説明

用紙検出装置

【課題】 用紙検出用のセンサの出力値と閾値とを比較して、画像形成処理に使用する用紙を検出する用紙検出装置において、サービスマン等が閾値を変更するための操作を行うことなく閾値を変更することができる用紙検出装置を提供する。
【解決手段】 用紙23の有無を検出するセンサ16の出力値と記憶手段10が記憶する閾値とを比較して前記用紙23の有無を判断する用紙検出装置1において、自動調整開始トリガに応答して、前記センサ16の用紙検出時の出力値Vpと用紙非検出時の出力値Vbとを取得するとともに取得した両出力値Vp及びVbに基づいて閾値Vsを算出する閾値算出手段2と、前記記憶手段10が記憶する閾値を前記閾値算出手段2が算出した閾値Vsに書換える閾値変更手段2と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、用紙検出装置に関し、詳しくは、ファクシミリ装置や複写機、これらの複合機等が備える記録部の画像形成処理で使用される用紙を検出する用紙検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ファクシミリ装置や複写機等は、画像形成処理に使用する用紙を検出する用紙検出装置を備えており、用紙検出には、例えば反射型センサが使用される。図11は、その反射型センサと検出対象である用紙を概略的に示した斜視図である。図示するように、反射型センサ101は、図中の矢印方向に搬送される用紙102の一方の面に向けて光を発する発光ダイオード等の発光素子103と、該発光素子103が発して用紙102から反射した光を受光することで通電するフォトトランジスタ等の受光素子104と、から構成されており、用紙検出装置では、受光素子103の通電状態に応じて変化する反射型センサ101の出力値(出力電圧)が予め記憶されている閾値を超えたか否かに基づいて反射型センサが用紙102を検出したか否かを判断している。
【0003】
このように、用紙検出装置では、反射型センサ等のセンサの出力値と閾値とに基づいて用紙を検出したか否か、すなわち、用紙の有無を判断しているが、使用するセンサ毎にその感度にバラツキがあるために、装置によって用紙の検出感度が異なるという問題がある。また、1つの装置においてもセンサの経年変化により時間の経過とともに検出感度が変化するという問題もある。そのため、一般的には、用紙検出の基準として使用する上記の閾値を適切な値に変更することにより、センサの感度のバラツキを補正している。
【0004】
このように、閾値を変更することによりセンサの感度のバラツキを補正する装置としては、例えば、特許文献1に開示されているセンサ信号処理装置がある。特許文献1のセンサ信号処理装置は、用紙を検出するためのセンサと、センサの出力値をデジタル信号に変換するA/Dコンバータと、用紙が検出されたか否かを判断するための基準として使用する第1の閾値及び第2の閾値をデジタルデータとして記憶する記憶手段と、を備えている。このように、特許文献1のセンサ信号処理装置は、用紙検出の判断処理に使用する閾値をデジタルデータとして記憶しているため、操作部からの所定操作や通信回線等を介した外部からの書換指示に基づいて閾値を容易に変更することができる。
【特許文献1】特開2001−267903号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、センサの感度のバラツキを補正するための閾値の変更には、上記のように操作部からの所定操作やサービスセンターの装置における書換指示を送信するための操作等、サービスマンなどによる何らかの操作が必要であり、自動的に閾値を変更することはできなかった。
【0006】
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、用紙検出用のセンサの出力値と閾値とを比較して、画像形成処理に使用する用紙を検出する用紙検出装置において、サービスマンなどが閾値を変更するための操作を行うことなく閾値を変更することができる用紙検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1記載の用紙検出装置は、用紙の有無を検出するセンサの出力値と記憶手段が記憶する閾値とを比較して前記用紙の有無を判断する用紙検出装置において、自動調整開始トリガに応答して、前記センサの用紙検出時の出力値と用紙非検出時の出力値とを取得するとともに取得した両出力値に基づいて閾値を算出する閾値算出手段と、前記記憶手段が記憶する閾値を前記閾値算出手段が算出した閾値に変更する閾値変更手段と、を備えることを特徴としている。
【0008】
請求項2記載の用紙検出装置は、用紙の有無を検出するセンサの出力値と記憶手段が記憶する閾値とを比較して前記用紙の有無を判断する用紙検出装置において、自動調整開始トリガに応答して、予め記憶された第1の仮想閾値に基づいて前記センサの用紙検出時又は用紙非検出時の出力値を取得する第1の取得手段と、該手段が取得した前記センサの用紙検出時の出力値と検出用電源の電圧値、又は前記第1の取得手段が取得した前記センサの用紙非検出時の出力値と基準電圧値に基づいて第2の仮想閾値を算出しそれに基づいて前記センサの用紙非検出時又は用紙検出時の出力値を取得する第2の取得手段と、前記第1の取得手段が取得した前記センサの用紙検出時の出力値と前記第2の取得手段が取得した前記センサの用紙非検出時の出力値、又は第1取得手段が取得した前記センサの用紙非検出時の出力値と前記第2の取得手段が取得した前記センサの用紙検出時の出力値に基づいて閾値を算出する閾値算出手段と、前記記憶手段が記憶する閾値を前記閾値算出手段が算出した閾値に変更する閾値変更手段と、を備えることを特徴としている。
【0009】
用紙の有無を検出するセンサの出力値と記憶手段が記憶する閾値とを比較して前記用紙の有無を判断する用紙検出装置において、自動調整開始トリガに応答して、予め記憶された第1の仮想閾値に基づいて前記センサの用紙検出時又は用紙非検出時の出力値を取得する第1の取得手段と、該手段が複数取得した前記センサの用紙検出時の出力値の平均値と検出用電源の電圧値、又は前記第1の取得手段が取得した前記センサの用紙非検出時の出力値と基準電圧値に基づいて第2の仮想閾値を算出しそれに基づいて前記センサの用紙非検出時又は用紙検出時の出力値を取得する第2の取得手段と、前記第1の取得手段が複数取得した前記センサの用紙検出時の出力値の平均値と前記第2の取得手段が取得した前記センサの用紙非検出時の出力値、又は前記第1の取得手段が取得した前記センサの用紙非検出時の出力値と前記第2の取得手段が複数取得した前記センサの用紙検出時の出力値の平均値に基づいて閾値を算出する閾値算出手段と、前記記憶手段が記憶する閾値を前記閾値算出手段が算出した閾値に変更する閾値変更手段と、を備えることを特徴としている。
【0010】
請求項4記載の用紙検出装置は、請求項1乃至3のいずれか1に記載の用紙検出装置において、前記閾値算出手段は、平均化処理を行って前記閾値を算出することを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
請求項1又は2記載の用紙検出装置によれば、自動調整開始トリガ(例えば、自装置の電源が投入されたこと)に応答して閾値が変更されるので、サービスマン等が閾値を変更するための操作を行う必要がないという利点がある。
【0012】
請求項3記載の用紙検出装置によれば、センサの用紙検出時の複数の出力値の平均値をセンサの用紙検出時の出力値として使用しているので、センサの用紙検出時の出力値が用紙のチャタリング等が原因で変動したとしても、その影響を低減させて適切な閾値を算出することができる。
【0013】
請求項4記載の用紙検出装置によれば、センサの用紙検出時の出力値と用紙非検出時の出力値との平均化処理を行って閾値を算出するので、閾値を最適な値に変更することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の実施形態に係る用紙検出装置を、原稿の画像データを読取って感熱記録方式で用紙(感熱紙)に記録する複写機に具体化した一実施形態について図面に基づいて説明する。複写機(用紙検出装置)1は、図1に例示するように、制御部(MPU:Microprocessing Unit)2、ROM(Read Only Memory)3、原稿読取部4、コーデック5、画像メモリ6、操作部7、表示部8、記録部9、及びRAM(Random Access Memory)10を備えたものであって、各部2乃至10はバス11によって通信可能に接続されている。
【0015】
制御部2は、ROM3に格納された制御プログラムに従って、この複写機1を構成する各部を制御するものである。原稿読取部4は、原稿の画像データを読取って所定の出力先に出力するものである。
【0016】
コーデック5は、画像データを符号化及び復号するものである。ここでは、原稿読取部4から出力された画像データをJPEG(Joint Photographic Experts Group)、MH(Modified Huffman)、MR(Modified Read)、MMR(Modified Modified Read)、JBIG(Joint Bi-level Image Group)方式等により符号化し、符号化されている画像データを復号する。画像メモリ6は、原稿読取部4から直接出力された画像データ、コーデック5において符号化された画像データ等を蓄積する。
【0017】
操作部7は、図示しないが原稿読取部4に原稿の読取開始を指示するためのスタートキー、コピー部数等を入力するためのテンキー、各種設定を行うためのカーソルキーなど、表示部8と連動した各種操作キーを備えている。表示部8は、各種の設定状態や複写機1の動作状態などを文字や図形などで表示する液晶表示装置(LCD:Liquid Crystal Display)などを備えている。
【0018】
記録部9は、画像メモリ6から読み出された画像データの画像を用紙に記録するものであり、記録ヘッド12、記録部インターフェース13、カバー開閉センサ14、用紙搬送制御部15、用紙検出センサ16、及びA/Dコンバータ17を備える。記録ヘッド12は、発熱素子が記録画素毎に配列されて構成されており、発熱素子が記録部インターフェース13を介して画像メモリ6から送信されてくる画像データに従って発熱して用紙を加熱することにより、用紙上に画像が記録される(画像形成処理)。カバー開閉センサ14は、装置1本体に設けられた記録部9へアクセスするためのカバー(不図示)の開閉を検出するものである。
【0019】
用紙搬送制御部15は、画像形成処理で使用される用紙の搬送を制御するものである。図2は、記録部9の画像形成処理で使用される用紙を示した図である。図示するように、記録部9は、画像形成処理で使用される用紙を記録ヘッド12へ供給するために、用紙フォルダ18、搬送用モータ19、ゴムローラ20、カッター用モータ21、及びカッター22を具備している。用紙フォルダ18は、ロール状に巻回された用紙23を収容するためのものである。搬送用モータ19及びゴムローラ20は、用紙23を記録ヘッド12へ向かう方向(以下、「順方向」という。)又は順方向とは逆の方向(以下、「逆方向」という。)へ搬送するものであり、搬送用モータ19の回転が用紙搬送制御部15に制御されて、用紙23が順方向又は逆方向に搬送される。カッター用モータ21及びカッター22は、用紙23を切断するためのものであり、カッター用モータ21が用紙搬送制御部15に制御されて回転することにより、カッター22が図中の矢符A方向に移動して用紙23を切断する。このカッター用モータ21及びカッター22は、記録ヘッド12によって画像が記録された用紙23(記録紙)を所定の長さで切断する。また、用紙搬送制御部15は、自装置1の電源が投入されると、用紙23の適切な位置に画像を記録するために、カッター22の切断位置より記録ヘッド12側にある用紙23の一部(先端部分)を切断して、用紙23の先端を所定の位置に合わせる処理(以下、これを「イニシャルカット」という。)を行う。
【0020】
用紙検出センサ16は、用紙23の有無を検出するものであり、搬送される用紙23又は用紙23の搬送路に対して用紙検出センサ16と対向する位置に設けられた吸光板(不図示)に向けて光を発する発光素子(発光ダイオード)24と、該発光素子24が発して用紙23から反射した光を受光することにより通電する受光素子(フォトトランジスタ)25と、からなる。なお、用紙23が用紙検出センサ16上にない場合には、発光素子24が発した光が吸光板により吸収されるので、受光素子25は、発光素子24が発した光を受光できず通電しない。
【0021】
図3は、用紙検出センサ16周辺の回路構成を示した図である。図示するように、発光素子24は、一端が駆動用電源26に接続されるとともに他端がGND27に接続されており、駆動用電源26から供給される電源Voにより発光する。受光素子25は、所定の抵抗値を有する抵抗28を介して一端が検出用電源29に接続されるとともに他端がGND27に接続されている。また、受光素子25と抵抗28の間の接続点aには、信号線30を介してA/Dコンバータ17が接続されている。
【0022】
A/Dコンバータ17は、用紙検出センサ16の出力値として接続点aの電圧値をA/D変換してデジタルデータとして制御部2に出力する。制御部2は、A/Dコンバータ17によりA/D変換された用紙検出センサ16の出力値を取得するとともに、取得した用紙検出センサ16の出力値とRAM10に記憶されている閾値とを比較して、用紙検出センサ16が用紙23を検出したか否か、すなわち、用紙検出センサ16の検出ポイントにおける用紙23の有無を判断する。具体的には、受光素子25が用紙23から反射した光を受光して通電している状態では、接続点aの電圧値は、ゼロ電圧であるGND27の電圧値(基準電圧値)とほぼ等しくなるため、A/Dコンバータ17によりA/D変換された接続点aの電圧値(用紙検出センサ16の出力値)は、通常RAM10に記憶された閾値よりも小さくなる。これにより、制御部2は、用紙検出センサ16が用紙23を検出した、すなわち、用紙検出センサ16の検出ポイントに用紙23があると判断することができる。
【0023】
一方、受光素子25が発光素子24が発した光を受光できないために通電していない状態では、接続点aの電圧値は、検出用電源29の電圧値Vcc(ここでは、5V)とほぼ等しくなるため、A/Dコンバータ17によりA/D変換された接続点aの電圧値(用紙検出センサ16の出力値)は、通常RAM10に記憶された閾値よりも大きくなる。これにより、制御部2は、用紙検出センサ16が用紙23を検出していない、すなわち、用紙検出センサ16の検出ポイントに用紙23がないと判断することができる。
【0024】
RAM10は、制御部2の主メモリ、ワークエリア等として機能し、各種の設定情報等を記憶するものであり、上記のように用紙検出の判断処理に使用する閾値と、用紙検出センサ16の感度に応じて予め設定された第1の仮想閾値Vsimi1を記憶している。したがって、RAM10は、閾値を記憶する記憶手段として機能する。
【0025】
上記構成を備える複写機1は、用紙検出センサ16の出力値とRAM10が記憶する閾値とを比較して用紙23の有無を判断する。また、複写機1は、閾値自動調整機能を備えており、自装置1の電源が投入された場合に、上述したイニシャルカットを行うとともに、閾値を変更する処理を行う。この閾値変更処理は、用紙検出センサ16の用紙検出時の出力値と用紙非検出時の出力値とに基づいて、閾値を変更する処理である。以下、自装置1の電源が投入された場合に複写機1で行われる処理動作について図4及び図5に示すフローチャートに基づいて説明する。なお、図6は、自装置1の電源が投入された後の用紙検出センサ16の出力値(接続点aの電圧値)の変化を示した図であり、縦軸は用紙検出センサ16の出力値を表しており、横軸は時刻を表している。
【0026】
制御部2は、自装置1の電源が投入されると、外光により適切な閾値変更処理が行えなくなることを防止するために、カバー開閉センサ14の検出信号に基づいて、装置1本体に設けられたカバーが閉じているか否かを判断する(S1)。ここで、カバーが閉じていると判断した場合には(S1:YES)、用紙検出センサ16の出力値(接続点aの電圧値)、すなわち、A/Dコンバータ17がA/D変換した用紙検出センサ16の出力値を取得する(S2)。
【0027】
次に、制御部2は、S2で取得した用紙検出センサ16の出力値がRAM10に記憶されている第1の仮想閾値Vsimi1より小さいか否かを判断する(S3)。すなわち、第1の仮想閾値Vsimi1を基準にして用紙検出センサ16が用紙23を検出しているか否か(用紙検出センサ16の検出ポイントにおける用紙23の有無)を判断する。この第1の仮想閾値Vsimi1は、用紙検出センサ16に固有の閾値であり、本実施形態では、用紙検出センサ16の性能から第1の仮想閾値Vsimi1を3.5Vとしている。
【0028】
前記S3において、図6の時刻tから時刻tにおける用紙検出センサ16の出力値のように、用紙検出センサ16の出力値が第1の仮想閾値Vsimi1よりも大きいと制御部2が判断した場合(S3:NO)、すなわち、用紙検出センサ16が用紙23を検出していない場合、用紙23がない旨のメッセージを表示部8に表示する等して、ユーザに用紙無しエラーを報知し、処理をS1に戻す(S4)。本実施形態では、用紙フォルダ18の所定の位置に用紙23が正しくセットされてカバーが閉じられると、用紙検出センサ16が用紙23を検出するようになっている。
【0029】
一方、前記S3において、図6の時刻tにおける用紙検出センサ16の出力のように、用紙検出センサ16の出力値が第1の仮想閾値Vsimi1よりも小さいと制御部2が判断した場合(S3:YES)、すなわち、用紙検出センサ16が用紙23を検出している場合、用紙搬送制御部15は、搬送用モータ19を回転させる(S5)。用紙搬送制御部15は、図7に示すように、搬送用モータ19の回転を制御して用紙23を順方向に搬送するとともに、用紙検出センサ16の用紙検出時(用紙を検出しているとき)の出力値Vpを所定の時間間隔で複数取得する(S6)。図6の時刻tから時刻tまでの出力値は、S6の処理中における用紙検出センサ16の出力値Vpの変化を示しており、第1の取得手段として機能する制御部2は、この時刻tから時刻tまでの間の出力値Vpを所定の時間間隔で複数取得する。
【0030】
ところで、S3において用紙検出センサ16が用紙を検出しているか否かを判断するための基準となる第1の仮想閾値Vsimi1は、仮の閾値であるため、S3における判断処理は、正確に行われていないおそれがある。すなわち、S3において肯定判断をした時点では、実際には用紙23が検出されていない可能性がある。したがって、S6では、仮の閾値である第1の仮想閾値Vsimi1を基準として用紙検出時であると判断した後、更に用紙23を搬送させつつ出力値Vpを取得することにより、用紙検出センサ16が用紙23を確実に検出した状態で用紙検出時の出力値Vpを取得している。
【0031】
次に、制御部2は、S6で複数取得した用紙検出センサ16の用紙検出時の出力値Vpの平均値Vpaveを算出する(S7)。なお、前記S6において、用紙検出センサ16の用紙検出時の出力値Vpを1つ取得するとともに、このS7の処理を行わず、単一の出力値Vpを用紙検出時の出力値として用いることも可能である。ただし、S6の処理が行われる間、すなわち、図6の時刻tから時刻tの間は、用紙23が搬送中であるため、出力値Vpが若干変動する。そのため、出力値Vpを複数取得してそれらを平均化することにより、より正確な用紙検出センサ16の用紙検出時の出力値を得ることができる。
【0032】
制御部2は、前記S7で算出した用紙検出センサ16の用紙検出時の複数の出力値Vpの平均値Vpaveと検出用電源29の電圧値Vccとに基づいて、第2の仮想閾値Vsimi2を算出する(S8)。具体的には、第2の仮想閾値Vsimi2として、平均値Vpaveと検出用電源29の電圧値Vccとの平均値を算出する。上述したように、用紙検出センサ16の用紙非検出時の出力値は、検出用電源29の電圧値Vccとほぼ等しくなるので、用紙検出センサ16の用紙非検出時の理想的な出力値として、検出用電源29の電圧値Vccを用いて第2の仮想閾値Vsimi2を算出する。
【0033】
次に、用紙搬送制御部15は、前記S5で回転させた搬送用モータ19のステップ数が所定のステップ数に達すると、搬送用モータ19の回転を停止させ、図8に示すように、カッター用モータ21を回転させて、カッター22で用紙23の先端部分を切断する(S9)。この状態では、用紙検出センサ16は、用紙23を検出している。カッター22で用紙の先端部分を切断した後、図9に示すように、搬送用モータ19の回転を制御して、用紙23を逆方向に搬送する(S10)。制御部2は、S10の処理動作と並行して、用紙検出センサ16の出力値が第2の仮想閾値Vsimi2より大きいか否かを判断する(S11)。すなわち、第2の仮想閾値Vsimi2を基準として、用紙検出センサ16が用紙23を検出していないか否かを判断する。
【0034】
前記S11において、用紙検出センサ16の出力値が第2の仮想閾値Vsimi2よりも小さいと制御部2が判断した場合(S11:NO)、すなわち、用紙検出センサ16が用紙23を検出している場合、用紙搬送制御部15は、用紙検出センサ16の出力値が第2の仮想閾値Vsimi2より大きくなるまで、搬送用モータ19の回転を制御して用紙23を逆方向に搬送する(S10)。
【0035】
一方、制御部2は、前記S11において、図6の時刻tにおける用紙検出センサ16の出力値のように、用紙検出センサ16の出力値が第2の仮想閾値Vsimi2よりも大きくなったと判断した場合(S11:YES)、すなわち、用紙検出センサ16が用紙23を検出しなくなった場合、図6の時刻tから時刻tに示す用紙検出センサ16の用紙非検出時(用紙23を検出していない時)の出力値Vbを取得する(S12)。このように第2の取得手段として機能する制御部2は、複数取得した用紙検出センサ16の用紙検出時の出力値Vpの平均値Vpaveと用紙検出センサ16の検出用電源29の電圧値Vccとに基づいて算出した第2の仮想閾値Vsimi2に基づいて用紙検出センサ16の用紙非検出時の出力値Vbを取得する。なお、図6の時刻tから時刻tに示すように、用紙検出センサ16の用紙非検出時の出力値Vbは、用紙検出時の出力値Vpのようにバラツキが生じず、一定の値となる。
【0036】
次に、閾値算出手段として機能する制御部2は、前記S7で算出した用紙検出センサ16の用紙検出時の複数の出力値Vpの平均値Vpaveと前記S12で取得した用紙検出センサ16の用紙非検出時の出力値Vbとに基づいて、閾値Vsを算出する(S13)。具体的には、平均値Vpaveと出力値Vbとに基づいて平均化処理を行って、平均値Vpaveと出力値Vbとの平均値を閾値として算出する。なお、閾値としては、平均値Vpaveと出力値Vbとの平均値が最も好ましいが、平均値周辺の値であってもよい。次に、閾値変更手段として機能する制御部2は、RAM10に記憶されている閾値を前記S13で算出した閾値Vsに変更する(S14)。具体的には、RAM10に記憶されている閾値をS13で算出した閾値Vsに書換える。なお、工場出荷時などでRAM10に閾値が記憶されていない場合には、閾値Vsをそのまま記憶する。
【0037】
次に、用紙搬送制御部15は、図10に示すように、搬送用モータ19の回転を制御して用紙23を順方向に搬送する(S15)。制御部2は、S15の処理動作と並行して、用紙検出センサ16の出力値が閾値Vsより小さいか否かを判断する(S16)。すなわち、閾値Vsを基準として、用紙検出センサ16が用紙23を検出しているか否かを判断する。前記S15において、用紙検出センサ16の出力値が閾値Vsよりも大きいと制御部2が判断した場合(S16:NO)、すなわち、用紙検出センサ16が用紙を検出していない場合、用紙搬送制御部15は、用紙検出センサ16の出力値が閾値Vsより小さくなるまで、搬送用モータ15の回転を制御して用紙23を順方向に搬送する(S15)。
【0038】
一方、前記S16において、図6の時刻tにおける用紙検出センサ16の出力値のように、用紙検出センサ16の出力値が閾値Vsよりも小さくなったと制御部2が判断した場合(S16:YES)、すなわち、用紙検出センサ16が用紙23を検出した場合、用紙搬送制御部15は、搬送用モータ19の回転を停止させて処理を終了する(S17)。この状態で、用紙23の先端は、用紙検出センサ16上に位置する。このように、複写機1は、前記S1乃至S17の処理動作を行ってイニシャルカットとともに、閾値変更処理を行う。
【0039】
本発明の実施形態に係る複写機1は、自装置1の電源が投入される毎に、前記S1乃至S17の処理動作を行って、閾値を適切な値に変更する。したがって、複写機1は、常に適切な閾値で用紙検出の判断処理を行うことができる。
【0040】
本実施形態においては、用紙検出センサ16の用紙検出時の出力値Vpを取得した後、用紙検出センサ16の用紙非検出時の出力値Vbを取得し、取得した両出力値に基づいて閾値Vsを算出するようにしたが、用紙検出センサ16の用紙検出時の出力値Vpと用紙非検出時の出力値Vbを取得する順序はこれに限定されない。すなわち、用紙検出センサ16の用紙非検出時の出力値Vbを取得した後、用紙非検出センサ16の用紙検出時の出力値Vpを取得し、取得した両出力値に基づいて閾値Vsを算出するようにしてもよい。具体的には、まず、第1の仮想閾値Vsimi1に基づいて用紙非検出時の出力値Vbを取得する。次に、取得した用紙検出センサ16の用紙非検出時の出力値VbとGND27の電圧値(基準電圧値)とに基づいて、すなわち、出力値VbとGND27の電圧値とを平均化処理して、第2の仮想閾値Vsimi2を算出する。次に、算出した第2の仮想閾値Vsimi2Vsimi2に基づいて用紙検出センサ16の用紙検出時の出力値Vpを取得する。そして、取得した用紙検出センサ16の用紙非検出時の出力値Vpと用紙非検出時の出力値Vbとに基づいて閾値Vsを取得する。
【0041】
なお、本実施形態においては、発光素子24が発して用紙23から反射した光を受光素子25が受光して通電する構成(反射型)の用紙検出センサ16について説明したが、用紙検出センサ16の構成はこれに限定されるものではなく、いわゆる、透過型のセンサであってもよい。この透過型のセンサを用いた場合には、用紙検出時の出力値と用紙非検出時の出力値が本実施形態の場合と逆になる。また、用紙検出装置を複写機に具体化した場合について説明したが、用紙検出装置をファクシミリ装置や複写機及びファクシミリ装置の複合機等に適用することも可能である。また、記録部9における記録方式は、感熱記録方式以外の記録方式であってもよく、例えば、インクジェット方式や電子写真方式等であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、例えば、複写機やファクシミリ装置、これらの複合機に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施形態に係る複写機の構成例を示すブロック図である。
【図2】記録部の画像形成処理で使用される用紙を示した図である。
【図3】用紙検出センサ周辺の回路構成を示した図である。
【図4】本発明の実施形態に係る複写機が電源が投入された際に実行する処理動作を示したフローチャートである。
【図5】本発明の実施形態に係る複写機が電源が投入された際に実行する処理動作を示したフローチャートである。
【図6】用紙検出センサの出力値の変化を示した図である。
【図7】用紙を順方向に搬送している状態を示した図である。
【図8】用紙の先端部分を切断している状態を示した図である。
【図9】用紙を逆方向に搬送している状態を示した図である。
【図10】用紙を順方向に搬送している状態を示した図である。
【図11】反射型センサと検出対象である用紙を概略的に示した斜視図である。
【符号の説明】
【0044】
1 複写機(用紙検出装置)
2 制御部
3 ROM
10 RAM(記憶手段)
16 用紙検出センサ(センサ)
23 用紙
29 検出用電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙の有無を検出するセンサの出力値と記憶手段が記憶する閾値とを比較して前記用紙の有無を判断する用紙検出装置において、
自動調整開始トリガに応答して、前記センサの用紙検出時の出力値と用紙非検出時の出力値とを取得するとともに取得した両出力値に基づいて閾値を算出する閾値算出手段と、前記記憶手段が記憶する閾値を前記閾値算出手段が算出した閾値に変更する閾値変更手段と、を備えることを特徴とする用紙検出装置。
【請求項2】
用紙の有無を検出するセンサの出力値と記憶手段が記憶する閾値とを比較して前記用紙の有無を判断する用紙検出装置において、
自動調整開始トリガに応答して、予め記憶された第1の仮想閾値に基づいて前記センサの用紙検出時又は用紙非検出時の出力値を取得する第1の取得手段と、該手段が取得した前記センサの用紙検出時の出力値と検出用電源の電圧値、又は前記第1の取得手段が取得した前記センサの用紙非検出時の出力値と基準電圧値に基づいて第2の仮想閾値を算出しそれに基づいて前記センサの用紙非検出時又は用紙検出時の出力値を取得する第2の取得手段と、前記第1の取得手段が取得した前記センサの用紙検出時の出力値と前記第2の取得手段が取得した前記センサの用紙非検出時の出力値、又は第1取得手段が取得した前記センサの用紙非検出時の出力値と前記第2の取得手段が取得した前記センサの用紙検出時の出力値に基づいて閾値を算出する閾値算出手段と、前記記憶手段が記憶する閾値を前記閾値算出手段が算出した閾値に変更する閾値変更手段と、を備えることを特徴とする用紙検出装置。
【請求項3】
用紙の有無を検出するセンサの出力値と記憶手段が記憶する閾値とを比較して前記用紙の有無を判断する用紙検出装置において、
自動調整開始トリガに応答して、予め記憶された第1の仮想閾値に基づいて前記センサの用紙検出時又は用紙非検出時の出力値を取得する第1の取得手段と、該手段が複数取得した前記センサの用紙検出時の出力値の平均値と検出用電源の電圧値、又は前記第1の取得手段が取得した前記センサの用紙非検出時の出力値と基準電圧値に基づいて第2の仮想閾値を算出しそれに基づいて前記センサの用紙非検出時又は用紙検出時の出力値を取得する第2の取得手段と、前記第1の取得手段が複数取得した前記センサの用紙検出時の出力値の平均値と前記第2の取得手段が取得した前記センサの用紙非検出時の出力値、又は前記第1の取得手段が取得した前記センサの用紙非検出時の出力値と前記第2の取得手段が複数取得した前記センサの用紙検出時の出力値の平均値に基づいて閾値を算出する閾値算出手段と、前記記憶手段が記憶する閾値を前記閾値算出手段が算出した閾値に変更する閾値変更手段と、を備えることを特徴とする用紙検出装置。
【請求項4】
前記閾値算出手段は、平均化処理を行って前記閾値を算出することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1に記載の用紙検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−80768(P2006−80768A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−261186(P2004−261186)
【出願日】平成16年9月8日(2004.9.8)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】