説明

現像装置並びにこれを備える画像形成装置及びプロセスカートリッジ

【課題】外周面に複数の凹部が形成された現像剤担持体を用いた場合に、現像装置外部へのトナー飛散を防ぐことができる現像装置並びにこれを備える画像形成装置及びプロセスカートリッジを提供する。
【解決手段】マグネットローラ113は、搬送用磁極であるP2極、P3極を有しており、また、ケース125の開口部よりも現像スリーブ132の回転方向下流側に、ケース125の内壁と現像スリーブ132の外周面との間に所定の空隙を有するように構成した。現像スリーブ132は、その外周面に、凹み139を互いに間隔をあけて分布するように複数設けたものであり、現像スリーブ132の周方向において互いに隣り合う凹み139の配設ピッチPcを、現像スリーブ132の外周面におけるP3極の長手方向と直交する方向の磁束密度半値幅に相当する部分の長さWGP3よりも短く設定した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナーを含む現像剤を使用して像担持体上の潜像を現像する現像装置、並びに、これを備えた複写機、ファクシミリ、プリンタ等の画像形成装置及びプロセスカートリッジに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の画像形成装置として、二成分磁気ブラシ現像を用いるものが知られている。二成分磁気ブラシ現像は、トナーが磁性粉からなるキャリアに静電気力で吸着した現像剤を像担持体と対向する現像領域に搬送し、像担持体上に形成された静電潜像を現像してトナー像化するための現像剤担持体を用いる。
【0003】
この現像剤担持体は、例えば、円筒状の現像スリーブを有し、この現像スリーブ表面に現像剤の穂立ちを生じさせるように磁界を形成する磁界発生手段(例えば、マグネットローラ)を現像スリーブ内部に有している。現像剤の穂立ちの際には、現像剤を構成するキャリアがマグネットローラで生じる磁力線に沿うように現像スリーブ上に穂立ちしており、このキャリアに対して帯電トナーが付着している。マグネットローラは、複数の磁極を有しているが、それぞれの磁極を形成する磁石は、棒状など成形体に形成され、特に、現像スリーブ表面の現像領域部分に対応する部分には、現像剤を穂立ちさせる現像主磁極を有している。この穂立ちを起こした現像剤は、現像スリーブ及びマグネットローラの少なくとも一方を回転させることにより、周方向に移動させることができる。一般的には、現像剤を搬送しやすくするために、現像スリーブの表面に、溝や不規則な凹凸(サンドブラストやビーズブラストなどによる凹凸)を設けている。特に、カラー複写機や、プリンタでは、画像品質面の優位性から、サンドブラストやビーズブラストなどによる不規則な凹凸を設けた現像スリーブが主流となっている。このような溝加工、サンドブラスト加工等の荒らし加工は、高速で回転する現像スリーブの表面で現像剤がスリップして停滞することにより生じる画像濃度の低下の発生を防止するために行われる。
【0004】
しかし、上記トナーとキャリアとの吸着が不十分な場合、現像領域内もしくは現像装置から現像領域に現像剤を搬送及び回収する経路において、トナーがキャリアから遊離し、現像装置外部へ飛散するおそれがある。トナーとキャリアとの吸着が不十分な場合としては、トナーとキャリアとを混合した際の攪拌不足や現像剤の劣化などによる帯電の不足がある。特に、現像装置を着脱可能に構成した画像形成装置では、サービスマンやユーザーが、直接、操作や確認を行う現像装置の着脱方向手前側は、トナー飛散が極力少ないことが望ましい。
【0005】
上記トナー飛散を抑える為に、現像装置には現像スリーブと現像装置内壁にケーシングギャップと呼ばれる空隙を設けている。ケーシングギャップとは、現像領域を通過した後の現像剤が通過する開口部近傍の現像スリーブ表面と現像装置内壁との間のギャップであり、マグネットローラの磁極に対向して設けられている。現像剤はマグネットローラで生じる磁力線に沿って穂立ちする為、ケーシングギャップを穂立ちした剤が現像スリーブの回転に伴って通過する際に、現像装置内部への吸い込み気流が発生し、現像装置外部にトナーが飛散することを抑えることができる。
【0006】
上記現像装置に用いる現像スリーブとして、特許文献1には、表面に規則的に間隔をあけて複数の凹部が設けられた現像スリーブが開示されている。この現像スリーブは、表面にサンドブラスト等による不規則な凹凸が設けられた現像スリーブと同じような現像スリーブ上の剤密度を保つことができ、かつ表面に溝が設けられた現像スリーブと同程度の現像剤搬送力をもつ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1で開示されているような表面に規則的に間隔をあけて複数の凹部が設けられた現像スリーブを用いた場合、現像スリーブ上で穂立ちした現像剤がケーシングギャップを通過する際に、現像装置内部への吸い込み気流が十分に発生しないことにより、現像装置外部にトナーが飛散するおそれがあった。
【0008】
本発明は以上の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、外周面に複数の凹部が形成された現像剤担持体を用いた場合に、現像装置外部へのトナー飛散を防ぐことができる現像装置並びにこれを備える画像形成装置及びプロセスカートリッジを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、非磁性部材からなる回転駆動可能なスリーブ状の中空体の内部に磁界発生手段が配置され該磁界発生手段の磁力により該中空体の外周面上に磁性キャリアとトナーとを含む二成分現像剤を担持して搬送する現像剤担持体と、該現像剤担持体上に担持される二成分現像剤を収容する現像剤収容部と、該現像剤担持体に担持された二成分現像剤の層厚を規制する現像剤規制部材と、該現像剤担持体と、該現像剤収容部と、該現像剤規制部材とを収容する筐体とを備え、上記現像剤収容部内から上記磁界発生手段の磁力により上記現像剤担持体上に担持した二成分現像剤を、上記現像剤規制部材により規制した後に、上記筐体に設けられた開口部から上記中空体の外周面の一部を露出させて潜像担持体と対向する現像領域を通過させ、再び現像剤収容部内に戻す現像装置であって、上記磁界発生手段は、上記現像領域を通過した後の二成分現像剤を上記現像剤担持体から離脱させる位置まで搬送する磁力を発生させるための搬送用磁極を有する磁界発生部材を有し、上記筐体の開口部よりも上記中空体の回転方向下流側であって、上記二成分現像剤を上記現像剤担持体から離脱させる位置までの間に、該筐体の内壁と該中空体の外周面との間に所定の空隙を有するように構成し、上記中空体は、その外周面に、複数の凹部を互いに間隔をあけて分布するように設けたものであり、該中空体の周方向において互いに隣り合う該凹部の配設ピッチを、該中空体の外周面における上記磁界発生部材の長手方向と直交する方向の磁束密度半値幅に相当する部分の長さよりも短く設定したことを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、請求項1の現像装置において、上記中空体の周方向において互いに隣り合う凹部は、該中空体の回転軸方向に互いにずらすように設けられ、該中空体の回転軸方向における該凹部のずれ量は、該凹部の回転軸方向の長さ以下であることを特徴とするものである。
また、請求項3の発明は、請求項1又は2の現像装置において、画像形成装置本体に対して上記中空体の回転軸方向に着脱可能に構成し、上記中空体の回転軸方向に対して当該現像装置自体の着脱方向手前側から奥側に向けた気流を発生するように構成したことを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、請求項3の現像装置において、上記中空体の周方向における上記凹部の配設ピッチが、当該現像装置自体の着脱方向手前側に比べ、奥側が小さいことを特徴とするものである。
また、請求項5の発明は、請求項3又4の現像装置において、上記中空体の外周面に設けられた上記凹部は、長円状又は楕円状の形状をなし、該凹部の長手方向が該中空体の回転軸方向に対して斜めに角度を有し、該中空体の回転軸方向に対して当該現像装置自体の着脱方向手前側から奥側に向けた気流を発生するように該角度を設定したことを特徴とするものである。
また、請求項6の発明は、潜像担持体と、該潜像担持体と対向する現像領域に磁性キャリアおよびトナーからなる二成分現像剤を搬送して該潜像担持体上の潜像に該トナーを付着させて現像する現像装置とを一体的に支持し、該現像装置による現像によって得られるトナー像を潜像担持体上から最終的に記録材上へ転移させることで該記録材上に画像を形成する画像形成装置に対して着脱自在なプロセスカートリッジにおいて、上記現像装置として、請求項1乃至5のいずれかの現像装置を用いることを特徴とするものである。
また、請求項7の発明は、潜像担持体と、該潜像担持体と対向する現像領域に磁性キャリアおよびトナーからなる二成分現像剤を搬送して該潜像担持体上の潜像に該トナーを付着させて現像する現像装置とを一体的に支持し、該現像装置による現像によって得られるトナー像を潜像担持体上から最終的に記録材上へ転移させることで該記録材上に画像を形成する画像形成装置に対して着脱自在なプロセスカートリッジを備えた画像形成装置において、上記プロセスカートリッジとして、請求項6のプロセスカートリッジを用いることを特徴とするものである。
また、請求項8の発明は、請求項7の画像形成装置において、上記トナーは、少なくとも、窒素原子を含む官能基を有するポリエステルプレポリマー、ポリエステル、着色剤及び離型剤を有機溶媒中に分散させたトナー材料液を、水系媒体中で架橋及び伸張反応の少なくとも一方を行って得られるトナーであることを特徴とするものである。
【0010】
本発明において、現像剤を構成する磁性キャリアが磁界発生部材で生じる磁力線に沿うように中空体の外周面に設けられた凹部で穂立ちするとともに、この穂立ちした磁性キャリアにトナーが付着する。この現像剤の穂立ちは、中空体の外周面における磁束密度半値幅に相当する部分で生じる。ここで、中空体の周方向において互いに隣り会う凹部の配設ピッチが、中空体の外周面における磁束密度半値幅に相当する部分の長さよりも短く設定されているので、中空体の外周面の磁束密度半値幅に相当する部分には、少なくとも2つの凹部が存在し、これらの凹部で担持された現像剤が穂立つ。これらの凹部で担持された現像剤が穂立つことによって、中空体の外周面及び筐体の内壁との間の所定の空隙が仕切られ、中空体の回転により、仕切られた空隙に存在する空気が、現像装置の内部にある現像剤収容部に搬送される。そして、空気が現像剤収容部に搬送されると上記空隙で負圧が生じ、現像装置の開口部から外部の空気が流れ込んで吸い込み気流が発生する。従って、現像装置の開口部近傍で帯電不足のトナーが遊離したとしても、上記吸い込み気流に吸い込まれて現像装置内部に運ばれ、現像装置外部へ飛散することがない。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、外周面に複数の凹部が形成された現像剤担持体を用いた場合に、現像装置外部へのトナー飛散を防ぐことができるという優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の構成を正面からみた説明図。
【図2】図1の画像形成装置に用いるプロセスカートリッジの断面図。
【図3】図2中のIII−III線に沿う断面図。
【図4】図1の画像形成装置の現像スリーブの斜視図。
【図5】図4の現像スリーブの外表面を展開して模式的に示す説明図。
【図6】(a)は、図5の現像スリーブの外表面の一部を模式的に拡大して示す説明図。(b)は、図6(a)中のVIB−VIB線に沿う断面図。(c)は、図6(a)中のVIC−VIC線に沿う断面図。
【図7】図4の現像スリーブの外表面の一部を拡大して示す説明図。
【図8】(a)は、図4の現像スリーブの外表面に切削加工を施す表面処理装置の概略の構成を示す側面図。(b)は、図8(a)中のVIIIB−VIIIB線に沿う断面図。(c)は、図8(b)のエンドミルを拡大して示す側面図。(d)は、図8(c)のエンドミルの先端の正面図。
【図9】(a)は、図6(a)の現像スリーブの変形例の外表面の一部を模式的に拡大して示す説明図。(b)は、図9(a)中のIXB−IXB線に沿う断面図。(c)は、図9(a)中のIXC−IXC線に沿う断面図。
【図10】図9(b)の一部を拡大して示す断面図。
【図11】図9の現像スリーブの外表面に設けられた凹みを形成するためのエンドミルを拡大して示す側面図。
【図12】図6(b)の現像スリーブの外表面に形成された凹みの変形例を示す断面図。
【図13】図6(b)の現像スリーブの外表面に形成された凹みの他の変形例を示す断面図。
【図14】図5の現像スリーブの変形例の外表面を展開して模式的に示す説明図。
【図15】図5の現像スリーブの他の変形例の外表面を展開して模式的に示す説明図。
【図16】(a)は、図5の現像スリーブの更に他の変形例の外表面を展開して模式的に示す説明図。(b)は、図16(a)に示された凹みを形成するためのエンドミルを拡大して示す側面図。
【図17】現像装置の一例を示す概略構成図。
【図18】現像装置のP2極及びP3極近傍の拡大図。
【図19】トナーの飛散を説明するための比較例を示すP2極及びP3極近傍の拡大図。
【図20】現像スリーブの一部を拡大した斜視図。
【図21】現像装置を長手方向から見た斜視図。
【図22】(a)は凹みの長手方向が現像スリーブ回転軸方向に対して斜めに角度を有する現像スリーブの斜視図。(b)は図22(a)中のA部の拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る画像形成装置の構成を正面からみた説明図である。図2は、図1に示された画像形成装置の本発明の一実施形態に係る現像装置の断面図である。図3は、図2中のIII−III線に沿う断面図である。図4は、図1に示された現像装置の現像スリーブの斜視図である。図5は、図4に示された現像スリーブの外表面の展開図である。
【0014】
画像形成装置101は、イエロー(Y)、マゼンダ(M)、シアン(C)、黒(K)の各色の画像則ちカラー画像を、一枚の転写材としての記録紙107(図1に示す)に形成する中間転写ベルト129を用いたタンデム型のカラー複写機の作像部分である。なお、イエロー、マゼンダ、シアン、黒の各色に対応するユニットなどを、以下、符号の末尾に各々Y,M,C,Kを付けて示す。
【0015】
画像形成装置101は、図1に示すように、装置本体102と、給紙ユニット103と、レジストローラ対110と、中間転写ユニット104と、紙転写ローラ126、定着ユニット105と、複数のレーザ書き込みユニット122(122Y,122M,122C,122K)と、複数のプロセスカートリッジ106Y,106M,106C,106Kとを少なくとも備えている。
【0016】
装置本体102は、例えば、箱状に形成され、フロア上などに設置される。装置本体102は、給紙ユニット103と、レジストローラ対110と、転写ユニット104と、定着ユニット105と、複数のレーザ書き込みユニット122Y,122M,122C,122Kと、複数のプロセスカートリッジ106Y,106M,106C,106Kを収容している。
【0017】
給紙ユニット103は、装置本体102の下部に複数設けられている。給紙ユニット103は、前述した記録紙107を重ねて収容するとともに装置本体102に出し入れ自在な給紙カセット123と、給紙ローラ124とを備えている。給紙ローラ124は、給紙カセット123内の一番上の記録紙107に押し当てられている。給紙ローラ124は、前述した一番上の記録紙107を、レジストローラ対110へ送り出す。
【0018】
レジストローラ対110は、給紙ユニット103から紙転写ローラ126に搬送される記録紙107の搬送経路に設けられており、一対のローラ110a,110bを備えている。レジストローラ対110は、一対のローラ110a,110b間に記録紙107を挟み込み、該挟み込んだ記録紙107を転写紙に転写させ得るタイミングで送り出す。
【0019】
中間転写ユニット104は、プロセスカートリッジ106Y,106M,106C,106Kの上方に設けられている。中間転写ユニット104は、駆動ローラ128と、従動ローラ127と、中間転写ベルト129と、中間転写ローラ130Y,130M,130C,130Kとを備えている。駆動ローラ128は、紙転写ローラ126の対向位置に配置されており、駆動源としてのモータなどによって回転駆動される。従動ローラ127は、装置本体102に回転自在に支持されている。中間転写ベルト129は、無端環状に形成されており、前述した駆動ローラ128と従動ローラ127との双方に掛け渡されている。中間転写ベルト129は、駆動ローラ128が回転駆動されることで、前述した駆動ローラ128と従動ローラ127との回りを図中半時計回りに循環(無端走行)している。
【0020】
中間転写ローラ130Y,130M,130C,130Kは、それぞれ、プロセスカートリッジ106Y,106M,106C,106Kの感光体ドラム108の対向位置に中間転写ベルトを挟むように配置されている。中間転写ユニット104はプロセスカートリッジ106Y,106M,106C,106Kにて形成された各色トナー像を転写ローラ130Y,130M,130C,130Kにて中間転写ベルト129上でカラーのトナー像として重ね合わせ、紙転写ローラ126部へカラートナー像を搬送し、紙転写ローラにて記録紙107へ転写させる。紙転写ローラ126はトナー像が転写した記録紙107を定着ユニット105に向けて送り出す。
【0021】
定着ユニット105は、紙転写ローラ126にて転写された記録紙107の搬送方向の下流に設けられ、互いの間に記録紙107を挟む一対のローラ105a,105bを備えている。定着ユニット105は、一対のローラ105a,105b間に紙転写ローラ126から送り出されてきた記録紙107を押圧加熱することで、記録紙107上に転写されたトナー像を、該記録紙107に定着させる。
【0022】
レーザ書き込みユニット122(122Y,122M,122C,122K)は、プロセスカートリッジ106Y,106M,106C,106Kの下部に取り付けられている。レーザ書き込みユニット122(122Y,122M,122C,122K)は、それぞれ、一つのプロセスカートリッジ106Y,106M,106C,106Kに対応している。レーザ書き込みユニット122(122Y,122M,122C,122K)は、プロセスカートリッジ106Y,106M,106C,106Kの後述の帯電ローラ109により一様に帯電された感光体ドラム108の外表面にレーザ光を照射して、静電潜像を形成する。
【0023】
プロセスカートリッジ106Y,106M,106C,106Kは、それぞれ、中間転写ユニット104と、レーザ書き込みユニット122(122Y,122M,122C,122K)との間に設けられている。プロセスカートリッジ106Y,106M,106C,106Kは、装置本体102に着脱自在である。プロセスカートリッジ106Y,106M,106C,106Kは、中間転写ベルト129の搬送方向に沿って、互いに並設されている。
【0024】
プロセスカートリッジ106Y,106M,106C,106Kは、図2に示すように、カートリッジケース111と、帯電装置としての帯電ローラ109と、感光体ドラム(像担持体ともいう)108と、クリーニング装置としてのクリーニングブレード112と、現像装置113とを備えている。
【0025】
カートリッジケース111は装置本体102に着脱自在で、かつ帯電ローラ109と、感光体ドラム108と、クリーニングブレード112と、現像装置113とを収容している。帯電ローラ109は、感光体ドラム108の外表面を一様に帯電する。感光体ドラム108は、現像装置113の後述する現像ローラ115と間隔をあけて配されている。感光体ドラム108は、軸芯を中心として回転自在な円柱状に形成されている。感光体ドラム108は、対応するレーザ書き込みユニット122(122Y,122M,122C,122K)により、外表面上に静電潜像が形成される。感光体ドラム108は、外表面上に形成されかつ担持する静電潜像にトナーが吸着して現像し、こうして得られたトナー像を中間転写ベルト129上へ転写する。クリーニングブレード112は、中間転写ベルト129にトナー像を転写した後に、感光体ドラム108の外表面に残留した転写残トナーを除去する。
【0026】
現像装置113は、図2に示すように、現像剤供給部114と、ケース125と、現像剤担持体としての現像ローラ115と、規制部材としてのドクタブレード116とを少なくとも備えている。
【0027】
現像剤供給部114は、現像剤収容部としての収容槽117と、攪拌部材としての一対の攪拌スクリュー118と、を備えている。収容槽117は、感光体ドラム108と長さが略等しい箱状に形成されている。また、収容槽117内には、その収容槽117の長手方向に沿って延びた仕切壁119が設けられている。仕切壁119は、収容槽117内を第1空間120と、第2空間121とに区画している。また、第1空間120と第2空間121とは、両端部が互いに連通している。
【0028】
収容槽117は、第1空間120と第2空間121との双方に現像剤を収容する。現像剤は、トナーと、磁性キャリア(磁性粉ともいう)とを含んでいる。トナーは第1空間120と第2空間121とのうち現像ローラ115から離れた側の第1空間120の一端部に、トナー補給装置108によって適宜供給される。トナーは、乳化重合法又は懸濁重合法により製造された球状の微粒子である。なお、トナーは種々の染料又は顔料を混入・分散した合成樹脂で構成される塊を粉砕して得られてもよい。トナーの平均粒径は、3μm以上でかつ7μm以下である。また、トナーは、粉砕加工などにより形成されてもよい。上記トナーとしては、少なくとも、窒素原子を含む官能基を有するポリエステルプレポリマー、ポリエステル、着色剤及び離型剤を有機溶媒中に分散させたトナー材料液を、水系媒体中で架橋及び伸張反応の少なくとも一方を行って得られるトナーが好適である。
【0029】
磁性キャリアは、第1空間120と第2空間121との双方に収容されている。磁性キャリアの平均粒径は、20μm以上でかつ50μm以下である。
【0030】
攪拌スクリュー118は、第1空間120と第2空間121それぞれに収容されている。攪拌スクリュー118の長手方向は、収容槽117、現像ローラ115及び感光体ドラム108の長手方向と平行である。攪拌スクリュー118は、軸芯周りに回転自在に設けられており、軸芯周りに回転することで、トナーと磁性キャリアとを攪拌するとともに、該軸芯に沿って現像剤を搬送する。
【0031】
図示例では、第1空間120内の攪拌スクリュー118は、現像剤を前述した一端部から他端部に向けて搬送する。第2空間121内の攪拌スクリュー118は、現像剤を他端部から一端部に向けて搬送する。
【0032】
前述した構成によれば、現像剤供給部114は、第1空間120の一端部に供給されたトナーを、磁性キャリアと攪拌しながら、他端部に搬送し、この他端部から第2空間121の他端部に搬送する。そして、現像剤供給部114は、第2空間121内でトナーと磁性キャリアとを攪拌し、軸芯方向に搬送しながら、現像ローラ115の外表面に供給する。
【0033】
ケース125は、箱状に形成され、前述した現像剤供給部114の収容槽117に取り付けられて、該収容槽117とともに、現像ローラ115などを覆う。また、ケース125の感光体ドラム108と相対する部分には、開口部125aが設けられている。
【0034】
現像ローラ115は、円柱状に形成され、第2空間121と、感光体ドラム108との間でかつ前述した開口部125aの近傍に設けられている。現像ローラ115は、感光体ドラム108と収容槽117との双方と平行である。現像ローラ115は、感光体ドラム108と間隔をあけて配されている。現像ローラ115と感光体ドラム108との間の空間は、現像剤のトナーを感光体ドラム108に吸着させて、静電潜像を現像してトナー像を得る現像領域131をなしている。現像領域131では、現像ローラ115と感光体ドラム108とが相対する。
【0035】
現像ローラ115は、図2及び図3に示すように、芯金134と、円筒状のマグネットローラ(磁石体ともいう)133と、前述した円筒状の現像スリーブ132とを備えている。芯金134は、長手方向が感光体ドラム108の長手方向と平行に配され、前述したケース125に回転することなく固定されている。
【0036】
マグネットローラ133は、磁性材料で構成され、かつ円筒状に形成されているとともに、図示しない複数の固定磁極が取り付けられている。マグネットローラ133は、芯金134の外周に軸芯回りに回転することなく固定されている。
【0037】
固定磁極は、長尺で棒状の磁石であり、マグネットローラ133に取り付けられている。固定磁極は、マグネットローラ133すなわち現像ローラ115の長手方向に沿って延びており、該マグネットローラ133の全長に亘って設けられている。前述した構成のマグネットローラ133は、現像スリーブ132内に収容されている(内包されている)。
【0038】
一つの固定磁極は、前述した攪拌スクリュー118と相対している。該一つの固定磁極は、汲み上げ磁極をなしており、現像スリーブ132即ち現像ローラ115の外表面上に磁気力を生じて、収容槽117の第2空間121内の現像剤を現像スリーブ132の外表面に吸着する。
【0039】
他の一つの固定磁極は、前述した感光体ドラム108と相対している。この固定磁極は、現像磁極をなしており、現像スリーブ132即ち現像ローラ115の外表面上に磁気力を生じて、現像スリーブ132と感光体ドラム108との間に磁界を形成する。この固定磁極は、該磁界によって磁気ブラシを形成することで、現像スリーブ132の外表面に吸着された現像剤のトナーを感光体ドラム108に受け渡すようになっている。
【0040】
前述した汲み上げ磁極と現像磁極との間には、少なくとも一つの固定磁極が設けられている。この少なくとも一つの固定磁極は、現像スリーブ132即ち現像ローラ115の外表面上に磁気力を生じて、現像前の現像剤を感光体ドラム108に向けて搬送するとともに、現像済みの現像剤を感光体ドラム108から収容槽117内まで搬送する。
【0041】
前述した固定磁極は、現像スリーブ132の外表面に現像剤を吸着すると、現像剤の磁性キャリアが該固定磁極が生じる磁力線に沿って複数重ねさせて、該現像スリーブ132の外表面上に立設(穂立ち)させる。このように、磁性キャリアが磁力線に沿って複数重なって現像スリーブ132の外表面上に立設する状態を、磁性キャリアが現像スリーブ132の外表面上に穂立ちするという。すると、この穂立ちした磁性キャリアに前述したトナーが吸着する。則ち、現像スリーブ132は、マグネットローラ133の磁力により外表面に現像剤を吸着する。
【0042】
現像スリーブ132は、図4に示すように、円筒状に形成されている。現像スリーブ132は、マグネットローラ133を内包し(収容し)て、軸芯回りに回転自在に設けられている。現像スリーブ132は、その内周面が固定磁極に順に相対するように回転される。現像スリーブ132は、アルミニウム合金、真鍮、ステンレス鋼(SUS)、導電性の樹脂などの非磁性材料で構成されている。現像スリーブ132は、表面処理装置1(図8に示す)によって外表面に粗面化処理が施されている。
【0043】
アルミニウム合金は、加工性、軽さの面で優れている。アルミニウム合金を用いる場合には、A6063、A5056及びA3003を用いるのが好ましい。SUSを用いる場合には、SUS303、SUS304及びSUS316を用いるのが好ましい。なお、図示例では、現像スリーブ132は、アルミニウム合金で構成されている。
【0044】
現像スリーブ132の外径は、本実施例では18mm程度である。現像スリーブ132の軸(軸芯)方向の長さは、画像形成装置の最大紙サイズがA3の場合、300mm〜350mm程度であるのが望ましい。
【0045】
また、現像スリーブ132の外表面には、図4、図5、図6(a)及び図7に示すように、平面視が楕円形状の凹部としての凹み139が多数設けられている。凹み139は、勿論、現像スリーブ132の外表面に凹に形成され、当該現像スリーブ132の外表面に互いに重ならないように規則的に多数(複数)配置されている。なお、本実施形態において、現像スリーブ132の周方向及び長手方向に互いに隣り合う凹み139間の間隔が一定となるように配置されていることを、凹み139が規則的に配置されているという。即ち、現像スリーブ132の周方向及び長手方向に互いに隣り合う凹み139間の間隔は、一定となっている。
【0046】
また、凹み139は、その長手方向が現像スリーブ132の長手方向に沿った状態で配置されている。即ち、凹み139は、その長手方向が現像スリーブ132の長手方向と平行又は略平行に配置されている。なお、図示例では、凹み139の長手方向は、現像スリーブ132の長手方向に対して若干傾いて、略平行に配置されている。なお、本実施形態において、凹み139の長手方向が現像スリーブ132の長手方向と平行又は略平行に配置されていることを、凹み139の長手方向が現像スリーブ132の長手方向と平行に配置されているという。
【0047】
さらに、凹み139は、図5、図6(a)及び図7に示すように、現像スリーブ132の長手方向に沿って複数並べられて配置されているとともに、現像スリーブ132の周方向に互いに隣り合うもの同士は、当該凹み139の長さの約半分程度位置ずれして配置されている。さらに、凹み139は、図8(a)に示す表面処理装置1により現像スリーブ132の外表面に形成されるため、当該現像スリーブ132の外表面上に図5中の一点鎖線で示す螺旋上に並べられて配置されている。
【0048】
また、凹み139は、図6(b)に示すように、その幅方向(即ち、現像スリーブ132の周方向)の断面形状がV字状に形成され、図6(c)に示すように、その長手方向(即ち、現像スリーブ132の長手方向)の断面形状が円弧状の曲面に形成されている。さらに、凹み139は、図8(a)に示す表面処理装置1により現像スリーブ132の外表面に形成されるため、図7に示すように、その長手方向が若干弓状に湾曲している。なお、本実施形態では、その長さが幅よりも長く、外縁が曲線で形成されていれば、その長手方向や直線であっても若干湾曲していても、総称して楕円形状とする。
【0049】
さらに、凹み139の長手方向の長さ(長径)は、1.0mm以上でかつ2.3mm以下となっており、幅方向の幅(短径)は、0.3mm以上でかつ0.7mm以下となっているとともに、その深さは、0.05mm以上でかつ0.15mm以下となっている。さらに、凹み139は、現像スリーブ132の外表面100mm当たり50〜250個程度設けられている。即ち、複数(多数)の凹み139の総容量が、現像スリーブ132の外表面100mm当たり0.5mm以上でかつ7.0mm以下となっている。さらに、凹み139は、現像スリーブ132とともに回転する感光体ドラム108の周方向に1mm当たり1.0個以上でかつ3.0個以下設けられている。なお、図5、図6(a)及び図7では、図中の左右方向が現像スリーブ132の長手方向となっている。
【0050】
一般に凹み139が深いほど現像剤の搬送性能は向上するが溝を外表面に設けた従来の現像スリーブと同様に周期的なピッチムラが発生しやすくなる。一方、凹み139が浅いほどピッチムラは発生しにくくなるが現像剤の搬送性能が低下する。特に近年では、小粒径のトナーや磁性キャリアの画像形成技術の進歩及び近接現像の画像形成技術の進歩等により画像再現性が向上しているため、ピッチムラが発生しやすくなっている。そこで、前述した現像スリーブ132では、凹み139の深さを浅めに設定し、当該凹み139の分布密度を増やすことで現像剤搬送性能とピッチムラ防止の両立を図っている。
【0051】
ドクタブレード116は、現像装置113の感光体ドラム108寄りの端部に設けられている。ドクタブレード116は、現像スリーブ132の外表面と間隔をあけた状態で、前述したケース125に取り付けられている。ドクタブレード116は、所望の厚さを越える現像スリーブ132の外表面上の現像剤を収容槽117内にそぎ落として、現像領域131に搬送される現像スリーブ132の外表面上の現像剤を所望の厚さにする。
【0052】
前述した構成の現像装置113は、現像剤供給部114でトナーと磁性キャリアとを十分に攪拌し、この攪拌した現像剤を固定磁極により現像スリーブ132の外表面に吸着する。そして、現像装置113は、現像スリーブ132が回転して、複数の固定磁極により吸着した現像剤を現像領域131に向かって搬送する。現像装置113は、ドクタブレード116で所望の厚さになった現像剤を感光体ドラム108に吸着させる。こうして、現像装置113は、現像剤を現像ローラ115に担持し、現像領域131に搬送して、感光体ドラム108上の静電潜像を現像してトナー像を形成する。
【0053】
そして、現像装置113は、現像済みの現像剤を、収容槽117に向かって離脱させる。さらに、そして、収容槽117内に収容された現像済みの現像剤は、再度、第2空間121内で他の現像剤と十分に攪拌されて、感光体ドラム108の静電潜像の現像に用いられる。なお、現像装置113は、現像剤供給部114が例えば感光体ドラム108に供給されるトナーの濃度が低下したことを後述するトナー濃度センサが検知すると、トナー補給装置108の動作により現像装置113へトナーを排出するようになっている。
【0054】
前述した構成の画像形成装置101は、一例として以下に示すように、記録媒体としての記録紙107に画像を形成する。まず、画像形成装置101は、感光体ドラム108を回転して、この感光体ドラム108の外表面を一様に帯電ローラ109により−700Vに帯電する。感光体ドラム108の外表面にレーザ光を照射して、感光体ドラム108を露光して、画像部分を−150Vに減衰させて、該感光体ドラム108の外表面に静電潜像を形成する。そして、静電潜像が現像領域131に位置付けられると、この静電潜像に−550Vの現像バイアス電圧を印加して、現像装置113の現像スリーブ132の外表面に吸着した現像剤が感光体ドラム108の外表面に吸着して静電潜像を現像し、トナー像を感光体ドラム108の外表面に形成する。そして各プロセスカートリッジ106Y,106M,106C,106Kの感光体ドラム108上に形成されたカラートナー像は各中間転写ローラにより中間転写ベルト129へ転写され、カラートナー像を形成する。
【0055】
そして、画像形成装置101は、給紙ユニット103の給紙ローラ124などにより搬送されてきた記録紙107が、中間転写ユニット104の中間転写ベルト129が紙転写ローラ126の対向位置に来た際、中間転写ベルト上に形成されたカラートナー像を記録紙107に転写する。画像形成装置101は、定着ユニット105で、記録紙107にトナー像を定着する。こうして、画像形成装置101は、記録紙107にカラー画像を形成する。
【0056】
一方、転写されずに感光体ドラム108上に残ったトナーはクリーニングブレード112によって回収される。残留トナーを除去された感光体ドラム108は次回の画像形成プロセスに供される。
【0057】
また、前述した画像形成装置101では、環境変動や経時変動による画質の変動を抑えるために、プロセスコントロールを行なっている。具体的には、まず現像装置113における現像能力を検出する。例えば、あるトナーパターンの画像を、現像バイアス電圧を一定にした条件下で感光体ドラム108、又は中間転写ベルト上129に形成し、その画像濃度を図示しない光センサで検出し、濃度変化から現像能力を把握する。そして、この現像能力が所定の目標現像能力になるように、トナー濃度の目標値を変更することで、画質を一定に保つことができる。例えば、光センサで検出したトナーパターンの画像濃度が、目標現像濃度よりも薄い場合には、トナー濃度を高くするように、図示しない制御手段としてのCPUがトナー補給装置108を制御し、目標トナー濃度になるように制御する。一方、光センサで検出したトナーパターンの画像濃度が、目標現像濃度よりも濃い場合には、トナー濃度を低くするように、CPUが故意に現像させ、現像器113のトナー濃度を低下させるよう制御する。ここで、上記トナー濃度は図示しないトナー濃度センサで検知される。
【0058】
次に、現像スリーブ132の外周面に凹み139を形成する製造装置について説明する。
図8(a)は、現像スリーブ132の外表面に切削加工を施す表面処理装置1の概略の構成を示す側面図である。表面処理装置1は、図8(a)に示すように、ベース3と、保持部4と、回転駆動部としてのモータ2と、移動手段としての工具移動部5と、工具6と、制御手段としての図示しない制御装置とを備えている。
【0059】
ベース3は、平板状に形成されて、工場のフロアやテーブル上等に設置される。ベース3の上面は、水平方向と平行に保たれる。ベース3の平面形状は、矩形状に形成されている。
【0060】
保持部4は、固定保持部7と、スライド保持部8とを備えている。固定保持部7は、ベース3の長手方向の一端部から立設した固定柱9と、この固定柱9の上端部に設けられた回転チャック10とを備えている。回転チャック10は、厚手の円板状に形成され、固定柱9の上端部にその中心を中心として回転自在に支持されている。回転チャック10の回転中心は、ベース3の表面と平行に配置されており、回転チャック10の中心部には円柱状のチャックピン11が立設している。勿論、チャックピン11は、回転チャック10と同軸に配置されている。
【0061】
スライド保持部8は、スライダ12と、スライド柱13と、このスライド柱13の上端部に設けられた回転チャック14とを備えている。スライダ12は、ベース3の表面即ち回転チャック10のチャックピン11の軸芯に沿ってスライド自在に設けられている。また、スライダ12は、回転チャック10のチャックピン11軸芯方向の位置が適宜固定される構成となっている。
【0062】
スライド柱13は、スライダ12から立設している。回転チャック14は、厚手の円板状に形成され、スライド柱13の上端部に取り付けられたモータ2の出力軸に取り付けられている。回転チャック14の回転中心は、固定保持部7の回転チャック10のチャックピン11と同軸に配置されている。回転チャック14の中心部には円柱状のチャックピン15が立設している。勿論、チャックピン15は、回転チャック14と同軸に配置されている。
【0063】
保持部4は、スライド保持部8が固定保持部7から離れた状態で、チャックピン11,15間に凹み139が形成される前の現像スリーブ132が位置付けられて、そして、保持部4は、スライド保持部8が固定保持部7に近づけられて、チャックピン11,15の先端が現像スリーブ132の端部内に侵入して、当該チャックピン11,15間に現像スリーブ132を挟んだ状態で、スライダ12が固定される。こうして、保持部4は、チャックピン11,15間に現像スリーブ132を挟んで、当該現像スリーブ132を保持する。
【0064】
モータ2は、スライド保持部8のスライド柱13の上端部に取り付けられている。モータ2は、回転チャック14をその中心回りに回転駆動する。モータ2は、回転チャック14を回転駆動することで、チャックピン11,15間に挟まれた現像スリーブ132をその軸芯回りに回転させる。
【0065】
工具移動部5は、リニアガイド16と、図示しない移動用アクチュエータと、を備えている。リニアガイド16は、レール17と、スライダ18とを備えている。レール17は、ベース3上に設置されている。レール17は、直線状に形成されているとともに、その長手方向がベース3の長手方向、チャックピン11,15即ちチャックピン11,15間に挟まれた現像スリーブ132の軸芯と平行に配されている。スライダ18は、レール17に該レール17の長手方向に沿って移動自在に支持されている。
【0066】
移動用アクチュエータは、ベース3に取り付けられているとともに、前述したスライダ18をベース3の長手方向、チャックピン11,15即ちチャックピン11,15間に挟まれた現像スリーブ132の軸芯に沿って、スライド移動させる。
【0067】
工具6は、工具本体19と、工具回転部としての工具回転用モータ20と、回転工具としてのエンドミル21と、を備えている。工具本体19は、スライダ18から立設した柱状に形成されている。
【0068】
工具回転用モータ20は、工具本体19の上端部に取り付けられている。工具回転用モータ20は、図8(b)に示すように、その出力軸22が工具本体19の上端部からチャックピン11,15間に挟まれた現像スリーブ132に向かって突出した状態に配置されている。工具回転用モータ20の出力軸22は、その軸芯がベース3の表面と平行でかつチャックピン11,15間に挟まれた現像スリーブ132の軸芯と交差(図示例では直交)する状態で配置されている。
【0069】
エンドミル21は、全体として円柱状に形成され、工具回転用モータ20の出力軸22の先端部に取り付けられている。このため、エンドミル21は、その軸芯がベース3の表面と平行でかつチャックピン11,15間に挟まれた現像スリーブ132の軸芯と交差(図示例では直交)する状態で配置されている。また、エンドミル21は、工具本体19の上端部からチャックピン11,15間に挟まれた現像スリーブ132に向かって突出した状態に配置されている。
【0070】
エンドミル21は、図8(c)に示すように、円柱状の本体部23と、二つの切削刃24とを備えている。本体部23は、工具本体19に取り付けられる。切削刃24は、本体部23の現像スリーブ132寄りの先端部に周方向に間隔をあけて設けられている。切削刃24は、図8(d)に示すように、本体部23の先端部の外縁よりも当該本体部23即ちエンドミル21の外周方向に突出して設けられ、螺旋状に延在して形成されている。また、本実施形態では、エンドミル21の切削刃24先端の外縁25の断面は、図8(c)に示すように、鋭角をなすように形成されている。
【0071】
前述した工具6は、工具回転用モータ20がエンドミル21をその軸芯回りに回転することで、現像スリーブ132の外表面に凹み139を形成する。
【0072】
制御装置は、周知のRAM、ROM、CPUなどを備えたコンピュータである。制御装置は、回転駆動部としてのモータ2と、工具移動部5の移動用アクチュエータと、工具6の工具回転用モータ20などと接続しており、これらを制御して、表面処理装置1全体の制御を司る。
【0073】
制御装置は、現像スリーブ132の外表面に凹み139を多数形成する際には、回転駆動部としてのモータ2で現像スリーブ132をその軸芯回りに回転させて、工具回転用モータ20でエンドミル21をその軸芯回りに回転させながら、移動用アクチュエータにより工具を現像スリーブ132の軸芯(長手方向)に沿って移動させる。そして、制御装置は、切削刃24がエンドミル21の回転に伴い断続的に現像スリーブ132の外表面に切削加工を施して、凹み139を多数形成する。
【0074】
このとき、切削刃24の外縁の曲率半径により現像スリーブ132の長手方向の凹み139の円弧の曲率半径を定め、切削刃24の切り込み量により凹み139の深さを定め、工具6の移動速度により凹み139の現像スリーブ132長手方向の間隔を定める。また、現像スリーブ132の外表面に周方向に設ける凹み139の数をnとし、回転駆動部としてのモータ2の回転数即ち現像スリーブ132の回転数をN1とし、エンドミル21の切削刃24の数をmとし、エンドミル21の回転数をN2とすると、制御装置は、以下の式(1)を満たすように、回転駆動部としてのモータ2と、工具移動部5の移動用アクチュエータと、工具6の工具回転用モータ20を制御する。
【0075】
N2=N1×〔m/[(n/2)−0.5]〕・・・式(1)
【0076】
制御装置は、これらの各要件を適宜変更することで、凹み139の大きさや密度を任意に変更して、現像スリーブ132の外表面を加工することができる。
【0077】
さらに、制御装置には、キーボードなどの各種の入力装置や、ディスプレイなどの各種の表示装置が接続している。
【0078】
次に、上記構成の表面処理装置1を用いて現像スリーブ132の外表面に切削加工を施して、現像スリーブ132を製造する工程の一例について説明する。
【0079】
まず、制御装置に入力装置から現像スリーブ132の品番などを入力する。そして、制御装置が、工具6の回転工具としてのエンドミル21を加工開始位置即ち現像スリーブ132の一方の端部に位置付けた後、凹み139が形成される前の現像スリーブ132を保持部4に保持する。このとき、現像スリーブ132とチャックピン11,15などが同軸になる。
【0080】
そして、入力装置から作業開始命令を入力すると、前述した式1に基づいて、制御装置が、回転駆動部としてのモータ2と、工具移動部5の移動用アクチュエータと、工具6の工具回転用モータ20を駆動する。すると、軸芯回りに回転するエンドミル21の切削刃24が、断続的に現像スリーブ132の外表面に切削加工を施すことで、凹み139が形成される。即ち、凹み139は、軸芯回りに回転される回転工具6によって、現像スリーブ132の外表面に切削加工が施されて形成される。
【0081】
また、回転駆動部としてのモータ2と、工具移動部5の移動用アクチュエータと、工具6の工具回転用モータ20が同時に駆動するので、凹み139が軸芯回りに回転される回転工具6によって現像スリーブ132の外表面に切削加工が施されて形成される際に、エンドミル21と交差(図示例では直交)する状態に配置された現像スリーブ132がその軸芯回りに回転されながら、エンドミル21と現像スリーブ132とが当該現像スリーブ132の長手方向に相対的に移動されて、凹み139が、形成される。
【0082】
エンドミル21が、現像スリーブ132の加工終了位置即ち現像スリーブ132の他方の端部に位置付けられて、前述した現像スリーブ132の外表面の切削加工が終了すると、回転駆動部としてのモータ2と、工具移動部5の移動用アクチュエータと、工具6の工具回転用モータ20を停止する。そして、スライド保持部8を固定保持部7から離して、保持部7,8のチャックピン11,15間から外表面に凹み139が多数形成された現像スリーブ132を取り出して、新たな現像スリーブ132を保持部4に保持させる。こうして、現像スリーブ132の外表面に切削加工を施して、外表面に凹み139を多数形成して、前述した現像スリーブ132(図4に示す)が得られる。
【0083】
上記工程で製造された現像スリーブ132は、外表面に従来のサンドブラスト加工により形成されるような凸部が無く、凹み139はより大きな凹みに形成されているので、経年変化によっても、凹み139が摩耗しにくくなり、よって、経年変化による現像剤の搬送量の低下を抑制できる。
【0084】
また、現像スリーブ132は、外表面に形成された凹み139が重ならないように規則的に配置されているので、現像剤が凹み139内に溜まるので、該現像剤の溜まる箇所が外表面に規則的に配置されることとなり、よって、画像のムラが生じることを防止できる。更に、今後の高速機での高画質維持の為に更に汲み上げ量を増加させることに対応できる。
【0085】
さらに、凹み139を規則的に配置するので、最適な現像剤のくみ上げ量を確保しながら長寿命化を図ることができる加工条件を設定することが容易で、かつ、設定された条件で確実に凹み139を形成でき、加工性に優れるという効果を奏でる。
【0086】
さらに、現像スリーブ132の外表面に長手方向に長い複数個の凹み139が規則的に配置され、この凹み139の総容積を該現像スリーブ132の外表面の面積100mm当たり0.5mm以上にしているので、現像剤の十分な搬送力が得られる。
【0087】
現像スリーブ132の周方向に互いに隣り合う凹み139同士が現像スリーブ132の長手方向に位置ずれしているので、現像スリーブ132の外表面に凹み139が形成されていない箇所や凹み139が多く形成されている箇所などが生じることを防止できる。したがって、現像スリーブ132の外表面に吸着する現像剤にムラが生じること即ち現像スリーブ132の外表面に一様に現像剤を吸着することができる。したがって、画像のムラが生じることを防止できる。
【0088】
上記製造構成の例では、凹み139の現像スリーブ132周方向の断面をV字状に形成しているが、図9(a)乃至図9(c)に示すように、凹み139の現像スリーブ132の周方向の断面を円弧状に形成してもよい。図示例では、凹み139の現像スリーブ132の周方向と長手方向の双方の断面を円弧状に形成している。この場合、図11に示すように、エンドミル21の切削刃24の外縁25を円弧状に形成することで、凹み139の現像スリーブ132の周方向の断面を円弧状に形成している。また、この場合に限らず、現像スリーブ132の周方向の断面における凹み139の内面と現像スリーブ132の外表面とのなす角度θ(図10に示す)は、前述した現像磁極の影響で発生する現像濃度差を避けるために60度以下であるのが好ましい。なお、これらの図9乃至図11において、前述した図6乃至図8と同一部分には、同一符号を付して説明を省略する。
【0089】
これらの図9乃至図11に示す場合によれば、凹み139の現像スリーブ132の長手方向と周方向の双方の断面が円弧状に形成されているので、凹み139内に収容できる現像剤の量を多くすることができる、十分な量の現像剤を搬送することができる。
【0090】
また、前述した図6乃至図8の例では、凹み139の現像スリーブ132周方向の断面をV字状に形成しているが、切削刃24の外縁25の形状を適宜変更することで、図12及び図13に示すように、凹み139の現像スリーブ132の周方向の断面形状を適宜変更してもよい。図12は、V字状の凹み139の底が平坦に形成された場合を示し、図13は、V字状の凹み139の底が円弧状に形成された場合を示している。なお、図12及び図13において、前述した図6乃至図8と同一部分には、同一符号を付して説明を省略する。
【0091】
また、前述した図6乃至図8の例では、モータ2,20やアクチュエータを同時に連続して動作させて、凹み139を現像スリーブ132の外表面に螺旋上に配置し、かつ各々の凹み139を若干弓状に湾曲して形成しているが、図14及び図15に示すように、モータ2,20やアクチュエータを適宜完結的に動作させて、凹み139を現像スリーブ132の長手方向に沿って直線状に形成してもよいとともに、複数の凹み139を現像スリーブ132の周方向に沿って直線上に配置してもよい。
【0092】
さらに、前述した図6乃至図8の例などでは、凹み139を楕円形状に形成しているが、前述した実施形態よりも外径D1の小さいエンドミル21(図16(b)に示す)を用いて、凹み139を、図16(a)に示すように、平面視を円形に形成してもよい。
【0093】
前述した画像形成装置101では、プロセスカートリッジ106Y,106M,106C,106Kはカートリッジケース111と帯電ローラ109と感光体ドラム108とクリーニングブレード112と現像装置113とを備えている。しかしながら、プロセスカートリッジ106Y,106M,106C,106Kは少なくとも現像装置113を備えていればよく、カートリッジケース111と帯電ローラ109と感光体ドラム108とクリーニングブレード112を必ずしも備えていなくてもよい。また、前述した実施形態では画像形成装置101は装置本体102に着脱自在なプロセスカートリッジ106Y,106M,106C,106Kを備えている。しかしながら、本実施形態の画像形成装置101は現像装置113を備えていればよく、プロセスカートリッジ106Y,106M,106C,106Kを必ずしも備えていなくてもよい。
【0094】
次に、本実施形態の現像装置について詳細に説明する。
図17は、現像装置の概略構成図であり、マグネットローラの法線方向の磁束密度の強さを表す図である。図17において、マグネットローラ133には、磁界発生手段としての複数の固定磁極、P1極(現像極),P2極(現像剤搬送極)、P3極(現像剤搬送極)、P4極(剤離れ上流極)、P5極(剤離れ下流極=現像剤汲み上げ極)がそれぞれ設けられている。上記複数の固定磁極のうち、P2極とP3極とは、上記現像領域を通過した後の二成分現像剤を現像スリーブ表面から離脱させる位置まで搬送する磁力を発生させるための搬送用磁極を有する磁界発生部材としての機能を有している。
【0095】
現像スリーブ132は図中矢印方向に回転し、第2空間121の現像剤は、マグネットローラ133の磁力により現像スリーブ132の表面に汲み上げられ、現像スリーブ表面に付着する。その後、現像スリーブ上の現像剤は、その量がドクタブレード116で均一にされ、続いて、像担持体108と現像剤担持体とが間隔をあけて対向する現像領域へ搬送される。現像剤は、像担持体108上に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する。その後、現像剤は、ケース125の開口部125aを通過し、P2極(現像剤搬送極)及びP3極(現像剤搬送極)の磁力の影響を受けながら剤離れ部まで搬送され、P4極(剤離れ上流極)によって現像スリーブ上から分離されて、第2空間121に回収され、攪拌スクリュー118で攪拌搬送される。
【0096】
ここで、ケース125の開口部125aよりも現像スリーブ132の回転方向下流側であって、二成分現像剤を現像スリーブ132から離脱させる位置までの間に、ケース125の内壁と現像スリーブ132の外周面との間に所定の空隙を設けている。この空隙を形成するためのケース125の内壁と現像スリーブ132の外周面との距離は、ケーシングギャップと呼ばれている。また、この空隙には、P2極又はP3極のうち少なくともいずれか一方の磁力が及んでいる。
【0097】
図18は、P2極及びP3極近傍の拡大図であって、ケーシングギャップを説明するための図である。図18において、例えば、P2極の対向する位置における現像スリーブ外周面とケース内壁とのケーシングギャップGP2を1.8mm、P3極の対向する位置における現像スリーブ外周面とケース内壁とのケーシングギャップGP3を1.0mm程度に設定している。このようにケーシングギャップを設定することによって、現像スリーブ上で穂立ちした現像剤が、ケース125の内壁と現像スリーブ132の外周面との間の空隙を通過する際に、現像剤と共に空気を現像スリーブ回転方向に搬送して、吸い込み気流を作り、ケース開口部からのトナー飛散を防止することができる。
【0098】
しかしながら、外周面に規則的に間隔をあけて複数の凹み139が設けられた現像スリーブ132を用いると現像装置外部にトナーが飛散する場合があった。この原因について本発明者らが鋭意実験及び検討を行った結果、周方向における凹み139の間隔の設定が原因であることが分かった。つまり、この現像スリーブ132では凹み139で現像剤が担持されるため、凹み139で現像剤の穂立ちが生じる。このため、周方向の凹み139の間隔が広すぎると、凹み139で穂立ちした現像剤の隙間から空気が漏れてしまい、吸い込み気流が発生し難くなってしまう。この結果、現像装置外部にトナーの飛散が起こってしまうということが分かった。また、現像剤はマグネットローラ133のP2極及びP3極で生じる磁力線に沿って穂立ちするが、P2極及びP3極の長手方向と直交する方向の磁束密度半値幅に相当する現像スリーブ外周面上においては、確実に穂立ちが行われていることが分かった。そこで、現像スリーブ外周面の凹み139の周方向の配設ピッチを、P2極及びP3極の磁束密度半値幅に相当する現像スリーブ外周面の周長(以下、「ケーシングギャップ幅」という。)よりも小さく設定した。
【0099】
凹み139の周方向の配設ピッチPcは、例えば、P3極について説明すると、図18において、P3極の長手方向と直交する方向の磁束密度半値幅がマグネットローラ軸芯回りに約40度のため、現像スリーブ132の直径を18mmとすると、ケーシングギャップ幅WGP3は6.28〜6.40mm程度となる。このケーシングギャップ幅WGP3内に、周方向で互いに隣り合う凹み139が少なくとも一対存在するように、凹み139の周方向の配設ピッチをケーシングギャップ幅WGP3よりも小さく設定する。本実施形態では安全率を考慮して、凹み139の周方向の配設ピッチPcを1mm以下として、ケーシングギャップ幅内に十分な数の凹み139が含まれるように設定している。これにより、十分な吸い込み気流を発生させ、ケース開口部からのトナー飛散を抑えることができる。
【0100】
なお、上記凹み139の周方向の配設ピッチPcは、P3極の長手方向と直交する方向の磁束密度半値幅に基づいて設定したが、P2極の長手方向と直交する方向の磁束密度半値幅に基づいて設定してもよい。また、現像スリーブ外周面に形成する凹み139の間隔は、前述したように、切削機のバイト、回転数、送り速度、スリーブ回転速度によって調整することができる。
【0101】
図19は、トナーの飛散を説明するための比較例を示す説明図である。図19において、周方向の凹み139の配設ピッチPcをケーシングギャップ幅WGP3よりも大きく設定している。すると、凹み139の現像剤の穂立ちによって形成される空間が大きく、穂の隙間から空気が漏れてしまい、空気を現像装置内部に搬送することができない。このため、現像装置内部への吸い込み気流を発生させることができず、帯電不足でキャリアとの吸着が不十分なトナーがキャリアから遊離すると、開口部125aから現像装置外部に飛散してしまう虞がある。
【0102】
図20は、現像スリーブ132の一部を拡大した斜視図の一例である。図20において、現像スリーブ外周面に設けられた楕円状の凹み139は周方向に複数の列を成し、かつ隣り合う列同士で凹み139の位置が周方向にずれて配列されている。また、図示の例では、凹み139の長手方向は現像スリーブ132の回転軸方向と一致している。
【0103】
また、同図に示すように、隣り合う列同士の凹み139の現像スリーブ軸方向の配設ピッチPaは、凹み139の現像スリーブ回転軸方向における長さL以下が望ましい。つまり、現像スリーブ132の周方向において互いに隣り合う凹み139は、現像スリーブ132の回転軸方向に互いにずらすように設けられており、現像スリーブ132の回転軸方向における凹み139のずれ量は、凹み139の回転軸方向の長さL以下としている。これにより、現像スリーブ132の周方向において互いに隣り合う凹み139は、それらの端部間で回転軸方向の隙間が生じないように設けられる。よって、現像スリーブ132が回転したときに、凹み139で穂立ちした現像剤においては、回転軸方向における穂立ちの両端部側からの空気が漏れ難くなり、十分な吸い込み気流を発生させることができる。
【0104】
また、本実施形態では、装置本体102に対して現像装置113を着脱自在に構成した場合には、ケース125の内壁と現像スリーブ132の外周面との間の上記空隙において、現像装置113の着脱方向手前側から奥側に向けた気流を発生させてもよい。
【0105】
図21は、現像装置113を長手方向から見た斜視図であり、現像スリーブ132の外周面に設けられた凹み139の個数密度の変化の一例を示す図である。図21中の矢印は装置本体102に対する現像装置113の装着時の挿入方向を表している。また、図中二点鎖線で示した部分は、現像スリーブ132の外周面を拡大した拡大図を示している。この現像装置113は図示しないプロセスカートリッジ106に組み込まれた状態でプロセスカートリッジ106と一体で装置本体102から着脱するが、現像装置113のみを装置本体102から着脱することができる構成であってもよい。
【0106】
図21に示すように、現像スリーブ外周面に設けられた凹み139の単位面積当たりの密度が、現像装置113の着脱方向手前側が小さく、奥側に向かって徐々に大きくなるようになっている。つまり、現像スリーブ132の周方向における凹み139の配設ピッチが、現像装置113の着脱方向手前側に比べ、奥側が小さくなっている。この現像スリーブ132では、現像装置113の着脱方向手前側に比べ、奥側の方が凹み139に担持された現像剤の穂立ちの密度が大きくなり、回転すると奥側でより強い吸い込み気流が発生する。すると現像装置113の着脱方向手前側から奥側に向けた吸い込み気流が発生する。これにより、現像装置113の着脱方向手前側の開口部近傍で帯電不足のトナーが遊離したとしても、吸い込み気流に吸い込まれて現像装置113の着脱方向奥側の内部に運ばれ、現像装置外部への飛散を防ぐことができる。従って、サービスマンやユーザが現像装置113の交換や確認を行うために、現像装置113の着脱方向手前側を持って引き出したときに、現像装置113の着脱方向手前側からトナーが飛散したり、現像装置113を持った手が汚れたりすることを防ぐことができる。
【0107】
また、本実施形態では、ケース125の内壁と現像スリーブ132の外周面との間の空隙において、現像装置113の着脱方向手前側から奥側に向けた気流を発生させるために、現像スリーブ表面の楕円状の凹みを、その凹みの長手方向が現像スリーブ132の回転軸方向に対して斜めに角度を有してもよい。
【0108】
図22は、凹み139の長手方向が現像スリーブ132の回転軸方向に対して斜めに角度を有する現像スリーブ132の説明図であって、(a)は現像スリーブ132の斜視図、(b)は外周面のA部拡大図である。図22(a)、(b)に示すように、楕円状の凹み139の長手方向が現像スリーブ132の回転軸方向に対して角度を有している。この現像スリーブ132が図中矢印B方向に回転すると、凹みで穂立ちした現像剤により、同図(b)中矢印C方向に気流が発生する。また、現像剤が現像スリーブ132から離脱する剤離れ位置においては、現像剤が現像装置の着脱方向奥側方向(剤離れ部での矢印C方向)に向けて離脱する。これらにより、現像スリーブ132の回転に伴い、現像装置着脱方向奥側への吸い込み気流を発生させることができる。よって、現像装置113の着脱方向手前側の開口部近傍で帯電不足のトナーが遊離したとしても、上記吸い込み気流に吸い込まれて現像装置113の着脱方向奥側の内部に運ばれ、現像装置外部への飛散を防ぐことができる。特に、現像装置113の着脱方向手前側でのトナー飛散を抑えることができる。
【0109】
また、上記現像スリーブ132において、図21で示したように、現像スリーブ外周面に設けられた凹み139の単位面積当たりの密度を、現像装置113の着脱方向手前側が小さく、奥側に向かって徐々に大きくなるようにしてもよい。これにより、現像スリーブ132の回転に伴い、現像装置着脱方向奥側へのより強い吸い込み気流を発生させて、着脱方向手前側でのトナー飛散をより確実に抑えることができる。
【0110】
以上、本実施形態によれば、非磁性部材からなる回転駆動可能なスリーブ状の中空体としての現像スリーブ132の内部に磁界発生手段としてのマグネットローラ133が配置されマグネットローラ133の磁力により現像スリーブ132の外周面上に磁性キャリアとトナーとを含む二成分現像剤を担持して搬送する現像剤担持体としての現像ローラ115と、現像ローラ115上に担持される二成分現像剤を収容する現像剤収容部としての収容槽117と、現像ローラ115に担持された二成分現像剤の層厚を規制する現像剤規制部材としてのドクタブレード116と、現像ローラ115と、収容槽117と、ドクタブレード116とを収容する筐体としてのケース125を備えている。収容槽117内からマグネットローラ113の磁力により現像ローラ115上に担持された二成分現像剤は、ドクタブレード116により規制された後に、ケース125に設けられた開口部から現像スリーブ132の外周面の一部を露出させて潜像担持体としての感光体108と対向する現像領域を通過させ、再び収容槽117内に戻される。マグネットローラ113は、上記現像領域を通過した後の二成分現像剤を現像ローラ115から離脱させる位置まで搬送する磁力を発生させるための搬送用磁極を有する磁界発生部材としてのP2極、P3極を有し、ケース125の開口部よりも現像スリーブ132の回転方向下流側であって、二成分現像剤を現像ローラ115から離脱させる位置までの間に、ケース125の内壁と現像スリーブ132の外周面との間に所定の空隙を有するように構成されている。また、現像スリーブ132は、その外周面に、凹部としての凹み139が互いに間隔をあけて分布するように複数設けられ、現像スリーブ132の周方向において互いに隣り合う凹み139の配設ピッチPcが、現像スリーブ132の外周面における上記P3極の長手方向と直交する方向の磁束密度半値幅に相当する部分の長さWGP3よりも短く設定されている。このように凹み139の周方向の配設ピッチPcを設定することにより、現像スリーブ132の外周面の磁束密度半値幅に相当する部分には、少なくとも2つの凹み139が存在し、これらの凹み139で担持された現像剤が穂立つ。これらの凹み139で担持された現像剤が穂立つことによって、現像スリーブ132の外周面及びケース125の内壁との間のケーシングギャップが仕切られ、現像スリーブ132の回転により、仕切られたケーシングギャップに存在する空気が、現像装置の内部にある収容槽117に搬送される。そして、空気が収容槽117に搬送されると上記ケーシングギャップで負圧が生じ、現像装置の開口部から外部の空気が流れ込んで吸い込み気流が発生する。従って、現像装置の開口部近傍で帯電不足のトナーが遊離したとしても、上記吸い込み気流に吸い込まれて現像装置内部に運ばれ、現像装置外部へ飛散することがない。
また、本実施形態においては、上記現像スリーブ132の周方向において互いに隣り合う凹み139は、現像スリーブ132の回転軸方向に互いにずらすように設けられ、現像スリーブ132の回転軸方向における凹み139のずれ量は、凹み139の回転軸方向の長さ以下である。これにより、現像スリーブ132の周方向において互いに隣り合う凹み139は、それらの端部間で回転軸方向の隙間が生じないように設けられ、現像スリーブ132が回転したときに回転軸方向における現像剤の穂立ちの両端部側からの空気が漏れ難くなり、十分な吸い込み気流を発生させることができる。
また、本実施形態においては、画像形成装置本体に対して現像スリーブ132の回転軸方向に着脱可能に構成し、現像スリーブ132の回転軸方向に対して現像装置自体の着脱方向手前側から奥側に向けた気流を発生するように構成した。現像装置の着脱方向手前側の開口部近傍で帯電不足のトナーが遊離したとしても、上記気流に吸い込まれて着脱方向奥側の内部に運ばれ、現像装置外部への飛散を防ぐことができる。従って、サービスマンやユーザが現像装置の交換や確認を行うために、現像装置の着脱方向手前側を持って引き出したときに、現像装置の着脱方向手前側からトナーが飛散したり、現像装置を持った手が汚れたりすることを防ぐことができる。
また、本実施形態においては、上記現像スリーブ132の周方向における凹み139の配設ピッチが、現像装置自体の着脱方向手前側に比べ、奥側が小さい。この現像スリーブ132では、現像装置の着脱方向手前側に比べ、奥側の方が凹み139に担持された現像剤の穂立ちの密度が大きくなり、回転すると奥側でより強い吸い込み気流が発生する。すると現像装置の着脱方向手前側から奥側に向けた吸い込み気流が発生する。
また、本実施形態においては、上記現像スリーブ132の外周面に設けられた上記凹み139は、長円状又は楕円状の形状をなし、凹み139の長手方向が現像スリーブ132の回転軸方向に対して斜めに角度を有する。そして、現像スリーブ132の回転軸方向に対して現像装置自体の着脱方向手前側から奥側に向けた気流を発生するように角度を設定した。現像スリーブ132が回転すると、凹み139で穂立ちした現像剤により、現像装置の着脱方向奥側に向けた気流が発生する。また、現像剤が現像スリーブから離脱する剤離れ位置において、現像剤が現像装置の着脱方向奥側方向に向けて離脱する。これらにより、現像スリーブ132の回転に伴い、現像装置着脱方向奥側への吸い込み気流を発生させることができる。
また、本実施形態においては、上記トナーとしては、少なくとも、窒素原子を含む官能基を有するポリエステルプレポリマー、ポリエステル、着色剤及び離型剤を有機溶媒中に分散させたトナー材料液を、水系媒体中で架橋及び伸張反応の少なくとも一方を行って得られるトナーが好適である。
【符号の説明】
【0111】
101 画像形成装置
106Y,106M,106C,106K プロセスカートリッジ
108 感光体ドラム(感光体)
109 帯電ローラ(帯電装置)
113 現像装置
115 現像ローラ
132 現像スリーブ
133 マグネットローラ
139 凹み
【先行技術文献】
【特許文献】
【0112】
【特許文献1】特開2009−80447号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非磁性部材からなる回転駆動可能なスリーブ状の中空体の内部に磁界発生手段が配置され該磁界発生手段の磁力により該中空体の外周面上に磁性キャリアとトナーとを含む二成分現像剤を担持して搬送する現像剤担持体と、
該現像剤担持体上に担持される二成分現像剤を収容する現像剤収容部と、
該現像剤担持体に担持された二成分現像剤の層厚を規制する現像剤規制部材と、
該現像剤担持体と、該現像剤収容部と、該現像剤規制部材とを収容する筐体とを備え、
上記現像剤収容部内から上記磁界発生手段の磁力により上記現像剤担持体上に担持した二成分現像剤を、上記現像剤規制部材により規制した後に、上記筐体に設けられた開口部から上記中空体の外周面の一部を露出させて潜像担持体と対向する現像領域を通過させ、再び現像剤収容部内に戻す現像装置であって、
上記磁界発生手段は、上記現像領域を通過した後の二成分現像剤を上記現像剤担持体から離脱させる位置まで搬送する磁力を発生させるための搬送用磁極を有する磁界発生部材を有し、
上記筐体の開口部よりも上記中空体の回転方向下流側であって、上記二成分現像剤を上記現像剤担持体から離脱させる位置までの間に、該筐体の内壁と該中空体の外周面との間に所定の空隙を有するように構成し、
上記中空体は、その外周面に、複数の凹部を互いに間隔をあけて分布するように設けたものであり、
該中空体の周方向において互いに隣り合う該凹部の配設ピッチを、該中空体の外周面における上記磁界発生部材の長手方向と直交する方向の磁束密度半値幅に相当する部分の長さよりも短く設定したことを特徴とする現像装置。
【請求項2】
請求項1の現像装置において、
上記中空体の周方向において互いに隣り合う凹部は、該中空体の回転軸方向に互いにずらすように設けられ、
該中空体の回転軸方向における該凹部のずれ量は、該凹部の回転軸方向の長さ以下であることを特徴とする現像装置。
【請求項3】
請求項1又は2の現像装置において、
画像形成装置本体に対して上記中空体の回転軸方向に着脱可能に構成し、
上記中空体の回転軸方向に対して当該現像装置自体の着脱方向手前側から奥側に向けた気流を発生するように構成したことを特徴とする現像装置。
【請求項4】
請求項3の現像装置において、
上記中空体の周方向における上記凹部の配設ピッチが、当該現像装置自体の着脱方向手前側に比べ、奥側が小さいことを特徴とする現像装置。
【請求項5】
請求項3又4の現像装置において、
上記中空体の外周面に設けられた上記凹部は、長円状又は楕円状の形状をなし、該凹部の長手方向が該中空体の回転軸方向に対して斜めに角度を有し、該中空体の回転軸方向に対して当該現像装置自体の着脱方向手前側から奥側に向けた気流を発生するように該角度を設定したことを特徴とする現像装置。
【請求項6】
潜像担持体と、該潜像担持体と対向する現像領域に磁性キャリアおよびトナーからなる二成分現像剤を搬送して該潜像担持体上の潜像に該トナーを付着させて現像する現像装置とを一体的に支持し、該現像装置による現像によって得られるトナー像を潜像担持体上から最終的に記録材上へ転移させることで該記録材上に画像を形成する画像形成装置に対して着脱自在なプロセスカートリッジにおいて、
上記現像装置として、請求項1乃至5のいずれかの現像装置を用いることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項7】
潜像担持体と、該潜像担持体と対向する現像領域に磁性キャリアおよびトナーからなる二成分現像剤を搬送して該潜像担持体上の潜像に該トナーを付着させて現像する現像装置とを一体的に支持し、該現像装置による現像によって得られるトナー像を潜像担持体上から最終的に記録材上へ転移させることで該記録材上に画像を形成する画像形成装置に対して着脱自在なプロセスカートリッジを備えた画像形成装置において、
上記プロセスカートリッジとして、請求項6のプロセスカートリッジを用いることを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項7の画像形成装置において、
上記トナーは、少なくとも、窒素原子を含む官能基を有するポリエステルプレポリマー、ポリエステル、着色剤及び離型剤を有機溶媒中に分散させたトナー材料液を、水系媒体中で架橋及び伸張反応の少なくとも一方を行って得られるトナーであることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2011−174960(P2011−174960A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−36809(P2010−36809)
【出願日】平成22年2月23日(2010.2.23)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】