現在位置推定装置、方法及びシステム
【課題】登山等において、GPSシステムによる衛星からの電波を受信できない場合があっても、それまでの位置情報に基づいて現在位置を推定することができる装置を提供すること。
【解決手段】現在位置推定装置10は、地図情報DB33と気圧高度換算DB32とを有し、GPSシステムから受信したデータに基づく位置データと、気圧計91から取得した気圧データと、を対応付けて時系列に測定ログDB31に記録する。そして、測定ログDB31にそれまでに記録した気圧データと、新たに取得した気圧データと、に基づいて気圧高度換算DB32を参照して現在の高度を推定し、推定した当該高度と、測定ログDB31にそれまでに記録した位置データと、地図情報DB33に記憶した地形データと、に基づいて現在位置を推定する。
【解決手段】現在位置推定装置10は、地図情報DB33と気圧高度換算DB32とを有し、GPSシステムから受信したデータに基づく位置データと、気圧計91から取得した気圧データと、を対応付けて時系列に測定ログDB31に記録する。そして、測定ログDB31にそれまでに記録した気圧データと、新たに取得した気圧データと、に基づいて気圧高度換算DB32を参照して現在の高度を推定し、推定した当該高度と、測定ログDB31にそれまでに記録した位置データと、地図情報DB33に記憶した地形データと、に基づいて現在位置を推定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現在位置推定装置に関する。特に、現在位置推定装置、方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球上の位置を測定するシステムとして、GPS(Global Positioning System)と呼ばれる全地球測位システムが知られている。GPSシステムでは、GPS受信機が地球の上空にある人工衛星から電波を受信し、受信した電波の時刻差から現在位置を即座に知ることができる。このようなシステムを利用して、移動する車の現在位置を地図と共に表示するいわゆるカーナビゲータ装置等が開発されている。
【0003】
このようなGPSシステムは、複数の衛星(原理的には4つの衛星)からの電波を利用するので、電波を受信できない場合や反射した電波を受信する場合等には、精度が確保できない場合がある。例えば、地下鉄や長大トンネル等の中ではGPS衛星からの電波を受信できない。また、ビル街や山間部では、衛星からGPS受信機までの電波経路が反射等によって多数存在するマルチパスにより、信号の時間差が生じたりS/N比が低下し、精度が落ちる場合がある。
【0004】
そこで、GPSシステムを利用する仕方に合った補助手段を用いることによって精度の向上が図られている。例えば、カーナビゲータ装置等では、GPSシステムで初期位置を決定した後は、ジャイロ・加速度センサ等から得られる情報で位置を推定できるようにしている。また、車は道路上を走るということを前提として、カーナビゲータ装置に搭載している地図の道路情報と照らし合わせることで誤差を修正することができる。更に、2個の衛星を捕捉することができれば位置を検出することができる特許文献1のような装置が知られている。特許文献1では、移動体の移動経路が道路、歩道、鉄道等あらかじめ想定される場合には、移動経路上の3次元位置の関係(緯度、経度、高さ)が既知であることから、例えば緯度のみが分かれば経度、高さは一義的に計算することができることを利用して位置を推定している。
【特許文献1】特開2006−071286号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、登山等において、GPSシステムを利用して現在位置を知る場合には、上述のような補助手段を用いても精度を向上させることはできない。すなわち、山岳地帯では、谷間等の地形や森林等により衛星からの電波を受信できない場合がしばしば発生する。このような場合に、登山者は登山ルートを歩くことを前提とすることはできないので、地図に記載されている登山ルートの情報を用いて位置を推定することを補助手段として採用することはできない。そこで、GPSシステムを利用した装置であって、登山等において衛星からの電波を受信できない場合があっても、現在位置を推定できる装置が求められている。
【0006】
本発明は、登山等において、GPSシステムによる衛星からの電波を受信できない場合があっても、それまでの位置情報に基づいて現在位置を推定することができる装置を提供することを目的とする。又、比較的電力消費の大きいGPSシステムの使用頻度を意図的に少なくなるように間引いた場合においても、それまでの位置情報に基づいて現在位置を推定することができる装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明では、以下のような解決手段を提供する。
【0008】
(1) 地形に関する地図データを記憶する地図情報記憶手段と、気圧と高度とを対応付けて記憶する気圧高度換算記憶手段と、地球上の位置を特定するための全地球測位システムの衛星からデータを受信するGPS情報受信手段と、気圧を測定する気圧測定手段から気圧データを取得する気圧情報取得手段と、前記GPS情報受信手段が受信したデータに基づく位置データと、前記気圧情報取得手段が取得した気圧データとを対応付けて時系列に記録する測定ログ記憶手段と、前記測定ログ記憶手段にそれまでに記録した気圧データと、新たに取得した気圧データと、に基づいて前記気圧高度換算記憶手段を参照して現在の高度を推定し、推定した当該高度と、前記測定ログ記憶手段にそれまでに記録した位置データと、前記地図情報記憶手段に記憶した地形データと、に基づいて現在位置を推定する現在位置推定手段と、を備えることを特徴とする現在位置推定装置。
【0009】
(1)の構成によれば、本願発明に係る現在位置推定装置は、地形に関する地図データを地図情報記憶手段に記憶し、気圧と高度とを対応付けて気圧高度換算記憶手段に記憶し、GPS情報受信手段が地球上の位置を特定するための全地球測位システムの衛星からデータを受信し、気圧情報取得手段が、気圧を測定する気圧測定手段から気圧データを取得し、GPS情報受信手段が受信したデータに基づく位置データと、気圧情報取得手段が取得した気圧データとを対応付けて時系列に測定ログ記憶手段に記録する。そして、測定ログ記憶手段にそれまでに記録した気圧データと、新たに取得した気圧データと、に基づいて気圧高度換算記憶手段を参照して現在の高度を推定し、推定した当該高度と、測定ログ記憶手段にそれまでに記録した位置データと、地図情報記憶手段に記憶した地形データと、に基づいて現在位置を推定する。
【0010】
すなわち、本願発明に係る現在位置推定装置は、測定ログ記憶手段にそれまでに記録した気圧データと、新たに取得した気圧データと、に基づいて気圧高度換算記憶手段を参照して現在の高度を推定し、推定した当該高度と、測定ログ記憶手段にそれまでに記録した位置データと、地図情報記憶手段に記憶した地形データと、に基づいて現在位置を推定する。したがって、本願発明に係る現在位置推定装置は、GPSシステムによる衛星からの電波を受信できない場合があっても、それまでの位置情報に基づいて現在位置を推定することができる。又、比較的電力消費の大きいGPSシステムの使用頻度を意図的に少なくなるように間引いた場合においても、それまでの位置情報に基づいて現在位置を推定することができる。
【0011】
(2) 方位を測定する方位測定手段により測定したデータを取得する方位情報取得手段と、加速度を測定する加速度測定手段により測定したデータを取得する加速度情報取得手段と、を更に備え、前記現在位置推定手段は、推定した前記現在位置を、前記方位情報取得手段が取得した方位のデータと、前記加速度情報取得手段が取得した加速度のデータとに基づき補正することを特徴とする(1)に記載の現在位置推定装置。
【0012】
(2)の構成によれば、(1)に記載の現在位置推定装置は、方位情報取得手段と、加速度情報取得手段と、を更に備え、現在位置推定手段は、推定した現在位置を、方位のデータと、加速度のデータとに基づき補正するので、更に正確な位置を推定することができる。したがって、本願発明に係る現在位置推定装置は、GPSシステムによる衛星からの電波を受信できない場合があっても、それまでの位置情報に基づいて現在位置を更に正確に推定することができる。又、比較的電力消費の大きいGPSシステムの使用頻度を意図的に少なくなるように間引いた場合においても、それまでの位置情報に基づいて現在位置を更に正確に推定することができる。
【0013】
(3) 前記地図情報記憶手段に記憶した地図データと共に、推定した前記現在位置を表示する現在位置出力手段、を更に備えることを特徴とする(1)又は(2)に記載の現在位置推定装置。
【0014】
(3)の構成によれば、(1)又は(2)に記載の現在位置推定装置は、地図情報記憶手段に記憶した地図データと共に、推定した現在位置を表示する。したがって、本願発明に係る現在位置推定装置は、GPSシステムによる衛星からの電波を受信できない場合があっても、それまでの位置情報に基づいて現在位置を推定することができ、推定した現在位置を地図データと共に、表示することができる。又、比較的電力消費の大きいGPSシステムの使用頻度を意図的に少なくなるように間引いた場合においても、それまでの位置情報に基づいて現在位置を推定し、推定した現在位置を地図データと共に、表示することができる。
【0015】
(4) 地球上の位置を特定するための全地球測位システムの衛星からデータを受信するステップと、気圧を測定する気圧測定手段から気圧データを取得するステップと、前記受信した衛星からのデータに基づく位置データと、前記取得した気圧データとを対応付けて時系列に測定ログ記憶手段に記録するステップと、前記測定ログ記憶手段にそれまでに記録した気圧データと、新たに取得した気圧データと、に基づいて、気圧と高度とを対応付けて記憶する気圧高度換算記憶手段を参照して現在の高度を推定し、推定した当該高度と、前記測定ログ記憶手段にそれまでに記録した位置データと、地形に関する地図データを記憶する地図情報記憶手段に記憶した地形データと、に基づいて現在位置を推定するステップと、を備えることを特徴とする現在位置を推定する方法。
【0016】
(4)の構成によれば、本願発明に係る現在位置を推定する方法は、地球上の位置を特定するための全地球測位システムの衛星からデータを受信し、気圧を測定する気圧測定手段から気圧データを取得し、受信した衛星からのデータに基づく位置データと、取得した気圧データとを対応付けて時系列に測定ログ記憶手段に記録し、測定ログ記憶手段にそれまでに記録した気圧データと、新たに取得した気圧データと、に基づいて、気圧と高度とを対応付けて記憶する気圧高度換算記憶手段を参照して現在の高度を推定し、推定した当該高度と、測定ログ記憶手段にそれまでに記録した位置データと、地形に関する地図データを記憶する地図情報記憶手段に記憶した地形データと、に基づいて現在位置を推定する。
【0017】
したがって、本願発明に係る現在位置を推定する方法は、GPSシステムによる衛星からの電波を受信できない場合があっても、それまでの位置情報に基づいて現在位置を推定することができる。又、比較的電力消費の大きいGPSシステムの使用頻度を意図的に少なくなるように間引いた場合においても、それまでの位置情報に基づいて現在位置を推定することができる。
【0018】
(5) 気圧を測定する気圧測定装置は、気圧データを出力する気圧情報出力手段を備え、現在位置を推定する現在位置推定装置は、地形に関する地図データを記憶する地図情報記憶手段と、気圧と高度とを対応付けて記憶する気圧高度換算記憶手段と、地球上の位置を特定するための全地球測位システムの衛星からデータを受信するGPS情報受信手段と、前記気圧測定装置から気圧データを取得する気圧情報取得手段と、前記GPS情報受信手段が受信したデータに基づく位置データと、前記気圧情報取得手段が取得した気圧データとを対応付けて時系列に記録する測定ログ記憶手段と、前記測定ログ記憶手段にそれまでに記録した気圧データと、新たに取得した気圧データと、に基づいて前記気圧高度換算記憶手段を参照して現在の高度を推定し、推定した当該高度と、前記測定ログ記憶手段にそれまでに記録した位置データと、前記地図情報記憶手段に記憶した地形データと、に基づいて現在位置を推定する現在位置推定手段と、を備え、現在位置を推定することを特徴とする現在位置推定システム。
【0019】
(5)の構成によれば、本願発明に係る現在位置推定システムは、気圧を測定する気圧測定装置は、気圧データを出力する。そして、現在位置を推定する現在位置推定装置は、地形に関する地図データを地図情報記憶手段に記憶し、気圧と高度とを対応付けて気圧高度換算記憶手段に記憶し、GPS情報受信手段が地球上の位置を特定するための全地球測位システムの衛星からデータを受信し、気圧情報取得手段が気圧測定装置から気圧データを取得し、GPS情報受信手段が受信したデータに基づく位置データと、気圧情報取得手段が取得した気圧データとを対応付けて時系列に測定ログ記憶手段に記録する。そして、測定ログ記憶手段にそれまでに記録した気圧データと、新たに取得した気圧データと、に基づいて気圧高度換算記憶手段を参照して現在の高度を推定し、推定した当該高度と、測定ログ記憶手段にそれまでに記録した位置データと、地図情報記憶手段に記憶した地形データと、に基づいて現在位置を推定する。
【0020】
したがって、本願発明に係る現在位置を推定するシステムは、GPSシステムによる衛星からの電波を受信できない場合があっても、それまでの位置情報に基づいて現在位置を推定することができる。又、比較的電力消費の大きいGPSシステムの使用頻度を意図的に少なくなるように間引いた場合においても、それまでの位置情報に基づいて現在位置を推定することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、登山等において、GPSシステムによる衛星からの電波を受信できない場合があっても、それまでの位置情報に基づいて現在位置を推定することができる。又、比較的電力消費の大きいGPSシステムの使用頻度を意図的に少なくなるように間引いた場合においても、それまでの位置情報に基づいて現在位置を推定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について図を参照しながら説明する。
【0023】
[実施例1]
図1は、本発明の一実施形態に係る現在位置推定装置10の機能を示す機能ブロック図である。
【0024】
現在位置推定装置10は、測定ログ記憶手段として測定ログDB31(データベース)と、気圧高度換算記憶手段として気圧高度換算DB32(データベース)と、地図情報記憶手段として地図情報DB33(データベース)と、GPS情報受信手段としてGPS情報受信部11と、気圧情報取得手段として気圧情報取得部12と、現在位置推定手段として現在位置推定部13と、を備えている。
【0025】
地図情報DB33は、地形に関する地図データを記憶する。地形に関する地図データは、位置データ(緯度及び経度)、高度データ等から構成される。地図情報DB33は、地図データベースを保有するサーバ等からダウンロードして記憶することにより作成される。
【0026】
気圧高度換算DB32は、高度が高くなると気圧が下がる関係にあることに基づいて、国際民間航空機関(ICAO)が定めた標準大気(平均海水面での気圧が1013.25hPa、気温が15度C)の気圧と高度とを対応付けて記憶する。
【0027】
GPS情報受信部11は、位置を特定するための全地球測位システムのGPS衛星からデータを受信し、受信した電波の時刻差に基づいて現在位置を特定する。GPS情報受信部11は、GPSシステムにより特定した現在位置であるGPS位置を現在時刻と共に測定ログDB31に記憶する。そして、GPS位置に基づいて地図情報DB33を参照し、地図データに基づく地図高度を求め、求めた地図高度を測定ログDB31に記憶する。
【0028】
気圧情報取得部12は、気圧を測定する気圧測定装置から気圧データを取得する。そして、取得した気圧データを、気圧高度換算DB32に基づいて高度に換算し、気圧データ及び換算した換算高度を測定ログDB31に記憶する。
【0029】
測定ログDB31は、GPS情報受信部11が受信したデータに基づく位置データと、気圧情報取得部12が取得した気圧データとを対応付けて時系列に記録する。すなわち、測定ログDB31には、上述のように、時刻毎に、GPS位置及び地図高度と、気圧と換算高度等が記憶されている。
【0030】
現在位置推定部13は、GPS情報受信部11がデータを受信することなく、測定ログDB31にそれまでに記録した気圧データと、新たに取得した気圧データと、に基づいて気圧高度換算DB32を参照して現在の高度を推定し、推定した当該高度と、測定ログDB31にそれまでに記録した位置データと、地図情報DB33に記憶した地形データと、に基づいて現在位置を推定する。
【0031】
高度の推定は、新たに取得した気圧データを気圧高度換算DB32を参照して高度に換算し、測定ログDB31にそれまでに記録した、換算高度と地図高度との関係に基づいて、新たに取得した換算高度を補正することにより行う。このように換算高度について補正をすることにより、実際の大気状態が低気圧や高気圧による気圧の変化や、季節による気温の変化等によりICAO標準大気と異なることによる誤差を補正することができる。
【0032】
現在位置の推定は、推定した高度と、測定ログDB31にそれまでに記録した位置データと、地図情報DB33に記憶した地形データと、に基づいて推定する。すなわち、推定した高度と、それまでに測定ログDB31に記録した位置データと、に基づいて地図情報DB33に記憶した地形データ(例えば、等高線等)を参照する。そして、測定ログDB31にそれまでに記録した位置データのうち、最新の2点の位置データから求められる延長線上に、地形データの高度が推定した高度と一致する地点を探索し、その地点を現在位置と推定する。
【0033】
図2は、本発明の一実施形態に係る気圧高度換算DB32を示す図である。
【0034】
気圧高度換算DB32は、ICAO標準大気の気圧と高度とを対応付けて記憶する。図では省略しているが、ICAO標準大気について、10mごとの高度と気圧とを対応付けている。取得した気圧データに基づいて、その気圧データが含まれる区間を求め、その区間で補間することにより換算高度を求めることができる。
【0035】
図3は、本発明の一実施形態に係る地図情報DB33を示す図である。
【0036】
地図情報DB33は、地図上の位置である緯度及び経度と、その位置の高度と、その位置に関する地図情報とを対応付けて記憶する。地図情報は、地名等の地図を表示する場合の情報である。地図情報DB33は、適宜、ネットワーク通信I/F2040を介して地図データベースからダウンロードし、補助記憶部2015に記憶する。
【0037】
図4は、本発明の一実施形態に係る測定ログDB31を示す図である。
【0038】
測定ログDB31は、時刻に対応付けて、GPS位置と、地図高度と、気圧と、換算高度、及び推定位置とを記憶している。時刻は、現在位置推定装置10が計測した時刻である。GPS位置は、GPSシステムにより特定した現在位置である。地図高度は、GPS位置に基づいて、地図情報DB33を参照して求めた高度である。気圧は、気圧計91から取得した気圧データである。換算高度は、取得した気圧データに基づいて、気圧高度換算DB32により換算した高度である。推定位置は、取得した気圧データと、それまでに記憶した位置データとに基づいて現在位置推定部13が推定した推定位置である。
【0039】
例えば、GPSシステムにより現在位置を特定できた場合には、地点1から地点4の様に、時刻、GPS位置、地図高度、気圧及び換算高度が記憶される。GPSシステムにより現在位置を特定できなかった場合には、地点5のように、それまでに記録したデータと、地点5での気圧とに基づいて推定位置を次の様にして求め、記憶する。図4に示した値を基に説明する。
【0040】
(1)高度を次の様に推定する。新たに取得した気圧データは908.6hPaである。この気圧データを気圧高度換算DB32を参照して高度に換算すると、910mになる。測定ログDB31にそれまでに記録した、換算高度と地図高度との関係は、直前の地点4では高度において50mの差がある。これは、例えば、低気圧の通過等によるために気圧が低く測定されそのため換算した高度はその分だけ高くなることに基づく。よって、新たに取得した換算高度910mから地点4の補正分の50mを補正し、高度を860mと推定する。
【0041】
(2)現在位置を次の様に推定する。(1)で推定した高度860mと、直前の地点4のGPS位置(例えば、北緯36度30分20秒東経138度10分46秒)に最も近い、地図情報DB33に記憶した860mの等高線を求める。次に、直前の地点3及び地点4から求められる延長線と、求めた860mの等高線との交点を求め、求めた交点、例えば、北緯36度30分14秒、東経138度10分49秒を現在位置と推定する。等高線は、スプライン関数等により表すことができ、直線との交点を求めることができる。交点が複数存在する場合は、地点4からの時間及び速度(例えば50m/分とする)により求めた距離に最も近い位置等とすることにより求める。
【0042】
地点6もGPS位置が取得できなかった場合は、地点4のGPS位置と、地点5の推定位置と、地点6で新たに取得した気圧データを高度に換算し補正をして推定した高度と、に基づいて地点5と同様に、位置を推定する。地点7では、GPS位置が取得できている。
【0043】
実施例1によれば、現在位置推定装置10は、GPSシステムによる衛星からの電波を受信できない場合があっても、取得した気圧データを気圧高度換算DB32に基づいて換算した高度を補正し推定した高度と、測定ログDB31に記録したそれまでの位置情報とに基づいて現在位置を推定することができる。又、比較的電力消費の大きいGPSシステムの使用頻度を意図的に少なくなるように間引いた場合においても、それまでの位置情報に基づいて現在位置を推定することができる。
【0044】
[実施例2]
図5は、本発明の別の一実施形態に係る現在位置推定装置10の機能を示す機能ブロック図である。
【0045】
現在位置推定装置10は、実施例1の構成に加えて、方位情報取得手段として方位情報取得部14と、加速度情報取得手段として加速度情報取得部15と、現在位置出力手段として現在位置出力部16と、を更に備えている。
【0046】
方位情報取得部14は、方位を測定する方位測定手段により測定したデータを取得する。取得したデータは、移動する方向を示す方向データとして測定ログDB31に記録する。
【0047】
加速度情報取得部15は、加速度を測定する加速度測定手段により測定したデータを取得する。取得したデータに基づいて速度を求め、その地点の速度を示すデータとして測定ログDB31に記録する。
【0048】
現在位置推定部13は、推定した高度と、測定ログDB31に記録した位置データとに基づいて推定した現在位置を、方位情報取得部14が取得した方位データと、加速度情報取得部15が取得した加速度のデータとに基づき補正する。
【0049】
補正は、次の様に行う。(1)実施例1と同様に、現在地点で取得した気圧データの換算高度から推定した推定高度と、それまでに記録した位置データと、によって地図情報DB33に記憶した地形データ(例えば、等高線等)を求める。次に、現在地点の直前の地点について測定ログDB31に記録したGPS位置と、直前の地点で取得した方位データから求めた移動方向と、に基づいて延長線を求める。そして、求めた地形データと延長線との交点である交点位置を求める。(2)一方、現在地点の直前の地点で加速度計から取得したデータから求めた速度と、直前の地点から現在地点までの移動時間と、から移動距離を求める(移動距離=速度×移動時間)。次に、求めた移動距離と、直前の地点及び現在地点の高度差と、から水平距離を求める(移動距離2=高度差2+水平距離2)。そして、水平距離と、直前の地点で取得した移動方向(αとする)と、から方向距離(水平距離×cosα及び水平距離×sinα)を求め、直前の地点のGPS位置に加算することによって距離位置を求める。(3)そして、求めた交点位置と、求めた距離位置と、を平均した位置を求め、現在位置と推定する。平均は、交点位置と距離位置との重み平均等により平均する。重みは、直前の地点において求めた重みである。すなわち、直前の地点において、同様に交点位置及び距離位置を求め、求めた交点位置及び距離位置の重み平均がGPS位置となる重みを求める(交点位置×重み+距離位置×(1−重み)=GPS位置)。
【0050】
現在位置出力部16は、推定した現在位置を、地図情報DB33に記憶した地図データと共に表示する。
【0051】
図6は、本発明の別の一実施形態に係る現在位置推定装置10のハードウェア構成を示すブロック図である。
【0052】
図6に示すように、現在位置推定装置10は、CPU(Central Processing Unit)2011、メモリ2012、操作部2013、表示部2014、補助記憶部2015、ネットワーク通信I/F2040、GPS受信部2500、気圧部2600、方位部2700、加速度部2800及び時計部2900がバスラインBUSにより接続されて構成されている。
【0053】
CPU2011は、現在位置推定装置10を統括的に制御する部分であり、メモリ2012に記憶された各種プログラムを適宜読み出して実行することにより、上述したハードウェアと協働し、本発明に係る各種機能を実現している。
【0054】
操作部2013は、各種設定や入力操作を行う操作ボタン群、決定操作ボタン等を備えており、操作部2013による入力情報はCPU2011の制御下で処理される。表示部2014は、LCD(Liquid Crystal Display)や有機EL(Electoro Luminescence)によって構成され、各種情報を表示する。
【0055】
補助記憶部2015は、フラッシュメモリ等により構成され、現在位置推定装置10が機能するための各種プログラム及び本発明の機能を実行するプログラムを記憶しており、更に、測定ログDB31と、気圧高度換算DB32と、地図情報DB33等の各種データベースを構成可能である。
【0056】
ネットワーク通信I/F2040は、現在位置推定装置10を専用ネットワーク又は公共ネットワークを介して地図データベースを保有するサーバ等と接続できるようにするためのネットワーク・アダプタである。
【0057】
GPS受信部2500は、GPS衛星から電波を受信する。GPS受信部2500は、無線通信に必要なアンテナ及びアンテナ信号処理回路等を含んで構成される。GPS受信部2500は、受信した電波に基づいて処理を行い、位置データを作成する。
【0058】
気圧部2600は、気圧計91から気圧データを受信する。受信した気圧データは、CPU2011によって高度に換算され、測定ログDB31に記憶される。
【0059】
方位部2700は、方位計92から方位データを受信する。受信した方位データは、CPU2011によって測定ログDB31に記憶される。
【0060】
加速度部2800、加速度計93から加速度データを受信する。受信した加速度データは、CPU2011によって処理され、測定ログDB31に記憶される。
【0061】
時計部2900は、時刻を計測する。計測した時刻のデータは、CPU2011によって測定ログDB31に記憶される。
【0062】
なお、現在位置推定装置10は、気圧計91、方位計92、加速度計93等を一部、或いは全て一体として構成してもよい。具体的には、例えば、現在位置推定装置10は、いわゆるGPS受信機能付携帯端末であり、例えば、気圧計91及び方位計92を含む腕時計からそれぞれ気圧及び方位の情報を受信し、加速度計93(加速度センサー)を含む靴から加速度の情報を受信する構成としてもよいし、気圧計91、方位計92、加速度計93を含むGPS携帯端末として実現してもよい。
【0063】
図7は、本発明の別の一実施形態に係る測定ログDB31を示す図である。
【0064】
測定ログDB31は、実施例1に加えて、速度、方向、交点位置及び距離位置を記憶している。速度は、加速度部2800が加速度計93から受信したデータに基づいて求めた速度である。方向は、方位部2700が方位計92から受信した移動の方向を示すデータである。
【0065】
例えば、GPSシステムにより現在位置を特定できた場合には、地点1から地点4の様に、時刻、GPS位置、地図高度、気圧、換算高度、速度及び方向が記憶される。GPSシステムにより現在位置を特定できなかった地点5の場合には、それまでに記録したデータと、地点5での気圧と、に基づいて推定位置を、次の様にして求める。図7に示した値を基に説明する。
【0066】
(1)高度の推定は、実施例1と同様にして、860mと推定する。
【0067】
現在位置を次の様に推定する。(1)で推定した高度860mと、直前の地点4のGPS位置(例えば、北緯36度30分16秒東経138度10分48秒)に最も近い、地図情報DB33に記憶した860mの等高線を求める。次に、直前の地点4のGPS位置と、地点4における方向データ(225度)とに基づいて、延長線を求める。そして、求めた延長線と、求めた860mの等高線との交点を求め、求めた交点である交点位置、例えば、北緯36度30分12秒東経138度10分49秒を得る。(2)一方、直前の地点4における速度に地点5までの移動時間を掛けて移動距離(45m/分×1分=45m)を求める。次に、移動距離と、地点4及び地点5の高度差(20m)と、から水平距離(40.315m)を求める。そして、水平距離と、地点4における方向(225度)と、から方向距離(南へ28.5m緯度に換算して約1秒、東へ28.5m経度に換算して約1秒)を求め、地点4におけるGPS位置(例えば、北緯36度30分16秒、東経138度10分48秒)に加算し、距離位置(例えば、北緯36度30分15秒、東経138度10分49秒)を得る。(3)そして、求めた交点位置と、求めた距離位置と、を平均した位置を求め、現在位置と推定する。平均は、交点位置と距離位置との重み平均等により平均する。重みは、直前の地点4で上述と同様にして地点4の交点位置及び距離位置を求め、求めた交点位置及び距離位置と、地点4のGPS位置との関係から求める。例えば、地点4において求めた交点位置(例えば、北緯36度30分14秒東経138度10分46秒)及び距離位置(例えば、北緯36度30分34秒東経138度11分06秒)と、地点4のGPS位置とから交点位置の重み0.9と距離位置の重み0.1とを求めることができる。この重みを地点5に適用し、求めた北緯36度30分12秒東経138度10分49秒を現在位置と推定する。
【0068】
地点6もGPS位置が取得できなかった場合は、地点5の推定位置と、地点5での気圧、方向及び速度データと、地点6での気圧データと、に基づき、地点5での重みを適用し、地点5と同様に求め、位置を推定する。地点7では、GPS位置が取得できている。
【0069】
図8は、本発明の別の一実施形態に係る設定テーブルを示す図である。
【0070】
設定テーブルは、位置推定条件と、許容誤差と、GPS受信間隔と、を記憶する。位置推定条件は、GPS位置を取得することができた場合にも位置を推定するか否かの情報を記憶する。この設定がONの場合には、GPS位置を取得することができた場合にも位置を推定し、OFFの場合には、GPS位置を取得できなかった場合にのみ位置を推定する。許容誤差は、GPS位置と推定位置との誤差範囲を記憶している。GPS受信間隔は、GPS衛星から電波を受信する時間間隔を記憶している。この時間間隔を変更することにより、GPS衛星から電波を受信する時間間隔を変えることができる。例えば、位置推定条件をONにすると、GPS位置を求める毎に位置の推定も行い、GPS位置と推定位置との誤差を求め、誤差が設定されている許容誤差の範囲内であれば、GPS受信間隔を長くする。例えば、誤差が許容範囲内の場合はGPS受信間隔を2分、許容範囲外の場合は1分等とする。比較的電力消費の大きいGPSシステムの使用頻度を少なくすることができる。
【0071】
図9は、本発明の別の一実施形態に係る現在位置推定装置10の処理内容を示すフローチャートである。なお、本処理は、例えば、プログラム開始指令を受け付けて開始し、プログラム終了指令を受け付けて終了する。
【0072】
ステップS101において、CPU2011は、GPS受信時間か否かを判断する。すなわち、CPU2011は、設定テーブルに設定されたGPS受信間隔による時間になったか否かを判断する。この判断がYESの場合は、処理をステップS102に移し、NOの場合は処理をステップS103に移す。
【0073】
ステップS102において、CPU2011は、位置特定処理を行い現在位置を特定する。その後、CPU2011は、処理をステップS101に移す。
【0074】
ステップS103において、CPU2011は、表示要求か否かを判断する。すなわち、CPU2011は、ユーザからの操作によって操作部2013が表示要求を受信したか否かを判断する。この判断がYESの場合は、処理をステップS104に移し、NOの場合は処理をステップS105に移す。
【0075】
ステップS104において、CPU2011は、現在位置の表示処理をする。より具体的には、CPU2011は、現在位置のデータと、地図情報DB33とに基づいて、現在位置を表示部2014に表示する。現在位置の表示は、現在位置と、測定ログDB31に記憶したGPS位置及び推定位置を表示し、地図情報DB33に記憶する地形データ等をも表示する。その後、CPU2011は、処理をステップS101に移す。
【0076】
ステップS105において、CPU2011は、設定変更か否かを判断する。すなわち、CPU2011は、ユーザからの操作によって操作部2013が設定変更要求を受信したか否かを判断する。この判断がYESの場合は、処理をステップS106に移し、NOの場合は処理をステップS101に移す。
【0077】
ステップS106において、CPU2011は、設定変更処理をする。より具体的には、CPU2011は、ユーザからの操作を操作部2013を介して受け付け、受け付けた操作に応じて、設定テーブルの位置推定条件、許容誤差及びGPS受信間隔を更新する。その後、CPU2011は、処理をステップS101に移す。なお、GPS受信間隔は、ユーザによる操作によって更新されるだけではなく、所定の条件により自動的に更新される(ステップS207参照)。
【0078】
図10は、本発明の別の一実施形態に係る現在位置推定装置10の位置特定処理の処理内容を示すフローチャートである。
【0079】
ステップS111において、CPU2011は、気圧データを記憶する。より具体的には、CPU2011は、気圧部2600が気圧計91から取得したデータを、気圧高度換算DB32に基づいて高度データに換算し、気圧データと換算高度とを、時計部2900から取得した時刻と共に測定ログDB31に記憶する。その後、CPU2011は、処理をステップS112に移す。
【0080】
ステップS112において、CPU2011は、方向データを記憶する。より具体的には、CPU2011は、方位部2700が方位計92から取得したデータを移動する方向として測定ログDB31に記憶する。その後、CPU2011は、処理をステップS113に移す。
【0081】
ステップS113において、CPU2011は、速度データを記憶する。より具体的には、CPU2011は、加速度部2800が加速度計93から取得したデータに基づいて求めた速度を測定ログDB31に記憶する。その後、CPU2011は、処理をステップS114に移す。
【0082】
ステップS114において、CPU2011は、GPSシステムからデータを受信する。より具体的には、CPU2011は、GPS受信部2500にGPS衛星からの電波を受信する指令を出力し、指令を受信したGPS受信部2500は、必要な数のGPS衛星から電波を受信し、受信した電波の時刻差に基づいて現在位置を特定する。GPS受信部2500は、現在位置を特定できなかった場合はエラーデータを作成する。その後、CPU2011は、処理をステップS115に移す。
【0083】
ステップS115において、CPU2011は、GPSシステムからデータを受信できたか否かを判断する。すなわち、CPU2011は、GPS受信部2500から取得した現在位置データがエラーデータか否かを判断する。この判断がYESの場合は、処理をステップS116に移し、NOの場合は処理をステップS118に移す。
【0084】
ステップS116において、CPU2011は、位置データを記憶する。より具体的には、CPU2011は、GPS受信部2500が特定した現在位置データを取得し、測定ログDB31に記憶する。そして、地図情報DB33を参照し、現在位置データに最も近い地点を抽出し、抽出した地点の高度を地図高度として記憶する。地図高度は、現在位置データに近い、抽出した複数の地点の高度から補間によって求めてもよい。その後、CPU2011は、処理をステップS117に移す。
【0085】
ステップS117において、CPU2011は、設定テーブルを参照し、位置推定条件がONであるか否かを判断する。この判断がYESの場合は、処理をステップS118に移し、NOの場合は処理を終了し本処理に移る処理の次の処理へ戻る。
【0086】
ステップS118において、CPU2011は、現在位置推定処理をし、現在位置を推定する。その後、CPU2011は、処理を終了し本処理に移る処理の次の処理へ戻る。
【0087】
図11は、本発明の別の一実施形態に係る現在位置推定装置10の現在位置推定処理の内容を示すフローチャートである。
【0088】
ステップS201において、CPU2011は、高度を推定する。より具体的には、CPU2011は、測定ログDB31を参照し、現在地点の直前の地点の地図高度と換算高度との差を補正値とし、現在位置の換算高度を補正し、推定高度とする。補正値は、現在地点の前の複数の地点の地図高度と換算高度との差を平均し補正値としてもよい。その後、CPU2011は、処理をステップS202に移す。
【0089】
ステップS202において、CPU2011は、高度による地形データを求める。より具体的には、CPU2011は、直前の地点の位置データと、推定高度とに基づいて、地図情報DB33を参照し、求めた等高線の中で直前の地点の位置データに最も近い等高線を求める。その後、CPU2011は、処理をステップS203に移す。
【0090】
ステップS203において、CPU2011は、延長線を求める。より具体的には、CPU2011は、測定ログDB31を参照し、現在地点の直前の地点のGPS位置又は推定位置と、直前の地点における方向データとに基づいて、延長線を求める。その後、CPU2011は、処理をステップS204に移す。
【0091】
ステップS204において、CPU2011は、交点位置を求める。より具体的には、CPU2011は、求めた等高線に基づくスプライン関数と、求めた延長線との交点を求める。複数の交点が求まる場合は、最も近い交点を交点位置とする。その後、CPU2011は、処理をステップS205に移す。
【0092】
ステップS205において、CPU2011は、距離位置を求める。より具体的には、CPU2011は、現在地点の直前の地点で加速度計から取得したデータから求めた速度と、直前の地点から現在地点までの移動時間と、から移動距離を求める。次に、求めた移動距離と、直前の地点及び現在地点の高度差と、から水平距離を求める。そして、水平距離と、直前の地点で取得した移動方向と、から方向距離を求め、直前の地点のGPS位置又は推定位置に加算することによって距離位置を求める。その後、CPU2011は、処理をステップS206に移す。
【0093】
ステップS206において、CPU2011は、交点位置及び距離位置から推定位置を求める。より具体的には、CPU2011は、求めた交点位置と、求めた距離位置と、を平均した位置を求め、測定ログDB31の推定位置に記憶する。平均は、交点位置と距離位置との重み平均等により平均する。重みは、直前の地点において求めた交点位置及び距離位置の重み平均がGPS位置となる関係から求められる。その後、CPU2011は、処理をステップS207に移す。
【0094】
ステップS207において、CPU2011は、推定位置とGPS位置との誤差を判断し、誤差が設定テーブルの許容範囲内の場合には設定テーブルのGPS受信間隔を更新する。より具体的には、CPU2011は、設定テーブルの位置推定条件によりGPS位置を取得することができた場合に、推定位置をも求めた場合には、推定位置とGPS位置との誤差を求める。そして、誤差が設定テーブルの許容範囲内の場合には、設定テーブルのGPS受信間隔を例えば、1分単位で更新する。誤差が設定テーブルの許容範囲外の場合には、例えば、初期値の1分にする。その後、CPU2011は、処理を終了し本処理に移る処理の次の処理へ戻る。
【0095】
図12は、本発明の別の一実施形態に係る現在位置推定装置10の表示例を示す図である。図12の例は、測定ログDB31の地点5において現在位置の表示要求をユーザから受け付けて、地点5を表示部2014に表示していることを示す例である。
【0096】
推定した現在位置のP5地点105を表示部2014のほぼ中心とし、測定ログDB31に記録されている地点1をP1地点101として、地点2をP2地点102として、地点3をP3地点103として、地点4をP4地点104として表示していることを示している。そして、地図情報DB33に基づいて、等高線204を表示し、地図情報として×××山202と、登山道201と、高度203である911とを表示していることを示している。また、緯度及び経度をそれぞれの破線301、303とそれぞれの値302、304によって表示していることを示している。よって、ユーザは現在位置がどこであるかを直感的に知ることができる。
【0097】
実施例2によれば、現在位置推定装置10は、GPSシステムによる衛星からの電波を受信できない場合があっても、気圧計91から取得した気圧データを気圧高度換算DB32に基づいて換算した高度を補正し推定した高度と、測定ログDB31に記録したそれまでの位置情報とに基づいて現在位置を推定することができる。更に、方位計92と、加速度計93と、を更に備え、現在位置推定装置10は、推定した現在位置を、方位のデータと、加速度のデータとに基づき補正するので、更に正確な位置を推定することができる。したがって、実施例2に係る現在位置推定装置10は、GPSシステムによる衛星からの電波を受信できない場合があっても、それまでの位置情報に基づいて現在位置を正確に推定することができる。又、比較的電力消費の大きいGPSシステムの使用頻度を意図的に少なくなるように間引いた場合においても、それまでの位置情報に基づいて現在位置を正確に推定することができる。
【0098】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限るものではない。また、本発明の実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施例に記載されたものに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】本発明の一実施形態に係る現在位置推定装置10の機能を示す機能ブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る気圧高度換算DB32を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る地図情報DB33を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る測定ログDB31を示す図である。
【図5】本発明の別の一実施形態に係る現在位置推定装置10の機能を示す機能ブロック図である。
【図6】本発明の別の一実施形態に係る現在位置推定装置10のハードウェア構成を示すブロック図である。
【図7】本発明の別の一実施形態に係る測定ログDB31を示す図である。
【図8】本発明の別の一実施形態に係る設定テーブルを示す図である。
【図9】本発明の別の一実施形態に係る現在位置推定装置10の処理内容を示すフローチャートである。
【図10】本発明の別の一実施形態に係る現在位置推定装置10の位置特定処理の処理内容を示すフローチャートである。
【図11】本発明の別の一実施形態に係る現在位置推定装置10の現在位置推定処理の内容を示すフローチャートである。
【図12】本発明の別の一実施形態に係る現在位置推定装置10の表示例を示す図である。
【符号の説明】
【0100】
10 現在位置推定装置
11 GPS情報受信部
12 気圧情報取得部
13 現在位置推定部
14 方位情報取得部
15 加速度情報取得部
16 現在位置出力部
31 測定ログDB
32 気圧高度換算DB
33 地図情報DB
【技術分野】
【0001】
本発明は、現在位置推定装置に関する。特に、現在位置推定装置、方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球上の位置を測定するシステムとして、GPS(Global Positioning System)と呼ばれる全地球測位システムが知られている。GPSシステムでは、GPS受信機が地球の上空にある人工衛星から電波を受信し、受信した電波の時刻差から現在位置を即座に知ることができる。このようなシステムを利用して、移動する車の現在位置を地図と共に表示するいわゆるカーナビゲータ装置等が開発されている。
【0003】
このようなGPSシステムは、複数の衛星(原理的には4つの衛星)からの電波を利用するので、電波を受信できない場合や反射した電波を受信する場合等には、精度が確保できない場合がある。例えば、地下鉄や長大トンネル等の中ではGPS衛星からの電波を受信できない。また、ビル街や山間部では、衛星からGPS受信機までの電波経路が反射等によって多数存在するマルチパスにより、信号の時間差が生じたりS/N比が低下し、精度が落ちる場合がある。
【0004】
そこで、GPSシステムを利用する仕方に合った補助手段を用いることによって精度の向上が図られている。例えば、カーナビゲータ装置等では、GPSシステムで初期位置を決定した後は、ジャイロ・加速度センサ等から得られる情報で位置を推定できるようにしている。また、車は道路上を走るということを前提として、カーナビゲータ装置に搭載している地図の道路情報と照らし合わせることで誤差を修正することができる。更に、2個の衛星を捕捉することができれば位置を検出することができる特許文献1のような装置が知られている。特許文献1では、移動体の移動経路が道路、歩道、鉄道等あらかじめ想定される場合には、移動経路上の3次元位置の関係(緯度、経度、高さ)が既知であることから、例えば緯度のみが分かれば経度、高さは一義的に計算することができることを利用して位置を推定している。
【特許文献1】特開2006−071286号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、登山等において、GPSシステムを利用して現在位置を知る場合には、上述のような補助手段を用いても精度を向上させることはできない。すなわち、山岳地帯では、谷間等の地形や森林等により衛星からの電波を受信できない場合がしばしば発生する。このような場合に、登山者は登山ルートを歩くことを前提とすることはできないので、地図に記載されている登山ルートの情報を用いて位置を推定することを補助手段として採用することはできない。そこで、GPSシステムを利用した装置であって、登山等において衛星からの電波を受信できない場合があっても、現在位置を推定できる装置が求められている。
【0006】
本発明は、登山等において、GPSシステムによる衛星からの電波を受信できない場合があっても、それまでの位置情報に基づいて現在位置を推定することができる装置を提供することを目的とする。又、比較的電力消費の大きいGPSシステムの使用頻度を意図的に少なくなるように間引いた場合においても、それまでの位置情報に基づいて現在位置を推定することができる装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明では、以下のような解決手段を提供する。
【0008】
(1) 地形に関する地図データを記憶する地図情報記憶手段と、気圧と高度とを対応付けて記憶する気圧高度換算記憶手段と、地球上の位置を特定するための全地球測位システムの衛星からデータを受信するGPS情報受信手段と、気圧を測定する気圧測定手段から気圧データを取得する気圧情報取得手段と、前記GPS情報受信手段が受信したデータに基づく位置データと、前記気圧情報取得手段が取得した気圧データとを対応付けて時系列に記録する測定ログ記憶手段と、前記測定ログ記憶手段にそれまでに記録した気圧データと、新たに取得した気圧データと、に基づいて前記気圧高度換算記憶手段を参照して現在の高度を推定し、推定した当該高度と、前記測定ログ記憶手段にそれまでに記録した位置データと、前記地図情報記憶手段に記憶した地形データと、に基づいて現在位置を推定する現在位置推定手段と、を備えることを特徴とする現在位置推定装置。
【0009】
(1)の構成によれば、本願発明に係る現在位置推定装置は、地形に関する地図データを地図情報記憶手段に記憶し、気圧と高度とを対応付けて気圧高度換算記憶手段に記憶し、GPS情報受信手段が地球上の位置を特定するための全地球測位システムの衛星からデータを受信し、気圧情報取得手段が、気圧を測定する気圧測定手段から気圧データを取得し、GPS情報受信手段が受信したデータに基づく位置データと、気圧情報取得手段が取得した気圧データとを対応付けて時系列に測定ログ記憶手段に記録する。そして、測定ログ記憶手段にそれまでに記録した気圧データと、新たに取得した気圧データと、に基づいて気圧高度換算記憶手段を参照して現在の高度を推定し、推定した当該高度と、測定ログ記憶手段にそれまでに記録した位置データと、地図情報記憶手段に記憶した地形データと、に基づいて現在位置を推定する。
【0010】
すなわち、本願発明に係る現在位置推定装置は、測定ログ記憶手段にそれまでに記録した気圧データと、新たに取得した気圧データと、に基づいて気圧高度換算記憶手段を参照して現在の高度を推定し、推定した当該高度と、測定ログ記憶手段にそれまでに記録した位置データと、地図情報記憶手段に記憶した地形データと、に基づいて現在位置を推定する。したがって、本願発明に係る現在位置推定装置は、GPSシステムによる衛星からの電波を受信できない場合があっても、それまでの位置情報に基づいて現在位置を推定することができる。又、比較的電力消費の大きいGPSシステムの使用頻度を意図的に少なくなるように間引いた場合においても、それまでの位置情報に基づいて現在位置を推定することができる。
【0011】
(2) 方位を測定する方位測定手段により測定したデータを取得する方位情報取得手段と、加速度を測定する加速度測定手段により測定したデータを取得する加速度情報取得手段と、を更に備え、前記現在位置推定手段は、推定した前記現在位置を、前記方位情報取得手段が取得した方位のデータと、前記加速度情報取得手段が取得した加速度のデータとに基づき補正することを特徴とする(1)に記載の現在位置推定装置。
【0012】
(2)の構成によれば、(1)に記載の現在位置推定装置は、方位情報取得手段と、加速度情報取得手段と、を更に備え、現在位置推定手段は、推定した現在位置を、方位のデータと、加速度のデータとに基づき補正するので、更に正確な位置を推定することができる。したがって、本願発明に係る現在位置推定装置は、GPSシステムによる衛星からの電波を受信できない場合があっても、それまでの位置情報に基づいて現在位置を更に正確に推定することができる。又、比較的電力消費の大きいGPSシステムの使用頻度を意図的に少なくなるように間引いた場合においても、それまでの位置情報に基づいて現在位置を更に正確に推定することができる。
【0013】
(3) 前記地図情報記憶手段に記憶した地図データと共に、推定した前記現在位置を表示する現在位置出力手段、を更に備えることを特徴とする(1)又は(2)に記載の現在位置推定装置。
【0014】
(3)の構成によれば、(1)又は(2)に記載の現在位置推定装置は、地図情報記憶手段に記憶した地図データと共に、推定した現在位置を表示する。したがって、本願発明に係る現在位置推定装置は、GPSシステムによる衛星からの電波を受信できない場合があっても、それまでの位置情報に基づいて現在位置を推定することができ、推定した現在位置を地図データと共に、表示することができる。又、比較的電力消費の大きいGPSシステムの使用頻度を意図的に少なくなるように間引いた場合においても、それまでの位置情報に基づいて現在位置を推定し、推定した現在位置を地図データと共に、表示することができる。
【0015】
(4) 地球上の位置を特定するための全地球測位システムの衛星からデータを受信するステップと、気圧を測定する気圧測定手段から気圧データを取得するステップと、前記受信した衛星からのデータに基づく位置データと、前記取得した気圧データとを対応付けて時系列に測定ログ記憶手段に記録するステップと、前記測定ログ記憶手段にそれまでに記録した気圧データと、新たに取得した気圧データと、に基づいて、気圧と高度とを対応付けて記憶する気圧高度換算記憶手段を参照して現在の高度を推定し、推定した当該高度と、前記測定ログ記憶手段にそれまでに記録した位置データと、地形に関する地図データを記憶する地図情報記憶手段に記憶した地形データと、に基づいて現在位置を推定するステップと、を備えることを特徴とする現在位置を推定する方法。
【0016】
(4)の構成によれば、本願発明に係る現在位置を推定する方法は、地球上の位置を特定するための全地球測位システムの衛星からデータを受信し、気圧を測定する気圧測定手段から気圧データを取得し、受信した衛星からのデータに基づく位置データと、取得した気圧データとを対応付けて時系列に測定ログ記憶手段に記録し、測定ログ記憶手段にそれまでに記録した気圧データと、新たに取得した気圧データと、に基づいて、気圧と高度とを対応付けて記憶する気圧高度換算記憶手段を参照して現在の高度を推定し、推定した当該高度と、測定ログ記憶手段にそれまでに記録した位置データと、地形に関する地図データを記憶する地図情報記憶手段に記憶した地形データと、に基づいて現在位置を推定する。
【0017】
したがって、本願発明に係る現在位置を推定する方法は、GPSシステムによる衛星からの電波を受信できない場合があっても、それまでの位置情報に基づいて現在位置を推定することができる。又、比較的電力消費の大きいGPSシステムの使用頻度を意図的に少なくなるように間引いた場合においても、それまでの位置情報に基づいて現在位置を推定することができる。
【0018】
(5) 気圧を測定する気圧測定装置は、気圧データを出力する気圧情報出力手段を備え、現在位置を推定する現在位置推定装置は、地形に関する地図データを記憶する地図情報記憶手段と、気圧と高度とを対応付けて記憶する気圧高度換算記憶手段と、地球上の位置を特定するための全地球測位システムの衛星からデータを受信するGPS情報受信手段と、前記気圧測定装置から気圧データを取得する気圧情報取得手段と、前記GPS情報受信手段が受信したデータに基づく位置データと、前記気圧情報取得手段が取得した気圧データとを対応付けて時系列に記録する測定ログ記憶手段と、前記測定ログ記憶手段にそれまでに記録した気圧データと、新たに取得した気圧データと、に基づいて前記気圧高度換算記憶手段を参照して現在の高度を推定し、推定した当該高度と、前記測定ログ記憶手段にそれまでに記録した位置データと、前記地図情報記憶手段に記憶した地形データと、に基づいて現在位置を推定する現在位置推定手段と、を備え、現在位置を推定することを特徴とする現在位置推定システム。
【0019】
(5)の構成によれば、本願発明に係る現在位置推定システムは、気圧を測定する気圧測定装置は、気圧データを出力する。そして、現在位置を推定する現在位置推定装置は、地形に関する地図データを地図情報記憶手段に記憶し、気圧と高度とを対応付けて気圧高度換算記憶手段に記憶し、GPS情報受信手段が地球上の位置を特定するための全地球測位システムの衛星からデータを受信し、気圧情報取得手段が気圧測定装置から気圧データを取得し、GPS情報受信手段が受信したデータに基づく位置データと、気圧情報取得手段が取得した気圧データとを対応付けて時系列に測定ログ記憶手段に記録する。そして、測定ログ記憶手段にそれまでに記録した気圧データと、新たに取得した気圧データと、に基づいて気圧高度換算記憶手段を参照して現在の高度を推定し、推定した当該高度と、測定ログ記憶手段にそれまでに記録した位置データと、地図情報記憶手段に記憶した地形データと、に基づいて現在位置を推定する。
【0020】
したがって、本願発明に係る現在位置を推定するシステムは、GPSシステムによる衛星からの電波を受信できない場合があっても、それまでの位置情報に基づいて現在位置を推定することができる。又、比較的電力消費の大きいGPSシステムの使用頻度を意図的に少なくなるように間引いた場合においても、それまでの位置情報に基づいて現在位置を推定することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、登山等において、GPSシステムによる衛星からの電波を受信できない場合があっても、それまでの位置情報に基づいて現在位置を推定することができる。又、比較的電力消費の大きいGPSシステムの使用頻度を意図的に少なくなるように間引いた場合においても、それまでの位置情報に基づいて現在位置を推定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について図を参照しながら説明する。
【0023】
[実施例1]
図1は、本発明の一実施形態に係る現在位置推定装置10の機能を示す機能ブロック図である。
【0024】
現在位置推定装置10は、測定ログ記憶手段として測定ログDB31(データベース)と、気圧高度換算記憶手段として気圧高度換算DB32(データベース)と、地図情報記憶手段として地図情報DB33(データベース)と、GPS情報受信手段としてGPS情報受信部11と、気圧情報取得手段として気圧情報取得部12と、現在位置推定手段として現在位置推定部13と、を備えている。
【0025】
地図情報DB33は、地形に関する地図データを記憶する。地形に関する地図データは、位置データ(緯度及び経度)、高度データ等から構成される。地図情報DB33は、地図データベースを保有するサーバ等からダウンロードして記憶することにより作成される。
【0026】
気圧高度換算DB32は、高度が高くなると気圧が下がる関係にあることに基づいて、国際民間航空機関(ICAO)が定めた標準大気(平均海水面での気圧が1013.25hPa、気温が15度C)の気圧と高度とを対応付けて記憶する。
【0027】
GPS情報受信部11は、位置を特定するための全地球測位システムのGPS衛星からデータを受信し、受信した電波の時刻差に基づいて現在位置を特定する。GPS情報受信部11は、GPSシステムにより特定した現在位置であるGPS位置を現在時刻と共に測定ログDB31に記憶する。そして、GPS位置に基づいて地図情報DB33を参照し、地図データに基づく地図高度を求め、求めた地図高度を測定ログDB31に記憶する。
【0028】
気圧情報取得部12は、気圧を測定する気圧測定装置から気圧データを取得する。そして、取得した気圧データを、気圧高度換算DB32に基づいて高度に換算し、気圧データ及び換算した換算高度を測定ログDB31に記憶する。
【0029】
測定ログDB31は、GPS情報受信部11が受信したデータに基づく位置データと、気圧情報取得部12が取得した気圧データとを対応付けて時系列に記録する。すなわち、測定ログDB31には、上述のように、時刻毎に、GPS位置及び地図高度と、気圧と換算高度等が記憶されている。
【0030】
現在位置推定部13は、GPS情報受信部11がデータを受信することなく、測定ログDB31にそれまでに記録した気圧データと、新たに取得した気圧データと、に基づいて気圧高度換算DB32を参照して現在の高度を推定し、推定した当該高度と、測定ログDB31にそれまでに記録した位置データと、地図情報DB33に記憶した地形データと、に基づいて現在位置を推定する。
【0031】
高度の推定は、新たに取得した気圧データを気圧高度換算DB32を参照して高度に換算し、測定ログDB31にそれまでに記録した、換算高度と地図高度との関係に基づいて、新たに取得した換算高度を補正することにより行う。このように換算高度について補正をすることにより、実際の大気状態が低気圧や高気圧による気圧の変化や、季節による気温の変化等によりICAO標準大気と異なることによる誤差を補正することができる。
【0032】
現在位置の推定は、推定した高度と、測定ログDB31にそれまでに記録した位置データと、地図情報DB33に記憶した地形データと、に基づいて推定する。すなわち、推定した高度と、それまでに測定ログDB31に記録した位置データと、に基づいて地図情報DB33に記憶した地形データ(例えば、等高線等)を参照する。そして、測定ログDB31にそれまでに記録した位置データのうち、最新の2点の位置データから求められる延長線上に、地形データの高度が推定した高度と一致する地点を探索し、その地点を現在位置と推定する。
【0033】
図2は、本発明の一実施形態に係る気圧高度換算DB32を示す図である。
【0034】
気圧高度換算DB32は、ICAO標準大気の気圧と高度とを対応付けて記憶する。図では省略しているが、ICAO標準大気について、10mごとの高度と気圧とを対応付けている。取得した気圧データに基づいて、その気圧データが含まれる区間を求め、その区間で補間することにより換算高度を求めることができる。
【0035】
図3は、本発明の一実施形態に係る地図情報DB33を示す図である。
【0036】
地図情報DB33は、地図上の位置である緯度及び経度と、その位置の高度と、その位置に関する地図情報とを対応付けて記憶する。地図情報は、地名等の地図を表示する場合の情報である。地図情報DB33は、適宜、ネットワーク通信I/F2040を介して地図データベースからダウンロードし、補助記憶部2015に記憶する。
【0037】
図4は、本発明の一実施形態に係る測定ログDB31を示す図である。
【0038】
測定ログDB31は、時刻に対応付けて、GPS位置と、地図高度と、気圧と、換算高度、及び推定位置とを記憶している。時刻は、現在位置推定装置10が計測した時刻である。GPS位置は、GPSシステムにより特定した現在位置である。地図高度は、GPS位置に基づいて、地図情報DB33を参照して求めた高度である。気圧は、気圧計91から取得した気圧データである。換算高度は、取得した気圧データに基づいて、気圧高度換算DB32により換算した高度である。推定位置は、取得した気圧データと、それまでに記憶した位置データとに基づいて現在位置推定部13が推定した推定位置である。
【0039】
例えば、GPSシステムにより現在位置を特定できた場合には、地点1から地点4の様に、時刻、GPS位置、地図高度、気圧及び換算高度が記憶される。GPSシステムにより現在位置を特定できなかった場合には、地点5のように、それまでに記録したデータと、地点5での気圧とに基づいて推定位置を次の様にして求め、記憶する。図4に示した値を基に説明する。
【0040】
(1)高度を次の様に推定する。新たに取得した気圧データは908.6hPaである。この気圧データを気圧高度換算DB32を参照して高度に換算すると、910mになる。測定ログDB31にそれまでに記録した、換算高度と地図高度との関係は、直前の地点4では高度において50mの差がある。これは、例えば、低気圧の通過等によるために気圧が低く測定されそのため換算した高度はその分だけ高くなることに基づく。よって、新たに取得した換算高度910mから地点4の補正分の50mを補正し、高度を860mと推定する。
【0041】
(2)現在位置を次の様に推定する。(1)で推定した高度860mと、直前の地点4のGPS位置(例えば、北緯36度30分20秒東経138度10分46秒)に最も近い、地図情報DB33に記憶した860mの等高線を求める。次に、直前の地点3及び地点4から求められる延長線と、求めた860mの等高線との交点を求め、求めた交点、例えば、北緯36度30分14秒、東経138度10分49秒を現在位置と推定する。等高線は、スプライン関数等により表すことができ、直線との交点を求めることができる。交点が複数存在する場合は、地点4からの時間及び速度(例えば50m/分とする)により求めた距離に最も近い位置等とすることにより求める。
【0042】
地点6もGPS位置が取得できなかった場合は、地点4のGPS位置と、地点5の推定位置と、地点6で新たに取得した気圧データを高度に換算し補正をして推定した高度と、に基づいて地点5と同様に、位置を推定する。地点7では、GPS位置が取得できている。
【0043】
実施例1によれば、現在位置推定装置10は、GPSシステムによる衛星からの電波を受信できない場合があっても、取得した気圧データを気圧高度換算DB32に基づいて換算した高度を補正し推定した高度と、測定ログDB31に記録したそれまでの位置情報とに基づいて現在位置を推定することができる。又、比較的電力消費の大きいGPSシステムの使用頻度を意図的に少なくなるように間引いた場合においても、それまでの位置情報に基づいて現在位置を推定することができる。
【0044】
[実施例2]
図5は、本発明の別の一実施形態に係る現在位置推定装置10の機能を示す機能ブロック図である。
【0045】
現在位置推定装置10は、実施例1の構成に加えて、方位情報取得手段として方位情報取得部14と、加速度情報取得手段として加速度情報取得部15と、現在位置出力手段として現在位置出力部16と、を更に備えている。
【0046】
方位情報取得部14は、方位を測定する方位測定手段により測定したデータを取得する。取得したデータは、移動する方向を示す方向データとして測定ログDB31に記録する。
【0047】
加速度情報取得部15は、加速度を測定する加速度測定手段により測定したデータを取得する。取得したデータに基づいて速度を求め、その地点の速度を示すデータとして測定ログDB31に記録する。
【0048】
現在位置推定部13は、推定した高度と、測定ログDB31に記録した位置データとに基づいて推定した現在位置を、方位情報取得部14が取得した方位データと、加速度情報取得部15が取得した加速度のデータとに基づき補正する。
【0049】
補正は、次の様に行う。(1)実施例1と同様に、現在地点で取得した気圧データの換算高度から推定した推定高度と、それまでに記録した位置データと、によって地図情報DB33に記憶した地形データ(例えば、等高線等)を求める。次に、現在地点の直前の地点について測定ログDB31に記録したGPS位置と、直前の地点で取得した方位データから求めた移動方向と、に基づいて延長線を求める。そして、求めた地形データと延長線との交点である交点位置を求める。(2)一方、現在地点の直前の地点で加速度計から取得したデータから求めた速度と、直前の地点から現在地点までの移動時間と、から移動距離を求める(移動距離=速度×移動時間)。次に、求めた移動距離と、直前の地点及び現在地点の高度差と、から水平距離を求める(移動距離2=高度差2+水平距離2)。そして、水平距離と、直前の地点で取得した移動方向(αとする)と、から方向距離(水平距離×cosα及び水平距離×sinα)を求め、直前の地点のGPS位置に加算することによって距離位置を求める。(3)そして、求めた交点位置と、求めた距離位置と、を平均した位置を求め、現在位置と推定する。平均は、交点位置と距離位置との重み平均等により平均する。重みは、直前の地点において求めた重みである。すなわち、直前の地点において、同様に交点位置及び距離位置を求め、求めた交点位置及び距離位置の重み平均がGPS位置となる重みを求める(交点位置×重み+距離位置×(1−重み)=GPS位置)。
【0050】
現在位置出力部16は、推定した現在位置を、地図情報DB33に記憶した地図データと共に表示する。
【0051】
図6は、本発明の別の一実施形態に係る現在位置推定装置10のハードウェア構成を示すブロック図である。
【0052】
図6に示すように、現在位置推定装置10は、CPU(Central Processing Unit)2011、メモリ2012、操作部2013、表示部2014、補助記憶部2015、ネットワーク通信I/F2040、GPS受信部2500、気圧部2600、方位部2700、加速度部2800及び時計部2900がバスラインBUSにより接続されて構成されている。
【0053】
CPU2011は、現在位置推定装置10を統括的に制御する部分であり、メモリ2012に記憶された各種プログラムを適宜読み出して実行することにより、上述したハードウェアと協働し、本発明に係る各種機能を実現している。
【0054】
操作部2013は、各種設定や入力操作を行う操作ボタン群、決定操作ボタン等を備えており、操作部2013による入力情報はCPU2011の制御下で処理される。表示部2014は、LCD(Liquid Crystal Display)や有機EL(Electoro Luminescence)によって構成され、各種情報を表示する。
【0055】
補助記憶部2015は、フラッシュメモリ等により構成され、現在位置推定装置10が機能するための各種プログラム及び本発明の機能を実行するプログラムを記憶しており、更に、測定ログDB31と、気圧高度換算DB32と、地図情報DB33等の各種データベースを構成可能である。
【0056】
ネットワーク通信I/F2040は、現在位置推定装置10を専用ネットワーク又は公共ネットワークを介して地図データベースを保有するサーバ等と接続できるようにするためのネットワーク・アダプタである。
【0057】
GPS受信部2500は、GPS衛星から電波を受信する。GPS受信部2500は、無線通信に必要なアンテナ及びアンテナ信号処理回路等を含んで構成される。GPS受信部2500は、受信した電波に基づいて処理を行い、位置データを作成する。
【0058】
気圧部2600は、気圧計91から気圧データを受信する。受信した気圧データは、CPU2011によって高度に換算され、測定ログDB31に記憶される。
【0059】
方位部2700は、方位計92から方位データを受信する。受信した方位データは、CPU2011によって測定ログDB31に記憶される。
【0060】
加速度部2800、加速度計93から加速度データを受信する。受信した加速度データは、CPU2011によって処理され、測定ログDB31に記憶される。
【0061】
時計部2900は、時刻を計測する。計測した時刻のデータは、CPU2011によって測定ログDB31に記憶される。
【0062】
なお、現在位置推定装置10は、気圧計91、方位計92、加速度計93等を一部、或いは全て一体として構成してもよい。具体的には、例えば、現在位置推定装置10は、いわゆるGPS受信機能付携帯端末であり、例えば、気圧計91及び方位計92を含む腕時計からそれぞれ気圧及び方位の情報を受信し、加速度計93(加速度センサー)を含む靴から加速度の情報を受信する構成としてもよいし、気圧計91、方位計92、加速度計93を含むGPS携帯端末として実現してもよい。
【0063】
図7は、本発明の別の一実施形態に係る測定ログDB31を示す図である。
【0064】
測定ログDB31は、実施例1に加えて、速度、方向、交点位置及び距離位置を記憶している。速度は、加速度部2800が加速度計93から受信したデータに基づいて求めた速度である。方向は、方位部2700が方位計92から受信した移動の方向を示すデータである。
【0065】
例えば、GPSシステムにより現在位置を特定できた場合には、地点1から地点4の様に、時刻、GPS位置、地図高度、気圧、換算高度、速度及び方向が記憶される。GPSシステムにより現在位置を特定できなかった地点5の場合には、それまでに記録したデータと、地点5での気圧と、に基づいて推定位置を、次の様にして求める。図7に示した値を基に説明する。
【0066】
(1)高度の推定は、実施例1と同様にして、860mと推定する。
【0067】
現在位置を次の様に推定する。(1)で推定した高度860mと、直前の地点4のGPS位置(例えば、北緯36度30分16秒東経138度10分48秒)に最も近い、地図情報DB33に記憶した860mの等高線を求める。次に、直前の地点4のGPS位置と、地点4における方向データ(225度)とに基づいて、延長線を求める。そして、求めた延長線と、求めた860mの等高線との交点を求め、求めた交点である交点位置、例えば、北緯36度30分12秒東経138度10分49秒を得る。(2)一方、直前の地点4における速度に地点5までの移動時間を掛けて移動距離(45m/分×1分=45m)を求める。次に、移動距離と、地点4及び地点5の高度差(20m)と、から水平距離(40.315m)を求める。そして、水平距離と、地点4における方向(225度)と、から方向距離(南へ28.5m緯度に換算して約1秒、東へ28.5m経度に換算して約1秒)を求め、地点4におけるGPS位置(例えば、北緯36度30分16秒、東経138度10分48秒)に加算し、距離位置(例えば、北緯36度30分15秒、東経138度10分49秒)を得る。(3)そして、求めた交点位置と、求めた距離位置と、を平均した位置を求め、現在位置と推定する。平均は、交点位置と距離位置との重み平均等により平均する。重みは、直前の地点4で上述と同様にして地点4の交点位置及び距離位置を求め、求めた交点位置及び距離位置と、地点4のGPS位置との関係から求める。例えば、地点4において求めた交点位置(例えば、北緯36度30分14秒東経138度10分46秒)及び距離位置(例えば、北緯36度30分34秒東経138度11分06秒)と、地点4のGPS位置とから交点位置の重み0.9と距離位置の重み0.1とを求めることができる。この重みを地点5に適用し、求めた北緯36度30分12秒東経138度10分49秒を現在位置と推定する。
【0068】
地点6もGPS位置が取得できなかった場合は、地点5の推定位置と、地点5での気圧、方向及び速度データと、地点6での気圧データと、に基づき、地点5での重みを適用し、地点5と同様に求め、位置を推定する。地点7では、GPS位置が取得できている。
【0069】
図8は、本発明の別の一実施形態に係る設定テーブルを示す図である。
【0070】
設定テーブルは、位置推定条件と、許容誤差と、GPS受信間隔と、を記憶する。位置推定条件は、GPS位置を取得することができた場合にも位置を推定するか否かの情報を記憶する。この設定がONの場合には、GPS位置を取得することができた場合にも位置を推定し、OFFの場合には、GPS位置を取得できなかった場合にのみ位置を推定する。許容誤差は、GPS位置と推定位置との誤差範囲を記憶している。GPS受信間隔は、GPS衛星から電波を受信する時間間隔を記憶している。この時間間隔を変更することにより、GPS衛星から電波を受信する時間間隔を変えることができる。例えば、位置推定条件をONにすると、GPS位置を求める毎に位置の推定も行い、GPS位置と推定位置との誤差を求め、誤差が設定されている許容誤差の範囲内であれば、GPS受信間隔を長くする。例えば、誤差が許容範囲内の場合はGPS受信間隔を2分、許容範囲外の場合は1分等とする。比較的電力消費の大きいGPSシステムの使用頻度を少なくすることができる。
【0071】
図9は、本発明の別の一実施形態に係る現在位置推定装置10の処理内容を示すフローチャートである。なお、本処理は、例えば、プログラム開始指令を受け付けて開始し、プログラム終了指令を受け付けて終了する。
【0072】
ステップS101において、CPU2011は、GPS受信時間か否かを判断する。すなわち、CPU2011は、設定テーブルに設定されたGPS受信間隔による時間になったか否かを判断する。この判断がYESの場合は、処理をステップS102に移し、NOの場合は処理をステップS103に移す。
【0073】
ステップS102において、CPU2011は、位置特定処理を行い現在位置を特定する。その後、CPU2011は、処理をステップS101に移す。
【0074】
ステップS103において、CPU2011は、表示要求か否かを判断する。すなわち、CPU2011は、ユーザからの操作によって操作部2013が表示要求を受信したか否かを判断する。この判断がYESの場合は、処理をステップS104に移し、NOの場合は処理をステップS105に移す。
【0075】
ステップS104において、CPU2011は、現在位置の表示処理をする。より具体的には、CPU2011は、現在位置のデータと、地図情報DB33とに基づいて、現在位置を表示部2014に表示する。現在位置の表示は、現在位置と、測定ログDB31に記憶したGPS位置及び推定位置を表示し、地図情報DB33に記憶する地形データ等をも表示する。その後、CPU2011は、処理をステップS101に移す。
【0076】
ステップS105において、CPU2011は、設定変更か否かを判断する。すなわち、CPU2011は、ユーザからの操作によって操作部2013が設定変更要求を受信したか否かを判断する。この判断がYESの場合は、処理をステップS106に移し、NOの場合は処理をステップS101に移す。
【0077】
ステップS106において、CPU2011は、設定変更処理をする。より具体的には、CPU2011は、ユーザからの操作を操作部2013を介して受け付け、受け付けた操作に応じて、設定テーブルの位置推定条件、許容誤差及びGPS受信間隔を更新する。その後、CPU2011は、処理をステップS101に移す。なお、GPS受信間隔は、ユーザによる操作によって更新されるだけではなく、所定の条件により自動的に更新される(ステップS207参照)。
【0078】
図10は、本発明の別の一実施形態に係る現在位置推定装置10の位置特定処理の処理内容を示すフローチャートである。
【0079】
ステップS111において、CPU2011は、気圧データを記憶する。より具体的には、CPU2011は、気圧部2600が気圧計91から取得したデータを、気圧高度換算DB32に基づいて高度データに換算し、気圧データと換算高度とを、時計部2900から取得した時刻と共に測定ログDB31に記憶する。その後、CPU2011は、処理をステップS112に移す。
【0080】
ステップS112において、CPU2011は、方向データを記憶する。より具体的には、CPU2011は、方位部2700が方位計92から取得したデータを移動する方向として測定ログDB31に記憶する。その後、CPU2011は、処理をステップS113に移す。
【0081】
ステップS113において、CPU2011は、速度データを記憶する。より具体的には、CPU2011は、加速度部2800が加速度計93から取得したデータに基づいて求めた速度を測定ログDB31に記憶する。その後、CPU2011は、処理をステップS114に移す。
【0082】
ステップS114において、CPU2011は、GPSシステムからデータを受信する。より具体的には、CPU2011は、GPS受信部2500にGPS衛星からの電波を受信する指令を出力し、指令を受信したGPS受信部2500は、必要な数のGPS衛星から電波を受信し、受信した電波の時刻差に基づいて現在位置を特定する。GPS受信部2500は、現在位置を特定できなかった場合はエラーデータを作成する。その後、CPU2011は、処理をステップS115に移す。
【0083】
ステップS115において、CPU2011は、GPSシステムからデータを受信できたか否かを判断する。すなわち、CPU2011は、GPS受信部2500から取得した現在位置データがエラーデータか否かを判断する。この判断がYESの場合は、処理をステップS116に移し、NOの場合は処理をステップS118に移す。
【0084】
ステップS116において、CPU2011は、位置データを記憶する。より具体的には、CPU2011は、GPS受信部2500が特定した現在位置データを取得し、測定ログDB31に記憶する。そして、地図情報DB33を参照し、現在位置データに最も近い地点を抽出し、抽出した地点の高度を地図高度として記憶する。地図高度は、現在位置データに近い、抽出した複数の地点の高度から補間によって求めてもよい。その後、CPU2011は、処理をステップS117に移す。
【0085】
ステップS117において、CPU2011は、設定テーブルを参照し、位置推定条件がONであるか否かを判断する。この判断がYESの場合は、処理をステップS118に移し、NOの場合は処理を終了し本処理に移る処理の次の処理へ戻る。
【0086】
ステップS118において、CPU2011は、現在位置推定処理をし、現在位置を推定する。その後、CPU2011は、処理を終了し本処理に移る処理の次の処理へ戻る。
【0087】
図11は、本発明の別の一実施形態に係る現在位置推定装置10の現在位置推定処理の内容を示すフローチャートである。
【0088】
ステップS201において、CPU2011は、高度を推定する。より具体的には、CPU2011は、測定ログDB31を参照し、現在地点の直前の地点の地図高度と換算高度との差を補正値とし、現在位置の換算高度を補正し、推定高度とする。補正値は、現在地点の前の複数の地点の地図高度と換算高度との差を平均し補正値としてもよい。その後、CPU2011は、処理をステップS202に移す。
【0089】
ステップS202において、CPU2011は、高度による地形データを求める。より具体的には、CPU2011は、直前の地点の位置データと、推定高度とに基づいて、地図情報DB33を参照し、求めた等高線の中で直前の地点の位置データに最も近い等高線を求める。その後、CPU2011は、処理をステップS203に移す。
【0090】
ステップS203において、CPU2011は、延長線を求める。より具体的には、CPU2011は、測定ログDB31を参照し、現在地点の直前の地点のGPS位置又は推定位置と、直前の地点における方向データとに基づいて、延長線を求める。その後、CPU2011は、処理をステップS204に移す。
【0091】
ステップS204において、CPU2011は、交点位置を求める。より具体的には、CPU2011は、求めた等高線に基づくスプライン関数と、求めた延長線との交点を求める。複数の交点が求まる場合は、最も近い交点を交点位置とする。その後、CPU2011は、処理をステップS205に移す。
【0092】
ステップS205において、CPU2011は、距離位置を求める。より具体的には、CPU2011は、現在地点の直前の地点で加速度計から取得したデータから求めた速度と、直前の地点から現在地点までの移動時間と、から移動距離を求める。次に、求めた移動距離と、直前の地点及び現在地点の高度差と、から水平距離を求める。そして、水平距離と、直前の地点で取得した移動方向と、から方向距離を求め、直前の地点のGPS位置又は推定位置に加算することによって距離位置を求める。その後、CPU2011は、処理をステップS206に移す。
【0093】
ステップS206において、CPU2011は、交点位置及び距離位置から推定位置を求める。より具体的には、CPU2011は、求めた交点位置と、求めた距離位置と、を平均した位置を求め、測定ログDB31の推定位置に記憶する。平均は、交点位置と距離位置との重み平均等により平均する。重みは、直前の地点において求めた交点位置及び距離位置の重み平均がGPS位置となる関係から求められる。その後、CPU2011は、処理をステップS207に移す。
【0094】
ステップS207において、CPU2011は、推定位置とGPS位置との誤差を判断し、誤差が設定テーブルの許容範囲内の場合には設定テーブルのGPS受信間隔を更新する。より具体的には、CPU2011は、設定テーブルの位置推定条件によりGPS位置を取得することができた場合に、推定位置をも求めた場合には、推定位置とGPS位置との誤差を求める。そして、誤差が設定テーブルの許容範囲内の場合には、設定テーブルのGPS受信間隔を例えば、1分単位で更新する。誤差が設定テーブルの許容範囲外の場合には、例えば、初期値の1分にする。その後、CPU2011は、処理を終了し本処理に移る処理の次の処理へ戻る。
【0095】
図12は、本発明の別の一実施形態に係る現在位置推定装置10の表示例を示す図である。図12の例は、測定ログDB31の地点5において現在位置の表示要求をユーザから受け付けて、地点5を表示部2014に表示していることを示す例である。
【0096】
推定した現在位置のP5地点105を表示部2014のほぼ中心とし、測定ログDB31に記録されている地点1をP1地点101として、地点2をP2地点102として、地点3をP3地点103として、地点4をP4地点104として表示していることを示している。そして、地図情報DB33に基づいて、等高線204を表示し、地図情報として×××山202と、登山道201と、高度203である911とを表示していることを示している。また、緯度及び経度をそれぞれの破線301、303とそれぞれの値302、304によって表示していることを示している。よって、ユーザは現在位置がどこであるかを直感的に知ることができる。
【0097】
実施例2によれば、現在位置推定装置10は、GPSシステムによる衛星からの電波を受信できない場合があっても、気圧計91から取得した気圧データを気圧高度換算DB32に基づいて換算した高度を補正し推定した高度と、測定ログDB31に記録したそれまでの位置情報とに基づいて現在位置を推定することができる。更に、方位計92と、加速度計93と、を更に備え、現在位置推定装置10は、推定した現在位置を、方位のデータと、加速度のデータとに基づき補正するので、更に正確な位置を推定することができる。したがって、実施例2に係る現在位置推定装置10は、GPSシステムによる衛星からの電波を受信できない場合があっても、それまでの位置情報に基づいて現在位置を正確に推定することができる。又、比較的電力消費の大きいGPSシステムの使用頻度を意図的に少なくなるように間引いた場合においても、それまでの位置情報に基づいて現在位置を正確に推定することができる。
【0098】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限るものではない。また、本発明の実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施例に記載されたものに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】本発明の一実施形態に係る現在位置推定装置10の機能を示す機能ブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る気圧高度換算DB32を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る地図情報DB33を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る測定ログDB31を示す図である。
【図5】本発明の別の一実施形態に係る現在位置推定装置10の機能を示す機能ブロック図である。
【図6】本発明の別の一実施形態に係る現在位置推定装置10のハードウェア構成を示すブロック図である。
【図7】本発明の別の一実施形態に係る測定ログDB31を示す図である。
【図8】本発明の別の一実施形態に係る設定テーブルを示す図である。
【図9】本発明の別の一実施形態に係る現在位置推定装置10の処理内容を示すフローチャートである。
【図10】本発明の別の一実施形態に係る現在位置推定装置10の位置特定処理の処理内容を示すフローチャートである。
【図11】本発明の別の一実施形態に係る現在位置推定装置10の現在位置推定処理の内容を示すフローチャートである。
【図12】本発明の別の一実施形態に係る現在位置推定装置10の表示例を示す図である。
【符号の説明】
【0100】
10 現在位置推定装置
11 GPS情報受信部
12 気圧情報取得部
13 現在位置推定部
14 方位情報取得部
15 加速度情報取得部
16 現在位置出力部
31 測定ログDB
32 気圧高度換算DB
33 地図情報DB
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地形に関する地図データを記憶する地図情報記憶手段と、
気圧と高度とを対応付けて記憶する気圧高度換算記憶手段と、
地球上の位置を特定するための全地球測位システムの衛星からデータを受信するGPS情報受信手段と、
気圧を測定する気圧測定手段から気圧データを取得する気圧情報取得手段と、
前記GPS情報受信手段が受信したデータに基づく位置データと、前記気圧情報取得手段が取得した気圧データとを対応付けて時系列に記録する測定ログ記憶手段と、
前記測定ログ記憶手段にそれまでに記録した気圧データと、新たに取得した気圧データと、に基づいて前記気圧高度換算記憶手段を参照して現在の高度を推定し、推定した当該高度と、前記測定ログ記憶手段にそれまでに記録した位置データと、前記地図情報記憶手段に記憶した地形データと、に基づいて現在位置を推定する現在位置推定手段と、
を備えることを特徴とする現在位置推定装置。
【請求項2】
方位を測定する方位測定手段により測定したデータを取得する方位情報取得手段と、
加速度を測定する加速度測定手段により測定したデータを取得する加速度情報取得手段と、を更に備え、
前記現在位置推定手段は、推定した前記現在位置を、前記方位情報取得手段が取得した方位のデータと、前記加速度情報取得手段が取得した加速度のデータとに基づき補正することを特徴とする請求項1に記載の現在位置推定装置。
【請求項3】
前記地図情報記憶手段に記憶した地図データと共に、推定した前記現在位置を表示する現在位置出力手段、を更に備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の現在位置推定装置。
【請求項4】
地球上の位置を特定するための全地球測位システムの衛星からデータを受信するステップと、
気圧を測定する気圧測定手段から気圧データを取得するステップと、
前記受信した衛星からのデータに基づく位置データと、前記取得した気圧データとを対応付けて時系列に測定ログ記憶手段に記録するステップと、
前記測定ログ記憶手段にそれまでに記録した気圧データと、新たに取得した気圧データと、に基づいて、気圧と高度とを対応付けて記憶する気圧高度換算記憶手段を参照して現在の高度を推定し、推定した当該高度と、前記測定ログ記憶手段にそれまでに記録した位置データと、地形に関する地図データを記憶する地図情報記憶手段に記憶した地形データと、に基づいて現在位置を推定するステップと、
を備えることを特徴とする現在位置を推定する方法。
【請求項5】
気圧を測定する気圧測定装置は、気圧データを出力する気圧情報出力手段を備え、
現在位置を推定する現在位置推定装置は、
地形に関する地図データを記憶する地図情報記憶手段と、
気圧と高度とを対応付けて記憶する気圧高度換算記憶手段と、
地球上の位置を特定するための全地球測位システムの衛星からデータを受信するGPS情報受信手段と、
前記気圧測定装置から気圧データを取得する気圧情報取得手段と、
前記GPS情報受信手段が受信したデータに基づく位置データと、前記気圧情報取得手段が取得した気圧データとを対応付けて時系列に記録する測定ログ記憶手段と、
前記測定ログ記憶手段にそれまでに記録した気圧データと、新たに取得した気圧データと、に基づいて前記気圧高度換算記憶手段を参照して現在の高度を推定し、推定した当該高度と、前記測定ログ記憶手段にそれまでに記録した位置データと、前記地図情報記憶手段に記憶した地形データと、に基づいて現在位置を推定する現在位置推定手段と、を備え、
現在位置を推定することを特徴とする現在位置推定システム。
【請求項1】
地形に関する地図データを記憶する地図情報記憶手段と、
気圧と高度とを対応付けて記憶する気圧高度換算記憶手段と、
地球上の位置を特定するための全地球測位システムの衛星からデータを受信するGPS情報受信手段と、
気圧を測定する気圧測定手段から気圧データを取得する気圧情報取得手段と、
前記GPS情報受信手段が受信したデータに基づく位置データと、前記気圧情報取得手段が取得した気圧データとを対応付けて時系列に記録する測定ログ記憶手段と、
前記測定ログ記憶手段にそれまでに記録した気圧データと、新たに取得した気圧データと、に基づいて前記気圧高度換算記憶手段を参照して現在の高度を推定し、推定した当該高度と、前記測定ログ記憶手段にそれまでに記録した位置データと、前記地図情報記憶手段に記憶した地形データと、に基づいて現在位置を推定する現在位置推定手段と、
を備えることを特徴とする現在位置推定装置。
【請求項2】
方位を測定する方位測定手段により測定したデータを取得する方位情報取得手段と、
加速度を測定する加速度測定手段により測定したデータを取得する加速度情報取得手段と、を更に備え、
前記現在位置推定手段は、推定した前記現在位置を、前記方位情報取得手段が取得した方位のデータと、前記加速度情報取得手段が取得した加速度のデータとに基づき補正することを特徴とする請求項1に記載の現在位置推定装置。
【請求項3】
前記地図情報記憶手段に記憶した地図データと共に、推定した前記現在位置を表示する現在位置出力手段、を更に備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の現在位置推定装置。
【請求項4】
地球上の位置を特定するための全地球測位システムの衛星からデータを受信するステップと、
気圧を測定する気圧測定手段から気圧データを取得するステップと、
前記受信した衛星からのデータに基づく位置データと、前記取得した気圧データとを対応付けて時系列に測定ログ記憶手段に記録するステップと、
前記測定ログ記憶手段にそれまでに記録した気圧データと、新たに取得した気圧データと、に基づいて、気圧と高度とを対応付けて記憶する気圧高度換算記憶手段を参照して現在の高度を推定し、推定した当該高度と、前記測定ログ記憶手段にそれまでに記録した位置データと、地形に関する地図データを記憶する地図情報記憶手段に記憶した地形データと、に基づいて現在位置を推定するステップと、
を備えることを特徴とする現在位置を推定する方法。
【請求項5】
気圧を測定する気圧測定装置は、気圧データを出力する気圧情報出力手段を備え、
現在位置を推定する現在位置推定装置は、
地形に関する地図データを記憶する地図情報記憶手段と、
気圧と高度とを対応付けて記憶する気圧高度換算記憶手段と、
地球上の位置を特定するための全地球測位システムの衛星からデータを受信するGPS情報受信手段と、
前記気圧測定装置から気圧データを取得する気圧情報取得手段と、
前記GPS情報受信手段が受信したデータに基づく位置データと、前記気圧情報取得手段が取得した気圧データとを対応付けて時系列に記録する測定ログ記憶手段と、
前記測定ログ記憶手段にそれまでに記録した気圧データと、新たに取得した気圧データと、に基づいて前記気圧高度換算記憶手段を参照して現在の高度を推定し、推定した当該高度と、前記測定ログ記憶手段にそれまでに記録した位置データと、前記地図情報記憶手段に記憶した地形データと、に基づいて現在位置を推定する現在位置推定手段と、を備え、
現在位置を推定することを特徴とする現在位置推定システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−8154(P2010−8154A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−166083(P2008−166083)
【出願日】平成20年6月25日(2008.6.25)
【出願人】(500257300)ヤフー株式会社 (1,128)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月25日(2008.6.25)
【出願人】(500257300)ヤフー株式会社 (1,128)
【Fターム(参考)】
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