説明

産業車両におけるサイドカバー構造

【課題】本発明の目的は、産業車両において一体的な車両側面を形成することができる産業車両におけるサイドカバー構造の提供にある。
【解決手段】車体上にシートスタンド16を設けた産業車両におけるサイドカバー構造であって、車体側部を全面的に覆う単一のサイドカバー26、27が備えられる。サイドカバー26は、車体側部を覆うサイドカバー部26aと、車輪上方を覆うフェンダーカバー部26bと、前記シートスタンド16の側部を覆うシートスタンドカバー部26dを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、産業車両におけるサイドカバー構造に関し、特に、座席を有するシートスタンドを車体上に設けた産業車両におけるサイドカバー構造に関する。
【背景技術】
【0002】
フォークリフト等の産業車両では、車体側部を覆うサイドカバーや、車輪の上方を覆うフェンダーカバーを備えている場合がある。
従来では、例えば、図5に示すフォークリフト30におけるサイドカバー構造が知られている。
図5に示すフォークリフト30は、前輪32及び後輪33を有する車体を備えている。
車体前部側に荷役装置34を備え、車体後部側にカウンタウエイト35を備えている。
このフォークリフト30におけるサイドカバー構造(以下、単に「サイドカバー構造」と表記する。)では、車体側部の一部を覆う板状のサイドカバー36が備えられている。
【0003】
車体前部には、前輪32の上方を覆うフェンダーカバー37が取り付けられている。
フェンダーカバー37には、運転者の乗降を容易にするためのステップ部37aが一体的に形成されている。
フェンダーカバー37は、サイドカバー36とともに車体側部の一部を覆う要素となっている。
このフォークリフト30では車体側部の一部は、車体を構成する車体フレーム31の一部が露出されることにより形成されている。
【0004】
一方、車体の上部にはシートスタンド38が設けられており、シートスタンド38上には運転用の座席39が設置されている。
因みに、シートスタンド38の下方の車体内にはエンジン又はバッテリー等が収容される。
シートスタンド38には、車体内の保守作業等のために、座席39とともにシートスタンド38全体を後傾させる傾動機構(図示せず)が備えられている。
フォークリフト30では、サイドカバー36、フェンダーカバー37及びシートスタンド38は夫々独立した部品であり、個々に車体に取り付けられる。
この種の車両の側面は、荷役装置34、カウンタウェイト35及び座席39を除くと、サイドカバー36、フェンダーカバー37、車体フレームの露出部及びシートスタンド38の側面により占られ、車両の側面は分割された構成となっている。
【0005】
関連する技術として、例えば、特許文献1に開示されたフェンダーカバーが存在する。
このフェンダーカバーは車輪の上方を覆うフェンダーカバー部と運転者の乗降を容易にするステップ部とが一体形成されている。
【特許文献1】特開2001−39349号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の技術では、サイドカバーやフェンダーカバー等の複数の部品を車体側部に取り付ける必要があり、車両の側面が分割された構成であって一体的に形成されないという問題がある。
このため、サイドカバーとフェンダーカバーの継ぎ目等のように部品同士の継ぎ目、あるいは車体と部品との継ぎ目において、水や塵埃の浸入対策が施す必要があるほか、組み付け時において部品同士、あるいは部品と車体との位置合わせに手間が掛かることがある。
【0007】
また、従来の技術では、車両の側面が複数の部品により分割されて構成されていることから、車両側面のデザインが一体感に乏しいデザインとなりがちである。
さらに、従来の技術では、後傾式のシートスタンドの場合、座席を有するシートスタンド全体を後傾させる必要があるが、シートスタンドの後傾時における作業者の負担を軽減するため、シートスタンドの一層の軽量化が求められている。
【0008】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたもので、本発明の目的は、産業車両において車両の側面を一体的に形成することができる産業車両におけるサイドカバー構造の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を達成するため、本発明は、車体上にシートスタンドを設けた産業車両のサイドカバー構造であって、前記車体側部を全面的に覆う単一のサイドカバーが備えられたことを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、車体側部に単一のサイドカバーを取り付けることにより、車体側部はサイドカバーにより全面的に覆われ、複数の部品を車体側部に取り付ける必要がない。
つまり、車体側部を覆うサイドカバーにより車両の側面の大部分が一体的に形成され、車両の側面の大部分について一体感に富むデザインを採用することが可能となる。
さらに、従来のように、部品同士の継ぎ目、あるいは車体と部品との継ぎ目において、水や塵埃の浸入対策が施す必要がないほか、組み付け時において部品同士、あるいは部品と車体との位置合わせに手間が掛かることもない。
【0011】
また、本発明では、上記した産業車両におけるサイドカバー構造において、前記サイドカバーは、前記車体側部を覆うサイドカバー部と、車輪上方を覆うフェンダーカバー部と、前記シートスタンドの側部を覆うシートスタンドカバー部を有し、前記サイドカバー部、前記フェンダーカバー部及び前記シートスタンドカバー部は一体形成するようにしてもよい。
【0012】
この場合、サイドカバーとフェンダーカバーとシートスタンドカバー部が一体形成されていることから、車両の側面のデザインを一体感に富むデザインとすることができる。
また、サイドカバーには、シートスタンドカバー部が含まれることから、相対的にシートスタンドにおける開閉部位を小型化することができ、開閉部位の小型化によりシートスタンドの軽量化を図ることができる。
従って、シートスタンドの後傾時における作業者の負担を軽減することができる。
【0013】
また、本発明では、上記した産業車両におけるサイドカバー構造において、サイドカバーが樹脂材料により形成されてもよい。
【0014】
この場合、凹凸や起伏に富む複雑な形状のサイドカバーを比較的簡単に製造することができるほか、サイドカバーの軽量化を図ることが可能である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、産業車両において車両の側面を一体的に形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態に係る産業車両のサイドカバー構造について図面を参照して説明する。
この実施形態は、産業車両としてのフォークリフトに適用した一例である
図1は、この実施形態に係るフォークリフト10の斜視図である。
【0017】
この実施形態のフォークリフト10は、前輪12及び後輪13を有する車体を備えている。
車体は車両の骨格となる車体フレーム11により主に構成され、車体内には図示しないバッテリや油圧機器、電装部品等が収容される。
車体前部側には荷役装置14が備えられ、車体後部側にはカウンタウエイト15が備えられている。
車体上部には、車体内に通じる開口部(図示せず)が形成され、運転用の座席17を備えたシートスタンド16がこの開口部を覆うように設けられている。
シートスタンド16の右側にはアームレスト18が備えられ、アームレスト18の前部には荷役装置を操作する複数のレバーやボタンが備えられている。
シートスタンド16は傾動機構(図示せず)を備えており、図1に示す2点鎖線のように、シートスタンド16は座席及びアームレスト18を共に後傾可能となっている。
【0018】
車体にはハンドル20および計器類を備えたインパネ19が設けられているが、インパネ19が設けられている位置はシートスタンド16の前方であって前輪12の上方となっている。
インパネ19の下部にはブレーキペダルが21備えられ、シートスタンド16とインパネ19の間のフロア上にはアクセルペダル22が備えられている。
座席17上方には、ヘッドガード23が設置されている。
ヘッドガード23の前部ピラー24は、インパネ19の両側付近からやや後方へ向けて車体前部において立設され、後部ピラー25はカウンタウエイト15に近い車体後部において立設されている。
【0019】
この実施形態に係るフォークリフト10の車体は、図1及び図2に示すように、左右の車体側部を全面的に覆う単一のサイドカバー26、27を備えている。
左側用のサイドカバー26は、図3に示すように、サイドカバー部26aと、フェンダーカバー部26bと、ステップ部26cと、シートスタンドカバー部26dを有する。
この実施形態のサイドカバー26、27の材料はABS樹脂であり、サイドカバー26、27は射出成形等に形成される。
左側用のサイドカバー26では、サイドカバー部26a、フェンダーカバー部26b、ステップ部26c及びシートスタンドカバー部26dは一体形成されている。
右側用のサイドカバー27は、サイドカバー部27aと、フェンダーカバー部27bと、シートスタンドカバー部27dを有し、ステップ部は備えていない。
シートスタンドカバー部26d、27dは、車体の幅方向においてシートスタンド16を挟むような形で位置する。
【0020】
この実施形態に係るサイドカバー26の各部の領域を具体的に図4に示す。
サイドカバー部26aは車体側部の大部分を覆う部位であり、図4においてハッチングが施されていない領域に相当する。
フェンダーカバー部26bは、前輪12付近の上方を覆う部位であり、車体に備えられるフェンダーに沿う形状を有しており、図4においてハッチングで示す領域Aに相当する。
ステップ部26cは、乗降をし易くするための平らな踏面を含む部位であり、車体側へ窪む形状を有しており、図4においてハッチングで示す領域Bに相当する。
【0021】
シートスタンドカバー部26dは、シートスタンド16の側部を覆う部位であり、シートスタンド16の輪郭の一部を倣う形状を有しており、図4においてハッチングにより示す領域Cに相当する。
シートスタンドカバー部26dは、従来のシートスタンドの一部に相当する。
このため、この実施形態では、シートスタンドカバー部26d、27dの存在により、シートスタンド16の幅寸法が抑制される。
このため、シートスタンド16の開閉部位が従来のシートスタンドよりも相対的に小型化される。
この実施形態のサイドカバー26ではサイドカバー部26aからシートスタンドカバー部26dへ至る稜線26eが形成され、サイドカバー26のデザインは一体感を有するデザインとなっている。
【0022】
次に、サイドカバー26の取り付けについて説明する。
サイドカバー26は、ボルト、ピン等の図示しない固定手段により車体側部(左側)と固定される。
固定手段による具体的な固定箇所は、フェンダーカバー部26bの前部と、シートスタンドカバー部26dの上部であり、サイドカバー部26aの下部は車体下部に係止される。
単一のサイドカバー26であることと、車体との固定の箇所が少ないことから、サイドカバー26を取り付ける際、車体に対するサイドカバー26の位置合わせに手間が掛かるおそれは殆どない。
サイドカバー26が車体側部に取り付けられると、車体側部がサイドカバー部26a、フェンダーカバー部26b及びステップ部26cにより全面的に覆われた状態となる。
さらに、シートスタンド16の側部もシートスタンドカバー部26dにより覆われる。
つまり、図1に示すように、車体側部とシートスタンド16の側部をサイドカバー26が完全に覆う状態となる。
また、車体側部(右側)についても、図2に示すサイドカバー27が取り付けられることにより、車体側部が完全に覆われる。
【0023】
ところで、シートスタンド16を後傾させたとき、シートスタンド16の下部である車体内を開口部を通じて臨むことができる。
この場合、開口部の両側にシートスタンドカバー部26d、27dが立設された状態となる。
シートスタンドカバー26d、27dは、車体外と開口部との間を遮蔽する状態にある。
【0024】
この実施形態のサイドカバー構造によれば、以下の効果を奏する。
(1)車体側部に単一のサイドカバー26、27を取り付けることにより、車体側部はサイドカバー26、27により全面的に覆われ、複数の部品を車体側部に取り付ける必要がない。つまり、車体側部を覆うサイドカバー26、27により車両の側面の大部分が一体的に形成され、車両の側面の大部分について一体感に富むデザインを採用することが可能となる。従って、従来のように、部品同士の継ぎ目、あるいは車体と部品との継ぎ目において、水や塵埃の浸入対策が施す必要がないほか、組み付け時において部品同士、あるいは部品と車体との位置合わせに手間が掛かることもない。
(2)サイドカバー部26aと、フェンダーカバー部26bと、ステップ部26cと、シートスタンドカバー部26dが一体形成されていることから、シートスタンド16の側面を含む車両の側面のデザインを一体感に富むデザインとすることができる。また、サイドカバー26、27を取り付けるだけで車体側部が直ちに覆われる。
【0025】
(3)サイドカバー部26aは従来のシートスタンドの一部に相当することから、シートスタンド16における開閉部位を相対的に小型化することができ、開閉部位の小型化によりシートスタンド16の軽量化を図ることができる。従って、シートスタンド16の後傾時における作業者の負担を軽減することができる。
(4)サイドカバー26、27は樹脂材料により形成されているから、複雑な形状のサイドカバー26、27を比較的簡単に製造することができ、特にサイドカバー26にステップ部26cを形成する場合に好適である。また、サイドカバー26、27の軽量化を図ることが可能である。
(5)単一のサイドカバー26、27であって、車体に対するサイドカバー26、27の着脱が比較的簡単であることから、サイドカバー26、27の組み付け時や保守作業における作業性が向上する。また、従来、車体側部からバッテリーを出し入れするバッテリー式フォークリフトでは、作業性の点からバッテリーを出し入れする車体側部にサイドカバーを設けることができないという実情があったが、本発明のサイドカバー26、27を適用することによりこの種のバッテリー式フォークリフトにサイドカバーを設けることが期待でき、この場合、デザイン上の美的効果を向上させることも可能となる。
【0026】
(6)車体側部において継ぎ目が存在しないから、例えば、フォークリフト10の車体側部が走行中に壁などに接触しても、従来のように継ぎ目に対応するサイドカバーの端部が壁に係止され、サイドカバーが捲れてしまうことがない。
(7)従来のように複数の部品を車体側部に取り付ける必要がないから、サイドカバー26、27を車体に取り付けるためのステー等の取付用部材を車体側において削減することができる。
(8)シートスタンド16を開くことにより開口部を通じて車体内を臨む状態となるが、シートスタンドカバー部26d、27dが、シートスタンド16の両側に立設された状態にあるから、シートスタンドカバー部26d、27dが遮蔽物となり、車体外から車体内へ異物が入り難い。
(9)シートスタンドカバー26d、27dはシートスタンド16の側部を覆うことから、シートスタンド16を保護する機能を備える。例えば、走行中に車両の側面が壁等に接触してもシートスタンド16が直接接触することがなく、シートスタンド16の損傷は従来よりも軽減することができる。
【0027】
なお、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく発明の趣旨の範囲内で種々の変更が可能であり、例えば、次のように変更してもよい。
上記の実施形態では、産業車両としてのフォークリフトに適用した例を説明したが、トーイングトラクター等のフォークリフト以外の荷役車両や、ホイールローダー等の建設車両を含む産業車両に本発明を適用してもよい。
【0028】
上記の実施形態では、サイドカバーにステップ部が含まれる構成としたが、ステップ部の有無は問われない。サイドカバーは少なくともサイドカバー部とフェンダー部を含み、車体側部を全面的に覆う単一のカバーであればよく、また、サイドカバーは、車体側部を全面的覆う他に、シートスタンドに限らず、車体の前後部の一部等を覆うようすることも妨げない。
サイドカバーの材料もABS樹脂に限定されず、FRPや金属材料を用いてもよい。
サイドカバーの形状が凹凸や起伏に富む複雑な形状の場合、サイドカバーを樹脂材料により形成するが好ましい。
【0029】
上記の実施形態では、サイドカバーに部品同士等の継ぎ目がないとしたが、サイドカバーに通気孔等の通孔を設けることは妨げない。また、サイドカバーの外側に他の部品を取り付けることも予定している。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施形態に係るフォークリフトの側面図である。
【図2】本発明の実施形態に係るフォークリフトの平面図である。
【図3】本発明の実施形態に係るサイドカバーの斜視図である。
【図4】本発明の実施形態に係るサイドカバーの各部を示す説明図である。
【図5】従来のフォークリフトにおけるサイドカバー構造を示す側面図である。
【符号の説明】
【0031】
10、30 フォークリフト
11、31 車体フレーム
15、25 カウンタウエイト
16、38 シートスタンド
17、39 座席
18 アームレスト
19 インパネ
20 ハンドル
23 ヘッドガード
26、27、36 サイドカバー
26a サイドカバー部
26b フェンダーカバー部
26c、37a ステップ部
26d シートスタンドカバー部
26e 稜線
A、B、C 領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体上にシートスタンドを設けた産業車両におけるサイドカバー構造であって、
前記車体側部を全面的に覆う単一のサイドカバーが備えられたことを特徴とする産業車両におけるサイドカバー構造。
【請求項2】
前記サイドカバーは、前記車体側部を覆うサイドカバー部と、車輪上方を覆うフェンダーカバー部と、前記シートスタンドの側部を覆うシートスタンドカバー部を有し、
前記サイドカバー部、前記フェンダーカバー部及び前記シートスタンドカバー部は一体形成されていることを特徴とする請求項1記載の産業車両におけるサイドカバー構造。
【請求項3】
前記サイドカバーが樹脂材料により形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の産業車両におけるサイドカバー構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−99468(P2007−99468A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−293136(P2005−293136)
【出願日】平成17年10月6日(2005.10.6)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】