説明

産業車両用シリンダカバー及び産業車両

【課題】産業車両の駆動用シリンダのシリンダロッドを保護しながらも配置スペースを狭小化する。
【解決手段】シリンダカバー30は、フォークリフトの相対移動するステアリングナックル10のロッド連結側ナックルアーム11bと車体のリヤアクスルビーム24との間に架設されたステアリングシリンダ8のシリンダロッド14を保護する。ステアリングナックル10のロッド連結側ナックルアーム11bと車体のリヤアクスルビーム24との間に、幕状をなしかつステアリングシリンダ8の伸縮方向に関して伸縮変形可能な弾性を有するカバー部材32が、ステアリングシリンダ8のシリンダロッド14の伸縮動作に応じて伸縮変形可能に張設される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、フォークリフト、トーイングトラクタ、ショベルローダ等の産業車両用シリンダカバー及び産業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
産業車両の駆動用シリンダとしては、例えば、フォークリフトの操舵輪を操向駆動するステアリング装置のステアリングシリンダが挙げられる。そして、フォークリフトのステアリングシリンダは、車両の車体における地面(路面、フロア面等が相当する。)上に近いアクスルビームに配置されている。このため、フォークリフトのハンドルの操舵にともなって、ステアリングシリンダの伸縮作動するシリンダロッドが、外部から飛来する石ころ、泥埃(泥、塵埃が相当する。)等の有害物にさらされる。
そして、シリンダロッドに石ころ等がぶつかると、そのシリンダロッドが破損するおそれがある。また、シリンダロッドが摺動するシリンダチューブのロッド摺動部に両者間をシールするために設けられているシール部材が、泥埃が付着したシリンダロッドの伸縮作動にともなう泥埃によって破損されてしまうおそれがある。
【0003】
そこで、フォークリフトのステアリングシリンダのシリンダロッドを外部から飛来する有害物から保護するために、シリンダチューブとシリンダロッドとの間に蛇腹式のシリンダブーツを装着することが知られている(例えば、特許文献1参照。)。この特許文献1は、図8に示すように、駆動用シリンダ80のシリンダチューブ81とシリンダロッド83のロッドヘッド83aとの間に、円筒状をなす蛇腹型のシリンダブーツ82がシリンダロッド83に外嵌した状態で架設されている。シリンダブーツ82は、駆動用シリンダのシリンダロッド83の伸縮動作に応じて伸縮変形する。
【0004】
【特許文献1】実開平1−94662号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、フォークリフト等の産業車両は、狭い場所等において稼動し易いように、車両がコンパクト化されてきている。これにより、車体のアクスルビームにおけるステアリングシリンダの配置スペースが狭くなる。また、車輪を装着するステアリングナックル、ステアリングナックルを作動するステアリングシリンダ、左右の両車輪の操舵を同期させるタイロッド等のステアリング構成部品が、過密に入り組んだ配置構造にならざるを得ない。
【0006】
しかしながら、前記特許文献1のシリンダブーツ82(図8参照。)によると、駆動用シリンダ80のシリンダロッド83の外周全体を覆いかつブーツ自体の伸縮変形にともなうスペースを確保しなければならない。しかし、車両のコンパクト化にともない、駆動用シリンダ80とその周辺部品との間に、シリンダブーツ82の配置にかかるスペースを確保しづらくなってきたことから、その対策が要望されている。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、産業車両の駆動用シリンダのシリンダロッドを保護しながらも配置スペースを狭小化することのできる産業車両用シリンダカバー及び産業車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記した課題は、特許請求の範囲の欄に記載された構成を要旨とする産業車両用シリンダカバー及び産業車両により解決することができる。
すなわち、特許請求の範囲の請求項1にかかる産業車両用シリンダカバーによると、産業車両の相対移動する二部材間に張設された幕状のカバー部材により、駆動用シリンダのシリンダロッドを石ころ、泥埃等の有害物から保護することができる。
また、幕状をなしかつ駆動用シリンダの伸縮方向に関して伸縮変形可能な弾性を有するカバー部材であるため、駆動用シリンダのシリンダロッドへ飛来する有害物を遮断する側に幕状にコンパクトに配置することが可能であり、配置スペースを狭小化することができる。
【0009】
また、特許請求の範囲の請求項2にかかる産業車両用シリンダカバーによると、産業車両の相対移動する車体のアクスルビームとステアリングナックルのロッド連結側ナックルアームとの間に張設されかつステアリングシリンダのシリンダロッドの伸縮動作に応じて伸縮変形可能な弾性を有する幕状のカバー部材により、ステアリングシリンダのシリンダロッドを石ころ、泥埃等の有害物から保護することができる。
また、幕状をなしかつステアリングシリンダの伸縮方向に関して伸縮変形可能な弾性を有するカバー部材であるため、ステアリングシリンダのシリンダロッドへ飛来する有害物を遮断する側に幕状にコンパクトに配置することが可能であり、配置スペースを狭小化することができる。
【0010】
また、特許請求の範囲の請求項3にかかる産業車両用シリンダカバーによると、ロッド連結側ナックルアームに連結されるカバー部材の連結部に設けた張枠部材を、ロッド連結側ナックルアームに締め付けられるボルトを利用して該ロッド連結側ナックルアームに締着する。これにより、カバー部材の連結部を、張枠部材により伸縮変形方向に交差する方向に張った状態で、ロッド連結側ナックルアームに容易に連結することができる。また、ロッド連結側ナックルアームに締め付けられるボルトを利用することにより、張枠部材をロッド連結側ナックルアームに連結するための専用の部品を省略することができる。
【0011】
また、特許請求の範囲の請求項4にかかる産業車両用シリンダカバーによると、アクスルビームに連結されるカバー部材の連結部の伸縮変形方向に交差する方向の両端部とアクスルビームとの間に設けられた一対の掛止手段のフック部材と掛止部材とを掛止することにより、カバー部材の連結部を伸縮変形方向に交差する方向に容易に張設することができる。
また、掛止部材とフック部材との掛止を解除することにより、カバー部材の連結部をアクスルビームから容易に取外すことができる。これにより、ステアリングシリンダ及びシリンダカバーのメンテナンスの作業性を向上することができる。
【0012】
また、特許請求の範囲の請求項5にかかる産業車両用シリンダカバーによると、保持部材の両端部とアクスルビームとの間に設けられた一対の支持手段の支軸部が軸受部に回動可能に支持される。このため、カバー部材の伸縮変形にともなって、保持部材が追従回動することにより、そのカバー部材を保持部材により所定形状に保持した状態で、カバー部材を安定的に伸縮変形させることができる。また、保持部材によりカバー部材が所定形状に保持されることにより、ステアリングシリンダのシリンダチューブ、シリンダロッドに対するカバー部材の接触を回避することができ、その接触によるカバー部材の破損を防止あるいは低減することができる。
【0013】
また、特許請求の範囲の請求項6にかかる産業車両用シリンダカバーによると、湾曲状をなす保持部材が、カバー部材の伸縮変形方向に交差する方向の中央部分を外方に膨出させる。これにより、カバー部材がステアリングシリンダのシリンダロッドをその軸回り方向に関して広範囲に覆うことが可能となるので、シリンダロッドの保護効果を向上することができる。
【0014】
また、特許請求の範囲の請求項7にかかる産業車両用シリンダカバーによると、支軸部と軸受部とを保持部材の撓み変形を利用して係合することにより、保持部材をアクスルビームに容易に回動可能に支持することができる。
【0015】
また、特許請求の範囲の請求項8にかかる産業車両によると、駆動用シリンダのシリンダロッドを保護しながらも、配置スペースを狭小化することのできるシリンダカバーを備えた産業車両を提供することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の産業車両用シリンダカバー及び産業車両によれば、産業車両の駆動用シリンダのシリンダロッドを保護しながらも配置スペースを狭小化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、本発明を実施するための最良の形態について実施例を参照して説明する。
【実施例】
【0018】
本発明の一実施例を図面にしたがって説明する。本実施例は、産業車両としてのフォークリフトにおけるパワーステアリング装置(単に、「ステアリング装置」という。)のステアリングシリンダを駆動用シリンダの一例として実施したものであるから、フォークリフト、ステアリング装置を順に説明した後に、産業車両用シリンダカバー30を説明する。
まず、フォークリフトの概要から説明する。図7に示すように、フォークリフト1の車体1aの前部(図7において左側)には、左右一対(図7では左側のみを示す。)のマスト2が設けられている。マスト2は、アウタマスト2aと、アウタマスト2aに昇降可能に装備されたインナマスト2bとから構成されている。インナマスト2bには、左右一対(図7では左側のみを示す。)のフォーク3を備えたリフトブラケット4が昇降可能に支持されている。
また、マスト2は、車体1aに傾動可能に支持されている。車体1aとアウタマスト2aとの間には、ティルトシリンダ5が架設されている。ティルトシリンダ5の伸縮作動によってマスト2が所望の角度に傾動される。
また、車体1aの下部には、左右一対(図7では左側のみを示す。)の前輪6及び後輪7が設けられている。両前輪6は、駆動輪6(前輪と同一符号を付す。)である。また、両後輪7は、従動輪であって、操舵輪7(後輪と同一符号を付す。)でもある。両操舵輪7の舵角は、フォークリフト1のハンドルHの操作に基づいて変化される。
【0019】
次に、前記両操舵輪7の舵角を変化させるステアリング装置STについて説明する。図3に示すように、前記フォークリフト1の車体1a(図7参照)は、前後一対(図2において上下一対)の取付部25を後部に有する後部フレーム1bを備えている。後部フレーム1bの両取付部25の間には、リヤアクスルビーム24が配置されている。
リヤアクスルビーム24は、上下の両ビームプレート24a,24b(図1参照。)、及び、前後左右の計4枚の連結板24c,24d,24e,24f(図3参照。)を有している。図1に示すように、上下の両ビームプレート24a,24bは、上下に平行をなしかつ左右方向(「車幅方向」に相当する。)に延びる長細板状に形成されている。
また、図3に示すように、前後の両連結板24c,24dは、両ビームプレート24a,24b(図2参照。)の前後中央部を相互に結合しかつ前後に平行をなしている。前側の連結板24cの前面及び後側の連結板24dの後面には、同一軸線上に位置する前後一対(図3において上下一対)の支軸18が設けられている。また、左右の両連結板24e,24fは、左右対称状をなしており、両ビームプレート24a,24bの左右両端部を相互に結合しかつ相互に同一面上に位置しているとともに両連結板24c,24dの間でそれらの連結板24c,24dと平行をなしている。
【0020】
図3に示すように、前記リヤアクスルビーム24は、前記後部フレーム1bの前後一対の取付部25に対して、前記前後の両支軸18が回動可能に支持されることにより、該車体フレーム1bに対して揺動可能に設けられている。また、リヤアクスルビーム24の前記下側のビームプレート24bの車幅方向の中央部には、上下方向に延びる軸線上に位置するベルクランク軸15aが設けられている(図1参照。)。下側のビームプレート24b上において、ベルクランク軸15aには、ベアリング9を介してベルクランク15が回転可能に支持されている(図3参照。)。
【0021】
前記上下の両ビームプレート24a,24bの左右両端部の相互間には、左右一対のキングピン12が支持されている(図2及び図3参照。)。図3に示すように、左右の両キングピン12には、左右一対のステアリングナックル10がそれぞれ回動可能に設けられている。左右の両ステアリングナックル10が有するホイールスピンドル10aには、前記左右の両操舵輪7がそれぞれ回転可能に支持されている。各ステアリングナックル10には、後方へ延出する長短2種類のナックルアーム11a,11bが形成されている。長い方のナックルアーム11aには、左右一対のタイロッド13の一端部(外端部)がそれぞれ軸13aにより回動可能に連結されている。また、左右の両タイロッド13の他端部(内端部)は、前記ベルクランク15にそれぞれ軸13bにより回動可能に連結されている。すなわち、左右の両タイロッド13及びベルクランク15等により、両操舵輪7の操舵のためのリンク機構が構成されている。なお、長い方のナックルアーム11aはステアリングナックル10の下部に形成されており、短い方のナックルアーム11bはステアリングナックル10の上部に形成されている(図1参照。)。
【0022】
図3に示すように、前記リヤアクスルビーム24の後側の連結板24dには、左右一対の取付ブラケット17が設けられている。左右の両取付ブラケット17には、複動型シリンダからなる左右一対のパワーステアリングシリンダ(以下、「ステアリングシリンダ」という。)8のシリンダチューブ16の基端部すなわち反シリンダロッド側の端部が、それぞれ軸17aにより回動可能に連結されている。ステアリングシリンダ8は、シリンダチューブ16と、そのシリンダチューブ16に伸縮可能に設けられたシリンダロッド14とを備えている。また、左右の両ステアリングシリンダ8のシリンダロッド14の先端部が、前記左右の両ステアリングナックル10の短い方のナックルアーム11bに、それぞれ軸26により回動可能に連結されている。なお、このナックルアーム11bを、ロッド連結側ナックルアーム11bという。
【0023】
また、図7に示すように、前記車体1aの前部には、ハンドルHの操作によって駆動されるパワーステアリングバルブSVが装備されている。また、図3に示すように、前記左右の両ステアリングシリンダ8のシリンダポート19に接続された複数本のホース20は、パワーステアリングバルブSV(図7参照。)の駆動により左右の両ステアリングシリンダ8に対して給排される作動油によって、左右のステアリングシリンダ8が伸縮動作を逆にして同期駆動されるように配管されている。すなわち、左右のステアリングシリンダ8は、一方が伸長する状態のときは他方が短縮状態となり、また一方が短縮する状態のときは他方が伸長状態となるように同期駆動されるようになっている。これにより、ハンドルH(図7参照。)を操作したときには、その操作方向に応じて、左右の操舵輪7が操向駆動される。ちなみに、図2に示す状態から、右側のステアリングシリンダ8のシリンダロッド14が短縮する状態で、左側のステアリングシリンダ8のシリンダロッド14が伸長する状態では、両操舵輪7は平面においてキングピン12を中心として右回り方向に回動される(図3参照。)。また、図2に示す状態から、右側のステアリングシリンダ8のシリンダロッド14が伸長する状態で、左側のステアリングシリンダ8のシリンダロッド14が短縮する状態では、両操舵輪7は平面においてキングピン12を中心として左回り方向に回動される。
【0024】
前記左右の両ステアリングシリンダ8(図1参照。)のシリンダロッド14と前記左右の両ステアリングナックル10のロッド連結側ナックルアーム11bとは、次に述べる連結構造をもって連結されている。なお、両連結構造は、左右対称状をなしているため、以下、右側部分の構成について説明し、左側部分の構成の説明を省略する。
図6に示すように、前記シリンダロッド14の先端部には、貫通孔50aを有するロッドヘッド50が設けられている。
一方、ロッド連結側ナックルアーム11bの先端部には、上下一対の連結片51,52がそれぞれ形成されている。両連結片51,52は、その間に前記ロッドヘッド50をほとんど隙間なく受入可能に形成されている。上側の連結片51には、貫通孔51aと、その貫通孔51aを間にナックルアーム11bの先端側と基端側に隣接する一対のめねじ孔51bが形成されている。また、下側の連結片52には、上側の連結片51の貫通孔51aよりも小径でかつ該貫通孔51aと同一軸線上に位置する貫通孔52aが形成されている。
【0025】
前記シリンダロッド14のロッドヘッド50は、前記ロッド連結側ナックルアーム11bの両連結片51,52の間に挿入される。そして、両連結片51,52の貫通孔51a,52aにロッド連結側ナックルアーム11bの貫通孔50aを同心上に一致させた状態で、貫通孔51a,50a,52aに対して、上方から軸26としての連結ピン26(軸26と同一符号を付す。)が挿入される。これにより、シリンダロッド14とロッド連結側ナックルアーム11bとが回動可能に連結される。
しかして、前記連結ピン26は、上から下方へ順に並びかつ次第に径を小さくする大径の軸部26aと中径の軸部26bと小径の軸部26cとを同一軸線上に有している。大径の軸部26a上には、例えば六角形状の回り止め部26dが形成されている。そして、連結ピン26によってシリンダロッド14のロッドヘッド50とステアリングナックル10のロッド連結側ナックルアーム11bとを連結した際には、大径の軸部26aがナックルアーム11bの上側の連結片51の貫通孔51aと嵌合し、小径の軸部26cがナックルアーム11bの下側の連結片52の貫通孔52aと嵌合し、中径の軸部26bがロッドヘッド50の貫通孔50aと嵌合する。
【0026】
そして、前記連結ピン26によって、シリンダロッド14とロッド連結側ナックルアーム11bが連結された後、連結ピン26の回り止め部26dに対して固定プレート27が取付けられる。固定プレート27には、連結ピン26の回り止め部26dに嵌合する多角孔としての六角孔27aと、六角孔27aを間に両側に隣接する2つのボルト挿通孔27bが形成されている。固定プレート27は、六角孔27aを連結ピン26の回り止め部26dに嵌合した状態で、ボルト28を両ボルト挿通孔27bにそれぞれ挿通して前記上側の連結片51の両めねじ孔51bにそれぞれ締め付けることにより、ロッド連結側ナックルアーム11bに締着される。この固定プレート27によって、連結ピン26の抜け止めがなされるとともに、シリンダロッド14とナックルアーム11bの相対回動にともなう連結ピン26の不用な回転が規制される。
【0027】
次に、前記フォークリフト1の操舵輪7を操向駆動するステアリング装置STのステアリングシリンダ8のシリンダロッド14を保護するための産業車両用シリンダカバー(単に、「シリンダカバー」という。)30について詳述する(図1〜図3参照。)。なお、シリンダカバー30は、前記左右の両ステアリングシリンダ8のシリンダロッド14の露出側すなわち本実施例では後側をそれぞれ保護するもので、左右対称状に設けられたものであるから、以下、右側のシリンダカバー30について説明し、左側のシリンダカバー30の説明は省略する。また、前記リヤアクスルビーム24は、本明細書でいう「産業車両の相対移動する二部材のうちの一方の部材」及び「アクスルビーム」に相当する。また、前記ステアリングナックル10のロッド連結側ナックルアーム11bは、本明細書でいう「産業車両の相対移動する二部材のうちの他方の部材」に相当する。
【0028】
図5に示すように、シリンダカバー30は、カバー体31を主体として構成されている。カバー体31は、左右方向に延びる帯状に形成されたカバー部材32を備えている。カバー部材32は、例えば、ゴム状弾性シート材からなるもので、幕状をなしかつ前記ステアリングシリンダ8の伸縮方向すなわち左右方向に関して伸縮変形可能な弾性を有している。カバー部材32には、張枠部材34と上下一対のフック部材36と保持部材38とが設けられている。すなわち、カバー体31は、カバー部材32と張枠部材34と上下一対のフック部材36と保持部材38とを備えて構成されている。
【0029】
前記張枠部材34は、例えば、金属製のバー状部材からなり、カバー部材32の前記ロッド連結側ナックルアーム11bに連結する側の連結部すなわち右端部32aに対して、縫合、接着、溶着等による結合手段(符号省略。)を介して、その右端部32aを伸縮変形方向(左右方向)に交差する方向(上下方向)に引き延ばすいわゆる張るようにして装着されている。
図6に示すように、カバー部材32から上方へ突出する張枠部材34の上端部は、折り返し状に折り曲げられることにより、連結アーム部34aとして形成されている。連結アーム部34aの下端部には、連結孔35aを有する連結環35が一体に形成されている。連結孔35aは、前記固定プレート27の締着用のボルト28を挿通可能なボルト挿通孔となっている。
【0030】
図5に示すように、前記上下一対のフック部材36は、例えば、金属製であって、フック部36aを有するほぼU字状に形成されている。両フック部材36は、カバー部材32の前記リヤアクスルビーム24に連結される側の連結部すなわち左端部32bの伸縮変形方向に交差する方向の両端部すなわち上下両端部に対して、縫合、接着、溶着等による結合手段(符号省略。)を介して装着されている。
【0031】
前記保持部材38は、例えば、金属製のバー状部材からなり、カバー部材32の伸縮変形方向の両端部の間の中間位置における一側すなわちステアリングシリンダ8のシリンダロッド14に面する側に対して、縫合、接着、溶着等による結合手段(符号省略。)を介して、該中間位置を伸縮変形方向に交差する方向(すなわち上下方向)に引き延ばすいわゆる張るようにして装着されている。保持部材38は、カバー部材32の伸縮変形方向に交差する方向の中央部分を外方すなわち後側に膨出する湾曲状に形成されている。また、保持部材38の上下両端部には、それぞれ折り返し状に折り曲げられた支軸部39が形成されている。上下の支軸部39は、同一軸線上に位置するようにして対向状に形成されている。
【0032】
一方、図5に示すように、前記リヤアクスルビーム24における上下の両ビームプレート24a,24bの後縁部の対向面には、前記ステアリングシリンダ8のシリンダチューブ16の中央付近に対応する上下一対の掛止部材46が、接着、溶着等による結合手段(符号省略。)を介して一体に設けられている。両掛止部材46には、前記フック部材36のフック部36aを掛止可能な掛止孔46aが形成されている。両掛止部材46は上下対称状に設けられており、その掛止孔46aは左右方向に貫通している。なお、上下の両フック部材36と、両フック部材36をそれぞれ掛止可能な上下の両掛止部材46とにより、一対の掛止手段(符号、M1を付す。)が構成されている。
【0033】
また、前記リヤアクスルビーム24における上下の両ビームプレート24a,24bの後縁部の対向面には、前記ステアリングシリンダ8のシリンダチューブ16におけるシリンダロッド14側の端部付近に対応する上下一対の軸受部48が、接着、溶着等による結合手段(符号省略。)を介して一体に設けられている。両軸受部48には、両ビームプレート24a,24bの後側に露出する軸受孔48aが形成されている。両軸受孔48aは、同一軸線上に位置しており、前記保持部材38の両支軸部39をそれぞれ係合可能でかつ回動可能に支持可能に形成されている。なお、保持部材38の上下の両支軸部39と、両支軸部39をそれぞれ支持可能な上下の両軸受部48とにより、一対の支持手段(符号、M2を付す。)が構成されている。
【0034】
次に、前記カバー体31を、前記ステアリングシリンダ8のシリンダロッド14を保護するために、ロッド連結側ナックルアーム11bとリヤアクスルビーム24との間に張設する手順の一例について説明する。
まず、ロッド連結側ナックルアーム11bの上側の連結片51に締着する固定プレート27の締め付け用の1つのボルト28、本実施例ではナックルアーム11aの先端側に位置するボルト28を利用する(図6参照。)。なお、ボルト28は、本明細書でいう「ロッド連結側ナックルアームに締め付けられるボルト」に相当する。
そして、ボルト28を、カバー体31における張枠部材34の連結環35の連結孔35aに挿通した上で、固定プレート27のボルト挿通孔27bに挿通しかつナックルアーム11bの上側の連結片51のめねじ孔51bにそれぞれ締め付ける。これにより、ナックルアーム11bの上側の連結片51に固定プレート27とともに張枠部材34が締着される(図4参照。)。
【0035】
次に、カバー体31における保持部材38の両支軸部39を、リヤアクスルビーム24の両軸受部48の軸受孔48a(図5参照。)内に係合しかつ回動可能に支持する(図4参照。)。このとき、保持部材38を直線状に伸ばす方向の撓み変形を利用して、上側の支軸部39をリヤアクスルビーム24の上側の軸受部48の軸受孔48a内に上方から係合させるとともに、下側の支軸部39をリヤアクスルビーム24の下側の軸受部48の軸受孔48a内に下方から係合させる。これにより、保持部材38が、リヤアクスルビーム24にカバー部材32の伸縮変形にともなって追従回動可能に設けられる。また、保持部材38によりカバー部材32の中央部が所定形状に保持され、ステアリングシリンダ8のシリンダチューブ16及びシリンダロッド14に対するカバー部材32の接触が回避される。
次に、カバー体31における両フック部材36のフック部36aを、リヤアクスルビーム24の両掛止部材46の掛止孔46a内に掛止する。このとき、両フック部材36が、カバー部材32の弾性を利用して、伸縮変形方向にかつその伸縮変形方向に交差する方向すなわち上下方向に引っ張る状態で、リヤアクスルビーム24の両掛止部材46に掛止される。これにより、カバー部材32が左右方向にかつその左端部32bが上下方向に所定の張力をもって張設される。
【0036】
上記したシリンダカバー30において、いま、操舵輪7が直進状態にあるときは、図4に示すように、カバー部材32がロッド連結側ナックルアーム11bとリヤアクスルビーム24との間に張設されている(図1及び図2参照。)。カバー部材32によって、ステアリングシリンダ8のシリンダロッド14の後側の周辺部が覆われており、そのシリンダロッド14へ飛来する有害物が遮断されている。また、保持部材38が後方へ起立した状態にあることにより、カバー部材32の中央部が後方へ膨出する状態に保持されている。
【0037】
そして、フォークリフト1の使用中において、ハンドルHを操作すると、左右の両ステアリングシリンダ8は、相互に伸縮状態を逆にして同期駆動される。そのとき、左右の両シリンダカバー30のカバー部材32は、それぞれのステアリングシリンダ8の伸縮動作に応じて伸縮変形し、当該ステアリングシリンダ8のシリンダロッド14へ飛来する有害物を遮断する(図3参照。)
【0038】
すなわち、直進状態にある操舵輪7を平面において右回り方向へ操舵するときには、右側のステアリングシリンダ8のシリンダロッド14が短縮(左側のステアリングシリンダ8のシリンダロッド14が伸長)される(図3参照。)。このとき、右側のシリンダカバー30では、ステアリングナックル10のロッド連結側ナックルアーム11bの揺動に連動して、ステアリングシリンダ8やタイロッド13の揺動を逃げるようして、カバー部材32がその弾性復元力によって縮小されていくとともに、それにともない保持部材38が左方へ傾倒する方向へ回動されていく。これにより、カバー部材32が、接近してくる操舵輪7から逃げる方向(左方)へ退避してゆく。一方、左側のシリンダカバー30では、ステアリングナックル10のロッド連結側ナックルアーム11bの揺動に連動して、ステアリングシリンダ8やタイロッド13の揺動を逃げるようして、カバー部材32がその弾性を利用して伸長されていくとともに、それにともない保持部材38が左方へ傾倒する方向へ回動されていく。これにより、カバー部材32が、遠ざかる操舵輪7を追いかける方向(左方)へ拡張してゆく。
【0039】
また、操舵輪7を平面において右回り方向へ操舵した状態から左回り方向へ操舵して直進状態に戻すときには、右側のステアリングシリンダ8のシリンダロッド14が伸長(左側のステアリングシリンダ8のシリンダロッド14が短縮)される(図1及び図2参照。)。このとき、右側のシリンダカバー30では、ステアリングナックル10のロッド連結側ナックルアーム11bの揺動に連動して、ステアリングシリンダ8やタイロッド13の揺動を逃げるようして、カバー部材32がその弾性を利用して伸長されていくとともに、それにともない保持部材38が起立する方向へ回動されていく。これにより、カバー部材32が、遠ざかる操舵輪7を追いかける方向(右方)へ拡張してゆく。一方、左側のシリンダカバー30では、ステアリングナックル10のロッド連結側ナックルアーム11bの揺動に連動して、ステアリングシリンダ8やタイロッド13の揺動を逃げるようして、カバー部材32がその弾性復元力によって縮小されていくとともに、それにともない保持部材38が起立する方向へ回動されていく。これにより、カバー部材32が、接近してくる操舵輪7から逃げる方向(右方)へ退避してゆく。
【0040】
また、直進状態にある操舵輪7を平面において左回り方向へ操舵するときには、右側のステアリングシリンダ8のシリンダロッド14が伸長(左側のステアリングシリンダ8のシリンダロッド14が短縮)される。このとき、右側のシリンダカバー30では、ステアリングナックル10のロッド連結側ナックルアーム11bの揺動に連動して、ステアリングシリンダ8やタイロッド13の揺動を逃げるようして、カバー部材32がその弾性を利用して伸長されていくとともに、それにともない保持部材38が右方へ傾倒する方向へ回動されていく。これにより、カバー部材32が、遠ざかる操舵輪7を追いかける方向(右方)へ拡張してゆく。一方、左側のシリンダカバー30では、ステアリングナックル10のロッド連結側ナックルアーム11bの揺動に連動して、ステアリングシリンダ8やタイロッド13の揺動を逃げるようして、カバー部材32がその弾性復元力によって縮小されていくとともに、それにともない保持部材38が右方へ傾倒する方向へ回動されていく。これにより、カバー部材32が、接近してくる操舵輪7から逃げる方向(右方)へ退避してゆく。
【0041】
また、操舵輪7を平面において左回り方向へ操舵した状態から右回り方向へ操舵して直進状態に戻すときには、右側のステアリングシリンダ8のシリンダロッド14が短縮(左側のステアリングシリンダ8のシリンダロッド14が伸長)される。このとき、右側のシリンダカバー30では、ステアリングナックル10のロッド連結側ナックルアーム11bの揺動に連動して、ステアリングシリンダ8やタイロッド13の揺動を逃げるようして、カバー部材32がその弾性復元力によって縮小されていくとともに、それにともない保持部材38が起立する方向へ回動されていく。これにより、カバー部材32が、接近してくる操舵輪7から逃げる方向(左方)へ退避してゆく。一方、左側のシリンダカバー30では、ステアリングナックル10のロッド連結側ナックルアーム11bの揺動に連動して、ステアリングシリンダ8やタイロッド13の揺動を逃げるようして、カバー部材32がその弾性を利用して伸長されていくとともに、それにともない保持部材38が起立する方向へ回動されていく。これにより、カバー部材32が、遠ざかる操舵輪7を追いかける方向(左方)へ拡張してゆく。
【0042】
上記のようにして、フォークリフト1の相対移動するリヤアクスルビーム24とステアリングナックル10のロッド連結側ナックルアーム11bとの間に張設されたカバー部材32が、ステアリングシリンダ8のシリンダロッド14の伸縮動作に応じて伸縮変形しながら、当該ステアリングシリンダ8のシリンダロッド14へ飛来する有害物を遮断する。
【0043】
上記したシリンダカバー30によると、フォークリフト1の相対移動するステアリングナックル10のロッド連結側ナックルアーム11bと車体1aのリヤアクスルビーム24との間に張設された幕状のカバー部材32により、ステアリングシリンダ8のシリンダロッド14を石ころ、泥埃等の有害物から保護することができる。
また、幕状をなしかつステアリングシリンダ8の伸縮方向に関して伸縮変形可能な弾性を有するカバー部材32であるため、ステアリングシリンダ8のシリンダロッド14へ飛来する有害物を遮断する側すなわち後側に幕状にコンパクトに配置することが可能であり、配置スペースを狭小化することができる。
【0044】
また、ロッド連結側ナックルアーム11bに連結されるカバー部材32の連結部(右端部)32aに設けた張枠部材34を、ロッド連結側ナックルアーム11bに締め付けられるボルト28を利用して該ロッド連結側ナックルアーム11bに締着する(図6参照。)。これにより、カバー部材32の連結部(右端部)32aを、張枠部材34により伸縮変形方向に交差する方向に張った状態で、ロッド連結側ナックルアーム11bに容易に連結することができる。また、ロッド連結側ナックルアーム11bに締め付けられるボルト28を利用することにより、張枠部材34をロッド連結側ナックルアーム11bに連結するための専用の部品を省略することができる。
【0045】
また、リヤアクスルビーム24に連結されるカバー部材32の連結部(左端部)32aの伸縮変形方向に交差する方向の両端部(上下両端部)とリヤアクスルビーム24との間に設けられた一対の掛止手段M1のフック部材36と掛止部材46とを掛止することにより、カバー部材32の連結部(左端部)32aを伸縮変形方向に交差する方向(上下方向)に容易に張設することができる(図4及び図5参照。)。
また、掛止部材46とフック部材36との掛止を解除することにより、カバー部材32の連結部(左端部)32aをリヤアクスルビーム24から容易に取外すことができる。これにより、ステアリングシリンダ8及びシリンダカバー30のメンテナンスの作業性を向上することができる。
【0046】
また、保持部材38(図4参照。)の両端部とアクスルビーム24との間に設けられた一対の支持手段M2の支軸部39が軸受部48に回動可能に支持される(図4参照。)。このため、カバー部材32の伸縮変形にともなって、保持部材38が追従回動することにより、そのカバー部材32を保持部材38により所定形状に保持した状態で、カバー部材32を安定的に伸縮変形させることができる。また、保持部材38によりカバー部材32が所定形状に保持されることにより、ステアリングシリンダ8のシリンダチューブ16、シリンダロッド14に対するカバー部材32の接触を回避することができ、その接触によるカバー部材32の破損を防止あるいは低減することができる。
【0047】
また、湾曲状をなす保持部材38が、カバー部材32の伸縮変形方向に交差する方向(上下方向)の中央部分を後方に膨出させる(図4参照。)。これにより、カバー部材32がステアリングシリンダ8のシリンダロッド14をその軸回り方向に関して広範囲に覆うことが可能となるので、シリンダロッド14の保護効果を向上することができる。
【0048】
また、一対の支持手段M2の支軸部39と軸受部48とを保持部材38の撓み変形を利用して係合することにより、保持部材38をリヤアクスルビーム24に容易に回動可能に支持することができる。また、支軸部39と軸受部48との係合を保持部材38の撓み変形を利用して解除することにより、保持部材38をリヤアクスルビーム24から容易に取り外すことができる。
【0049】
また、シリンダカバー30のカバー体31が、リヤアクスルビーム24の外側すなわち後側から、ボルト28による締着、掛止手段M1のフック部材36と掛止部材46とによる掛止、支持手段M2の支軸部39と軸受部48とによる係合により装着されている。このため、カバー部材32が長年の経年変化などにより劣化した場合等においても、ステアリングシリンダ8の脱着を要することなく、カバー体31を容易に短時間で交換することができる。例えば、従来のシリンダブーツ82(図8参照。)によると、駆動用シリンダ80を取り付けた部材(図示省略)からその駆動用シリンダ80を取り外して、シリンダブーツ82をシリンダロッド83から抜き取った後、その逆順で新しいシリンダブーツ82を駆動用シリンダ80に装着して、その駆動用シリンダ80を前記部材(図示省略)に取り付けなければならないことから、煩雑で時間のかかる作業を要することになっている。しかしながら、前記シリンダカバー30によると、前に述べたように、ステアリングシリンダ8の脱着を要しないので、カバー体31を短時間で交換することができる。
【0050】
また、前記フォークリフト1によると、ステアリングシリンダ8のシリンダロッド14を保護しながらも、配置スペースを狭小化することのできるシリンダカバー30を備えたフォークリフト1を提供することができる。
【0051】
本発明は前記実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、本発明は、フォークリフト1に限定されるものではなく、トーイングトラクタ、ショベルローダ等の産業車両に適用することができる。また、産業車両が前輪を操舵するタイプの場合には、車体のフロント側に設けられたステアリング装置にシリンダカバーを採用することができる。この場合、シリンダカバーは、ステアリングナックルのナックルアームとフロントアクスルビームとの間に張設して、ステアリングシリンダのシリンダカバーを覆う構成とすればよい。
また、本発明のシリンダカバー30は、1本のステアリングシリンダにより両操舵輪7が操向駆動される形式のステアリング装置に対しても、そのステアリングシリンダの左右の両シリンダロッドをそれぞれ保護するように配置することができる。また、本発明のシリンダカバー30は、ステアリングシリンダのシリンダロッドに限らず、例えば、ティルトシリンダ、リフトシリンダ等の駆動用シリンダのシリンダロッドを覆うシリンダカバーとしても適用することが可能である。したがって、シリンダカバー30を張設する二部材は、保護する対象となる駆動用シリンダの伸縮作動により相対移動する二部材となる。また、シリンダカバー30が連結される部材には、駆動用シリンダの伸縮作動により相対移動する各部材に限らず、シリンダロッドの先端部(駆動用シリンダの短縮状態のおいてもシリンダチューブから露出するロッド部分が相当する。)、シリンダチューブを含むものとする。
【0052】
また、シリンダカバー30のカバー部材32は、駆動用シリンダのシリンダロッドを完璧に覆う必要はなく、周辺の部材との干渉を避けるために、任意の部位に切り込み溝、あるいは開口孔等が形成されていてもよい。
また、張枠部材34は、ステアリングナックル10のロッド連結側ナックルアーム11bに専用のボルト、あるいは、その他の結合手段により連結することができる。また、張枠部材34を使用することなく、カバー部材32の当該連結部32aをロッド連結側ナックルアーム11bに連結してもよい。
また、掛止手段M1のフック部材36と掛止部材46とは、逆配置すなわちリヤアクスルビーム24にフック部材36を配置し、カバー部材32に掛止部材46を配置することができる。また、掛止手段M1は、ボルト止め、クリップ止め等の結合手段に代えることができる。また、カバー部材32には、フック部材36又は掛止部材46をインサート形により一体化することができる。また、掛止部材46の掛止孔46a又はフック部材36のフック部36aは、リヤアクスルビーム24のビームプレート24a,24b自体に形成することが可能である。
また、保持部材38は、リヤアクスルビーム24に回動可能の他、ステアリングシリンダ8のシリンダロッド14の伸縮方向にスライド可能に設けることも考えられる。また、保持部材38は、湾曲状に限らず、直線状、「コ」の字状、「く」の字状、半円形状等の適宜の形状に変更することができる。また、保持部材38は、折り曲げ方向に撓ませたときの弾性復元力を利用して、リヤアクスルビーム24の両軸受部48に両支軸部39を係合させることができる。
また、支持手段M2の軸受部48と支軸部39とは、逆配置すなわちリヤアクスルビーム24に支軸部39を配置し、保持部材38に軸受部48を配置することができる。また、軸受部48の軸受孔48aは、リヤアクスルビーム24のビームプレート24a,24b自体に形成することが可能である。また、支持手段M2には、リヤアクスルビーム24と保持部材38にそれぞれ設けた軸受部を連結ピンで連結する構成を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の一実施例にかかるシリンダカバーを装備したフォークリフトの直進時におけるステアリング装置を一部破断して示す背面図である。
【図2】ステアリング装置を一部破断して示す平面図である。
【図3】フォークリフトの旋回時におけるステアリング装置を破断して示す平面図である。
【図4】シリンダカバーの周辺部の概略を示す斜視図である。
【図5】シリンダカバーの周辺部の概略を示す分解斜視図である。
【図6】ステアリングナックルのロッド連結側ナックルアームとステアリングシリンダのシリンダロッドとの連結部の周辺を示す分解斜視図である。
【図7】フォークリフトを示す側面図である。
【図8】従来例にかかるシリンダブーツを示す説明図である。
【符号の説明】
【0054】
1 フォークリフト(産業車両)
1a 車体
7 操舵輪
8 ステアリングシリンダ
10 ステアリングナックル
11b 連結側ナックルアーム
14 シリンダロッド
24 リヤアクスルビーム
28 ボルト
30 シリンダカバー
32 カバー部材
32a 連結部
32b 連結部
34 張枠部材
36 フック部材
38 保持部材
39 支軸部
46 掛止部材
48 軸受部
M1 掛止手段
M2 支持手段
ST ステアリング装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
産業車両の相対移動する二部材間に架設された駆動用シリンダのシリンダロッドを保護するための産業車両用シリンダカバーであって、
前記二部材間に、幕状をなしかつ前記駆動用シリンダの伸縮方向に関して伸縮変形可能な弾性を有するカバー部材が、前記駆動用シリンダのシリンダロッドの伸縮動作に応じて伸縮変形可能に張設されていることを特徴とする産業車両用シリンダカバー。
【請求項2】
請求項1に記載の産業車両用シリンダカバーであって、
前記駆動用シリンダが、前記産業車両の操舵輪を操向駆動するステアリング装置のステアリングシリンダであり、
前記産業車両の相対移動する二部材のうちの一方の部材が、前記産業車両の車体のアクスルビームであり、
前記産業車両の相対移動する二部材のうちの他方の部材が、前記産業車両のステアリングナックルのロッド連結側ナックルアームである
ことを特徴とする産業車両用シリンダカバー。
【請求項3】
請求項2に記載の産業車両用シリンダカバーであって、
前記ロッド連結側ナックルアームに連結される前記カバー部材の連結部に、該連結部を伸縮変形方向に交差する方向に張る張枠部材を設け、
前記張枠部材を、前記ロッド連結側ナックルアームに締め付けられるボルトを利用して該ロッド連結側ナックルアームに締着した
ことを特徴とする産業車両用シリンダカバー。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の産業車両用シリンダカバーであって、
前記アクスルビームに連結される前記カバー部材の連結部の伸縮変形方向に交差する方向の両端部と前記アクスルビームとの間に、フック部材と該フック部材を掛止可能な掛止部材とからなる一対の掛止手段を設け、
前記カバー部材を、前記アクスルビームに前記一対の掛止手段を介して前記伸縮変形方向に交差する方向に張設した
ことを特徴とする産業車両用シリンダカバー。
【請求項5】
請求項3〜4のいずれか1つに記載の産業車両用シリンダカバーであって、
前記アクスルビームに、前記カバー部材の伸縮変形方向の両端部の間の中間位置においてそのカバー部材をその伸縮変形方向に交差する方向に関して所定形状に保持する保持部材を備え、
前記保持部材の両端部と前記アクスルビームとの間に、支軸部と該支軸部を回動可能に支持可能な軸受部とからなる一対の支持手段を設け、
前記保持部材を、前記アクスルビームに前記一対の支持手段を介して前記カバー部材の伸縮変形にともなって回動可能に支持した
ことを特徴とする産業車両用シリンダカバー。
【請求項6】
請求項5に記載の産業車両用シリンダカバーであって、
前記保持部材が、前記カバー部材の伸縮変形方向に交差する方向の中央部分を外方に膨出する湾曲状をなしていることを特徴とする産業車両用シリンダカバー。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の産業車両用シリンダカバーであって、
前記支軸部と前記軸受部とを、前記保持部材の撓み変形を利用して係合可能に構成したことを特徴とする産業車両用シリンダカバー。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1つに記載の産業車両用シリンダカバーを備えたことを特徴とする産業車両。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−160151(P2006−160151A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−357104(P2004−357104)
【出願日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】