説明

生化学的分析のために液滴を扱う装置、前記装置を製造する方法及びマイクロ流体分析

本発明の第1の課題は、エレクトロウェッティング平面による移動における液滴の取り扱いに関する装置であって、少なくとも一つの移動経路を含む。経路は、その表面上に二つ以上の交互嵌合導電性電極を配置する電気的に絶縁性の基板を含む。これらの電極は、電気的に絶縁性の層によって覆われ、それ自身は部分的に濡れ性の層で覆われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の課題は、生物学的分析のために意図された液滴を取り扱う装置、そのような装置を製造する方法、及びそのような装置を使用するマイクロ流体工学分析システムである。
【背景技術】
【0002】
最近の新たな技術はマイクロメータ及びナノメータの次元での、非常に高度に複雑な設計を可能とする。理想的には、これらのシステムはあらゆる種類の特徴を有し、例えば生物学的または生化学的な多くの領域で使用される。特に、同定及び蛋白質の研究に関連する仕事であるプロテオミクス(protoemics)は、処理されるサンプルの体積の低減、及び不純物を低減するため新しい技術の使用を試みる。一般的に、目的は、例えば分光学的な測定の前の、材料のマイクロハンドリング(microhandling)を制御することである。
【0003】
そのようなマイクロシステムにおいて、例えば蛋白質のような材料が液体媒質の中以外で処理できない限り、戦略的な視点から、流体の流れの制御の問題が発生する。従って、本発明はマイクロ流体工学の領域に係り、マイクロメータまたはナノメータの次元のシステム内の流れにより一般的に関し、その流れの中で処理されるサンプルは電場または複雑な物理的または化学的性質の分割の効果(partitioning effect)を受けてよく、その流れにおいて面積/体積比が高いことが非常に重要である。
【0004】
この領域では、システムのサイズの減少は、結果として体積及び反応時間の低減またはより短い交換(exchange)、及び、例えばシリコンの単一のウェハ上での輸送、処理または、さらに分析等の異なる特徴を有する幾つかのモジュールを統合する性能、につながる。
【0005】
液体を輸送するために、二つの種類の流体移動(fluidic displacement)、すなわち連続流体のポンピング、及び検量されたマイクロ体積(calibrated microvolumes)の移動が一般的に可能である。検量されたマイクロ体積の移動にはいくらかの利点がある。実は、連続流れポンピングが一定流(constant flow)によって特徴付けられる一方で、検量されたマイクロ体積の移動は、液体の体積が非常に小さいことを可能にし、且つマイクロ体積の流れの適切な制御を可能にする。加えて、このタイプの移動は、例えば液体の混合を可能にする様々な同時進行を可能にする。検量されたマイクロ体積の移動タイプの流体移動を達成するために、空気式の動作(pneumatic action)による、アコースティック表面波による、電気泳動効果による、エレクトロウェッティングによる、及び誘電体のエレクトロウェッティング(EWOD)による、異なる方法の操作が知られる。この最後の方法は、相対的に簡単な技術システムを使用し、流れの制御及び電極のネットワーク内の導電性液体の検量された体積の循環を可能にする。
【0006】
米国特許第6565727号明細書、及びCho et alの“Particle separation and concentration control for digital microfluidic systems”は、上述のエレクトロウェッティングによる液滴の移動を記述していることで特に知られている。しかしながら、これらの刊行物に記述された装置は、電極を含む底部部分及び対向電極を含む上部部分を有し、液滴はこれらの部分の間を動く。この上部部分は、特に、装置をよりかさ高く、より複雑にする。
【0007】
加えて、処理されるサンプルは、非常に高価で非常に少量であることが多い。従って、化学的な処理による、または輸送の間材料と相互作用させることによる、これらのサンプルの取り扱いの最適化に対する要請がある。既に知られたマイクロ流体移動システム、それらが二つの対向する基板を必要としようと、または単一の基板を必要としようと、及び、それらが対向電極を使用しようと、または使用しないのであろうと、いずれにせよ最適化を可能にしない。実は、特にCho et alの“Particle separation and concentration control for digital microfluidic systems”と題された刊行物において、化学的相互作用ではなく、輸送の間の電極と液滴との間の直接の相互作用によって、物理的に液滴と相互作用することを可能とする装置が提案される。従って、サンプルの取り扱いを最適化するために必要なこの化学的相互作用は、Cho et alの装置において不可能である。
【0008】
実は、この最適化は、移動における摩擦及びヒステリシスを制限するために、移動が疎水性材料内に一つ以上の経路を必要とする事実によって、非常に困難になる。この移動経路の疎水性の性質は、特に、輸送の間の材料の化学処理または材料との相互作用を妨げる。
【0009】
一般的に、与えられた液体に関する移動経路の非濡れ性に興味が持たれることは、言及されるべきである。例えば蛋白質を扱うときに一般的であるように、液体が水性であるとき、水に関する非濡れ性及び濡れ性は、各々疎水性及び親水性の性質である。疎水性材料は水に関して濡れない材料であり、親水性材料は水に濡れる材料である。濡れ性は、一般的に液滴(1)と表面(2)との間の接触角(θ)によって特徴付けられる(図1aから1dを参照)。しばしば、前述の角度のコサインとして定義される濡れ定数が使用される。従って、完全な濡れ性は、濡れ定数1に対応し、θ=0°に対応する。そして、濡れ性が完全にない場合は、濡れ定数−1(マイナス1)、θ=180°に対応する。以下で、我々は、図1aに説明されるように、この液体に関する濡れ定数が1(1に等しい必要はない)となる傾向がある材料のための液体に関して濡れ材料を論じ、図1bに説明されるように、この液体に関する濡れ定数が−1(−1に等しい必要はない)となる傾向がある材料のための液体に関して濡れ材料を論じる。図1c及び1dは、各々濡れ性(θ<90°)または非濡れ性(θ>90°)の中間的な事例を説明する。
【0010】
液体に関する非濡れ性材料、特に移動に関して必須の疎水性材料、により提示される問題は、これらの材料の表面特性が、これらの材料の表面エネルギーが低いことによって特徴付けられる事実に起因して、表面化学処理領域の生成を妨げることである。処理される液体の化学的処理を可能にするよう、そのような材料の表面を局所的に機能化しようとする場合、結果は非常に信頼性が低く、制御し難く、非常に不完全である。液体の輸送を好む材料の性能を排除するので、非濡れ性材料を液体に関してより厳密に構成することは選択肢ではない。従って、部分的に濡れる材料の層を使用することは必要であり、このことは機能化のため濡れ性領域または高濡れ性領域も生成する一方で、移動のための非濡れ性の保持は必要であることを意味する。
【0011】
関連する材料が疎水性である特別な場合に適用される、疎水性材料に開口部を形成することによって部分的に疎水性の層を生成するための二つの従来のフォトリソグラフィック技術が特に知られており、これらの開口部は疎水性層内に分散した親水性領域になる。第1の技術(図5)において、Cho et alの“Particle separation and concentration control for digital microfluidic systems”でも同様に使用され、基板上部に疎水性材料の層を堆積した後、液体に関する表面の濡れ性を増加するのに使用される化学物質、表面活性剤を含む光感受性樹脂の層が堆積される。この技術は、特に、疎水性材料の最終的な汚染の問題、及びその結果として液体の移動に有利なこの材料の性能の低減の問題を提示する。第2の技術(図6)において、基板上部への疎水性材料層の堆積の後、及び光感受性樹脂の堆積の前、その疎水的性質を変えるため、疎水性材料の層は最初にプラズマ法による表面修飾を受けるが、これは層の疎水性を低減することを意味する。この技術は、疎水性材料の表面特性を最終的に変化させる問題も提示する。
【0012】
そのような技術で、形成される開口部、及びその結果の親水性領域のどちらも、疎水性の堆積で可能な、十分明瞭ではなく、及び精密ではなく、その結果、化学的に修飾された領域の生成に不適切で、または疎水性領域はそれらの性質を変化させられ、及び疎水性が低減され、結果として液体移動に関する不安定性につながる。同様の説明が、輸送される液体に関して非濡れ性である層内での濡れ領域の生成にこれらの技術を応用する場合について適用される。
【特許文献1】米国特許第6565727号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って、輸送される液体に関して非濡れ性の輸送経路を部分的に濡れ性にするために使用され得る方法に関する要求があり、液滴を輸送する性能が保持されるように、特に液体が水を含む溶液であるときには部分的に親水性であり、一方で輸送の間の化学処理または液滴との相互作用を同様に可能にする。
【0014】
より一般的には、前述の欠点、特に移動の最適化及び最適化された移動経路の製造、を克服するために使用可能な信頼性ある溶液への必要性が存在する。
【0015】
従って、本発明の目的は、これらの欠点を克服することである。この目的を達成するために、本発明は、第1の局面では、エレクトロウェッティング面による移動における液体の取り扱いのための装置に関し、それはエレクトロウェッティング経路による少なくとも一つの移動を含み、液滴の化学的処理または液滴との相互作用を、その輸送と同時に、可能にする。
【0016】
移動経路は、少なくとも二つの、交互嵌合電極(interdigitated electrodes)を含み、それらは電気的に絶縁された基板上に配置され、絶縁誘電体層によって覆われる。この絶縁基板、電極、及び絶縁誘電体基板のアセンブリは、操作される液滴に関して部分的に濡れ性である層で覆われる。
【課題を解決するための手段】
【0017】
水を含む液滴の取り扱いに関する実施形態において、部分的に濡れ性の層とは結果的に部分的に親水性の層である。
【0018】
記述のリマインダのために、及び記述を簡潔にするために、我々は、操作される液滴に関して各々非濡れ性、部分的に濡れ性、または濡れ性である層または材料を意味するために、各々非濡れ性、部分的に濡れ性、または濡れ性である層または材料という。
【0019】
他の実施形態では、本発明の装置は、第1の電極から独立した少なくとも一つの対向電極を含む。この対向電極は、部分的に濡れ性の層の上部、下部または内部に配置されるアース線であってよい。
【0020】
ある実施形態は、前述の実施形態と組み合わせてもよく、装置は、輸送される液体と非混和性であり、電気的に絶縁性の流体によって満たされることが意図された空間が第1及び第2経路の間に形成されるように、第1経路と反対側に配置され且つ第1経路と独立している第2経路を含み、非濡れ性層を含む第2経路が結果として形成された前記空間と直接接触する。この第2経路の非濡れ性層は、部分的に濡れ性であってよい。この非濡れ性層は、電気的に絶縁性、半導体性、または導電性のどれかである上部層によって覆われてもよい。
【0021】
他の実施形態では、第2経路は、非濡れ性層と上部層との間に配置された一つ以上の対向電極を含む。それは、前記非濡れ性層と前記対向電極との間に配置されるであろう絶縁誘電体層も同様に含んでよい。
【0022】
これら装置の実施形態と組み合わせてもよいが、第1経路及び/または第2経路の部分的濡れ性層は、非濡れ性領域及び濡れ性領域を含み、濡れ性領域は反応性機能化領域である。
【0023】
他の実施形態では、面内の液滴を取り扱うための本発明の装置は、輸送される液滴と非混和性である電気的に絶縁性の流体によって満たされることが意図された空間によって分離された二つの経路を含む。第1経路は、少なくとも二つの交互嵌合電極が上部に配置された層、または電気的に絶縁性の基板を含む。このアセンブリ上に非濡れ性層が位置する。第2経路は、部分的に濡れ性の層を含む。第1経路の及び/または第2経路の前記部分的に濡れ性の層は、非濡れ性領域及び濡れ性領域を含み、濡れ性領域は反応性機能化領域である。
【0024】
この実施形態では、第1経路は、前記電極と前記非濡れ性層との間に配置された絶縁性誘電体層を含んでもよい。この実施形態の装置は、非濡れ性層の上部、下部または内部に挿入されて配置されたアース線を含んでよい。
【0025】
ある実施形態では、第2経路は、電気的に絶縁性の、半導体の、または導電性の上部層を含む。
【0026】
装置に関するこれら実施形態の各々と組み合わせるとき、第1経路の電気的に絶縁性の基板は、好ましくは透明であり、例えばガラス基板のようなものである。
【0027】
前述の一つ以上の実施形態において、濡れ性領域は好ましくは生化学的に機能化され、反応性である。
【0028】
これらの濡れ性領域は、好ましくは非濡れ性領域の開口部である。非濡れ性層及び/または部分的な濡れ性層の非濡れ性領域を構成する非濡れ性材料は、好ましくはテトラフルオロエチレンポリマーである。
【0029】
従って、本発明の装置は、化学的に機能化された領域を通じてその経路で液滴に化学的に作用する一方で、エレクトロウェッティングを用いて、単一の経路上でまたは二つの対向する経路の間で、対向電極を使用して、または対向電極を使用せずに、平面上で液滴を輸送することによって、液滴のハンドリングを有利に可能にする。マイクロ流体工学における前述の制限を考慮する一方で、前記所望される最適化が達成される、すなわち、輸送の間、不純物の混入、及び高価且つ非常に少量体積であるサンプルの損失を回避するため、マイクロシステムにおいて後の分析のための予備処理を低減する。
【0030】
第2の局面によると、本発明は前述の装置を製造する方法に関し、第1または第2経路の部分的に濡れ性を有する層の生成は、金属にパターン形成するためマイクロ電子工学において使用される”剥離(lift off)”として知られる技術に由来する。この通常知られる剥離技術は最終段階において非濡れ性層の堆積を可能にし、その結果有害な表面処理を回避するけれども、これはそのような非濡れ性材料、特にテトラフルオロエチレンポリマーのような疎水性材料、におけるパターン形成に適切な技術ではない。なぜなら、この技術では非濡れ性材料内で明瞭且つ厳密な濡れ性領域の形成が可能ではないためである。従って、本発明は、この第2の局面による、前述の装置の製造方法に関し、第1のまたは第2経路の部分的に濡れ性の層の形成が、以下の段階を含む:基板上部に光感受性材料を堆積することによる光感受性材料のマスクの形成、その後のフォトリソグラフィ、及びその後の光感受性材料の現像、マスク上部への非濡れ性材料の堆積、溶解前の少なくとも一つのアニーリング処理、マスクの溶解、及び溶解後の少なくとも一つのアニーリング処理。
【0031】
ある実施形態では、溶解前のアニーリング処理の温度は、溶解後のアニーリング処理の温度よりも低い。
【0032】
他の実施形態では、溶解前の第1のアニーリング処理の後、第1のアニーリング処理における温度よりも高い温度で、もう一つの他のアニーリング処理が続いて行なわれる。
【0033】
他の実施形態は、前述の実施形態と組み合わせてよく、溶解後の第1のアニーリング処理の後に、第1のアニーリング処理の温度より高い温度で、少なくとも一つの他のアニーリング処理が行なわれる。
【0034】
マスクの溶解の後に、すすぎ工程が行なわれてよい。
【0035】
他の実施形態において、堆積された非濡れ性材料はテトラフルオロエチレンポリマーである。
【0036】
結果的に、本発明の方法は、明瞭且つ厳密な、化学的機能化に適した、濡れ性領域を含む、及び、液滴の輸送に必要な、強い非濡れ性を保持する非濡れ性領域を含む、部分的に濡れ性の層の生成を有利に可能にする。実は、非濡れ性材料の層は、最終段階で堆積され、表面処理はされず、結果としてその表面特性に変化を受けない。
【0037】
本発明は、第三の局面では、最終的に本発明による少なくとも一つの液滴取り扱い装置と組み合わされた少なくとも一つのサンプル調製手段を含み、及び、言及されたように、少なくとも一つの分析手段と連結される、サンプル液体のマイクロ流体工学分析のためのシステムに関する。
【0038】
調製手法は、好ましくは一つ以上のローディングリザーバーまたはドックを含む。
【0039】
分析手法は、好ましくは、同様に質量分析計、蛍光検出器、または、UVあるいはIR発光の検出器である。
【0040】
本発明によるシステムは、通常手動で実施され、マイクロラボラトリ操作として知られる、それ自身が一つ以上の実験操作を含むマイクロシステム内部に統合されてよい。
【0041】
その結果、本発明によるシステムは、サンプルの第1の調製と、その後の検量されたマイクロ体積の移動による分析器へのそれらの輸送の後、マイクロラボラトリに組み込まれた調製及び輸送のタスクを自動化することによって、液体サンプルの分析を有利に可能とする。それは、結果的に、反応時間を低減するのと同様に、不純物混入の危険性及びサンプルの材料損失の低減を、有利に可能にする。
【0042】
本発明の他の特徴及び利点は、非制限的な例示によって提供される、及び以下の添付された図に関して提供される、方法の、及び装置の形成に関する好ましい実施形態に従う記載を読むことでより明瞭に、及びより完全になるだろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
図2aから2nにおいて、装置は基板1に少なくとも一つの経路を含み、好ましくは(必要ではないが)透明であり、例えばPyrexである。この基板1上には、交互嵌合電極2が配置される。交互嵌合電極の概念は、後に図3及び4を参照してより詳細に記述される。
【0044】
これらの電極2の上に、例えば酸化物またはポリマーからなる絶縁性誘電体層3が配置される。この電気的に絶縁性の層3の上に非濡れ性層4が配置され、非濡れ性層4は非濡れ性材料4内の濡れ性開口部5の生成方法を用いて部分的に濡れ性にされる。この方法は、少し後で図7を参照してより詳細に記述される。
【0045】
図2aから2dの実施形態において、装置は層1、2、3及び4からなる単一の経路を含む。図2aの装置は、対向電極を必要としないエレクトロウェッティングによる移動の実行を可能にする。この移動は、図3を参照して後に説明される。図2bの装置は、部分的に濡れ性の層4上に配置された(図2b)アース線6の形態で、部分的に濡れ性の層4に挿入され該層に覆われない形態で(図2c)、または部分的に濡れ性の層4に挿入され該層に覆われた形態で(図2d)、各々対向電極を有する。それらの部分に関して、図2bから2dの装置は、アース線を対向電極として、エレクトロウェッティングによる移動の実行を可能にする。この移動については、図4を参照して後に説明される。
【0046】
図2e以降の図は、電気的に絶縁性であるか、または電気的に半導体であるか、または電気的に導電性であるか、のうちどれであってもよい上部層8によって覆われた非濡れ性層7から形成された、第2経路が追加された実施形態を示す。この第2経路は、輸送される液滴とは非混和性である、電気的に絶縁性の流体で満たされることが意図された移動空間10を保持するため使用されるスペーサー9を使用して、第1経路に関連して配置される。
【0047】
エレクトロウェッティングによる移動を達成するために、空間10を満たしている流体は実際には電気的に絶縁性でなくてはならない。加えて、輸送される液滴と相互作用しないために、流体は実際には液体と非混和性でなくてはならない。それは例えば、液滴が水溶液である場合には、空気または油であってよい。
【0048】
特に、図2fから2hは各々、前述のように第2経路が追加された、図2bから2dの装置に基づく実施形態を示す。
【0049】
図2iの装置の実施形態において、第2経路は同様に、非濡れ性層7と上部層8との間に挿入された一つ以上の対向電極11を含む。従って、図2fから2hの装置とは対照的に、アース線はない。なぜなら、対向電極は第2経路内に存在するためである。それにもかかわらず、移動方法は、図2fから2hの方法と同じである。
【0050】
図2jから2lの実施形態(液滴の移動の方向に垂直な部分にみられる)は、図2fから2hの実施形態から、各々、及び直接得られ、ただ第2経路の非濡れ性層7が、非濡れ性材料7に濡れ性開口部5を生成する方法を用いて部分的に濡れ性にされることのみが差異であり、図7を参照して後に記述される。
【0051】
図2mは、図2eで前述された実施形態に基づく実施形態を記述し、ただ第2経路の非濡れ性層7が、非濡れ性材料7において濡れ性開口部5を生成するための方法によって部分的に濡れ性にされることのみが差異であり、図7を参照して後に記述される。
【0052】
一方で、図2nの実施形態は図2iの実施形態から導かれ、ただ、第2経路の非濡れ性層7が、図7を参照して後に記述される方法に従って非濡れ性層7に濡れ性開口部5を生成することによって部分的に濡れ性にされること、及び、対向電極11との相互作用なしに、これらの濡れ性開口部5の生化学的な機能化を可能にするために、第1経路内に存在するのと同様な絶縁誘電体層12が部分的に濡れ性の層7と対向電極11との間に挿入されたこと、の二点のみが差異である。
【0053】
図2oに記載される実施形態は、二つの経路に関する。第1経路を構成する非濡れ性層4は部分的に濡れ性ではなく、この非濡れ性層4内に生成される濡れ性開口部が存在せず、前述の実施形態の第1経路とは異なる。加えて、この実施形態では、非濡れ性層4はそれ自身が電気的に絶縁である場合、交互嵌合電極2と非濡れ性層4との間に絶縁性誘電体層を必要としない。これは、特に疎水性層に関する場合であり、材料としてはテトラフルオロエチレンポリマー等である。しかしながら、実際上は、そのような材料は、層の厚さが十分である場合(厚みがマイクロメートルのオーダー)のみ、電気的に絶縁である。加えて、図2oの場合で非濡れ性層4の厚みが不十分であるときには、交互嵌合電極2の層と非濡れ性層4との間に、他の図の層3と同じタイプの絶縁誘電体層を挿入することが可能である。
【0054】
非濡れ性層4上に、対向電極として働くアース線6が配置される。この実施形態において、第2経路は図2jから2mの実施形態におけるものと同じである。
【0055】
図2p及び2qの各実施形態において、非濡れ性層4は開口部5を持たないので部分的に濡れ性ではない。その結果、これらの実施形態は、図2kから2lの実施形態に各々由来し、前述の差異(図2kから2lの実施形態は層4は部分的に濡れ性であるのに対して、層4が全て非濡れ性である)を有する。
【0056】
最終的に、図2rの実施形態は、図2a、2e及び2mの移動方法を利用し、これは対向電極を使用しないことを意味し、図2oから2pの実施形態にあるように、濡れ性開口部5が存在して部分的に濡れ性である第2経路に非濡れ性層7を有し、第1経路内の非濡れ性層4は、濡れ性開口部を持たず、完全に非濡れ性である。加えて、図2oの実施形態のように、この実施形態は、非濡れ性層4がそれ自身電気的に絶縁性である場合、特に疎水性層、例えばテトラフルオロエチレンポリマー等である場合において、交互嵌合電極2と非濡れ性層4との間に絶縁誘電体層を必要としない。しかしながら、実際的に、そのような材料は、層の厚みが十分(厚みのオーダーはマイクロメートル)である場合にのみ、電気的に絶縁である。加えて、非濡れ性層4の厚みが不十分である図2rの場合、交互嵌合電極の層2と非濡れ性層4との間に、他の図における層3と同じタイプの絶縁誘電体層を挿入することが可能である。
【0057】
図3は、実施形態による装置の経路上の液滴の移動を概略的に示す。この図は、二つの部分に分けられる。上の部分(図A、B及びC)において、単純化及び説明を容易にするように、装置は、上方から、及び部分的に表現され、液滴(15)と電極1、2、3及び4との間に配置された、非濡れ性または部分的に濡れ性の層、または誘電体絶縁層のどれも示されていない。下の部分(図A’、B’及びC’)において、装置は、液滴の移動の方向の横からの部分で表現される。
【0058】
より詳細には、前記装置は図2aと同じタイプのものであり、それは単一の経路を有することを意味する。しかしながら、液滴の移動に関する後の説明は、図2a、2e、2m及び2rの実施例に対してより一般的に適用可能であり、交互嵌合電極を有する経路上の移動を意味し、対向電極を持たず、また第2の上部平面を有してもよい。
【0059】
従って、装置は、電気的に絶縁であり、透明であってよい基板10の上に配置された幾つかの電極(1、2、3、4)を必要とする。交互嵌合電極の層上には、誘電体絶縁層11及び非濡れ性層12が配置される。この非濡れ性層12は、様々な配置に従って(関連する図2参照)部分的に濡れ性であってよく、このことは移動に関する以下の説明を変更しない。液滴15は最初は電極2上にある(段階A)。電極3と、電極1、2及び4との間のポテンシャルの差異を生成することによって、液滴は電極3上部へと移動する(段階B)。それを電極4上部に移動するために、ポテンシャルの差異は電極4と電極1、2及び3との間に生成される。等々。
【0060】
図4は他の実施形態による装置の経路上の液滴の移動を概略的に示す。ここでも、図は二つの部分に分かれている。上の部分(図A、B及びC)において、簡単化のために、図3に関して説明を容易にするために、装置の表現は上方から、及び部分的であり、図において、液滴15と、電極1、2、3、及び4との間に配置された、非濡れ性または部分的に濡れ性の層も、誘電体絶縁層も示されない。下の部分(図A’、B’及びC’)において、装置は、液滴の移動方向に対して横からの部分で表される。
【0061】
より詳細には、示された装置は、図2bで前述されたように、単一の経路及び対向電極としてのアース線を有する装置に対応する。しかしながら、この装置上の液滴の移動に関する以後の説明は、同様に図2c、2d、2f、2g、2h、2j、2k、2l、2o、2p及び2qの場合にも同様に適用可能である。
【0062】
前記装置は、電気的に絶縁の、透明であってよい基板10の上に配置された交互嵌合電極(1、2、3、4)の層を含む。この電極層の上には、誘電体絶縁層11が配置される。この誘電体絶縁層11の上には、非濡れ性層12が配置される。この層は様々な配置に依存して(図2参照)、部分的に濡れ性であってよい。この非濡れ性層12(部分的に濡れ性であってよい)の上に、アース電極アース線が配置される。
【0063】
液滴15は初期には電極2の上にある(段階A)。電極3と、電極1、2及び4と、アース電極との間にポテンシャルの差異を生成することによって、液滴は電極3上部へ移動する(段階B)。液滴を電極4上部に移動するために、電極4と、電極1、2及び3と、アース電極との間にポテンシャルの差異が生成されるなどする。
【0064】
アース電極またはアース線は、上部平面(図4i及び4nの場合)内に配置される対向電極によって置き換えられ、図4に関する前述の説明がなお適用される。
【0065】
本発明の装置の経路の一つの非濡れ性層を部分的に濡れ性にするのに使用される方法は、図5及び6に関する前述の設計を参照し、図7を参照して記述される。
【0066】
図5は、非濡れ性材料に開口部を生成し、その結果表面活性剤を用いる従来のフォトリソグラフィック技術を用いてそれを部分的に濡れ性にする方法の段階を概略的に表す。段階(a)において、非濡れ性材料2の層は、基板1上に堆積される。段階(b)において、表面活性剤を含む樹脂3の層が非濡れ性層2の上に堆積される。表面活性剤は、樹脂に関連して非濡れ性層に対する濡れ性を増加するために、その結果としてこの層への樹脂の付着を強くするために使用される。段階(c)において、フォトリソグラフィック段階に適当である層3はUV放射にさらされる。もしも前記樹脂による層3がポジティブならば、UV放射は露光された領域の高分子の破壊につながり、これらの領域の、段階(d)で使用される現像液に対する溶解度を増加させる。その一方で、対照的に覆われていない部分は重合される。これが、結果的に現像段階(d)において起こることである。樹脂の現像は、露出された非濡れ性材料、結果的に非濡れ性層2における領域または開口部4の外見への強い作用を伴う(段階(e))。この技術は、樹脂中の表面活性剤の使用に起因して、非濡れ性材料の表面特性の明確な変更により達成される。
【0067】
図6は、従来のフォトリソグラフィックプラズマ技術を用いた、非濡れ性材料内の開口部の生成に関する方法の段階を概略的に表す。この技術は、樹脂層の堆積前に、非濡れ性層2がプラズマ−アルゴン放射(段階(b))を受けることからなる相補的な段階を含む点において、前述のものとは異なる。前述の技術(図5)では、この役割を担うのは樹脂中の表面活性剤の存在であるのに対して、非濡れ性層2の表面特性を変更するのはこの放射である。以後の段階(c)、(d)、(e)及び(f)は、図5の段階(b)、(c)、(d)及び(e)と各々同じである。結論は、表面活性剤を有する従来のフォトリソグラフィック技術に関するものと同じであり、すなわち非濡れ性層2の表面特性の明確な変更であってよい。
【0068】
図7に関連して記述される本発明の方法は、結果的に、前述の装置の一つ以上の経路の製造に関する方法であって、該方法は部分的に濡れ性の層の生成が、第1に、基板1上部へのこの材料2の層の堆積による光感受性材料のマスクの生成(段階(a))、その後のフォトリソグラフィの実施(段階(b))、及び光感受性材料の現像(段階(c))の実施、に関する段階を含む。図7に記述された実施形態において、ネガティブ樹脂、UV放射が結果的に覆われていない領域の重合を起こすことを意味する、が光感受性樹脂として使用され、現像液内で露出されない領域の溶解度の増大につながる。結果的に、段階(b)において覆われていた領域が段階(c)で残存しており、数字の2で表示されているのに対して、それは段階(b)において露出されず、段階(c)で除かれる領域である。ネガティブ樹脂の選択は、本発明をどのようにも制限することがない。本発明の方法の機能化は、ポジティブ樹脂の使用におけるものと全く同じである。
【0069】
段階(c)の後に、非濡れ性材料3の層の堆積に関する段階(d)が実施される。
【0070】
フォトリソグラフィック段階に関する例によると、以下のパラメータで樹脂を使用することが可能である。
−樹脂AZ4562
−AZ351B現像液
【0071】
非濡れ性材料3の堆積に関する段階(d)の後に、第1のアニーリング段階が行なわれる。選択された材料(例えば、テトラフルオロエチレンポリマー)に依存して、アニーリングプロセスは50℃であってよく、5分間続いてよい。好ましくは、しかし必要なことではないが、このアニーリングプロセスの後に、他の相補的なアニーリングプロセスが行なわれる。この第2のアニーリングプロセスはその後温度110℃で5分間実行されてよい。テトラフルオロエチレンポリマー等の疎水性ポリマーの特別な場合には、この段階で材料には殆ど溶媒は残らない。しかしながら、第2のアニーリング段階は、樹脂マスク2の溶解(段階(e))後に必要とされる。実は、疎水材料のアニーリング温度において、樹脂は重合し、その結果除去を難しくする。この結果として、基板上の樹脂の跡が残る可能性がある。これらの跡は、以下の溶解段階の間除去が困難または不可能でさえある可能性があり、これは部分的な濡れ性層(水に関する濡れ性の場合には部分的に親水性)の表面特性を変える可能性がある。開口部は完全に非濡れ性(または水に関する非濡れ性である疎水性)ではなくてよく、開口されていない領域は完全に非濡れ性(疎水性)ではなくてよい。これは、第2のアニーリング段階を進行する前に、例えばアセトン中で、例えば30から40秒間、樹脂がまず溶解されるからである。好ましくは、必要なことではないが、この溶解段階の後にすすぎの工程が、例えばアルコールで行なわれる。
【0072】
最終的に、第2のアニーリング段階が、例えば170℃(選択される材料による)、5分間において実施され、その結果、疎水性材料内に存在する可能性があるどのような溶媒であっても、完全に除かれる。均一な表面及び非濡れ性材料の基板上の付着が最大である状態を得るために、他の相補的なアニーリングプロセス、例えば330℃で15分間、は効果的でありうる。
【0073】
その結果、本発明の方法は、非濡れ性材料における部分的な濡れ性層の生成を有利に可能にする。この結果は、それらが濡れ性領域になる、化学的または生化学的機能化に適当な、非濡れ性材料における開口部、の生成によって達成される。開口していない領域は完全に非濡れ性のままであり、その結果、液滴の輸送に必要とされる、強い非濡れ性を保持する。特に、前述の設計と対比して、非濡れ性材料の層が前記方法の最後の段階で堆積されるという事実は、この材料はそのような表面処理(表面活性剤、またはプラズマ−アルゴンを用いる技術)にさらされないことを意味する。
【0074】
従って、本発明の装置は、前述のように、非濡れ性層内の濡れ性開口部の生成によって、部分的に濡れ性にされた少なくとも一つの層を含む。その後操作される液滴と反応させる(図9)ために、これらの濡れ性領域を化学的に活性化及び機能化(図8)することは、可能である。その結果、前述のように、機能化を可能にする薬剤を含む液滴を使用して機能化されていない領域を活性化するために、液滴の移動に関する原理が使用される。
【0075】
特に図8(図3及び4の上の部分と同様の表現方法で、上方から部分的に示したものであって、交互嵌合電極と液滴との間の、絶縁性の誘電体層及び非濡れ性層が各々ないことを意味する)において、機能化15を可能にする薬剤を含む液滴が、電極1からスタートして、機能化領域5上部を電極2に移動し、領域5を化学的に活性化及び機能化した後に、電極3に到達することがわかる。
【0076】
図9(図3及び4の上部部分と同様の表現方法で、上方から部分的に示したものであって、交互嵌合電極と液滴との間の、絶縁性の誘電体層及び非濡れ性層が各々ないことを意味する)において、如何にして、経路上を移動する液滴15が、第1に電極1上に位置し、その後、その上部に機能化された領域5を有する電極2に進み、機能化領域と反応した後、電極3に到達し、変化する、ことがわかる。
【0077】
図10は本発明によるシステムの実施形態を概略的に表す。システムは、分析される液体サンプルの調製のための一つ以上の手段1、本発明による液滴を取り扱うための、前述した一つ以上の装置2、及び出口での分析に関する一つ以上の手段3を含む。調製手段1は、例えば一つ以上のローディングリザーバーまたはドックを含んでよい。分析手段3は、例えば質量分析計、蛍光検出器、またはUV光検出器を含んでよい。本発明による装置2、本発明の心臓部、は、上流に調製手段1、及び下流に分析手段3を連結される。
【0078】
本発明によるシステムは、従って、それ自身が、通常手動で実施されるラボラトリオペレーションを含む、一つ以上のマイクロシステム内部に統合されてよい
【0079】
機能化の例が、Pyrexの基板を含む本発明の装置の実施例に基づき、ニッケルであって厚みが約100ナノメータの交互嵌合電極、遠心分離によって堆積されたSU8樹脂の約1マイクロメータの層、及び誘電体絶縁層を有して、ここで記述される。最終的に、装置は、前述の樹脂層上に遠心分離によって堆積されるテトラフルオロエチレンポリマーの疎水性層を含む。
【0080】
[親和性リアクターの例]
疎水性層で覆われていない領域は、ストレプトアビジングラフト化NH担体のような、表面を反応性表面に変換することを意図された表面処理を受ける。
【0081】
従って、そのような機能化された領域を含むこのような装置で、例えば蛋白質を含み、電極の経路の機能化領域上を移動する液滴は、それより前の機能化の際グラフト化された表面と親和性を有する、その興味ある分子(例えばビオチン等の蛋白質)が、これらの表面上部に固定されることを見出す。化学反応の終了後、液滴は装置中の経路を進む。その後、これらの領域の特別の混合物(例えば変性バッファ混合物)の経路は、興味ある分子を自由にして(例えば、非共有相互作用の破壊によって)、それに沿って分子を引き付ける。そのような装置は、結果的に、興味ある分子を分離し、識別するために使用される。
【0082】
[消化(digestion)リアクターの例]
装置において、疎水性層によって覆われていない領域は、それらを、例えばトリプシンでグラフト化されたNH単体等、反応性の表面へと変換することを目的として、表面処理される。
【0083】
その結果、そのように機能化された領域を有するそのような装置において、電極の経路内を移動する液滴は、機能化領域で動けなくされ、興味ある分子(例えば、蛋白質)はグラフト化された表面と反応する。そのような反応の結果は、分子を切断することである(例えば、トリプシン消化により得られたペプチド)。その後、液滴は装置内のその経路を進行する。従って、そのような装置は、質量分光計による分析の目的で、前もって特定の酵素で切断することにより、例えば長鎖の分子の分析を可能にする。
【0084】
従って、本発明の装置、方法、及びシステムは、統合に容易に役立つ構造であり、上流または下流において、他の相補的な機能を有するような、マイクロ液滴を一つの機能化領域からもう一方へ移動することが意図されたマイクロシステムの基本的な要素の実施を可能にする。従って、連鎖及び実施される生化学的操作の性質によってのみお互いに異なる、特別なマイクロシステムを設計することを可能にする。
【0085】
これまでの記述は全て、例示を目的として与えられたものであって、本発明をどのようにも制限しない。特に、非濡れ性層、または部分的な濡れ性層に関してテトラフルオロエチレンポリマーの材料を選択することは、本発明を制限しない。テトラフルオロエチレンポリマーは、それが実際に非濡れ性であるという意味で適切な選択であり、特に、これのみではないが、水に関連して、結果的に疎水性である。より一般的には、通常双方に互換性を持つ(bicompatible)非濡れ性材料を求める(輸送されるどのような材料にも吸着せず、輸送される材料とは混合せず、化学反応を引き起こすことなく、材料にまつわりつかない)。従って、それは前述の説明に鑑みて、中性であるべきで、その表面特性の一様性を示す。
【0086】
同様に、基板がシリコンであるか、またはPyrexであるかの選択は、本発明を制限しない。これは、本発明の装置の製造方法の文脈において、ポジティブまたはネガティブ樹脂の選択に関する場合も同様である。さらに本発明の装置の製造方法の文脈において、前記方法のアニーリング段階の温度及び時間は本発明を制限せず、それらは本質的に選択された非濡れ性材料の関数である。加えて、溶解にアセトンを使用し、すすぎにアルコールを使用することは、本発明を制限しない。溶解及びすすぎに適切な他の材料が使用されてよい。
【0087】
さらに、この記述において言及された、与えられた方向における移動の例示は本発明を制限しない。液滴が経路上のどこにでも移動されることを可能にする移動マトリックスを認識することは当然のこととして可能である。移動の選択は、電極の幾何学的配置に本質的に依存する。電極のマトリックスは、実はマトリックスタイプの移動を達成するために使用されてよい。同様に、この記述の例示の電極形状は、本発明をどのようにも制限しない。電極の交互嵌合を可能にする他のどのような形状も適切である。
【0088】
加えて、本発明のシステムのような統合されたシステムにおいて、移動装置上流の調製に関する例示の列記は完全なものではないことは自明であり、従って本発明を制限しない。これは、移動装置下流の分析に関する手段の列記にも適用される。
【0089】
最後に、この記述において与えられた、部分的に濡れ性の層の濡れ性領域の機能化の例、及びこれらの機能化された領域による液滴の処理の例示は、本発明を制限しない。一般的に、実は、それらが何である可能性があろうとも、分子の分離、ソーティング、または切断に興味が持たれる。化学的及び/または生化学的反応による他の取り扱いも同様に認識される。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】1aから1dは、液滴に関連して非濡れ性または濡れ性の性質を概略的に説明する。
【図2】2aから2rは、本発明による装置の異なる実施形態を概略的に示す(液滴の移動の方向に垂直な部分で示される)。
【図3】第1の実施形態による装置の経路上の液滴の移動を概略的に示す。
【図4】第2の実施形態による装置の経路上の液滴の移動を概略的に示す。
【図5】樹脂中の表面活性化剤を用いた従来のフォトリソグラフィック技術による非濡れ性材料における開口部の生成に関する方法を概略的に示す。
【図6】プラズマによる表面変換を用いた、従来のフォトリソグラフィック技術による非濡れ性材料における開口部の生成に関する方法を概略的に示す。
【図7】本発明による非濡れ性材料における開口部の生成に関する方法の実施形態を概略的に示す。
【図8】濡れ性領域の化学的機能化を概略的に説明する。
【図9】移動の間の、サンプルの液滴の化学処理を概略的に説明する。
【図10】本発明によるシステムの実施形態を概略的に示す。
【符号の説明】
【0091】
1 基板
2 交互嵌合電極
3 絶縁性誘電体層
4 非濡れ性層
5 開口部
【図1A】

【図1B】

【図1C】

【図1D】

【図2A】

【図2B】

【図2C】

【図2D】

【図2E】

【図2F】

【図2G】

【図2H】

【図2I】

【図2J】

【図2K】

【図2L】

【図2M】

【図2N】

【図2O】

【図2P】

【図2Q】

【図2R】

【図3A】

【図3B】

【図3C】


【図4A】

【図4B】

【図4C】


【図5A】

【図5B】

【図5C】

【図5D】

【図5E】

【図6A】

【図6B】

【図6C】

【図6D】

【図6E】

【図6F】

【図7A】

【図7B】

【図7C】

【図7D】

【図7E】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの経路を含み、
前記経路は、
上部表面を有する電気的に絶縁性の基板と、
上部表面及び底部表面を有し、前記底部表面が前記電気的に絶縁性の基板の上部表面上に配置される少なくとも二つの第1の導電性電極であって、前記第1の電極の各々が、他の前記第1の電極のうち少なくとも一つと交互に嵌合される、第1の導電性電極と、
底部表面及び上部表面を有し、その底部表面が前記第1の電極の前記上部表面上に配置される誘電体絶縁性層と、
底部表面及び上部表面を有し、その底部表面が前記誘電体絶縁層の前記上部表面上に配置される部分的に濡れ性の層と、を含むことを特徴とする、エレクトロウェッティング平面による移動において液滴を取り扱う装置。
【請求項2】
前記第1の電極から離隔した少なくとも一つの対向電極を含むことを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記離隔された対向電極が、前記部分的に濡れ性の層の上部表面の上に、若しくは下に、または内部に挿入されて配置されるアース線であることを特徴とする、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記第1経路と第2経路との間に空間が形成されるように、前記第1経路と向かい合い、且つ離隔した第2経路を含み、前記第2経路は非濡れ性層を含み、前記非濡れ性層の底部表面は前記空間の一つの面にあり、上部表面は他方の面にあることを特徴とする、請求項1から3の何れか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記第2経路の前記非濡れ性層が部分的に濡れ性であることを特徴とする、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記第2経路が、電気的に絶縁性、半導体性、または導電性であって、前記非濡れ性層の上部表面の一つの面上に配置される上部層を含むことを特徴とする、請求項4または5に記載の装置。
【請求項7】
前記第2経路が、前記非濡れ性層と前記上部層との間に配置された一つ以上の対向電極を含むことを特徴とする、請求項4から6の何れか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記第2経路が、前記非濡れ性層と前記対向電極との間に配置された誘電体絶縁性層を含むことを特徴とする、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記第1経路及び/または前記第2経路の前記部分的濡れ性層が、非濡れ性領域及び濡れ性領域を含み、前記濡れ性領域が反応性の機能化領域であることを特徴とする、請求項1から8の何れか一項に記載の装置。
【請求項10】
空間によって離隔された二つの経路を含み、
第1の経路は、
上部表面を有する電気的に絶縁性の基板と、
上部表面及び底部表面を有し、前記底部表面は前記電気的に絶縁性の基板の上部表面上に配置される少なくとも二つの第1の電極であって、前記第1の電極の各々が、他の前記第1の電極のうち少なくとも一つと交互に嵌合される、第1の電極と、
底部表面及び上部表面を有し、前記第1の電極の上部表面の一つの面上に配置される非濡れ性層とを含み、
第2の経路は、
上部表面及び底部表面を有する部分的に濡れ性の層を含み、
前記第1経路及び/または前記第2経路の前記部分的に濡れ性の層は、非濡れ性領域及び濡れ性領域を含み、前記濡れ性領域が反応性の機能化領域である、
エレクトロウェッティング平面により二つの位置の間で液滴を取り扱う装置。
【請求項11】
前記第1経路が、前記第1の電極の上部表面と前記非濡れ性層の底部表面との間に配置された誘電体絶縁性層を含むことを特徴とする、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記非濡れ性層の上部表面の上に、若しくは下に、または層内部に挿入して配置されるアース線を含むことを特徴とする、請求項10または11に記載の装置。
【請求項13】
前記第2経路が、電気的に絶縁性、導電性、または半導体性であって、前記非濡れ性層の上部表面の一つの面上に配置される層を含むことを特徴とする、請求項10から12の何れか一項に記載の装置。
【請求項14】
前記第1経路の前記電気的に絶縁性の基板が透明であることを特徴とする、請求項1から13の何れか一項に記載の装置。
【請求項15】
前記第1経路の前記電気的に絶縁性の基板がガラス基板であることを特徴とする、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記濡れ性領域が、非濡れ性領域内の開口部であることを特徴とする、請求項9から15の何れか一項に記載の装置。
【請求項17】
前記濡れ性領域が生化学的に機能化され反応性であることを特徴とする、請求項9から16の何れか一項に記載の装置。
【請求項18】
前記非濡れ性層及び/または前記部分的に濡れ性の層の非濡れ性領域が、水に関して非濡れ性である疎水性を有し、前記濡れ性層が水に関して濡れ性である親水性を有することを特徴とする、請求項1から17の何れか一項に記載の装置。
【請求項19】
前記非濡れ性層及び/または前記部分的に濡れ性の層の非濡れ性領域が、テトラフルオロエチレンエチレンポリマーであることを特徴とする、請求項1から18の何れか一項に記載の装置。
【請求項20】
前記第1経路または前記第2経路の前記部分的に濡れ性の層の生成が、
基板上部に光感受性材料を堆積することにより前記光感受性材料のマスクを形成し、その後フォトリソグラフィを行い、及びその後前記光感受性材料の現像を行なう段階と、
前記マスク上部への非濡れ性材料の堆積の段階と、
溶解前の少なくとも一つのアニーリング処理の段階と、
前記マスクの溶解の段階と、
前記溶解後の少なくとも一つのアニーリング処理の段階とを含む、請求項1から29の何れか一項に記載の装置の製造方法。
【請求項21】
溶解前の前記アニーリング段階におけるアニーリング温度が、溶解後の前記アニーリング段階のアニーリング温度よりも低いことを特徴とする、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記マスク上部への非濡れ性材料の堆積の段階が、テトラフルオロエチレンポリマーを堆積する段階であることを特徴とする、請求項20または21に記載の方法。
【請求項23】
少なくとも一つの出口を有する液体サンプルを調製する少なくとも一つの手段と、
前記調製手段の出口の一つにその入り口の一つが連結され、少なくとも一つの出口を有する、少なくとも一つの請求項1から19の何れか一項に記載の液滴取り扱い装置と、
その入り口の一つにより前記液滴取り扱い装置の出口の一つに連結された、少なくとも一つの分析手段を含むことを特徴とする、液体サンプルのマイクロ流体工学分析のためのシステム。
【請求項24】
前記調製方法が一つ以上のローディングリザーバーまたはドックを含むことを特徴とする、請求項23に記載のシステム。
【請求項25】
前記分析手段が、質量分析計、蛍光検出器、またはUV光検出器であることを特徴とする、請求項23または24に記載のシステム。
【請求項26】
マイクロラボラトリ内部に組み込まれることを特徴とする、請求項23から25の何れか一項に記載のシステム。

【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2008−502882(P2008−502882A)
【公表日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−514033(P2007−514033)
【出願日】平成17年6月6日(2005.6.6)
【国際出願番号】PCT/FR2005/001385
【国際公開番号】WO2006/003293
【国際公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.PYREX
【出願人】(595139163)ユニベールシテ・デ・スジャンス・エ・テクノロジー・ドゥ・リル (3)
【出願人】(500174661)サントル・ナショナル・ドゥ・ラ・レシェルシュ・サイエンティフィーク−セ・エン・エール・エス− (54)
【Fターム(参考)】