説明

現像装置および画像形成装置

【課題】 キャリアの帯電特性を向上させるとともに、現像剤搬送特性を向上させることができる現像装置およびこれを備える画像形成装置を提供する。
【解決手段】 主極N1極によって形成される磁極の中心線とスリーブ12の回転中心軸とを含む平面と、層厚規制部材4の先端とスリーブ12の回転中心軸とを含む平面とのなす角度および主極N1極によって形成される磁極の中心線とスリーブ12の回転中心軸とを含む平面と、補極N2極によって形成される磁極の中心線とスリーブ12の回転中心軸とを含む平面とのなす角度)が、85〜95度となるように、主極、補極および層厚規制部材を配置する。2成分現像剤を構成するキャリアについては、100mTの磁束密度における飽和磁化を130emu/cm以上200emu/cm以下に規定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2成分現像剤を担持して搬送する現像ローラと、現像ローラが搬送する2成分現像剤の層厚を規制する層厚規制部材とを有する現像装置およびこれを備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を利用して画像を形成する画像形成装置(以下単に「画像形成装置」とする)は、簡易な操作で高画質画像を形成でき、保守管理も容易であることから、複写機、プリンタ、ファクシミリなどに多用され、広く普及している。画像形成装置は、たとえば、感光体と、帯電手段と、露光手段と、現像手段と、転写手段と、定着手段とを含む。感光体はその表面に感光層を有するローラ状部材である。帯電手段は感光体表面を所定電位に帯電させる。露光手段は帯電状態にある感光体表面に静電潜像を形成する。現像手段は感光体表面の静電潜像にトナーを供給してトナー像を形成する。転写手段は感光体表面のトナー像を記録媒体に転写する。定着手段はトナー像を記録媒体に熱定着させる。これによって、記録媒体上に画像が形成される。画像形成装置において、現像手段としては、一般に、現像槽、現像ローラ、撹拌部材、規制部材、流し板などを含む現像装置が用いられる。現像槽は、現像ローラおよび撹拌部材を回転自在に支持するとともに、その内部に現像剤を貯留する。現像ローラは表面に現像剤層を担持して回転し、感光体表面の静電潜像にトナーを供給してトナー像を形成する。撹拌部材は現像槽内の現像剤を均一に撹拌して現像ローラに向けて搬送する。規制部材は現像ローラ表面の現像剤層の層厚を規制する。現像剤としては、主に、トナーとキャリアとを含む2成分現像剤が用いられる。
【0003】
画像形成装置の広範な分野への急速な普及に伴い、画像形成装置には様々な高性能化が要求される。たとえば、印刷速度の高速化が進められる。数年前まではA4用紙で50〜70枚/分であった印刷速度が、最近では100〜120枚/分にも及ぶ。このような高速化は、軽印刷の分野への進出を視野に入れたものである。印刷速度の高速化に対応するためには、現像装置においては、現像ローラを大径化し、かつ現像槽を大容量化するのが最も容易である。しかしながら、画像形成装置には、印刷速度の高速化とともに装置の小型化が求められる。小型化が要求される状況においても、感光体の潜像画像を適正に現像して、安定した印字品位を有する画像を提供することが求められる。
【0004】
そこで、効率よく適正な現像剤濃度を実現するためには、現像剤層を均質にかつ高速に現像ローラ上に形成することが必要である。現像剤層の形成に最も大きな影響を及ぼすのが、層厚規制部材である。
【0005】
層厚規制部材の役目は、現像ローラの下方に設けられたパドルローラから汲み上げられた現像剤を、現像ローラの表面上に一定の層厚に規制してするとともに、その現像剤に帯電性を付与することである。また、現像部に供給されない残りの現像剤は効率よく分離されて現像槽の現像剤と再混合される。
【0006】
また、印刷速度の高速化につれて、使用される現像剤も長寿命化が前提となり、高画質化に対しては、現像領域に現像剤を供給して適正な現像条件を設定することが重要となる。そこで、現像剤層を均質かつ高速に現像剤担持体上に形成するために、現像剤特性に合わせた適切な層厚規制条件を検討する必要がある。
【0007】
層厚規制部材(ドクター)は、従来から非磁性材料(非磁性ドクター)が採用されている。しかし、層厚規制部材の近傍で現像剤が押さえ込まれた状態で現像剤層厚が規制されるため、現像剤の劣化が激しくなることから、長寿命化には適していない。
【0008】
また、層厚規制部材に磁性部材(磁性ドクター)を採用することも考えられている。磁性ドクターを用いた層厚規制においては、磁性ドクターの直下に現像剤担持体の補極を配置し、磁性ドクターと補極とで形成される磁界により、現像剤担持体表面に担持されてきた現像剤をうまく分離し、比較的疎な磁気ブラシを形成することができる。その結果、非磁性ドクターを用いた場合に比べて、トナー帯電量は向上し、高画質化を図ることができる。
【0009】
しかしながら、磁性ドクターを用いた場合には、コストが上昇するとともに、現像剤量が少なく抑えられてしまうことから、現像能力を低下させやすい傾向、すなわち、画像濃度を確保できなくなる傾向にある。これを解消するためには、現像剤担持体(現像ローラ)の磁極配置、磁極と層厚規制部材との配置関係などを合わせ込む高精度な技術が必要となる。
【0010】
特許文献1記載の現像装置は、層厚規制部材の配置位置が、補極であるS2極とN2極との間であり、また、通常のキャリア磁化に比べて小さく規定(1000ガウスの磁界において100emu/cm以下)している。
【0011】
【特許文献1】特開平8−146757号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献1記載の現像装置は、キャリア磁化が非常に低い特定のキャリアを用いたときの構成を示しており汎用性に乏しい。特許文献1では、キャリア磁化の測定機については記載されているが測定条件が不明である。
【0013】
また、このような低磁化のキャリアは、磁化の値から樹脂系キャリアであることが考えられる。樹脂系キャリアは、比重が軽いために飛散しやすく、温度や湿度の影響を受けて帯電特性、流動性などが劣化しやすいという問題がある。
【0014】
本発明の目的は、キャリアの帯電特性を向上させるとともに、現像剤搬送特性を向上させることができる現像装置およびこれを備える画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、静電潜像が形成される感光体を臨んで回転自在に設けられるスリーブとスリーブ内部に固定配置されて複数の磁極を形成するマグネットローラとを有し、トナーとキャリアとを含む2成分現像剤を担持して搬送する現像ローラと、
前記現像ローラに対向するように設けられ、前記現像ローラが搬送する2成分現像剤の層厚を規制する層厚規制部材とを有する現像装置であって、
前記マグネットローラは、前記感光体に対してトナーを供給するトナー供給領域に、磁極を形成する主極と、前記主極によって形成される磁極よりも前記スリーブの回転方向上流側に配置され、前記主極によって形成される磁極と同極の磁極を形成する補極とを有し、
前記層厚規制部材は、先端部を前記現像ローラに近接させた非磁性ブレードと、前記非磁性ブレードを前記現像ローラ方向に突き出させて支持固定する磁性ブレードとを有し、
前記主極によって形成される磁極の中心線と前記スリーブの回転中心軸とを含む平面と、前記層厚規制部材先端部と前記スリーブの回転中心軸とを含む平面とのなす角、および前記主極によって形成される磁極の中心線と前記スリーブの回転中心軸とを含む平面と、前記補極によって形成される磁極の中心線と前記スリーブの回転中心軸とを含む平面とのなす角が85度以上95度以下であり、
前記2成分現像材を構成するキャリアの、100mT(テスラ)の磁束密度における飽和磁化が130emu/cm以上200emu/cm以下であることを特徴とする現像装置である。
【0016】
また本発明は、前記磁性ブレードは、直流最大比透磁率が450〜700であることを特徴とする。
【0017】
また本発明は、前記非磁性ブレードの先端部と前記磁性ブレードの先端部との距離が0.3〜1.0mmであることを特徴とする。
【0018】
また本発明は、前記スリーブの周速度が、350mm/sec以上であることを特徴とする。
【0019】
また本発明は、前記キャリアの平均粒径が、30〜60μmであることを特徴とする。
また本発明は、表面に静電潜像が形成される感光体と、感光体表面を帯電させる帯電装置と、感光体表面に静電潜像を形成する露光装置と、感光体表面の静電潜像にトナーを供給してトナー像を形成する現像装置と、感光体表面のトナー像を記録媒体に転写する転写装置と、感光体表面を清浄化するクリーニング装置と、トナー像を記録媒体に定着させる定着装置とを含み、電子写真方式を利用して画像を形成する画像形成装置において、
前記現像装置は、上記の現像装置であることを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、マグネットローラの主極によって、感光体に対してトナーを供給するトナー供給領域に、磁極を形成するとともに、補極によって、主極によって形成される磁極と同極の磁極が、主極によって形成される磁極よりもスリーブの回転方向上流側に形成される。また、層厚規制部材は、先端部を前記現像ローラに近接させた非磁性ブレードと、前記非磁性ブレードを前記現像ローラ方向に突き出させて支持固定する磁性ブレードからなる。
【0021】
ここで、前記主極によって形成される磁極の中心線と前記スリーブの回転中心軸とを含む平面と、前記層厚規制部材先端部と前記スリーブの回転中心軸とを含む平面とのなす角、および前記主極によって形成される磁極の中心線と前記スリーブの回転中心軸とを含む平面と、前記補極によって形成される磁極の中心線と前記スリーブの回転中心軸とを含む平面とのなす角が85度以上95度以下となるように主極、補極および層厚規制部材が配置される。
【0022】
さらに、前記2成分現像材を構成するキャリアの、100mT(テスラ)の磁束密度における飽和磁化が130emu/cm以上200emu/cm以下である。
【0023】
主極、補極および層厚規制部材を上記のような位置関係で配置し、さらにキャリアの飽和磁化を規定することで、スリーブの回転駆動トルクである現像トルクを抑えてトナーの帯電量を確保できるとともに、現像剤の供給と分離を効率よく行い、現像剤の搬送性を向上することができる。さらに層厚規制部材による現像剤の劣化を抑えて長寿命化を図ることができる。
【0024】
また本発明によれば、前記磁性ブレードの直流最大比透磁率を450〜700とする。
これにより、現像トルクの抑制および現像剤搬送性の向上をさらに図ることができる。
【0025】
また本発明によれば、前記非磁性ブレードの先端部と前記磁性ブレードの先端部との距離を0.3〜1.0mmとする。
【0026】
これにより、現像トルクの抑制および現像剤搬送性の向上をさらに図ることができる。
また本発明によれば、前記スリーブの周速度が、350mm/sec以上で、現像剤を安定に供給することができ、高速現像にも対応可能である。
【0027】
また本発明によれば、平均粒径が30〜60μmの微小キャリアを用いることができ、出力画像の品質向上を実現することができる。
【0028】
また本発明によれば、感光体、帯電装置、露光装置、本発明の現像装置、転写装置、クリーニング装置および定着装置を含む電子写真方式の画像形成装置が提供される。画像形成装置は、本発明の現像装置を含むことによって、帯電性および現像剤搬送性が向上し、現像後に出力される画像の品質向上を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
図1は、本発明の第1実施形態である現像装置1の構成を模式的に示す断面図である。現像装置1は、現像槽2と、現像ローラ3と、層厚規制部材4と、規制部材支持体5と、流し板6と、第1撹拌部材7と、第2撹拌部材8と、搬送部材9と、トナー濃度センサ10とを含む。
【0030】
現像槽2は内部空間を有する容器部材であり、現像ローラ3、第1撹拌部材7、第2撹拌部材8および搬送部材9をその内部空間で回転自在に支持し、層厚規制部材4、流し板6などを直接的または間接的に支持し、現像剤を収容する。現像剤はトナーと磁性体粉であるキャリアとを含む2成分現像剤である。また、現像槽2には、現像装置1を図示しない電子写真方式の画像形成装置に装着する場合に、該画像形成装置が備える感光体ドラム13を臨む側面に開口2aが形成される。また、現像槽2の鉛直方向上面には、トナー補給口2bが形成される。
【0031】
現像槽2の鉛直方向上方には図示しないトナーカートリッジおよびトナーホッパが設けられる。より詳しくは、鉛直方向上方から下方に向けて、トナーカートリッジ、トナーホッパおよび現像槽2の順番で設けられる。トナーカートリッジは円筒状容器部材であり、その内部空間にトナーを収容する。トナーカートリッジは現像装置1が装着される図示しない画像形成装置本体に対して着脱可能に設けられる。また、トナーカートリッジは、画像形成装置に設けられる図示しない駆動手段によって、軸線回りに回転駆動する。トナーカートリッジの長手方向側面には長手方向に延びる細長い開口が形成され、トナーカートリッジの回転に伴って前記細長い開口からトナーが落下してトナーホッパに供給される。トナーホッパは、たとえば、その鉛直方向底面に形成される開口であるトナー供給口が、現像槽2の鉛直方向上面に形成される開口であるトナー補給口2bと鉛直方向に連通するように設けられる。トナーホッパ内において、トナー供給口の鉛直方向上方には、トナー補給ローラが設けられる。トナー補給ローラはトナーホッパによって回転自在に支持され、図示しない駆動手段によって回転駆動する。トナー補給ローラの回転駆動は、トナー濃度検知センサ10による現像槽2内のトナー濃度の検知結果に応じて、画像形成装置に設けられる図示しない制御手段により制御される。トナー補給ローラの回転駆動によって、トナー供給口およびトナー補給口2bを介して、現像槽2内にトナーが補給される。
【0032】
現像ローラ3は、磁界を発生させるマグネットローラ11と非磁性部材からなるスリーブ12とを含む。
【0033】
マグネットローラ11は、その長手方向の両端部が現像槽2の現像槽壁によって支持され、現像ローラ3の周方向位置に断面形状が長方形の複数の棒磁石を備え、N極である磁極N1,N2,N3,N4およびS極である磁極S1,S2,S3が互いに離隔して現像ローラ3の半径方向に放射状に配置される多極着磁型マグネットローラである。各磁極は、スリーブ12の回転方向14とは逆方向に、磁極N1、磁極S1、磁極N2、磁極S2、磁極N3、磁極N4および磁極S3の順番に設けられる。
【0034】
スリーブ12は、非磁性素材であれば良く、特に限定されるものではないけれども、アルミニウム、アルミニウム合金、またはJIS−G4305に規定されるステンレス鋼であるSUS304などが好適に用いられる。2成分現像剤の担持および搬送を良好に行うため、スリーブ12の表面には適度な凹凸が形成されることが好ましく、たとえば、表面粗さ:Rz(JIS B 0601:十点平均粗さ)が、5μm以上10μm以下になるようにブラスト処理されている。
【0035】
また、現像ローラ3は、現像槽2の開口2aを介して感光体ドラム13に対向する。現像ローラ3は、感光体ドラム13に対して間隙を有して離隔するように設けられ、最近接部分が現像ニップ部である。現像ニップ部において、現像ローラ3表面の図示しない現像剤層から感光体ドラム13表面の静電潜像にトナーが供給される。現像ニップ部では、現像ローラ3に接続される図示しない電源から現像ローラ3に対して現像バイアス電圧が印加され、現像ローラ3表面の現像剤層から感光体ドラム13表面の静電潜像へのトナーの移行が円滑に進行する。
【0036】
マグネットローラ11は、現像ローラ3から感光体13に対してトナーを供給するトナー供給領域に、現像磁極(主極)であるN1磁極を形成する。さらに、マグネットローラ11は、N1磁極よりもスリーブ12の回転方向14上流側に向かって、S1磁極、N2磁極、S2磁極、N3磁極、N4磁極、S3磁極が順に形成される。N2磁極は、形成される磁極のうち、層厚規制部材4に最も近い位置に形成される。
【0037】
層厚規制部材4は、現像ローラ3の軸線方向に平行に延びる板状部材であり、現像ローラ3の鉛直方向上方において、その短手方向の一端が規制部材支持体5とによって支持され、かつ他端が現像ローラ3表面に対して離隔するように設けられる。
【0038】
層厚規制部材4は、現像ローラ3表面に担持される現像剤層から余分な現像剤を取り除き、現像剤層の層厚を一定に規制することによって、現像剤の搬送量を調整する。また、層厚規制部材4は、短手方向の他端と現像剤層との摺擦によって、現像剤層に含まれる帯電が不充分な現像剤に電荷を付与し、現像剤層に含まれる現像剤を充分に帯電させる。
【0039】
層厚規制部材4には、非磁性ブレードからなる1層構成、非磁性ブレードと磁性ブレードとからなる2層構成があるが、本発明では、2層構成を採用する。
【0040】
図2は、2層構成の層厚規制部材4と、現像ローラ3との位置関係を示す図である。2層構成の場合、非磁性ブレード15と、磁性ブレード16とを重ね合わせた状態で、規制部材支持体5に支持され、非磁性ブレード15が磁性ブレード16に対して現像ローラ3側に突き出すように構成される。
【0041】
非磁性ブレードは、たとえばSUS304、SUS316などのステンレス鋼からなる板状の部材であり、磁性ブレード16は、磁性体を含んで成る薄板状部材である。磁性ブレード16を構成する磁性体としては、たとえば、ニッケルプレートであってもよく、また磁性を有するステンレス鋼、たとえばJIS−G4305に規定されるSUS430およびSUS410Sが好ましい。これらを用いることで、規制時に現像剤からの圧力にも耐える強度を有し、かつ精度よく層厚を規制することができる。磁性ブレード16は、その磁束密度が0.3T以上1.5T以下(0.3V・s・m−2以上1.5V・s・m−2以下)のものが挙げられる。
【0042】
非磁性ブレード15および磁性ブレード16の厚みは、ブレードの材質、使用する現像剤の種類などに応じて適宜設定すればよいが、いずれのブレードも好適範囲は0.5mm〜3mmに設定され、たとえば1.5mm厚に設定される。
【0043】
現像ローラ3と非磁性ブレード15の先端部との距離は、ドクターギャップDG[mm]とも呼ばれ、DGによって現像ローラ3表面に形成される現像層の層厚みおよびトナーに付与する帯電量を制御することができる。DGについても、ブレードの材質、使用する現像剤の種類および濃度、所望する磁気ブラシの穂の高さなどに応じて適宜設定すればよいが、好適範囲は0.5mm〜1.5mmに設定され、たとえば0.7mmに設定される。
【0044】
層厚規制部材4が2層構成の場合、非磁性ブレード15の先端部と磁性ブレード16の先端部との距離δ[mm]は、磁気ブラシの穂の高さおよび密度を制御し、好適範囲として0.3mm〜1.0mmが好ましく、たとえば0.5mmに設定される。0.3mmより小さいと、現像トルクが上昇しすぎる。1.0mmより大きいと形成される磁界が小さく、十分な穂立ちが形成されない。
【0045】
本発明では、主極N1極によって形成される磁極の中心線とスリーブ12の回転中心軸とを含む平面と、層厚規制部材4の先端とスリーブ12の回転中心軸とを含む平面とのなす角度(以下では「ブレード主極間角度」という)が85〜95度となるように、マグネットローラ11と層厚規制部材4とを配置している。磁極の中心線とは、スリーブ12の回転中心軸とそれぞれの磁極のピーク値を示す位置とを結ぶ線分である。
【0046】
さらに、主極N1と同極性を有し、スリーブ12の回転方向上流側に配置される補極、本実施形態では磁極N2の配置位置を規定する。
【0047】
主極N1極によって形成される磁極の中心線とスリーブ12の回転中心軸とを含む平面と、補極N2極によって形成される磁極の中心線とスリーブ12の回転中心軸とを含む平面とのなす角度(以下では「極間角度」)が、85〜95度となるようにマグネットローラ11の各磁極を配置している。
【0048】
また、N1磁極の磁束密度のピーク値は、たとえば、1000G(100mT)であり、好適範囲としては85mT以上120mT以下である。N2磁極の磁束密度のピーク値は、たとえば、700G(70mT)であり、好適範囲としては50mT以上80mT以下である。
【0049】
流し板6は、現像槽2内において、現像ローラ3の回転方向における層厚規制部材4よりも上流側であって、第1撹拌部材7および第2撹拌部材8の鉛直方向上方に設けられる板状部材である。流し板6は、短手方向の一端が現像ローラ3表面に対向し、間隙を有して離隔し、他端が現像ローラ3から離反する方向に延びる。本実施の形態では、流し板9の鉛直方向上面は、流し板9の短手方向における現像ローラ3側の端部およびその近傍部分では水平方向に対して平行になり、それ以外の部分では現像ローラ3から離反するにつれて鉛直方向下方に下降するように設けられる。
【0050】
流し板6を設けることによって、現像ローラ3で層厚規制部材4によって除去された現像剤の円滑な流れが発生し、トナーの不均一な帯電、トナーのブロッキングなどの発生が防止される。詳しくは、層厚規制部材4によって現像ローラ3表面から取り除かれる現像剤は一時的に現像ローラ3上方の空間に滞留するが、量が多くなると流し板6の鉛直方向上面を現像ローラ3から離反する方向に流過し始める。現像剤は、流し板6の上面に沿って流過し、流し板6の短手方向における現像ローラ3側とは反対側の端部から第2撹拌部材8に向けて落下する。落下した現像剤は第1撹拌部材7および第2撹拌部材8によって他の現像剤および新しく供給されるトナーと均一に混合され、現像ローラ3に向けて再度搬送される。
【0051】
第1撹拌部材7および第2撹拌部材8は、いずれも、現像槽2によって回転自在に支持されかつ図示しない駆動手段によって軸心周りに回転駆動可能に設けられるローラ状部材である。本実施の形態では、第1撹拌部材7は反時計回りに回転し、第2撹拌部材8は時計回りに回転する。第1撹拌部材7は、現像ローラ3を介して感光体ドラム13に対向しかつ現像ローラ3よりも鉛直方向下方になる位置に設けられる。第2撹拌部材8は、第1撹拌部材7を介して現像ローラ3に対向しかつ現像ローラ3よりも鉛直方向下方になる位置に設けられる。第1撹拌部材7および第2撹拌部材8は、現像槽2内に貯留される現像剤を撹拌してトナーに均一な電荷を付与するとともに、帯電状態にある現像剤を汲み上げて現像ローラ3の周囲に送給する。
【0052】
搬送部材9は、現像槽2によって回転自在に支持されかつ図示しない駆動手段によって回転駆動可能に設けられるローラ状部材である。搬送部材9は、第2撹拌部材8を介して第1撹拌部材7に対向し、かつトナー補給口2bの鉛直方向下方に設けられる。搬送部材9は、トナー補給口2bを介して現像槽2内に補給されるトナーを、第2撹拌部材8の周囲に搬送する。
【0053】
トナー濃度センサ10は、第2撹拌部材8の鉛直方向下方の現像槽2底面に装着され、センサ面が現像槽2の内部に露出するように設けられる。トナー濃度センサ10のトナー濃度検知結果は、不図示の制御部へ与えられ、制御部は、トナー濃度検知結果に応じて、トナー補給手段のトナー補給ローラを回転駆動させ、トナーを現像槽2へと補給する。トナー濃度センサ10による検知結果がトナー濃度設定値よりも低いと判定すると、トナーカートリッジを回転駆動させる駆動手段に制御信号を送り、トナーカートリッジを回転駆動させる。
【0054】
トナー濃度センサ10には、一般的なトナー濃度センサを使用でき、たとえば、透過光検知センサ、反射光検知センサ、透磁率検知センサなどが挙げられる。これらの中でも、透磁率検知センサが好ましい。透磁率検知センサには図示しない電源が接続される。電源は、透磁率検知センサを駆動させるための駆動電圧およびトナー濃度の検知結果を制御手段に出力するための制御電圧を透磁率検知センサに印加する。電源による透磁率検知センサへの電圧の印加は、制御手段によって制御される。透磁率検知センサは、制御電圧の印加を受けてトナー濃度の検知結果を出力電圧値として出力する型式のセンサであり、基本的に出力電圧の中央値近傍の感度がよいため、その付近の出力電圧が得られるような制御電圧を印加して用いられる。このような型式の透磁率検知センサは市販されており、たとえば、TS−L、TS−A、TS−K(いずれも商品名、TDK株式会社製)などが挙げられる。
【0055】
本発明の現像装置1で使用する現像剤は、トナーとキャリアとからなる2成分現像剤である。
【0056】
トナーは、たとえば、樹脂と、着色剤、帯電制御剤、オフセット防止剤としてのワックスなどとを溶融混練した後、冷却により固化させ、粉砕分級する溶融混練粉砕法、懸濁重合法、乳化重合法などの重合法によって得られる。トナーには、一般的に流動性および帯電安定性を向上させる目的で、たとえば、シリカ、酸化アルミニウムなどの無機粒子が外添剤として添加される。
【0057】
キャリアとしては、コア材とよばれる磁性を有する粒子と、コア材を被覆する合成樹脂を含むコート材とから構成されるコートキャリアを用いる。
【0058】
コア材を被覆するコート材は、キャリアの体積抵抗率を高くしてトナーへの摩擦帯電付与性能を向上させ、キャリアに対するトナーの付着状態を決定する。また、キャリアの表面状態を好適にし、トナーとキャリアとの摩擦によって外添剤がトナーに埋込まれるトナー劣化を防止することができる。
【0059】
キャリアのコア材粒子としては、実質的に磁性フェライトなどの磁性体のみからなる磁性体コア粒子が用いられる。
【0060】
磁性体コア粒子としては、たとえば、ヘマタイト、マグネタイト、マンガン−亜鉛系フェライト、ニッケル−亜鉛系フェライト、マンガン−マグネシウム系フェライト、リチウム系フェライト、銅−亜鉛系フェライトおよびそれらの混合物をあげることができる。
【0061】
キャリアのコア材粒子は、焼結法またはアトマイズ法などの製造方法によって製造が可能である。また、必要に応じて磁性体粒径分布の分布範囲が狭くなるようにして造粒したり、焼結温度、昇温速度および加熱保持時間などをコントロールしたりすることによって所定の磁気特性を持つ磁性体コア粒子を製造することができる。
【0062】
キャリアは、上記のキャリアのコア材粒子の表面にコート樹脂を被覆し、コート樹脂層を形成することによって得られる。
【0063】
たとえば、コート材樹脂中に添加量が異なるようにして導電性微粉末を分散させることによって体積抵抗率の異なるコート材樹脂が得られる。導電性微粉末としては、たとえば、アルミニウム、銅、ニッケル、銀などの金属の粉体、これらの金属の合金もしくは混合物の粉体またはこれらの金属の鱗片状金属粉体もしくは金属短繊維、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化スズなどの導電性金属酸化物、高分子電解質などの高分子導電剤、カーボンファイバー、カーボンブラック、グラファイト粉体またはこれらの導電性物質で表面を被覆した導電性粉体などが挙げられる。高分子電解質などの高分子導電剤としては、たとえば、ポリアミド、ポリアミン、ポリアルキレンオキシド、ポリエステル、ポリアルキレンサルファイド、ポリフォスファゼンおよびそれらの誘導体、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリパラフェニレンビニレン、ポリチオフェンビニレンなどが挙げられる。
【0064】
コート材樹脂に用いられる樹脂としては、熱可塑性樹脂であっても熱硬化性樹脂であっても使用することができ、絶縁性樹脂であることが好ましい。熱可塑性樹脂としては、たとえば、ポリスチレンなどのスチレン系樹脂、ポリメチルメタクリレートおよびスチレン−アクリル酸共重合体などのアクリル系樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、フルオロカーボン樹脂、パーフルオロカーボン樹脂、溶剤可溶性パーフルオロカーボン樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリビニルピロリドン、石油樹脂、セルロース,酢酸セルロース,硝酸セルロース,メチルセルロース,ヒドロキシメチルセルロース,ヒドロキシエチルセルロース,ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース誘導体、ノボラック樹脂、低分子量ポリエチレン、飽和アルキルポリエステル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアリレートなどの芳香族ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂が挙げられる。熱硬化性樹脂としては、たとえば、フェノール樹脂、変性フェノール樹脂、マレイン樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、具体的にはたとえば無水マレイン酸−テレフタル酸−多価アルコールの重縮合によって得られる不飽和ポリエステル、尿素樹脂、メラミン樹脂、尿素−メラミン樹脂、キシレン樹脂、トルエン樹脂、グアナミン樹脂、メラミン−グアナミン樹脂、アセトグアナミン樹脂、グリプタール樹脂、フラン樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリウレタン樹脂などが挙げられる。
【0065】
上述した樹脂を、単独でまたは2種以上混合して使用することができる。耐久性を向上させる目的で、熱可塑性樹脂に硬化剤などを混合し硬化させて使用することもできる。
【0066】
キャリアのコート樹脂層を形成する方法としては、コア材粒子を被覆する際に、コア材粒子同士が接着しないようにコート樹脂が迅速に被覆され、かつコア材粒子を常に流動せしめるような方法で被覆と乾燥とを同時に進行させる処理方法が好ましく用いられる。
【0067】
被覆キャリアを好ましく製造する方法としては、流動床被覆装置を用い、キャリアコア粒子を浮遊流動させながら、酢酸エチル、トルエン、キシレンなどの溶剤にコート材樹脂を均一に分散させたコート材樹脂溶液をスプレーし、コア材粒子表面に被覆膜を形成させる方法がある。具体的には、(a)コア材粒子からなる流動層を筒状の管体内を上昇する気体流によって形成し、(b)さらに被覆層樹脂溶液を流動層の移動方向に対して垂直方向から供給し、(c)かつコート材樹脂溶液をコア材粒子にスプレーによって塗布する。コート材樹脂を溶解する溶剤の選択、処理温度、処理時間などの条件を充分に制御し、上述の(a)〜(c)の方法を用いることによって、効率よく優れた特性を有するコート材被覆キャリアを製造することができる。
【0068】
また、コート材樹脂被覆に使用するコート材樹脂溶液は、体積抵抗率の高いものから低いものへと連続的に変化するようにスプレーノズル24に供給されることが好ましい。このようなコート材樹脂溶液供給装置における体積抵抗率が高いものから低いものへと連続的に変化するような供給は、たとえば次のようにして実現することができる。
【0069】
キャリアがこのようなコート材を備えることによって耐久性が向上し、長期使用においても潜像担持体に安定してトナーを供給することができるので、高画質の画像の確保が可能となる。
【0070】
なお、コア材粒子表面に形成したコート材層を安定させるために、焼き付けを行うのが好ましい。焼き付けに使用する装置としては、外部加熱方式でも内部加熱方式でもよく、たとえば、固定式電気炉、流動式電気炉、ロータリー式電気炉、バーナー炉などが挙げられる。
【0071】
コート樹脂で被覆されたコートキャリアは、平均粒径が30〜60μmであることが好ましい。このような微小キャリアを用いることで、出力画像の品質向上を実現することができる。
【0072】
本発明においては、キャリアの磁気特性を規定する。
キャリアの、1,000Oeの磁場を印加したときの飽和磁化が、130emu/cm以上200emu/cm以下であることが好ましい。飽和磁化が130emu/cm以上より小さいとうまく穂立ちが行われず、200emu/cmより大きいと現像トルクが大きくなってしまう。
【0073】
キャリアの材質の観点からは、飽和磁化が、130emu/cm以上200emu/cm以下の範囲は、フェライト系で実現できるが、飽和磁化が130emu/cm以上より小さいと、樹脂系キャリアで実現されるため、比重が軽いために飛散しやすく、温度や湿度の影響を受けて帯電特性、流動性などが劣化しやすい。また、飽和磁化が200emu/cmより大きいと、鉄粉系キャリアで実現されるため、キャリアが欠けやすいなどの問題がある。
【0074】
キャリアの飽和磁化は、下記の条件下で測定した値である。
測定装置:直流磁化B−H特性測定装置(BHS-40型;理研電子株式会社製)
印加磁界:20Oe(エルステッド)
巻き線 :一次側 70T、二次側 10T
測定試料:ステンレス材(SUS410S、SUS430)
寸法167.5×17.5×1.5mm
【0075】
第1撹拌部材7で汲み上げられた現像剤は、現像ローラ3と流し板6との間を通過し、層厚規制部材4の前に蓄積される。層厚規制部材4と補極N2とで形成された磁界の影響を受け、蓄積された現像剤は、現像ローラ3表面に低密度で薄層の穂立ちが形成され、現像剤の搬送量も減少させることができる。また、層厚規制部材4による帯電機会が増加するため、高い帯電性能が得られる。
【0076】
具体的には、トナー帯電量としては、非磁性ブレードのみの場合の15〜30μC/gから、30〜50μC/gまで引き上げることが可能である。また、トナー帯電量が上昇することによる現像濃度の低下については、穂立ち自体が疎であるため、現像剤担持体のスリーブ表面に近いトナーも現像に寄与させることができること、または現像領域での交流(AC)電圧を重畳させることで、対応することができる。
【0077】
本発明では、主極N1に対してブレード主極間角度が約90度の位置に層厚規制部材4が配置されているため、層厚規制部材4と現像ローラ3との近接点を境として、穂立ちに対して現像剤の分離と供給の有効に行うことができる。
【0078】
ここで、キャリアの飽和磁化が小さすぎると、磁性ブレードと補極N2とで形成された磁界でうまく穂立ちが行われず現像剤の搬送性に乏しくなり、また大きすぎると、穂の密度が低くなりすぎて、現像濃度が低下してしまう。
【0079】
したがって、キャリアの飽和磁化を上記のように規定することで、現像トルクを抑えてトナーの帯電量を確保できるとともに、現像剤の供給と分離を効率よく行い、現像剤の搬送性を向上することができる。さらに層厚規制部材による現像剤の劣化を抑えて長寿命化を図ることができる。
【0080】
このようなキャリアの飽和磁化の規定に加えて、磁性ブレードの最大比透磁率を規定することも有効である。
【0081】
最大比透磁率μmは、ヒステリシス曲線に基づいて測定され、絶対透磁率を真空の透磁率で除した比透磁率の最大値である。本発明において、磁性ブレードの材料として最比大透磁率が450〜700であることが好ましい。
【0082】
磁性ブレード材質の最比大透磁率が450より小さいとうまく穂立ちが行われず、700より大きいと現像トルクが大きくなってしまう。最大比透磁率は、キャリアの飽和磁化の測定と同条件で測定した値である。
【0083】
図3は、本発明の第2実施形態である画像形成装置100の構成を模式的に示す断面図である。画像形成装置100は、複写モードと印刷モードとを有し、複写モードでは後記するスキャナ装置20において読み取られる原稿の画像情報に応じて原稿の複写物を印刷し、印刷モードでは画像形成装置100にネットワークを介して接続される外部機器からの画像情報に応じてそれに対応する画像を印刷するデジタル複合機である。画像形成装置100は、現像装置1と、感光体ドラム13と、スキャナ部20と、帯電装置21と、転写装置22と、給紙トレイ23、定着装置24、露光装置25、クリーニング装置26および排紙トレイ27を含む。
【0084】
感光体ドラム13は、図示しない駆動手段によって軸線周りに回転駆動可能に支持され、その表面に静電潜像ひいてはトナー像が形成される感光膜を有するローラ状部材である。感光体ドラム13には、たとえば、図示しない導電性基体と、導電性基体表面に形成される図示しない感光膜とを含むローラ状部材を使用できる。導電性基体には、円筒状、円柱状、シート状などの導電性基体を使用でき、その中でも円筒状導電性基体が好ましい。感光膜としては、有機感光膜、無機感光膜などが挙げられる。有機感光膜としては、電荷発生物質を含む樹脂層である電荷発生層と、電荷輸送物質を含む樹脂層である電荷輸送層との積層体、1つの樹脂層中に電荷発生物質と電荷輸送物質とを含む樹脂層などが挙げられる。無機感光膜としては、酸化亜鉛、セレン、アモルファスシリコンなどから選ばれる1種または2種以上を含む膜が挙げられる。導電性基体と感光膜との間には、下地膜を介在させてもよく、感光膜の表面には主に感光膜を保護するための表面膜(保護膜)を設けてもよい。
【0085】
帯電装置21は、感光体ドラム13に圧接するように設けられる。帯電装置21には、図示しない電源が接続され、帯電装置21に電圧を印加する。帯電装置21は電源から電圧の印加を受けて、感光体ドラム13表面を所定の極性および電位に帯電させる。具体的には、帯電ブラシ型帯電器、チャージャー型帯電器、鋸歯型帯電器、イオン発生装置、磁気ブラシなどの接触方式の帯電器などを使用できる。
【0086】
露光装置25は、スキャナ装置20において読み取られる原稿の画像情報または外部機器からの画像情報が入力され、画像情報に応じた信号光を、帯電状態にある感光体ドラム13表面に照射する。これによって、感光体ドラム13表面に、画像情報に応じた静電潜像が形成される。露光装置25には光源を含むレーザスキャニングユニットが用いられる。レーザスキャニングユニットは、たとえば、光源、ポリゴンミラー、fθレンズ、反射ミラーなどを組合せたユニットである。光源としては、たとえば、半導体レーザ、LEDアレイ、エレクトロルミネッセンス(EL)素子などを使用できる。
【0087】
現像装置1は、図1に示した本発明の現像装置1である。
転写装置22は、図示しない支持手段によって回転自在に支持されかつ図示しない駆動手段によって回転可能に設けられ、かつ感光体ドラム13に圧接するように設けられるローラ状部材である。転写装置22には、たとえば、直径8〜10mmの金属製芯金と、金属製芯金の表面に形成される導電性弾性層とを含むローラ状部材が用いられる。金属製芯金を形成する金属としては、ステンレス鋼、アルミニウムなどを使用できる。導電性弾性層としては、エチレン−プロピレンゴム(EPDM)、発泡EPDM、発泡ウレタンなどのゴム材料にカーボンブラックなどの導電材を配合したゴム材料を使用できる。感光体ドラム13と転写装置22との圧接部(転写ニップ部)に、感光体ドラム13の回転によってトナー像が搬送されるのに同期して、給紙トレイ23から図示しないピックアップローラおよびレジストローラを介して記録媒体が1枚ずつ供給される。記録媒体が転写ニップ部を通過することによって、感光体ドラム13表面のトナー像が記録媒体に転写される。転写装置22には図示しない電源が接続され、トナー像を記録媒体に転写する際に、トナー像を構成するトナーの帯電極性とは逆極性の電圧を転写装置22に印加する。これによって、トナー像が記録媒体に円滑に転写される。
【0088】
クリーニング装置26は、図示しないクリーニングブレードと、図示しないトナー貯留槽とを含む。クリーニングブレードは、感光体ドラム13の長手方向に平行に延び設けられかつその短手方向の一端が感光体ドラム13表面に当接するように設けられる板状部材である。クリーニングブレードは、記録媒体にトナー像を転写した後に感光体ドラム13表面に残留するトナー、紙粉などを感光体ドラム13表面から取り除く。トナー貯留槽は内部空間を有する容器状部材であり、クリーニングブレードによって除去されるトナーを一時的に貯留する。クリーニング装置26によって、トナー像を転写した後の感光体ドラム13表面が清浄化される。
【0089】
定着装置24は、定着ローラ28と、加圧ローラ29とを含む。定着ローラ28は、図示しない支持手段によって回転自在に支持され、かつ図示しない駆動手段によって軸線回りに回転可能に設けられるローラ状部材である。定着ローラ28は、その内部に図示しない加熱手段を有し、転写ニップ部から搬送される記録媒体に担持される未定着トナー像を構成するトナーを加熱し、溶融させて記録媒体に定着させる。定着ローラ28としては、たとえば、芯金と、弾性層とを含むローラ状部材を使用する。芯金は、鉄、ステンレス、アルミニウムなどの金属によって形成される。弾性層は、たとえば、シリコーンゴム、フッ素ゴムなどの弾性材料で形成される。加熱手段は図示しない電源から電圧印加を受けて発熱する。加熱手段にはハロゲンランプ、赤外線ランプなどを使用できる。
【0090】
加圧ローラ29は回転自在に支持されかつ図示しない加圧手段によって定着ローラ28に対して圧接するように設けられるローラ状部材である。加圧ローラ29は定着ローラ28の回転に従動回転する。定着ローラ28と加圧ローラ29との圧接部が定着ニップ部である。加圧ローラ29は、定着ローラ28によるトナー像の記録媒体への加熱定着に際し、溶融状態にあるトナーを記録媒体に対して押圧することによって、トナー像の記録媒体への定着を促進する。加圧ローラ29には、定着ローラ28と同じ構成のローラ状部材を使用できる。加圧ローラ29の内部にも加熱手段を設けてもよい。加熱手段には定着ローラ28内部の加熱手段と同様のものを使用できる。
【0091】
定着装置24によれば、トナー像が転写された記録媒体を定着ニップ部に通過させ、トナー像を構成するトナーを溶融させるとともに記録媒体に押圧することによって、トナー像を記録媒体に定着させ、画像が形成される。画像が形成された記録媒体は、図示しない搬送手段によって、画像形成装置100の鉛直方向側面に設けられる排紙トレイ27に排出され、積載される。
【0092】
給紙トレイ23は、普通紙、コート紙、カラーコピー用紙、OHPフィルムなどの記録媒体を収容するトレイである。給紙トレイ23は複数設けられ、それぞれの給紙トレイ23にサイズや種類の異なる記録媒体が収容される。記録媒体のサイズには、A3、A4、B5、B4などがある。また、複数の給紙トレイ23に同じサイズの記録媒体を収容してもよい。図示しないピックアップローラと、搬送ローラと、レジストローラとによって、感光体ドラム13表面のトナー像が転写ニップ部に搬送されるのに同期して、記録媒体が1枚ずつ送給される。
【0093】
スキャナ部20には図示しない原稿セットトレイ、自動原稿搬送装置(RADF、 Reversing Automatic Document Feeder)などが設けられるとともに、図示しない原稿読み取り手段が設けられる。自動原稿搬送装置は、原稿セットトレイに載置される原稿を、原稿読み取り手段の原稿載置台に搬送する。原稿読み取り手段は、原稿載置台と、原稿走査ユニットと、反射手段と、光電変換素子(Charge Coupled Device、以下「CCD」という)ライセンサなどを含み、原稿載置台に載置される原稿の画像情報を複数ライン毎、たとえば10ライン毎に読み取る。原稿載置台は、画像情報を読み取る原稿を載置するためのガラス製板状部材である。原稿走査ユニットは図示しない光源と第1の反射ミラーとを含み、原稿載置台の鉛直方向下面に沿って平行に一定速度Vで往復移動し、原稿載置台に載置される原稿の画像形成面に光を照射する。光の照射によって反射光像が得られる。光源は原稿載置台に載置される原稿に照射する光の光源である。第1の反射ミラーは反射光像を反射手段に向けて反射する。反射手段は、図示しない第2の反射ミラーと第3の反射ミラーと光学レンズとを含み、原稿走査ユニットで得られる反射光像を光電変換素子ラインセンサ上で結像させる。反射手段は原稿走査ユニットの往復移動に追随してV/2の速度で往復移動する。第2,第3の反射ミラーは反射光像が光学レンズに向うように反射光像を反射させる。光学レンズは反射光像を光電変換素子ラインセンサ上に結像させる。CCDラインセンサは、光学レンズによって結像される反射光像を電気信号に光電変換する図示しないCCD回路を含み、画像情報である電気信号を制御手段の中の画像処理部に出力する。画像処理部は、原稿読み取り手段またはパーソナルコンピュータなどの外部装置から入力される画像情報を電気信号に変換し、露光手段22に出力する。
【0094】
以下、本発明の実施例を説明する。
(試験1)
試験1では、キャリアの飽和磁化を変化させたときの現像トルクと、現像搬送性に与える影響について評価した。
【0095】
現像剤搬送量を測定する際、以下の条件で行った。
画像形成装置は、シャープ株式会社製MX−5500Nを使用した。
【0096】
使用した2成分現像剤は、トナー濃度を5重量%とし、トナーは、体積平均粒径6.5μmのポリエステル系トナーを用い、キャリアは、体積平均粒径45μmの樹脂コートフェライト系キャリアを用いた。
【0097】
現像条件は、DG=0.8mm、感光体13と現像ローラ3との距離が1.0mm、主極N1の磁束密度が100mT、補極N2の磁束密度が70mTとした。
【0098】
層厚規制部材は、非磁性ブレード15の厚みが1.5mm、磁性ブレード16の厚みも1.5mmとした。2層構成ではδ=0.3mmとした。
【0099】
磁性ブレードの最大比透磁率は600とした。
感光体13のプロセス速度は540mm/secとし、スリーブ12の回転速度は1080mm/secとした。
【0100】
・現像トルク
現像トルクは、スリーブ12の回転駆動トルクであり、一旦現像器を画像形成装置から取り出し、トルクゲージBTG36CN(株式会社東日製作所製)を用い、測定部に現像器駆動用ギアを取り付けて測定した。なお、判定基準を以下のようにした。
OK:50Ncm未満
NG:50Ncm以上
【0101】
・現像搬送性
現像搬送性は、スリーブ上に形成された現像剤のトナー濃度をスリーブ長手方向で5箇所、円周方向で3箇所の合計5×3=15箇所測定した。なお、判定基準を以下のようにした。
OK:全箇所での測定値が±0.1重量%の範囲内にある
NG;1箇所でも0.1重量%を超える測定値がある
評価結果を表1に示す。
【0102】
【表1】

【0103】
検討例1の場合、飽和磁化が120emu/cmと小さかったため現像剤搬送性が悪く、検討例5の場合、飽和磁化が210emu/cmと大きかったため現像トルクが高くなり過ぎた。
【0104】
検討例2〜4は、飽和磁化が130emu/cm以上200emu/cm以下であり、現像トルクは低く、現像搬送性は良好であった。
【0105】
(試験2)
試験2では、磁性ブレードの最大比透磁率を変化させたときの現像トルクと、現像搬送性に与える影響について評価した。
【0106】
キャリアの飽和磁化は160emu/cmとし、現像条件および評価方法については、試験1と同様とした。
評価結果を表2に示す。
【0107】
【表2】

【0108】
検討例6の場合、最大比比透磁率が430と小さかったため現像剤搬送性が悪く、検討11の場合、最大比比透磁率が720と大きかったため現像トルクが高くなり過ぎた。
【0109】
検討例7〜10は、最大比透磁率が450〜700以下であり、現像トルクは低く、現像搬送性は良好であった。
【0110】
(試験3)
非磁性ブレードのみからなる1層構成の層厚規制部材を用いた場合(比較例)と、非磁性ブレードと磁性ブレードとからなる2層構成の層厚規制部材を用いた場合(実施例)のキャリアの劣化について検討した。
【0111】
記録紙を通さずに、現像を連続して行ったとき(空転印字)のキャリアのコート残存率を測定し、キャリアの劣化を評価した。
【0112】
空転印字における条件は、現像トルクおよび現像搬送性の評価と同様の条件とし、A4サイズ(印字率6%)の画像を現像した。
【0113】
・コート残存率
コート残存率は、蛍光X線測定により、特性X線強度に基づいてキャリアに含まれるケイ素(Si)と鉄(Fe)との含有比(Si/Fe)を測定し、使用開始時を100%としたときの、所定の空転印字枚数ごとの残存率を測定した。なお、Siはコート樹脂に含まれる元素であり、Feはコア材に含まれる元素である。
【0114】
蛍光X線分析装置(商品名:ZSX・PrimusII、株式会社リガク製)において、X線源のターゲット:Rh、X線源への印加電圧:40kV、電流値:50mAとし、光学系の分光結晶にはLiF(対象:Si)またはペンタエリスリトール(PET、対象:Fe)を用いた。また検出器にはシンチレーションカウンタとフォトカウンタとを用い、さらに分光器の走査はスキップスキャン法を用い、PHA範囲を100〜300に設定し、1ステップあたり0.05度の角度に設定して特性X線強度の測定を行った。
【0115】
図4は、コート残存率に対して空転印字枚数が与える影響を示すグラフである。
縦軸は、コート残存率(%)を示し、横軸は、空転印字枚数(×10枚)を示す。折れ線Aは実施例を示し、折れ線Bは比較例を示す。
【0116】
グラフからわかるように、実施例は比較例に比べて残存率の低下が緩やかであり、キャリアの劣化が抑えられていることがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】本発明の第1実施形態である現像装置1の構成を模式的に示す断面図である。
【図2】層構成の層厚規制部材4と、現像ローラ3との位置関係を示す図である。
【図3】本発明の第2実施形態である画像形成装置100の構成を模式的に示す断面図である。
【図4】コート残存率に対して空転印字枚数が与える影響を示すグラフである。
【符号の説明】
【0118】
1 現像装置
2 現像槽
3 現像ローラ
4 層厚規制部材
5 規制部材支持体
6 流し板
7 第1撹拌部材
8 第2撹拌部材
9 搬送部材
10 トナー濃度センサ
11 マグネットローラ
12 スリーブ
13 感光体ドラム
15 非磁性ブレード
16 磁性ブレード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電潜像が形成される感光体を臨んで回転自在に設けられるスリーブとスリーブ内部に固定配置されて複数の磁極を形成するマグネットローラとを有し、トナーとキャリアとを含む2成分現像剤を担持して搬送する現像ローラと、
前記現像ローラに対向するように設けられ、前記現像ローラが搬送する2成分現像剤の層厚を規制する層厚規制部材とを有する現像装置であって、
前記マグネットローラは、前記感光体に対してトナーを供給するトナー供給領域に、磁極を形成する主極と、前記主極によって形成される磁極よりも前記スリーブの回転方向上流側に配置され、前記主極によって形成される磁極と同極の磁極を形成する補極とを有し、
前記層厚規制部材は、先端部を前記現像ローラに近接させた非磁性ブレードと、前記非磁性ブレードを前記現像ローラ方向に突き出させて支持固定する磁性ブレードとを有し、
前記主極によって形成される磁極の中心線と前記スリーブの回転中心軸とを含む平面と、前記層厚規制部材先端部と前記スリーブの回転中心軸とを含む平面とのなす角、および前記主極によって形成される磁極の中心線と前記スリーブの回転中心軸とを含む平面と、前記補極によって形成される磁極の中心線と前記スリーブの回転中心軸とを含む平面とのなす角が85度以上95度以下であり、
前記2成分現像材を構成するキャリアの、100mTの磁束密度における飽和磁化が130emu/cm以上200emu/cm以下であることを特徴とする現像装置。
【請求項2】
前記磁性ブレードは、直流最大比透磁率が450〜700であることを特徴とする請求項1記載の現像装置。
【請求項3】
前記非磁性ブレードの先端部と前記磁性ブレードの先端部との距離が0.3〜1.0mmであることを特徴とする請求項1または2記載の現像装置。
【請求項4】
前記スリーブの周速度が、350mm/sec以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の現像装置。
【請求項5】
前記キャリアの平均粒径が、30〜60μmであることを特徴とする1〜4のいずれか1つに記載の現像装置。
【請求項6】
表面に静電潜像が形成される感光体と、感光体表面を帯電させる帯電装置と、感光体表面に静電潜像を形成する露光装置と、感光体表面の静電潜像にトナーを供給してトナー像を形成する現像装置と、感光体表面のトナー像を記録媒体に転写する転写装置と、感光体表面を清浄化するクリーニング装置と、トナー像を記録媒体に定着させる定着装置とを含み、電子写真方式を利用して画像を形成する画像形成装置において、
前記現像装置は、請求項1〜5のいずれか1つの現像装置であることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−224904(P2008−224904A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−60946(P2007−60946)
【出願日】平成19年3月9日(2007.3.9)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】