説明

燃料電池システム

【課題】燃料電池の間欠運転時における二次電池の過充電を防止する。
【解決手段】FC要求電圧算出部110は、燃料電池の間欠運転時に、高電位化回避閾値電圧を下回る所定電圧を、FC要求電圧Vrfとして算出し、コンバータへ出力する。FC要求電圧補正部は、燃料電池の間欠運転時に、燃料電池システムとして許容できるシステム許容パワーPsyから燃料電池の発電パワーPfcを引いた偏差Dが値0以下となったときに、偏差Dが値0となるようにコンバータへの指令値を補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池と二次電池とを備える燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、メインのエネルギー源とは別に二次電池を備えるハイブリッドシステムが注目されている。このようなハイブリッドシステムにおいて、電力線の目標電圧と検出電圧との偏差を用いた電圧フィードバック制御を行う構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
一方、上記ハイブリッドシステムにおいて燃料電池を用いた燃料電池システムがある。燃料電池システムでは、燃費を向上させるために、アイドリング時や低速走行時、回生制動時のような低負荷運転時に燃料電池の発電を一時的に停止させ、二次電池から負荷(車両モータ等)に電力を供給させる間欠運転を行っている。なお、この間欠運転時において、燃料電池の耐久性向上のために、強制的に発電を行うこともあり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−29050号公報
【0005】
しかしながら、前記電圧フィードバック制御を行う従来例を前記燃料電池システムに採用した場合に、間欠運転時に適正な電力制御がなされず、二次電池の過充電を引き起こす虞があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、燃料電池の間欠運転時における二次電池の過充電を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するために以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1] 燃料電池と二次電池を備え、負荷への電力供給を行なう燃料電池システムであって、前記燃料電池の出力電圧を制御するコンバータと、間欠運転時に、前記コンバータへの指令値を制御して、前記燃料電池の出力電圧が当該燃料電池の開放電圧よりも低い所定の高電位化回避閾値電圧以上になることを抑制する高電位回避制御部とを備え、前記高電位回避制御部は、前記燃料電池システムとして許容できるシステム許容パワーから前記燃料電池の発電パワーを引いた偏差が値0を下回ったときに、前記偏差が値0となるように前記コンバータへの指令値を補正するコンバータ指令値補正部を備える燃料電池システム。
【0009】
適用例1に係る燃料電池システムによれば、燃料電池の間欠運転時において、高電位化回避閾値電圧以上になることが抑制され、さらに、この制御中において、システム許容パワーから燃料電池の発電パワーを引いた偏差が値0を下回ったときに、前記偏差が値0となるように電力制御がなされる。したがって、燃料電池の間欠運転時に高電位化回避のための発電を行ったときに、二次電池への充電が続くことで二次電池が過充電となることを防止することができる。
【0010】
[適用例2] 適用例1に記載の燃料電池システムであって、前記コンバータ指令値補正部は、前記燃料電池システムの要求パワーと、前記二次電池への充電パワー制限値とを加えて、前記システム許容パワーを求める構成を備える、燃料電池システム。
【0011】
適用例2に係る燃料電池システムによれば、システム許容パワーを高い精度で測定することができる。
【0012】
[適用例3] 適用例1または2に記載の燃料電池システムであって、前記燃料電池の出力電流または出力電圧を検出する出力検出部を備え、前記コンバータ指令値補正部は、前記偏差に基づくフィードバック制御を行うフィードバック制御部と、前記出力検出部により検出された出力電流または出力電圧が、前記燃料電池の電流−電圧曲線において折れ曲がり点に対していずれの位置にあるかを判定する判定部と、前記判定部の判定結果に基づいて、前記フィードバック制御のゲインを切り換えるゲイン切換部とを備える燃料電池システム。
【0013】
適用例3に係る燃料電池システムによれば、電流−電圧曲線における折れ曲がり点の前後でフィードバック制御におけるゲインを切り替えることができることから、フィードバック制御の制御性を高めることができる。
【0014】
[適用例4] 燃料電池と二次電池を備え、負荷への電力供給を行なう燃料電池システムであって、前記燃料電池の出力電圧を制御するコンバータと、間欠運転時に、前記コンバータへの指令値を制御して、前記燃料電池の出力電圧が当該燃料電池の開放電圧よりも低い所定の高電位化回避閾値電圧以上になることを抑制する高電位回避制御部とを備え、前記高電位回避制御部は、前記二次電池の上限電圧から前記二次電池の出力電圧を引いた偏差が値0を下回ったときに、前記偏差が値0となるように前記コンバータへの指令値を補正するコンバータ指令値補正部を備える燃料電池システム。
【0015】
適用例4に係る燃料電池システムによれば、燃料電池の間欠運転時において、高電位化回避閾値電圧以上になることが抑制され、さらに、この制御中において、二次電池の上限電圧から二次電池の出力電圧を引いた偏差が値0を下回ったときに、前記偏差が値0となるように電力制御がなされる。したがって、燃料電池の間欠運転時に高電位化回避のための発電を行ったときに、二次電池への充電が続くことで二次電池が過充電となることを防止することができる。
【0016】
[適用例5] 燃料電池と二次電池を備え、負荷への電力供給を行なう燃料電池システムであって、前記燃料電池の出力電圧を制御するコンバータと、間欠運転時に、前記コンバータへの指令値を制御して、前記燃料電池の出力電圧が当該燃料電池の開放電圧よりも低い所定の高電位化回避閾値電圧以上になることを抑制する高電位回避制御部とを備え、前記高電位回避制御部は、前記二次電池の下限電流から前記二次電池の出力電流を引いた偏差が値0を上回ったときに、前記偏差が値0となるように前記コンバータへの指令値を補正するコンバータ指令値補正部を備える燃料電池システム。
【0017】
適用例5に係る燃料電池システムによれば、燃料電池の間欠運転時において、高電位化回避閾値電圧以上になることが抑制され、さらに、この制御中において、二次電池の下限電流から二次電池の出力電流を引いた偏差が値0を上回ったときに、その偏差が値0となるように電力制御がなされる。したがって、燃料電池の間欠運転時に高電位化回避のための発電を行ったときに、二次電池への充電が続くことで二次電池が過充電となることを防止することができる。
【0018】
[適用例6] 燃料電池と二次電池を備え、負荷への電力供給を行なう燃料電池システムであって、前記燃料電池の出力電圧を制御するコンバータと、前記燃料電池の出力要求電力から前記燃料電池の発電電力を引いた偏差に基づいて、前記コンバータへの指令値の補正量をフィードバック制御し、前記補正量を前記コンバータへの指令値に加えるコンバータ指令値補正部とを備え、前記コンバータ指令値補正部は、前記出力検出部により検出された出力電流または出力電圧が、前記燃料電池の電流−電圧曲線において折れ曲がり点に対していずれの位置にあるかを判定する判定部と、前記判定部の判定結果に基づいて、前記フィードバック制御のゲインを切り換えるゲイン切換部とを備える燃料電池システム。
【0019】
適用例6に係る燃料電池システムによれば、燃料電池の発電電力を出力要求電力に一致させることができ、さらに、電流−電圧曲線における折れ曲がり点の前後でフィードバック制御におけるゲインを切り替えることができることから、フィードバック制御の制御性を高めることができる。
【0020】
さらに、本発明は、上記適用例1ないし6以外の種々の形態で実現可能であり、例えば、本発明の燃料電池システムに備えられる各部の動作を行う工程を備える制御方法などの形態で実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施例としての燃料電池システム100の要部構成を示すシステム構成図である。
【図2】間欠運転時におけるFC要求電圧Vrf、FC発電パワーPfc、およびシステム許容パワーPsyの時間変化を示すタイミングチャートである。
【図3】コンバータ指令電圧出力部12を示すブロック図である。
【図4】第2実施例におけるコンバータ指令電圧出力部300を示す説明図である。
【図5】第3実施例におけるコンバータ指令電圧出力部400を示す説明図である。
【図6】第4実施例におけるコンバータ指令電圧出力部500を示す説明図である。
【図7】I−V曲線の一例を示すグラフである。
【図8】第5実施例におけるコンバータ指令電圧出力部600を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら、実施例に基づき説明する。
【0023】
A.第1実施例:
A−1.燃料電池システムの構成:
図1は、本発明の第1実施例としての燃料電池システム100の要部構成を示すシステム構成図である。本実施例では、燃料電池自動車(FCHV;Fuel Cell Hybrid Vehicle)、電気自動車、ハイブリッド自動車などの車両に搭載される燃料電池システムを想定するが、車両のみならず各種移動体(例えば、二輪車や船舶、飛行機、ロボットなど)にも適用可能である。さらに、移動体に搭載された燃料電池システムに限らず、定置型の燃料電池システムや携帯型の燃料電池システムにも適用可能である。
【0024】
この車両は、減速ギア62を介して車輪63L、63Rに連結されたトラクションモータ61を駆動力源として走行する。トラクションモータ61の電源は、電源システム1である。電源システム1から出力される直流は、インバータ60で三相交流に変換され、トラクションモータ61に供給される。トラクションモータ61は制動時に発電機としても機能することができる。電源システム1は、燃料電池40、バッテリ20、DC/DCコンバータ30などから構成される。
【0025】
燃料電池40は、供給される反応ガス(燃料ガス及び酸化剤ガス)から電力を発生する手段であり、固体高分子型、燐酸型、溶融炭酸塩型など種々のタイプの燃料電池を利用することができる。燃料電池40は、フッ素系樹脂などで形成されたプロトン伝導性のイオン交換膜などから成る高分子電解質膜41を備え、高分子電解質膜の表面には白金触媒(電極触媒)が塗布されている。
【0026】
なお、高分子電解質膜41に塗布する触媒は白金触媒に限らず、白金コバルト触媒(以下、単に触媒という)などにも適用可能である。燃料電池40を構成する各セルは、高分子電解質膜41の両面にアノード極42とカソード極43とをスクリーン印刷などで形成した膜・電極接合体44を備えている。燃料電池40は、複数の単セルを直列に積層したスタック構造を有している。
【0027】
燃料電池40の出力電圧(以下、FC電圧)及び出力電流(以下、FC電流)は、それぞれ電圧センサ92および電流センサ93によって検出される。燃料電池40の燃料極(アノード)には、燃料ガス供給源70から水素ガスなどの燃料ガスが供給される一方、酸素極(カソード)には、酸化剤ガス供給源80から空気などの酸化剤ガスが供給される。
【0028】
燃料ガス供給源70は、例えば水素タンクや様々な弁などから構成され、弁開度やON/OFF時間などを調整することにより、燃料電池40に供給する燃料ガス量を制御する。また、燃料電池40には、図示しない冷却水通路により冷却水が供給されており、この冷却水通路には、燃料電池40の温度(以下、「FC温度」と呼ぶ)を検出する温度センサ96が設けられている。
【0029】
酸化剤ガス供給源80は、例えばエアコンプレッサやエアコンプレッサを駆動するモータ、インバータなどから構成され、該モータの回転数などを調整することにより、燃料電池40に供給する酸化剤ガス量を調整する。
【0030】
バッテリ20は、充放電可能な二次電池であり、例えばニッケル水素バッテリなどにより構成されている。もちろん、バッテリ20の代わりに二次電池以外の充放電可能なあらゆる蓄電器(例えばキャパシタ)を設けても良い。このバッテリ20は、燃料電池40の放電経路に介挿され、燃料電池40と並列に接続されている。バッテリ20と燃料電池40とはトラクションモータ用のインバータ60に並列接続されており、バッテリ20とインバータ6の間にはDC/DCコンバータ30が設けられている。
【0031】
バッテリ20の出力電圧(以下、バッテリ電圧)及び出力電流(以下、バッテリ電流)は、それぞれ電圧センサ94および電流センサ95によって検出される。
【0032】
インバータ60は、例えば複数のスイッチング素子によって構成されたパルス幅変調方式のPWMインバータであり、制御装置10から与えられる制御指令に応じて燃料電池40またはバッテリ20から出力される直流電力を三相交流電力に変換し、トラクションモータ61へ供給する。トラクションモータ61は、車輪63L、63Rを駆動するためのモータであり、かかるモータの回転数はインバータ60によって制御される。
【0033】
DC/DCコンバータ30は、例えば4つのパワー・トランジスタと専用のドライブ回路(いずれも図示略)によって構成されたフルブリッジ・コンバータである。DC/DCコンバータ30は、バッテリ20から入力されたDC電圧を昇圧または降圧して燃料電池40側に出力する機能、燃料電池40などから入力されたDC電圧を昇圧または降圧してバッテリ20側に出力する機能を備えている。また、DC/DCコンバータ30の機能により、バッテリ20の充放電が実現される。
【0034】
バッテリ20とDC/DCコンバータ30の間には、車両補機やFC補機などの補機類50が接続されている。バッテリ20は、これら補機類50の電源となる。なお、車両補機とは、車両の運転時などに使用される種々の電力機器(照明機器、空調機器、油圧ポンプなど)をいい、FC補機とは、燃料電池40の運転に使用される種々の電力機器(燃料ガスや酸化剤ガスを供給するためのポンプなど)をいう。
【0035】
上述した各要素の運転は制御装置(制御部)10によって制御される。制御装置10は、内部にCPU、ROM、RAMを備えたマイクロコンピュータを備える。
【0036】
制御装置10は、入力される各センサ信号に基づいて燃料ガス通路に設けられた調圧弁71や酸化剤ガス通路に設けられた調圧弁81、燃料ガス供給源70、酸化剤ガス供給源80、バッテリ20、DC/DCコンバータ30、インバータ60など、システム各部を制御する。制御装置10には、例えば圧力センサ91によって検知される燃料ガスの供給圧力、電圧センサ92によって検知されるFC電圧、電流センサ93によって検知されるFC電流、電圧センサ94によって検知されるバッテリ電圧、電流センサ95によって検知されるバッテリ電流、温度センサ96によって検知されるFC温度、SOCセンサ21によって検知されるバッテリ20の充電状態SOC(State Of Charge)をあらわすSOC値など、種々のセンサ信号が入力される。
【0037】
本実施例の燃料電池システム100では、燃費を向上させるために、アイドリング時や低速走行時、回生制動時のような低負荷運転時に燃料電池40の発電を一時的に停止させ、バッテリ20から負荷(トラクションモータ61等)に電力を供給させる間欠運転を行っている。この間欠運転は、制御装置10によって、燃料ガス通路に設けられた調圧弁71や酸化剤ガス通路に設けられた調圧弁81を閉じて、燃料電池40への反応ガスの供給を停止することにより行われる。
【0038】
さらに、本実施例の燃料電池システム100では、間欠運転時(詳細には、間欠運転の際の停止時、以下同様)に、燃料電池40の耐久性向上などを目的に、燃料電池40の発電が強制的に実施されている。すなわち、制御装置10は、間欠運転時に、DC/DCコンバータ30へ燃料電池要求電圧(以下、「FC要求電圧」と呼ぶ)を指令することで、燃料電池40の発電を強制的に実施している。なお、この強制的な発電により生じるパワー(電力、以下同じ)を、バッテリ20に蓄電させる。
【0039】
図2は、間欠運転時におけるFC要求電圧Vrf、FC発電パワーPfc、およびシステム許容パワーPsyの時間変化を示すタイミングチャートである。なお、システム許容パワーPsyは、燃料電池システム100において消費または蓄電することにより、燃料電池システム100内で最大限利用しうる電力である。
【0040】
図示するように、間欠運転時におけるFC要求電圧Vrfは、高電位化回避閾値電圧(以下、「閾値電圧」と呼ぶ)Vthを下回る所定の電圧Vcである。ここで、閾値電圧Vthは、燃料電池40の開放電圧よりも低い電圧であり、予め実験などにより求められ、製造出荷時などに制御装置10の内部メモリ11に格納される。すなわち、FC要求電圧Vrfが閾値電圧Vth以上となると、燃料電池40は高電位化状態となる。なお、閾値電圧Vthは固定値としても良いが、例えば周囲環境(外気温度や燃料電池温度、湿度、運転モードなど)に応じて逐次書き換え可能な値としても良い。FC要求電圧として、閾値電圧Vthからどの値まで下げるかは任意に設定可能である。
【0041】
一方、図2に示すように、間欠運転時におけるシステム許容パワーPsyは、図中の1点鎖線に示すように、時間経過と共に徐々に低下する。これは、時間経過と共にFC発電パワーPfcが積算されるためである。同図のt1時点以降においては、FC発電パワーPfcはシステム許容パワーPsyを上回ることになる。すなわち、t1時点以降、FC発電パワーPfcは、バッテリ20で吸収不可能な状態となる。
【0042】
そこで、本実施例では、t1時点以降、FC発電パワーPfcが、図中の2点鎖線に示すように、システム許容パワーPsyに追随して低下するようにしている。なお、図中の2点鎖線は、システム許容パワーPsyを示す1点鎖線と若干ずれているが、これは図示の都合のためであり、実際には、FC発電パワーPfcはシステム許容パワーPsyと一致するように制御される。具体的には、制御装置10は、コンバータ指令電圧出力部12(図1)を備え、このコンバータ指令電圧出力部12により、上記のFC発電パワーPfcの低下がなされる。
【0043】
A−2.コンバータ指令電圧出力部の構成:
図3は、コンバータ指令電圧出力部12を示すブロック図である。図示するように、コンバータ指令電圧出力部12は、FC要求電圧算出部110と、FC要求電圧補正部201とを備える。なお、FC要求電圧算出部110およびFC要求電圧補正部201は、本実施例では、ディスクリートな電子部品により構成されているものとするが、これに換えて、制御装置10に備えられるCPUで実行される制御処理により構成するようにしてもよい。
【0044】
FC要求電圧算出部110は、燃料電池40に対する要求パワーを算出し、不図示のI−V特性及びI−P特性をあらわす特性マップを利用して、要求パワーに応じた燃料電池40の出力電圧をFC要求電圧Vrfとして算出するユニットである。要求パワーとしては、例えばトラクションモータ61や補機類50を駆動するための電力である。特性マップは、予め実験などにより求められ、製造出荷時などに制御装置10の内部メモリ11に格納される。また、FC要求電圧算出部110は、間欠運転時には、燃料電池40に対する要求パワーに拘わらず(すなわち、要求パワーがゼロの場合にも)、前述した高電位化回避閾値電圧Vthを下回る所定電圧Vcを、FC要求電圧Vrfとして算出する。
【0045】
FC要求電圧補正部201は、FC要求電圧算出部110により算出されたFC要求電圧Vrfを補正するための電圧補正値を算出するユニットである。FC要求電圧補正部201は、FC発電パワー算出部210と、システム許容パワー算出部220と、減算部230と、駆動条件判定部240と、PID制御部250とを備える。なお、各部210〜250は、燃料電池40の間欠運転時において実現される構成であり、間欠運転時でない通常運転時には別の構成となる。この別の構成については、本実施例では説明を省略する。
【0046】
FC発電パワー算出部210は、電圧センサ92により検出されたFC電圧と、電流センサ93により検出されたFC電流とに基づいて、FC発電パワーPfcを算出する。
【0047】
システム許容パワー算出部220は、燃料電池システム100のシステム許容パワーPsyを算出するユニットである。一般には、システム許容パワーPsyは、燃料電池システム100の要求パワーと、バッテリ20への充電パワー制限値との合計である。燃料電池システム100の要求パワーは、例えば、トラクションモータ61、補機類50等の燃料電池システム100において要求されるあらゆる電力を含む。バッテリ20への充電パワー制限値は、バッテリ20に最大限充電可能な電力である。燃料電池システム100の要求パワーおよびバッテリ20への充電パワー制限値の各求め方については、周知であることから、ここでは説明は省略する。
【0048】
なお、システム許容パワーPsyは、前述したように、燃料電池システム100の要求パワーと、バッテリ20への充電パワー制限値とを加えて求めていたが、これに換えて、例えば、上記要求パワーと充電パワー制限値との和に他の電力量をさらに加えて求めてもよい。要は、燃料電池システム100全体で許容できるパワー(電力量)であれば、いずれの求め方としてもよい。
【0049】
FC発電パワー算出部210で求められたFC発電パワーPfcと、システム許容パワー算出部220で求められたシステム許容パワーPsyとは、減算部230へ送られ、システム許容パワーPsyからFC発電パワーPfcを引いた偏差Dが求められる。偏差Dは、駆動条件判定部240とPID制御部250にそれぞれ送られる。
【0050】
駆動条件判定部240は、偏差Dに基づいてPID制御部250を駆動するか否かの判定を行い、判定結果に応じた制御指令SをPID制御部250に送る。詳細には、駆動条件判定部240は、偏差Dが値0以下であるときに、駆動を許可する旨の制御指令Sを出力し、偏差Dが値0を上回るときに、駆動を禁止する制御指令Sを出力する。なお、偏差Dが値0より小さくなった(値0を下回った)ときに、駆動を許可する旨の制御指令Sを出力する構成とすることもできる。
【0051】
PID制御部250は、駆動条件判定部240から駆動を許可する旨の制御指令Sを受信したときに、偏差Dを入力としてPID制御を行うことにより、目標値であるシステム許容パワーPsyに、制御対象であるFC発電パワーPfcを一致させるための操作量である電圧補正値MVを算出する。なお、PID制御部250は、駆動条件判定部240から駆動を禁止する旨の制御指令Sを受信したときには、電圧補正値MVを値0とする。
【0052】
なお、PID制御部250は、比例制御だけのP制御を行うP制御部、比例積分制御のPI制御を行うPI制御部、比例微分制御のPD制御を行うPD制御部等の種々のフィードバック制御部に換えることができる。さらに、偏差Dを値0に一致させる制御を行う制御部であれば、いずれの制御部に換えることもできる。
【0053】
FC要求電圧算出部110で求められたFC要求電圧Vrfと、FC要求電圧補正部201で求められた電圧補正値MVとは、加算部115へ送られ加算され、加算結果はコンバータ指令電圧として、DC/DCコンバータ30(図1)へ送られる。この結果、DC/DCコンバータ30は、電圧補正値MVが加算されたFC要求電圧Vrfに従うように、燃料電池40の出力を制御することができる。電圧補正値MVは、前述したように、システム許容パワーPsyにFC発電パワーPfcを一致させるための操作量であることから、燃料電池40の発電パワーPfcは、システム許容パワーPsyと一致する。なお、上記のパワーPfc、Psyの一致は、駆動条件判定部240で、偏差Dが値0以下であると判定されて、PID制御部250が駆動されたときのものである。
【0054】
したがって、コンバータ指令電圧出力部12によれば、図2で示したt1時点以降において、システム許容パワーPsyの低下に追随して、FC発電パワーPfcは低下することになる。
【0055】
A−3.実施例効果:
以上のように構成された第1実施例の燃料電池システム100によれば、燃料電池40の間欠運転時において、燃料電池40の出力電圧が、高電位化回避閾値電圧Vth以上になることが抑制される。さらに、この抑制の最中に、燃料電池40の発電パワーPfcがシステム許容パワーPsyを上回らないように電力制御がなされる。したがって、燃料電池40の間欠運転時に高電位化回避のための発電を行ったときに、バッテリ20への充電が続くことでバッテリ20が過充電となることを防止することができる。
【0056】
B.第2実施例:
本発明の第2実施例について説明する。第2実施例の燃料電池システムは、第1実施例の燃料電池システム100と比較して、コンバータ指令電圧出力部に設けられたFC要求電圧補正部の構成が相違するだけであり、その他の構成は同一である。なお、第1実施例と同一の部分には第1実施例と同じ符号を付けた。
【0057】
図4は、第2実施例におけるコンバータ指令電圧出力部300を示す説明図である。第1実施例におけるFC要求電圧補正部201では、システム許容パワーPsyからFC発電パワーPfcを引いた偏差Dを求めているが、これに換えて、図4に示すように、第2実施例におけるコンバータ指令電圧出力部300に設けられたFC要求電圧補正部301では、バッテリ上限電圧からバッテリ電圧を引いた偏差Dbvを減算部330により求めている。ここで、バッテリ上限電圧は、バッテリ20の上限電圧値であり、予め実験などにより求められた値である。なお、バッテリ上限電圧は、図示しない温度センサにより検出されたバッテリ温度に基づいて温度補正された所定値としてもよい。バッテリ電圧は、電圧センサ94で検出されたバッテリ20の出力電圧である。
【0058】
この偏差Dbvを用いて第1実施例と同様に、PID制御部350でPID制御を行う。なお、駆動条件判定部340は、偏差Dbvが値0以下であるときに、駆動を許可する旨の制御指令SをPID制御部350に出力し、偏差Dbvが値0を上回るときに、駆動を禁止する制御指令SをPID制御部350に出力する。なお、偏差Dbvが値0より小さくなった(値0を下回った)ときに、駆動を許可する旨の制御指令Sを出力する構成とすることもできる。
【0059】
以上のように構成された第2実施例の燃料電池システムによれば、燃料電池40の間欠運転時において、第1実施例と同様に、高電位化回避閾値電圧以上になることが抑制されるとともに、この抑制の最中に、バッテリ電圧がバッテリ上限電圧を上回らないように電力制御がなされる。したがって、燃料電池40の間欠運転時に高電位化回避のための発電を行ったときに、バッテリ20への充電が続くことでバッテリ20が過充電となることを防止することができる。
【0060】
C.第3実施例:
本発明の第3実施例について説明する。第3実施例の燃料電池システムは、第1実施例の燃料電池システム100と比較して、コンバータ指令電圧出力部に設けられたFC要求電圧補正部の構成が相違するだけであり、その他の構成は同一である。なお、第1実施例と同一の部分には第1実施例と同じ符号を付けた。
【0061】
図5は、第3実施例におけるコンバータ指令電圧出力部400を示す説明図である。第1実施例におけるFC要求電圧補正部200では、システム許容パワーPsyからFC発電パワーPfcを引いた偏差Dを求めているが、これに換えて、図4に示すように、第3実施例におけるコンバータ指令電圧出力部400に設けられたFC要求電圧補正部401では、バッテリ下限電流からバッテリ電流を引いた偏差Dbiを減算部430により求めている。バッテリ下限電流は、バッテリ20の下限電流値であり、バッテリ20の最大充電電流量である。ここでは、バッテリ下限電流は予め実験などにより求めた値である。バッテリ電流は、電流センサ95で検出されたバッテリ20の出力電流である。
【0062】
この偏差Dbiを用いて第1実施例と同様に、PID制御部450でPID制御を行う。なお、駆動条件判定部440は、偏差Dbiが値0以上であるときに、駆動を許可する旨の制御指令SをPID制御部450に出力し、偏差Dbiが値0を下回るときに、駆動を禁止する制御指令SをPID制御部450に出力する。なお、偏差Dbiが値0より大きくなった(値0を上回った)ときに、駆動を許可する旨の制御指令Sを出力する構成とすることもできる。
【0063】
以上のように構成された第3実施例の燃料電池システムによれば、燃料電池40の間欠運転時において、第1実施例と同様に、高電位化回避閾値電圧以上になることが抑制されるとともに、この抑制の最中に、バッテリ電流がバッテリ下限電流を下回わらないように電力制御がなされる。したがって、燃料電池40の間欠運転時に高電位化回避のための発電を行ったときに、バッテリ20への充電が続くことでバッテリ20が過充電となることを防止することができる。
【0064】
D.第4実施例:
本発明の第4実施例について説明する。第4実施例の燃料電池システムは、第1実施例の燃料電池システム100と比較して、コンバータ指令電圧出力部に設けられたFC要求電圧補正部の構成が相違するだけであり、その他の構成は同一である。なお、第1実施例と同一の部分には第1実施例と同じ符号を付けた。
【0065】
図6は、第4実施例におけるコンバータ指令電圧出力部500を示す説明図である。コンバータ指令電圧出力部500に設けられたFC要求電圧補正部501は、第1実施例におけるFC要求電圧補正部200に備えられる各部210〜250を備え、さらに、折れ曲がり点推定部560およびゲイン切換部570を備える。なお、PID制御部250については、第1実施例と同じ符号を付けたが、厳密には次の点が相違する。第1実施例におけるPID制御部250では、ゲイン(Pゲイン、Iゲイン)は一定値であったが、これに換えて本実施例では、ゲイン指示信号GSを受けて、ゲイン指示信号GSに応じたゲイン(Pゲイン、Iゲイン)に切り換わる。
【0066】
折れ曲がり点推定部560は、温度センサ96によって検出されたFC温度を取り込んで、燃料電池40の電流−電圧特性を示す曲線(以下、I−V曲線と呼ぶ)における折れ曲がり点をFC温度に基づいて推定する。
【0067】
図7は、I−V曲線の一例を示すグラフである。グラフの横軸がFC電流Iであり、縦軸がFC電圧Vである。I−V曲線は、電流Iが大きくなるにつれて電圧Vは小さくなる。I−V曲線には、図示するように曲率が極大値をとる折れ曲り点Xが存在する。折れ曲がり点推定部560は、この折れ曲り点Xがどの位置(I0、V0)にあるかを推定する。
【0068】
I−V曲線は、FC温度によって変化することから、予め実験などにより各温度に応じたI−V曲線を求めることで、温度毎の折れ曲がり点X(I0、V0)を推定することができる。折れ曲がり点推定部560では、温度毎の折れ曲がり点X(I0、V0)を予め記憶しておくことで、温度センサ96によって検出されたFC温度に基づく折れ曲がり点X(I0、V0)を求める。なお、折れ曲がり点Xは、電流Iと電圧Vとで示されるが、これに換えて、電圧Vだけで示される値、すなわちX(V0)としてもよい。
【0069】
ゲイン切換部570は、電圧センサ92によって検出されたFC電圧と、折れ曲がり点推定部560により求められた折れ曲がり点Xを取り込んで、PID制御部250で用いるゲイン(Pゲイン、Iゲイン)を選択的に切り換える。
【0070】
ゲイン切換部570は、第1のPゲイン値と第1のIゲイン値とを記憶する第1メモリ571と、第2のPゲイン値と第2のIゲイン値とを記憶する第2メモリ572とを備える。第1のPゲイン値と第1のIゲイン値との組合せは、PID制御におけるゲインを上げる方向のものであり、第2のPゲイン値と第2のIゲイン値との組合せは、PID制御におけるゲインを下げる方向のものである。
【0071】
ゲイン切換部570は、FC電圧が、折れ曲がり点Xの電圧値V0以上であるか否かを判定し、FC電圧が電圧値V0以上であると判定された場合に、第1メモリ571から第1のPゲイン値と第1のIゲイン値とを取り出し、両値をゲイン指示信号GSとしてPID制御部250に送る。一方、FC電圧が電圧値V0を下回ると判定された場合に、第2メモリ572から第2のPゲイン値と第2のIゲイン値とを取り出し、両値をゲイン指示信号GSとしてPID制御部250に送る。この結果、FC電圧が折れ曲がり点Xの電圧値V0以上であるときには、PID制御におけるゲインは上げる方向に変更され、FC電圧が折れ曲がり点Xの電圧値V0を下回るときには、PID制御におけるゲインは下げる方向に変更される。PID制御のゲインを変更する構成としたのは、次の理由による。
【0072】
図7において、横軸を電流IからパワーPに置き換えたとき、I−P曲線は、図中のI−V曲線と同じ変化を示す。図7に示すように、所定のパワー変化量ΔPに対する電圧変化を考えたとき、FC電圧が折れ曲がり点Xの電圧値V0以上であるときの電圧変化ΔV1の方が、FC電圧が折れ曲がり点Xの電圧値V0を下回るときの電圧変化ΔV2より大きくなる。PID制御部250で実行されるPID制御は、第1実施例で説明したように、システム許容パワーPsyとFC発電パワーPfcとを用いたいわゆる電力偏差を値0とするものであることから、上記電圧変化ΔV1、ΔV2から判るように、折れ曲がり点Xの前後(折れ曲がり点Xより大きい電圧か否か)で電力偏差に対する電圧補正値が異なったものとなる。このため、PID制御の制御性が悪化する。そこで、上記のように、折れ曲がり点Xの前(折れ曲がり点Xより大きい電圧)でPID制御におけるゲインを上げ、折れ曲がり点Xの後ろ(折れ曲がり点Xより小さい電圧)でPID制御におけるゲインを下げることにより、PID制御の制御性を高めた。
【0073】
したがって、第4実施例の燃料電池システムによれば、第1実施例と同一の効果を奏し、さらに、電力制御の制御性を高めることができる。
【0074】
なお、前記第4実施例の燃料電池システムは、次の(1)〜(4)に示すように変形することができる。
【0075】
(1)第4実施例では、FC電圧を折れ曲がり点Xの電圧値V0と比較することにより、I−V曲線において折れ曲がり点Xに対していずれの位置にあるかを判定しているが、これに換えて、FC電流を折れ曲がり点Xの電流値I0と比較することにより、I−V曲線において折れ曲がり点Xに対していずれの位置にあるかを判定する構成としてもよい。
【0076】
(2)第4実施例では、FC温度に基づいて折れ曲がり点Xを求める構成としたが、これに換えて、電圧センサ92によって検知されたFC電圧と電流センサ93によって検知されたFC電流とに基づいて、燃料電池のインピーダンス値を求め、そのインピーダンス値に基づいて折れ曲がり点Xを求める構成としてもよい。燃料電池のインピーダンス値により、燃料電池の抵抗過電圧による電圧降下量(燃料電池内の含水量に比例)が分かり、I−V曲線における折れ曲がり点Xを推定できる。
【0077】
(3)第4実施例では、折れ曲がり点推定部560により折れ曲がり点Xを推定し、その得られた折れ曲がり点とFC電圧と比較することにより、折れ曲がり点に対していずれの位置にあるかを判定する構成としたが、これに換えて、電圧センサ92によって検知されるFC電圧と電流センサ93によって検知されるFC電流とに基づいて、電流の変化に対する電圧の変化を示す微分抵抗dV/dIを求め、その微分抵抗dV/dIに基づいて、折れ曲がり点Xに対していずれの位置にあるかを判定する構成としてもよい。すなわち、予め実験などにより微分抵抗がどの程度大きくなったときに折れ曲がり点Xとなるかを求めておいて、前記微分抵抗dV/dIと上記求めた大きさとを比較することにより、折れ曲がり点Xに対していずれの位置にあるかを判定する。
【0078】
(4)第4実施例では、PID制御により電圧を制御する構成において、FC電圧が折れ曲がり点Xの電圧値V0以上であるときに、PID制御におけるゲインを上げる方向に変更し、FC電圧が電圧値V0を下回るときに、PID制御におけるゲインを下げる方向に変更する構成としたが、これに換えて、PID制御により電流を制御する構成とし、FC電圧が折れ曲がり点Xの電圧値V0以上であるときに、PID制御におけるゲインを下げる方向に変更し、FC電圧が折れ曲がり点Xの電圧値V0を下回るときには、PID制御におけるゲインを上げる方向に変更する構成とすることができる。
【0079】
E.第5実施例:
本発明の第5実施例について説明する。第5実施例の燃料電池システムは、第4実施例の燃料電池システムと比較して、コンバータ指令電圧出力部に設けられたFC要求電圧補正部の構成が相違するだけであり、その他の構成は同一である。なお、第4実施例と同一の部分には第1実施例と同じ符号を付けた。
【0080】
図8は、第5実施例におけるコンバータ指令電圧出力部600を示す説明図である。コンバータ指令電圧出力部600に設けられたFC要求電圧補正部601は、第4実施例におけるFC要求電圧補正部501と比較して、FC発電パワー算出部210、減算部230、PID制御部250、折れ曲がり点推定部560、およびゲイン切換部570を備える点で一致し、次のi)〜iii)の点で相違する。
【0081】
すなわち、i)第4実施例におけるFC要求電圧補正部501の内部構成は間欠運転時に実現される構成であるのに対して、第5実施例におけるFC要求電圧補正部601の内部構成は通常運転時に実現される構成であること、ii)第4実施例ではシステム許容パワー算出部220が設けられているのに対して、第5実施例ではFC要求パワー算出部620が設けられていること、iii)第4実施例では駆動条件判定部240が設けられているのに対して、第5実施例では駆動条件判定部が設けられていないことで、両者は相違する。
【0082】
FC要求パワー算出部620は、燃料電池40の出力要求パワーPrfを算出するユニットである。詳細には、トラクションモータ61に設けられた回転数検知センサ(図示せず)やアクセルペダル開度を検出するアクセルペダルセンサ(図示せず)等から送出される各センサ信号に基づいて、燃料電池40の出力要求パワーを算出する。
【0083】
上記構成の第5実施例におけるコンバータ指令電圧出力部600によれば、燃料電池の出力要求パワーPrfから燃料電池の発電パワーPfcを引いた偏差に基づいて、電圧補正値MVをPID制御する。したがって、燃料電池の通常運転時において、燃料電池の発電パワーPfcを出力要求パワーPrfに一致させることができる。さらに、第5実施例の燃料電池システムにおいては、第4実施例と同様に、I−V曲線における折れ曲がり点Xの前後でPID制御におけるゲインを切り替えることができることから、PID制御の制御性を高めることができる。
【0084】
F.他の実施形態:
この発明は第1ないし第5実施例やそれらの変形例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0085】
・第1変形例:
前記第1ないし第5実施例やそれらの変形例では、電圧指令値であるFC要求電圧をコンバータに出力する構成であったが、これに換えて、電流指令値をコンバータに出力する構成としてもよい。この場合には、PID制御部から出力される補正値は、電圧補正値MVに換えて、電流補正値となる。この構成によっても、前記実施例と同様な効果を奏することができる。
【0086】
・第2変形例:
また、前記実施例および変形例とは異なる種類の燃料電池に本発明を適用することとしてもよい。例えば、ダイレクトメタノール型燃料電池に適用することができる。あるいは、固体高分子以外の電解質層を有する燃料電池であってもよく、本発明を適用することで同様の効果が得られる。
【0087】
なお、前述した実施例および各変形例における構成要素の中の、独立請求項で記載された要素以外の要素は、付加的な要素であり、適宜省略可能である。また、本発明はこれらの実施例および各変形例になんら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において種々の態様での実施が可能である。
【符号の説明】
【0088】
1…電源システム
6…インバータ
10…制御装置
11…内部メモリ
12…コンバータ指令電圧出力部
20…バッテリ
40…燃料電池
41…高分子電解質膜
42…アノード極
43…カソード極
44…電極接合体
50…補機類
60…インバータ
61…トラクションモータ
62…減速ギア
63L、63R…車輪
70…燃料ガス供給源
71…調圧弁
80…酸化剤ガス供給源
81…調圧弁
91…圧力センサ
92…電圧センサ
93…電流センサ
94…電圧センサ
95…電流センサ
96…温度センサ
100…燃料電池システム
115…加算部
200…コンバータ指令電圧出力部
201…FC要求電圧補正部
220…システム許容パワー算出部
230…減算部
240…駆動条件判定部
250…PID制御部
300…コンバータ指令電圧出力部
301…FC要求電圧補正部
330…減算部
340…駆動条件判定部
350…PID制御部
400…コンバータ指令電圧出力部
401…FC要求電圧補正部
430…減算部
440…駆動条件判定部
450…PID制御部
500…コンバータ指令電圧出力部
501…FC要求電圧補正部
560…折れ曲がり点推定部
570…ゲイン切換部
571…第1メモリ
572…第2メモリ
600…コンバータ指令電圧出力部
601…FC要求電圧補正部
620…FC要求パワー算出部
D…偏差
Psy…システム許容パワー
Pfc…FC発電パワー
Vrf…FC要求電圧
MV…電圧補正値
GS…ゲイン指示信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池と二次電池を備え、負荷への電力供給を行なう燃料電池システムであって、
前記燃料電池の出力電圧を制御するコンバータと、
間欠運転時に、前記コンバータへの指令値を制御して、前記燃料電池の出力電圧が当該燃料電池の開放電圧よりも低い所定の高電位化回避閾値電圧以上になることを抑制する高電位回避制御部と
を備え、
前記高電位回避制御部は、
前記燃料電池システムとして許容できるシステム許容パワーから前記燃料電池の発電パワーを引いた偏差が値0を下回ったときに、前記偏差が値0となるように前記コンバータへの指令値を補正するコンバータ指令値補正部を備える燃料電池システム。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料電池システムであって、
前記コンバータ指令値補正部は、
前記燃料電池システムの要求パワーと、前記二次電池への充電パワー制限値とを加えて、前記システム許容パワーを求める構成を備える、燃料電池システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の燃料電池システムであって、
前記燃料電池の出力電流または出力電圧を検出する出力検出部を備え、
前記コンバータ指令値補正部は、
前記偏差に基づくフィードバック制御を行うフィードバック制御部と、
前記出力検出部により検出された出力電流または出力電圧が、前記燃料電池の電流−電圧曲線において折れ曲がり点に対していずれの位置にあるかを判定する判定部と、
前記判定部の判定結果に基づいて、前記フィードバック制御のゲインを切り換えるゲイン切換部と
を備える燃料電池システム。
【請求項4】
燃料電池と二次電池を備え、負荷への電力供給を行なう燃料電池システムであって、
前記燃料電池の出力電圧を制御するコンバータと、
間欠運転時に、前記コンバータへの指令値を制御して、前記燃料電池の出力電圧が当該燃料電池の開放電圧よりも低い所定の高電位化回避閾値電圧以上になることを抑制する高電位回避制御部と
を備え、
前記高電位回避制御部は、
前記二次電池の上限電圧から前記二次電池の出力電圧を引いた偏差が値0を下回ったときに、前記偏差が値0となるように前記コンバータへの指令値を補正するコンバータ指令値補正部を備える燃料電池システム。
【請求項5】
燃料電池と二次電池を備え、負荷への電力供給を行なう燃料電池システムであって、
前記燃料電池の出力電圧を制御するコンバータと、
間欠運転時に、前記コンバータへの指令値を制御して、前記燃料電池の出力電圧が当該燃料電池の開放電圧よりも低い所定の高電位化回避閾値電圧以上になることを抑制する高電位回避制御部と
を備え、
前記高電位回避制御部は、
前記二次電池の下限電流から前記二次電池の出力電流を引いた偏差が値0を上回ったときに、前記偏差が値0となるように前記コンバータへの指令値を補正するコンバータ指令値補正部を備える燃料電池システム。
【請求項6】
燃料電池と二次電池を備え、負荷への電力供給を行なう燃料電池システムであって、
前記燃料電池の出力電圧を制御するコンバータと、
前記燃料電池の出力要求電力から前記燃料電池の発電電力を引いた偏差に基づいて、前記コンバータへの指令値の補正量をフィードバック制御し、前記補正量を前記コンバータへの指令値に加えるコンバータ指令値補正部と
を備え、
前記コンバータ指令値補正部は、
前記出力検出部により検出された出力電流または出力電圧が、前記燃料電池の電流−電圧曲線において折れ曲がり点に対していずれの位置にあるかを判定する判定部と、
前記判定部の判定結果に基づいて、前記フィードバック制御のゲインを切り換えるゲイン切換部と
を備える燃料電池システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2011−146326(P2011−146326A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−7906(P2010−7906)
【出願日】平成22年1月18日(2010.1.18)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】