃料電池スタック21と、前記燃料ガス流路内の燃料ガスのパージを行うパージ手段と、前記車両周辺の環境に関する情報を取得する環境情報取得手段と、取得された車両周辺の環境に関する情報に基づいて、前記パージ手段に選択的にパージを行わせる制御手段とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、燃料電池は発電効率が高く、有害物質を排出しないので、産業用、家庭用の発電装置として、又は、人工衛星や宇宙船などの動力源として実用化されてきたが、近年は、乗用車、バス、トラック等の車両用の動力源として開発が進んでいる。そして、前記燃料電池は、アルカリ水溶液型、リン酸型、溶融炭酸塩型、固体酸化物型、直接型メタノール等のものであってもよいが、固体高分子型燃料電池が一般的である。
【0003】
この場合、固体高分子電解質膜を2枚のガス拡散電極で挟み、一体化させて接合する。そして、該ガス拡散電極の一方を燃料極(アノード極)とし、その表面に燃料としての水素ガスを供給すると、水素が水素イオン(プロトン)と電子とに分解され、水素イオンが固体高分子電解質膜を透過する。また、前記ガス拡散電極の他方を酸素極(カソード極)とし、その表面に酸化剤としての空気を供給すると、空気中の酸素と、前記水素イオン及び電子が結合して、水が生成される。このような電気化学反応によって起電力が生じるようになっている。
【0004】
そして、固体高分子型燃料電池においては、前記固体高分子電解質膜の両側を湿潤な状態に維持する必要があるので、燃料極側及び酸素極側のそれぞれに水を供給するようになっている。この場合、水分は、前記燃料極側から酸素極側に向けてプロトン同伴水として移動し、酸素極側から燃料極側に向けて逆拡散水として移動する。
【0005】
ところで、前記酸素極側から燃料極側において余剰となった水分を滞留させておくと水素や酸素の十分な供給が阻害されるので、余剰の水分を排出する必要がある。この場合、前記酸素極側における余剰の水分は、空気とともに大気中に放出することができるが、前記燃料極側における余剰の水分は、安全上の観点から水素ガスの大気中への放出が制限される。そこで、水素排気バルブの開度を制御したり、希釈器を使用したりすることにより、水素ガスの濃度を低下させてから大気中に放出する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2004−127621号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記従来の燃料電池システムにおいては、水素ガスの濃度を低下させてから大気中に放出するようにしても、燃料電池を搭載した車両がトンネルや屋内駐車場のように、遮蔽(へい)物等の存在によって水素ガスが拡散しにくい環境にある場合、低濃度の水素ガスであっても放出すると、水素ガスが滞留し、車両周辺における水素ガスの濃度が増大してしまう。
【0007】
本発明は、前記従来の燃料電池システムの問題点を解決して、燃料電池を搭載した車両周辺の環境に関する情報を取得し、車両周辺の環境が水素ガスが滞留しやすい環境であるか否かを判断し、水素ガスが滞留しやすい環境である場合には、水素ガスを大気中に放出しないようにして、前記車両周辺における水素ガスの濃度が増大することを防止し、安全性を高めることができる燃料電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そのために、本発明の燃料電池システムにおいては、電解質層を燃料極と酸素極とで狭持した燃料電池が、前記燃料極に沿って燃料ガス流路が形成されたセパレータを挟んで積層され、車両に搭載された燃料電池スタックと、前記燃料ガス流路内の燃料ガスのパージを行うパージ手段と、前記車両周辺の環境に関する情報を取得する環境情報取得手段と、取得された車両周辺の環境に関する情報に基づいて、前記パージ手段に選択的にパージを行わせる制御手段とを有する。
【0009】
本発明の他の燃料電池システムにおいては、さらに、前記制御手段は、車両周辺の環境が燃料ガスが滞留しやすい環境である場合、前記パージ手段にパージを行わせないモードを選択する。
【0010】
本発明の更に他の燃料電池システムにおいては、さらに、前記燃料ガスが滞留しやすい環境は、トンネル内、駐車場内、アンダーパス内、高架下、渋滞区間内又は交差点区間内である。
【0011】
本発明の更に他の燃料電池システムにおいては、さらに、前記環境情報取得手段はナビゲーション装置である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、燃料電池システムにおいては、電解質層を燃料極と酸素極とで狭持した燃料電池が、前記燃料極に沿って燃料ガス流路が形成されたセパレータを挟んで積層され、車両に搭載された燃料電池スタックと、前記燃料ガス流路内の燃料ガスのパージを行うパージ手段と、前記車両周辺の環境に関する情報を取得する環境情報取得手段と、取得された前記車両周辺の環境に関する情報に基づいて、前記パージ手段に選択的にパージを行わせる制御手段とを有する。
【0013】
この場合、車両周辺の環境に応じてパージを行うので、前記燃料ガス流路内の水分、窒素等の不純物を適切に大気中に排出して前記燃料電池スタックの発電状態を良好に維持することができ、かつ、前記車両周辺における燃料ガスの濃度が増大することを適切に防止することができる。
【0014】
他の燃料電池システムにおいては、さらに、前記制御手段は、車両周辺の環境が燃料ガスが滞留しやすい環境である場合、前記パージ手段にパージを行わせないモードを選択する。
【0015】
この場合、燃料ガスが滞留しやすい環境であるときにはパージが行われないので、前記車両周辺における燃料ガスの濃度が増大することを確実に防止することができ、安全性を高めることができる。
【0016】
更に他の燃料電池システムにおいては、さらに、前記燃料ガスが滞留しやすい環境は、トンネル内、駐車場内、アンダーパス内、高架下、渋滞区間内又は交差点区間内である。
【0017】
この場合、トンネル内、駐車場内、アンダーパス内、高架下、渋滞区間内又は交差点区間内に車両が位置するときにはパージが行われないので、トンネル内、駐車場内、アンダーパス内、高架下、渋滞区間内又は交差点区間内において燃料ガスの濃度が増大することを確実に防止することができる。
【0018】
更に他の燃料電池システムにおいては、さらに、前記環境情報取得手段はナビゲーション装置である。
【0019】
この場合、車両周辺の環境に関する情報を容易に、かつ、確実に取得することができる。また、該当箇所に車両が到達する以前に、あらかじめ環境に関する情報を取得することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0021】
図1は本発明の実施の形態における燃料電池システムの構成を示す図、図2は本発明の実施の形態における燃料電池システムの制御系の構成を示すブロック図である。
【0022】
図1において、20は乗用車、バス、トラック、乗用カート、荷物用カート等の車両用の動力源として使用される燃料電池(FC)としての燃料電池スタックであり、56は燃料電池システムの動作を制御する燃料電池制御装置としてのFCコントロールユニット(ECU:Electronic Control Unit)、10はナビゲーション装置である。なお、前記車両は、照明装置、ラジオ、パワーウィンドウ等の車両の停車中にも使用される電気を消費する補機類を多数備えており、また、走行パターンが多様であり、動力源に要求される出力範囲が極めて広いので、動力源としての燃料電池スタック21と図示されない蓄電手段としての二次電池とを併用して使用することが望ましい。
【0023】
そして、燃料電池スタック21は、アルカリ水溶液型(AFC)、リン酸型(PAFC)、溶融炭酸塩型(MCFC)、固体酸化物型(SOFC)、直接型メタノール(DMFC)等のものであってもよいが、固体高分子型燃料電池(PEMFC)であることが望ましい。
【0024】
なお、更に望ましくは、水素ガスを燃料とし、酸素又は空気を酸化剤とするPEMFC(Proton Exchange Membrane Fuel Cell)型燃料電池、又は、PEM(Proton Exchange Membrane)型燃料電池と呼ばれるものである。ここで、該PEM型燃料電池は、一般的に、プロトン等のイオンを透過する電解質層としての固体高分子電解質膜の両側に触媒、電極及びセパレータを結合した燃料電池としてのセル(Fuel Cell)を複数及び直列に結合したスタック(Stack)から成る。
【0025】
この場合、固体高分子電解質膜は、例えば、ナフィオン等の固体ポリマーイオン交換膜から成り、前記固体高分子電解質膜を2枚のガス拡散電極で挟み、一体化させて接合する。そして、該ガス拡散電極の一方を燃料極とし、該燃料極表面に接する燃料ガス流路を介し前記燃料極に燃料ガス、すなわち、アノードガスとしての水素ガスを供給する。また、前記ガス拡散電極の他方を酸素極とし、該酸素極表面に接する空気流路を介し前記酸素極に酸化ガス、すなわち、カソードガスとしての空気を供給する。すると、水素ガスは、燃料極(アノード)での触媒反応によって、水素が水素イオン(プロトン)と電子とに分解され、水素イオンが前記固体高分子電解質膜を通過する。そして、水素イオンは、酸素極(カソード)まで移動し、該酸素極において空気中の酸素と電気化学反応を起こして水を生成する。このような電気化学反応によって起電力が生じ、また、生成水が発生する。
【0026】
また、酸素極側で生じた生成水を前記固体高分子電解質膜を介して燃料極側に逆拡散させ、前記固体高分子電解質膜の湿潤状態を維持させるため、酸素極の電極表面又は酸素極と接するセパレータ流路付近には、酸化剤としての空気の経路中に設けられたノズルによって、液滴状の水が吹きかけられる。このように、水を吹きかけることによって、酸素極側の水の量を多くして濃度勾(こう)配を形成し、燃料極側に生成水を逆拡散させる。また、液滴の水が蒸発するときの潜熱及び水の顕熱で冷却を行い、燃料電池の温度を最適な範囲に制御することができる。
【0027】
そして、空気は、ファンによって常圧又は常圧近傍の圧力で、空気供給流路及び空気供給マニホールドを通って燃料電池の酸素極に供給される。なお、前記供給流路又は空気供給マニホールド内には空気中に水を噴射するノズルが備えられる。そして、前記燃料電池に供給された空気は、発電に供された後、前記酸素極側で生じた生成水又は酸素極に供給された水としての直噴水とともに、空気排出マニホールドを経て空気排出流路を通り、前記燃料電池の外部に排出される。
【0028】
また、図1には、燃料電池スタック21に燃料ガスとしての水素ガスを供給する装置が示されている。なお、図示されない改質装置によってメタノール、ガソリン等を改質して取り出した燃料である水素ガスを前記燃料電池スタック21に直接供給することもできるが、車両の高負荷運転時にも安定して十分な量の水素ガスを供給することができるようにするためには、燃料貯蔵手段22に貯蔵した水素ガスを供給することが望ましい。これにより、水素ガスがほぼ一定の圧力で、常に、十分に供給されるので、前記燃料電池スタック21は車両の負荷の変動に遅れることなく追随して、必要な電流を供給することができる。この場合、前記燃料電池スタック21の出力インピーダンスは極めて低く、0に近似することが可能である。
【0029】
水素ガスは、水素吸蔵合金を収納した容器、デカリンのような水素吸蔵液体を収納した容器、水素ガスボンベ等の燃料貯蔵手段22から、燃料供給管路23を通って、前記燃料電池スタック21の燃料ガス入口、すなわち、燃料ガス流路の入口に供給される。そして、前記燃料供給管路23には燃料供給電磁弁41が配設される。また、前記燃料貯蔵手段22は、十分に大きな容量を有し、常に、十分に高い圧力の水素ガスを供給することができる能力を有するものである。なお、図1に示される例においては、燃料貯蔵手段22が単数であるが、複数であってもよい。
【0030】
そして、前記燃料電池スタック21の燃料ガス出口、すなわち、燃料ガス流路の出口から未反応成分として排出される水素ガスは、第1燃料排出管路24を通って燃料電池スタック21の外部に排出される。前記第1燃料排出管路24の途中には、回収容器としての水回収ドレインタンク25が配設されている。そして、該水回収ドレインタンク25には水素ガスから分離された水が収容され、水を分離した水素ガスは、前記水回収ドレインタンク25より下流側において前記第1燃料排出管路24の途中に配設されたポンプとしての吸引循環ポンプ26に吸引される。なお、前記第1燃料排出管路24の燃料ガス流路の出口近傍には、圧力検出器45が配設されている。
【0031】
また、前記第1燃料排出管路24の下流側端部は、二つに分岐し、一方に第2燃料排出管路27が接続され、他方には第2循環管路29が接続されている。そして、前記第2燃料排出管路27は、第1燃料排出管路24と反対側の端部が空気排出マニホールドに接続され、また、途中に水素排気電磁弁43が配設されている。そのため、該水素排気電磁弁43を開くことによって、前記燃料電池スタック21の燃料ガス流路の出口から排出された水素ガスを、前記第1燃料排出管路24及び第2燃料排出管路27を介して、空気排出マニホールドに流入させ、該空気排出マニホールド内を通過する空気によって希釈された状態で大気中に排出することができる。この場合、前記第1燃料排出管路24及び第2燃料排出管路27は燃料排出管として機能する。
【0032】
なお、前記空気排出マニホールド内における第2燃料排出管路27の端部の近傍には、排出ガス中の水素ガス濃度を検出する水素濃度センサが設置され、前記水素ガス濃度が、例えば、4〔%〕以下になるように前記水素排気電磁弁43の開度が制御される。さらに、該水素排気電磁弁43の開度を制御するだけでなく、水素ガスを排出するときだけファンを制御して、燃料電池の酸素極に供給される空気の流量を大きくしてもよい。
【0033】
また、前記第2循環管路29は、第1燃料排出管路24と反対側の端部が燃料供給管路23の途中に接続され、また、途中に水素循環電磁弁42が配設されている。そのため、該水素循環電磁弁42を開くことによって、燃料電池スタック21の燃料ガス流路の出口から排出された水素ガスを、前記第1燃料排出管路24、第2循環管路29及び燃料供給管路23の一部を介して、燃料電池スタック21の燃料ガス入口、すなわち、燃料ガス流路の入口に戻して、再利用することができる。すなわち、前記燃料電池スタック21から排出された水素ガスは、燃料貯蔵手段22から供給される新しい水素ガスと合流して、再び燃料電池スタック21の燃料ガス流路に供給される。この場合、前記第1燃料排出管路24、第2循環管路29及び燃料供給管路23の一部は燃料循環管として機能する。
【0034】
さらに、前記燃料供給管路23の途中に、外気導入管路28が接続されている。そして、該外気導入管路28には、外気導入用電磁弁44が配設され、前記燃料電池スタック21の運転終了時に外気を燃料ガス流路に導入することができるようになっている。
【0035】
また、蓄電手段としての二次電池は、いわゆる、バッテリ(蓄電池)であり、鉛蓄電池、ニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池、ナトリウム硫黄電池等が一般的である。なお、前記蓄電手段は、必ずしもバッテリでなくてもよく、電気二重層キャパシタのようなキャパシタ(コンデンサ)、フライホイール、超伝導コイル、蓄圧器等のように、エネルギを電気的に蓄積し放出する機能を有するものであれば、いかなる形態のものであってもよい。さらに、これらの中のいずれかを単独で使用してもよいし、複数のものを組み合わせて使用してもよい。
【0036】
さらに、前記燃料電池スタック21は負荷に接続され、発生した電流を前記負荷に供給する。ここで、該負荷は、一般的には、駆動制御装置であるインバータ装置であり、前記燃料電池スタック21又は蓄電手段からの直流電流を交流電流に変換して、車両の車輪を回転させる駆動モータに供給する。ここで、該駆動モータは発電機としても機能するものであり、車両の減速運転時には、いわゆる、回生電流を発生する。この場合、前記駆動モータは車輪によって回転させられて発電するので、前記車輪にブレーキをかける、すなわち、車両の制動装置(ブレーキ)として機能する。そして、前記回生電流が蓄電手段に供給されて該蓄電手段が充電される。
【0037】
そして、本実施の形態において、燃料電池システムは、制御手段としてのFCコントロールユニット56によって制御される。該FCコントロールユニット56は、CPU、MPU等の演算手段、磁気ディスク、半導体メモリ等の記憶手段、入出力インターフェイス等を備え、各種のセンサから前記燃料電池スタック21の燃料ガス流路及び空気流路に供給される水素、酸素、空気等の流量、温度、出力電圧等を検出して、酸化剤供給源としてのファン、燃料供給電磁弁41、水素循環電磁弁42、水素排気電磁弁43、外気導入用電磁弁44、吸引循環ポンプ26等の動作を制御する。さらに、前記FCコントロールユニット56は、他のセンサ及び他の制御装置と連携して、前記燃料電池スタック21に燃料及び酸化剤を供給するすべての装置の動作を統括的に制御する。
【0038】
また、前記FCコントロールユニット56は、車両内に張り巡らされているネットワークシステムである車内LAN(Local Area Network)51を介して、環境情報取得手段としてのナビゲーション装置10と通信可能に接続されている。該ナビゲーション装置10は、一種のコンピュータであり、図2に示されるように、現在位置を検出する現在位置検出部13、道路データ、探索データ等が記憶された記憶媒体としてのデータ記憶部12、入力された情報に基づいて、ナビゲーション処理等の各種の演算処理を行うナビゲーション処理部11、入力部16、表示部17、音声入力部18、音声出力部19及び通信部15を有し、前記ナビゲーション処理部11が車内LAN51に接続されている。
【0039】
そして、前記ナビゲーション処理部11には、車内LAN51を介して、車両状態検出部30が接続されている。該車両状態検出部30は、車両の方向指示器としてのウィンカの動作を検出するウィンカセンサ34、運転者が操作するアクセル開度を検出するアクセルセンサ33、運転者が操作する車両のブレーキペダルの動きを検出するブレーキセンサ32、車両の速度を検出する車速センサ31、及び、スロットルバルブの開度を検出するスロットル開度センサ35を有する。
【0040】
また、前記現在位置検出部13は、GPS(Global Positioning System)レシーバ131、地磁気センサ132、距離センサ133、ステアリングセンサ134、ビーコンセンサ135、ジャイロセンサ136、図示されない高度計等を備える。なお、前記GPSレシーバ131、地磁気センサ132、距離センサ133、ステアリングセンサ134、ビーコンセンサ135、ジャイロセンサ136、高度計等の中のいくつかは、製造コスト等の観点から、適宜省略することもできる。
【0041】
そして、前記GPSレシーバ131は、人工衛星によって発生させられた電波を受信することによって地球上における現在位置を検出し、前記地磁気センサ132は、地磁気を測定することによって車両が向いている方位を検出し、前記距離センサ133は、道路上の所定の位置間の距離等を検出する。前記距離センサ133としては、例えば、車輪の回転数を測定し、該回転数に基づいて距離を検出するもの、加速度を測定し、該加速度を二回積分して距離を検出するもの等を使用することができる。
【0042】
また、前記ステアリングセンサ134は、舵(だ)角を検出し、前記ステアリングセンサ134としては、例えば、ステアリングホイールの回転部に取り付けられた光学的な回転センサ、回転抵抗センサ、車輪に取り付けられた角度センサ等が使用される。
【0043】
そして、前記ビーコンセンサ135は、道路に沿って配設されたビーコンからの位置情報を受信して現在位置を検出する。前記ジャイロセンサ136は、車両の回転角速度、すなわち、旋回角を検出し、前記ジャイロセンサ136としては、例えば、ガスレートジャイロ、振動ジャイロ等が使用される。そして、前記ジャイロセンサ136によって検出された旋回角を積分することによって、車両が向いている方位を検出することができる。
【0044】
なお、前記GPSレシーバ131及びビーコンセンサ135は、それぞれ、単独で現在位置を検出することができる。そして、距離センサ133によって検出された距離と、地磁気センサ132及びジャイロセンサ136によって検出された方位とを組み合わせることによって現在位置を検出することもできる。また、距離センサ133によって検出された距離と、ステアリングセンサ134によって検出された舵角とを組み合わせることによって現在位置を検出することもできる。
【0045】
そして、前記データ記憶部12は、道路地図、住宅地図、建造物形状地図等の地図データ、交差点データ、ノードデータ、道路データ、写真データ、登録地点データ、目的地点データ、案内道路データ、詳細目的地データ、目的地読みデータ、電話番号データ、住所データ、及び、各地域のホテル、ガソリンスタンド、観光地案内等の各種地域毎のデータを含むデータを格納する各種のデータファイルを備えている。
【0046】
これら各データファイルには、経路探索を行うとともに、探索した経路に沿って案内図を表示したり、交差点や経路中における特徴的な写真やコマ図を出したり、交差点までの残り距離、次の交差点での進行方向を表示したり、その他の案内情報を前記表示部17や音声出カ部19から出力するための各種データが格納されている。なお、前記データファイルの内、通常のナビゲーションにおける経路探索に使用されるのは、交差点データ、ノードデータ及び道路データが、それぞれに格納された各データファイルである。該データファイルには、道路の幅員、勾配、路面の状態、コーナの曲率半径、交差点、T字路、道路の車線数、車線数の減少する地点、コーナの入口、踏切、高速道路出口ランプウェイ、高速道路の料金所、道路の幅員の狭くなる地点、降坂路、登坂路等の道路データが格納されている。
【0047】
ここで、案内道路データのデータファイルは、n本の道路のそれぞれに対して、道路番号、長さ、道路属性データ、形状データのアドレス及びサイズ、案内データのアドレス及びサイズ等の各データを格納する。これらのデータは、経路探索によって探索された経路を案内するために、すなわち、経路案内を行うために必要なデータとして格納される。なお、前記道路番号は、分岐点間の道路毎に方向(往路、復路)別に設定されている。また、前記道路属性データは、道路案内補助情報データであり、その道路が高架か、高架の横か、地下道か、地下道の横か等を示す情報としての高架・地下道の情報、及び、車線数の情報を示すデータである。さらに、前記形状データは、各道路を複数のノード(節)で分割したとき、該ノード同士の間隔は数メートル程度となり、ノードのそれぞれに対して付与された東経及び北緯から成る座標データを有している。すなわち、前記データ記憶部12に格納されている道路は、ノードと、該ノードを結ぶ線分としてのリンクによって表現される。そして、前記ノードは、座標データによって定義されている。
【0048】
また、前記案内データは、交差点(又は分岐点の)名称、注意点データ、道路名称データ、道路名称音声データのアドレス及びサイズ、並びに、行き先データのアドレス及びサイズの各データを含んでいる。そして、前記案内データのうち、注意点データは、踏切か、トンネル入口か、トンネル出口か、幅員減少点か、なしか等の情報を示すデータであり、分岐点以外の踏切、トンネル等において運転者に注意を促すためのデータである。また、前記道路名称データは、高速道路、都市高速道路、有料道路及び一般道(国道、県道、その他)の道路種別に関する情報と、高速道路、都市高速道路及び有料道路について本線か取り付け道かを示す情報としてのデータであり、道路種別データと、各道路種別毎での個別番号データとしての種別内番号とから構成される。
【0049】
さらに、前記行き先データは、行き先道路番号、行き先名称、行き先名称音声データのアドレス及びサイズ、並びに、行き先方向データ及び走行案内データを含んでいる。なお、前記行き先データのうち、行き先方向データは、無効(行き先方向データを使用しない)、不要(案内しない)、直進、右方向、斜め右方向、右に戻る方向、左方向、斜め左方向、左に戻る方向等の情報を示すデータである。また、前記走行案内データは、車線数が複数ある場合にどの車線を走行すべきかを案内するためのデータを格納したもので、右寄りか、左寄りか、中央寄りか又はなしかの情報を示すデータである。
【0050】
そして、前記建造物形状地図のデータは、例えば、建築物や橋梁(りょう)、タワー、公園、運動場、道路等の建造物のデータ数Nの次にN個の各建造物のデータが記憶される。ここで、各建造物のデータは、建造物の名称、番地(住所)、種別、建造物の形状、高さ及び詳細の各情報から成る。また、名称は、ビルであればそのビル名、個人の家屋であればその居住者名、施設であれば、その施設名、道路であれば「中央通り」、「国道1号」のように道路種別や通り名であり、番地(住所)は、その建造物の番地である。さらに、建造物の形状は、形状を表す座標数n及びその座標値(x0,y0)、(x1,y1)、………、(xn−1,yn−1)であり、種別は、一般の家屋、マンション、オフィスビル、公共施設、道路、公園等の情報である。そして、高さは、回数や高さ(m)の情報である。そして詳細は、例えば、テナントビルであれば各入居者に関する情報であれば、名称数nと各テナントについて、名称、電話番号、部屋番号、分類(レストラン、コンビニ、……等の業種、事業内容)に関する情報である。したがって、建造物の形状に関する情報として座標値を順に読み出して線で結び、描画して表示することによって、例えば、ビルや家屋の平面形状や公園の地形を出力することができる。
【0051】
また、前記ナビゲーション処理部11は、ナビゲーション装置10の全体の制御を行う演算処理装置としてのCPU111、該CPU111が各種の演算処理を行うに当たりワーキングメモリとして使用される記録手段であるランダムアクセスメモリとしてのRAM113、及び、制御プログラムの他、目的地までの経路の探索、経路中の走行案内、特定区間の決定、地点、施設等の検索等を行うための各種のプログラムが記録された記録手段であるリードオンリーメモリとしてのROM112から成る。そして、前記ナビゲーション処理部11には、前記入力部16、表示部17、音声入力部18、音声出力部19及び通信部15が接続される。そして、経路の探索、経路の案内、特定区間の決定、地点、施設等の検索等の各種処理を実行する。なお、前記音声入力部18、音声出力部19及び通信部15の中のいくつかは、製造コスト等の観点から、適宜省略することもできる。
【0052】
また、前記ナビゲーションプログラムや、探索データ、道路データ等を記憶したデータ記憶部12及びROM112は、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体であれば、半導体メモリだけでなく、いかなる種類の記憶媒体であってもよく、例えば、磁気テープ、ハードディスク等の磁気ディスク、磁気ドラム、CD−ROM、MD、DVD−ROM、光ディスク、MO、ICカード、光カード、メモリカード等であってもよい。
【0053】
さらに、前記通信部15は、FM送信装置、電話回線網、インターネット、携帯電話網等との間で各種のデータの送受信を行うためのものであり、例えば、情報センサ等によって受信した渋滞等の道路情報、交通事故情報、駐車場等の各種施設の位置情報、前記GPSレシーバ131の検出誤差を検出するD−GPS情報等の各種のデータを受信する。また、本発明の機能を実現するためのプログラム、前記ナビゲーション装置10を作動させるためのその他のプログラム、データ等を、情報センタ(インターネットサーバ、ナビゲーション用サーバ等)から複数の基地局(インターネットのプロバイダ端末、前記通信部15と電話回線、通信回線等を介して接続された通信局等)に送信し、さらに各基地局から前記通信部15に送信することもできる。このようなシステムを使用する場合、各基地局から送信された前記プログラム及びデータの少なくとも一部が受信されると、前記CPU111は、読み書き可能なメモリ、例えば、RAM113、フラッシュメモリ、ハードディスク等の記録媒体にダウンロードし、前記プログラムを起動し、データに基づいて各種の処理を行うことができる。
【0054】
そして、前記入力部16は、走行開始時の位置を修正したり、目的地を入力したりするためのものであり、前記ナビゲーション装置10の本体に配設された操作キー、押しボタン、ジョグダイヤル、十字キー等から成るものであるが、リモートコントローラであってもよい。なお、前記表示部17がタッチパネルである場合には、該表示部17の画面に表示された操作キー、操作メニュー等の操作スイッチから成るものであることが望ましい。この場合、通常のタッチパネルのように前記操作スイッチを押す(タッチする)ことによって、入力を行うことができる。
【0055】
そして、前記表示部17の画面には、操作案内、操作メニュー、操作キーの案内、現在位置から目的地までの経路、該経路に沿った案内情報等が表示される。前記表示部17としては、CRTディスプレイ、液晶ディスプレイ、LED(Light Emitting Diode)ディスプレイ、プラズマディスプレイ、フロントガラスにホログラムを投影するホログラム装置等を使用することができる。
【0056】
また、音声入力部18は、マイクロホン等によって構成され、音声によって必要な情報を入力することができる。さらに、音声出力部19は、音声合成装置及びスピーカを備え、音声情報、例えば、音声合成装置によって合成された音声から成る案内情報、変速情報等をスピーカから出力し、操作者に知らせる。なお、音声合成装置によって合成された音声の他に、各種の音、あらかじめテープ、メモリ等に録音された各種の案内情報をスピーカから出力することもできる。
【0057】
そして、前記ナビゲーション装置10は、運転者に車両の現在位置としての自車位置周辺の道路情報等の環境を知らせて、車両の目的地までの走行経路を誘導する。すなわち、前記ナビゲーション処理装置11のCPUI11によって経路案内システムのプログラムが起動されると、現在位置検出部13によって現在位置を検出し、検出した現在位置を中心とする周辺地図を表示するとともに、前記現在位置の名称等を表示する。また、電話番号や住所、施設名称、登録地点等を用いて目的地が設定されると、前記ナビゲーション装置10は、現在位置から目的地までの経路を探索するための経路探索を実行する。前記目的地までの経路が探索されて設定されると、前記現在位置検出部13によって自車位置の追跡を行いながら、目的地に到着するまで経路案内を繰り返し行う。さらに、前記目的地に到着する前に寄り道設定の入力があった場合には、探索エリアを設定してその探索エリアでの再探索を行い、同様に前記目的地に到着するまで経路案内を繰り返し行う。なお、運転者が目的地等を特に設定しない場合には、前記ナビゲーション装置10は、現在位置検出部13によって自車位置の追跡を行いながら、自車位置周辺の地図を表示する。
【0058】
本実施の形態において、FCコントロールユニット56は、前述のように、車内LAN51を介して、ナビゲーション装置10と通信可能に接続され、該ナビゲーション装置10から自車位置周辺の道路情報等の環境に関する情報を取得するようになっている。また、前記車内LAN51には、環境情報取得手段として機能する画像認識手段60も接続されており、前記FCコントロールユニット56は、画像認識手段60が取得した車両の周囲の画像に関する情報を自車位置周辺の環境に関する情報として取得する。
【0059】
ここで、前記画像認識手段60は、CCD(Charge Coupled Device:電荷結合素子)、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の撮像素子を備え、車体の前面部、後面部又は側面部、運転席のフロントウィンドウ等に取り付けられ、車両の前方、後方、側方等の景色を撮影する。なお、前記画像認識手段60は、複数の撮像素子を並列に配置したステレオ視カメラであることが望ましい。さらに、前記画像認識手段60は、映像基盤、絞り基盤、中央演算装置等を備え、撮像素子で撮影した画像を前記中央演算装置の画像処理部によって画像処理を行う。そして、前記画像認識手段60は、例えば、車両前方に位置するトンネル入口の暗部、自車位置が屋内駐車場内である場合に車両周辺の柱、壁等を認識し、その情報を自車位置周辺の環境に関する情報として前記FCコントロールユニット56に送信するようになっている。
【0060】
そして、該FCコントロールユニット56は、ナビゲーション装置10及び画像認識手段60から取得した自車位置周辺の環境に関する情報に基づいて、自車位置周辺の環境が水素ガスが滞留しやすい環境であるか否かを判断する。そして、水素ガスが滞留しやすい環境である場合には、水素ガスを大気中へ放出しないように燃料電池システムを制御する。すなわち、パージ手段にパージを行わせないモードを選択する。なお、前記パージ手段には、水素排気電磁弁43、第2燃料排出管路27、吸引循環ポンプ26、外気導入管路28、外気導入用電磁弁44等が含まれる。
【0061】
また、前記燃料電池システムの通常運転においては、パージ手段が一定時間間隔でパージを行い、前記水素排気電磁弁43を開いて、第2燃料排出管路27から燃料ガス流路内の水素ガスを排出させるようになっている。すなわち、水素ガスが滞留しやすい環境でない場合、パージ手段にパージを行わせるモードを選択する。これにより、水素ガスは、前記水回収ドレインタンク25内の貯留水、燃料電池スタック21の燃料流路内の水分、増加した窒素その他の不純物等を伴って、空気排出マニホールド内を通過する空気中とともに、大気中に排出される。そのため、前記燃料電池スタック21の発電状態を良好に維持することができる。しかし、水素ガスが滞留しやすい環境である場合、前記FCコントロールユニット56は、パージ手段にパージを行わせないモードを選択し、水素ガスを前記第2燃料排出管路27から空気排出マニホールドを介して、大気中へ放出することがないように制御する。
【0062】
次に、水素ガスが滞留しやすい環境について説明する。
【0063】
図3は本発明の実施の形態における水素ガスが滞留しやすい環境を示す図である。
【0064】
まず、水素ガスが滞留しやすい環境の一つとして、トンネル内を挙げることができる。そこで、前記ナビゲーション装置10によって、図3(a)に示されるように、目的地までの経路として設定された道路61上における車両の進行方向前方に、トンネルの入口ノード63及び出口ノード64が存在することが判明した場合には、前記入口ノード63と出口ノード64との間の区間65をトンネルであると判断し、前記FCコントロールユニット56は、前記区間65において、水素ガスを大気中に放出しないように制御する。なお、図において62は、車両の現在位置としての自車位置を示す自車位置マークであり、三角形状の矢印の先端が車両の進行方向を示している。
【0065】
また、目的地までの経路が設定されていない場合も同様であり、この場合、車両が走行中の道路61上における車両の進行方向前方に、トンネルの入口ノード63及び出口ノード64が存在するか否かに基づいて、トンネルの有無を判断する。さらに、前記画像認識手段60が車両前方にトンネル入口の暗部が存在することを認識した場合に、前記トンネルがあるものと判断して、水素ガスを大気中に放出しないように制御することもできる。
【0066】
他の水素ガスが滞留しやすい環境として、屋内駐車場内を挙げることができる。なお、屋外駐車場であっても、周囲に壁等が設置されて空気の流通がスムーズでなく水素ガスが滞留しやすい場合もあるので、ここでは、屋内屋外の区別を問わず、建造物に付随する駐車場内を水素ガスが滞留しやすい環境と判断するものとする。この場合、前記ナビゲーション装置10によって、設定された目的地の周辺(例えば、目的地を中心とする半径300〔m〕以内の範囲)に車両が接近し、かつ、図3(b)に示されるように、建造物を示す区域66内に車両が進入したことが判明したとき、前記建造物に付随する駐車場に到達したと判断し、前記FCコントロールユニット56は、水素ガスを大気中に放出しないように制御する。
【0067】
また、目的地の周辺でなくても、図3(b)に示されるように、目的地までの経路として設定された道路61から外れて、建造物を示す区域66内に車両が進入したときも、駐車場に到達したと判断する。これは、前記目的地までの途中で、コンビニエンスストア等の商店、ファミリーレストラン等の食堂のような店舗に立ち寄ったと考えられるからである。さらに、目的地までの経路が設定されていない場合も同様であり、車両が走行中の道路61から外れて、建造物を示す区域66内に車両が進入したときも、駐車場に到達したと判断する。
【0068】
なお、前記画像認識手段60が、車両周囲に柱や壁のような建造物の一部が存在することを認識した場合に、屋内駐車場であると判断し、それ以外の場合には屋外駐車場であると判断することができる。また、車両に図示されない輝度センサを取り付け、車両周囲の輝度が所定値以上である場合に、屋外駐車場であると判断することもできる。なお、屋外駐車場であっても、前述のように、周囲に壁等が設置されて空気の流通がスムーズでなく水素ガスが滞留しやすい場合もあるので、水素ガスを大気中に放出しないように制御することが望ましい。
【0069】
さらに、前記ナビゲーション装置10が、車両を後退させての車庫入れ、縦列駐車等における運転者のステアリング操作を補助するための駐車アシスト機能を備えるものである場合、該駐車アシスト機能が作動しているときには、車両が駐車場内にあると判断して、水素ガスを大気中に放出しないように制御することもできる。
【0070】
更に他の水素ガスが滞留しやすい環境として、アンダーパス内を挙げることができる。アンダーパスは、例えば、立体交差の交差点における下方を通過する道路のように、低い箇所を通過する道路である。この場合、前記ナビゲーション装置10によって、図3(c)に示されるように、目的地までの経路として設定された道路61上における車両の進行方向前方に、他の道路67のリンクと交差しているが互いにノードで結ばれていない箇所があることが判明したときには、前記他の道路67のリンクと交差している点の周辺(例えば、目的地を中心とする半径100〔m〕以内の範囲)68をアンダーパス内としてのアンダーパスの区間であると判断し、FCコントロールユニット56は、前記アンダーパスの区間68において、水素ガスを大気中に放出しないように制御する。
【0071】
また、目的地までの経路が設定されていない場合も同様であり、この場合、車両が走行中の道路61上における車両の進行方向前方に、他の道路67のリンクと交差しているが互いにノードで結ばれていない箇所があるか否かに基づいて、アンダーパスの有無を判断する。さらに、前記画像認識手段60が車両前方にアンダーパスが存在することを認識した場合に、アンダーパスがあるものと判断して、水素ガスを大気中に放出しないように制御することもできる。
【0072】
更に他の水素ガスが滞留しやすい環境として、高架下を挙げることができる。高架下は、例えば、高速道路、都市高速道路等の高架橋の近傍を通過する一般道等の道路であり、高架橋の下方を通過している可能性が高く、水素ガスが滞留しやすいと考えられる。この場合、前記ナビゲーション装置10によって、目的地までの経路として設定された道路61のある区間の属性が高架横であることが判明したときには、前記区間を高架下の区間であると判断し、FCコントロールユニット56は、前記アンダーパスの区間68において、水素ガスを大気中に放出しないように制御する。
【0073】
また、目的地までの経路が設定されていない場合も同様であり、この場合、車両が走行中の道路61上における区間の属性が高架横であるか否かに基づいて、高架下であることを判断する。さらに、前記画像認識手段60が車両が高架橋の近傍を通過していることを認識した場合に、前記高架下であるものと判断して、水素ガスを大気中に放出しないように制御することもできる。
【0074】
更に他の水素ガスが滞留しやすい環境として、渋滞区間を挙げることができる。該渋滞区間は、車両の密度が高く、周辺に水素ガスを排出する他の燃料電池システムを搭載した車両が存在する可能性も高いので、水素ガスが滞留しやすいと考えられる。この場合、VICS(R)(道路交通情報通信システム:Vehicle Information & Communication System)情報等の交通情報を受信した前記ナビゲーション装置10によって、図3(d)に示されるように、目的地までの経路として設定された道路61における車両の進行方向前方に渋滞区間71が存在することが判明したときには、FCコントロールユニット56は、前記渋滞区間71において、水素ガスを大気中に放出しないように制御する。
【0075】
また、目的地までの経路が設定されていない場合も同様であり、この場合、車両が走行中の道路61上における車両の進行方向前方に、渋滞区間71があるか否かを判断する。なお、前記交通情報は、現在の交通情報だけでなく、過去の交通情報を蓄積して統計的に処理された統計的交通情報、自車が取得した走行履歴である自車の実走行データ、プローブカー等の他車が提供する走行履歴情報等を利用することもできる。この場合、前記統計的交通情報、走行履歴情報等によって渋滞の発生する確率の高い区間を渋滞区間71であると判断する。さらに、車速が所定値以下の低速であって、かつ、前記画像認識手段60が認識した自車周辺の車両密度が所定値以上であったり、前方の車両との距離が所定値以下であったりする場合に、車両が渋滞区間71内であるものと判断して、水素ガスを大気中に放出しないように制御することもできる。
【0076】
更に他の水素ガスが滞留しやすい環境として、交差点区間内を挙げることができる。交差点区間内は、車両の密度が高く、周辺に水素ガスを排出する他の燃料電池システムを搭載した車両が存在する可能性も高いので、水素ガスが滞留しやすいと考えられる。この場合、前記ナビゲーション装置10によって、図3(e)に示されるように、目的地までの経路として設定された道路61における車両の進行方向前方に他の道路67のリンクと交差しているノード77があることが判明したときには、該ノード77の前後所定距離(例えば、ノード77の前後各々100〔m〕)にあるノード72〜75で囲まれた区間を交差点の区間であると判断し、FCコントロールユニット56は、前記交差点の区間において、水素ガスを大気中に放出しないように制御する。
【0077】
また、目的地までの経路が設定されていない場合も同様であり、この場合、車両が走行中の道路61上における車両の進行方向前方に他の道路67のリンクと交差しているノード77が存在するか否かに基づいて、交差点の区間の有無を判断する。さらに、前記画像認識手段60が車両前方に交差点が存在することを認識した場合に、水素ガスを大気中に放出しないように制御することもできる。
【0078】
次に、前記構成の燃料電池システムの動作について説明する。
【0079】
図4は本発明の実施の形態における燃料電池システムの動作を示すフローチャートである。
【0080】
ここでは、定常運転における動作について説明する。本実施の形態の燃料電池システムにおける定常運転時には、燃料供給電磁弁41から流出する水素ガスの圧力をあらかじめ設定した一定の圧力に調整した後、前記燃料供給電磁弁41は燃料電池システムの運転中には調整されることがなく、そのままの状態が保持される。また、酸化剤供給源としてのファンは常に一定量の空気を燃料電池スタック21の空気流路に供給するように作動する。この場合、供給される空気の量は、燃料電池スタック21の出力が最大となるために必要な空気の量よりも十分に多い量である。また、本実施の形態において、前記燃料電池スタック21の空気流路に供給される空気の圧力は大気圧程度の常圧であり、特段加圧される必要がない。
【0081】
そして、燃料電池スタック21が運転を開始すると、該燃料電池スタック21を構成する各単位セルにおいて逆拡散水が発生し、該逆拡散水が固体高分子電解質膜を透過して燃料ガス流路にまで浸透して、前記固体高分子電解質膜の燃料極側を加湿する。これにより、該固体高分子電解質膜の燃料極側は湿潤な状態となり、電気化学反応によって水素から生成された水素イオンが固体高分子電解質膜内をスムーズに移動することができる。
【0082】
また、前記燃料ガス流路に供給されて余剰となった未反応成分としての水素ガスは、前記燃料ガス流路にまで浸透して余剰となった逆拡散水と混合して、気液混合物となる。該気液混合物となった水素ガスは、吸引循環ポンプ26によって吸引され、燃料電池スタック21に接続された第1燃料排出管路24を通って前記燃料電池スタック21の外部に導出される。そして、前記気液混合物は、第1燃料排出管路24を通過して水回収ドレインタンク25内に導入される。そして、比較的広い空間を備える前記水回収ドレインタンク25内に滞留することによって、重量物である水分が重力によって下方に落下し、水素ガスから逆拡散水が分離する。該逆拡散水が分離して乾燥した状態の水素ガスは、第1燃料排出管路24から水回収ドレインタンク25外に排出される。
【0083】
そして、定常運転においては、前記第1燃料排出管路24から排出された水素ガスは、第2循環管路29に配設され、開いた状態になっている水素循環電磁弁42を通過して、燃料供給管路23に導入され、再び、燃料電池スタック21の燃料ガス流路に供給されて再利用される。なお、水素排気電磁弁43が閉じた状態となっているので、吸引循環ポンプ36から排出された水素ガスは、第2燃料排出管路27を通って空気排出マニホールドに排出されることなく、前記第2循環管路29に導入される。
【0084】
一方、ナビゲーション装置10は、現在位置検出部13によって車両の現在位置としての自車位置を検出する(ステップS1)。そして、前記ナビゲーション装置10は、自車位置周辺の道路属性を判断(ステップS2)し、その結果を前記自車位置周辺の道路情報等の環境に関する情報として、車内LAN51を介してFCコントロールユニット56に送信する。該FCコントロールユニット56は、ナビゲーション装置10から受信した情報に基づいて、前記自車位置は制御対象地域であるか否かを判断する(ステップS3)。ここで、制御対象地域とは、前述した水素ガスが滞留しやすい環境に該当する地域である。
【0085】
そして、自車位置が制御対象地域でない場合には、ステップS1に戻り、再度自車位置の検出が行われる。また、自車位置が制御対象地域である場合、FCコントロールユニット56は、排気停止制御を実行する(ステップS4)。排気停止制御を実行することによって、パージを行わず、水素ガスを第2燃料排出管路27から空気排出マニホールドを介して、大気中へ放出することがないように制御する。続いて、FCコントロールユニット56は、自車位置が制御対象地域を脱出したか否かを判断する(ステップS5)。そして、制御対象地域を脱出した場合には、排気停止制御を解除する(ステップS6)。また、制御対象地域を脱出していない場合には、ステップS4に戻り、再度排気停止制御を実行する。すなわち、制御対象地域を脱出するまで、排気停止制御を継続する。
【0086】
続いて、FCコントロールユニット56は、イグニッションがオフ(OFF)であるか否かを判断する(ステップS7)。なお、該イグニッションは、一般的な乗用車等の車両におけるイグニッションスイッチと同様のものであるので、詳細な説明は省略する。また、前記イグニッションの基本的な操作方法も、一般的な乗用車等の車両におけるイグニッションスイッチとほぼ同様であり、キー挿入スロットにキーを挿入した状態で該キーを回転させ、その回転位置に応じてオン(ON)又はオフを選択することができ、オンであると燃料電池システムが作動し、オフであると前記燃料電池システムが停止するようになっている。なお、本実施の形態において、ナビゲーション装置10は、前記イグニッションがオフにされると、その時点における検出された自車位置を記憶手段に保存するとともに、保存された自車位置の情報として、車内LAN51を介してFCコントロールユニット56に送信する。
【0087】
そして、前記イグニッションがオフでない場合、すなわち、オンである場合には、ステップS1に戻り、再度自車位置の検出が行われる。また、前記イグニッションがオフである場合、FCコントロールユニット56は、保存された自車位置は制御対象地域であるか否かを判断する(ステップS8)。そして、前記FCコントロールユニット56は、保存された自車位置が制御対象地域である場合には排気停止制御を実行(ステップS9)し、保存された自車位置が制御対象地域でない場合には停止制御(パージ)を実行(ステップS10)して、処理を終了する。
【0088】
ここで、前記停止制御は、燃料電池システムの運転を停止するための通常の制御であり、前記FCコントロールユニット56は、燃料ガス流路への水素ガスの供給を停止し、前記燃料ガス流路内の水素ガスの空気によるパージを行う。まず、前記FCコントロールユニット56は、燃料供給電磁弁41を閉じて燃料貯蔵手段22からの水素ガスの供給を遮断する。続いて、前記FCコントロールユニット56は、水素循環電磁弁42を閉じて水素ガスの循環を停止させる。これにより、燃料電池スタック21の燃料ガス流路への水素ガスの供給が遮断される。続いて、前記FCコントロールユニット56は、水素排気電磁弁43を開いて、燃料ガス流路内の水素ガスを第2燃料排出管路27から空気排出マニホールドに流入させ、空気排出マニホールド内を通過する空気によって希釈された状態で大気中に排出させる。この場合、吸引循環ポンプ26が作動しているので、減圧が開始され、前記燃料電池スタック21、水回収ドレインタンク25、第1燃料排出管路24等に残留している水素ガスは、吸引循環ポンプ26によって吸引され、第2燃料排出管路27から排出される。そして、燃料ガス流路の内部が負圧となるので、該燃料ガス流路内から水素ガスが確実に速やかに除去されて排出される。これにより、パージが行われ、水素ガスは、前記水回収ドレインタンク25内の貯留水、燃料電池スタック21の燃料流路内の水分、増加した窒素その他の不純物等を伴って、空気排出マニホールド内を通過する空気中とともに、大気中に排出される。そして、燃料ガス流路内の水素ガスの圧力が閾(しきい)値未満となると、前記FCコントロールユニット56は、外気導入用電磁弁44を開き、空気を前記燃料ガス流路内へ導入する。続いて、燃料電池スタック21の出力が所定電圧以下となると、前記FCコントロールユニット56は、吸引循環ポンプ26を停止させ、外気導入用電磁弁44を閉じ、最後に酸化剤供給源を停止させる。これにより、前記燃料電池スタック21の運転が停止された状態となる。
【0089】
また、排気停止制御を実行する場合には、パージが行われないようになっている。この場合、前記FCコントロールユニット56は、燃料供給電磁弁41を閉じて燃料貯蔵手段22からの水素ガスの供給を遮断する。続いて、前記FCコントロールユニット56は、吸引循環ポンプ26を停止させ、更に水素循環電磁弁42を閉じて水素ガスの循環を停止させる。これにより、燃料電池スタック21の燃料ガス流路への水素ガスの供給が遮断され、前記燃料電池スタック21の燃料ガス流路に水素ガスが封入された状態が開始される。この場合、外気導入用電磁弁44も水素排気電磁弁43も閉止したままであるので、前記燃料電池スタック21の燃料ガス流路に水素ガスが封入された状態が維持される。したがって、水素ガスが大気中に排出されることがない。
【0090】
このように、本実施の形態においては、前記ナビゲーション装置10が車両の自車位置周辺の環境に関する情報をFCコントロールユニット56に送信すると、該FCコントロールユニット56は受信した情報に基づいて、自車位置周辺の環境が水素ガスが滞留しやすい環境であるか否かを判断する、そして、自車位置周辺の環境が水素ガスが滞留しやすい環境である場合には、前記FCコントロールユニット56は、排気停止制御を実行し、水素ガスを大気中に放出しないようにする。これにより、車両が水素ガスが滞留しやすい環境にあっても、車両周辺における水素ガスの濃度が増大することを防止することができ、安全性を高める。
【0091】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明の実施形態における燃料電池システムの構成を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態における燃料電池システムの制御系の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態における水素ガスが滞留しやすい環境を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態における燃料電池システムの動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0093】
10 ナビゲーション装置
21 燃料電池スタック
60 画像認識手段
68 アンダーパスの区間
71 渋滞区間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質層を燃料極と酸素極とで狭持した燃料電池が、前記燃料極に沿って燃料ガス流路が形成されたセパレータを挟んで積層され、車両に搭載された燃料電池スタックと、
前記燃料ガス流路内の燃料ガスのパージを行うパージ手段と、
前記車両周辺の環境に関する情報を取得する環境情報取得手段と、
取得された車両周辺の環境に関する情報に基づいて、前記パージ手段に選択的にパージを行わせる制御手段とを有することを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
前記制御手段は、車両周辺の環境が燃料ガスが滞留しやすい環境である場合、前記パージ手段にパージを行わせないモードを選択する請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記燃料ガスが滞留しやすい環境は、トンネル内、駐車場内、アンダーパス内、高架下、渋滞区間内又は交差点区間内である請求項1又は2に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記環境情報取得手段はナビゲーション装置である請求項1〜3のいずれか1項に記載の燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−156139(P2006−156139A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−345173(P2004−345173)
【出願日】平成16年11月30日(2004.11.30)
【出願人】(591261509)株式会社エクォス・リサーチ (1,360)
【Fターム(参考)】