説明

物体検出装置

【課題】 本発明の目的は、オンラインで正確に距離相当量を補正することの可能な物体検出装置を提供すること。
【解決手段】 本発明の発明は、物体までの距離相当量(距離自体や、ステレオカメラでの視差など)を検出する車載の物体検出装置において、物体までの距離相当量を検出する第一検出手段2R,2Lと、物体までの距離相当量を第一検出手段2R,2Lとは異なる検出原理で検出する第二検出手段3と、第一検出手段2R,2Lと第二検出手段3が、同一物体を検出したか否かを判断する判断手段4と、同一の物体を検出したと判断した場合に、第二検出手段3が検出した距離相当量を、第一検出手段2R,2Lが検出した距離相当量の検出誤差の評価に用いるか否かを判定する判定手段4とを備えることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体までの距離相当量(距離自体や距離に対応する視差など)を検出する車載の物体検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の入力画像、即ち通常、ステレオ画像と呼ばれる一対の画像に基づいて、視差を利用して物体との距離を検出する物体検出装置が知られており、下記[特許文献1]にも開示がある。このような物体検出装置では、経年変化などによって視差(距離相当量)にズレが生じ得る。下記[特許文献1]に記載のものでは、ステレオカメラによってサンプルパターンを撮像し、取得したステレオ画像上の対応点(ステレオ画像の右画像と左画像とで同一部分を示す点)の探索で算出した視差と、サンプルパターンの大きさから算出した距離に基づいて算出した視差とを比較し、ステレオカメラの視差ズレを補正する。
【特許文献1】特開2001−272210号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、[特許文献1]に記載のものでは、固定サンプルパターンを用いて、即ち、予め大きさやその設置距離が決められたサンプルを用いて補正を行うため、いわゆるオンラインでの補正ができない。オンラインでの補正とは、ステレオカメラの通常使用中に同時に補正を行うことである。また、[特許文献1]に記載のものでは、オンライン補正を行ったとしても、全ての検出結果を用いると、検出精度が低いデータが混在する場合には、正しく補正することができない。従って、本発明の目的は、オンラインで正確に距離相当量を補正することの可能な物体検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1に記載の発明は、物体までの距離相当量を検出する車載の物体検出装置において、物体までの距離相当量を検出する第一検出手段と、物体までの距離相当量を第一検出手段とは異なる検出原理で検出する第二検出手段と、第一検出手段と第二検出手段が、同一物体を検出したか否かを判断する判断手段と、同一の物体を検出したと判断した場合に、第二検出手段が検出した距離相当量を、第一検出手段が検出した距離相当量の検出誤差の評価に用いるか否かを判定する判定手段とを備えることを特徴としている。
【0005】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の物体検出装置において、判定手段が、第二検出手段の同一物体の検出頻度が高い場合に、評価に用いると判定することを特徴としている。
【0006】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の物体検出装置において、判定手段が、第一検出手段または第二検出手段の検出した同一物体までの距離相当量が所定範囲内にある場合に、評価に用いると判定することを特徴としている。
【0007】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の物体検出装置において、所定範囲が、距離相当量の近傍または遠方を除外した範囲であることを特徴としている。
【0008】
請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の物体検出装置において、車両走行状態が安定走行状態にあるかを判断する走行安定状態判断手段を備え、判定手段が、安定走行状態と判定した場合に、評価に用いると判定することを特徴としている。
【0009】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の物体検出装置において、走行安定状態判断手段が、車両停車中または高速走行中の場合に、安定走行状態と判断することを特徴としている。
【0010】
請求項7に記載の発明は、請求項5に記載の物体検出装置において、走行安定状態判断手段が、直線路または平坦路を車両走行中の場合に、安定走行状態と判断することを特徴としている。
【0011】
請求項8に記載の発明は、請求項5に記載の物体検出装置において、走行安定状態判断手段が、市街地を車両走行中には安定走行状態にないと判断することを特徴としている。
【0012】
請求項9に記載の発明は、請求項1に記載の物体検出装置において、第一検出手段または第二検出手段が、車両に対する物体の横位置である相対横位置を検出し、判定手段が、同一物体の相対横位置が所定範囲内にある場合に、評価に用いると判定することを特徴としている。
【0013】
請求項10に記載の発明は、請求項1に記載の物体検出装置において、判定手段が、車両の走行環境の天候または明るさに基づいて、評価に用いるかを判定することを特徴とする物体検出装置。
【0014】
請求項11に記載の発明は、請求項1〜10の何れか一項に記載の物体検出装置において、第一、第二検出手段の検出した距離相当量にズレがあると判定した場合には、第二検出手段の距離相当量に基づいて第一検出手段の距離相当量を補正することを特徴とする物体検出装置。
【0015】
請求項12に記載の発明は、請求項1〜11の何れか一項に記載の物体検出装置において、第一検出手段が、複数の撮像手段の画像を用いた画像測距センサであり、第二検出手段が、ミリ波を用いたミリ波測距センサであることを特徴とする物体検出装置。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の物体検出装置によれば、同一の物体を検出できたデータのうち、正しく距離測定できていると推定できるデータのみを用いて距離相当量を比較することで、特別な条件・装置で判定しなくても、正確にズレを判断して、異常判定・ズレの補正を行うことが可能となる。
【0017】
請求項2に記載の物体検出装置によれば、検出頻度が高ければ、異常判定・ズレの補正を行うことが可能となる。
【0018】
請求項3に記載の物体検出装置によれば、各検出手段には守備範囲があるため、守備範囲での距離検出精度を向上させることができる。
【0019】
請求項4に記載の物体検出装置によれば、ステレオカメラセンサの場合は、20m〜40mの範囲のデータのみを用いる。守備範囲より近傍のデータで補正すると守備範囲で検出結果がずれ、守備範囲の遠方ではステレオカメラの検出結果を用いないので補正する必要がない。
【0020】
請求項5に記載の物体検出装置によれば、安定走行状態時に判定することで正確な判定を行うことができる。
【0021】
請求項6に記載の物体検出装置によれば、具体的には、(車速0km/h)または(40位km/h以上)の時のデータを用いる。極低車速では、物体を安定して検出できるが、0km/h〜40km/hでは、例えば市街地走行や交差点での進路変更、など、検出していた物体をロストしたり、画面の端に移動する可能性があり、安定して物体を検出できないおそれがあるため用いない。逆に、車速が40km/h以上の場合にはしばらくその状態が続く可能性が高いと予想できるため、、データとして採用することで、異常判定・ズレの補正を行うことが可能となる。
【0022】
請求項7に記載の物体検出装置によれば、検出精度が劣る検出範囲の端に物体が移動するおそれが少ないため安定したデータを取得可能となる。
【0023】
請求項8に記載の物体検出装置によれば、検出精度が劣る市街地走行時には検出結果を利用しないことで、市街地非走行時の安定したデータのみを取得可能となる。なお、請求項5,7,8は、ナビ情報など外部の情報を用いて判断しても良い。さらに、車両の加減速度が大きいときも安定走行状態にないと判断しても良い。
【0024】
請求項9に記載の物体検出装置によれば、相対横位置がずれている、検出範囲の端では、検出精度が劣るためデータを採用しないことで、異常判定・ズレの補正を行うことが可能となる。
【0025】
請求項10に記載の物体検出装置によれば、天気が雨、または、暗いときには、検出精度が低いためデータを採用しないことで、異常判定・ズレの補正を行うことが可能となる。
【0026】
請求項11に記載の物体検出装置によれば、一方の検出手段の検出結果によって他方の検出手段の検出結果を補正することで、異常判定・ズレの補正を行うことが可能となる。なお、ズレがあると判断した場合に異常とユーザーに報知しても良い。
【0027】
請求項12に記載の物体検出装置によれば、ステレオカメラの視差は取付によって結果が異なり、要求取付精度が悪くてズレやすい。一方、ミリ波はステレオカメラと比較して安定して正しい距離を算出できる。よってミリ波の検出結果を元に、ステレオカメラの検出結果の異常判定・補正を行うことが可能となる。
【0028】
なお、請求項2〜10の判断・判定は独立した判断であり、任意に組み合わせてよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、図面を参照しつつ本発明の物体検出装置の一実施形態について説明する。本実施形態の物体検出装置は、図1に示されるように、車両1に搭載されている。物体検出装置は、画像取得部(撮像手段)2R,2Lと、ミリ波センサ(ミリ波レーダ:第二検出手段)3と、撮像手段2R,2Lによって取得した画像に各種フィルタをかけて処理したり、ミリ波センサ3の検出結果を処理する処理部(判定手段・走行安定状態判断手段)とを備えている。撮像手段2R,2Lは、横方向に一定間隔を設けて配設された一対のCCDカメラ(第一検出手段:画像測距センサ:ステレオカメラ)である。処理部は、CCDカメラ2R,2Lで取得した一対の入力画像に基づいて各種演算を行うもので、CPUやGPU、ROM・RAMなどを備えた物体検出ECU4である。
【0030】
一対のCCDカメラ2R,2Lは、車両1の車室内のルームミラー裏側に埋設されている。一対のCCDカメラ2R,2Lは、同一の性能・仕様を持ったものであり、それらの設置間隔や焦点距離などは予め物体検出ECU4内のROMなどに記憶されている。一対のCCDカメラ2R,2Lの光軸は、正常であれば、車両1が平坦路上に置かれたときに路面に平行に配設されている。また、一対のCCDカメラ2R,2Lの光軸は、正常時には、互いに平行で、かつ、車両1の前後方向中心線に対しても平行である。
【0031】
ミリ波センサ3は、車両1の前方にミリ波を照射し、その反射波を利用して車両1前方の物体との距離を検出する。また、図示されていないが、物体検出ECU4には、車両走行状態や走行環境を検出する車速センサ5や、ヨーレートセンサ6、加減速度センサ(上下・前後)、雨が降っているか否かを検出するレインセンサ7、車内外の明るさを検出する日照(明るさ)センサ8、ステアリングホイールの操舵角を検出するステアリング角センサ9や、ナビゲーション装置10も接続されている。なお、レインセンサ7や照度センサ8は、外部環境検出装置11を介して物体検出ECU4に接続されている。さらに、ナビゲーションシステム10は、GPS12を備えていると共に、通信によって外部情報を受信する外部情報受信装置13とも接続されている。外部情報受信装置13は物体検出ECU4にも直接接続されている。
【0032】
CCDカメラ2R,2L(ステレオカメラ)による対象物の検出に際しては、まず、一対のカメラ2R,2Lによって前方画像を取得する。一対のカメラ2R,2Lは所定の間隔を置いて設置されているため、撮像された一対の画像は全く同じ画像とはならず、二つの画像間にはいわゆる肉眼での視差に相当するズレ(以下、このズレも視差と言う)が生じる。即ち、二つの画像上において同一のものを示す点(以下、この一対の点を対応点と呼ぶ)に関する視差は、カメラ2R,2Lからの方向及び距離に応じて異なる。そこで、画像上の位置(二次元座標軸上の座標:通常左右何れか一方の画像を基準とする)と視差とから、実際の三次元空間(これに対応する三次元座標軸)上の座標、即ち、車両1からの距離が算出可能となる。
【0033】
本実施形態の物体検出装置によるCCDカメラ2R,2Lの経年変化などによる検出誤差補正制御(及び、その後の物体との距離検出制御)について、図2及び図3のフローチャートを参照しつつ説明する。まず、CCDカメラ2R,2Lによってステレオ画像を取得する(ステップ200)。そして、取得したステレオ画像に基づいて、物体検出ECU4において物体(物標と呼ばれることもある)を検出する(ステップ205)。ステレオ画像による物体検出については上述したとおりである。このときの物体検出の際に、物体との距離は距離自体として算出しても良いし、距離と対応する視差のままとしても良い。
【0034】
ステップ200,205と並行して、ミリ波センサ3によって車両1の前方を走査し手その出力を取得する(ステップ210)。そして、その出力結果に基づいて、物体検出ECU4において物体を検出する(ステップ215)。ステップ205,215の後、CCDカメラ2R,2Lの検出した物体とミリ波センサ3によって検出した物体のうち、同一と思われる物体を特定(確認)する(ステップ220)。この工程は、フュージョンとも呼ばれる。
【0035】
フュージョンが終了したら、同一物体に関するCCDカメラ2R,2Lによる検出結果とミリ波センサ3による検出結果とを比較して、CCDカメラ2R,2Lの平均ズレ量を算出する(ステップ225)。ステップ225の後、まず、車両条件が成立しているか否かを判定する(ステップ230)。車両条件とは、車両1の状態が補正を行うのに適した状態、即ち、車両1の動きが安定(ステレオ画像及びミリ波の双方に関して物体検出を安定して行える状態)であることを示す条件である。
【0036】
具体的には、車速(車速センサ5によって検出)が所定速度にあるか否かが車両条件の一つとなっている。ここでは、車速がゼロであるか、あるいは、車両がある程度高速である(高車速域であれば運転者によるハンドル操作量が少ないため)ことを示す所定範囲内[閾値ThL1<車速V<Th]にあるかどうかである。たとえば、ThL1=40km/h,Th=100km/hである。もう一つの車両条件は、|カーブR|>閾値Thが成立するかである。カーブRは、CCDカメラ2R,2Lの取得画像から白線検知して検出したり、ヨーレートセンサや操舵角センサの検出結果から算出すればよい。カーブRが大きければ(車両1が直線路を走行中であれば)、運転者による操舵操作が少ないためである。
【0037】
車両条件のもう一つの条件は、車両1の|ピッチ変動|<閾値Thであることである。ピッチ変動が少ないと言うことは平坦路を走行しているということであり、補正に適しているといえる。車両1のピッチ変動は、CCDカメラ2R,2Lの取得画像から白線検知して、左右の白線の延長線交点位置の上下移動から検出したり、ピッチングセンサやサスペンションストロークセンサ、上下加速度センサなどの検出結果から算出すればよい。上述した三つの条件の全てが成立する場合、車両条件が成立する。車両条件が成立しない場合は、図2のフローチャートのスタートに戻る。
【0038】
一方、車両条件が成立している場合は、次に、ミリ波条件が成立しているか否かを判定する(ステップ235)。ミリ波条件とは、ミリ波センサ3によって物体との距離を精度良く検出できる状態であることを示す条件である。その条件の一つは、車両1の|横位置座標|<閾値Thであるか否かである。できるだけ車両1の真正面にいる場合の方が検出距離精度が高いからである。車両横位置の原点は、レーン中心であり、車両1はその左右中心が代表点である。左右の白線によって決まるレーン内に車両1があればよい。これは、CCDカメラ2R,2Lの取得画像から白線検知して、レーン内であるか否かを判断すればよい。
【0039】
次のミリ波条件は、自車線確率>閾値Thであるかどうかである。自車線確率(検出頻度)とは、前方の物体が自車線内でかつ、どの程度連続してそこに位置しているかを示すものである。この自車線確率が大きいほど、ミリ波センサ3の検出精度が高くなるといえる。さらに次のミリ波条件は、前方物体との|相対速度|<閾値Thであるかどうかである。相対速度の大きさが小さいほど、ミリ波センサ3の検出精度が高くなるといえる。
【0040】
次のミリ波条件は、ミリ波センサ3の感度閾値が高閾値であるということである。通常、ミリ波センサは、対象物によって反射光の検出に用いる感度閾値を高閾値と低閾値とで使い分ける。高閾値とは、対象が車両や鉄板など反射率が高いものを検出する場合に用いるものであり、低閾値とは、対象が歩行者など反射率が低いものを検出する場合に用いるものである。ここでは、高閾値を用いて、高精度に物体検出を行っている場合にミリ波条件の一つが成立することになる。
【0041】
次のミリ波条件は、データがいわゆる外挿データでないということである。前方の物体を連続して検出するが、何らかの条件によっては、連続する検出のうちの一回だけ(あるいは複数回)検出ができない場合が生じ得る。このような場合は、前後のデータを元に、検出できなかった一回(あるいは複数回)のデータを補完してやることがある。この補完のことを外挿という。ここでは、補正に用いるデータが外挿データでない場合にミリ波条件の一つが成立することになる。上述した五つの条件の全てが成立する場合、ミリ波条件が成立する。ミリ波条件が成立しない場合は、図2のフローチャートのスタートに戻る。
【0042】
ミリ波条件が成立している場合は、次に、ステレオ条件が成立しているか否かを判定する(ステップ240)。ステレオ条件とは、ステレオ画像によって物体との距離を精度良く検出できる状態であることを示す条件である。その条件の一つは、ステップ205で検出した距離(あるいは視差に対応する距離)が、所定範囲内[閾値ThL2<車速V<Th]にあるかどうかである。あまりに近いと、ステレオ画像の一方にしか物体が移らない場合などがあり、精度が悪い。なお、ここでは、ミリ波センサ3もあまり近い(例えば、5m未満)と精度が出ないため、このステレオ条件でこのミリ波センサ3の条件も含めている。一方、ステレオ画像による物体への検出距離には限界があるため、これが上限Thとなる。たとえば、ThL2=5m,Th=40mである。
【0043】
もう一つのステレオ条件は、上述したミリ波条件の一つと同様に、車両1の|横位置座標|<閾値Thであるか否かである。車両横位置の原点は、レーン中心であり、車両1はその左右中心が代表点である。左右の白線によって決まるレーン内に車両1があればよい。できるだけ車両1の真正面にいる場合の方が検出距離精度が高いからである。上述した二つの条件が成立する場合、ステレオ条件が成立する。ステレオ条件が成立しない場合は、図2のフローチャートのスタートに戻る。
【0044】
ステップ240が肯定される場合は、検出データ数が所定のデータ数Th以上であり、かつ、ステップ225で算出した平均ズレ量が所定の閾値Thよりも大きいが否かを判定する(ステップ245)。ここでは、データ数が少ないと信頼性がないため、ある程度のデータ数を必要とすることとし、かつ、ズレ量が少ない場合は補正の必要がないとしている。
【0045】
ステップ245の後、視差補正値を求める(ステップ250)。ここで、ステレオカメラ2R,2Lによる検出距離とミリ波センサ3による検出距離との差を縦軸にとり、その被検出物体と車両1との距離Lを横軸にとった場合の、データ分布を図4に示す。これらのデータは、車両1を複数台用意し(経年変化などでステレオカメラ2R,2Lのセッティングが異なる)、それらの測定結果をグラフ上にプロットしたものである。なお、データは、20[m]<L<40[m]の範囲でのものである。
【0046】
図4から分かるように、車両1からの距離が遠くなるほど、ステレオカメラ2R,2Lによる検出距離とミリ波センサ3による検出距離との差は大きく(バラツク)ことが分かる。これに対して、図4の縦軸を、ステレオ画像における視差(ピクセル数)に変換した図を図5に示す。図5から分かるように、視差として表せば、全ての範囲(20[m]<L<40[m])において、ステレオカメラ2R,2Lによる検出視差とミリ波センサ3による検出距離との差はほぼ一定の範囲内に収まることが分かる。これは、例えば、視差が2ピクセルだとして、物体までの距離が近ければ、その誤差は小さいが、物体までの距離が遠ければその誤差は大きくなることからも明らかである。
【0047】
このため、ここでは、図5に示されるように、視差に関して全てのデータに関する平均値を求め、これを視差補正値として算出する(図5中有の点線)。ミリ波センサ3の検出結果は、ステレオカメラ2R,2Lよりも高精度である。そこで、この視差補正値を、ステレオカメラ2R,2Lの検出結果(視差:距離相当量)に加算(負の値であれば減算となる)することで、ステレオカメラ2R,2Lの検出結果を補正することができる(ステップ255)。視差補正値によって補正された視差を用いて三次元変換を行って物体との距離を最終的に算出し(ステップ260)、これを出力する(ステップ265)。
【0048】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。例えば、上述した実施形態における図2及び図3のフローチャートのステップ230〜240の各条件に加えて、車両1の走行環境の天候または明るさを条件としても良い。雨が降っている場合(レインセンサ7によって検出)は、ステレオカメラ2R,2L(あるいはミリ波センサ3)の検出精度が落ちるため補正(ズレの評価)を行わないようにしたり、車両1の周辺の明るさが暗い場合(照度センサ8によって検出)は、ステレオカメラ2R,2Lの検出精度が落ちるため補正を行わないようにしてもよい。あるいは、ナビゲーション装置10で、車両1が市街地を走行しているときと判断できるときは補正(ズレの評価)を行わないようにしても良い。市街地走行中は、車両の走行状態が安定しにくいためである。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の物体検出装置の一実施形態を搭載した車両構成図である。
【図2】補正制御のフローチャート(前半)である。
【図3】補正制御のフローチャート(後半)である。
【図4】ステレオカメラによる検出距離とミリ波センサによる検出距離との差を縦軸、その被検出物体と車両との距離Lを横軸にとった場合のデータ分布である。
【図5】図4の縦軸をステレオ画像における視差(ピクセル数)に変換した図である。
【符号の説明】
【0050】
1…車両、2R,2L…CCDカメラ(撮像手段)、3…ミリ波センサ、4…ECU(判定手段・走行安定状態判断手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体までの距離相当量を検出する車載の物体検出装置において、
物体までの距離相当量を検出する第一検出手段と、
物体までの距離相当量を前記第一検出手段とは異なる検出原理で検出する第二検出手段と、
前記第一検出手段と第二検出手段が、同一物体を検出したか否かを判断する判断手段と、
同一の物体を検出したと判断した場合に、前記第二検出手段が検出した距離相当量を、前記第一検出手段が検出した距離相当量の検出誤差の評価に用いるか否かを判定する判定手段とを備えることを特徴とする物体検出装置。
【請求項2】
前記判定手段は、前記第二検出手段の前記同一物体の検出頻度が高い場合に、評価に用いると判定することを特徴とする請求項1に記載の物体検出装置。
【請求項3】
前記判定手段は、前記第一検出手段または前記第二検出手段の検出した前記同一物体までの距離相当量が所定範囲内にある場合に、評価に用いると判定することを特徴とする請求項1に記載の物体検出装置。
【請求項4】
前記所定範囲は、距離相当量が近傍または遠方を除外した範囲であることを特徴とする請求項3に記載の物体検出装置。
【請求項5】
前記車両走行状態が安定走行状態にあるかを判断する走行安定状態判断手段を備え、
前記判定手段は、安定走行状態と判定した場合に、評価に用いると判定することを特徴とする請求項1に記載の物体検出装置。
【請求項6】
前記走行安定状態判断手段は、車両が停車中または高速走行中の場合に、安定走行状態と判断することを特徴とする請求項5に記載の物体検出装置。
【請求項7】
前記走行安定状態判断手段は、車両が直線路または平坦路を走行中の場合に、安定走行状態と判断することを特徴とする請求項5に記載の物体検出装置。
【請求項8】
前記走行安定状態判断手段は、車両が市街地を走行中には安定走行状態にないと判断することを特徴とする請求項5に記載の物体検出装置。
【請求項9】
前記第一検出手段または前記第二検出手段は、車両に対する物体の横位置である相対横位置を検出し、前記判定手段は、前記同一物体の相対横位置が所定範囲内にある場合に、評価に用いると判定することを特徴とする請求項1に記載の物体検出装置。
【請求項10】
前記判定手段は、車両の走行環境の天候または明るさに基づいて、評価に用いるかを判定することを特徴とする請求項1に記載の物体検出装置。
【請求項11】
前記第一、第二検出手段の検出した距離相当量にズレがあると判定した場合には、前記第二検出手段の距離相当量に基づいて前記第一検出手段の距離相当量を補正することを特徴とする請求項1〜10の何れか一項に記載の物体検出装置。
【請求項12】
前記第一検出手段は、複数の撮像手段の画像を用いた画像測距センサであり、前記第二検出手段は、ミリ波を用いたミリ波測距センサであることを特徴とする請求項1〜11の何れか一項に記載の物体検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−24590(P2007−24590A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−204656(P2005−204656)
【出願日】平成17年7月13日(2005.7.13)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】