現像装置及びこれを用いた画像形成装置
【課題】クラウドトナーによって現像する際、飛翔電極部材の先端部位でのトナーの凝集物の形成を抑え、像保持体側へ向かうトナー量を長期に亘り安定化させる。
【解決手段】トナー保持体3と、このトナー保持体3に対向して離間配置され、トナー保持体3の回転方向における下流側に対応する部位を少なくとも除いて支持され且つトナー保持体3との間にトナー保持体3上のトナーが飛翔させられる振動電界Esを作用させる飛翔電極部材4と、この飛翔電極部材4とトナー保持体3との間に振動電界Esを生成する振動電界生成手段5と、飛翔電極部材4とトナー保持体3との間に振動電界生成手段5による振動電界Esを作用させた状態で、少なくとも飛翔電極部材4のトナー保持体3の回転方向における下流側に対応する部位に対し、飛翔電極部材4とトナー保持体3との間隙が変化する方向に沿う振動を付与する振動付与手段6と、を備える。
【解決手段】トナー保持体3と、このトナー保持体3に対向して離間配置され、トナー保持体3の回転方向における下流側に対応する部位を少なくとも除いて支持され且つトナー保持体3との間にトナー保持体3上のトナーが飛翔させられる振動電界Esを作用させる飛翔電極部材4と、この飛翔電極部材4とトナー保持体3との間に振動電界Esを生成する振動電界生成手段5と、飛翔電極部材4とトナー保持体3との間に振動電界生成手段5による振動電界Esを作用させた状態で、少なくとも飛翔電極部材4のトナー保持体3の回転方向における下流側に対応する部位に対し、飛翔電極部材4とトナー保持体3との間隙が変化する方向に沿う振動を付与する振動付与手段6と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現像装置及びこれを用いた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、トナー担持体からトナークラウドを発生させる構成において、制御電極(ワイヤ−)をトナー担持体の回転方向における接線方向に沿って振動させ、制御電極に対するトナー付着を防ぐ方式が開示されている。
また、特許文献2には、板状部材の先端側に電極を設け、板状部材をステンレス等の弾性部材にて支持し、弾性部材又は板状部材に圧電振動子からの振動を作用させる方式が開示され、このような振動は非画像部にて行い、弾性部材上のトナーの堆積を防ぐことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−67547号公報(実施例、図1)
【特許文献2】特開平9−311542号公報(発明の実施の形態、図7)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、トナー保持体と飛翔電極部材との間の振動電界によりトナーを飛翔させて像保持体の潜像を現像するにあたり、飛翔電極部材の先端部位でのトナーの凝集物の形成を抑え、像保持体側へ向かうトナー量を長期に亘り安定化させた現像装置及びこれを用いた画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る発明は、静電潜像が保持された像保持体に対向して配置され且つトナーを外周面に保持して回転するトナー保持体と、このトナー保持体に対向して離間配置され、トナー保持体の回転方向における下流側に対応する部位を少なくとも除いて支持され且つ前記トナー保持体との間にトナー保持体上のトナーが飛翔させられる振動電界を作用させる飛翔電極部材と、この飛翔電極部材と前記トナー保持体との間に前記振動電界を生成する振動電界生成手段と、前記飛翔電極部材と前記トナー保持体との間に前記振動電界生成手段による振動電界を作用させた状態で、少なくとも前記飛翔電極部材のトナー保持体の回転方向における下流側に対応する部位に対し、前記飛翔電極部材と前記トナー保持体との間隙が変化する方向に沿う振動を付与する振動付与手段と、を備えることを特徴とする現像装置である。
【0006】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る現像装置において、前記振動付与手段は、前記振動電界生成手段による振動電界が作用している間は前記飛翔電極部材に対し連続的に振動を付与することを特徴とする現像装置である。
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に係る現像装置において、前記振動付与手段は、圧電素子を用いて前記飛翔電極部材に対し振動を付与するようにしたことを特徴とする現像装置である。
請求項4に係る発明は、請求項1又は2に係る現像装置において、前記振動付与手段は、電磁石を用いて前記飛翔電極部材に対し振動を付与するようにしたことを特徴とする現像装置である。
請求項5に係る発明は、請求項3に係る現像装置において、トナー及びトナー保持体が置かれている環境状態又はこれまでの使用履歴状態の少なくともいずれか一方の状態を把握する状態把握手段を更に備え、前記振動付与手段は、前記状態把握手段の把握結果に基づいて、前記環境状態又は前記使用履歴状態でのトナー保持体からのトナー飛翔量が予め決められた値より少なくなる場合には、前記飛翔電極部材の振動時の当該飛翔電極部材がトナー保持体に対して最も近づく位置と最も遠ざかる位置の中間位置をトナー保持体側へ近づけるように設定することを特徴とする現像装置である。
【0007】
請求項6に係る発明は、請求項1乃至4のいずれかに係る現像装置において、前記飛翔電極部材は、少なくともトナーが接触する部位に絶縁性の被覆処理がなされていることを特徴とする現像装置である。
請求項7に係る発明は、静電潜像を保持して回転する像保持体と、この像保持体に対向して離間配置され且つ前記像保持体上に保持された静電潜像をトナーにて現像する請求項1乃至6のいずれかに係る現像装置と、を備えることを特徴とする画像形成装置である。
請求項8に係る発明は、請求項7に係る画像形成装置において、最大画像形成領域以上の周面を有する回転可能な支持体並びにこの支持体上に当該支持体の回転方向及びこの回転方向に交差する交差方向に沿って画素単位毎に行列配列された画素電極を有する像保持体と、前記交差方向に沿った各行の画素電極群のうち走査信号によって選択された行の夫々の画素電極に対応して画像信号に基づいた潜像電圧を印加することにより潜像を書き込む潜像書込手段と、を備えることを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に係る発明によれば、トナー保持体と飛翔電極部材との間の振動電界によりトナーを飛翔させて像保持体の潜像を現像するにあたり、飛翔電極部材の先端部位でのトナーの凝集物の形成を抑え、像保持体側へ向かうトナー量を長期に亘り安定化できる。
請求項2に係る発明によれば、本構成を有さない場合に比べて、飛翔電極部材の先端部位でのトナーの凝集物の形成を有効に抑えながら現像条件の安定化も図ることができる。
請求項3に係る発明によれば、本構成を有さない場合に比べて、飛翔電極部材を容易に振動させることができる。
請求項4に係る発明によれば、本構成を有さない場合に比べて、飛翔電極部材を容易に振動させることができる。
請求項5に係る発明によれば、本構成を有さない場合に比べて、環境条件やトナー及びトナー保持体の経時変化があっても安定したトナー量を確保できる。
請求項6に係る発明によれば、本構成を有さない場合に比べて、トナーの電荷量の変化を抑えることができる。
請求項7に係る発明によれば、トナー保持体と飛翔電極部材との間の振動電界によりトナーを飛翔させて像保持体の潜像を現像するにあたり、飛翔電極部材の先端部位でのトナーの凝集物の形成を抑え、像保持体側へ向かうトナー量を長期に亘り安定化できる画像形成装置を提供できる。
請求項8に係る発明によれば、本構成を有さない場合に比べて、帯電工程を実施する際の画質低下を考慮することのない高画質画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】(a),(b)は本発明が適用された現像装置を用いた画像形成装置の実施の形態モデルの概要を示す説明図である。
【図2】実施の形態1に係る画像形成装置の全体構成の概略を示す説明図である。
【図3】実施の形態1の像保持体の構成を示す説明図である。
【図4】(a)(b)は画素電極の構成を示す説明図であり、(c)は等価回路を示す説明図である。
【図5】画素電極の駆動方式を示す説明図である。
【図6】実施の形態1の現像装置を示す説明図である。
【図7】(a)は実施の形態1の振動付与装置の概要を示す説明図であり、(b)は飛翔電極部材と圧電素子との位置関係を示す説明図である。
【図8】(a)は圧電素子の構成を示す説明図であり、(b)〜(d)は圧電素子の変形の様子を示す説明図である。
【図9】(a),(b)は導電性トナーを示す説明図である。
【図10】(a)〜(c)は振動しない場合の像保持体と現像ロールとの対向領域でのトナーの挙動を示す説明図であり、(d)は振動が付加された場合のトナーの挙動を示す説明図である。
【図11】飛翔電極部材の曲げ加工についての説明図であり、(a)は曲げ加工がなされた場合、(b)は曲げ加工がなされていない場合を示す。
【図12】実施の形態2の現像装置の振動付与装置を示す説明図である。
【図13】実施例で用いた実験機の概略構成を示す説明図である。
【図14】実施例の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
◎実施の形態の概要
先ず、本発明が適用された現像装置の実施の形態モデルの概要について説明する。
図1(a),(b)は、本発明を具現化する実施の形態モデルに係る画像形成装置の概要を示すものであって、静電潜像を保持して回転する像保持体1と、この像保持体1に対向して配置され且つ像保持体1上に保持された静電潜像に対しトナーTを飛翔させて現像する現像装置2と、を備えたものとなっている。
【0011】
現像装置2は、静電潜像が保持された像保持体1に対向して配置され且つトナーTを外周面に保持して回転するトナー保持体3と、このトナー保持体3に対向して離間配置され、トナー保持体3の回転方向における下流側に対応する部位を少なくとも除いて支持され且つトナー保持体3との間にトナー保持体3上のトナーが飛翔させられる振動電界Esを作用させる飛翔電極部材4と、この飛翔電極部材4とトナー保持体3との間に振動電界Esを生成する振動電界生成手段5と、飛翔電極部材4とトナー保持体3との間に振動電界生成手段5による振動電界Esを作用させた状態で、少なくとも飛翔電極部材4のトナー保持体3の回転方向における下流側に対応する部位に対し、飛翔電極部材4とトナー保持体3との間隙が変化する方向に沿う振動を付与する振動付与手段6と、を備える。
【0012】
ここで、像保持体1やトナー保持体3はドラム状、ベルト状いずれでもよく、トナーTを保持して回転できるようになっていればよい。
また、飛翔電極部材4は、例えば金属等の導電性材料のみで構成される態様、絶縁性基材と導電性材料とを重ねた構成の態様等、特に限定されず、トナー保持体3との間に振動電界Esが作用でき、この振動電界Esによってトナー保持体3からトナーTが飛翔できるような構成のものであればよい。尚、飛翔電極部材4よりトナー保持体3と離れる側に他の電極部材、例えば飛翔電極部材4に対するトナーTの付着を抑えるような電界を作用させる電極部材等を設けることは差し支えない。
【0013】
更に、振動付与手段6によって飛翔電極部材4に付与される振動は、連続的に行わせるようにしてもよいし、不定期に適宜行わせるようにしてもよいが、飛翔電極部材4の先端部位でのトナーTの凝集物の形成を抑える観点からすれば、振動付与手段6は、振動電界生成手段5による振動電界Esが作用している間は飛翔電極部材4に対し連続的に振動を付与することが好ましい。尚、現像動作が行われていない場合にも振動を付与するようにしても差し支えない。
【0014】
ここで、飛翔電極部材4とトナー保持体3との間隙Gが変化する方向に沿う振動を飛翔電極部材4に付与することの背景について説明する。
図1(b)は、飛翔電極部材4が振動せずに固定位置にある場合のトナー保持体3と飛翔電極部材4との間の作用を示すもので、トナー保持体3と飛翔電極部材4との間に作用する振動電界Esは、特に、飛翔電極部材4の先端部位ではトナー保持体3との間でその場振動し易くなる。また、この先端部位では、端部効果も手伝って強電界が集中し易い。
【0015】
このような場合、飛翔電極部材4の先端部位では振動電界Esによって徐々にトナーTの凝集が生じ、その後、すだれ状のトナーTの凝集物Cが形成されるようになる。このようなすだれ状のトナーTの凝集物Cが形成されると、振動電界Esでトナー保持体3から飛翔したトナーTは十分クラウド化がなされずに、有効に像保持体1側に供給されず、像保持体1側に供給されるトナー量が不足し、例えば濃度不足等の現象として現れる。
しかしながら、凝集物Cが形成される方向に沿って飛翔電極部材4を振動させるようにすると、仮に、すだれ状の凝集物Cの形成がなされても、振動によって弾き落とされ、飛翔電極部材4の先端部位での凝集物Cの形成が抑えられる。その結果、像保持体1側へ供給されるトナー量は安定する。
【0016】
飛翔電極部材4に振動を付与する振動付与手段6としては、少なくとも飛翔電極部材4の先端部位にてトナー保持体3との間隙Gが変化する方向に沿う振動を飛翔電極部材4に付与できる構成のものであれば特に限定されないが、飛翔電極部材4を容易に振動させる観点から、圧電素子を用いて構成することが好ましい。このように圧電素子を用いる場合、飛翔電極部材4の振動量を確保するには、例えばバイモルフ型を含む積層構成の素子を用いることが好適である。
また、振動付与手段6としては、電磁石を用いて構成するようにしてもよい。
【0017】
そして、現像に要するより安定したトナー量を確保する観点からすれば、トナーT及びトナー保持体3が置かれている環境状態又はこれまでの使用履歴状態の少なくともいずれか一方の状態を把握する状態把握手段7を更に備え、振動付与手段6は、状態把握手段7の把握結果に基づいて、前記環境状態又は前記使用履歴状態でのトナー保持体3からのトナー飛翔量が予め決められた値より少なくなる場合には、飛翔電極部材4の振動時の当該飛翔電極部材4がトナー保持体3に対して最も近づく位置と最も遠ざかる位置の中間位置(振動の中心位置に相当する)をトナー保持体3側へ近づけるように設定することが好ましい。この場合、トナーT及びトナー保持体3の曝されている環境状態、あるいは、トナーT及びトナー保持体3の経時変化状態を把握して、それに合わせて飛翔電極部材4の振動の中心位置を変化させることで、トナー保持体3と飛翔電極部材4との間に作用する振動電界Esの電界強度を変化させることができ、トナー保持体3から飛翔するトナー量が安定する。
【0018】
また、トナー保持体3から飛翔したトナーTが飛翔電極部材4に接触してもトナーTの有する電荷量の変化を抑える観点から、飛翔電極部材4は、少なくともトナーTが接触する部位に絶縁性の被覆処理がなされていることが好ましい。このような被覆処理としては、飛翔電極部材4の一部のみならず、全面を覆うようにしてもよい。この被覆処理は、特に、トナーTとして注入帯電型のものを使用する場合に有効で、トナーTが飛翔電極部材4に接触しても飛翔電極部材4からの電荷注入が抑えられ、トナーTの帯電量の変化が抑えられる。
【0019】
そして、被覆処理層は、厚すぎるとトナー保持体3上のトナーTに作用する振動電界Esの電界強度が小さくなり、また、厚い被覆処理層によって作用する電界に電界ムラが生じ易くなることから、通常、10μm以下の厚さのものが選定される。このような被覆処理層の絶縁性は、この被覆処理層に振動電界Esで飛翔したトナーTが接触しても、トナーT自体の帯電状態の変化が抑えられる程度の絶縁性を有していればよく、通常、1010Ω・cm以上の体積抵抗率を有するものが用いられる。
【0020】
このような現像装置2を画像形成装置に適用する場合、静電潜像を保持して搬送する像保持体1と、この像保持体1に対向して離間配置され且つ像保持体1上に保持された静電潜像をトナーTにて現像する上述の現像装置2と、を備えることが好ましい。このとき、飛翔電極部材4はトナーTへの電界作用を発揮でき、トナーTをトナー保持体3から飛翔できるものであればよく、飛翔電極部材4の先端部位が像保持体1とトナー保持体3との対向領域の中央付近に設けるようにすればよい。
仮に、対向領域のうち下流側に大きく出張るように設けると、像保持体1側に向かうトナー量が却って少なくなり、現像に供するトナー量を十分確保できなくなる虞がある。また、対向領域のうち上流側の一部に設けるようにすると、トナー保持体3からのトナー飛翔量が少なくなる。尚、対向領域のうち下流側で現像を阻害しない部分にトナーTの像保持体1側への移動を遮蔽する遮蔽部材を設けるようにしても差し支えない。
【0021】
更に、本実施の形態モデルの現像装置2を適用する好適な画像形成装置の一例としては次のものが挙げられる。すなわち、最大画像形成領域以上の周面を有する回転可能な支持体並びにこの支持体上に当該支持体の回転方向及びこの回転方向に交差する交差方向に沿って画素単位毎に行列配列された画素電極を有する像保持体1と、前記交差方向に沿った各行の画素電極群のうち走査信号によって選択された行の夫々の画素電極に対応して画像信号に基づいた潜像電圧を印加することにより潜像を書き込む潜像書込手段と、を備える態様の画像形成装置が挙げられる。
【0022】
次に、図面に示す実施の形態に基づいて本発明を更に詳細に説明する。
◎実施の形態1
図2は、本発明が適用された画像形成装置の実施の形態1を示す。
<画像形成装置の全体構成>
同図において、本実施の形態の画像形成装置は、所謂タンデム型のカラー画像形成装置であり、装置筐体15内に例えば電子写真方式にて各色成分(例えばイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K))の各色トナー像が形成される四色の像保持体20(20a〜20d)を略鉛直方向に並列配置したものである。
四色の像保持体20a〜20dに対向する位置には、二つの張架ロール61、62に記録材を吸着して搬送する記録材搬送ベルト60が掛け渡され、例えば張架ロール61を駆動ロールとして循環回転するようになっている。また、張架ロール62と記録材搬送ベルト60を挟んで対向する位置には、記録材を記録材搬送ベルト60に吸着するための帯電器63が設けられている。そして、各色の像保持体20の周囲には、像保持体20上に形成された静電潜像をトナーにて現像して可視像化する現像装置40と、像保持体20上の残留トナーを清掃する清掃器65とが設けられ、更に、像保持体20と記録材搬送ベルト60を挟んで対向する位置には、記録材搬送ベルト60によって搬送される記録材上に像保持体20上のトナー像を転写する転写器64が設けられている。尚、符号41は現像装置40(詳細は後述する)内にて像保持体20にトナーを供給する現像ロールを示している。
【0023】
また、装置筐体15内の下方には、記録材を供給する記録材供給装置70が設けられ、例えば供給容器71内に収容された記録材が、ピックアップロール72によって供給容器71から送り出された後、フィードロール及びリタードロールの対構成による捌き機構73にて一枚毎に鉛直方向に延びる記録材搬送路74に向かって供給される。
そして、記録材供給装置70から記録材搬送路74に供給された記録材は、記録材搬送路74の下流側に配置された位置合わせロール(レジストロール)78にて一旦位置合わせされた後、予め決めたタイミングで記録材搬送路74を更に搬送される。搬送された記録材は、帯電器63によって記録材搬送ベルト60に吸着され、そのまま記録材搬送ベルト60の回転と共に搬送される。記録材搬送ベルト60上の記録材には、各色の転写器64によって夫々のトナー像が順次転写されて多重化される。トナー像が多重化された記録材は定着器76にて定着された後、排出ロール77から装置筐体15の一部で構成される記録材排出受け16に排出される。尚、記録材搬送路74には、記録材を搬送するための搬送部材(例えば搬送ロール等)79が適宜設けられる一方、記録材搬送ベルト60の出口近く(張架ロール61の近く)には図示外の剥離部材が設けられ、記録材搬送ベルト60から記録材の剥離が容易になされるようになっている。
【0024】
<像保持体>
次に、本実施の形態で用いられる像保持体20について詳述する。
本実施の形態における像保持体20は、例えば図3に示すように、フィルム上に多数の画素電極34が行列配列状(所謂マトリクス状)に形成された画素電極フィルム30を回転可能な支持体である剛体ドラム21上に巻き付けて固定支持したものとなっている。
本例において、画素電極フィルム30は、例えばポリイミドフィルム基体上に、所謂IC製造プロセス等で用いられる薄膜技術を利用して作製されたもので、画素電極34が行列配列されている。そして、このように行列配列された画素電極34は、例えば剛体ドラム21の回転軸方向に沿った方向をデータライン、剛体ドラム21の回転方向に沿った方向を走査ラインとし、各画素電極34に対応するデータライン及び走査ラインはまとめられて適宜数のデータ用ドライバ31及び走査用ドライバ32に接続されている。尚、画素電極フィルム30は画素電極34を覆うように全体が図示外の保護膜で覆われており、また、図中符号21aは、剛体ドラム21の外周面の一部に回転軸方向に沿って開口された溝である。
【0025】
−画素電極の周辺構造−
次に、画素電極フィルム30の画素電極34及びその周辺構造について説明する。
本実施の形態において、画素電極フィルム30は、図4(a)〜(c)に示すように、画素電極34が行列配列されており、各画素電極34は、所謂アクティブマトリクス方式で構成され、スイッチング素子として例えばTFT(Thin Film Transistor)33を用い、蓄積容量35及び配線(ソース線Ls、ゲート線Lg等)が夫々付加されている。
そして、各画素電極34間の結線は、データライン毎にTFT33のソースsが結線されるソース線Ls、走査ライン毎にTFT33のゲートgが結線されるゲート線Lgとしてまとめられている。また、TFT33のドレインdには画素電極34と蓄積容量35が並列に接続され、蓄積容量35の一方は走査ライン毎にまとめられ(図示せず)、図4(c)のような等価回路を呈するように構成されている。
【0026】
画素電極34は画素電極フィルム30に対しマトリクス状に多数並べられた構成のために、画素電極34の駆動回路は次のように行われる。
つまり、画素電極フィルム30には、図5に示すように、データライン及び走査ライン毎に予め決めた数の画素電極34が配列されており、各画素電極34をスイッチングするTFT33のソースs側がデータライン毎に夫々データ用ドライバ31へ接続される一方、TFT33のゲートg側が走査ライン毎に夫々走査用ドライバ32に接続されている。また、これらのデータ用ドライバ31及び走査用ドライバ32は、像保持体20に設けられた像書込制御装置80によって駆動され、像書込制御装置80によってデータ用ドライバ31及び走査用ドライバ32を駆動することで、目的の画素電極34に画像信号に基づいた潜像電圧が印加され、蓄積容量35によって保持される。尚、図5では画素電極34は省略しているが、図4(c)に示すように、TFT33と蓄積容量35との間に画素電極34が接続されていることは言うまでもない。
【0027】
<現像装置>
−現像装置の構成例−
本実施の形態における各色の現像装置40は、用いるトナーが異なる他は略同様の構成が採用されているため、ここでは一つの現像装置40について説明する。
図6は、現像装置40の概略構成を示すもので、トナー(本実施の形態では導電性トナーを使用している)が収容される現像容器40aを有している。本実施の形態の現像装置40は、現像容器40aに像保持体20に対向して現像用開口40bを開設すると共に、この現像用開口40bに面して像保持体20と離間配置され且つ対向部位で同方向に回転するトナー保持体としての現像ロール41を配設し、像保持体20と現像ロール41との対向部位にて像保持体20上に形成された潜像を現像して可視像化するものである。
【0028】
また、現像ロール41の像保持体20側と異なる側には、現像ロール41との間にてトナーに電荷注入を行う電荷注入ロール43が設けられ、互いに軽く接触又は微小間隙をもって支持された状態で対向部位では互いに同方向に回転している。本例では、電荷注入ロール43の周速が現像ロール41の周速より速くなるように設定されている。そして、現像ロール41と電荷注入ロール43との間には、両者の対向部位にあるトナーに対して電荷注入を行うための注入電界を形成する注入電源91が設けられている。つまり、本実施の形態では電荷注入ロール43や注入電源91等でトナーに対する電荷注入がなされ、現像ロール41上には安定した帯電量が与えられたトナーが供される。
【0029】
また、本実施の形態では、現像ロール41と電荷注入ロール43との対向部位より電荷注入ロール43の回転方向上流側に、電荷注入ロール43上にトナーの薄層を形成する層規制ブレード45が設けられており、この層規制ブレード45によって電荷注入ロール43上のトナーの層厚規制がなされることで、層厚規制がなされたトナーが現像ロール41との対向部位に搬送されて電荷注入がなされる。
更に、現像容器40a内の電荷注入ロール43の奥側にはトナーを攪拌するアジテータ48が設けられ、電荷注入ロール43側へのトナーの供給を行うようになっている。
【0030】
本実施の形態における現像ロール41は、例えば快削ステンレス鋼(SUM)の芯がねにゴム厚約5mmの相対的に低抵抗なシリコーンゴム層を設け、その表面を約20μm厚の相対的に高抵抗のフッ素樹脂系コート層で被覆したものを用いた。このような現像ロール41の硬さはアスカーC硬度で約50度であり、抵抗は、線圧200gf/cmの荷重で金属板上に押し付けた状態で100Vの電圧を印加したときの電流から換算すると108Ω程度であった。尚、下地のシリコーンゴム層の抵抗は、これより一桁以上低くした。
【0031】
また、層規制ブレード45は例えば厚さ0.03〜0.3mm程度のステンレスの板ばねに例えばシリコーンゴムやEPDMゴムを接着剤等により固着したものであり、この層規制ブレード45の自由端側は電荷注入ロール43の表面に軽く接触し、固定端側は現像容器40aの一部に固定されている。尚、上述した部材の構成はこれに限られるものではないことは言うまでもない。
【0032】
そして、本実施の形態の現像装置40には、現像ロール41と像保持体20との対向領域のうち、ほぼ中央位置から現像ロール41の回転方向における上流側に向かって飛翔電極部材50が配置されており、この飛翔電極部材50と現像ロール41との間には振動電源90が設けられ、現像ロール41からトナーを飛翔させるための振動電界が両者間に形成される。
【0033】
本実施の形態の飛翔電極部材50は、例えばステンレス鋼やりん青銅の板材に、現像ロール41から飛翔したトナーが接触しても帯電量が変化しないように、一部に、例えば溶剤に可溶した樹脂溶液を塗布して加熱炉で溶剤を蒸発させることで成膜された絶縁被覆層が形成されたものである。このような絶縁被覆層としては、用いられる樹脂として例えばフェノール、PTFE、PFA、ETFAなどを用いるものであってもよいし、樹脂を用いる代わりに例えばチタニア系やアルミナ系のセラミックコートを施すようにしても差し支えない。そして、絶縁被覆層の抵抗は、トナーが接触した際にトナーに対して飛翔電極部材50からの電荷注入が及ばないように、1012Ω・cm以上の体積抵抗率を有するものが好ましい。尚、このような絶縁被覆層を飛翔電極部材50の一部に設ける方法については、公知の技術を用いるようにすればよく、例えば一方向からのスプレー塗布やマスキング等の手法を利用すればよい。
【0034】
−振動付与装置−
更に、本実施の形態では、飛翔電極部材50と現像ロール41との間隙が変化する方向に沿う振動を飛翔電極部材50に付与する振動付与装置100を有している。
図7(a)は、本実施の形態における振動付与装置100の概要を示す説明図であり、(b)は、飛翔電極部材50と後述する圧電素子110との位置関係を示す説明図である。
【0035】
本実施の形態の振動付与装置100は、次のようになっている。飛翔電極部材50の現像ロール41の回転軸方向に沿った方向の両端部位に合わせて夫々矩形状の二つの圧電素子110(110a,110b)を飛翔電極部材50に接着する。このとき、圧電素子110としては、例えばバイモルフ型のものが用いられる。そして、圧電素子110の飛翔電極部材50に接着した側とは反対側の端部位置は、例えば現像容器40aから延びる支持部材120に支持されると共に、この支持部材120に一端側が固定された略L字状の板ばね121によって圧電素子110は支持部材120側にしっかり弾性付勢される。
【0036】
本実施の形態の飛翔電極部材50は、像保持体20と現像ロール41との間の最短位置における現像ロール41の接線に対して略平行配置となるように、その先端部50aに極僅かの曲げ加工(角度θ)が施されたもので、また、現像ロール41の回転軸方向に対して、両端側の圧電素子110が接着される部位より内側は、圧電素子110との接着を容易にするため、先端部50a側に少し窪む構造のものとなっている。
【0037】
また、圧電素子110(110a,110b)での振動を発生するための電源装置130が設けられ、圧電素子110に対して各種信号を印加することで圧電素子110が振動するようになる。
【0038】
本実施の形態の圧電素子110は、図8(a)に示すように、所謂バイモルフ型の素子で構成され、表裏に電極を有する二枚の圧電板111,112を夫々の分極方向が同じ方向になるようにして貼り合わせた構造のものとなっている。そのため、圧電素子110からは外部に向かって、3箇所の電極端子が設けられている。
そして、電源装置130には、二つの圧電素子110(110a,110b)からの電極端子からの接続線が延びている。尚、二つの圧電素子110の電極端子は、電源装置130の手前で互いに同じ電極端子同士を結線するようにしてもよいし、電源装置130内で結線するようにしてもよい。
【0039】
次に、圧電素子110の振動について説明する。
今、図8(a)に示すように、圧電板111の表面側の電極端子に+電圧を印加し、圧電板112の表面側の電極端子に−電圧を印加しておき、両方の共通となる電極端子に信号(電源装置130から矩形波の信号を伝達する)を入力するものとする。尚、+電圧と−電圧との絶対値は同じとする。
【0040】
ここで、図8(b)のように、信号として、0Vを中心とする矩形波を入力すると、圧電板111,112が互いに伸び縮みを繰り返すことで、圧電素子110としてはその位置を中心位置として矢印のように振動する。このとき、図7に示すように、圧電素子110に接着された飛翔電極部材50は、現像ロール41の回転方向に沿った長さが短く、更に、先端部50aが曲げ加工されているため、飛翔電極部材50自体が剛直化されるようになり、圧電素子110の振動に沿って飛翔電極部材50も振動し、例えばふしを生じる虞もない。
【0041】
また、図8(c)のように、信号として−側に大きな矩形波を入力すると、圧電板111の変形量が圧電板112より大きくなることから、圧電素子110としては、圧電板112側へ少し変位した位置を振動の中心位置として矢印のように振動する。
一方、(d)のように、信号として+側に大きな矩形波を入力すると、圧電板112の変形が大きくなり、(c)とは反対方向に変位した位置を振動の中心位置として矢印のように振動する。
【0042】
つまり、信号波形によって、圧電素子110の振動時の中心位置が変化し、ひいては、飛翔電極部材50が振動するその中心位置が変化する。このように飛翔電極部材50の振動の中心位置を変化させることは、次のような場合に特に有用となる。
例えば環境条件が大きく変化し、高湿度状態になった場合を想定すると、現像ロール41からトナーを飛翔させる力は低湿度状態に比べ大きくする必要がある。このような場合、飛翔電極部材50の位置を現像ロール41側に近づけることで、振動電界を生成する振動電源90(図6参照)による給電波形が同じであっても飛翔電極部材50と現像ロール41間に作用する電界強度が実質的に大きくなり、現像ロール41からのトナーの飛翔量が安定化する。
【0043】
また、このような中心位置の変化は、現像ロール41やトナーの経時変化状態に合わせて行うこともでき、トナーの飛翔量が安定する結果、安定したクラウド状態が維持されるようになる。
尚、このような中心位置の変化は、図8(a)に示す信号を変化させることのみならず、例えば圧電板111,112に印加する+電圧や−電圧自体の大きさを変えるようにしてもよいことは言うまでもない。また、ここでは、バイモルフ型の圧電素子110について説明したが、積層型のものであれば、同様の作用を奏することは明らかである。
【0044】
−トナーの構成例−
本実施の形態で用いられるトナーは、絶縁性トナーの表面に、例えばITO微粒子を付着させて導電性基体を得た後、更に、その表面に絶縁性微粉を付着させた構成のものとなっている。より具体的には、絶縁性トナーとして例えば平均粒径が6.5μmの球形状のものを用い、ITO微粒子を15wt%加えて、サンプルミル(協立理工製SK−M10型)にて12000rpmで30秒間混合し、その後、精製したラテックス微粉(絶縁性トナーと同一の樹脂)を加え、水冷されたサンプルミルにて12000rpmで30分間混合することで、トナーを作製した。尚、トナーとしては、これに限らず、注入帯電型トナーであればよく、その作製方法も公知の技術を用いるようにすればよい。
このようなトナーでは、高い電界強度の注入電界が作用すると、トナー相互間では精製したラテックス微粉による絶縁層を介して導電性基体同士が接触する形となり、この絶縁層に高電界が作用することでトンネル効果等によって導通し、トナーに対する電荷注入がなされる。
【0045】
トナーとしては、これに限らず、例えば図9(a)に示すように、導電性を有する材料からなる導電性トナー基体(導電性コア)81を有し、この導電性コア81の周囲を絶縁性の被覆層(例えば絶縁性樹脂層)82で被覆すると共に、導電性コア81の一部が露出するように絶縁性の被覆層82に適宜数の凹部83を設けたものが用いられる。このようなトナーは、重合法や各種公知のカプセル化技術等で作製することができる。このとき、導電性コア81としては、ポリエステル系樹脂やスチレンアクリル系樹脂等に導電性カーボンやITO等の透明導電粉などの導電剤を分散させたり、ポリエステル系樹脂やスチレンアクリル系樹脂等からなる粒子表面を前記導電剤により被覆することによって、作製される。
【0046】
このような態様のトナーに対し高電界を作用させる低抵抗化する傾向を示す。そして、低抵抗化する電界強度については、トナーの主として凹部83の占有割合、あるいは、絶縁性の被覆層82の厚さなどに依存する。
このメカニズムについては、次のように推測される。つまり、導電性コア81が絶縁性の被覆層82にて被覆されているため、導電性コア81自体がコア同士接触することや直接電極部材等に接触することが殆どなく、絶縁性の被覆層82を介して一定の微小間隙を保つことになり、この結果、例えば高電界が作用した時、トンネル効果等により導通することによる。
【0047】
また、このようなトナーの他の態様としては、例えば図9(b)に示すように、導電性コア81を絶縁性若しくは半導電性の被覆層84にて被覆し、半導電性の被覆層84の厚さhを適宜調整することにより、トナーの抵抗を調整可能としたものが挙げられる。このとき、半導電性の被覆層84については、それ自体半導電性の材料を用いるようにしてもよいし、例えば絶縁性樹脂に、酸化チタンや酸化すず等の金属酸化物や導電性カーボンを微量含有させた半導電性樹脂を用いるようにしてもよい。そして、導電性コア81としては、例えば通常の絶縁性トナーからなる絶縁性トナー基体(絶縁性コア)の外表面近傍に導電性微粒子を付着させる態様や、絶縁性コアの内部に導電性微粒子を混入させるものなど適宜選定して差し支えない。
【0048】
<画像形成装置の作動>
次に、本実施の形態に係る画像形成装置の作動についてその概略を説明する。
−像保持体での潜像形成−
像保持体20での潜像形成は、各色の像保持体20a〜20d(図3参照)の各画素電極34(図4参照)に対して、図5に示す像書込制御装置80によって、画像信号に応じた潜像電圧が印加されることで各画素電極34に保持される。これが、現像時の像保持体20側の潜像電位となる。
【0049】
−現像装置の作動−
次に、現像装置40での作動を説明するが、先ず、図6を用いてトナーに対する電荷注入工程を中心に説明する。
アジテータ48により攪拌されたトナーは、電荷注入ロール43側に供給された後、電荷注入ロール43の回転に伴って搬送され、層規制ブレード45にてその層厚が規制されて電荷注入ロール43上には略均一なトナー層が形成される。この均一に形成されたトナー層は、電荷注入ロール43と現像ロール41とが対向する対向部位にて互いに同方向に回転する両者間に挟まれた状態で擦られながら、注入電源91による注入電界によって電荷注入される。このとき、特に本実施の形態では、電荷注入ロール43の周速が現像ロール41の周速より速く設定されているため、トナーへの有効な擦りがなされ、良好な電荷注入がなされる。
【0050】
この場合、電荷注入ロール43と現像ロール41との間に挟まれたトナーは電荷注入ロール43と接触する確率が高められ、しかも、トナーとの接触抵抗を小さくすることが可能になり、トナーの見かけ上の抵抗が小さくなり、トナーは低抵抗な状態のまま有効に電荷注入がなされる。そのため、注入電界としては、比較的低電界であってもトナーには効率的に電荷注入が行われる。
【0051】
このように、単層以下になったトナーに対して電荷注入を行うことで、トナーに対する電荷注入が効果的になされ、WST(Wrong Sign Toner:トナー本来の帯電極性とは異なる逆極性に帯電されたトナー)の発生が抑えられる。そして、電荷注入ロール43との対向部位を経た現像ロール41上には、略均一な電荷注入がなされた単層以下のトナー層が形成され、現像ロール41と像保持体20との対向領域に搬送される。尚、このような電荷注入方式にあっては、トナー層間にせん断力が与えられるため、トナー同士が分極状態で重なることが防止され、注入電界が仮に高電界の場合であってもWSTの発生は抑えられる。
【0052】
−対向領域でのトナーの挙動−
次に、本実施の形態の特徴点である像保持体20と現像ロール41との対向領域でのトナーの挙動について、図10を用いて、先ず比較例を説明する。
現像ロール41に付着しているトナーを飛翔させるには、ある程度強電界を必要とするため、飛翔電極部材50と現像ロール41との間の振動電界Esにて強電界を形成し、現像ロール41からトナーを飛翔させ、飛翔したトナーをクラウド化させる。
この場合、特に本実施の形態のように使用するトナーとして注入帯電型のトナーを用いると、飛翔可能な電界(振動電界Es)下ではトナーの電気抵抗が低下(誘電率が増加)する。このため、トナーとしては電界方向に沿って誘電分極され、トナーの持つ帯電量による静電気力以外に、電気双極子による静電気力が無視できないようになる。この電気双極子による静電気力は、トナー間のみならず、トナーと現像ロール41間、トナーと飛翔電極部材50間にも作用する。
【0053】
また、このような振動電界Esによる作用は、図10(a)に示すように、飛翔電極部材50の端部効果も手伝って、特に、飛翔電極部材50の先端部位(現像ロール41の回転方向における下流側)で強くなる。更に、この先端部位では、振動電界Es自体がその場振動しているため、結果的に、飛翔電極部材50の先端部位には、(b)に示すように、トナーTが数珠状に連なった所謂すだれ状のトナーTの凝集物Cが形成されるようになる。このようなすだれ状の凝集物Cが形成されると、現像ロール41から飛翔したトナーTは凝集物Cに補足され、クラウド化がされ難くなり、飛翔電極部材50より下流側の現像領域に搬送されるものが少なくなる。そのため、像保持体20の潜像に対してトナー付着量が少なくなり、濃度不足等の画像欠陥を生じ易くなる。
【0054】
更に、飛翔電極部材50の先端部位でのトナーTの凝集物Cは、現像ロール41から飛翔されるトナーTを強く補足するようになり、(c)に示すように、すだれ状の凝集物Cは、飛翔電極部材50の先端部位から徐々に上流側に向かって広がりを示す。これに伴い、現像ロール41から飛翔されるトナーTは益々これらの凝集物Cに補足され、クラウド化も不十分となり、飛翔電極部材50の下流側の現像領域に搬送されるトナーTは益々少なくなる。
【0055】
このような事態を解決するために、本実施の形態では、振動付与装置100を用いて、振動電界Esが作用している状態で飛翔電極部材50と現像ロール41との間隙が変化する方向に沿う振動を飛翔電極部材50に連続的に付与する。そのため、(d)に示すように、飛翔電極部材50の先端部位に凝集物Cが形成されようとしても、凝集方向に飛翔電極部材50が振動することで凝集物Cの形成は抑えられる。その結果、現像ロール41から飛翔したトナーが十分クラウド化され、飛翔電極部材50を超えた下流側の領域(現像領域に相当)にも十分なトナー量が提供されるようになる。
【0056】
更に、本実施の形態では、飛翔電極部材50に絶縁性被覆層が形成されているため、電荷注入されたトナーがこれらの部材に接触しても、トナーの電荷量の変化が抑えられ、安定した現像がなされる。
【0057】
また、本実施の形態では、圧電素子110を用いることで飛翔電極部材50の振動の中心位置を変化させることができるため、現像装置40に例えば環境条件を検知するセンサを設け、このセンサによって環境状態の把握を行うようにすれば、より環境状態に即した位置を中心位置として飛翔電極部材50を振動させることができ、トナーの飛翔量が十分に確保されるようになる。
また、例えば現像装置40自体の使用履歴を把握することで、現像ロール41やトナーの経時変化状態も把握することができるため、現像ロール41表面に付着するトナーが多少変化しても、その変化に合わせて実際に作用する振動電界による電界強度を調整することもなされる。そのため、現像ロール41からのトナーの飛翔量も安定する。
【0058】
つまり、現像ロール41からのトナー飛翔量が予め決められた量より少ない場合には、飛翔電極部材50をその振動の中心位置が現像ロール41側に近づくように、振動電界による実質的な電界強度を高める一方、これとは逆に、トナー飛翔量が予め決められた量より多い場合には、飛翔電極部材50を現像ロール41から遠ざけることで、トナー飛翔量の調整がなされる。
【0059】
ここで、本実施の形態の飛翔電極部材50に一部曲げ加工が施される利点について説明する。
図11(a)は、本実施の形態のように、飛翔電極部材50の先端部位に曲げ加工がなされたものの振動の様子を示し、(b)は、曲げ加工がなされていない飛翔電極部材50の振動の様子を示す。
(a)のように、曲げ加工が施された場合には、飛翔電極部材50自体が曲げ加工されないものに比べ剛直化し、図示外の圧電素子によって振動が付与された飛翔電極部材50は、図中Hで示す範囲で振動する。一方、(b)のように、曲げ加工がなされていない場合には、図中H’で示す範囲で振動する。つまり、(b)のH’の方が(a)のHよりやや大きい振動量となる。
【0060】
特に、このような振動量の差は、飛翔電極部材50の厚さが薄い方がより顕著に現れ、また、飛翔電極部材50の現像ロール41の回転方向に沿う長さが長い方がより顕著に現れる。そのため、曲げ加工を施す利点が理解される。更には、曲げ加工を行うことで、飛翔電極部材50が剛直化するため、例えば飛翔電極部材50が振動する場合に所謂節の発生が回避されるが、曲げ加工を行わない場合には節の発生も懸念される。
そして、このような曲げ加工は、飛翔電極部材50の先端部位に限られず、他の部位に曲げ加工を施したものであっても差し支えない。また、曲げ加工の箇所は一箇所に限られず、複数箇所であっても差し支えない。
【0061】
本実施の形態では、電荷注入ロール43と現像ロール41とは対向部位で互いに同方向に回転する態様を示したが、例えば対向部位で互いに反対方向に回転するようにしても差し支えない。
また、本実施の形態では、トナーに対する電荷注入を、電荷注入ロール43と現像ロール41との間で行う方式を示したが、例えば電荷注入ロール43に代えてトナーを現像ロール41側に供給する供給ロールとし、現像ロール41とこの供給ロールとの対向部位より現像ロール41の回転方向下流側に現像ロール41上のトナーに電荷注入を行う部材を設けるようにしてもよい。あるいは、例えば電荷注入用の部材を他に設け、トナーを保持して搬送するロール部材との間に注入電界を作用させて、トナーに電荷注入を行った後、適正に電荷注入がなされたトナーを改めて現像ロール41に供給するようにしても差し支えない。
【0062】
本実施の形態では、画像形成装置として四色に対応する像保持体20を用いた構成のものを示したが、これに限られず、単色のものであってもよい。
また、本実施の形態では像保持体20として画素電極34を使用した構成のものとしたが、例えば画素電極34を用いない感光体を適用することも可能であり、この場合、感光体側の潜像電位を小さく設定してもかぶりの発生が抑えられるようになり、感光体自体の長寿命化が実現される。
【0063】
更に、トナーとして電荷注入型のものを示したが、例えば摩擦帯電型のトナーを用いるようにしてもよく、この場合、潜像電圧が非画像部にかぶりを生じない程度の大きさの潜像電圧になるようにすればよい。尚、この場合、飛翔電極部材50への絶縁性の被覆処理は省略する方がよい。
更にまた、本実施の形態では、像保持体20と現像ロール41との間に飛翔電極部材50を設ける態様を示したが、例えば飛翔電極部材50と像保持体20との間に更に電極部材を設け、この電極部材によって飛翔電極部材50側にトナーの付着を抑える電界を作用させるようにしてもよい。
【0064】
そして、本実施の形態では、飛翔電極部材50の表面粗さは略平滑(最大高さRzが5μm未満のもの)なものを用いたが、表面粗さの最大高さRzが10μm程度のものであってもよく、この場合、飛翔電極部材50の少なくとも先端部位の表面粗さを大きくすることで、飛翔電極部材50の先端部位では振動電界Esがその場振動し難くなる分、すだれ状の凝集物の形成が抑えられる。
【0065】
更に、本実施の形態では、現像ロール41や像保持体20はロール形状のものを示したが、これに限らず、例えばベルト形状のものであっても差し支えない。
【0066】
◎実施の形態2
図12は、実施の形態2の現像装置40における振動付与装置100を示す模式図である。本実施の形態の振動付与装置100は、実施の形態1と異なり、飛翔電極部材50を振動させるために電磁石を用いたもので構成のものとなっている。尚、実施の形態1と同様の構成要素には同様の符号を付し、ここではその詳細な説明を省略する。
【0067】
同図において、本実施の形態の振動付与装置100は次のようになっている。
飛翔電極部材50の現像ロール41の回転方向における中央付近にて飛翔電極部材50を支持する揺動軸140が、例えば現像容器40aに揺動可能に支持された状態で飛翔電極部材50に取り付けられている。また、飛翔電極部材50には、現像ロール41の回転方向に沿った上流側の端部近くに磁石150が取り付けられ、更に、その近くには、飛翔電極部材50を図中下方に付勢する付勢ばね160が例えば現像容器40aに一端が固定された状態で取り付けられている。更に、付勢ばね160によって付勢された飛翔電極部材50の磁石150が取り付けられた部位に対して一方が接触する隙間を有する略コの字状のフェライトコア170が設けられ、このフェライトコア170の一部にはコイル171が巻かれている。そして、このコイル171の両端端子が電源装置130に接続されている。
【0068】
このような構成において、電磁石が作用していない状態では、飛翔電極部材50は、付勢ばね160によって揺動軸140を揺動支点としてフェライトコア170の隙間の一方側に接触した状態で安定した状態となっているが、電源装置130によって例えば交流電圧がコイル171に流されることで、フェライトコア170の隙間には、極性が変化する磁界が発生する。そのため、飛翔電極部材50に取り付けられた磁石150の磁界との作用によって、飛翔電極部材50はその磁石150部分がフェライトコア170の隙間内で振動するようになり、この振動が、揺動軸140を介して飛翔電極部材50の反対側、つまり、像保持体20と現像ロール41との対向領域に配置される先端部位側にも伝達され、その先端部位が振動する。
【0069】
このように飛翔電極部材50の先端部位が振動することで、実施の形態1の圧電素子を用いた構成のものと同様に、飛翔電極部材50の先端部位での凝集物の形成が抑えられる効果を奏する。
本実施の形態では、飛翔電極部材50に磁石を取り付け、この磁石と電磁石を利用する構成のものを示したが、例えば飛翔電極部材50に磁歪素子を取り付け、この磁歪素子に対して磁界変化を加えて磁歪素子を伸縮させるようにしても飛翔電極部材50を振動させることが可能になる。
【0070】
以上の実施の形態では、飛翔電極部材50を振動電界が作用している間は連続的に振動させる態様を示したが、例えば予め決めた周期毎に振動させるようにしてもよい。また、振動電界が作用していない場合にも振動させるようにしてもよい。
【実施例】
【0071】
◎実施例1
実施の形態1の構成と同様の構成の実験機を用いて、飛翔電極部材への電圧/駆動周波数(具体的には圧電素子に対する)と、像保持体側での現像量(単位面積当たりの付着量換算)との関係を評価した。尚、比較のために、振動を加えない場合(変動なし)も同様に評価した。
【0072】
図13は、実験機の概略構成を示すもので、飛翔電極部材は圧電素子(図示せず)によって支持されていることは言うまでもない。
実験条件は、次の通り。
・圧電素子は、ノリアック社製のCMB−P01を用い、その先端部約1mmの部分に飛翔電極部材(100μm厚のSUS板)を取り付けた。尚、飛翔電極部材の表面には約25μmの絶縁被覆層が形成されている。
・像保持体は、約2mm厚のガラス板を使用し、表面に透明電極(約150nmのITO膜)で形成した現像ロールの回転軸方向における長さが約2cm幅の電極を形成し、表面に約1μmのSiO2を形成したものを用い、電極に潜像電極として+100Vを印加した。また、像保持体の速度は10mm/s。
・現像ロールの周速は60mm/s。
・振動電界として、DC0V、AC1.4kVpp、10kHz(Duty50%の矩形波)を現像ロールと飛翔電極部材との間に印加し、飛翔電極部材側を接地した。
・像保持体と現像ロールとの間隙は、G1が約100μm、G2が約150μm、G3が約100μmとなっている。
【0073】
圧電素子に印加する電圧としては、+側電極端子及び−側電極端子に絶対値が等しい電圧を印加し、信号を入力する電極端子に+側電極端子及び−側電極端子に印加した電圧と等しい電圧の間で変化させる矩形波(駆動周波数も変化)を印加した。
【0074】
結果は、図14に示すように、振動を加えない場合の現像量が約1.8g/m2であったのに対し、圧電素子に印加する電圧が±10Vの場合には、振動を加えない場合よりも現像量が若干上昇し、また、印加電圧を±20Vとすると、現像量が大きく増加することが判明した。
これは、明らかに、飛翔電極部材でのすだれ状の凝集物の形成が抑えられたことによる効果であることが理解された。
【0075】
また、この結果では、駆動周波数によって、現像量が大きく異なる傾向が見受けられ、1kHzで上昇し、その後減少して行く傾向を示したが、これは、今回実験に用いた電源の性能によるもので、周波数が高くなると、出力がやや低下する傾向が見受けられたことによるものと推測された。
したがって、本実施例では、印加電圧として、±20Vで、周波数が1kHz以上であれば、飛翔電極部材での凝集物の形成が十分効果的に抑えられることが理解された。
【符号の説明】
【0076】
1…像保持体,2…現像装置,3…トナー保持体,4…飛翔電極部材,5…振動電界生成手段,6…振動付与手段,7…状態把握手段,Es…振動電界,T…トナー,G…間隙,C…凝集物
【技術分野】
【0001】
本発明は、現像装置及びこれを用いた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、トナー担持体からトナークラウドを発生させる構成において、制御電極(ワイヤ−)をトナー担持体の回転方向における接線方向に沿って振動させ、制御電極に対するトナー付着を防ぐ方式が開示されている。
また、特許文献2には、板状部材の先端側に電極を設け、板状部材をステンレス等の弾性部材にて支持し、弾性部材又は板状部材に圧電振動子からの振動を作用させる方式が開示され、このような振動は非画像部にて行い、弾性部材上のトナーの堆積を防ぐことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−67547号公報(実施例、図1)
【特許文献2】特開平9−311542号公報(発明の実施の形態、図7)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、トナー保持体と飛翔電極部材との間の振動電界によりトナーを飛翔させて像保持体の潜像を現像するにあたり、飛翔電極部材の先端部位でのトナーの凝集物の形成を抑え、像保持体側へ向かうトナー量を長期に亘り安定化させた現像装置及びこれを用いた画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る発明は、静電潜像が保持された像保持体に対向して配置され且つトナーを外周面に保持して回転するトナー保持体と、このトナー保持体に対向して離間配置され、トナー保持体の回転方向における下流側に対応する部位を少なくとも除いて支持され且つ前記トナー保持体との間にトナー保持体上のトナーが飛翔させられる振動電界を作用させる飛翔電極部材と、この飛翔電極部材と前記トナー保持体との間に前記振動電界を生成する振動電界生成手段と、前記飛翔電極部材と前記トナー保持体との間に前記振動電界生成手段による振動電界を作用させた状態で、少なくとも前記飛翔電極部材のトナー保持体の回転方向における下流側に対応する部位に対し、前記飛翔電極部材と前記トナー保持体との間隙が変化する方向に沿う振動を付与する振動付与手段と、を備えることを特徴とする現像装置である。
【0006】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る現像装置において、前記振動付与手段は、前記振動電界生成手段による振動電界が作用している間は前記飛翔電極部材に対し連続的に振動を付与することを特徴とする現像装置である。
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に係る現像装置において、前記振動付与手段は、圧電素子を用いて前記飛翔電極部材に対し振動を付与するようにしたことを特徴とする現像装置である。
請求項4に係る発明は、請求項1又は2に係る現像装置において、前記振動付与手段は、電磁石を用いて前記飛翔電極部材に対し振動を付与するようにしたことを特徴とする現像装置である。
請求項5に係る発明は、請求項3に係る現像装置において、トナー及びトナー保持体が置かれている環境状態又はこれまでの使用履歴状態の少なくともいずれか一方の状態を把握する状態把握手段を更に備え、前記振動付与手段は、前記状態把握手段の把握結果に基づいて、前記環境状態又は前記使用履歴状態でのトナー保持体からのトナー飛翔量が予め決められた値より少なくなる場合には、前記飛翔電極部材の振動時の当該飛翔電極部材がトナー保持体に対して最も近づく位置と最も遠ざかる位置の中間位置をトナー保持体側へ近づけるように設定することを特徴とする現像装置である。
【0007】
請求項6に係る発明は、請求項1乃至4のいずれかに係る現像装置において、前記飛翔電極部材は、少なくともトナーが接触する部位に絶縁性の被覆処理がなされていることを特徴とする現像装置である。
請求項7に係る発明は、静電潜像を保持して回転する像保持体と、この像保持体に対向して離間配置され且つ前記像保持体上に保持された静電潜像をトナーにて現像する請求項1乃至6のいずれかに係る現像装置と、を備えることを特徴とする画像形成装置である。
請求項8に係る発明は、請求項7に係る画像形成装置において、最大画像形成領域以上の周面を有する回転可能な支持体並びにこの支持体上に当該支持体の回転方向及びこの回転方向に交差する交差方向に沿って画素単位毎に行列配列された画素電極を有する像保持体と、前記交差方向に沿った各行の画素電極群のうち走査信号によって選択された行の夫々の画素電極に対応して画像信号に基づいた潜像電圧を印加することにより潜像を書き込む潜像書込手段と、を備えることを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に係る発明によれば、トナー保持体と飛翔電極部材との間の振動電界によりトナーを飛翔させて像保持体の潜像を現像するにあたり、飛翔電極部材の先端部位でのトナーの凝集物の形成を抑え、像保持体側へ向かうトナー量を長期に亘り安定化できる。
請求項2に係る発明によれば、本構成を有さない場合に比べて、飛翔電極部材の先端部位でのトナーの凝集物の形成を有効に抑えながら現像条件の安定化も図ることができる。
請求項3に係る発明によれば、本構成を有さない場合に比べて、飛翔電極部材を容易に振動させることができる。
請求項4に係る発明によれば、本構成を有さない場合に比べて、飛翔電極部材を容易に振動させることができる。
請求項5に係る発明によれば、本構成を有さない場合に比べて、環境条件やトナー及びトナー保持体の経時変化があっても安定したトナー量を確保できる。
請求項6に係る発明によれば、本構成を有さない場合に比べて、トナーの電荷量の変化を抑えることができる。
請求項7に係る発明によれば、トナー保持体と飛翔電極部材との間の振動電界によりトナーを飛翔させて像保持体の潜像を現像するにあたり、飛翔電極部材の先端部位でのトナーの凝集物の形成を抑え、像保持体側へ向かうトナー量を長期に亘り安定化できる画像形成装置を提供できる。
請求項8に係る発明によれば、本構成を有さない場合に比べて、帯電工程を実施する際の画質低下を考慮することのない高画質画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】(a),(b)は本発明が適用された現像装置を用いた画像形成装置の実施の形態モデルの概要を示す説明図である。
【図2】実施の形態1に係る画像形成装置の全体構成の概略を示す説明図である。
【図3】実施の形態1の像保持体の構成を示す説明図である。
【図4】(a)(b)は画素電極の構成を示す説明図であり、(c)は等価回路を示す説明図である。
【図5】画素電極の駆動方式を示す説明図である。
【図6】実施の形態1の現像装置を示す説明図である。
【図7】(a)は実施の形態1の振動付与装置の概要を示す説明図であり、(b)は飛翔電極部材と圧電素子との位置関係を示す説明図である。
【図8】(a)は圧電素子の構成を示す説明図であり、(b)〜(d)は圧電素子の変形の様子を示す説明図である。
【図9】(a),(b)は導電性トナーを示す説明図である。
【図10】(a)〜(c)は振動しない場合の像保持体と現像ロールとの対向領域でのトナーの挙動を示す説明図であり、(d)は振動が付加された場合のトナーの挙動を示す説明図である。
【図11】飛翔電極部材の曲げ加工についての説明図であり、(a)は曲げ加工がなされた場合、(b)は曲げ加工がなされていない場合を示す。
【図12】実施の形態2の現像装置の振動付与装置を示す説明図である。
【図13】実施例で用いた実験機の概略構成を示す説明図である。
【図14】実施例の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
◎実施の形態の概要
先ず、本発明が適用された現像装置の実施の形態モデルの概要について説明する。
図1(a),(b)は、本発明を具現化する実施の形態モデルに係る画像形成装置の概要を示すものであって、静電潜像を保持して回転する像保持体1と、この像保持体1に対向して配置され且つ像保持体1上に保持された静電潜像に対しトナーTを飛翔させて現像する現像装置2と、を備えたものとなっている。
【0011】
現像装置2は、静電潜像が保持された像保持体1に対向して配置され且つトナーTを外周面に保持して回転するトナー保持体3と、このトナー保持体3に対向して離間配置され、トナー保持体3の回転方向における下流側に対応する部位を少なくとも除いて支持され且つトナー保持体3との間にトナー保持体3上のトナーが飛翔させられる振動電界Esを作用させる飛翔電極部材4と、この飛翔電極部材4とトナー保持体3との間に振動電界Esを生成する振動電界生成手段5と、飛翔電極部材4とトナー保持体3との間に振動電界生成手段5による振動電界Esを作用させた状態で、少なくとも飛翔電極部材4のトナー保持体3の回転方向における下流側に対応する部位に対し、飛翔電極部材4とトナー保持体3との間隙が変化する方向に沿う振動を付与する振動付与手段6と、を備える。
【0012】
ここで、像保持体1やトナー保持体3はドラム状、ベルト状いずれでもよく、トナーTを保持して回転できるようになっていればよい。
また、飛翔電極部材4は、例えば金属等の導電性材料のみで構成される態様、絶縁性基材と導電性材料とを重ねた構成の態様等、特に限定されず、トナー保持体3との間に振動電界Esが作用でき、この振動電界Esによってトナー保持体3からトナーTが飛翔できるような構成のものであればよい。尚、飛翔電極部材4よりトナー保持体3と離れる側に他の電極部材、例えば飛翔電極部材4に対するトナーTの付着を抑えるような電界を作用させる電極部材等を設けることは差し支えない。
【0013】
更に、振動付与手段6によって飛翔電極部材4に付与される振動は、連続的に行わせるようにしてもよいし、不定期に適宜行わせるようにしてもよいが、飛翔電極部材4の先端部位でのトナーTの凝集物の形成を抑える観点からすれば、振動付与手段6は、振動電界生成手段5による振動電界Esが作用している間は飛翔電極部材4に対し連続的に振動を付与することが好ましい。尚、現像動作が行われていない場合にも振動を付与するようにしても差し支えない。
【0014】
ここで、飛翔電極部材4とトナー保持体3との間隙Gが変化する方向に沿う振動を飛翔電極部材4に付与することの背景について説明する。
図1(b)は、飛翔電極部材4が振動せずに固定位置にある場合のトナー保持体3と飛翔電極部材4との間の作用を示すもので、トナー保持体3と飛翔電極部材4との間に作用する振動電界Esは、特に、飛翔電極部材4の先端部位ではトナー保持体3との間でその場振動し易くなる。また、この先端部位では、端部効果も手伝って強電界が集中し易い。
【0015】
このような場合、飛翔電極部材4の先端部位では振動電界Esによって徐々にトナーTの凝集が生じ、その後、すだれ状のトナーTの凝集物Cが形成されるようになる。このようなすだれ状のトナーTの凝集物Cが形成されると、振動電界Esでトナー保持体3から飛翔したトナーTは十分クラウド化がなされずに、有効に像保持体1側に供給されず、像保持体1側に供給されるトナー量が不足し、例えば濃度不足等の現象として現れる。
しかしながら、凝集物Cが形成される方向に沿って飛翔電極部材4を振動させるようにすると、仮に、すだれ状の凝集物Cの形成がなされても、振動によって弾き落とされ、飛翔電極部材4の先端部位での凝集物Cの形成が抑えられる。その結果、像保持体1側へ供給されるトナー量は安定する。
【0016】
飛翔電極部材4に振動を付与する振動付与手段6としては、少なくとも飛翔電極部材4の先端部位にてトナー保持体3との間隙Gが変化する方向に沿う振動を飛翔電極部材4に付与できる構成のものであれば特に限定されないが、飛翔電極部材4を容易に振動させる観点から、圧電素子を用いて構成することが好ましい。このように圧電素子を用いる場合、飛翔電極部材4の振動量を確保するには、例えばバイモルフ型を含む積層構成の素子を用いることが好適である。
また、振動付与手段6としては、電磁石を用いて構成するようにしてもよい。
【0017】
そして、現像に要するより安定したトナー量を確保する観点からすれば、トナーT及びトナー保持体3が置かれている環境状態又はこれまでの使用履歴状態の少なくともいずれか一方の状態を把握する状態把握手段7を更に備え、振動付与手段6は、状態把握手段7の把握結果に基づいて、前記環境状態又は前記使用履歴状態でのトナー保持体3からのトナー飛翔量が予め決められた値より少なくなる場合には、飛翔電極部材4の振動時の当該飛翔電極部材4がトナー保持体3に対して最も近づく位置と最も遠ざかる位置の中間位置(振動の中心位置に相当する)をトナー保持体3側へ近づけるように設定することが好ましい。この場合、トナーT及びトナー保持体3の曝されている環境状態、あるいは、トナーT及びトナー保持体3の経時変化状態を把握して、それに合わせて飛翔電極部材4の振動の中心位置を変化させることで、トナー保持体3と飛翔電極部材4との間に作用する振動電界Esの電界強度を変化させることができ、トナー保持体3から飛翔するトナー量が安定する。
【0018】
また、トナー保持体3から飛翔したトナーTが飛翔電極部材4に接触してもトナーTの有する電荷量の変化を抑える観点から、飛翔電極部材4は、少なくともトナーTが接触する部位に絶縁性の被覆処理がなされていることが好ましい。このような被覆処理としては、飛翔電極部材4の一部のみならず、全面を覆うようにしてもよい。この被覆処理は、特に、トナーTとして注入帯電型のものを使用する場合に有効で、トナーTが飛翔電極部材4に接触しても飛翔電極部材4からの電荷注入が抑えられ、トナーTの帯電量の変化が抑えられる。
【0019】
そして、被覆処理層は、厚すぎるとトナー保持体3上のトナーTに作用する振動電界Esの電界強度が小さくなり、また、厚い被覆処理層によって作用する電界に電界ムラが生じ易くなることから、通常、10μm以下の厚さのものが選定される。このような被覆処理層の絶縁性は、この被覆処理層に振動電界Esで飛翔したトナーTが接触しても、トナーT自体の帯電状態の変化が抑えられる程度の絶縁性を有していればよく、通常、1010Ω・cm以上の体積抵抗率を有するものが用いられる。
【0020】
このような現像装置2を画像形成装置に適用する場合、静電潜像を保持して搬送する像保持体1と、この像保持体1に対向して離間配置され且つ像保持体1上に保持された静電潜像をトナーTにて現像する上述の現像装置2と、を備えることが好ましい。このとき、飛翔電極部材4はトナーTへの電界作用を発揮でき、トナーTをトナー保持体3から飛翔できるものであればよく、飛翔電極部材4の先端部位が像保持体1とトナー保持体3との対向領域の中央付近に設けるようにすればよい。
仮に、対向領域のうち下流側に大きく出張るように設けると、像保持体1側に向かうトナー量が却って少なくなり、現像に供するトナー量を十分確保できなくなる虞がある。また、対向領域のうち上流側の一部に設けるようにすると、トナー保持体3からのトナー飛翔量が少なくなる。尚、対向領域のうち下流側で現像を阻害しない部分にトナーTの像保持体1側への移動を遮蔽する遮蔽部材を設けるようにしても差し支えない。
【0021】
更に、本実施の形態モデルの現像装置2を適用する好適な画像形成装置の一例としては次のものが挙げられる。すなわち、最大画像形成領域以上の周面を有する回転可能な支持体並びにこの支持体上に当該支持体の回転方向及びこの回転方向に交差する交差方向に沿って画素単位毎に行列配列された画素電極を有する像保持体1と、前記交差方向に沿った各行の画素電極群のうち走査信号によって選択された行の夫々の画素電極に対応して画像信号に基づいた潜像電圧を印加することにより潜像を書き込む潜像書込手段と、を備える態様の画像形成装置が挙げられる。
【0022】
次に、図面に示す実施の形態に基づいて本発明を更に詳細に説明する。
◎実施の形態1
図2は、本発明が適用された画像形成装置の実施の形態1を示す。
<画像形成装置の全体構成>
同図において、本実施の形態の画像形成装置は、所謂タンデム型のカラー画像形成装置であり、装置筐体15内に例えば電子写真方式にて各色成分(例えばイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K))の各色トナー像が形成される四色の像保持体20(20a〜20d)を略鉛直方向に並列配置したものである。
四色の像保持体20a〜20dに対向する位置には、二つの張架ロール61、62に記録材を吸着して搬送する記録材搬送ベルト60が掛け渡され、例えば張架ロール61を駆動ロールとして循環回転するようになっている。また、張架ロール62と記録材搬送ベルト60を挟んで対向する位置には、記録材を記録材搬送ベルト60に吸着するための帯電器63が設けられている。そして、各色の像保持体20の周囲には、像保持体20上に形成された静電潜像をトナーにて現像して可視像化する現像装置40と、像保持体20上の残留トナーを清掃する清掃器65とが設けられ、更に、像保持体20と記録材搬送ベルト60を挟んで対向する位置には、記録材搬送ベルト60によって搬送される記録材上に像保持体20上のトナー像を転写する転写器64が設けられている。尚、符号41は現像装置40(詳細は後述する)内にて像保持体20にトナーを供給する現像ロールを示している。
【0023】
また、装置筐体15内の下方には、記録材を供給する記録材供給装置70が設けられ、例えば供給容器71内に収容された記録材が、ピックアップロール72によって供給容器71から送り出された後、フィードロール及びリタードロールの対構成による捌き機構73にて一枚毎に鉛直方向に延びる記録材搬送路74に向かって供給される。
そして、記録材供給装置70から記録材搬送路74に供給された記録材は、記録材搬送路74の下流側に配置された位置合わせロール(レジストロール)78にて一旦位置合わせされた後、予め決めたタイミングで記録材搬送路74を更に搬送される。搬送された記録材は、帯電器63によって記録材搬送ベルト60に吸着され、そのまま記録材搬送ベルト60の回転と共に搬送される。記録材搬送ベルト60上の記録材には、各色の転写器64によって夫々のトナー像が順次転写されて多重化される。トナー像が多重化された記録材は定着器76にて定着された後、排出ロール77から装置筐体15の一部で構成される記録材排出受け16に排出される。尚、記録材搬送路74には、記録材を搬送するための搬送部材(例えば搬送ロール等)79が適宜設けられる一方、記録材搬送ベルト60の出口近く(張架ロール61の近く)には図示外の剥離部材が設けられ、記録材搬送ベルト60から記録材の剥離が容易になされるようになっている。
【0024】
<像保持体>
次に、本実施の形態で用いられる像保持体20について詳述する。
本実施の形態における像保持体20は、例えば図3に示すように、フィルム上に多数の画素電極34が行列配列状(所謂マトリクス状)に形成された画素電極フィルム30を回転可能な支持体である剛体ドラム21上に巻き付けて固定支持したものとなっている。
本例において、画素電極フィルム30は、例えばポリイミドフィルム基体上に、所謂IC製造プロセス等で用いられる薄膜技術を利用して作製されたもので、画素電極34が行列配列されている。そして、このように行列配列された画素電極34は、例えば剛体ドラム21の回転軸方向に沿った方向をデータライン、剛体ドラム21の回転方向に沿った方向を走査ラインとし、各画素電極34に対応するデータライン及び走査ラインはまとめられて適宜数のデータ用ドライバ31及び走査用ドライバ32に接続されている。尚、画素電極フィルム30は画素電極34を覆うように全体が図示外の保護膜で覆われており、また、図中符号21aは、剛体ドラム21の外周面の一部に回転軸方向に沿って開口された溝である。
【0025】
−画素電極の周辺構造−
次に、画素電極フィルム30の画素電極34及びその周辺構造について説明する。
本実施の形態において、画素電極フィルム30は、図4(a)〜(c)に示すように、画素電極34が行列配列されており、各画素電極34は、所謂アクティブマトリクス方式で構成され、スイッチング素子として例えばTFT(Thin Film Transistor)33を用い、蓄積容量35及び配線(ソース線Ls、ゲート線Lg等)が夫々付加されている。
そして、各画素電極34間の結線は、データライン毎にTFT33のソースsが結線されるソース線Ls、走査ライン毎にTFT33のゲートgが結線されるゲート線Lgとしてまとめられている。また、TFT33のドレインdには画素電極34と蓄積容量35が並列に接続され、蓄積容量35の一方は走査ライン毎にまとめられ(図示せず)、図4(c)のような等価回路を呈するように構成されている。
【0026】
画素電極34は画素電極フィルム30に対しマトリクス状に多数並べられた構成のために、画素電極34の駆動回路は次のように行われる。
つまり、画素電極フィルム30には、図5に示すように、データライン及び走査ライン毎に予め決めた数の画素電極34が配列されており、各画素電極34をスイッチングするTFT33のソースs側がデータライン毎に夫々データ用ドライバ31へ接続される一方、TFT33のゲートg側が走査ライン毎に夫々走査用ドライバ32に接続されている。また、これらのデータ用ドライバ31及び走査用ドライバ32は、像保持体20に設けられた像書込制御装置80によって駆動され、像書込制御装置80によってデータ用ドライバ31及び走査用ドライバ32を駆動することで、目的の画素電極34に画像信号に基づいた潜像電圧が印加され、蓄積容量35によって保持される。尚、図5では画素電極34は省略しているが、図4(c)に示すように、TFT33と蓄積容量35との間に画素電極34が接続されていることは言うまでもない。
【0027】
<現像装置>
−現像装置の構成例−
本実施の形態における各色の現像装置40は、用いるトナーが異なる他は略同様の構成が採用されているため、ここでは一つの現像装置40について説明する。
図6は、現像装置40の概略構成を示すもので、トナー(本実施の形態では導電性トナーを使用している)が収容される現像容器40aを有している。本実施の形態の現像装置40は、現像容器40aに像保持体20に対向して現像用開口40bを開設すると共に、この現像用開口40bに面して像保持体20と離間配置され且つ対向部位で同方向に回転するトナー保持体としての現像ロール41を配設し、像保持体20と現像ロール41との対向部位にて像保持体20上に形成された潜像を現像して可視像化するものである。
【0028】
また、現像ロール41の像保持体20側と異なる側には、現像ロール41との間にてトナーに電荷注入を行う電荷注入ロール43が設けられ、互いに軽く接触又は微小間隙をもって支持された状態で対向部位では互いに同方向に回転している。本例では、電荷注入ロール43の周速が現像ロール41の周速より速くなるように設定されている。そして、現像ロール41と電荷注入ロール43との間には、両者の対向部位にあるトナーに対して電荷注入を行うための注入電界を形成する注入電源91が設けられている。つまり、本実施の形態では電荷注入ロール43や注入電源91等でトナーに対する電荷注入がなされ、現像ロール41上には安定した帯電量が与えられたトナーが供される。
【0029】
また、本実施の形態では、現像ロール41と電荷注入ロール43との対向部位より電荷注入ロール43の回転方向上流側に、電荷注入ロール43上にトナーの薄層を形成する層規制ブレード45が設けられており、この層規制ブレード45によって電荷注入ロール43上のトナーの層厚規制がなされることで、層厚規制がなされたトナーが現像ロール41との対向部位に搬送されて電荷注入がなされる。
更に、現像容器40a内の電荷注入ロール43の奥側にはトナーを攪拌するアジテータ48が設けられ、電荷注入ロール43側へのトナーの供給を行うようになっている。
【0030】
本実施の形態における現像ロール41は、例えば快削ステンレス鋼(SUM)の芯がねにゴム厚約5mmの相対的に低抵抗なシリコーンゴム層を設け、その表面を約20μm厚の相対的に高抵抗のフッ素樹脂系コート層で被覆したものを用いた。このような現像ロール41の硬さはアスカーC硬度で約50度であり、抵抗は、線圧200gf/cmの荷重で金属板上に押し付けた状態で100Vの電圧を印加したときの電流から換算すると108Ω程度であった。尚、下地のシリコーンゴム層の抵抗は、これより一桁以上低くした。
【0031】
また、層規制ブレード45は例えば厚さ0.03〜0.3mm程度のステンレスの板ばねに例えばシリコーンゴムやEPDMゴムを接着剤等により固着したものであり、この層規制ブレード45の自由端側は電荷注入ロール43の表面に軽く接触し、固定端側は現像容器40aの一部に固定されている。尚、上述した部材の構成はこれに限られるものではないことは言うまでもない。
【0032】
そして、本実施の形態の現像装置40には、現像ロール41と像保持体20との対向領域のうち、ほぼ中央位置から現像ロール41の回転方向における上流側に向かって飛翔電極部材50が配置されており、この飛翔電極部材50と現像ロール41との間には振動電源90が設けられ、現像ロール41からトナーを飛翔させるための振動電界が両者間に形成される。
【0033】
本実施の形態の飛翔電極部材50は、例えばステンレス鋼やりん青銅の板材に、現像ロール41から飛翔したトナーが接触しても帯電量が変化しないように、一部に、例えば溶剤に可溶した樹脂溶液を塗布して加熱炉で溶剤を蒸発させることで成膜された絶縁被覆層が形成されたものである。このような絶縁被覆層としては、用いられる樹脂として例えばフェノール、PTFE、PFA、ETFAなどを用いるものであってもよいし、樹脂を用いる代わりに例えばチタニア系やアルミナ系のセラミックコートを施すようにしても差し支えない。そして、絶縁被覆層の抵抗は、トナーが接触した際にトナーに対して飛翔電極部材50からの電荷注入が及ばないように、1012Ω・cm以上の体積抵抗率を有するものが好ましい。尚、このような絶縁被覆層を飛翔電極部材50の一部に設ける方法については、公知の技術を用いるようにすればよく、例えば一方向からのスプレー塗布やマスキング等の手法を利用すればよい。
【0034】
−振動付与装置−
更に、本実施の形態では、飛翔電極部材50と現像ロール41との間隙が変化する方向に沿う振動を飛翔電極部材50に付与する振動付与装置100を有している。
図7(a)は、本実施の形態における振動付与装置100の概要を示す説明図であり、(b)は、飛翔電極部材50と後述する圧電素子110との位置関係を示す説明図である。
【0035】
本実施の形態の振動付与装置100は、次のようになっている。飛翔電極部材50の現像ロール41の回転軸方向に沿った方向の両端部位に合わせて夫々矩形状の二つの圧電素子110(110a,110b)を飛翔電極部材50に接着する。このとき、圧電素子110としては、例えばバイモルフ型のものが用いられる。そして、圧電素子110の飛翔電極部材50に接着した側とは反対側の端部位置は、例えば現像容器40aから延びる支持部材120に支持されると共に、この支持部材120に一端側が固定された略L字状の板ばね121によって圧電素子110は支持部材120側にしっかり弾性付勢される。
【0036】
本実施の形態の飛翔電極部材50は、像保持体20と現像ロール41との間の最短位置における現像ロール41の接線に対して略平行配置となるように、その先端部50aに極僅かの曲げ加工(角度θ)が施されたもので、また、現像ロール41の回転軸方向に対して、両端側の圧電素子110が接着される部位より内側は、圧電素子110との接着を容易にするため、先端部50a側に少し窪む構造のものとなっている。
【0037】
また、圧電素子110(110a,110b)での振動を発生するための電源装置130が設けられ、圧電素子110に対して各種信号を印加することで圧電素子110が振動するようになる。
【0038】
本実施の形態の圧電素子110は、図8(a)に示すように、所謂バイモルフ型の素子で構成され、表裏に電極を有する二枚の圧電板111,112を夫々の分極方向が同じ方向になるようにして貼り合わせた構造のものとなっている。そのため、圧電素子110からは外部に向かって、3箇所の電極端子が設けられている。
そして、電源装置130には、二つの圧電素子110(110a,110b)からの電極端子からの接続線が延びている。尚、二つの圧電素子110の電極端子は、電源装置130の手前で互いに同じ電極端子同士を結線するようにしてもよいし、電源装置130内で結線するようにしてもよい。
【0039】
次に、圧電素子110の振動について説明する。
今、図8(a)に示すように、圧電板111の表面側の電極端子に+電圧を印加し、圧電板112の表面側の電極端子に−電圧を印加しておき、両方の共通となる電極端子に信号(電源装置130から矩形波の信号を伝達する)を入力するものとする。尚、+電圧と−電圧との絶対値は同じとする。
【0040】
ここで、図8(b)のように、信号として、0Vを中心とする矩形波を入力すると、圧電板111,112が互いに伸び縮みを繰り返すことで、圧電素子110としてはその位置を中心位置として矢印のように振動する。このとき、図7に示すように、圧電素子110に接着された飛翔電極部材50は、現像ロール41の回転方向に沿った長さが短く、更に、先端部50aが曲げ加工されているため、飛翔電極部材50自体が剛直化されるようになり、圧電素子110の振動に沿って飛翔電極部材50も振動し、例えばふしを生じる虞もない。
【0041】
また、図8(c)のように、信号として−側に大きな矩形波を入力すると、圧電板111の変形量が圧電板112より大きくなることから、圧電素子110としては、圧電板112側へ少し変位した位置を振動の中心位置として矢印のように振動する。
一方、(d)のように、信号として+側に大きな矩形波を入力すると、圧電板112の変形が大きくなり、(c)とは反対方向に変位した位置を振動の中心位置として矢印のように振動する。
【0042】
つまり、信号波形によって、圧電素子110の振動時の中心位置が変化し、ひいては、飛翔電極部材50が振動するその中心位置が変化する。このように飛翔電極部材50の振動の中心位置を変化させることは、次のような場合に特に有用となる。
例えば環境条件が大きく変化し、高湿度状態になった場合を想定すると、現像ロール41からトナーを飛翔させる力は低湿度状態に比べ大きくする必要がある。このような場合、飛翔電極部材50の位置を現像ロール41側に近づけることで、振動電界を生成する振動電源90(図6参照)による給電波形が同じであっても飛翔電極部材50と現像ロール41間に作用する電界強度が実質的に大きくなり、現像ロール41からのトナーの飛翔量が安定化する。
【0043】
また、このような中心位置の変化は、現像ロール41やトナーの経時変化状態に合わせて行うこともでき、トナーの飛翔量が安定する結果、安定したクラウド状態が維持されるようになる。
尚、このような中心位置の変化は、図8(a)に示す信号を変化させることのみならず、例えば圧電板111,112に印加する+電圧や−電圧自体の大きさを変えるようにしてもよいことは言うまでもない。また、ここでは、バイモルフ型の圧電素子110について説明したが、積層型のものであれば、同様の作用を奏することは明らかである。
【0044】
−トナーの構成例−
本実施の形態で用いられるトナーは、絶縁性トナーの表面に、例えばITO微粒子を付着させて導電性基体を得た後、更に、その表面に絶縁性微粉を付着させた構成のものとなっている。より具体的には、絶縁性トナーとして例えば平均粒径が6.5μmの球形状のものを用い、ITO微粒子を15wt%加えて、サンプルミル(協立理工製SK−M10型)にて12000rpmで30秒間混合し、その後、精製したラテックス微粉(絶縁性トナーと同一の樹脂)を加え、水冷されたサンプルミルにて12000rpmで30分間混合することで、トナーを作製した。尚、トナーとしては、これに限らず、注入帯電型トナーであればよく、その作製方法も公知の技術を用いるようにすればよい。
このようなトナーでは、高い電界強度の注入電界が作用すると、トナー相互間では精製したラテックス微粉による絶縁層を介して導電性基体同士が接触する形となり、この絶縁層に高電界が作用することでトンネル効果等によって導通し、トナーに対する電荷注入がなされる。
【0045】
トナーとしては、これに限らず、例えば図9(a)に示すように、導電性を有する材料からなる導電性トナー基体(導電性コア)81を有し、この導電性コア81の周囲を絶縁性の被覆層(例えば絶縁性樹脂層)82で被覆すると共に、導電性コア81の一部が露出するように絶縁性の被覆層82に適宜数の凹部83を設けたものが用いられる。このようなトナーは、重合法や各種公知のカプセル化技術等で作製することができる。このとき、導電性コア81としては、ポリエステル系樹脂やスチレンアクリル系樹脂等に導電性カーボンやITO等の透明導電粉などの導電剤を分散させたり、ポリエステル系樹脂やスチレンアクリル系樹脂等からなる粒子表面を前記導電剤により被覆することによって、作製される。
【0046】
このような態様のトナーに対し高電界を作用させる低抵抗化する傾向を示す。そして、低抵抗化する電界強度については、トナーの主として凹部83の占有割合、あるいは、絶縁性の被覆層82の厚さなどに依存する。
このメカニズムについては、次のように推測される。つまり、導電性コア81が絶縁性の被覆層82にて被覆されているため、導電性コア81自体がコア同士接触することや直接電極部材等に接触することが殆どなく、絶縁性の被覆層82を介して一定の微小間隙を保つことになり、この結果、例えば高電界が作用した時、トンネル効果等により導通することによる。
【0047】
また、このようなトナーの他の態様としては、例えば図9(b)に示すように、導電性コア81を絶縁性若しくは半導電性の被覆層84にて被覆し、半導電性の被覆層84の厚さhを適宜調整することにより、トナーの抵抗を調整可能としたものが挙げられる。このとき、半導電性の被覆層84については、それ自体半導電性の材料を用いるようにしてもよいし、例えば絶縁性樹脂に、酸化チタンや酸化すず等の金属酸化物や導電性カーボンを微量含有させた半導電性樹脂を用いるようにしてもよい。そして、導電性コア81としては、例えば通常の絶縁性トナーからなる絶縁性トナー基体(絶縁性コア)の外表面近傍に導電性微粒子を付着させる態様や、絶縁性コアの内部に導電性微粒子を混入させるものなど適宜選定して差し支えない。
【0048】
<画像形成装置の作動>
次に、本実施の形態に係る画像形成装置の作動についてその概略を説明する。
−像保持体での潜像形成−
像保持体20での潜像形成は、各色の像保持体20a〜20d(図3参照)の各画素電極34(図4参照)に対して、図5に示す像書込制御装置80によって、画像信号に応じた潜像電圧が印加されることで各画素電極34に保持される。これが、現像時の像保持体20側の潜像電位となる。
【0049】
−現像装置の作動−
次に、現像装置40での作動を説明するが、先ず、図6を用いてトナーに対する電荷注入工程を中心に説明する。
アジテータ48により攪拌されたトナーは、電荷注入ロール43側に供給された後、電荷注入ロール43の回転に伴って搬送され、層規制ブレード45にてその層厚が規制されて電荷注入ロール43上には略均一なトナー層が形成される。この均一に形成されたトナー層は、電荷注入ロール43と現像ロール41とが対向する対向部位にて互いに同方向に回転する両者間に挟まれた状態で擦られながら、注入電源91による注入電界によって電荷注入される。このとき、特に本実施の形態では、電荷注入ロール43の周速が現像ロール41の周速より速く設定されているため、トナーへの有効な擦りがなされ、良好な電荷注入がなされる。
【0050】
この場合、電荷注入ロール43と現像ロール41との間に挟まれたトナーは電荷注入ロール43と接触する確率が高められ、しかも、トナーとの接触抵抗を小さくすることが可能になり、トナーの見かけ上の抵抗が小さくなり、トナーは低抵抗な状態のまま有効に電荷注入がなされる。そのため、注入電界としては、比較的低電界であってもトナーには効率的に電荷注入が行われる。
【0051】
このように、単層以下になったトナーに対して電荷注入を行うことで、トナーに対する電荷注入が効果的になされ、WST(Wrong Sign Toner:トナー本来の帯電極性とは異なる逆極性に帯電されたトナー)の発生が抑えられる。そして、電荷注入ロール43との対向部位を経た現像ロール41上には、略均一な電荷注入がなされた単層以下のトナー層が形成され、現像ロール41と像保持体20との対向領域に搬送される。尚、このような電荷注入方式にあっては、トナー層間にせん断力が与えられるため、トナー同士が分極状態で重なることが防止され、注入電界が仮に高電界の場合であってもWSTの発生は抑えられる。
【0052】
−対向領域でのトナーの挙動−
次に、本実施の形態の特徴点である像保持体20と現像ロール41との対向領域でのトナーの挙動について、図10を用いて、先ず比較例を説明する。
現像ロール41に付着しているトナーを飛翔させるには、ある程度強電界を必要とするため、飛翔電極部材50と現像ロール41との間の振動電界Esにて強電界を形成し、現像ロール41からトナーを飛翔させ、飛翔したトナーをクラウド化させる。
この場合、特に本実施の形態のように使用するトナーとして注入帯電型のトナーを用いると、飛翔可能な電界(振動電界Es)下ではトナーの電気抵抗が低下(誘電率が増加)する。このため、トナーとしては電界方向に沿って誘電分極され、トナーの持つ帯電量による静電気力以外に、電気双極子による静電気力が無視できないようになる。この電気双極子による静電気力は、トナー間のみならず、トナーと現像ロール41間、トナーと飛翔電極部材50間にも作用する。
【0053】
また、このような振動電界Esによる作用は、図10(a)に示すように、飛翔電極部材50の端部効果も手伝って、特に、飛翔電極部材50の先端部位(現像ロール41の回転方向における下流側)で強くなる。更に、この先端部位では、振動電界Es自体がその場振動しているため、結果的に、飛翔電極部材50の先端部位には、(b)に示すように、トナーTが数珠状に連なった所謂すだれ状のトナーTの凝集物Cが形成されるようになる。このようなすだれ状の凝集物Cが形成されると、現像ロール41から飛翔したトナーTは凝集物Cに補足され、クラウド化がされ難くなり、飛翔電極部材50より下流側の現像領域に搬送されるものが少なくなる。そのため、像保持体20の潜像に対してトナー付着量が少なくなり、濃度不足等の画像欠陥を生じ易くなる。
【0054】
更に、飛翔電極部材50の先端部位でのトナーTの凝集物Cは、現像ロール41から飛翔されるトナーTを強く補足するようになり、(c)に示すように、すだれ状の凝集物Cは、飛翔電極部材50の先端部位から徐々に上流側に向かって広がりを示す。これに伴い、現像ロール41から飛翔されるトナーTは益々これらの凝集物Cに補足され、クラウド化も不十分となり、飛翔電極部材50の下流側の現像領域に搬送されるトナーTは益々少なくなる。
【0055】
このような事態を解決するために、本実施の形態では、振動付与装置100を用いて、振動電界Esが作用している状態で飛翔電極部材50と現像ロール41との間隙が変化する方向に沿う振動を飛翔電極部材50に連続的に付与する。そのため、(d)に示すように、飛翔電極部材50の先端部位に凝集物Cが形成されようとしても、凝集方向に飛翔電極部材50が振動することで凝集物Cの形成は抑えられる。その結果、現像ロール41から飛翔したトナーが十分クラウド化され、飛翔電極部材50を超えた下流側の領域(現像領域に相当)にも十分なトナー量が提供されるようになる。
【0056】
更に、本実施の形態では、飛翔電極部材50に絶縁性被覆層が形成されているため、電荷注入されたトナーがこれらの部材に接触しても、トナーの電荷量の変化が抑えられ、安定した現像がなされる。
【0057】
また、本実施の形態では、圧電素子110を用いることで飛翔電極部材50の振動の中心位置を変化させることができるため、現像装置40に例えば環境条件を検知するセンサを設け、このセンサによって環境状態の把握を行うようにすれば、より環境状態に即した位置を中心位置として飛翔電極部材50を振動させることができ、トナーの飛翔量が十分に確保されるようになる。
また、例えば現像装置40自体の使用履歴を把握することで、現像ロール41やトナーの経時変化状態も把握することができるため、現像ロール41表面に付着するトナーが多少変化しても、その変化に合わせて実際に作用する振動電界による電界強度を調整することもなされる。そのため、現像ロール41からのトナーの飛翔量も安定する。
【0058】
つまり、現像ロール41からのトナー飛翔量が予め決められた量より少ない場合には、飛翔電極部材50をその振動の中心位置が現像ロール41側に近づくように、振動電界による実質的な電界強度を高める一方、これとは逆に、トナー飛翔量が予め決められた量より多い場合には、飛翔電極部材50を現像ロール41から遠ざけることで、トナー飛翔量の調整がなされる。
【0059】
ここで、本実施の形態の飛翔電極部材50に一部曲げ加工が施される利点について説明する。
図11(a)は、本実施の形態のように、飛翔電極部材50の先端部位に曲げ加工がなされたものの振動の様子を示し、(b)は、曲げ加工がなされていない飛翔電極部材50の振動の様子を示す。
(a)のように、曲げ加工が施された場合には、飛翔電極部材50自体が曲げ加工されないものに比べ剛直化し、図示外の圧電素子によって振動が付与された飛翔電極部材50は、図中Hで示す範囲で振動する。一方、(b)のように、曲げ加工がなされていない場合には、図中H’で示す範囲で振動する。つまり、(b)のH’の方が(a)のHよりやや大きい振動量となる。
【0060】
特に、このような振動量の差は、飛翔電極部材50の厚さが薄い方がより顕著に現れ、また、飛翔電極部材50の現像ロール41の回転方向に沿う長さが長い方がより顕著に現れる。そのため、曲げ加工を施す利点が理解される。更には、曲げ加工を行うことで、飛翔電極部材50が剛直化するため、例えば飛翔電極部材50が振動する場合に所謂節の発生が回避されるが、曲げ加工を行わない場合には節の発生も懸念される。
そして、このような曲げ加工は、飛翔電極部材50の先端部位に限られず、他の部位に曲げ加工を施したものであっても差し支えない。また、曲げ加工の箇所は一箇所に限られず、複数箇所であっても差し支えない。
【0061】
本実施の形態では、電荷注入ロール43と現像ロール41とは対向部位で互いに同方向に回転する態様を示したが、例えば対向部位で互いに反対方向に回転するようにしても差し支えない。
また、本実施の形態では、トナーに対する電荷注入を、電荷注入ロール43と現像ロール41との間で行う方式を示したが、例えば電荷注入ロール43に代えてトナーを現像ロール41側に供給する供給ロールとし、現像ロール41とこの供給ロールとの対向部位より現像ロール41の回転方向下流側に現像ロール41上のトナーに電荷注入を行う部材を設けるようにしてもよい。あるいは、例えば電荷注入用の部材を他に設け、トナーを保持して搬送するロール部材との間に注入電界を作用させて、トナーに電荷注入を行った後、適正に電荷注入がなされたトナーを改めて現像ロール41に供給するようにしても差し支えない。
【0062】
本実施の形態では、画像形成装置として四色に対応する像保持体20を用いた構成のものを示したが、これに限られず、単色のものであってもよい。
また、本実施の形態では像保持体20として画素電極34を使用した構成のものとしたが、例えば画素電極34を用いない感光体を適用することも可能であり、この場合、感光体側の潜像電位を小さく設定してもかぶりの発生が抑えられるようになり、感光体自体の長寿命化が実現される。
【0063】
更に、トナーとして電荷注入型のものを示したが、例えば摩擦帯電型のトナーを用いるようにしてもよく、この場合、潜像電圧が非画像部にかぶりを生じない程度の大きさの潜像電圧になるようにすればよい。尚、この場合、飛翔電極部材50への絶縁性の被覆処理は省略する方がよい。
更にまた、本実施の形態では、像保持体20と現像ロール41との間に飛翔電極部材50を設ける態様を示したが、例えば飛翔電極部材50と像保持体20との間に更に電極部材を設け、この電極部材によって飛翔電極部材50側にトナーの付着を抑える電界を作用させるようにしてもよい。
【0064】
そして、本実施の形態では、飛翔電極部材50の表面粗さは略平滑(最大高さRzが5μm未満のもの)なものを用いたが、表面粗さの最大高さRzが10μm程度のものであってもよく、この場合、飛翔電極部材50の少なくとも先端部位の表面粗さを大きくすることで、飛翔電極部材50の先端部位では振動電界Esがその場振動し難くなる分、すだれ状の凝集物の形成が抑えられる。
【0065】
更に、本実施の形態では、現像ロール41や像保持体20はロール形状のものを示したが、これに限らず、例えばベルト形状のものであっても差し支えない。
【0066】
◎実施の形態2
図12は、実施の形態2の現像装置40における振動付与装置100を示す模式図である。本実施の形態の振動付与装置100は、実施の形態1と異なり、飛翔電極部材50を振動させるために電磁石を用いたもので構成のものとなっている。尚、実施の形態1と同様の構成要素には同様の符号を付し、ここではその詳細な説明を省略する。
【0067】
同図において、本実施の形態の振動付与装置100は次のようになっている。
飛翔電極部材50の現像ロール41の回転方向における中央付近にて飛翔電極部材50を支持する揺動軸140が、例えば現像容器40aに揺動可能に支持された状態で飛翔電極部材50に取り付けられている。また、飛翔電極部材50には、現像ロール41の回転方向に沿った上流側の端部近くに磁石150が取り付けられ、更に、その近くには、飛翔電極部材50を図中下方に付勢する付勢ばね160が例えば現像容器40aに一端が固定された状態で取り付けられている。更に、付勢ばね160によって付勢された飛翔電極部材50の磁石150が取り付けられた部位に対して一方が接触する隙間を有する略コの字状のフェライトコア170が設けられ、このフェライトコア170の一部にはコイル171が巻かれている。そして、このコイル171の両端端子が電源装置130に接続されている。
【0068】
このような構成において、電磁石が作用していない状態では、飛翔電極部材50は、付勢ばね160によって揺動軸140を揺動支点としてフェライトコア170の隙間の一方側に接触した状態で安定した状態となっているが、電源装置130によって例えば交流電圧がコイル171に流されることで、フェライトコア170の隙間には、極性が変化する磁界が発生する。そのため、飛翔電極部材50に取り付けられた磁石150の磁界との作用によって、飛翔電極部材50はその磁石150部分がフェライトコア170の隙間内で振動するようになり、この振動が、揺動軸140を介して飛翔電極部材50の反対側、つまり、像保持体20と現像ロール41との対向領域に配置される先端部位側にも伝達され、その先端部位が振動する。
【0069】
このように飛翔電極部材50の先端部位が振動することで、実施の形態1の圧電素子を用いた構成のものと同様に、飛翔電極部材50の先端部位での凝集物の形成が抑えられる効果を奏する。
本実施の形態では、飛翔電極部材50に磁石を取り付け、この磁石と電磁石を利用する構成のものを示したが、例えば飛翔電極部材50に磁歪素子を取り付け、この磁歪素子に対して磁界変化を加えて磁歪素子を伸縮させるようにしても飛翔電極部材50を振動させることが可能になる。
【0070】
以上の実施の形態では、飛翔電極部材50を振動電界が作用している間は連続的に振動させる態様を示したが、例えば予め決めた周期毎に振動させるようにしてもよい。また、振動電界が作用していない場合にも振動させるようにしてもよい。
【実施例】
【0071】
◎実施例1
実施の形態1の構成と同様の構成の実験機を用いて、飛翔電極部材への電圧/駆動周波数(具体的には圧電素子に対する)と、像保持体側での現像量(単位面積当たりの付着量換算)との関係を評価した。尚、比較のために、振動を加えない場合(変動なし)も同様に評価した。
【0072】
図13は、実験機の概略構成を示すもので、飛翔電極部材は圧電素子(図示せず)によって支持されていることは言うまでもない。
実験条件は、次の通り。
・圧電素子は、ノリアック社製のCMB−P01を用い、その先端部約1mmの部分に飛翔電極部材(100μm厚のSUS板)を取り付けた。尚、飛翔電極部材の表面には約25μmの絶縁被覆層が形成されている。
・像保持体は、約2mm厚のガラス板を使用し、表面に透明電極(約150nmのITO膜)で形成した現像ロールの回転軸方向における長さが約2cm幅の電極を形成し、表面に約1μmのSiO2を形成したものを用い、電極に潜像電極として+100Vを印加した。また、像保持体の速度は10mm/s。
・現像ロールの周速は60mm/s。
・振動電界として、DC0V、AC1.4kVpp、10kHz(Duty50%の矩形波)を現像ロールと飛翔電極部材との間に印加し、飛翔電極部材側を接地した。
・像保持体と現像ロールとの間隙は、G1が約100μm、G2が約150μm、G3が約100μmとなっている。
【0073】
圧電素子に印加する電圧としては、+側電極端子及び−側電極端子に絶対値が等しい電圧を印加し、信号を入力する電極端子に+側電極端子及び−側電極端子に印加した電圧と等しい電圧の間で変化させる矩形波(駆動周波数も変化)を印加した。
【0074】
結果は、図14に示すように、振動を加えない場合の現像量が約1.8g/m2であったのに対し、圧電素子に印加する電圧が±10Vの場合には、振動を加えない場合よりも現像量が若干上昇し、また、印加電圧を±20Vとすると、現像量が大きく増加することが判明した。
これは、明らかに、飛翔電極部材でのすだれ状の凝集物の形成が抑えられたことによる効果であることが理解された。
【0075】
また、この結果では、駆動周波数によって、現像量が大きく異なる傾向が見受けられ、1kHzで上昇し、その後減少して行く傾向を示したが、これは、今回実験に用いた電源の性能によるもので、周波数が高くなると、出力がやや低下する傾向が見受けられたことによるものと推測された。
したがって、本実施例では、印加電圧として、±20Vで、周波数が1kHz以上であれば、飛翔電極部材での凝集物の形成が十分効果的に抑えられることが理解された。
【符号の説明】
【0076】
1…像保持体,2…現像装置,3…トナー保持体,4…飛翔電極部材,5…振動電界生成手段,6…振動付与手段,7…状態把握手段,Es…振動電界,T…トナー,G…間隙,C…凝集物
【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電潜像が保持された像保持体に対向して配置され且つトナーを外周面に保持して回転するトナー保持体と、
このトナー保持体に対向して離間配置され、トナー保持体の回転方向における下流側に対応する部位を少なくとも除いて支持され且つ前記トナー保持体との間にトナー保持体上のトナーが飛翔させられる振動電界を作用させる飛翔電極部材と、
この飛翔電極部材と前記トナー保持体との間に前記振動電界を生成する振動電界生成手段と、
前記飛翔電極部材と前記トナー保持体との間に前記振動電界生成手段による振動電界を作用させた状態で、少なくとも前記飛翔電極部材のトナー保持体の回転方向における下流側に対応する部位に対し、前記飛翔電極部材と前記トナー保持体との間隙が変化する方向に沿う振動を付与する振動付与手段と、
を備えることを特徴とする現像装置。
【請求項2】
請求項1の現像装置において、
前記振動付与手段は、前記振動電界生成手段による振動電界が作用している間は前記飛翔電極部材に対し連続的に振動を付与することを特徴とする現像装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の現像装置において、
前記振動付与手段は、圧電素子を用いて前記飛翔電極部材に対し振動を付与するようにしたことを特徴とする現像装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の現像装置において、
前記振動付与手段は、電磁石を用いて前記飛翔電極部材に対し振動を付与するようにしたことを特徴とする現像装置。
【請求項5】
請求項3記載の現像装置において、
トナー及びトナー保持体が置かれている環境状態又はこれまでの使用履歴状態の少なくともいずれか一方の状態を把握する状態把握手段を更に備え、
前記振動付与手段は、前記状態把握手段の把握結果に基づいて、前記環境状態又は前記使用履歴状態でのトナー保持体からのトナー飛翔量が予め決められた値より少なくなる場合には、前記飛翔電極部材の振動時の当該飛翔電極部材がトナー保持体に対して最も近づく位置と最も遠ざかる位置の中間位置をトナー保持体側へ近づけるように設定することを特徴とする現像装置。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれかに記載の現像装置において、
前記飛翔電極部材は、少なくともトナーが接触する部位に絶縁性の被覆処理がなされていることを特徴とする現像装置。
【請求項7】
静電潜像を保持して回転する像保持体と、
この像保持体に対向して離間配置され且つ前記像保持体上に保持された静電潜像をトナーにて現像する請求項1乃至6のいずれかに記載の現像装置と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項7記載の画像形成装置において、
最大画像形成領域以上の周面を有する回転可能な支持体並びにこの支持体上に当該支持体の回転方向及びこの回転方向に交差する交差方向に沿って画素単位毎に行列配列された画素電極を有する像保持体と、
前記交差方向に沿った各行の画素電極群のうち走査信号によって選択された行の夫々の画素電極に対応して画像信号に基づいた潜像電圧を印加することにより潜像を書き込む潜像書込手段と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項1】
静電潜像が保持された像保持体に対向して配置され且つトナーを外周面に保持して回転するトナー保持体と、
このトナー保持体に対向して離間配置され、トナー保持体の回転方向における下流側に対応する部位を少なくとも除いて支持され且つ前記トナー保持体との間にトナー保持体上のトナーが飛翔させられる振動電界を作用させる飛翔電極部材と、
この飛翔電極部材と前記トナー保持体との間に前記振動電界を生成する振動電界生成手段と、
前記飛翔電極部材と前記トナー保持体との間に前記振動電界生成手段による振動電界を作用させた状態で、少なくとも前記飛翔電極部材のトナー保持体の回転方向における下流側に対応する部位に対し、前記飛翔電極部材と前記トナー保持体との間隙が変化する方向に沿う振動を付与する振動付与手段と、
を備えることを特徴とする現像装置。
【請求項2】
請求項1の現像装置において、
前記振動付与手段は、前記振動電界生成手段による振動電界が作用している間は前記飛翔電極部材に対し連続的に振動を付与することを特徴とする現像装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の現像装置において、
前記振動付与手段は、圧電素子を用いて前記飛翔電極部材に対し振動を付与するようにしたことを特徴とする現像装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の現像装置において、
前記振動付与手段は、電磁石を用いて前記飛翔電極部材に対し振動を付与するようにしたことを特徴とする現像装置。
【請求項5】
請求項3記載の現像装置において、
トナー及びトナー保持体が置かれている環境状態又はこれまでの使用履歴状態の少なくともいずれか一方の状態を把握する状態把握手段を更に備え、
前記振動付与手段は、前記状態把握手段の把握結果に基づいて、前記環境状態又は前記使用履歴状態でのトナー保持体からのトナー飛翔量が予め決められた値より少なくなる場合には、前記飛翔電極部材の振動時の当該飛翔電極部材がトナー保持体に対して最も近づく位置と最も遠ざかる位置の中間位置をトナー保持体側へ近づけるように設定することを特徴とする現像装置。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれかに記載の現像装置において、
前記飛翔電極部材は、少なくともトナーが接触する部位に絶縁性の被覆処理がなされていることを特徴とする現像装置。
【請求項7】
静電潜像を保持して回転する像保持体と、
この像保持体に対向して離間配置され且つ前記像保持体上に保持された静電潜像をトナーにて現像する請求項1乃至6のいずれかに記載の現像装置と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項7記載の画像形成装置において、
最大画像形成領域以上の周面を有する回転可能な支持体並びにこの支持体上に当該支持体の回転方向及びこの回転方向に交差する交差方向に沿って画素単位毎に行列配列された画素電極を有する像保持体と、
前記交差方向に沿った各行の画素電極群のうち走査信号によって選択された行の夫々の画素電極に対応して画像信号に基づいた潜像電圧を印加することにより潜像を書き込む潜像書込手段と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−42579(P2012−42579A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−182061(P2010−182061)
【出願日】平成22年8月17日(2010.8.17)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月17日(2010.8.17)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】
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