説明

現像装置、プロセスカートリッジ及び画像形成装置

【課題】補給用現像剤と既存の現像剤を混合撹拌しながら搬送し、現像剤への帯電性を向上させることのできる現像装置、並びに、斯かる現像装置を備えたプロセスカートリッジ及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】現像容器2内に設けられ、回転駆動される回転軸15aに螺旋状の回転羽根15bが形成され、現像剤担持体3に向けて現像剤を搬送するスクリュー部材を備えている現像装置1において、スクリュー部材の回転羽根15bは、現像剤搬送方向下流側の螺旋面上に磁界発生部材11を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般には、電子写真方式、静電記録方式等によって像担持体上に形成された静電像を現像して可視画像とする現像装置に関するものである。更に、斯かる現像装置を像担持体と一体にカートリッジ化したプロセスカートリッジ、及び、斯かる現像装置を備えた複写機、プリンタ、ファクシミリなどの画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の電子写真方式を用いた画像形成装置、その中でも特に有彩色の画像形成を行うカラー画像形成装置において、非磁性トナーと磁性キャリアを混合して現像剤として使用する二成分現像方式が広く利用されている。二成分現像方式は、現在提案されている他の現像方式に比較して、画質の安定性、装置の耐久性などの長所を備えている。
【0003】
二成分現像方式を用いた現像装置において、像担持体にトナーを供給して現像を行うと、現像剤中におけるトナー濃度が次第に低下する。このトナー濃度低下を防止するためには、新たなトナーを補給する必要がある。
【0004】
図11及び図12に、従来の一般的な二成分現像装置1Aの概略構成を示す。
【0005】
現像装置1Aは、像担持体28に現像剤を供給する現像スリーブ3を備えた現像容器2有する。また、現像容器2は、現像スリーブ3の軸方向に沿って配置され、現像スリーブ3に現像剤を供給する現像剤供給部12と、補給トナーと現像剤を混合撹拌しながら、現像剤を現像剤供給部12とは逆方向に搬送する現像剤撹拌部13とを有する。現像剤供給部12と現像剤撹拌部13は、互いに第1及び第2連通開口部16、17にて連通されている。
【0006】
また、現像剤供給部12と現像剤撹拌部13には、それぞれ、現像剤の搬送及び撹拌を行う現像剤撹拌搬送部材14及び15を配設することで、現像剤を上記の現像剤供給部12と現像剤撹拌部13との間で循環させている。
【0007】
尚、現像剤撹拌搬送部材14、15は、円筒軸14a、15a周面上にスパイラル形状の撹拌部材14b、15bを設ける構成が一般的である。
【0008】
画像形成によって消費された分のトナーは、トナーカートリッジ5から補給口6を通過して、現像容器2に配設された補給スクリュー8へと搬送される。次いで、補給スクリュー8の回転に従い、トナー補給開口9を介して現像容器2内に補給される。
【0009】
補給されたトナーは、現像剤撹拌部13において2成分現像剤と混合撹拌される際に磁性キャリアと接触して摩擦帯電する。
【0010】
しかし、現像剤撹拌部13における撹拌が不十分な場合は、補給されたトナーが十分に帯電されないまま第1連通開口部16より現像剤供給部12へ搬送される。その結果、十分に帯電されないトナーが現像動作に用いられるため画像白地部に現像剤によるかぶり、即ち、トナーかぶりが発生してしまい、画像品位の低下を引き起こす。
【0011】
このようなトナーかぶりは、現像剤撹拌部13の現像剤面高さ(h)が高くなる程発生しやすくなる。これは、現像剤面高さ(h)が撹拌搬送部材15より高くなると補給されたトナーが現像剤中に取り込まれにくくなるために、磁性キャリアと接触することができず、十分な帯電量を得ることができないまま現像剤供給部12に搬送されてしまうためである。
【0012】
トナーの帯電性を向上させる手法が特許文献1に記載されている。特許文献1の現像装置によれば、
(1)撹拌スクリューの螺旋状羽根部の根元の厚さ(F)と当該撹拌スクリュウのピッチ(p)を0.6≦F/p≦1とする構成、
(2)撹拌スクリューの螺旋状羽根部の根元の厚さ(F)と当該撹拌スクリューのピッチ(p)を0.4≦F/p≦1、6mm≦pとする構成、及び、
(3)羽根部の軸方向のスパイラル角度θを30〜75度とする構成、
が提案されている。
【特許文献1】特開平10−171251号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上記特許文献1に記載の現像装置においても、現像剤高さが撹拌スクリューよりも高くなった場合には、やはり、トナーかぶりが生じてしまう。
【0014】
また、上述したような、現像剤撹拌部13において現像剤面高さが高くなる現象は、現像剤撹拌部13が現像剤供給部12よりも鉛直方向下方となるように現像装置、即ち、プロセスカートリッジや画像形成装置が傾いて用いられる場合において顕著に発生する。
【0015】
従って、本発明の主たる目的は、補給用現像剤と既存の現像剤を混合撹拌しながら搬送し、現像剤への帯電性を向上させることのできる現像装置、並びに、斯かる現像装置を備えたプロセスカートリッジ及び画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的は本発明に係る現像装置、プロセスカートリッジ及び画像形成装置にて達成される。要約すれば、本発明の第一の態様によれば、磁性を有する現像剤を収容する現像容器と、
該現像容器内に設けられ、現像剤を担持搬送し、像担持体上に形成された静電像を現像する現像剤担持体と、
前記現像容器内に設けられ、回転駆動される回転軸に螺旋状の回転羽根が形成され、前記現像剤担持体に向けて現像剤を搬送するスクリュー部材と、
前記現像容器に補給用現像剤を補給する現像剤補給手段と、
を備えている現像装置において、
前記スクリュー部材の回転羽根は、現像剤搬送方向下流側の螺旋面上に磁界発生部材を有することを特徴とする現像装置が提供される。
【0017】
本発明の第二の態様によれば、少なくとも、像担持体と、現像装置とが一体とされたプロセスカートリッジにおいて、現像装置は、上記構成の現像装置であることを特徴とするプロセスカートリッジが提供される。
【0018】
本発明の第三の態様によれば、画像形成装置本体に対してプロセスカートリッジが着脱自在とされた画像形成装置において、プロセスカートリッジは、上記構成のプロセスカートリッジであることを特徴とする画像形成装置が提供される。
【0019】
本発明の第四の態様によれば、像担持体と、前記像担持体上の静電像を現像剤を用いて現像し可視画像とする現像装置と、前記現像装置に補給用現像剤を補給する現像剤補給手段と、を有した画像形成装置において、現像装置は、上記構成の現像装置であることを特徴とする画像形成装置が提供される。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、補給用現像剤と現像剤を混合撹拌しながら搬送する搬送路における現像剤への帯電性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明に係る現像装置、並びに、斯かる現像装置を備えたプロセスカートリッジ及び画像形成装置を図面に則して更に詳しく説明する。
【0022】
実施例1
図1に、本発明に係る画像形成装置の概略構成を示す。本実施例にて、画像形成装置は、インライン式のカラー電子写真画像形成装置とされるが、本発明の画像形成装置は、これに限定されるものではない。
【0023】
先ず、本実施例の画像形成装置の概略構成について説明する。
【0024】
(画像形成装置の全体構成及び動作)
図1において、画像形成装置は、4つの画像形成ステーションP(Pa、Pb、Pc、Pd)を有している。本実施例では、4つの画像形成ステーションPは、イエロー画像形成ステーションPa、マゼンタ画像形成ステーションPb、シアン画像形成ステーションPc、ブラック画像形成ステーションPdとされる。
【0025】
各画像形成ステーションPは、像担持体としてのドラム状の電子写真感光体(以下、「感光ドラム」という。)28(28Y、28M、28C、28K)を備えている。感光ドラム28の回りには、感光ドラム28に静電像を形成するための、一次帯電手段としての一次帯電器21(21Y、21M、21C、21K)、及び、露光手段としてのレーザビームスキャナ装置22(22Y、22M、22C、22K)が配置される。更に、感光ドラム28の回りには、感光ドラム28上の静電像を現像し、可視画像(即ち、トナー像)とするための現像手段としての現像装置1(1Y、1M、1C、1K)が配置される。各感光ドラム28の下方には、各画像形成ステーションPへと記録材としての転写紙27を担持し搬送する転写材担持体としての転写ベルト24が配置される。また、各感光ドラム28と対向する位置には、転写手段としての一次転写ローラ23(23Y、23M、23C、23K)が配置されている。更に、感光ドラム28上の転写残トナーを除去するために、感光ドラム28と対向して、クリーニング手段としてのクリーニング装置26(26Y、26M、26C、26K)が設けられている。
【0026】
次に、上記構成の画像形成装置における画像形成動作について説明する。
【0027】
先ず、イエロー画像形成ステーションPaでは、一次帯電器21Yによって帯電された感光ドラム28Yの表面をレーザービームスキャナ装置22Yによって露光することで感光ドラム28Y上に静電像を形成する。この潜像は、現像装置1Yによって現像することで感光ドラム28Y上にトナー像を形成する。
【0028】
このトナー像が一次転写ローラ23Yによる転写バイアスによって、転写ベルト24上の転写紙27上に転写される。
【0029】
同様の画像形成動作を、マゼンタ画像形成ステーションPb、シアン画像形成ステーションPc、ブラック画像形成ステーションPdにおいても行い、感光ドラム28上のトナー像を順次転写紙27上に転写する。これによって、転写紙27上に所望のフルカラー画像を形成する。
【0030】
転写紙27は、転写ベルト24から剥離され、定着装置25によって加圧/加熱され、永久画像を得る。また、転写後に感光ドラム28上に残った残トナーはクリーニング装置26により除去され、次の画像形成に備える。
【0031】
次に、上記画像形成装置に使用される現像装置の一実施例について説明する。
【0032】
(現像装置)
以下の説明にて、現像装置1とは、イエロー用現像装置1Y、マゼンタ用現像装置1M、シアン用現像装置1C及びブラック用現像装置1Kの総称である。
【0033】
図2及び図3を参照して、本実施例に係る現像装置を説明する。図2は現像装置の概略構成断面図であり、図3は現像装置の上面図である。
【0034】
現像装置1は、現像容器2を備え、現像容器2内には、非磁性トナ−と磁性キャリアからなる2成分現像剤Tが収容されている。初期状態の現像剤中のトナー濃度は7wt%である。この値は、トナーの帯電量、キャリア粒径、画像形成装置の構成などで適正に調整されるべきものであって、必ずしもこの数値に従わなければいけないものではない。
【0035】
現像装置1の現像容器2は、像担持体としての感光ドラム28に対向した現像領域Aにおいて開口した開口部2Aを備えている。現像剤担持体としての現像スリーブ3が、この開口部2Aに一部露出するようにして回転可能に配置されている。現像スリーブ3は非磁性材料で構成され、その内部に、磁界発生手段である固定のマグネットロール4を内包している。
【0036】
現像容器2は、隔壁2Bにより、現像スリーブ3に近い側の現像剤供給部としての現像室12と、現像スリーブ3から遠い側の現像剤撹拌部としての撹拌室13の二室に二分されている。隔壁2Bの両端部、即ち、図2にて手前側と奥側には、図3をも参照すると理解されるように、第1及び第2開口部16、17が形成されており、現像室12と撹拌室13とが連通している。
【0037】
また、現像室12と撹拌室13は、それぞれ、第1搬送部材14と第2搬送部材15を備えており、これら搬送部材14、15により現像剤は現像容器2内を循環しつつ、混合及び攪拌される。つまり、本実施例では、現像室12及び攪拌室14は、それぞれ、第1及び第2搬送部材14、15による現像剤の搬送路である第1及び第2搬送路を形成する。
【0038】
本実施例の現像装置1における現像剤循環の方向は、現像室12においては、図2にて奥側から手前側に向かう方向、撹拌室13においては、図2にて手前側から奥側に向かう方向である。
【0039】
現像スリーブ3は、現像動作時には図2の矢印方向に回転し、現像剤規制部材18により規制され、現像容器2内の2成分現像剤を層状に保持して、感光ドラム28と対向する現像領域Aに2成分現像剤を供給する。これによって、感光ドラム28表面に形成されている静電像を現像し、可視画像(即ち、トナー像)とする。
【0040】
静電像を現像した後の現像剤は、現像スリーブ3の回転にしたがって搬送され、現像容器2内の現像室12に回収される。
【0041】
図4をも参照すると理解されるように、現像剤補給手段としてのトナーカートリッジ5は、本実施例では略円筒形で画像形成装置本体から容易に脱着可能である。トナーカートリッジ5は、図2にて手前側から挿入し、画像形成装置に装着することができる。トナーカートリッジ5は、手前側の把手5aを右側にひねることで回転し、補給口6が開口する。
【0042】
なお、トナーカートリッジ5を画像形成装置から離脱する際には把手5aを左側にひねることで補給口6が閉じ、内包する粉体(即ち、補給用現像剤)が外部に漏れることはない。
【0043】
また、トナーカートリッジ5内には、補給用現像剤(以下、「補給トナー」という。)を搬送するための搬送スクリュー7が内蔵されている。図4にトナーカートリッジ5の内部が一部示されているが、搬送スクリュー7は、図4に示すように、樹脂フィルムなどを螺旋状にしたものを剛体の軸7aで回転駆動するように構成される。この構成によって、軸7aを適宜回転することでトナーカートリッジ5内のトナーを搬送し、補給を補助する。
【0044】
現像装置1内の現像剤の濃度は、現像剤濃度検知装置10により検知され、画像形成によって消費された分のトナーは、トナーカートリッジ5から補給される。トナーカートリッジ5内の補給トナーは、搬送スクリュー7の回転力と重力によって、トナーカートリッジ5から補給口6を通過して、現像容器2に配設された補給スクリュー8へと搬送される。次いで、補給スクリュー8の回転に従い、トナー補給開口9を介して現像容器2内に補給される。
【0045】
次に、本実施例にて用いられる2成分現像剤Tについて説明する。
【0046】
2成分現像剤Tを構成する非磁性トナーは、結着樹脂、着色剤、そして、必要に応じてその他の添加剤を含む着色樹脂粒子と、コロイダルシリカ微粉末のような外添剤が外添されている着色粒子とを有しおり、粉砕法により製造した負帯電性のポリエステル系樹脂である。体積平均粒径は5μm以上、9μm以下が好ましい。本実施例では7.2μmであった。
【0047】
又、磁性キャリアは、例えば表面酸化或は未酸化の鉄、ニッケル、コバルト、マンガン、クロム、希土類などの金属及びそれらの合金、又は、酸化物フェライトなどが好適に使用可能である。これらの磁性粒子の製造法は特に制限されない。そして、キャリアは、重量平均粒径が20〜50μm、好ましくは30〜40μmであり、抵抗率が107Ωcm以上、好ましくは108Ωcm以上である。本実施例では108Ωcmのものを用いた。
【0048】
尚、本実施例にて用いられるトナーについて、体積平均粒径は、以下に示す装置及び方法にて測定した。
【0049】
測定装置としては、コールターカウンターTA−II型(コールター社製)、個数平均分布、体積平均分布を出力するためのインターフェース(日科機製)及びCX−Iパーソナルコンピュータ(キヤノン製)を使用する。そして、電解水溶液として、一級塩化ナトリウムを用いて調製した1%NaCl水溶液を使用した。測定方法は以下に示す通りである。
【0050】
即ち、上記の電解水溶液100〜150ml中に分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸塩を0.1ml加え、測定試料を0.5〜50mg加える。試料を懸濁した電界水溶液は超音波分散器で約1〜3分間分散処理を行ない、上記のコールターカウンターTA−II型により、アパーチャーとして100μmアパーチャーを用いて2〜40μmの粒子の粒度分布を測定して体積平均分布を求める。こうして求めた体積平均分布より、体積平均粒径を得る。
【0051】
また、本実施例にて用いられるキャリアの抵抗率は、以下の方法にて測定した。
【0052】
即ち、測定電極面積4cm、電極間間隔0.4cmのサンドイッチタイプのセルを用いて、片方の電極に1kgの重量の加圧下で、両電極間の印加電圧E(V/cm)を印加して、回路に流れた電流から、キャリアの抵抗率を得る方法によって測定した。
【0053】
(攪拌室の搬送部材)
次に、本実施例の特徴的な部分である、第2搬送路としての撹拌室13の搬送部材、即ち、第2搬送部材15について説明する。
【0054】
図3を参照すると、第1搬送部材14及び第2搬送部材15は、共に、軸径(d)が6mmとされる軸14a、15aと、直径(D)が16mmのスパイラル形状(即ち、螺旋状)の回転羽根14b、15bとを備えている。また、回転羽根14b、15bは、本実施例では、15mmピッチ間隔(P)で軸周面上に配設されている。
【0055】
また、第1搬送部材(以下、「第1スクリュー」という。)14及び第2搬送部材(以下、「第2スクリュー」という。)15は、それぞれの現像剤搬送方向下流端部に螺旋状の戻し回転羽根14c、15cを有している。戻し回転羽根14c、15cは、対応する第1スクリュー14及び第2スクリュー15の捩れ方向とは逆方向の捩れとされ、現像剤搬送方向とは逆方向に現像剤を押し戻す作用を成す。これによって、第1及び第2連通開口部16、17における現像剤の受け渡しを円滑にしている。
【0056】
本実施例によると、第2スクリュー15の回転羽根15bの下流側面上に、磁石とされる磁界発生部材11が設けられる。
【0057】
図5(a)は、第2スクリュー15を説明する概略構成斜視図である。
【0058】
第2スクリュー15は、スパイラル状の回転羽根15bの現像剤搬送方向下流側面の外周端に沿うように磁石11がスパイラル状に設けられる。
【0059】
つまり、本実施例では、磁石11は、細長薄板状の磁石であり、第2スクリュー15の回転羽根15bの現像剤搬送方向下流側螺旋面における半径方向外側近傍に螺旋状に配置される。本実施例では、磁石11は、図5(b)に示すように、幅(w)が2mm、厚さ(t)が1mmとされ、回転羽根15bの螺旋面に接着剤、或いは、溶着などにて一体に固定される。
【0060】
尚、現像剤循環性能のために現像剤搬送方向とは逆向きに現像剤を搬送する上記戻し回転羽根15cには磁石11は設けない。
【0061】
磁石11としては、Sm―Co系磁石、Nd−Fe−B系磁石、フェライト系磁石等100mT以上の磁束密度を有するもので有れば良い。本実施例ではフェライト系磁石を使用した。また、磁石11の磁束密度は200mTであった。
【0062】
磁石11は、図5(c)に示すように、厚み(t)方向両側面に、それぞれ異なる磁極を形成することができる。即ち、螺旋面の第1面に同極(例えばS極)を多数形成し、反対側の第2面に第1面と異なる極(例えばN極)を多数形成することができる。また、図5(d)に示すように、螺旋面に沿って交互に異なる磁極(S極とN極)を配置するように形成してもよい。
【0063】
さらに、本実施例の現像装置1においては、図3に示すように、トナー補給開口9の略中心位置は、即ち、トナーカートリッジ5から第2スクリュー15に対するトナー補給位置は、第2開口部17より、現像剤搬送方向下流側とされる。本実施例では、トナー補給位置Tpは、即ち、撹拌室13の現像剤搬送方向上流側の第2連通開口部17を形成する隔壁2Bの端部2Baから下流方向の距離(Lt)は、10mmとされる。
【0064】
(帯電付与性)
以下に、本実施例の現像装置1における、補給トナーへの帯電付与性についての実験結果について述べる。
【0065】
[実験]
本実験では、トナー補給開口9においてトナー1gを補給し、この補給されたトナーの第1連通開口部16における帯電量を測定した。
【0066】
図6及び図7に本実験におけるトナー帯電性の結果を示す。トナー帯電性は、トナー3000個の帯電量をHOSOKAWA MICRON Corp.社製のE−Spart Analizerによって測定した。
【0067】
画像白地部にトナーかぶりするトナーは、周知の通り、正規の極性と逆極性(本実施例のトナーの場合は正極性)、又は、帯電量0のトナーである。
【0068】
従って、第2スクリュー15の現像剤搬送方向上流側に補給されたトナーが全て、第2スクリュー15の現像剤搬送方向下流側の第1連通開口部16において負極性であれば、トナーかぶりすることはない。
【0069】
更に、図6及び図7中に示す角度θは、図2に示す現像装置1の位置から、図8に示すように、現像室12を鉛直上方向に、撹拌室13を鉛直下方向に傾けた角度(以下、「傾斜角度θ」という。)である。
【0070】
図6に第2スクリュー15に磁石を取り付けない場合のトナー帯電性を示す。この場合、傾斜角度が5°より大きくなると、第1連通開口部16において正極性又は帯電量0のトナーが存在してしまう。この理由を以下に説明する。
【0071】
図9(a)で示すように、傾斜角度θが大きくなるほど現像剤Tの重力方向と現像剤搬送方向との関係が変化し、現像剤Tが現像室12へ搬送されずらくなる。その結果、撹拌室13に収容する現像剤量が増加してしまい、傾斜角度が5°以上になると第2スクリュー15の回転羽根15bが現像剤に覆われた状態となり(図8参照)、補給したトナーTsを既存の現像剤T中に取り込むことができなくなる。従って、補給トナーTsは十分にキャリアと摩擦帯電することなく、第1連通開口部16まで搬送されることとなる。
【0072】
次に、図7に、第2スクリュー15の下流面側に磁石11を取り付けた場合のトナー帯電性を示す。
【0073】
本実施例の現像装置1の場合、傾斜角度が10°以下では第1開口部16において正極性又は帯電量0のトナーが存在しない。この理由を以下に説明する。
【0074】
前述のように、傾斜角度θが大きくなるほど撹拌室13に収容する現像剤量が増加してしまうが、図9(b)に示すように第2スクリュー15に取り付けた磁石11の磁気力と回転動作により、現像剤T上を浮遊する補給トナーTsは磁石周辺の現像剤とともに現像剤T中に取り込まれる。従って、補給トナーTsは十分にキャリアと摩擦帯電することができる。
【0075】
以上説明したように、本実施例の現像装置1の構成とすることにより、補給トナーTsと既存の現像剤Tを混合撹拌しながら、現像剤を現像室へと搬送する撹拌室におけるトナーへの帯電性を向上させることができる。そのために、現像装置、即ち、画像形成装置が傾いて用いられる場合においても画像白地部へのトナーかぶりを防止することが可能となる。
【0076】
更に、上記構成の本実施例の現像装置の作用効果についてより詳しく説明する。
【0077】
一般に、補給したトナーをキャリアと十分に摩擦帯電させるためには、現像剤撹拌部に以下の3つの性能が必要とされる。
(1)補給トナーを現像剤中に取り込む取り込み性
(2)補給トナーを解す分散性
(3)補給トナーを現像剤中でキャリアと混ぜ合わせる混合性
である。上記各項目について以下に説明する。
【0078】
一般に、現像装置へのトナー補給は、現像剤循環経路を循環している現像剤上にトナーを自由落下させる方式が多いが、この方式の場合、補給トナーは現像剤上を浮遊し易い。
【0079】
補給トナーを現像剤中のキャリアと混合するためには、まず、現像剤上を浮遊する補給トナーを現像剤中に取り込む必要がある。そのため、一般的な現像装置では円筒軸周面上にスパイラル形状の部材を設けた、所謂、スクリューにより補給トナーを現像剤中に取り込んでいる。更なる取り込み性の向上を図る場合には円筒軸周面上に四角形や台形形状の部材を追加して設けることもある。
【0080】
一般に、トナー補給精度の安定化のため、現像装置に補給される直前のトナーに或る程度の圧力を施し、或る程度凝集した状態にして、補給することが多い。そのため、補給トナーを現像剤中のキャリアと均一に混合するためには、この或る程度凝集した状態のトナーを解し、分散させる必要がある。そのため、一般的な現像装置では前述のスクリューにより補給したトナーを解し、分散させている。
【0081】
トナーを十分に帯電させるためには、トナーとキャリアを数多く接触させる混合動作を積極的に行う必要がある。そのため、一般的な現像装置では前述のスクリューにより補給したトナーとキャリアとの混合を行っている。
【0082】
補給したトナーを十分に帯電させるためには、スクリューによりこれら3つの性能を満足することが必要であるが、従来の現像装置構成では補給トナーの取り込み性能が低いために、トナーかぶりが発生していた。
【0083】
実質的に二成分現像剤の搬送及び撹拌を行うのは撹拌部材である。そのため現像剤撹拌部においては撹拌部材の現像剤搬送方向下流面上側(以下、「下流側面上」という。)近傍の現像剤面高さが最も高くなるために、補給トナーの取り込み性能の低下が発生していた。
【0084】
そこで、本実施例の現像装置は、現像剤撹拌室の現像剤撹拌搬送部材のスパイラル形状の撹拌部材下流側面上に磁界発生部材を設ける。これにより、スパイラル形状の撹拌部材の下流側面上に二成分現像剤による磁気穂を形成し、この磁気穂によって上記補給トナーの取り込み性能を向上させている。
【0085】
従って、従来の現像装置と比較して、本実施例に係る現像装置は、補給トナーの取り込み性能が著しく高い。つまり、現像剤撹拌室におけるトナーへの帯電性が著しく高い。そのため、画像形成装置、即ち、現像装置が傾いて用いられる場合においても十分に補給トナーを帯電することができ、それによって、画像白地部へのトナーかぶりを防止することができる。
【0086】
更に、前記磁界発生部材は撹拌部材の下流側面上全域に設ける必要は無く、撹拌部材の半径方向端部近傍に設ければ良い。つまり、現像剤面高さが搬送部材と略同じ高さ若しくは撹拌部材よりも高くなった場合における取り込み性の低下を防止すれば良い。
【0087】
上記実施例の説明にて理解されるように、補給現像剤と現像剤を混合撹拌しながら、現像剤を現像室に搬送する攪拌室におけるトナーへの帯電性を向上させることができる。それによって、画像形成装置が傾いて用いられる場合においても画像白地部へのトナーかぶりを防止することを防止することが可能となる。
【0088】
(プロセスカートリッジ)
本実施例の画像形成装置において、上記現像装置1は、図10に示すように、感光体ドラム28、一次帯電器21及びクリーニング装置26と共にカートリッジ化したプロセスカートリッジ30とすることができる。この場合においても、本実施例と同様の効果を有することは言うまでもない。
【0089】
尚、図10には、トナーカートリッジ5は、図示されていない。プロセスカートリッジ30は、該プロセスカートリッジ30を画像形成装置本体に装着した状態で、装置本体に装着されたトナーカートリッジ5と作動的に連結され、トナーカートリッジ5からの補給用トナーの補給を受け得るように構成されている。
【0090】
一般に、プロセスカートリッジは、感光ドラムが寿命に達したり、現像装置内の現像剤が著しく劣化した場合において、プロセスカートリッジ全体を画像形成装置本体から取り出し、新しいプロセスカートリッジを装着することができる。これにより、画像形成装置を復帰することができるので、メンテナンス性の向上を図ることが可能となる。
【0091】
また、この高メンテナンス性のため、機器交換の専門知識を有するサービスマンに頼ることなく、ユーザ自身が行なうことができるので、レーバーコストの低減による、画像形成装置のランニングコストの低減も可能となる。
【0092】
プロセスカートリッジの場合にも、上記現像装置1を用いているため、撹拌室13における現像剤の動きに関しては、図2及び図3を参照して説明した現像装置と同様である。又、撹拌室13における補給トナーの帯電付与性に関しても、図6及び図7で示した現像装置と同様の特性を有する。
【0093】
つまり、プロセスカートリッジ30、即ち、現像装置1の傾斜角度θが大きくなり、撹拌室13に収容する現像剤量が増加した場合においても、以下の効果が得られる。すなわち、第2スクリュー15に取り付けた磁石11の磁気力と回転動作により、現像剤上を浮遊する補給トナーは磁石周辺の現像剤とともに現像剤中に取り込まれ、補給トナーは十分にキャリアと摩擦帯電することができる。
【0094】
尚、プロセスカートリッジ30は、本実施例では、感光体ドラム28、一次帯電器21、クリーニング装置26、現像装置1を一体化したものであるが、特にこの構成に限定されるものではない。つまり、ユーザのメンテナンス性及び各要素の寿命等を考慮してプロセスカートリッジの構成を適宜決めれば良く、例えば、少なくとも、感光体ドラム28と現像装置1とを一体化したものであってもよい。更には、現像装置のみをカートリッジ化して、画像形成装置本体に対して着脱自在とすることも可能である。
【0095】
尚、本実施例にて画像形成装置は、インライン式のカラー画像形成装置であるとして説明したが、これに限定されるものではなく、インライン式のカラー画像形成装置は、本発明の画像形成装置の一例に過ぎない。本実施例の特徴ある現像装置は如何なる構成の画像形成装置においても、本実施例と同様の効果を有することは言うまでもない。
【0096】
例えば、上記実施例の画像形成装置は、各画像形成ステーションの画像を記録材に直接転写する直接転写方式のカラー画像形成装置とされたが、これに限定されない。例えば、一旦各画像形成ステーションの画像を中間転写体に転写し、その後、中間転写体から記録材に転写する中間転写方式のカラー画像形成装置とすることも可能である。勿論、画像形成装置は、カラー画像形成装置に限定されるものではなく、モノクロの画像形成装置とすることもできる。
【0097】
以上、上記実施例によって本発明の現像装置、プロセスカートリッジ及び画像形成装置を説明したが、上記説明した構成に限られるものではなく、種々の変更態様の構成をとることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明に係る画像形成装置の一実施例を説明する概略構成図である。
【図2】本発明に係る現像装置の一実施例の概略構成を示す断面図である。
【図3】本発明に係る現像装置の一実施例の概略構成を示す上面図である。
【図4】トナーカートリッジを説明する斜視図である。
【図5】本発明に係る現像装置に用いた搬送部材の一実施例を示す図で、図5(a)は搬送部材の概略図であり、図5(b)は搬送部材の一部拡大図である。図5(c)、(d)は、螺旋状磁石における磁極構成を示す斜視図である。
【図6】従来の現像装置におけるトナー帯電付与性を説明する図である。
【図7】本発明に従った構成の現像装置におけるトナー帯電付与性を説明する図である。
【図8】現像装置が傾斜した状態を説明する概略構成図である。
【図9】本発明の現像装置における撹拌室における現像剤の動きを説明する図である。
【図10】本発明に係る現像装置を用いたプロセスカートリッジの一実施例を説明する概略構成図である。
【図11】従来の現像装置の概略構成を示す断面図である。
【図12】従来の現像装置の概略構成を示す上面図である。
【符号の説明】
【0099】
1 現像装置
2 現像容器
2B 隔壁
3 現像スリーブ(現像剤担持体)
4 マグネットロール(磁界発生手段)
5 トナーカートリッジ
6 トナー補給口
8 補給スクリュー
10 現像剤濃度検知装置
11 磁界発生部材
12 現像室(第1搬送路)
13 撹拌室(第2搬送路)
14 第1スクリュー(第1搬送部材)
15 第2スクリュー(第2搬送部材)
14a、15a 回転軸
14b、15b 回転羽根
16 第1開口部
17 第2開口部
21 一次帯電器
25 定着装置
26 クリーニング装置
28 感光ドラム(像担持体)
29 転写紙
30 プロセスカートリッジ
100 画像形成装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性を有する現像剤を収容する現像容器と、
該現像容器内に設けられ、現像剤を担持搬送し、像担持体上に形成された静電像を現像する現像剤担持体と、
前記現像容器内に設けられ、回転駆動される回転軸に螺旋状の回転羽根が形成され、前記現像剤担持体に向けて現像剤を搬送するスクリュー部材と、
前記現像容器に補給用現像剤を補給する現像剤補給手段と、
を備えている現像装置において、
前記スクリュー部材の回転羽根は、現像剤搬送方向下流側の螺旋面上に磁界発生部材を有することを特徴とする現像装置。
【請求項2】
前記磁界発生部材は、前記螺旋面における半径方向外側端部近傍に配置されることを特徴とする請求項1に記載の現像装置。
【請求項3】
前記磁界発生部材は、螺旋状に形成された細長薄板状の磁石であり、螺旋面に沿って交互に異なる磁極が形成されるか、又は、螺旋面の第1面に同極を多数形成し、第2面に第1面と異なる極を多数形成したことを特徴とする請求項2に記載の現像装置。
【請求項4】
少なくとも、像担持体と、現像装置とが一体とされたプロセスカートリッジにおいて、
前記現像装置は、請求項1〜3のいずれかの項に記載の現像装置であることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項5】
画像形成装置本体に対してプロセスカートリッジが着脱自在とされた画像形成装置において、
前記プロセスカートリッジは、請求項4に記載のプロセスカートリッジであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
像担持体と、前記像担持体上の静電像を現像剤を用いて現像し可視画像とする現像装置と、前記現像装置に補給用現像剤を補給する現像剤補給手段と、を有した画像形成装置において、
前記現像装置は、請求項1〜3のいずれかの項に記載の現像装置であることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−322721(P2007−322721A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−152511(P2006−152511)
【出願日】平成18年5月31日(2006.5.31)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】