説明

生理活性物質を放出制御するマイクロペレット状組成物、その調製手順、および畜産領域での使用

本発明の対象となるのは、畜産学的な使用に供される放出制御組成物である。具体的には、本発明の対象は、制御された状態で含まれる生理活性物質を放出することができるマイクロペレットからなる組成物である。また、本発明は、畜産領域における前記組成物の使用のみならず、前記組成物の調製手順にも言及する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の対象となるのは、畜産学的な使用に供される放出制御組成物である。具体的には、本発明の対象は、制御された状態で含まれる生理活性物質を放出することができるマイクロペレットからなる組成物である。また、本発明は、畜産領域における前記組成物の使用のみならず、前記組成物の調製手順にも言及する。
【背景技術】
【0002】
健康状態や生産能力向上のために、補助食品に生理活性物質(以下、活性物質という)を使用することや、家畜の餌に添加物を添加することが知られている。
【0003】
こうした活性物質にはアミノ酸、ビタミン、酵素、タンパク質および炭水化物などの栄養素、プロバイオティック微生物、プレバイオティック食品、無機塩類、コリンおよびその誘導体などが含まれる。
【0004】
上述の物質のなかには、動物の飼育に用いられる食品中に既に通常含まれているものもある。しかし、食物に既存の前記活性物質を添加しても、欠乏状態や生産性の向上に対処するには不十分であり、また不適切である場合がある。
【0005】
栄養特性を有するこれらの活性物質は、配合製品(プレミックスや補完飼料)の調製により、動物に経口投与されるが、前記活性物質は媒質と機械的に混合されることで配合飼料中で「希釈化」され、こうして得られた製品は最終的な食品(飼料)にそのまま加えることができる。
【0006】
活性物質と前記活性物質を含む飼料は、腸に達する前に、動物の消化管の初期部分において、化学的・酵素的分解にさらされる。反すう動物(4つの消化部門を有する)の場合、食品が前胃(特に第一胃)を通過する時間が非常に長いこと、および第一胃には通過するほとんどの分子の分解に作用する微生物叢が存在すること、という2つの付随要因故に、特にこうした分解が激しい。
【0007】
第一胃微生物の微生物活動は、化学的に活性物質を変化させることがある。たとえばコリンは、元々の物質と比べ、栄養価が低いか、または著しく生物活性が低い物質に変換される。
【0008】
また、上述した活性物質を含有する配合製品は、その調製中にも分解が生じる。熱および/または蒸気圧を加えることによる凝集(ダイシングやペレット化)など技術的な処理段階に加えて、特に混合、包装、保管などの段階において分解を受ける。
【0009】
上述の難点を緩和するため、化学修飾されたポリビニルピロリドン、ポリアミド、セルロースなどのポリマーを使用することにより、胃の環境に対して抵抗力をもつpH感受性物質の膜で、畜産学上使用されるいくつかの活性物質をカプセル化、または被覆することが提案されている。
【0010】
この解決策には、合成ポリマーの使用によって非生理的物質を動物の食事に取り込むことになるという事実に加えて、製造コストが高いという難点がある。
【0011】
別の解決策として提案されているのが、植物起源の物質による動物腸内での放出制御により、畜産学上使用される生物活性物質を保護することである。
【0012】
この解決策では、生物活性物質を、腸に達する前に微生物叢や消化酵素によりなされる攻撃から十分に保護できるとは保証できない。
【0013】
ルーメンプロテクトされた(第一胃の生態系による分解から保護される状態)生物活性物質を含有するいくつかの製剤が市販されている。
【0014】
ルーメンプロテクトされた組成物は、実質的に分解されることなく、第一胃を通過して保護物質を第一胃以降に運び、活性物質を放出させる能力を有する。
【0015】
したがって、反すう動物に対し生物活性物質を効率的に提供するには、ルーメンプロテクトされた組成物またはルーメンバイパスによって、第一胃を通過させ、第四胃および/またはそれ以降の消化管内において保護活性物質を放出させなければならない。
【0016】
そのため、市販の組成物の難点を持たず、制御された状態で生理学的に含有される物質を放出可能な、畜産用組成物が依然必要とされている。
【0017】
さらに、無機媒質との混合に対する耐性や熱応力(ペレット化やダイシング)に対する耐性など、特定の機械的・構造的特性を有し、生理活性物質の放出制御が可能な組成物も依然必要とされている。
【発明の開示】
【0018】
第一の目的は、微生物叢や内因性酵素の合成に起因する分解を抑制するために、制御された状態で含有されている生理活性物質を放出する、畜産用の組成物を提供することである。
【0019】
第二の目的は、機械的・構造的分解に耐えうる配合製品の調製を可能にする化学的かつ物理的性質を有する、畜産用の放出制御組成物を提供することである。
【0020】
本出願人は、核および2層の外装被膜からなり、制御された状態で含有されている活性物質の放出を可能にするマイクロペレットの調製手順を完成させ、これらの目的、および以下の詳細な説明により明らかとなるその他の目的を達成した。
【0021】
上記マイクロペレットは、活性物質を部位特定的に放出制御して、反すう動物の場合は主として第四胃から小腸に至る第一胃以降の区域に運び、非分解状態で吸収させることができる。
【0022】
本発明の第一の対象は、添付の各請求項に記載された特性をもつ、畜産用の放出制御組成物である。
【0023】
本発明の第二の対象は、添付の各請求項に記載された特性をもつ、畜産用の放出制御組成物の調製手順である。
【0024】
さらに、本発明のもう一つの対象となるのが、添付の各請求項に記載された特性をもつ、畜産用の放出制御組成物の使用である。
【0025】
本発明は、以下、本明細書において、単に例示を前提とし、故に制限を与えない、いくつかの実施形態を用いて、詳細に説明される。
【0026】
(発明の説明)
本発明の対象となる組成物は、核およびこの核を覆う被膜からなるマイクロペレットで構成される。
【0027】
核は生理活性物質または活性成分(以下、活性物質と略称する)およびマトリクスからなる。
【0028】
マトリクスは、ペレットの形成を共に補助する結合物質、不活性成分およびフロー制御物質から選ばれる賦形剤からなる。
【0029】
外装被膜は、少なくとも8時間は第一胃内の条件下においても安定な撥水膜を形成する物質からなる第一の層、および80〜100℃の温度に耐える第二の耐衝撃層とを含む。
【0030】
核は1以上の活性物質からなり、一般的には固形状であり、かつ以下の加工段階、特に被覆工程を経ても原型を保ちうる十分な硬さである必要がある。
【0031】
本発明の文脈においては、「生理活性物質」という用語は、アミノ酸、ビタミン、酵素、タンパク質や炭水化物などの栄養素、プロバイオティック微生物、プレバイオティック食品、無機塩類、たとえば乳酸、フマル酸、クエン酸およびリンゴ酸などの酸混合物、コリンおよびたとえば塩化コリン、重酒石酸コリン、コリンの二水素化クエン酸塩、重炭酸コリン、硫酸コリン、水酸化コリンなどのコリン誘導体などの意味で用いられる。
【0032】
これらの活性物質は単独またはさまざまな重量比で混合されて使用される。
【0033】
好ましい一実施形態においては、活性物質は、メチオニン、コリン、塩化コリン、リジン、ビタミンC、ビタミンCアセテート、ビタミンE、ビタミンB、ビタミンPP、および乳酸、フマル酸、クエン酸並びにリンゴ酸からなる酸の混合物から選ばれる。
【0034】
調製手順には、活性物質が結合作用(以下、結合剤と略称する)を有する1以上の物質、および不活性物質と混合され、均一な混成混合物を得る段階が含まれる。
【0035】
混合段階は、混合、切断、および加熱設備を備えた容器内で行う。
【0036】
得られた混合物は高温で押出成形され、目的の形状およびサイズのマイクロペレットが得られる。ペレットは、被覆段階において、流動床の壁面への衝突に耐えうる十分な強度が必要とされる。また、ペレットを添加する飼料に対しペレット化の過程で圧力が加えられる可能性もあるため、ペレットは破砕にも耐える必要がある。
【0037】
マイクロペレットの耐衝撃性を評価するのに使われるパラメータは、金属板に粒子を落下させた際に生じる耐衝撃性である。粒子が耐えるべき高さの下限は、3mである。
【0038】
破砕強度は、これまでの評価から、圧力0.575N/mmを越えなくてはならないとされている。
【0039】
押出成形は、当業者に既知の押出成形機を用いて行われる。押出成形機は、供給槽と混合槽、処理に応じて温度勾配を持たせうる加熱機能を備えた複数のセクターを備えている。適切な混合および押出成形は、押出成形機の種類に応じて1以上のスクリューコンベヤーにより行われる。
【0040】
押出成形機の上部には、加熱機能を備えたダイ・プレートが備えられている。ダイ・プレートは所定の直径の複数の出口孔を有する。形状を変えたい場合にはダイ・プレートを交換すればよい。
【0041】
押出成形物は、ダイ・プレートの上部から40〜80℃の温度で出てくる。
その形状は、たとえば、円筒型、三角形、または菱形などとなる。
【0042】
ダイ・プレートからの出口で、組成物は、カッターによって切断される。マイクロペレットの長さは切断速度を変更することで調整される。
【0043】
マトリクスの形成に用いられる結合剤は、ゴム、セルロースおよびその誘導体、でんぷんおよびその誘導体、ワックスおよびその誘導体、ならびに脂肪およびその誘導体など、植物性または合成の無毒性物質からなる。
【0044】
有利には、カルナウバワックスや微結晶ワックスなどの植物性のワックスが使用される。
【0045】
好ましい実施形態において、結合剤としてカルナウバワックスと微結晶ワックスを重量比1:3〜3:1、好ましくは1:1で組み合わせる。あるいは、結合剤は、微結晶ワックスである。
【0046】
結合剤は、被膜によって与えられる性質とともに、ルーメンバイパスマイクロペレットとして必要な化学的・物理的性質を、マトリクスにもたらすため、その選択は非常に重要である。
【0047】
マトリクスの形成に用いられる不活性成分は、自由流動性物質であり、一般的にはケイ酸塩類、特に、コロイド状シリカ、非晶質合成シリカ、沈降シリカ、ナトリウムアルミニウムケイ酸、ケイ酸カルシウム、タルク、カオリン、疎水性合成ゼオライトなどの疎水性のケイ酸塩の分類に属する。
【0048】
脂肪性物質のためにBHT(ブチルヒドロキシトルエン)などの酸化防止剤を含む場合がある。
【0049】
活性物質を包むマトリクス(図1参照)は、純粋に機械的な機能を発揮するのみならず、活性物質の第一胃での放出を遅延させる機能ももつ。
【0050】
適切なサイズのペレットを形成した後、被覆段階に進み、被膜が施される。
【0051】
被膜は第一層および第二層からなる。
【0052】
第一層は、第一胃において少なくとも8時間は安定となる疎水性を有し、生理学的に許容できる物質により形成される。
【0053】
前記第一層を形成するこれらの疎水性物質は、炭素原子数12〜22の鎖をもち、かつ融点が40〜74℃の、脂肪、脂肪酸、硬化油、脂肪酸のモノグリセリドおよびジグリセリド、脂肪酸のエステル、脂肪アルコールからなる群から選ばれる。
【0054】
これらの疎水性物質は、ラウリン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ステアリン、硬化大豆油、硬化綿実油、硬化ヤシ油、硬化亜麻仁油、ナトリウムグリセリルモノステアリン酸、ナトリウムグリセリルジステアリン酸、ナトリウムグリセリルトリステアリン酸、ステアリン酸カルシウム(融点147〜149℃)、ステアリン酸マグネシウム(融点147〜149℃)、ステアリルアルコール、セチルステアリルアルコールから選ばれる。
【0055】
先述の疎水性物質は、上記の物質のうち融点が60〜64℃のものから選ばれる。
【0056】
有利には、疎水性物質は硬化ヤシ油および/または硬化大豆油から選ばれる。
【0057】


第二層は、機械的なストレス耐性があり、最大80℃まで加熱しても化学的・物理的性質を変化させずに保つことでき、生理学的に許容できる第二の疎水性物質(または混合物質)により形成される。
【0058】
前記第二層を形成する前記第二の疎水性物質は、微結晶ワックス、パラフィンワックス、植物性ワックスおよび融点が80〜100℃の合成ワックスからなる群から選ばれる。前記第二疎水性物質は、有利にはカルナウバワックスおよび/または微結晶ワックスから選ばれる。
【0059】
石油由来のワックスは天然ワックスであり、パラフィンワックス群、半結晶ワックス群および微結晶ワックス群の3種に分類できる。
【0060】
パラフィンワックスは主にアルカンからなる石油に由来する。
【0061】
微結晶ワックスは、アルカンのほかに、さまざまな割合で分岐飽和炭化水素および環状飽和炭化水素を含有する石油に由来する。
【0062】
半結晶ワックスはパラフィンワックスよりも多くの環状化合物および分岐化合物を含有するが、微結晶ワックスよりもその含有は少ない。
【0063】
分類システムは、ワックスの屈折率およびASTM D938で測定される凝固点に基づく。
【0064】

USP 26−NF 21によれば、微結晶ワックスは54〜102℃にわたる融点をもつ。
【0065】
本発明の対象となるマイクロペレットは、直径0.5〜5mm;好ましくは0.8〜1.2mm、および高さ0.5〜5mm;好ましくは0.8〜2.0mmの実質的に円筒形状を有する。
【0066】
マイクロペレットは押出成形の一般的な手法を利用して調製することができるが、好ましくはセクターを備えた自動調温式の二軸押出機が用いられる。セクターごとに温度を確認し変化させることが可能であるため、各種の結合剤を使用して活性物質および賦形剤に浸透させることができ、必要とされる機械的・構造的性質を備えたペレットの形成が可能となる。
【0067】
核の表面処理、すなわち第一層および第二層の形成は、「ホットメルトコーティング」という手法を用いて流動床内で行われる。
【0068】
非限定的例示として、5kgのパイロットシステムにおける被膜形成に関する例を、以下に挙げる。
【0069】
押出成形された2.5kgのマイクロペレットを容器内に入れる。容器を密閉し、空気および生成物の温度が40℃になるまで、6000/6500m/時間で空冷する。生成物の温度が所定温度に達したら、生成物の温度を40℃に保つよう気を付けながら、温度を105℃に保った硬化大豆油(HSO)の噴霧を開始する。1.2kgのHSOを30g/分の速度で噴霧する。この第一段階の終了時には、第一の被膜が形成される。
【0070】
HSOの噴霧が終了した直後に、温度を115℃に保ったカルナウバワックスの噴霧を開始する。このときも生成物の温度は40℃に保たれる。800gのカルナウバワックスを20g/分の速度で噴霧する。この第二段階の終了時には、第二の被膜が形成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0071】
本発明は、いくつかの実施形態を例示し説明されるが、これらの実施形態は単に例示的目的を有するに過ぎず、限定されるものではない。
【0072】
実施例1(dl−メチオニン)
平均径が0.4〜0.7mmのdl−メチオニン粉末820gを、カルナウバワックス60g、微結晶ワックス60g、コロイド状シリカ54gおよびステアリン酸マグネシウム6gと混合し、セクター温度を以下のように設定した押出成形機内を通過させる。
【0073】

【0074】
得られる顆粒は円筒型のマイクロペレット状であり、dl−メチオニン濃度は、ちょうど80%となる。この顆粒を、流動床内で硬化ヤシ油(第一の疎水物質)からなる第一層とカルナウバワックス(第二の疎水物質)からなる第二層で被覆し、組成物全体の重量に対して70%のdl−メチオニンを含有する最終生成物を得る。このとき、被覆材の総重量は140g(2層間の割合は6:4)である。in vitro放出の結果を表1に示す。
【0075】
実施例2(塩化コリン)
平均径が0.5〜1.0mmの塩化コリン結晶819gをカルナウバワックス60g、微結晶ワックス60g、コロイド状シリカ55gおよびステアリン酸マグネシウム6gと混合し、セクター温度を以下のように設定した押出成形機内を通過させる。
【0076】

【0077】
得られる顆粒は円筒型のマイクロペレット状であり、塩化コリン濃度はちょうど80%となる。この顆粒を、流動床内で硬化ヤシ油からなる第一層とカルナウバワックスからなる第二層で被覆し、組成物全体の重量に対して70%の塩化コリンを含有する最終生成物を得る。このとき、被覆材の総重量は140g(2層間の割合は6:4)である。in vitro放出の結果を表1に示す。
【表1】

【0078】
これらの実施例から、水溶性の高い塩化コリンは、水溶性の低いメチオニンを保護するよりもはるかに困難であることがわかる。
【0079】
実施例3(塩化コリン)
平均径が0.5〜1.0mmの塩化コリン結晶819gを、カルナウバワックス60g、微結晶ワックス60g、コロイド状シリカ55gおよびステアリン酸マグネシウム6gと混合し、セクター温度を以下のように設定した押出成形機内を通過させる。
【0080】

【0081】
得られる顆粒は円筒型のマイクロペレット状であり、塩化コリン濃度はちょうど80%となる。この顆粒を、流動床内で硬化ヤシ油からなる第一層とカルナウバワックスからなる第二層で被覆し、40%の塩化コリンを含有する最終生成物を得る。このとき、被覆材の総重量は1000g(2層間の割合は6:4)である。in vitro放出の結果を表2に示す。
【0082】
実施例4(塩化コリン)
平均径が0.5〜1.0mmの塩化コリン結晶819gをカルナウバワックス60g、微結晶ワックス60g、コロイド状シリカ55gおよびステアリン酸マグネシウム6gと混合し、セクター温度を以下のように設定した押出成形機内を通過させる。
【0083】

【0084】
得られる顆粒は円筒型のマイクロペレット状であり、塩化コリン濃度はちょうど80%となる。この顆粒を、流動床内で硬化大豆油からなる第一層とカルナウバワックスからなる第二層で被覆し、50%の塩化コリンを含有する最終生成物を得る。このとき、被覆材の総重量は600g(2層間の割合は6:4)である。in vitro放出の結果を表2に示す。
【表2】

【0085】
実施例5(l−リジン)
平均粒子径が0.2〜1.2mmのl−リジン粒状粉810gを、カルナウバワックス92g、微結晶ワックス92gおよびステアリン酸マグネシウム6gと混合し、セクター温度を以下のように設定した押出成形機内を通過させる。
【0086】

【0087】
得られる顆粒の塩酸l−リジン濃度はちょうど80%となる。この顆粒を、流動床内で硬化大豆油からなる第一層とカルナウバワックスからなる第二層で被覆し、70%の塩酸l−リジンを含有する最終生成物を得る。このとき、被覆材の総重量は140g(2層間の割合は6:4)である。in vitro放出の結果を表3に示す。
【0088】
実施例6(塩酸l−リジン)
平均粒子径が0.2〜1.2mmの塩酸l−リジン粒状粉860gを、微結晶ワックス134gおよびステアリン酸マグネシウム6gと混合し、セクター温度を以下のように設定した押出成形機内を通過させる。
【0089】

【0090】
得られる顆粒の塩酸l−リジン濃度はちょうど85%となる。この顆粒を、流動床内で硬化大豆油からなる第一層とカルナウバワックスからなる第二層で被覆し、60%の塩酸L−リジンを含有する最終生成物を得る。このとき、被覆材の総重量は400g(2層間の割合は6:4)である。in vitro放出の結果を表3に示す。
【0091】
実施例7(l−リジン)
平均粒子径が0.2〜1.2mmの塩酸l−リジン粒状粉810gを、微結晶ワックス184gおよびステアリン酸マグネシウム6gと混合し、セクター温度を以下のように設定した押出成形機内を通過させる。
【0092】

【0093】
得られる顆粒は円筒型のマイクロペレット状であり、は、塩酸l−リジン濃度がちょうど80%となる。この顆粒を、流動床内で硬化大豆油からなる第一層とカルナウバワックスからなる第二層で被覆し、50%の塩酸L−リジンを含有する最終生成物を得る。このとき、被覆材の総重量は600g(2層間の割合は6:4)である。in vitro放出の結果を表3に示す。
【表3】

【0094】
これらの実施例から、水溶性の高い塩酸リジンを保護するのも、非常に困難であることがわかる。
【0095】
実施例8(ビタミンC)
平均径が0.5mmのビタミンC結晶816gを、カルナウバワックス92g、微結晶ワックス90g、BHT2gおよびステアリン酸マグネシウム6gと混合し、セクター温度を以下のように設定した押出成形機内を通過させる。
【0096】

【0097】
得られる顆粒のビタミンC濃度はちょうど80%となる。この顆粒を、流動床内で硬化ヤシ油からなる第一層とカルナウバワックスからなる第二層で被覆し、70%のビタミンCを含有する最終生成物を得る。このとき、被覆材の総重量は140g(2層間の割合は6:4)である。in vitro放出の結果を表4に示す。
【0098】
実施例9(ビタミンC)
平均径が約0.5mmのビタミンC結晶816gを、カルナウバワックス92g、微結晶ワックス92gおよびステアリン酸マグネシウム6gと混合し、セクター温度を以下のように設定した押出成形機内を通過させる。
【0099】

【0100】
得られる顆粒は円筒型のマイクロペレット状であり、は、ビタミンC濃度がちょうど80%となる。この顆粒を、流動床内で硬化ヤシ油からなる第一層とカルナウバワックスからなる第二層で被覆し、50%のビタミンCを含有する最終生成物を得る。このとき、被覆材の総重量は600g(2層間の割合は6:4)である。in vitro放出の結果を表4に示す。
【表4】

【0101】
これらの実施例から、水溶性の高いビタミンCを保護することも極めて困難であることがわかる。
【0102】
実施例10(ビタミンAアセテート)
ビタミンAアセテート(2,100,000U.I./g)333.6gを、カルナウバワックス150g、微結晶ワックス314.4g、BHT2gおよびコロイド状シリカ200gと混合し、セクター温度を以下のように設定した押出成形機内を通過させる。
【0103】

【0104】
得られる顆粒のビタミンA濃度はちょうど700,000U.I./gとなる。この顆粒を、流動床内で硬化ヤシ油からなる第一層とカルナウバワックスからなる第二層で被覆し、500,000U.I./gのビタミンAを含有する最終生成物を得る。このとき、被覆材の総重量は400g(2層間の割合は3:7)である。in vitro放出の結果を表5に示す。
【0105】
実施例11(ビタミンEアセテート)
ビタミンEアセテート500gを、カルナウバワックス98g、微結晶ワックス200g、BHT2gおよびコロイド状シリカ200gと混合し、セクター温度を以下のように設定した押出成形機内を通過させる。
【0106】

【0107】
得られる顆粒のビタミンE濃度はちょうど50%となる。この顆粒を、流動床内で硬化ヤシ油からなる第一層とカルナウバワックスからなる第二層で被覆し、40%のビタミンEアセテートを含有する最終生成物を得る。このとき、被覆材の総重量は250g(2層間の割合は3:7)である。in vitro放出の結果を表5に示す。
【表5】

【0108】
実施例12(ビタミンB
平均径0.25mmのビタミンB816gを、カルナウバワックス40g、微結晶ワックス142gおよびステアリン酸マグネシウム6gと混合し、セクター温度を以下のように設定した押出成形機内を通過させる。
【0109】

【0110】
得られる顆粒のビタミンB濃度はちょうど80%となる。この顆粒を、流動床内で硬化ヤシ油からなる第一層とカルナウバワックスからなる第二層で被覆し、50%のビタミンBを含有する最終生成物を得る。このとき、被覆材の総重量は600g(2層間の割合は6:4)である。in vitro放出の結果を表6に示す。
【0111】
実施例13(ビタミンPP)
平均径0.600mmのニコチン酸(ビタミンPP)818gを、カルナウバワックス86g、微結晶ワックス90gおよびステアリン酸マグネシウム6gと混合し、セクター温度を以下のように設定した押出成形機内を通過させる。
【0112】

【0113】
得られる顆粒のビタミンPP濃度はちょうど80%となる。この顆粒を、流動床内で硬化大豆油からなる第一層とカルナウバワックスからなる第二層で被覆し、50%のビタミンPPを含有する最終生成物を得る。このとき、被覆材の総重量は600g(2層間の割合は6:4)である。in vitro放出の結果を表6に示す。
【表6】

【0114】
実施例14(酸混合物)
50%乳酸350g、フマル酸210g、クエン酸140gおよびリンゴ酸105gを、カルナウバワックス80g、微結晶ワックス110gおよびステアリン酸マグネシウム5gと混合し、セクター温度を以下のように設定した押出成形機内を通過させる。
【0115】

【0116】
得られる顆粒の酸濃度はちょうど63%となる。この顆粒を、流動床内で硬化大豆油からなる第一層とカルナウバワックスからなる第二層で被覆し、50%の酸を含有する最終生成物を得る。このとき、被覆材の総重量は260g(2層間の割合は6:4)である。in vitro放出の結果を表7に示す。
【表7】

【0117】
本発明の好ましい実施形態においては、マイクロペレット組成物は、配合製品(プレミックスまたは補助食品)を調製することにより、動物に経口投与される。組成物は媒質との機械的な混合により「希釈」される。得られる製品は、最終飼料にそのまま加えることができる。
【0118】
図2は、in vitro比較試験を示すグラフである。このグラフは、pH6のリン酸バッファー内での、活性成分(a.i.)塩化コリンの経時的な放出を示している:
- サンプル1: 本発明において説明され請求されているとおりの、二層の被覆が施され、押出成形された顆粒(塩化コリン50重量%);
- サンプル2: 噴霧凝結法を用いて成形された、非押出成形・非被覆顆粒。実際には、上述のように、塩化コリン(50重量%)を脂肪酸およびワックスと混合する。混合物は温度が20〜25℃の塔内部で噴霧される。この塔内で顆粒を冷まし、凝結させる。コリンは顆粒内に取り込まれる。
- サンプル3: 塩化コリン原物(98重量%)
グラフに示すように、押出成形も被覆も施されなかった類似の顆粒(サンプル2)と比較し、サンプル1はa.i.の放出を最も抑制している。
【図面の簡単な説明】
【0119】
図1は、本発明によるマイクロペレットの断面図を示す。
【0120】
図2は、本発明による顆粒からの活性成分の放出の経時的な割合を、先行技術の調製手順に従って得られた顆粒から同一の活性成分が放出される場合と比較し、グラフで示したものである。
【図1】

【図2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
生理活性物質を放出制御するペレット状組成物であって、
アミノ酸、ビタミン、酵素、タンパク質、炭水化物、プロバイオティック微生物、プレバイオティック食品、無機塩類、コリンおよびコリン誘導体、ならびに有機酸からなる群から選択される1以上の生理活性物質;および
カルナウバワックスおよび/または微結晶ワックスを含むマトリクスを含む核と、
炭素原子数12〜22の鎖をもち、かつ融点が40〜74℃の、脂肪、脂肪酸、硬化油、脂肪酸のモノグリセリドおよびジグリセリド、脂肪酸のエステル、脂肪アルコールからなる群から選択される第1の疎水性物質を含む、前記核を覆う第1層;
微結晶ワックス、パラフィンワックス、植物性ワックスおよび融点が80〜100℃の合成ワックスからなる群から選択される第2の疎水性物質を含む、前記第1層を覆う第2層、を含むことを特徴とするペレット状組成物。
【請求項2】
前記生理活性物質が、メチオニン、コリン、塩化コリン、リジン、ビタミンC、ビタミンCアセテート、ビタミンE、ビタミンB、ビタミンPP、ならびに乳酸、フマル酸、クエン酸およびリンゴ酸を含む酸の混合物から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記コリン誘導体が、塩化コリン、重酒石酸コリン、コリンの二水素化クエン酸塩、コリンの重炭酸塩、硫酸コリンおよび水酸化コリンから選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記マトリクスに、カルナウバワックスおよび微結晶ワックスが重量比1:3〜3:1;より好ましくは1:1の比率で含まれる、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記マトリクスに微結晶ワックスのみが含まれる、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
選択された前記第1層の前記疎水性物質が60〜64℃の融点を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記第1層の前記疎水性物質が、ラウリン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ステアリン、硬化大豆油、硬化綿実油、硬化ヤシ油、硬化亜麻仁油、ナトリウムグリセリルモノステアリン酸、ナトリウムグリセリルジステアリン酸、ナトリウムグリセリルトリステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリルアルコール、セチルステアリルアルコールからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記第1層の前記疎水性物質が硬化ヤシ油および/または硬化大豆油から選択される、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記第2層の前記疎水性物質がカルナウバワックスおよび/または微結晶ワックスから選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記マトリクスがさらに、コロイド状シリカ、非晶質合成シリカ、沈降シリカ、ナトリウムアルミニウムケイ酸、ケイ酸カルシウム、タルク、カオリン、疎水性合成ゼオライトから選択される疎水性のケイ酸塩;ステアリン酸マグネシウムおよびBHTを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記マイクロペレットが、直径0.5〜5mm;好ましくは0.8〜1.2mm、長さ0.5〜5mm;好ましくは0.8〜2.0mmの実質的に円筒形状を有する、上記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載のマイクロペレット状組成物の調製手順であって、
アミノ酸、ビタミン、酵素、タンパク質、炭水化物、プロバイオティック微生物、プレバイオティック食品、無機塩類、コリンおよびコリン誘導体、ならびに有機酸からなる群から選択される1以上の生理活性物質;および
カルナウバワックスおよび/または微結晶ワックスを含むマトリクスを含む組成物の押出成形、
炭素原子数12〜22の鎖をもち、かつ融点が40〜74℃の、脂肪、脂肪酸、硬化油、脂肪酸のモノグリセリドおよびジグリセリド、脂肪酸のエステル、脂肪アルコールからなる群から選択される、第1の疎水性物質による被膜第1層の形成;
微結晶ワックス、パラフィンワックス、植物油および融点が80〜100℃の合成ワックスからなる群から選択される、第2の疎水性物質による被膜第2層の形成、の段階を含むマイクロペレット状組成物の調製手順。
【請求項13】
前記被膜の第1層および第2層がホット・メルト・コーティング手法で形成される、請求項12に記載の手順。
【請求項14】
前記生理活性物質が、メチオニン、コリン、塩化コリン、リジン、ビタミンC、ビタミンCアセテート、ビタミンE、ビタミンB、ビタミンPP、ならびに乳酸、フマル酸、クエン酸およびリンゴ酸を含む酸の混合物から選択される、請求項12に記載の手順。
【請求項15】
前記コリン誘導体が、塩化コリン、重酒石酸コリン、コリンの二水素化クエン酸塩、コリンの重炭酸塩、硫酸コリンおよび水酸化コリンから選択される、請求項12に記載の手順。
【請求項16】
前記マトリクスにカルナウバワックスおよび微結晶ワックスが重量比1:3〜3:1;より好ましくは1:1の比率で含まれる、請求項12に記載の手順。
【請求項17】
選択された前記第1層の前記疎水性物質が60〜64℃の融点を有する、請求項12に記載の手順。
【請求項18】
前記第1層の疎水性物質が、ラウリン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ステアリン、硬化大豆油、硬化綿実油、硬化ヤシ油、硬化亜麻仁油、ナトリウムグリセリルモノステアリン酸、ナトリウムグリセリルジステアリン酸、ナトリウムグリセリルトリステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリルアルコール、セチルステアリルアルコールからなる群から選択される、請求項12に記載の手順。
【請求項19】
前記第1層の前記疎水性物質が硬化ヤシ油および/または硬化大豆油より選択される、請求項12に記載の手順
【請求項20】
前記第2層の前記疎水性物質がカルナウバワックスおよび/または微結晶ワックスより選択される、請求項12に記載の手順。
【請求項21】
前記マトリクスがさらに、コロイド状シリカ、非晶質合成シリカ、沈降シリカ、ナトリウムアルミニウムケイ酸、ケイ酸カルシウム、タルク、カオリン、疎水性合成ゼオライトから選択される疎水性のケイ酸塩;ステアリン酸マグネシウムおよびBHTを含む、請求項12に記載の手順。
【請求項22】
前記マイクロペレットが、直径0.5〜5mm;好ましくは0.8〜1.2mm、長さ0.5〜5mm;好ましくは0.8〜2.0mmの実質的に円筒形状を有する、上記請求項のいずれかに記載の手順。
【請求項23】
請求項1〜11のいずれかに記載の組成物を含む、動物飼育用プレミックス。
【請求項24】
請求項23に記載のプレミックスを含む、動物飼育用飼料。
【請求項25】
動物飼育の領域における、請求項1〜11のいずれかに記載の組成物の使用。

【公表番号】特表2008−514583(P2008−514583A)
【公表日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−532978(P2007−532978)
【出願日】平成17年6月28日(2005.6.28)
【国際出願番号】PCT/IB2005/002144
【国際公開番号】WO2006/032958
【国際公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(501492454)アスカー チミシ エスアールエル (2)
【氏名又は名称原語表記】ASCOR CHIMICI S.r.l.
【住所又は居所原語表記】Via Piana, 265 47032 BERTINORO−FRAZ. CAPOCOLLE (Forli) ITALY
【Fターム(参考)】