説明

現像ローラ、現像装置、プロセスカートリッジ及び画像形成装置

【課題】現像ギャップ偏差による現像能力偏差を防止する現像ローラ、現像装置、プロセスカートリッジ及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】非磁性トナーと磁性キャリアを含有する二成分現像剤を使用する現像装置1に設けられ、回転可能な非磁性の現像スリーブと前記現像スリーブ内部に複数のマグネット磁極とを配置する現像ローラ2において、前記複数のマグネット磁極の一つが、前記現像ローラ2の中央部と両端部で10%以上磁束密度偏差を持つ現像ローラ2、現像装置1、プロセスカートリッジ及び画像形成装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現像ローラ、現像装置、プロセスカートリッジ及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近の複写機、プリンタは高画質に対する要求が非常に高い。これらは近年のインターネット等のネットワーク環境整備の充実化やパソコン、デジタルカメラの普及がめざましく、従ってそれらから得られる画像と、デジタル複合機やプリンタから出力される画像を比較する機会が非常に増えているという背景がある。
これら要求に対し、特許文献1、特許文献2等で現像バイアスの直流等技術にて高画質化を行っているが、現像狭ギャップ(Gap)化から現像剤汲上量の現像ローラ中央及び両端部の偏差がそのまま画像濃度偏差として出力されてしまうという問題点があった。
また、現像ギャップを従来の0.5から0.2乃至0.4とすると、現像剤汲上量も70mgから50mgへ下げ、現像ニップ部で剤が溜まったり溢れたり、或いは感光体や現像ローラに固着しないようにする必要があり、少ない汲上量だとその変動や現像ローラ中央部、両端部の汲上量偏差や現像ローラ中央部、両端部の現像ギャップ偏差が設定値に対して割合が大きくなってしまう為、画像濃度に対して非常に敏感になってしまっている。
現像ギャップ変動は従来から存在しているが、狭ギャップ現像になったことにより従来問題の無かった少しの偏差が画像濃度に対して非常に敏感になり、高画質化への問題点となっている。また、複数の色を重ねるカラー画像形成装置では各色の単色の画像濃度偏差が画像の両端や中央で異なると、画像等の出力時に本来の色味が表せなくなってしまい、上記の高画質化に対し大きなビハインドとなってしまう。
従来からある「現像ローラ中央部と両端部の現像ギャップ偏差」だが、メカニズム解析を行なったところ以下の要因が確認された。
現像ローラと感光体の間に現像剤が押し込められることにより、現像スリーブが全体的に感光体から遠ざかる方に押される。そして、現像スリーブの両端は支持されているため、両端は現像ギャップが変化することは少ないが、現像ローラ中央部は現像スリーブを支持しておらず、スリーブ表面とマグネットローラの距離(若干のクリアランス)があるため、現像スリーブが微少であるが感光体から遠ざかってしまう。このため現像ギャップが、ローラ中央部と両端部で異なって偏差を持ち、現像能力偏差となってしまう。
【0003】
【特許文献1】特開2003−233255号公報
【特許文献2】特開2004−212560号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明は前記問題点に鑑みてなされたものであり、その課題は、現像ギャップ偏差による現像能力偏差を防止する現像ローラ、現像装置、プロセスカートリッジ及び画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決する手段である本発明の特徴を以下に挙げる。
本発明は、非磁性トナーと磁性キャリアを含有する二成分現像剤を使用する現像装置に設けられ、回転可能な非磁性の現像スリーブと前記現像スリーブ内部に複数のマグネット磁極とを配置する現像ローラにおいて、前記複数のマグネット磁極の一つが、前記現像ローラの中央部と両端部で10%以上磁束密度偏差を持つことを特徴とする現像ローラである。
本発明は、前記現像ローラの中央部の磁束密度が、前記現像ローラの両端部よりも高いことを特徴とする。
本発明は、中央部に軸受けを有することを特徴とする。
本発明は、印可する電圧が直流のみで構成することを特徴とする。
また、本発明は、前記記載の現像ローラを有し、前記磁束密度偏差を持つ磁極が、感光体と略対抗位置に配置されることを特徴とする現像装置である。
本発明は、前記現像スリーブが、2点以上で支持されることを特徴とする。
本発明は、前記現像スリーブ表面と前記現像スリーブに対抗して設置されている感光体とのクリアランスが、0.2〜0.4mmであることを特徴とする。
さらに、本発明は、前記記載の現像装置と前記感光体とを一体に支持し、画像形成装置本体に着脱自在であることを特徴とするプロセスカートリッジである。
本発明は、帯電手段及び/又はクリーニング手段を有することを特徴とする。
また、本発明は、前記記載の現像装置を少なくとも二つ以上有することを特徴とする画像形成装置である。
本発明は、前記記載のプロセスカートリッジを少なくとも二つ以上有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、前記解決するための手段によって、現像ギャップ偏差による現像能力偏差を防止する現像ローラ、現像装置、プロセスカートリッジ及び画像形成装置を提供することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下に、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。なお、いわゆる当業者は特許請求の範囲内における本発明を変更・修正をして他の実施形態をなすことは容易であり、これらの変更・修正はこの特許請求の範囲に含まれるものであり、以下の説明はこの発明における最良の形態の例であって、この特許請求の範囲を限定するものではない。
【0008】
図1は、本実施形態に係る画像形成装置としての電子写真方式フルカラープリンタを示す図である。このプリンタの画像ユニット10は、矢印方向に無端移動する像担持体としての中間転写ベルト11を備え、中間転写ベルト11の下部張架面には、トナー像形成手段である4個の画像形成ユニット12Y、12C、12M、12Kが配置されている。画像形成ユニットの番号に沿えたY、C、M、Kは、扱うトナーの色と対応するもので、Yはイエロー、Cはシアン、Mはマゼンタ、Kはブラックを意味している。画像形成ユニットに備えられ、中間転写ベルト11とともに回転する感光体40に対しても同じようにY、C、M、Kを沿えている。なお感光体40Y〜40Kは等間隔に配置され、少なくとも画像形成時には中間転写ベルト11との張架部の一部と接触するようになっている。
【0009】
図2は、本発明の画像形成ユニットを示す図である。扱うトナーの色は異なるが、画像形成ユニット12Y、12C、12M、12Kの構成はそれぞれ同じであるので、その構成を画像形成ユニット12として図2により説明する。図2において、プリンタの動作時に、不図示の駆動源により、矢印方向に回転するよう支持された円筒状の感光体40が配設されている。そして、感光体40の周囲には、静電写真プロセスに従い帯電装置41、露光装置、現像装置1、クリーニング装置42、光除電装置などの作像部材や電位センサ、画像センサが配されているが、それらの構成・作動は基本的に公知であるので、説明の簡略化のために、ここでは本発明と特に関わりのある部分について述べる。
【0010】
一様に帯電された感光体40の表面は、画像情報に基づいた露光により静電潜像が形成される。この静電潜像は現像装置1により現像され、感光体表面上にトナー像が形成される。トナー像は転写帯電器13により中間転写ベルト11(図1)に転写させられる。中間転写ベルト11に転写されたイエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色トナー像は重ね合わされ、給紙ユニット14(図1)から給紙ローラ、レジストローラ対を経て搬送された用紙上に二次転写ローラ15を用いて転写される。転写終了後の用紙は、定着ユニット16によりトナー像を定着され、片面画像形成の場合には、そのまま機外に排出され、両面画像形成の場合には、公知のように、反転路(図示せず)を介した後、両面部(図示せず)を通って再び二次転写ユニットへ送られる。
なお本実施形態では、少なくとも感光体40と現像装置1とでカートリッジユニットが構成され、更に帯電装置41、クリーニング装置42、除電装置を備えてプロセスカートリッジが構成可能である。プロセスカートリッジと称する場合、現像装置と他のプロセス手段が一体となって着脱可能にされたものであり、上記カートリッジユニットだけでもプロセスカートリッジとなり得るし、現像装置1と感光体40と帯電装置41、現像装置1と感光体40と帯電装置41とクリーニング装置42など、様々なバリエーションが存在し得る。
プロセスカートリッジとすることにより、現像装置1と感光体40等の位置決めができ、現像ギャップ8を決定する部材がプロセスカートリッジ内で完結することができ、現像高画質条件を満足する現像ギャップ8を高精度に設定できる。
【0011】
次に作像部について図2を用いて説明する。図2の画像形成ユニット12は、感光体40と現像部1、帯電装置41(本実施例では帯電ローラ)、クリーニング装置42(本実施例ではクリーニングブレード)を一体としたプロセスカートリッジである。現像部1には感光体40上に書込手段43により光学的に形成された潜像に対しトナーの可視化像を形成する現像ローラ2があり、その現像ローラ2現像領域の上流側には現像ローラ2上の現像剤量をある一定量に規制する規制部材4(以降の現像ドクタ4とする)がある。現像装置1内の現像タンク部にはトナー粒子と磁性粒子(キャリア)を混合した2成分現像剤が納められており、その現像剤は2本の搬送スクリュである第1搬送スクリュ5aと第2搬送スクリュ5bにより循環している。また、第2搬送スクリュ5bの下側にはトナー濃度センサ6が配置され、現像タンク内のトナー濃度を随時計測し、適正値に収まるよう制御している。また、現像ドクタ4右側には現像ニップ部からのトナー飛散を防止するための入口シール7が配置されている。
【0012】
図3、図4は、現像ギャップ偏差に関係するメカニズムを示す図である。図3において、感光体40に対し現像ローラ2が略左側に、現像ドクタ4は現像ローラの略下側に配置される。現像ローラ2はその外側に外部から駆動を受けることで回転する現像スリーブ21が配置され、その内部に多数の磁極を配置する、回転しないマグネットローラ22が配置される。マグネットローラ22は周動性に優れておらず、現像スリーブ21と接触させると摩擦熱が生じ、磁束密度が変化したり、磨耗するので、一般的にマグネットローラ22と現像スリーブ21には隙間を設けている。
【0013】
マグネットローラ22の磁束分布50は図3のようになる。現像スリーブ21と感光体40の間に現像剤が挟まることにより生じる力60は、現像ローラ2長手方向によって異なると共に現像スリーブ21の支持が一般的に両端であることから、現像ローラ2長手方向で生じる現像スリーブ21上の圧力61は、両端部に対し中央部が大きくなる。そのため、中央部の現像ギャップ8は両端部に対し大きくなる。そして、現像ギャップ8は、大きくなればなるほど現像能力が低下する。その結果、中央部の現像能力が両端部に比べ低下して画像濃度偏差が生じる。
具体例として、現像剤が現像スリーブ21に保持され、感光体40と接触しているときの実現像ギャップ8は、両端部が0.3mmの時、中央部では0.33mmとなり、現像能力が低下し、画像濃度が両端と中央部を比較して飽和画像濃度が25%程度低くなってしまう。
【0014】
現像能力は、現像剤の汲み上げ量と、現像ギャップ8、それと主極24の磁束密度により決定される。一般的に汲み上げ量は、過多になるまで現像能力は向上し、同じ汲み上げ量の時には現像ギャップ8が狭くなると現像能力が向上、同じ汲み上げ量の時には主極24の磁束密度が大きい程、現像能力が向上する。
図5は、現像スリーブ上の磁力分布を示した図である。本発明においては、現像ギャップ8と主極24の磁束密度に着目し、現像ローラ2長手方向で生じる現像スリーブ21上の圧力61によって低下してしまった中央部の現像能力を、図5のようにマグネットローラ22の主極24に磁束密度偏差を持たせることで現像ギャップ8偏差による現像能力低下を押さえる。
図6は、磁束密度偏差の効果を示した図である。主極24の磁束密度偏差の効果は、図6に示すように現像ギャップ8の偏差によるが、主極24の偏差が10%を超えると飽和画像濃度に著しい改善が見られた。
【0015】
通常マグネットローラ22と現像スリーブ21は、両端保持による2点支持であるが、マグネットローラ22と現像スリーブ21の隙間による現像ギャップ8が偏差を持ってしまうことを押さえるために隙間の一部分を埋める形で軸受け23を配置する。軸受けが磁性体で有ると現像ローラ2の一部分だけ磁束分布が変化してしまうので、現像剤の搬送が変化してしまう。よって軸受けの材料としては非磁性が望ましい。
【0016】
図7は、軸受けを有する現像装置を示す図である。現像剤が挟まることにより生じる力60により中央部が最も撓んだことによる現像ギャップ8偏差の対策として、図7のように現像ローラ2中央部に軸受け23を配置することで、現像剤が挟まることにより生じる力60によるスリーブの撓みが、緩和される。
今回使用した軸受け23は、図7のような転がり軸受けを使用したが、すべり軸受けや、マグネットローラ22よりも周動性が良いものをマグネットローラ22と現像スリーブ21の隙間に埋めることにより効果を得ることができる。
図8は、軸受けによる磁束密度偏差の効果を示した図である。主極24の磁束密度偏差と軸受け23を併用することによる効果は、図8に示すように現像ギャップの偏差が少ないことから、磁束密度偏差だけよりも飽和画像濃度偏差が少なく、より改善効果を得られた。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施形態に係る画像形成装置としての電子写真方式フルカラープリンタを示す図である。
【図2】本発明の画像形成ユニットを示す図である。
【図3】現像ギャップ偏差に関係するメカニズムを示す図である。
【図4】現像ギャップ偏差に関係するメカニズムを示す図である。
【図5】現像スリーブ上の磁力分布を示した図である。
【図6】磁束密度偏差の効果を示した図である。
【図7】軸受けを有する現像装置を示す図である。
【図8】軸受けによる磁束密度偏差の効果を示した図である。
【符号の説明】
【0018】
1 現像装置
2 現像ローラ
4 規制部材(現像ドクタ)
5a 第1搬送スクリュ
5b 第2搬送スクリュ
6 トナー濃度センサ
7 入口シール
8 現像ギャップ(Gap)
10 画像ユニット
11 中間転写ベルト
12Y、12C、12M、12K 画像形成ユニット
13 転写帯電器
14 給紙ユニット
15 二次転写ローラ
16 定着ユニット
21 現像スリーブ
22 マグネットローラ
23 軸受け
24 主極
40 感光体
41 帯電装置(帯電ローラ)
42 クリーニング装置(クリーニングブレード)
43 書込手段
50 磁束分布
60 現像スリーブと感光体の間に現像剤が挟まることにより生じる力
61 圧力

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非磁性トナーと磁性キャリアを含有する二成分現像剤を使用する現像装置に設けられ、
回転可能な非磁性の現像スリーブと前記現像スリーブ内部に複数のマグネット磁極とを配置する
現像ローラにおいて、
前記現像ローラは、
前記複数のマグネット磁極の一つが、前記現像ローラの中央部と両端部で10%以上磁束密度偏差を持つ
ことを特徴とする現像ローラ。
【請求項2】
請求項1に記載の現像ローラにおいて、
前記現像ローラは、
前記現像ローラの中央部の磁束密度が、前記現像ローラの両端部よりも高い
ことを特徴とする現像ローラ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の現像ローラにおいて、
前記現像ローラは、
中央部に軸受けを有する
ことを特徴とする現像ローラ。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一つに記載の現像ローラにおいて、
前記現像ローラは、
印可する電圧が直流のみで構成する
ことを特徴とする現像ローラ。
【請求項5】
現像装置は、
請求項1乃至4のいずれか一つに記載の現像ローラを有し、
前記磁束密度偏差を持つ磁極が、感光体と略対抗位置に配置される
ことを特徴とする現像装置。
【請求項6】
請求項5に記載の現像装置において、
前記現像装置は、
前記現像スリーブが、2点以上で支持される
ことを特徴とする現像装置。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の現像装置において、
前記現像装置は、
前記現像スリーブ表面と前記現像スリーブに対抗して設置されている感光体とのクリアランスが、0.2〜0.4mmである
ことを特徴とする現像装置。
【請求項8】
画像形成装置に使用するプロセスカートリッジにおいて、
前記プロセスカートリッジは、
請求項5乃至7のいずれか一つに記載の現像装置と前記感光体とを一体に支持し、
前記画像形成装置本体に着脱自在である
ことを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項9】
請求項8に記載のプロセスカートリッジにおいて、
前記プロセスカートリッジは、
帯電手段及び/又はクリーニング手段を有する
ことを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項10】
画像形成装置は、
請求項5乃至7のいずれか一つに記載の現像装置を少なくとも二つ以上有する
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項11】
画像形成装置は、
請求項8又は9に記載のプロセスカートリッジを少なくとも二つ以上有する
ことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−322570(P2007−322570A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−150829(P2006−150829)
【出願日】平成18年5月31日(2006.5.31)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】