説明

燃料電池車両

【課題】水素漏れが発生したときに水素が車室内に入り込むのを防止することができる燃料電池車両を提供する。
【解決手段】床下に設けられた燃料電池システム10を制御する燃料電池制御装置70は、ハーネスW1と接続され、貫通孔S2を介して床上に設けられた車両制御装置80と接続されている。また、水素供給配管13および水素排出配管14は、燃料電池11と水素タンク12との間に配置されている。貫通孔S2は、水素センサ30,31が水素漏れを検知したときに、遮断弁20が閉じるまでの時間内に、漏れた水素が貫通孔S2に到達しない位置に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接続ケーブルの配策構造を備えた燃料電池車両に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池自動車などでは、車両の床下に燃料電池システムを配置することが一般に行われている。この種の燃料電池自動車に設けられるセンサなどの各種電気部品は、床下において接続ケーブルを介して配策することが行われている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−125956号公報(段落0019、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、燃料電池自動車の車室内(床上)に車両制御装置(ECU)を配置した場合、床面に貫通穴を開けて接続ケーブルを配策する必要があるが、このような構成にすると燃料電池システムから水素漏れが発生したときにその貫通穴を介して水素が客室内に入り込むということが考えられる。このように、車室内に車両制御装置を配置したときの車両制御装置と燃料電池システムとの接続ケーブルの配策構造についてはこれまで検討が行われてこなかった。
【0004】
また、接続ケーブルが配策される貫通穴は樹脂製のグロメット等で接続ケーブルが損傷しないように保護され、またシールされて接続ケーブルを貫通させているが、この貫通穴のシール部分が経年劣化等によりシール性が低下することも考えられる。
【0005】
本発明は、前記従来の課題を解決するものであり、水素漏れが発生したときに水素が車室内に入り込むのを防止することができる燃料電池車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、車両の床下に、水素ガスと酸化剤ガスとの反応により発電する燃料電池、水素タンク、前記水素タンクから前記燃料電池へ水素ガスを供給する水素供給配管、および、前記燃料電池から排出される水素排ガスを排出する水素排出配管、を備えた燃料電池システムと、前記燃料電池システムを制御する燃料電池制御装置と、前記車両の床下に設けられ、水素漏れを検知する水素センサと、前記水素センサが水素漏れを検知したときに、少なくとも前記水素タンクから供給される水素ガスを遮断する遮断装置と、前記車両の床上に設けられ、前記燃料電池制御装置と第1接続ケーブルにより接続されて、前記車両の車両制御を行う車両制御装置と、を備え、前記水素供給配管および前記水素排出配管は、前記車両の前後方向において、前記燃料電池と前記水素タンクとの間に配置され、前記車両の床には、前記第1接続ケーブルが貫通して配策される貫通孔が形成され、前記貫通孔は、水素漏れが発生する可能性のある水素ガス流通領域から外れた位置に配置されていることを特徴とする。
【0007】
これによれば、漏れた水素は大気より軽く上方へ移動するので、水素漏れが発生する可能性のある、燃料電池と水素タンクとで挟まれる領域の上方に位置する床面に貫通孔を形成しないようにすることで、水素漏れが発生した場合でも、床上の客室内などに水素ガスが入り込むのを防止することができる。
【0008】
請求項2に係る発明は、前記貫通孔は、前記水素センサが前記燃料電池システムからの水素漏れを検知して前記遮断装置を遮断するまでの時間内に、漏れた水素ガスが到達しない位置に配置されていることを特徴とする。
【0009】
これによれば、床上(車室内)に配置された車両制御装置(ECU)と、床下に配置された燃料電池システムを制御する燃料電池制御装置(ECU)とを接続する際に床に第1接続ケーブルが貫通する貫通孔を形成する必要があるが、この貫通孔の位置が、水素漏れを検知したときに遮断装置が遮断するまでの時間内に、漏れた水素ガスが到達しない位置に設けられているので、水素漏れが発生した場合でも、床上の客室内などに水素ガスが入り込むのを防止することができる。
【0010】
請求項3に係る発明は、前記車両の前後方向において前記燃料電池システムの前方もしくは後方で前記車両の床下に設けられる電気部品と前記車両制御装置とを接続するケーブルとして、前記貫通孔を通って配策される前記第1接続ケーブルを介して前記燃料電池システムの前方もしくは後方に配策する第2接続ケーブルを備えたことを特徴とする。
【0011】
これによれば、燃料電池システムの前方もしくは後方に設けられる電気部品(例えば、12ボルトのバッテリ、ABS(Anti-lock Brake System)センサ)は、第2接続ケーブルから第1接続ケーブルを介して車両制御装置に接続されるので、車両制御装置と電気部品とをそれぞれ別々の接続ケーブルで配策するときよりも、部品点数を削減でき、重量、コスト、組み付け性、メンテナンス性の点において有利となる。
【0012】
請求項4に係る発明は、前記燃料電池システムを換気する換気手段を備え、前記貫通孔は、前記水素センサが前記燃料電池システムからの水素漏れを検知して前記換気手段が換気するまでの間に、漏れた水素ガスが到達しない位置に配置されていることを特徴とする。
【0013】
これによれば、漏れた水素ガスが貫通孔を介して床上の客室などに入り込むのを確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、水素漏れが発生したときに水素が車室内に入り込むのを防止することができる燃料電池車両を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は第1実施形態の燃料電池自動車の接続ケーブル配策構造を車両上方から見たときの概略図、図2は第1実施形態の燃料電池自動車の接続ケーブル配策構造を車両側面から見たときの概略図、図3は第1実施形態の燃料電池自動車に搭載される燃料電池システムの全体構成図である。
【0016】
図1に示すように、第1実施形態の燃料電池自動車1Aは、燃料電池システム10、水素センサ30,31、車輪速センサ40,41、換気ファン50、バッテリ60、燃料電池制御装置70、車両制御装置80などを含んで構成されている。
【0017】
前記燃料電池システム10は、燃料電池11、水素タンク12、水素供給配管13、水素排出配管14などで構成されている。
【0018】
前記燃料電池11は、固体高分子電解質膜をアノードとカソードとで挟み、さらに導電性のセパレータで挟んで構成した単セルを複数積層した構造を有している。また、アノードに対向するセパレータには、水素が流れる流路が形成され、カソードに対向するセパレータには、空気が流れる流路が形成されている。また、水素側および空気側の各セパレータの流路は、それぞれ貫通穴を介して連通している。
【0019】
前記水素タンク12は、高純度の水素を圧縮、充填して構成したものであり、例えば、車両の後輪2と後輪2との間に横置きの状態で配置されている。また、水素タンク12は、その出口に電磁作動式の遮断弁20を有している。
【0020】
前記水素供給配管13は、水素タンク12から燃料電池11に水素を供給する流路を構成し、一端が水素タンク12の遮断弁20に接続され、他端が燃料電池11のアノードの入口と接続されている。この入口は、燃料電池11の車両前後方向に対して後面に形成されている。
【0021】
前記水素排出配管14は、燃料電池11から排出された水素を含む水素オフガスが流れる流路を構成し、一端が燃料電池11のアノードの出口と接続され、他端が水素タンク12に向けて車両の後方へと延び、車外と連通している。なお、アノードの出口も、前記入口と同様に、燃料電池11の車両前後方向に対して後面に形成されている。
【0022】
また、燃料電池11は、後記する補機15とともに井桁状に組まれたサブフレーム3a上に固定され、サブフレーム3aがフロアパネル4(床面、メインフレーム)に取り付けられている。また、水素タンク12も同様に、サブフレーム3aとは別に設けられた、井桁状に組まれたサブフレーム3b上に固定され、サブフレーム3bがフロアパネル4に取り付けられている。なお、サブフレーム3bには、後輪2,2のサスペンション(図示せず)なども取り付けられている。
【0023】
図2に示すように、本実施形態におけるフロアパネル4とは、主に客室および荷室の床面を構成する部材であり、運転席および助手席(図示せず)の前方に位置してエアコンプレッサ16や走行モータ(図示せず)などが収容されるモータルームの空間と客室とを仕切るダッシュボードパネル4a、客室の床面を構成するフロントフロアパネル4b、荷室の床面を構成するリアフロアパネル4c、制動灯、方向指示灯、後退灯などの灯火類90が取り付けられるリアパネル4dなどで構成されている。よって、本実施形態において、車両の床上Q1とは、フロアパネル4の上側に位置する客室および荷室を構成する空間(車室内)を意味し、車両の床下Q2とは、フロアパネル4の下側およびダッシュボードパネル4aの前側に位置する空間(車室外)を意味している。
【0024】
また、フロアパネル4のダッシュボードパネル4aには、接続ケーブル(ハーネス)が貫通して配策される貫通孔S1,S2が車幅方向に間隔を空けて形成されている(図1参照)。なお、フロアパネル4には、床上Q1と床下Q2とを貫通させる箇所として、貫通孔S1,S2の位置以外には設けられていない構成になっている。また、図示していないが、貫通孔S1,S2には、配策された接続ケーブルが損傷するのを防止するための保護部材(いわゆるグロメットなど)が取り付けられている。なお、ここでの保護部材は、シール性を備えていて、気密性を備えているものである。また、ダッシュボードパネル4aに形成される貫通孔S1,S2は、燃料電池システム10から遠い位置(例えば、ダッシュボードパネル4aの上部寄り)に形成されることが好ましい。
【0025】
前記水素センサ30,31は、燃料電池システム10からの水素漏れを検出する機能を有し、一方の水素センサ30が燃料電池11の上方に設けられ、もう一方の水素センサ31が水素タンク12の上方に設けられている。
【0026】
前記車輪速センサ40,41は、後輪2(または四輪)の車軸の回転速度を検出する機能を有している(図1参照)。この車輪速センサ40,41は、例えばパルスホイールとホイールセンサとで構成され、車軸に設けられたパルスホイールの回転をホイールセンサで検出して、回転速度を検出する。
【0027】
前記換気ファン50は、センタコンソール4s内に収容された燃料電池11の前方に配置され、水素漏れが発生したときに駆動されて、水素を換気する機能を有する。なお、換気手段としては、換気ファン50のように水素漏れが発生したときに駆動される換気専用のものに限定されず、ラジエータ用のファンを利用して換気するようにしてもよい。また、車外から走行風などを取り込む構成を組み合わせてもよい。ラジエータとは、燃料電池11で発生した熱を放熱させるものであり、燃料電池11とラジエータとの間で冷媒を循環させるように構成されている。
【0028】
前記バッテリ60は、例えば12ボルトの低電圧のものであり、遮断弁20、水素センサ30,31、車輪速センサ40,41、換気ファン50、燃料電池制御装置70、車両制御装置80、灯火類90などを作動させるための電力を供給する。
【0029】
前記燃料電池制御装置70は、CPU、RAM、ROMなどで構成され、燃料電池システム10を制御する機能を有している。例えば、燃料電池システム10に設けられた各種弁の開閉、発電電流の取り出し制御などである。
【0030】
前記車両制御装置80は、CPU、RAM、ROMなどで構成され、車両を統括的に制御する機能を有し、床上Q1(車室内)に置かれている。また、車両制御装置80は、水素センサ30,31および車輪速センサ40,41からそれぞれ検出値を取得し、燃料電池制御装置70に燃料電池システム10の制御に必要な信号を伝達する。例えば、車両制御装置80によってブレーキペダルが踏み込まれたこと(ブレーキスイッチON)が検出されると、車輪速センサ40,41から得られる車輪速と車体速(例えば、4輪の車輪速の平均値)とを比較して車輪のスリップ状態を算出し、車輪がロックしないように、図示しないブレーキ液圧制御弁を制御する。また、アクセルペダルのスロットル開度を検出して、そのスロットル開度(検出値)に応じて、燃料電池11から取り出す電力量を、燃料電池制御装置70を介して制御する。
【0031】
また、燃料電池制御装置70と車両制御装置80とは、ハーネスW1およびハーネスWaを介して接続されている。すなわち、ハーネスW1は、車両制御装置80から延び、貫通孔S2を貫通して、コネクタ5aと接続されている。また、ハーネスWaは、燃料電池制御装置70から前方に延び、コネクタ5aと接続されている。また、ハーネスWaは、燃料電池制御装置70から後方に延び、コネクタ5bと接続されている。また、ハーネスWaには、水素センサ30から延びるハーネスWbが接続されている。なお、ハーネスW1とハーネスWaとで、第1接続ケーブルが構成されている。
【0032】
図2に示すように、第1実施形態において、燃料電池システム10、水素センサ30,31、車輪速センサ40,41、換気ファン50、バッテリ60および燃料電池制御装置70は、床下Q2に配置され、車両制御装置80は、床上Q1に配置されている。
【0033】
前記車両制御装置80は、ハーネスW1の一端が接続され、他端が貫通孔S2(図1参照)を通って床下Q2から床上Q1を貫通して、コネクタ5aと接続されている。さらに、ハーネスW1は、ハーネスWaを介して燃料電池制御装置70と接続されている。なお、ハーネスW1には、床上Q1において、ハーネスW5を介して灯火類90が接続されている。
【0034】
前記バッテリ60には、ハーネス(第2接続ケーブル)W2の一端が接続され、他端が貫通孔S2(図1参照)を介して床下Q2から床上Q1を貫通して、床上Q1に位置するハーネスW1と接続されている。前記換気ファン50には、ハーネス(第2接続ケーブル)W4の一端が接続され、他端が床下Q2に位置するハーネスW1と接続されている。前記遮断弁20、水素センサ31および車輪速センサ40,41には、ハーネス(第2接続ケーブル)W3の一端がそれぞれ接続され、他端がコネクタ5bを介してハーネスWaと接続されている。
【0035】
なお、本実施形態では、2箇所の貫通孔S1,S2が設けられているが、2箇所に限定されるものではなく、貫通孔S2の1箇所のみであってもよい。その場合、バッテリ60から延びるハーネスW2は、貫通孔S2とコネクタ5aとの間の床下Q2に位置するハーネスW1に接続される。
【0036】
図3に示すように、前記補機15は、アノード系の補機として、エゼクタ15a、水素パージ弁15bなどで構成されている。エゼクタ15aは、水素供給配管13を介して遮断弁20と接続され、燃料電池11のアノード側の出口から排出された未反応の水素を、循環配管15a1を介して再び燃料電池11のアノード側の入口に戻して再循環させる機能を有する。水素パージ弁15bは、例えば、電磁作動式のもので、定期的に開弁してアノード側の循環経路に蓄積した不純物を排出する機能を有する。なお、不純物とは、燃料電池11のアノードから固体高分子電解質膜を介してカソードに透過した生成水、空気に含まれる窒素などである。
【0037】
なお、燃料電池システム10は、カソード系の補機として、エアコンプレッサ16(図1および図2参照)などを備えており、水素と同様に、燃料電池11の後面に形成されたカソードの入口から空気が供給され、後面に形成されたカソードの出口からカソードオフガスが排出されるように構成されている。なお、図示していないが、カソード系の補機には、空気を加湿して燃料電池11に供給するための加湿器などが設けられている。また、補機15は、希釈器15cを備えており、燃料電池11のアノードから排出された水素を、燃料電池11のカソードから排出されたカソードオフガスで希釈して、所定の水素濃度以下にして車外に排出するように構成されている。また、図示していないが、アノード系の補機として、水素タンク12からの高圧の水素を減圧するためのレギュレータなどが設けられている。
【0038】
なお、本実施形態における水素供給配管13は、遮断弁20と燃料電池11のアノードの入口との間を接続する配管であり、水素排出配管14は、燃料電池11のアノードの出口と、水素パージ弁15bなどを通って車外と連通する配管である。また、水素供給配管13および水素排出配管14は、燃料電池11と水素タンク12との間に配置されている。よって、車両の前方に位置する燃料電池11と、後方に位置する水素タンク12との間が、水素漏れが発生する可能性のある水素を取り扱う水素ガス流通領域Qの範囲となっている(図1および図2参照)。
【0039】
図3に示すように、前記燃料電池制御装置70は、コンタクタ71、VCU(Voltage Control Unit)72、DC/DCコンバータ73と電気的に接続されている。コンタクタ71は、燃料電池11と負荷とを接続、遮断するスイッチである。なお、負荷とは、エアコンプレッサ16、走行モータ(図示せず)、高電圧の蓄電装置(リチウムイオン電池、キャパシタなど、図示せず)などである。VCU72は、昇降圧コンバータなどを備えて構成され、燃料電池11から取り出す発電電力を制御する機能を有する。DC/DCコンバータ73は、燃料電池11からの電力を降圧して12Vのバッテリ60に充電する機能を有する。バッテリ60に充電された電力によって、遮断弁20、水素センサ30,31、車輪速センサ40,41、換気ファン50、燃料電池制御装置70、車両制御装置80などを作動させる。
【0040】
また、第1実施形態の燃料電池自動車1Aでは、水素センサ30,31によって水素漏れが検知されたときに遮断弁20が遮断されるが、前記貫通孔S1,S2は、遮断弁20が遮断するまでの時間内に、漏れた水素が到達しない位置に配置されている。
【0041】
なお、貫通孔S1,S2の位置を遮断弁20が閉弁するまでの時間内に漏れ水素が到達しない位置とするものに限定されず、燃料電池自動車1Aでは水素漏れが検知されたときに換気ファン50を作動させるようにして、換気ファン50が作動するまでの時間内に、漏れた水素が到達しない位置に貫通孔S1,S2を配置するようにしてもよい。
【0042】
次に、第1実施形態の燃料電池自動車1Aにおける動作について説明する。まず、イグニッションスイッチ(図示せず)がオンにされると、燃料電池制御装置70によって遮断弁20が開弁されて、水素タンク12から水素が燃料電池11のアノードに供給され、エアコンプレッサ16が駆動されて、空気が燃料電池11のカソードに供給される。そして、燃料電池11のOCV(開回路電圧)が上昇して燃料電池11から電流を取り出すことができる状態になると、燃料電池制御装置70によって、コンタクタ71が接続され、VCU72が制御されて、燃料電池11から電流(電力)の取り出しが開始される。取り出された電流は、走行モータ(不図示)、エアコンプレッサ16などの負荷に供給され、また必要に応じて高電圧の蓄電装置(不図示)に充電が行われる。また、低電圧のバッテリ60には、残電力量(図示しないセンサで検出)に応じて、燃料電池制御装置70によるDC/DCコンバータ73の制御によって降圧された後に充電が行われる。
【0043】
また、第1実施形態の燃料電池自動車1Aでは、車両制御装置80が水素センサ30,31によって燃料電池システム10から水素漏れが発生していると判断した場合には、燃料電池制御装置70を介して遮断弁20を遮断する。またこのとき、車室内に設けられた警告ランプ(図示しない)などを点灯させるなどして運転者に警告を行う。第1実施形態では、貫通孔S1,S2が、燃料電池システム10の十分に前方、すなわち水素漏れが検出されて遮断弁20が閉じるまでの間に漏れた水素が貫通孔S1,S2に到達しない位置に設けられているので、仮に床下Q2において燃料電池システム10から水素漏れが発生したとしても床上Q1の客室および荷室内に水素が入り込むのを防止できる。つまり、遮断弁20が閉じられることで燃料電池システム10内の水素が消費されることで水素圧が低下して水素漏れが停止するので、その後漏れた水素が貫通孔S1,S2に到達することはない。
【0044】
なお、燃料電池システム10からの水素漏れを検出し、水素漏れが発生していると判断したときに換気ファン50が駆動される場合、貫通孔S1,S2の位置は、水素漏れが検出されて換気ファン50が駆動されるまでの間に漏れた水素が貫通孔S1,S2に到達しない位置に設けられるようにしてもよい。これにより漏れた水素が床上Q1の車室内(客室および荷室内)に水素が入り込むのを防止できる。つまり、燃料電池システム10の前方へ漏れ水素が流れたとしても、漏れ水素が貫通孔S1,S2に到達する前に換気ファン50が駆動されることで、漏れ水素の流れが前方から後方に切り替えられて、車外へと排出されるようになる。
【0045】
また、第1実施形態によれば、燃料電池システム10の後方にある水素センサ31、車輪速センサ40,41、遮断弁20に接続されたハーネスW3が、ハーネスWaおよびハーネスW1を介して車両制御装置80に接続されているので、車輪速センサ40,41などと車両制御装置80とをハーネスW1,Waとは別のハーネスで接続するときよりも、部品点数を削減することができる。部品点数の削減により、重量、コスト、組み付け性、メンテナンス性の点において有利となる。すなわち、ハーネスを別々に配策した場合、それぞれのハーネスを固定するためのクリップ、ブラケットなどの部品が倍増する他、ハーネス保護のための外装材なども倍増することになるが、前記したように、ハーネスW1,Waを利用してハーネスW3と車両制御装置80と接続することにより、重量およびコストを削減でき、クリップによる固定箇所の削減により組み付け性の点において有利となり、ハーネスの点検や交換などのメンテナンスの点においても有利となる。なお、燃料電池システム10の前方に設けられる換気ファン50やバッテリ60についても同様に、部品点数の削減により、重量、コスト、組み付け性、メンテナンス性の点において有利となる。
【0046】
なお、第1実施形態では、燃料電池システム10の後部に設けられる電気部品として、遮断弁20、水素センサ30、車輪速センサ40,41を例示して説明したが、これらに限定されるものではなく、さらにブレーキ液圧センサやTPMS(Tire Pressure Monitoring System)などがハーネスW3と接続されていてもよい。
【0047】
図4は第2実施形態の燃料電池自動車の接続ケーブル配策構造を車両上方から見たときの概略図、図5は第2実施形態の燃料電池自動車の接続ケーブル配策構造を車両側面から見たときの概略図である。なお、前記した実施形態と同様の構成については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0048】
図4に示すように、燃料電池自動車1Bは、貫通孔S3がフロアパネル4の後面に形成される構成であり、貫通孔S3が鉛直方向に延びるリアパネル4dに形成されている。この貫通孔S3も、第1実施形態と同様に、水素ガス流通領域Qから外れた位置に形成されている。この貫通孔S3にはハーネスW11が貫通して配策されて、床下Q2の燃料電池制御装置70から延びるハーネスWaのコネクタ5bと、床上Q1の車両制御装置80とがハーネスW11を介して接続されている。また、バッテリ60は、ハーネスW12を介して燃料電池制御装置70から延びるハーネスWaのコネクタ5aと接続されている。また、遮断弁20、水素センサ31、車輪速センサ40,41から延びるハーネスW13は、コネクタ5bの近傍においてハーネスW11と接続されている。また、換気ファン50は、ハーネスW14を介してハーネスW12と接続されている。
【0049】
図5に示すように、灯火類90は、ハーネスW15を介して、車両制御装置80から床上Q1を車両後方に向けて延びるハーネスW11と接続されている。なお、水素は非常に軽い気体であることより、仮に水素漏れが発生して漏れた水素が貫通孔S3に到達したとしても、リアパネル4dの外面に沿って上昇するので、貫通孔S3から床上Q1に入り込むことがない。
【0050】
図6は第3実施形態の燃料電池自動車の接続ケーブル配策構造を車両上方から見たときの概略図、図7は第3実施形態の燃料電池自動車の接続ケーブル配策構造を車両前方から見たときの概略断面図である。なお、前記した実施形態と同様の構成については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0051】
図6および図7に示すように、燃料電池自動車1Cは、貫通孔S4がフロアパネル4の側面に形成される構成であり、貫通孔S4が鉛直方向に延びるサイドパネル4e(例えば、サイドシル)に形成されている。なお、この貫通孔S4も、水素ガス流通領域Qから外れた位置に形成されている。この貫通孔S4にはハーネスW21が貫通して配策されて、床下Q2の燃料電池制御装置70から延びるハーネスWaのコネクタ5bと、床上Q1の車両制御装置80とがハーネスW21を介して接続されている。また、バッテリ60は、ハーネスW22を介して燃料電池制御装置70から延びるハーネスW21と床下Q2において接続されている。この場合も図4および図5における実施形態と同様に、仮に水素漏れが発生して漏れた水素が貫通孔S4に到達したとしても、水素がサイドパネル4eの外面に沿って上昇するので、貫通孔S4から床上Q1に入り込むことがない。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】第1実施形態の燃料電池自動車の接続ケーブル配策構造を車両上方から見たときの概略図である。
【図2】第1実施形態の燃料電池自動車の接続ケーブル配策構造を車両側面から見たときの概略図である。
【図3】第1実施形態の燃料電池自動車に搭載される燃料電池システムの全体構成図であるである。
【図4】第2実施形態の燃料電池自動車の接続ケーブル配策構造を車両上方から見たときの概略図である。
【図5】第2実施形態の燃料電池自動車の接続ケーブル配策構造を車両側面から見たときの概略図である。
【図6】第3実施形態の燃料電池自動車の接続ケーブル配策構造を車両上方から見たときの概略図である。
【図7】第3実施形態の燃料電池自動車の接続ケーブル配策構造を車両前方から見たときの概略断面図である。
【符号の説明】
【0053】
1A 燃料電池自動車(燃料電池車両)
4 フロアパネル(床)
10 燃料電池システム
11 燃料電池
12 水素タンク
13 水素供給配管
14 水素排出配管
20 遮断弁(遮断装置)
30,31 水素センサ(電気部品)
40,41 車輪速センサ(電気部品)
50 換気ファン(換気手段)
60 バッテリ(電気部品)
70 燃料電池制御装置
80 車両制御装置
Q1 床上
Q2 床下
S1,S2 貫通孔
Wa ハーネス(第1接続ケーブル)
W1 ハーネス(第1接続ケーブル)
W2〜W4 ハーネス(第2接続ケーブル)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の床下に、水素ガスと酸化剤ガスとの反応により発電する燃料電池、水素タンク、前記水素タンクから前記燃料電池へ水素ガスを供給する水素供給配管、および、前記燃料電池から排出される水素排ガスを排出する水素排出配管、を備えた燃料電池システムと、
前記燃料電池システムを制御する燃料電池制御装置と、
前記車両の床下に設けられ、水素漏れを検知する水素センサと、
前記水素センサが水素漏れを検知したときに、少なくとも前記水素タンクから供給される水素ガスを遮断する遮断装置と、
前記車両の床上に設けられ、前記燃料電池制御装置と第1接続ケーブルにより接続されて、前記車両の車両制御を行う車両制御装置と、を備え、
前記水素供給配管および前記水素排出配管は、前記車両の前後方向において、前記燃料電池と前記水素タンクとの間に配置され、
前記車両の床には、前記第1接続ケーブルが貫通して配策される貫通孔が形成され、
前記貫通孔は、水素漏れが発生する可能性のある水素ガス流通領域から外れた位置に配置されていることを特徴とする燃料電池車両。
【請求項2】
前記貫通孔は、前記水素センサが前記燃料電池システムからの水素漏れを検知して前記遮断装置を遮断するまでの時間内に、漏れた水素ガスが到達しない位置に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池車両。
【請求項3】
前記車両の前後方向において前記燃料電池システムの前方もしくは後方で前記車両の床下に設けられる電気部品と前記車両制御装置とを接続するケーブルとして、前記貫通孔を通って配策される前記第1接続ケーブルを介して前記燃料電池システムの前方もしくは後方に配策する第2接続ケーブルを備えたことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池車両。
【請求項4】
前記燃料電池システムを換気する換気手段を備え、
前記貫通孔は、前記水素センサが前記燃料電池システムからの水素漏れを検知して前記換気手段が換気するまでの間に、漏れた水素ガスが到達しない位置に配置されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の燃料電池車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−292190(P2009−292190A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−145342(P2008−145342)
【出願日】平成20年6月3日(2008.6.3)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】