説明

画像処理方法および画像処理プログラムを記録した記録媒体

【課題】 人間の顔や肌の領域を含んだ写真画像からなるデジタル画像データに対して、該人間の顔や肌の領域の色を自然な色に補正するとともに、画像全体としても良好なカラーバランスとなる色の補正を行う画像処理方法を提供する。
【解決手段】 画像内の顔領域のデータから顔領域平均色を算出し、そのYCCデータから、C1−C2平面上に該顔領域平均色の点をプロットする。この顔領域平均色のプロット位置に応じて補正方法が選択され、選択された補正方法による補正量を算出し、画像の補正を行う。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば、スキャナによって取り込まれた写真画像、あるいはデジタルカメラによって撮影された写真画像からなるカラーデジタル画像データに対して、色の補正を行う画像処理方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】昨今では、デジタルカメラやスキャナなどの普及により、デジタル画像データに基づいて写真画像のプリントを行うデジタルプリントが広く行われるようになっている。このようなデジタルプリントは、例えば、インクジェット方式のプリンタやレーザプリンタ、あるいは、LCD(Liquid Crystal Display)、DMD(Digital Micromirror Device)、PLZTなどの光変調素子を用い、印画紙などの感光材料を感光させることによって焼付を行うデジタルプリンタなどによって行われる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】デジタルカメラによって撮影が行われたデジタル画像データの場合、撮影時の光源の影響が顕著に現れる傾向があり、画像全体に色の偏りが見られることがある。例えば蛍光灯の下で撮影を行った画像の場合、画像全体が青みがかった状態になることが多い。また、デジタルカメラの機種の違いによっても、同じ環境で撮影が行われても、画像における色の偏り具合に差が見られることもある。このように、画像に色の偏りが生じている場合には、被写体としての人間の顔の色が不自然な色となり、プリント画像としては満足いくものではないものとなってしまう。
【0004】このような色の偏りを補正する方法としては、対象となる画像のデジタル画像データをコンピュータの表示画面上に表示し、オペレータによって手動で色合いを調整する方法がある。しかしながら、多量の画像データを処理しなければならない場合には、膨大な時間がかかることになるので、自動でカラーバランスの調整を行う方法が各種提案されている。
【0005】このような画像のカラーバランスを調整する方法の一例として、LATD(Large Area Transmittance Density)方式と呼ばれるものがある。このLATD方式は、エバンス説と呼ばれる定理に基づいたカラーバランス調整方式である。
【0006】エバンス説とは、簡単に説明すると、一般的な戸外の風景を撮影した画像において、この画像に記録されている色の全てを混ぜ合わせると、灰色に近くなる、という定理のことである。すなわち、LATD方式は、画像全体の各画素のデータを積算し、その積算した色が灰色となるように、カラーバランスを調整する方式である。具体的には、各画素毎の画像データの平均値をBGR毎に算出し、各平均値がそれぞれグレーに対応する値となるようにカラーバランスを調節することになる。
【0007】しかしながら、写真などの限られた領域では、一般的に色の分布に偏りがあるのが普通であり、上記のLATD方式によるカラーバランスの調整を行った場合、カラーフェリアと呼ばれる過度な色補正が発生する虞れがある。カラーフェリアとは次のようなものである。LATD方式は、上記のように、画像全体を平均した色が灰色となるように補正を行う方式であるので、画像の中に灰色でない特定の色からなる大きな領域が存在している場合には、その色を灰色に近づけるような補正を行ってしまうことになる。例えば、赤い壁の前に人物が写っているような画像の場合、LATD方式によって補正を行うと、大きな面積を占めている壁の赤い色を灰色に近づけようとするので、画像全体が、赤色の補色であるシアンがかった状態となってしまうことになる。すなわち、この画像では、人物の顔色がシアンがかってしまい、不自然な色合いの画像となってしまう。
【0008】本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、その目的は、人間の顔や肌の領域を含んだ写真画像からなるデジタル画像データに対して、該人間の顔や肌の領域の色を自然な色に補正するとともに、画像全体としても、良好なカラーバランスとなる色の補正を行う画像処理方法および画像処理プログラムを記録した記録媒体を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するために、請求項1記載の画像処理方法は、複数の画素からなるデジタル画像データに対して色の補正を行う画像処理方法において、上記デジタル画像データからなる画像内に、特定の対象を示す領域が含まれている場合に、該領域を指定するステップと、上記領域内の各画素におけるデータに基づいて、該領域を代表する色データを求めるステップと、上記色データに応じて、複数の色の補正方法の中から1つの補正方法を選択し、該補正方法によって色の補正量を算出するステップと、算出された色の補正量に基づいて、上記デジタル画像データの全ての画素に対して色の補正を行うステップとを有していることを特徴としている。
【0010】上記の方法によれば、まず、基本的には、特定の対象を示す領域の色に応じて、画像全体の色の補正が行われることになる。この際に、上記領域を代表する色データに応じて、複数の色の補正方法の中から1つの補正方法が選択され、この補正方法によって求められる色の補正量に基づいて、画像全体の色の補正が行われることになる。したがって、例えば、補正前の上記領域内の色の状態に応じて、画像全体の色の補正の方法を変化させた方が好ましい場合に、状態に応じた好ましい補正方法によって色の補正を行うことが可能となる。
【0011】請求項2記載の画像処理方法は、請求項1記載の方法において、上記特定の対象を示す領域が、人間の肌の部分を示す領域であることを特徴としている。
【0012】上記の方法によれば、人間の肌の部分を示す領域を代表する色データに応じて、複数の色の補正方法の中から1つの補正方法が選択され、この補正方法によって求められる色の補正量に基づいて、画像全体の色の補正が行われることになる。したがって、補正前の画像データにおいて、人間の肌の部分を示す領域が、どのような色の状態となっているかによって、画像全体の色の補正方法を変化させることが可能となるので、例えば、上記領域の色の状態に応じて、あまり色の補正を行わない方がよい場合や、肌の色としてより適した色となるように補正を行った方がよい場合などに対応することが可能となる。よって、様々な種類の補正前の画像データに対して補正を行っても、補正後の画像における色バランスを好ましい状態にすることができる。
【0013】請求項3記載の画像処理方法は、請求項1または2記載の方法において、上記の特定の対象を示す領域の色として好ましいとされる理想色が設定されており、上記の複数の補正方法が、上記領域を代表する色データが、上記理想色に近づけるような補正方法、および色の補正を行わない補正方法を含んでいることを特徴としている。
【0014】上記の方法によれば、特定の対象を示す領域を代表する色データに応じて、該領域として好ましいとされる理想色に近づけるような補正方法が選択されたり、色の補正を行わない補正方法が選択されたりすることになる。したがって、上記領域の色の状態に応じて、理想色に近づけるような補正を行った方が、補正後の画像の色バランスが良好になる場合や、補正を行わない方が、補正後の画像の色バランスが良好になる場合などに対応することが可能となる。
【0015】請求項4記載の画像処理方法は、請求項1ないし3のいずれかに記載の方法において、上記複数の色の補正方法として、色相および彩度を変化させる補正方法、色相を変化させる一方、彩度を変化させない補正方法、色相を変化させない一方、彩度を変化させる補正方法、および色相および彩度を変化させない補正方法が設定されていることを特徴としている。
【0016】上記の方法によれば、複数の色の補正方法として、上記の4つの方法が設定されているので、特定の対象を示す領域を代表する色データに応じて、補正後の画像の色バランスが好ましくなる補正方法を選択することが可能となる。
【0017】請求項5記載の画像処理方法は、請求項1ないし4のいずれかに記載の方法において、上記の特定の対象を示す領域を代表する色データの色相および彩度に応じて、上記の複数の補正方法の中から1つの補正方法が選択されることを特徴としている。
【0018】上記の方法によれば、上記領域を代表する色データにおける色相および彩度に応じて、複数の補正方法の中から1つの補正方法が選択されるので、画像の明暗による補正方法の選択に対する影響をなくすことができる。よって、より的確に色の補正方法の選択を行うことができる。
【0019】請求項6記載の画像処理方法は、請求項5記載の方法において、上記の特定の対象を示す領域の色として好ましいとされる理想色の色相が設定されており、選択された補正方法に色相を変化させる補正が含まれている場合に、上記領域を代表する色データにおける色相と上記理想色の色相との差を求め、この差に対する所定の割合で、上記領域を代表する色データにおける色相を、上記理想色の色相に近づけるような色相の補正を行うことを特徴としている。
【0020】上記の方法によれば、色相を変化させる補正を行う場合に、上記領域を代表する色データにおける色相と上記理想色の色相との差を求めるとともに、この差に対する所定の割合で、上記領域を代表する色データにおける色相を、上記理想色の色相に近づけるような色相の補正を行うことになる。すなわち、色相に関して補正を行う場合、色データにおける色相を、理想色の色相に一致させるような補正を行うのではなく、所定の割合で理想色に近づけるような補正が行われることになる。このような補正を行うことによって、必要以上に色相が補正されてしまうことにより、画像全体でみると色のバランスが悪くなるというようなことを抑制することができる。
【0021】請求項7記載の画像処理方法は、請求項5または6記載の方法において、上記の特定の対象を示す領域の色として好ましいとされる理想色の彩度が設定されており、選択された補正方法に彩度を変化させる補正が含まれている場合に、上記領域を代表する色データにおける彩度を、所定の値だけ上記の理想色の彩度に近づけるような彩度の補正を行うことを特徴としている。
【0022】上記の方法によれば、彩度を変化させる補正を行う場合に、上記領域を代表する色データにおける彩度を、所定の値だけ上記の理想色の彩度に近づけるような彩度の補正を行うことになる。すなわち、彩度に関して補正を行う場合、色データにおける彩度を、理想色の彩度に一致させるような補正を行うのではなく、所定の値で理想色に近づけるような補正が行われることになる。このような補正を行うことによって、必要以上に彩度が補正されてしまうことにより、画像全体でみると色のバランスが悪くなるというようなことを抑制することができる。
【0023】請求項8記載の画像処理プログラムを記録した記録媒体は、複数の画素からなるデジタル画像データに対して色の補正を行う画像処理プログラムを記録した記録媒体において、上記デジタル画像データからなる画像内に、特定の対象を示す領域が含まれている場合に、該領域を指定する処理と、上記領域内の各画素におけるデータに基づいて、該領域を代表する色データを求める処理と、上記色データに応じて、複数の色の補正方法の中から1つの補正方法を選択し、該補正方法によって色の補正量を算出する処理と、算出された色の補正量に基づいて、上記デジタル画像データの全ての画素に対して色の補正を行う処理とをコンピュータに実行させることを特徴としている。
【0024】上記の記録媒体に記録されたプログラムによれば、まず、基本的には、特定の対象を示す領域の色に応じて、画像全体の色の補正が行われることになる。この際に、上記領域を代表する色データに応じて、複数の色の補正方法の中から1つの補正方法が選択され、この補正方法によって求められる色の補正量に基づいて、画像全体の色の補正が行われることになる。したがって、例えば、補正前の上記領域内の色の状態に応じて、画像全体の色の補正の方法を変化させた方が好ましい場合に、状態に応じた好ましい補正方法によって色の補正を行うことが可能となる。
【0025】請求項9記載の画像処理プログラムを記録した記録媒体は、請求項8記載の構成において、上記特定の対象を示す領域が、人間の肌の部分を示す領域であることを特徴としている。
【0026】上記の記録媒体に記録されたプログラムによれば、人間の肌の部分を示す領域を代表する色データに応じて、複数の色の補正方法の中から1つの補正方法が選択され、この補正方法によって求められる色の補正量に基づいて、画像全体の色の補正が行われることになる。したがって、補正前の画像データにおいて、人間の肌の部分を示す領域が、どのような色の状態となっているかによって、画像全体の色の補正方法を変化させることが可能となるので、例えば、上記領域の色の状態に応じて、あまり色の補正を行わない方がよい場合や、肌の色としてより適した色となるように補正を行った方がよい場合などに対応することが可能となる。よって、様々な種類の補正前の画像データに対して補正を行っても、補正後の画像における色バランスを好ましい状態にすることができる。
【0027】請求項10記載の画像処理プログラムを記録した記録媒体は、請求項8または9記載の構成において、上記の特定の対象を示す領域の色として好ましいとされる理想色が設定されており、上記の複数の補正方法が、上記領域を代表する色データが、上記理想色に近づけるような補正方法、および色の補正を行わない補正方法を含んでいることを特徴としている。
【0028】上記の記録媒体に記録されたプログラムによれば、特定の対象を示す領域を代表する色データに応じて、該領域として好ましいとされる理想色に近づけるような補正方法が選択されたり、色の補正を行わない補正方法が選択されたりすることになる。したがって、上記領域の色の状態に応じて、理想色に近づけるような補正を行った方が、補正後の画像の色バランスが良好になる場合や、補正を行わない方が、補正後の画像の色バランスが良好になる場合などに対応することが可能となる。
【0029】請求項11記載の画像処理プログラムを記録した記録媒体は、請求項8ないし10のいずれかに記載の構成において、上記複数の色の補正方法として、色相および彩度を変化させる補正方法、色相を変化させる一方、彩度を変化させない補正方法、色相を変化させない一方、彩度を変化させる補正方法、および色相および彩度を変化させない補正方法が設定されていることを特徴としている。
【0030】上記の記録媒体に記録されたプログラムによれば、複数の色の補正方法として、上記の4つの方法が設定されているので、特定の対象を示す領域を代表する色データに応じて、補正後の画像の色バランスが好ましくなる補正方法を選択することが可能となる。
【0031】請求項12記載の画像処理プログラムを記録した記録媒体は、請求項8ないし11のいずれかに記載の構成において、上記の特定の対象を示す領域を代表する色データの色相および彩度に応じて、上記の複数の補正方法の中から1つの補正方法が選択されることを特徴としている。
【0032】上記の記録媒体に記録されたプログラムによれば、上記領域を代表する色データにおける色相および彩度に応じて、複数の補正方法の中から1つの補正方法が選択されるので、画像の明暗による補正方法の選択に対する影響をなくすことができる。よって、より的確に色の補正方法の選択を行うことができる。
【0033】請求項13記載の画像処理プログラムを記録した記録媒体は、請求項12記載の構成において、上記の特定の対象を示す領域の色として好ましいとされる理想色の色相が設定されており、選択された補正方法に色相を変化させる補正が含まれている場合に、上記領域を代表する色データにおける色相と上記理想色の色相との差を求め、この差に対する所定の割合で、上記領域を代表する色データにおける色相を、上記理想色の色相に近づけるような色相の補正を行うことを特徴としている。
【0034】上記の記録媒体に記録されたプログラムによれば、色相を変化させる補正を行う場合に、上記領域を代表する色データにおける色相と上記理想色の色相との差を求めるとともに、この差に対する所定の割合で、上記領域を代表する色データにおける色相を、上記理想色の色相に近づけるような色相の補正を行うことになる。すなわち、色相に関して補正を行う場合、色データにおける色相を、理想色の色相に一致させるような補正を行うのではなく、所定の割合で理想色に近づけるような補正が行われることになる。このような補正を行うことによって、必要以上に色相が補正されてしまうことにより、画像全体でみると色のバランスが悪くなるというようなことを抑制することができる。
【0035】請求項14記載の画像処理プログラムを記録した記録媒体は、請求項12または13記載の構成において、上記の特定の対象を示す領域の色として好ましいとされる理想色の彩度が設定されており、選択された補正方法に彩度を変化させる補正が含まれている場合に、上記領域を代表する色データにおける彩度を、所定の値だけ上記の理想色の彩度に近づけるような彩度の補正を行うことを特徴としている。
【0036】上記の記録媒体に記録されたプログラムによれば、彩度を変化させる補正を行う場合に、上記領域を代表する色データにおける彩度を、所定の値だけ上記の理想色の彩度に近づけるような彩度の補正を行うことになる。すなわち、彩度に関して補正を行う場合、色データにおける彩度を、理想色の彩度に一致させるような補正を行うのではなく、所定の値で理想色に近づけるような補正が行われることになる。このような補正を行うことによって、必要以上に彩度が補正されてしまうことにより、画像全体でみると色のバランスが悪くなるというようなことを抑制することができる。
【0037】
【発明の実施の形態】本発明の実施の一形態について図1ないし図10に基づいて説明すれば、以下のとおりである。
【0038】図2は、本発明の実施の形態に係る写真処理システムの概略を示すブロック図である。同図に示すように、該写真処理システムは、画像処理装置1と、画像処理装置1にデジタル画像データを入力するデジタルカメラ2、およびスキャナ3と、画像処理装置1において処理された画像データに基づいて、各種用紙に画像をプリントするプリンタ4とを備えた構成となっている。
【0039】デジタルカメラ2は、例えばCCD(Charge Coupled Device) などの撮像素子を用いて写真撮影を行い、これをデジタル画像データとして記録するものである。このデジタルカメラ2によって撮影された画像データは、フラッシュメモリーなどの各種記憶手段に記録される。
【0040】スキャナ3は、元画像としての各種アナログ画像をCCDなどによって読み取り、これをデジタル画像データに変換するものである。このスキャナ3としては、ネガフィルムなどの写真フィルムに記録されている画像を読み取るフィルムスキャナでもよいし、例えばプリント済の銀塩写真や、その他紙状媒体に記録された画像などを読み取るスキャナでもよい。
【0041】プリンタ4は、画像処理装置1から送られてくる画像データをプリントすることが可能なものであれば、どのようなものを用いてもよい。このプリンタ4としては、例えば、インクジェット方式のプリンタやレーザプリンタ、あるいは、LCD、DMD、PLZTなどの光変調素子を用い、印画紙などの感光材料を感光させることによって焼付を行うデジタルプリンタなどが挙げられる。
【0042】画像処理装置1は、例えばPC(Personal Computer) ベースの装置によって構成され、図示はしないが、PC本体、モニターなどの表示手段、キーボード、マウスなどの入力手段などによって構成されている。そして、この画像処理装置1は、デジタルカメラ2およびスキャナ3からデジタル画像データを取り込む画像入力部5と、画像入力部5において取り込まれたデジタル画像データに対して種々の画像処理を行う画像処理部6と、画像処理部6において画像処理されたデジタル画像データをプリンタ4に対して出力する画像出力処理部7とを備えている。
【0043】画像入力部5は、上記のように、デジタルカメラ2およびスキャナ3と、画像処理装置1とのインターフェースとなる部分である。接続形態は特に限定されるものではないが、例えばデジタルカメラ2との接続は、RS-232C などによるシリアル接続、USB(Universal Serial Bus)接続、などが挙げられ、スキャナ3との接続は、SCSI(Small Computer System Interface) 接続、パラレル接続、USB接続などが挙げられる。なお、図2に示す例では、画像データの入力手段として、デジタルカメラ2とスキャナ3とを挙げているが、これに限定されるものではなく、例えば、画像データが記録されたハードディスクドライブや各種リムーバブルメディアドライブなどから画像データを入力するシステムとすることも可能である。
【0044】画像処理部6は、例えば、PCにおいて動作する画像処理プログラムによって動作するものである。この画像処理部6における処理の詳細については後述する。
【0045】画像出力処理部7は、画像処理部6において画像処理がなされた画像データを、プリンタ4で出力するのに最適なデータ形式に変換し、これをプリンタ4に送信するものである。データ形式の変換は、例えばプリンタドライバと呼ばれるプログラムによって行われることになる。また、プリンタ4との接続形態は特に限定されるものではないが、例えば、パラレル接続、USB接続などが挙げられる。
【0046】次に、画像処理部6において行われる処理の流れの概略について、図1に示すフローチャートを参照しながら説明する。まず、ステップ1(以下、S1のように称する)において、画像入力部5によって画像データが入力される。そして、入力された画像データをモニター上に表示し、オペレータによって、該画像における人間の顔の領域が指定される(S2)。なお、この顔の領域の指定は、何らかのアルゴリズムを用いて自動的に指定するようになっていてもよい。
【0047】次に、S2において指定された顔領域における各画素のRGBデータを取得し、これらのデータの平均値をとることによって、顔領域平均色を算出する(S3)。そして、この顔領域平均色のRGBデータをYCC変換し、そのC2,C1成分をC2−C1平面上にプロットする(S4)。このRGBデータ(B,G,R)からYCCデータ(C2,YY,C1)に変換する際の演算は、次に示すような式によって行われる。
【0048】
【数1】


【0049】この際に、求められたC2,C1から、次に示すような式によって彩度および色相が算出される。
【0050】
【数2】


【0051】次に、S4においてプロットされた顔領域平均色の位置に応じて、彩度および色相の補正量が算出される(S5)。ここで、C1−C2平面は、その位置に応じて複数の領域に分割されており、各領域ごとに、彩度および色相の補正量の算出の方法が予め設定されてある。この各領域に応じた補正量の算出の方法の詳細については後述する。
【0052】S5において算出されて補正量によって、入力された画像データ全体を補正し、該補正画像をモニター上に表示する(S6)。この際の補正方法は次のようになる。まず、入力された画像データにおける各画素のRGBデータを上記の(1)式によってYCC変換し、(2)式によって彩度および色相を求める。そして、S5において算出された彩度および色相の補正量に基づいて、補正彩度および補正色相が算出される。この補正彩度および補正色相は、次に示す式によって補正C2’,補正C1’に変換される。
C2’=cosθ×補正彩度 (3)
C1’=sinθ×補正彩度 (4)
なお、上式において、θは、補正色相に対応する角度を表している。
【0053】これらの補正C2’,補正C1’、およびYYに基づいて、次に示す式によって補正されたRGBデータ(B’,G’,R’)が算出される。
【0054】
【数3】


【0055】なお、このS6における補正処理は、上記のような演算によって行うことに限定するものではなく、彩度および色相の補正量に応じたRGBデータの補正量を予め求めておいたものをLUT(Look-Up Table) などのメモリに記憶させておく構成としてもよい。この場合、各画素のRGBデータおよびS5において算出された彩度および色相の補正量をこのLUTに入力することによって、補正されたRGBデータが求まることになる。
【0056】そして、表示された補正画像をオペレータが確認し、これでよければ画像出力処理部7から補正画像を出力し(S7)、プリンタ4からプリント画像を出力させる。
【0057】次に、画像データにおける顔の領域の色を良くするための補正について説明する。基本的には、顔の領域の色を、一般的に顔の色として良い色であるとされる色に近づけることによって、顔の領域の色を自然な色に補正することができる。しかしながら、元の画像データにおける顔の領域の色によっては、その色を良い顔の色に近づけるための補正量が大きくなると、他の領域の色が逆に不自然となってしまい、補正が逆効果となる場合がある。
【0058】そこで、本実施形態においては、顔の領域の色に応じて、色の補正量を変化させる処理を行っている。以下に、この処理について詳しく説明する。
【0059】まず、上記の図1のフローチャートを参照しながら説明したように、顔領域平均色のRGBデータをYCC変換し、この(C2,C1)成分をC2−C1平面上にプロットする。この際に、この(C2,C1)成分が、C2−C1平面におけるどの領域に属するかによって、補正の方法を変化させる。
【0060】C2−C1平面における領域は、まず、顔色としてある程度良好であると判断される範囲の領域と、顔色としてはあまり良くないと判断される領域とに分割される。ここで、顔色としてある程度良好であると判断される範囲の領域を目標領域Aと呼ぶことにする。図3は、この目標領域AをC2−C1平面上に示した説明図である。なお、同図および以下に示す図のC2−C1平面のグラフにおいて、C2軸およびC1軸の目盛りは、元の画像データがRGBそれぞれ8ビット256階調のデータからなる場合の階調数を示している。すなわち、C2およびC1は、それぞれ−128〜127の値を示すことになる。
【0061】図3に示す目標領域Aの内部には、顔の色として最も理想とされる理想点が設定されている。なお、この目標領域Aおよび理想点は、一般的に顔色として良いと判断される領域および点であり、判断基準によって変動するものである。
【0062】また、目標領域Aは、補正対象領域A1と、非補正対象領域A2とに分割されている。補正対象領域A1は、目標領域内ではあるが、さらに理想点に向けて補正を行う方が好ましいとされる領域である。非補正対象領域A2は、さらに理想点に向けて補正を行うと、画像全体の色が不自然となってしまうとされる領域である。ただし、これらの補正対象領域A1および非補正対象領域A2には、次に示すように、さらに細かく補正の方法の異なる領域が設定されている。
【0063】目標領域Aの中には、色相を変化させることが有効である領域B、色相を変化させない方が有効である領域C・D、彩度を変化させることが有効である領域E、および彩度を変化させない方が有効である領域Fが設けられている。ここで、図3に示すC2−C1平面において、色相は、原点を中心とする角度によって表されることになり、彩度は、原点からの距離によって表されることになる。なお、上記の各領域は、予めある程度の数の様々な種類の画像(例えば200画像以上程度)について顔色を良くするような補正を実際に行い、この結果に基づいて設定されるものである。
【0064】図4は、C2−C1平面上において、色相を変化させることが有効である領域Bを示す説明図である。この領域Bに、元画像の顔領域平均色が含まれる場合には、色相に関して理想点Pに近づける補正を行う方が好ましいことになる。ここでの色相の補正は、次のように行われる。
【0065】まず、理想点Pにおける色相に相当する角度をθp、対象となる顔領域平均色における色相に相当する角度をθx、補正後の顔領域平均色における色相に相当する角度をθx’とする。ここで、θx’=θpとなるように補正を行ってしまうと、顔領域の色は良くなるが、その他の領域が不自然な色になることが実験により確認されている。そこで、本発明においては、θx’を次のようにして求める。
θx’=θx+(θp−θx)×k (6)
ここで、kは所定の定数であるが、このkにおいて、好ましい範囲の上限値は0.40、下限値は0.25である。基本的には、0.30前後が好ましい値となる。このkの範囲は、実際に複数の画像に補正を行った結果、このような範囲であれば補正後の画像全体で自然な色となると確認されたものである。
【0066】ここで、実際に複数の画像に対して色相の補正を行った結果を示す。図8は、顔領域平均色がB領域に含まれる9つの画像サンプルに対して、色相の補正を行った結果を示す説明図である。同図において、横軸は、1〜9のサンプルを示しており、縦軸は、色相(角度)を示している。なお、縦軸の数字は、図4などに示すC2−C1平面上において、C2軸の正方向を0°とした時の色相の角度(°)を示している。また、図中において、菱形で示す点は、各画像サンプルの補正前の顔領域平均色における色相を示しており、三角で示す点は、理想点Pにおける色相を示しており、丸で示す点は、各画像サンプルに対して色相の補正を行った際に、最も色バランスが良好であると判断された際の色相を示している。
【0067】また、表1は、図8に示す9つの画像サンプルにおける、補正前のRGBデータ(R,G,B)、YCCデータ(C2,YY,C1)、および色相の各データと、理想点の色相のデータと、補正後の色相の各データと、理想点−補正前の各値、補正後−補正前によって求められる補正量の各値、および補正比率とを示した表である。なお、補正比率は、上記のkに相当するものであるが、百分率(%)で示している。
【0068】
【表1】


【0069】表1に示すように、顔領域平均色がB領域に含まれる画像に対して、最も色バランスが良好となるように色相の補正を行うと、補正比率は、28.4〜36.4の範囲となっている。したがって、領域Bに顔領域平均色が含まれた場合、理想となる色相との角度の差の25〜40%、さらに好ましくは30%前後だけ、理想となる色相に近づけるような補正を行えば、カラーバランスが良好で自然な補正を行うことができることになる。
【0070】一方、図5は、C2−C1平面上において、色相を変化させない方が有効である領域CおよびDを示す説明図である。この領域CおよびDに、元画像の顔領域平均色が含まれる場合には、色相に関して理想点Pに近づける補正を行わない方が好ましいことになる。
【0071】なお、この図5に示すように、領域Cは、理想点Pと原点とを結ぶ直線近傍の領域となっている。すなわち、この領域Cに顔領域平均色が含まれるということは、色相に関しては既に理想点Pとかなり近い値になっていることになるので、色相を変化させる必要がないことになる。
【0072】これに対して、領域Dは、理想点Pにおける色相の角度から離れている領域も含まれていることになる。このような領域Dに顔領域平均色が含まれている場合、その色相が、理想点Pの色相とはだいぶ離れていることもありうるが、これを色相に関して補正を行ってしまうと、画像全体でいえば色のバランスが悪化することになる。すなわち、この領域Dに顔領域平均色が含まれる場合、多少理想の色相からずれていても、色相の補正を行わない方が好ましいことになる。
【0073】図6は、C2−C1平面上において、彩度を変化させることが有効である領域Eを示す説明図である。この領域Eに、元画像の顔領域平均色が含まれる場合には、彩度に関して理想点Pに近づける補正を行う方が好ましいことになる。ここでの彩度の補正は、次のように行われる。
【0074】まず、理想点Pにおける彩度に相当する距離をSp、対象となる顔領域平均色における彩度に相当する角度をSx、補正後の顔領域平均色における彩度に相当する角度をSx’とする。ここで、Sx’=Spとなるように補正を行ってしまうと、顔領域の色は良くなるが、その他の領域が不自然な色になることが実験により確認されている。そこで、本発明においては、Sx’を次のようにして求める。
Sx’=Sx+m (7)
ここで、mは所定の定数であるが、このmにおいて、好ましい範囲の上限値は6.5、下限値は4.5である。また、基本的には5.0前後が好ましい値となる。このmの範囲は、実際に複数の画像に補正を行った結果、このような範囲であれば補正後の画像全体で自然な色となると確認されたものである。
【0075】なお、上記のmの値は、元の画像データがRGBそれぞれ8ビット256階調からなるデータである場合におけるC2−C1平面上での距離を示していることになる。したがって、元の画像データがRGBそれぞれn階調からなるデータである場合には、上記のmにおいて、好ましい範囲の上限値は、(6.5/256)×n≒2.5×10-2n、下限値は、(4.5/256)×n≒1.8×10-2nとなる。また、基本的には(5/256)×n≒2.0×10-2n前後が好ましい値となる。
【0076】ここで、実際に複数の画像に対して彩度の補正を行った結果を示す。図9は、顔領域平均色がE領域に含まれる4つの画像サンプルに対して、彩度の補正を行った結果を示す説明図である。同図において、横軸は、1〜4のサンプルを示しており、縦軸は、彩度を示している。なお、縦軸の数字は、元の画像データがRGBそれぞれ8ビット256階調からなるデータである場合におけるC2−C1平面上での距離を示している。また、図中において、菱形で示す点は、各画像サンプルの補正前の顔領域平均色における彩度を示しており、丸で示す点は、理想点Pにおける彩度を示しており、三角で示す点は、各画像サンプルに対して彩度の補正を行った際に、最も色バランスが良好であると判断された際の彩度を示している。
【0077】また、表2は、図9に示す4つの画像サンプルにおける、補正前の彩度の各データと、理想点の彩度のデータと、補正後の彩度の各データと、理想点−補正前の各値、補正後−補正前によって求められる彩度の補正量の各値とを示した表である。
【0078】
【表2】


【0079】表2に示すように、顔領域平均色がE領域に含まれる画像に対して、最も色バランスが良好となるように彩度の補正を行うと、彩度の補正量は、4.78〜6.15の範囲となっている。したがって、領域Eに顔領域平均色が含まれた場合、理想となる彩度に向けて、4.5〜6.5程度の範囲で近づけるような補正を行えば、カラーバランスが良好で自然な補正を行うことができることになる。
【0080】一方、図7は、C2−C1平面上において、彩度を変化させない方が有効である領域Fを示す説明図である。この領域Fに、元画像の顔領域平均色が含まれる場合には、彩度に関して理想点Pに近づける補正を行わない方が好ましいことになる。このような領域Fに顔領域平均色が含まれている場合、その彩度が、理想点Pの彩度とはだいぶ離れていることもありうるが、これを彩度に関して補正を行ってしまうと、画像全体でいえば色のバランスが悪化することになる。すなわち、この領域Dに顔領域平均色が含まれる場合、多少理想の彩度からずれていても、彩度の補正を行わない方が好ましいことになる。
【0081】次に、上記の図3に示した目標領域Aの外部の領域に元画像の顔領域平均色が含まれる場合についての補正について説明する。図10は、元画像の顔領域平均色が、目標領域Aの外部にある点Jに位置する場合の補正を示す説明図である。この場合には、点Jと理想点Pとを結ぶ直線と、目標領域Aの境界線との交点Lを、補正後の顔領域平均色となるような補正を行う。別の言い方をすれば、点Jから理想点Pに向けて移動させていき、目標領域Aに入った時点でその点Lが補正後の顔領域平均色となるような補正を行うことになる。この際の補正量は、点Jから点Lに到るベクトルに相当することになる。
【0082】以上のように、目標領域Aの外部の領域に元画像の顔領域平均色が含まれる場合には、元画像の顔領域平均色の位置と理想点Pとを結ぶ直線と、目標領域Aの境界とが交わる点を、補正後の顔領域平均色となるように補正を行うことになる。これにより、必要最低限の補正により、顔領域以外の領域の色バランスを必要以上に劣化させることなく、顔領域の色を自然な色にすることができる。
【0083】次に、具体的なデータを用いて、本実施形態における補正の手順を説明する。ここでは、顔領域平均色として、(R,G,B)=(191.0, 163.2, 155.7) という値が得られているサンプルに対する補正について説明する。まず、これらの値を、上記の(1)式に代入することによって、YCC変換が行われれる。具体的には、(R,G,B)=(191.0, 163.2, 155.7) は、(C2,YY,C1)=(13.8, 166.4, -8.0) という値に変換される。
【0084】次に、求められた(C2,C1)を、上記の(2)式に代入することによって、元の画像における顔領域平均色の彩度および色相を求める。具体的には、(C2,C1)=(13.8, -8.0)より、彩度=15.9、色相=329.8が求められる。
【0085】次に、上記で求められた(C2,C1)を、C2−C1平面上にプロットする。そして、この(C2,C1)が、どの領域に属するかを判定する。この例では、(C2,C1)=(13.8,-8.0) は、図4に示すB領域、および図6に示すE領域に含まれることになる。したがって、この画像に対しては、色相および彩度を変化させることが有効であると判定される。
【0086】次に、色相および彩度の補正量を算出する。色相の補正は、上記のように、理想となる色相との角度の差の30%前後となるように行う。ここでは、色相の補正量を30.0%に設定する。なお、理想点Pの色相は、色相=323.3に設定されているものとする。すると、まず、理想点の色相−補正前の色相は、323.3−329.8=−6.5と求まる。そして、色相の補正量は、(理想点の色相−補正前の色相)×0.3=−6.5×0.3=−2.0と求まる。なお、彩度の補正量は、上記のように、理想となる彩度に向けて、4.5〜6.5程度の範囲で近づけるような補正を行えばよい。ここでは、彩度の補正量を5.0に設定する。
【0087】以上のようにして求められた色相および彩度の補正量に基づいて、元の画像における各画像に対して補正を行う。ここでは、顔領域平均色のデータを例にして、補正演算の具体例を示す。まず、補正後の色相は、補正前の色相+色相の補正量によって求められるので、329.8+(−2.0)=327.8と求められる。また、補正後の彩度は、補正前の彩度+彩度の補正量によって求められるので、15.9+5.0=20.9と求められる。
【0088】このようにして求められた補正後の色相および彩度に基づいて、上記の(3)式および(4)式を用いて、補正後の(C2’,C1’)を求める。具体的には、C2’=cosθ×彩度=cos327.8×20.9=17.7、C1’=sinθ×彩度=sin327.8×20.9=−11.1となる。なお、YYの値は、補正によって変化しないので、YY=166.4である。
【0089】このようにして求められた(C2’,YY,C1’)に基づいて、上記の(5)式を用いて、補正後の(R’,G’,B’)を求める。具体的には、(C2’,YY,C1’)=(17.7, 166.4, -11.1)は、(R’,G’,B’)=(191.2,157.6, 146.7) という値に変換される。
【0090】以上のように、本実施形態に係る画像処理装置1によれば、顔領域平均色に応じて、複数の色の補正方法の中から1つの補正方法が選択され、この補正方法によって求められる色の補正量に基づいて、画像全体の色の補正が行われることになる。したがって、補正前の画像データにおいて、顔領域が、どのような色の状態となっているかによって、画像全体の色の補正方法を変化させることが可能となるので、例えば、上記領域の色の状態に応じて、あまり色の補正を行わない方がよい場合や、肌の色としてより適した色となるように補正を行った方がよい場合などに対応することが可能となる。よって、様々な種類の補正前の画像データに対して補正を行っても、補正後の画像における色バランスを好ましい状態にすることができる。
【0091】また、顔領域平均色における色相および彩度に応じて、複数の補正方法の中から1つの補正方法が選択されるので、画像の明暗による補正方法の選択に対する影響をなくすことができる。よって、より的確に色の補正方法の選択を行うことができる。
【0092】また、上記の複数の色の補正方法として、色相および彩度を変化させる補正方法、色相を変化させる一方、彩度を変化させない補正方法、色相を変化させない一方、彩度を変化させる補正方法、および色相および彩度を変化させない補正方法が設定されている。そして、色相を変化させる補正を行う場合には、顔領域平均色における色相と理想点Pにおける色の色相との差を求めるとともに、この差に対する所定の割合で、顔領域平均色における色相を、上記理想点Pの色相に近づけるような色相の補正を行うことになる。すなわち、色相に関して補正を行う場合、顔領域平均色における色相を、理想点Pの色相に一致させるような補正を行うのではなく、所定の割合で理想点Pに近づけるような補正が行われることになる。これにより、必要以上に色相が補正されてしまうことにより、画像全体でみると色のバランスが悪くなるというようなことを抑制することができる。
【0093】また、彩度を変化させる補正を行う場合には、顔領域平均色における彩度を、所定の値だけ上記の理想点Pの彩度に近づけるような彩度の補正を行うことになる。すなわち、彩度に関して補正を行う場合、顔領域平均色における彩度を、理想点Pの彩度に一致させるような補正を行うのではなく、所定の値で理想点Pに近づけるような補正が行われることになる。このような補正を行うことによって、必要以上に彩度が補正されてしまうことにより、画像全体でみると色のバランスが悪くなるというようなことを抑制することができる。
【0094】
【発明の効果】以上のように、請求項1の発明に係る画像処理方法は、複数の画素からなるデジタル画像データに対して色の補正を行う画像処理方法において、上記デジタル画像データからなる画像内に、特定の対象を示す領域が含まれている場合に、該領域を指定するステップと、上記領域内の各画素におけるデータに基づいて、該領域を代表する色データを求めるステップと、上記色データに応じて、複数の色の補正方法の中から1つの補正方法を選択し、該補正方法によって色の補正量を算出するステップと、算出された色の補正量に基づいて、上記デジタル画像データの全ての画素に対して色の補正を行うステップとを有している方法である。
【0095】これにより、例えば、補正前の上記領域内の色の状態に応じて、画像全体の色の補正の方法を変化させた方が好ましい場合に、状態に応じた好ましい補正方法によって色の補正を行うことが可能となるという効果を奏する。
【0096】請求項2の発明に係る画像処理方法は、上記特定の対象を示す領域が、人間の肌の部分を示す領域である方法である。
【0097】これにより、請求項1の方法による効果に加えて、補正前の画像データにおいて、人間の肌の部分を示す領域が、どのような色の状態となっているかによって、画像全体の色の補正方法を変化させることが可能となるので、様々な種類の補正前の画像データに対して補正を行っても、補正後の画像における色バランスを好ましい状態にすることができるという効果を奏する。
【0098】請求項3の発明に係る画像処理方法は、上記の特定の対象を示す領域の色として好ましいとされる理想色が設定されており、上記の複数の補正方法が、上記領域を代表する色データが、上記理想色に近づけるような補正方法、および色の補正を行わない補正方法を含んでいる方法である。
【0099】これにより、請求項1または2の方法による効果に加えて、特定の対象を示す領域の色の状態に応じて、理想色に近づけるような補正を行った方が、補正後の画像の色バランスが良好になる場合や、補正を行わない方が、補正後の画像の色バランスが良好になる場合などに対応することが可能となるという効果を奏する。
【0100】請求項4の発明に係る画像処理方法は、上記複数の色の補正方法として、色相および彩度を変化させる補正方法、色相を変化させる一方、彩度を変化させない補正方法、色相を変化させない一方、彩度を変化させる補正方法、および色相および彩度を変化させない補正方法が設定されている方法である。
【0101】これにより、請求項1ないし3のいずれかにの方法による効果に加えて、特定の対象を示す領域を代表する色データに応じて、補正後の画像の色バランスが好ましくなる補正方法を選択することが可能となるという効果を奏する。
【0102】請求項5の発明に係る画像処理方法は、上記の特定の対象を示す領域を代表する色データの色相および彩度に応じて、上記の複数の補正方法の中から1つの補正方法が選択される方法である。
【0103】これにより、請求項1ないし4のいずれかにの方法による効果に加えて、画像の明暗による補正方法の選択に対する影響をなくすことができるので、より的確に色の補正方法の選択を行うことができるという効果を奏する。
【0104】請求項6の発明に係る画像処理方法は、上記の特定の対象を示す領域の色として好ましいとされる理想色の色相が設定されており、選択された補正方法に色相を変化させる補正が含まれている場合に、上記領域を代表する色データにおける色相と上記理想色の色相との差を求め、この差に対する所定の割合で、上記領域を代表する色データにおける色相を、上記理想色の色相に近づけるような色相の補正を行う方法である。
【0105】これにより、請求項5の方法による効果に加えて、必要以上に色相が補正されてしまうことにより、画像全体でみると色のバランスが悪くなるというようなことを抑制することができるという効果を奏する。
【0106】請求項7の発明に係る画像処理方法は、上記の特定の対象を示す領域の色として好ましいとされる理想色の彩度が設定されており、選択された補正方法に彩度を変化させる補正が含まれている場合に、上記領域を代表する色データにおける彩度を、所定の値だけ上記の理想色の彩度に近づけるような彩度の補正を行う方法である。
【0107】これにより、請求項5または6の方法による効果に加えて、必要以上に彩度が補正されてしまうことにより、画像全体でみると色のバランスが悪くなるというようなことを抑制することができるという効果を奏する。
【0108】請求項8の発明に係る画像処理プログラムを記録した記録媒体は、複数の画素からなるデジタル画像データに対して色の補正を行う画像処理プログラムを記録した記録媒体において、上記デジタル画像データからなる画像内に、特定の対象を示す領域が含まれている場合に、該領域を指定する処理と、上記領域内の各画素におけるデータに基づいて、該領域を代表する色データを求める処理と、上記色データに応じて、複数の色の補正方法の中から1つの補正方法を選択し、該補正方法によって色の補正量を算出する処理と、算出された色の補正量に基づいて、上記デジタル画像データの全ての画素に対して色の補正を行う処理とをコンピュータに実行させる構成である。
【0109】上記の記録媒体に記録されたプログラムによれば、例えば、補正前の上記領域内の色の状態に応じて、画像全体の色の補正の方法を変化させた方が好ましい場合に、状態に応じた好ましい補正方法によって色の補正を行うことが可能となるという効果を奏する。
【0110】請求項9の発明に係る画像処理プログラムを記録した記録媒体は、上記特定の対象を示す領域が、人間の肌の部分を示す領域である構成である。
【0111】これにより、請求項8の構成による効果に加えて、補正前の画像データにおいて、人間の肌の部分を示す領域が、どのような色の状態となっているかによって、画像全体の色の補正方法を変化させることが可能となるので、様々な種類の補正前の画像データに対して補正を行っても、補正後の画像における色バランスを好ましい状態にすることができるという効果を奏する。
【0112】請求項10の発明に係る画像処理プログラムを記録した記録媒体は、上記の特定の対象を示す領域の色として好ましいとされる理想色が設定されており、上記の複数の補正方法が、上記領域を代表する色データが、上記理想色に近づけるような補正方法、および色の補正を行わない補正方法を含んでいる構成である。
【0113】これにより、請求項8または9の構成による効果に加えて、特定の対象を示す領域の色の状態に応じて、理想色に近づけるような補正を行った方が、補正後の画像の色バランスが良好になる場合や、補正を行わない方が、補正後の画像の色バランスが良好になる場合などに対応することが可能となるという効果を奏する。
【0114】請求項11の発明に係る画像処理プログラムを記録した記録媒体は、上記複数の色の補正方法として、色相および彩度を変化させる補正方法、色相を変化させる一方、彩度を変化させない補正方法、色相を変化させない一方、彩度を変化させる補正方法、および色相および彩度を変化させない補正方法が設定されている構成である。
【0115】これにより、請求項8ないし10のいずれかにの構成による効果に加えて、特定の対象を示す領域を代表する色データに応じて、補正後の画像の色バランスが好ましくなる補正方法を選択することが可能となるという効果を奏する。
【0116】請求項12の発明に係る画像処理プログラムを記録した記録媒体は、上記の特定の対象を示す領域を代表する色データの色相および彩度に応じて、上記の複数の補正方法の中から1つの補正方法が選択される構成である。
【0117】これにより、請求項8ないし11のいずれかにの構成による効果に加えて、画像の明暗による補正方法の選択に対する影響をなくすことができるので、より的確に色の補正方法の選択を行うことができるという効果を奏する。
【0118】請求項13の発明に係る画像処理プログラムを記録した記録媒体は、上記の特定の対象を示す領域の色として好ましいとされる理想色の色相が設定されており、選択された補正方法に色相を変化させる補正が含まれている場合に、上記領域を代表する色データにおける色相と上記理想色の色相との差を求め、この差に対する所定の割合で、上記領域を代表する色データにおける色相を、上記理想色の色相に近づけるような色相の補正を行う構成である。
【0119】これにより、請求項12の構成による効果に加えて、必要以上に色相が補正されてしまうことにより、画像全体でみると色のバランスが悪くなるというようなことを抑制することができるという効果を奏する。
【0120】請求項14の発明に係る画像処理プログラムを記録した記録媒体は、上記の特定の対象を示す領域の色として好ましいとされる理想色の彩度が設定されており、選択された補正方法に彩度を変化させる補正が含まれている場合に、上記領域を代表する色データにおける彩度を、所定の値だけ上記の理想色の彩度に近づけるような彩度の補正を行う構成である。
【0121】これにより、請求項12または13の構成による効果に加えて、必要以上に彩度が補正されてしまうことにより、画像全体でみると色のバランスが悪くなるというようなことを抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の一形態に係る写真処理システムにおける画像処理装置が備える画像処理部において行われる処理の流れの概略を示すフローチャートである。
【図2】上記写真処理システムの概略構成を示すブロック図である。
【図3】顔色としてある程度良好であると判断される範囲の領域である目標領域をC2−C1平面上に示した説明図である。
【図4】C2−C1平面上において、色相を変化させることが有効である領域を示す説明図である。
【図5】C2−C1平面上において、色相を変化させない方が有効である領域を示す説明図である。
【図6】C2−C1平面上において、彩度を変化させることが有効である領域を示す説明図である。
【図7】C2−C1平面上において、彩度を変化させない方が有効である領域を示す説明図である。
【図8】顔領域平均色が色相を変化させることが有効である領域に含まれる9つの画像サンプルに対して、色相の補正を行った結果を示す説明図である。
【図9】顔領域平均色が彩度を変化させることが有効である領域に含まれる4つの画像サンプルに対して、彩度の補正を行った結果を示す説明図である。
【図10】元画像の顔領域平均色が、目標領域の外部に位置する場合の補正を示す説明図である。
【符号の説明】
1 画像処理装置
2 デジタルカメラ
3 スキャナ
4 プリンタ
5 画像入力部
6 画像処理部
7 画像出力処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】複数の画素からなるデジタル画像データに対して色の補正を行う画像処理方法において、上記デジタル画像データからなる画像内に、特定の対象を示す領域が含まれている場合に、該領域を指定するステップと、上記領域内の各画素におけるデータに基づいて、該領域を代表する色データを求めるステップと、上記色データに応じて、複数の色の補正方法の中から1つの補正方法を選択し、該補正方法によって色の補正量を算出するステップと、算出された色の補正量に基づいて、上記デジタル画像データの全ての画素に対して色の補正を行うステップとを有していることを特徴とする画像処理方法。
【請求項2】上記特定の対象を示す領域が、人間の肌の部分を示す領域であることを特徴とする請求項1記載の画像処理方法。
【請求項3】上記の特定の対象を示す領域の色として好ましいとされる理想色が設定されており、上記の複数の補正方法が、上記領域を代表する色データが、上記理想色に近づけるような補正方法、および色の補正を行わない補正方法を含んでいることを特徴とする請求項1または2記載の画像処理方法。
【請求項4】上記複数の色の補正方法として、色相および彩度を変化させる補正方法、色相を変化させる一方、彩度を変化させない補正方法、色相を変化させない一方、彩度を変化させる補正方法、および色相および彩度を変化させない補正方法が設定されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の画像処理方法。
【請求項5】上記の特定の対象を示す領域を代表する色データの色相および彩度に応じて、上記の複数の補正方法の中から1つの補正方法が選択されることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の画像処理方法。
【請求項6】上記の特定の対象を示す領域の色として好ましいとされる理想色の色相が設定されており、選択された補正方法に色相を変化させる補正が含まれている場合に、上記領域を代表する色データにおける色相と上記理想色の色相との差を求め、この差に対する所定の割合で、上記領域を代表する色データにおける色相を、上記理想色の色相に近づけるような色相の補正を行うことを特徴とする請求項5記載の画像処理方法。
【請求項7】上記の特定の対象を示す領域の色として好ましいとされる理想色の彩度が設定されており、選択された補正方法に彩度を変化させる補正が含まれている場合に、上記領域を代表する色データにおける彩度を、所定の値だけ上記の理想色の彩度に近づけるような彩度の補正を行うことを特徴とする請求項5または6記載の画像処理方法。
【請求項8】複数の画素からなるデジタル画像データに対して色の補正を行う画像処理プログラムを記録した記録媒体において、上記デジタル画像データからなる画像内に、特定の対象を示す領域が含まれている場合に、該領域を指定する処理と、上記領域内の各画素におけるデータに基づいて、該領域を代表する色データを求める処理と、上記色データに応じて、複数の色の補正方法の中から1つの補正方法を選択し、該補正方法によって色の補正量を算出する処理と、算出された色の補正量に基づいて、上記デジタル画像データの全ての画素に対して色の補正を行う処理とをコンピュータに実行させることを特徴とする画像処理プログラムを記録した記録媒体。
【請求項9】上記特定の対象を示す領域が、人間の肌の部分を示す領域であることを特徴とする請求項8記載の画像処理プログラムを記録した記録媒体。
【請求項10】上記の特定の対象を示す領域の色として好ましいとされる理想色が設定されており、上記の複数の補正方法が、上記領域を代表する色データが、上記理想色に近づけるような補正方法、および色の補正を行わない補正方法を含んでいることを特徴とする請求項8または9記載の画像処理プログラムを記録した記録媒体。
【請求項11】上記複数の色の補正方法として、色相および彩度を変化させる補正方法、色相を変化させる一方、彩度を変化させない補正方法、色相を変化させない一方、彩度を変化させる補正方法、および色相および彩度を変化させない補正方法が設定されていることを特徴とする請求項8ないし10のいずれかに記載の画像処理プログラムを記録した記録媒体。
【請求項12】上記の特定の対象を示す領域を代表する色データの色相および彩度に応じて、上記の複数の補正方法の中から1つの補正方法が選択されることを特徴とする請求項8ないし11のいずれかに記載の画像処理プログラムを記録した記録媒体。
【請求項13】上記の特定の対象を示す領域の色として好ましいとされる理想色の色相が設定されており、選択された補正方法に色相を変化させる補正が含まれている場合に、上記領域を代表する色データにおける色相と上記理想色の色相との差を求め、この差に対する所定の割合で、上記領域を代表する色データにおける色相を、上記理想色の色相に近づけるような色相の補正を行うことを特徴とする請求項12記載の画像処理プログラムを記録した記録媒体。
【請求項14】上記の特定の対象を示す領域の色として好ましいとされる理想色の彩度が設定されており、選択された補正方法に彩度を変化させる補正が含まれている場合に、上記領域を代表する色データにおける彩度を、所定の値だけ上記の理想色の彩度に近づけるような彩度の補正を行うことを特徴とする請求項12または13記載の画像処理プログラムを記録した記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2002−44469(P2002−44469A)
【公開日】平成14年2月8日(2002.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−221302(P2000−221302)
【出願日】平成12年7月21日(2000.7.21)
【出願人】(000135313)ノーリツ鋼機株式会社 (1,824)
【Fターム(参考)】