説明

画像処理装置および医用画像診断装置

【課題】仮想内視鏡画像を用いた画像診断を効率的に行なうこと。
【解決手段】3次元画像データ記憶部33は、3次元X線CT画像を記憶する。VE画像生成部34は、視点位置から3次元X線CT画像を透視投影したVE画像を生成する。切断位置決定部35は、関心領域が含まれる切断位置を決定する。合成用VE画像生成部36は、切断位置に対して視点位置側をVE画像から切削した合成用VE画像を生成し、MPR画像生成部37は、切断位置における3次元X線CT画像のMPR画像を生成する。領域決定部38は、関心領域が含まれる空気領域をMPR画像の非表示領域と決定する。合成画像生成部39は、MPR画像の非表示領域に該当する合成用VE画像の領域と、MPR画像の非表示領域以外の領域に該当するMPR画像の領域とを合成した合成画像を生成し、表示制御部310は、合成画像を表示部32にて表示させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、画像処理装置および医用画像診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、X線CT装置(CT;Computed Tomography)、磁気共鳴イメージング(MRI:Magnetic Resonance Imaging)装置、超音波診断装置などの医用画像診断装置によって収集された3次元画像データの画像表示方法として、仮想内視鏡(VE:Virtual Endoscopy)表示法(以下、VE法と記す)が知られている。例えば、VE法は、スクリーニング検査を含む術前診断を行なうための大腸解析システムにおいて、大腸を撮影した3次元X線CT画像の表示法(CTC:CT Colonography)として広く用いられている。
【0003】
VE法は、3次元画像データに設定した視点を用いた透視投影法により投影画像を生成する方法である。具体的には、VE法においては、3次元画像データに含まれる器官内部に「視点位置」、「視線方向」および「視線方向を中心とする視野角度」からなるパラメータが設定される。そして、VE法においては、視点位置から視線方向および視野角度で定まる範囲に対して放射状に3次元画像データを透視投影することで、投影画像が生成される。
【0004】
VE法により生成される投影画像は、内視鏡により器官内部の表面(内壁)を観察した内視鏡画像と類似した画像となり、仮想内視鏡画像(VE画像)と称される。図10は、仮想内視鏡画像を説明するための図である。例えば、図10に示すような大腸のVE画像を参照することで、医師は、大腸内壁における大腸ポリープの有無や大腸ポリープの大きさなどを観察することができる。また、パラメータを任意に変更することで、医師は、従来、内視鏡では観察できなかった部位をVE画像により観察することができる。
【0005】
ところで、医師にとっては、観察対象となる領域の器官内(組織内)の情報も画像診断を行なううえで重要となる。例えば、大腸のVE画像により大腸内壁にて確認された大腸ポリープが、大腸の組織内にどの程度広がっているのかを観察することが、医師にとっては、画像診断を行なうために重要となる。
【0006】
このため、3次元画像データを所定の断面位置にて切断した断面画像をVE画像に合成した合成画像を表示する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。図11は、従来技術を説明するための図である。
【0007】
まず、図11に示すように、大腸の管腔内に設定された視点位置、視線方向(例えば、管腔の芯線)および視野角度により、図10に示すようなVE画像が生成される。そして、予め設定されている所定の距離により、VE画像の切削および断面画像を生成するための断面位置が決定される。具体的には、図11に示すように、視点位置から視線方向に向かって所定の距離だけ進んだ位置にて、視線方向に直交する断面が切断位置として決定される。
【0008】
そして、図11に示すように、切断位置から視線位置側にある領域がVE画像から切削されることで合成用VE画像が生成され、大腸の3次元X線CT画像から切断位置におけるMPR(Multi Planar Reformat)画像が生成される。そして、図11に示すように、合成用VE画像とMPR画像とを合成することで、合成画像が生成される。
【0009】
医師は、かかる技術により生成された合成画像を参照することで、観察対象領域の内壁表面だけでなく、観察対象領域の組織内のCT値も観察することができ、その結果、VE画像を用いた画像診断を効率的に行なうことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平11−76228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、上述した従来の技術は、VE画像を用いた画像診断を必ずしも効率的に行なうことができない場合があった。図12は、従来技術の課題を説明するための図である。
【0012】
上述した従来の技術では、設定された視野角度の範囲内にあるVE画像から切削された合成用VE画像を用いて合成画像が生成される。したがって、視野角度によって定まる範囲に観察対象領域以外の管腔が含まれる場合、図12の(A)に示すように、合成画像には、観察対象領域とともに、観察対象領域以外の管腔(大腸内壁)も同時に描出される。このため、医師は、合成画像を参照しても、VE画像にて観察していた領域を容易に判別することができない。
【0013】
また、上述した従来の技術では、予め設定された所定の距離と視線方向とによって定まる切断位置を用いて合成用VE画像を生成している。このため、所定の距離と視線方向との設定によっては、切断位置が観察対象となる器官の外側に設定されたり、観察対象領域とは異なる管腔に設定されたりする場合がある。かかる場合、図12の(B)に示すように、合成画像には、観察対象領域以外の管腔(大腸内壁)のみ描出されてしまう。
【0014】
そこで、この発明は、上述した従来技術の課題を解決するためになされたものであり、仮想内視鏡画像を用いた画像診断を効率的に行なうことが可能となる画像処理装置および医用画像診断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1記載の本発明は、視点位置、視線方向および視野角度を含む設定情報を用いた透視投影法により3次元医用画像データから投影画像を生成する投影画像生成手段と、前記投影画像生成手段によって生成された前記投影画像にて、前記設定情報によって定まる関心領域が含まれる切断位置を決定する切断位置決定手段と、前記投影画像生成手段によって生成された前記投影画像から、前記切断位置決定手段によって決定された前記切断位置に対して前記視点位置側に位置する領域を切削することで第一の画像を生成する第一の画像生成手段と、前記切断位置決定手段によって決定された前記切断位置における前記3次元医用画像データの断面画像を第二の画像として生成する第二の画像生成手段と、前記第二の画像生成手段によって生成された前記第二の画像において前記関心領域が含まれる空気領域を決定する領域決定手段と、前記第一の画像において前記領域決定手段によって決定された前記空気領域に該当する領域と、前記第二の画像において前記領域決定手段によって決定された前記空気領域以外の領域に該当する領域とを合成した合成画像を生成する合成画像生成手段と、前記合成画像生成手段によって生成された前記合成画像を、所定の表示部に表示するように制御する表示制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0016】
また、請求項3記載の本発明は、3次元医用画像データを収集する画像データ収集手段と、視点位置、視線方向および視野角度を含む設定情報を用いた透視投影法により前記画像データ収集手段によって収集された3次元医用画像データから投影画像を生成する投影画像生成手段と、前記投影画像生成手段によって生成された前記投影画像にて、前記設定情報によって定まる関心領域が含まれる切断位置を決定する切断位置決定手段と、前記投影画像生成手段によって生成された前記投影画像から、前記切断位置決定手段によって決定された前記切断位置に対して前記視点位置側に位置する領域を切削することで第一の画像を生成する第一の画像生成手段と、前記切断位置決定手段によって決定された前記切断位置における前記3次元医用画像データの断面画像を第二の画像として生成する第二の画像生成手段と、前記第二の画像生成手段によって生成された前記第二の画像において前記関心領域が含まれる空気領域を決定する領域決定手段と、前記第一の画像において前記領域決定手段によって決定された前記空気領域に該当する領域と、前記第二の画像において前記領域決定手段によって決定された前記空気領域以外の領域に該当する領域とを合成した合成画像を生成する合成画像生成手段と、前記合成画像生成手段によって生成された前記合成画像を、所定の表示部に表示するように制御する表示制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1または3の発明によれば、仮想内視鏡画像を用いた画像診断を効率的に行なうことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、実施例1における画像処理装置の構成を示す図である。
【図2】図2は、VE画像生成部を説明するための図である。
【図3】図3は、切断位置決定部を説明するための図である。
【図4】図4は、合成用VE画像生成部を説明するための図である。
【図5】図5は、MPR画像生成部を説明するための図である。
【図6】図6は、実施例1における領域決定部を説明するための図である。
【図7】図7は、合成画像生成部を説明するための図である。
【図8】図8は、実施例1における画像処置装置の処理を説明するためのフローチャートである。
【図9】図9は、実施例2における領域決定部を説明するための図である。
【図10】図10は、仮想内視鏡画像を説明するための図である。
【図11】図11は、従来技術を説明するための図である。
【図12】図12は、従来技術の課題を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に添付図面を参照して、この発明に係る画像処理装置および医用画像診断装置の実施例を詳細に説明する。なお、本実施例によって本発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0020】
まず、実施例1における画像処理装置の構成について説明する。図1は、実施例1における画像処理装置の構成を示す図である。図1に示すように、実施例1における画像処理装置30は、医用画像データベース20と接続されており、医用画像データベース20は、医用画像診断装置10と接続されている。なお、医用画像データベース20は、実際には、複数の医用画像診断装置10と接続されている。
【0021】
実施例1における医用画像診断装置10は、3次元の医用画像を生成することが可能な医用画像診断装置である。具体的には、医用画像診断装置10は、3次元X線CT画像を生成可能なX線CT装置、3次元MRI画像を生成可能なMRI装置、3次元超音波画像を生成可能な超音波診断装置などである。
【0022】
医用画像データベース20は、医用画像診断装置10によって生成された各種3次元医用画像を格納するデータベースである。具体的には、医用画像データベース20は、各種医用画像のデータを管理するシステムであるPACS(Picture Archiving and Communication System)のデータベースや、医用画像が添付された電子カルテを管理する電子カルテシステムのデータベースなどである。
【0023】
ここで、実施例1における画像処理装置30は、操作者である医師から指定された3次元医用画像を医用画像データベース20から取得し、取得した3次元医用画像を画像処理したうえで、医師に提示する。
【0024】
具体的には、実施例1における画像処理装置30は、医用画像データベース20から取得した3次元医用画像に基づいて、透視投影法により仮想内視鏡(VE:Virtual Endoscopy)画像を生成する。そして、実施例1における画像処理装置30は、生成したVE画像と、VE画像の生成元である3次元医用画像から生成した断面画像とを合成した合成画像の生成および表示を行なうことで、VE画像を用いた画像診断を効率的に行なうことが可能となるように構成された装置である。
【0025】
以下、実施例1における画像処理装置30が行なう画像処理について、図1とともに、図2〜7を用いて詳細に説明する。なお、図2は、VE画像生成部を説明するための図であり、図3は、切断位置決定部を説明するための図であり、図4は、合成用VE画像生成部を説明するための図であり、図5は、MPR画像生成部を説明するための図であり、図6は、実施例1における領域決定部を説明するための図であり、図7は、合成画像生成部を説明するための図である。
【0026】
図1に示すように、実施例1における画像処理装置30は、入力部31と、表示部32と、3次元画像データ記憶部33と、VE画像生成部34と、切断位置決定部35と、合成用VE画像生成部36と、MPR画像生成部37と、領域決定部38と、合成画像生成部39と、表示制御部310とを有する。
【0027】
入力部31は、マウスやキーボードやマイクなどを有し、医用画像を読影する医師など操作者が画像処理装置30を操作するための各種設定情報を入力するために用いられる。なお、入力部31が受け付ける各種設定情報については、後に詳述する。
【0028】
表示部32は、モニタなどを有し、入力部31を介して操作者から各種設定情報を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)や、後述する表示制御部310の制御の元、各種画像を表示したりする。
【0029】
3次元画像データ記憶部33は、入力部31を介して操作者が指定することにより、画像処理装置30が医用画像データベース20から取得した3次元医用画像データを記憶する。なお、以下では、造影剤の投与および炭酸ガスの注入が行なわれている被検体の大腸をX線CT装置によって撮影した3次元X線画像が、3次元画像データ記憶部33に格納された場合について説明する。ただし、本発明は、被検体の大腸を撮影した3次元MRI画像や3次元超音波画像が3次元画像データ記憶部33に格納される場合であっても、適用可能である。また、本発明は、VE画像を用いた画像診断を行なうことが可能な箇所であるならば、大腸以外の箇所が被検体の撮影部位である場合でも適用可能である。
【0030】
VE画像生成部34は、透視投影法により3次元X線CT画像から仮想内視鏡(VE:Virtual Endoscopy)画像を生成する。まず、VE画像生成部34は、3次元X線CT画像において、例えば、閾値を用いた処理により、空気に相当するCT値を有する領域(空気領域)を抽出する。また、VE画像生成部34は、空気領域において設定された視点位置、視線方向および視野角度を含むパラメータを操作者から入力部31を介して受け付ける。なお、かかるパラメータを設定することで、VE画像の有効視野(FOV:Field Of View)が設定されることとなる。そして、VE画像生成部34は、設定された視点位置から視線方向および視野角度で定まる範囲に対して放射状に3次元X線CT画像を透視投影することでVE画像を生成する。
【0031】
例えば、図2の(A)に示すような視点位置、視線方向および視野角度からなるパラメータが設定された場合、VE画像生成部34は、設定された視点位置から大腸の管腔における芯線と同一方向において、大腸の内壁を観察したVE画像を生成する。また、図2の(B)に示すようなパラメータが設定された場合、VE画像生成部34は、設定された視点位置から通常の内視鏡では観察することが困難な視線方向における大腸の内壁を観察したVE画像を生成する。
【0032】
ここで、図2の(A)に示すような視点位置、視線方向および視野角度からなるパラメータが設定されているならば、操作者が観察したい関心領域は、芯線方向を中心とした大腸の内壁の周囲全体となる。また、図2の(B)に示すようなパラメータが設定されているならば、操作者が観察したい関心領域は、視点位置に対して芯線方向の下側に位置する大腸の内壁部分となる。
【0033】
図1に戻って、切断位置決定部35は、VE画像生成部34によって生成されたVE画像にて、上述したパラメータによって定まる関心領域が含まれる切断位置を決定する。具体的には、切断位置決定部35は、VE画像と合成されるMPR(Multi Planar Reformat)画像を生成するための切断位置を決定する。ここで、初期設定として、例えば、操作者から入力部31を介して予め「所定の距離」が設定され、切断位置決定部35は、図3に示すように、視点位置から視点方向に沿って「所定の距離」だけ進んだ位置にて、視線方向に直交する断面(以下、Aと記載する)に、関心領域が含まれるか否かを判定する。
【0034】
まず、切断位置決定部35は、VE画像生成部34によって3次元X線CT画像にて抽出された空気領域を参照して、視点位置から視線方向の延長線上に位置する空気領域と非空気領域との境界面を算出する。ここで、図3に示すように、空気領域は、大腸の管腔に相当する領域であり、空気領域と非空気領域との境界面は、視点位置から視線方向に沿って観察した場合に最も近接した位置にある大腸の内壁が存在する面(以下、A’と記載する)となる。
【0035】
ここで、切断位置決定部35は、視点位置から見てAの位置がA’の位置より近い場合、Aに関心領域が含まれているとして、初期設定により定まるAを切断位置として決定する(図3の(A)参照)。一方、切断位置決定部35は、視点位置から見てA’の位置がAの位置より近い場合、Aに関心領域が含まれておらず、A’に関心領域が含まれていると判断して、A’を切断位置として決定する(図3の(B)参照)。
【0036】
図1に戻って、合成用VE画像生成部36は、VE画像生成部34によって生成されたVE画像から、切断位置決定部35によって決定された切断位置に対して視点位置側に位置する領域を切削することで合成用VE画像を生成する。例えば、合成用VE画像生成部36は、図2の(A)に示すパラメータに基づいてVE画像生成部34が生成したVE画像から、切断位置決定部35が決定した切断位置「A」(図3の(A)参照)に対して視点位置側に位置する領域を切削することで、図4に示すような合成用VE画像を生成する。また、合成用VE画像生成部36は、図2の(B)に示すパラメータに基づいてVE画像生成部34が生成したVE画像からは、切断位置決定部35が決定した切断位置「A’」(図3の(B)参照)に対して視点位置側に位置する領域を切削した合成用VE画像を生成する。
【0037】
図1に戻って、MPR画像生成部37は、切断位置決定部35によって決定された切断位置における3次元X線CT画像のMPR画像を生成する。例えば、合成用VE画像生成部36は、図2の(A)に示すパラメータに基づいてVE画像生成部34がVE画像を生成するために用いた3次元X線CT画像を処理対象とし、この3次元X線CT画像の切断位置「A」におけるMPR画像を生成する(図5参照)。また、合成用VE画像生成部36は、図2の(B)に示すパラメータに基づいてVE画像生成部34がVE画像を生成するために用いた3次元X線CT画像を処理対象とし、この3次元X線CT画像の切断位置「A’」におけるMPR画像を生成する(図5参照)。
【0038】
図1に戻って、領域決定部38は、MPR画像生成部37によって生成されたMPR画像において関心領域が含まれる空気領域を決定する。具体的には、領域決定部38は、図6の(A)に示すように、3次元X線CT画像の視点位置を通り、視線方向上にある直線上において、視点位置から一番遠くに位置する空気領域の点「P」の位置を算出する。これにより、領域決定部38は、図6の(A)に示すように、視点位置と点「P」とを結んだ点列の位置情報(以下、点列情報と記載する)を算出する。
【0039】
そして、領域決定部38は、図6の(A)に示すように、算出した点列情報と切断位置決定部35が決定した切断位置との交点を決定する。そして、領域決定部38は、切断位置に含まれ、かつ、決定した交点と連結する空気領域を決定する。そして、領域決定部38は、図6の(B)に示すように、決定した領域を、MPR画像の非表示領域であると決定する。すなわち、MPR画像の非表示領域は、操作者がVE画像にて観察したい領域となる。
【0040】
図1に戻って、合成画像生成部39は、合成用VE画像生成部36が生成した合成用VE画像において「MPR画像の非表示領域」に該当する領域と、MPR画像生成部37が生成したMPR画像において「MPR画像の非表示領域」以外の領域に該当する領域とを合成した合成画像を生成する。例えば、合成画像生成部39は、図2の(A)に示すパラメータによりVE画像が生成された場合、図4に示す合成用VE画像の「MPR画像の非表示領域」に該当する領域と、図5に示すMPR画像において「MPR画像の非表示領域」以外の領域に該当する領域とを合成することで、図7に示すような合成画像を生成する。
【0041】
図1に戻って、表示制御部310は、合成画像生成部39によって生成された前記合成画像を、表示部32のモニタにて表示するように制御する。例えば、合成画像生成部39は、図7に示す合成画像を表示部32のモニタにて表示するように制御する。これにより、読影者である医師は、関心領域のVE画像のみがMPR画像と合成された合成画像を参照することができる。
【0042】
次に、図8を用いて、実施例1における画像処置装置30の処理について説明する。図8は、実施例1における画像処置装置の処理を説明するためのフローチャートである。
【0043】
図8に示すように、実施例1における画像処置装置30は、医用画像データベース20から処理対象となる3次元X線CT画像が3次元画像データ記憶部33に格納されると(ステップS101肯定)、操作者から各種パラメータが設定されたか否かを判定する(ステップS102)。ここで、操作者が設定する各種パラメータは、上述したように、視点位置、視線方向および視野角度からなるVE画像生成用のパラメータと、初期の切断位置を設定するために用いられる「所定の距離」のことである。
【0044】
そして、実施例1における画像処置装置30は、操作者から各種パラメータが設定されない場合(ステップS102否定)、各種パラメータが設定されるまで待機する。一方、操作者から各種パラメータが設定されると(ステップS102肯定)、VE画像生成部34は、3次元X線CT画像にて空気領域を抽出し、空気領域にて設定された視点位置から視線方向および視野角度で定まる範囲に対して放射状に3次元X線CT画像を透視投影することでVE画像を生成する(ステップS103)。
【0045】
そして、切断位置決定部35は、3次元X線CT画像において、設定されたパラメータに基づく切断位置を決定する(ステップS104)。すなわち、切断位置決定部35は、3次元X線CT画像において、視点位置から視点方向に沿って「所定の距離」だけ進んだ位置にて、視線方向に直交する断面を切断位置(A)として決定する。
【0046】
そののち、切断位置決定部35は、ステップS104にて決定した切断位置に関心領域が含まれるか否かを判定する(ステップS105)。具体的には、切断位置決定部35は、VE画像生成部34によって3次元X線CT画像にて抽出された空気領域を参照して、視点位置から視線方向の延長線上に位置する大腸の内壁が存在する面(A’)を算出する。そして、切断位置決定部35は、視点位置から見てAの位置がA’の位置より近い場合、Aに関心領域が含まれていると判断する。一方、切断位置決定部35は、視点位置から見てA’の位置がAの位置より近い場合、Aに関心領域が含まれていないと判断する。
【0047】
ここで、ステップS104にて決定した切断位置(A)に関心領域が含まれていると判定した場合(ステップS105肯定)、切断位置決定部35は、ステップS104で決定した切断位置を合成用VE画像生成部36およびMPR画像生成部37に通知する(ステップS108)。
【0048】
一方、ステップS104にて決定した切断位置(A)に関心領域が含まれていないと判定した場合(ステップS105否定)、切断位置決定部35は、新たな切断位置を決定する(ステップS106)。すなわち、切断位置決定部35は、A’に関心領域が含まれていると判断して、A’を新たな切断位置として決定する。そして、切断位置決定部35は、ステップS106で決定した切断位置を合成用VE画像生成部36およびMPR画像生成部37に通知する(ステップS107)。
【0049】
そして、合成用VE画像生成部36は、VE画像生成部34によって生成されたVE画像から、切断位置決定部35から通知された切断位置を用いて合成用VE画像を生成する(ステップS109)。すなわち、合成用VE画像生成部36は、VE画像生成部34によって生成されたVE画像から、切断位置に対して視点位置側に位置する領域を切削することで合成用VE画像を生成する。
【0050】
続いて、MPR画像生成部37は、切断位置決定部35から通知された切断位置を用いて3次元X線CT画像からMPR画像を生成する(ステップS110)。すなわち、MPR画像生成部37は、切断位置決定部35によって決定された切断位置における3次元X線CT画像のMPR画像を生成する。
【0051】
そして、領域決定部38は、MPR画像生成部37によって生成されたMPR画像において関心領域が含まれる空気領域を決定することで、MPR画像の非表示領域を決定する(ステップS111、図6参照)。
【0052】
そののち、合成画像生成部39は、合成用VE画像において「MPR画像の非表示領域」に該当する領域と、MPR画像において「MPR画像の非表示領域」以外の領域に該当する領域とを合成した合成画像を生成する(ステップS112)。
【0053】
そして、表示制御部310は、合成画像生成部39によって生成された前記合成画像を、表示部32のモニタにて表示するように制御し(ステップS113)、処理を終了する。
【0054】
上述してきたように、実施例1では、VE画像生成部34は、3次元画像データ記憶部33に格納された3次元X線CT画像を、設定された視点位置から視線方向および視野角度で定まる範囲に対して放射状に透視投影することでVE画像を生成する。そして、切断位置決定部35は、VE画像生成部34によって生成されたVE画像にて、視点位置、視線方向および視野角度によって定まる関心領域が含まれる切断位置を決定する。そして、合成用VE画像生成部36は、VE画像生成部34によって生成されたVE画像から、切断位置決定部35によって決定された切断位置に対して視点位置側に位置する領域を切削することで合成用VE画像を生成し、MPR画像生成部37は、切断位置決定部35によって決定された切断位置における3次元X線CT画像のMPR画像を生成する。
【0055】
そして、領域決定部38は、MPR画像生成部37によって生成されたMPR画像において関心領域が含まれる空気領域を決定する。合成画像生成部39は、合成用VE画像生成部36が生成した合成用VE画像において「MPR画像の非表示領域」に該当する領域と、MPR画像生成部37が生成したMPR画像において「MPR画像の非表示領域」以外の領域に該当する領域とを合成した合成画像を生成する。表示制御部310は、合成画像生成部39によって生成された前記合成画像を、表示部32のモニタにて表示するように制御する。
【0056】
したがって、実施例1によれば、VE画像で観察したい関心領域のみが合成画像にて必ず表示されるので、VE画像を用いた画像診断を効率的に行なうことが可能となる。特に、スクリーニング検査を含む術前診断における画像診断の効率を向上させることが可能になる。また、実施例1によれば、VE画像の関心領域以外は、MPR画像と合成された合成画像が表示されるので、関心領域(大腸の内壁)の組織内部のCT値を確実に把握することができるので、VE画像を用いた画像診断をより効率的に行なうことが可能となる。
【0057】
また、実施例1における合成画像の表示法は、X線CT装置におけるCTC(CT Colonography)だけでなく、CTCと比較して、被検体に対する負担軽減や、X線被曝が発生しないなどの利点を有するMRI装置におけるMRC(MR Colonography)でも実行可能であり、MRCの普及を推進することが可能となる。
【実施例2】
【0058】
実施例2では、視線方向に沿って視点位置を「所定の間隔」で移動させることにより、合成画像の生成および表示を順次行なう場合について、図9を用いて説明する。なお、図9は、実施例2における領域決定部を説明するための図である。
【0059】
実施例2における画像処理装置は、図1に示す画像処理装置30と同様の構成からなるが、領域決定部38の行なう処理内容が実施例1と異なる。以下、これを中心に説明する。
【0060】
実施例2における領域決定部38は、実施例1と同様に、MPR画像において関心領域が含まれる空気領域を決定する。しかし、実施例2における領域決定部38は、実施例1とは異なり、直前に生成されたMPR画像において決定した関心領域が含まれる空気領域と、「所定の間隔」とを用いて、新たに生成されたMPR画像において関心領域が含まれる空気領域を決定する。
【0061】
例えば、図9の(A)に示すように、視線方向が大腸の芯線として設定されており、「所定の間隔」として「移動間隔:d」が設定されているとする。かかる場合、直前に合成画像の生成および表示処理を行なう際に用いられた視点位置(i)は、次の時点で、芯線方向に沿って「移動間隔:d」進んだ視点位置(i+1)に移動することとなる。ここで、画像処理装置30は、視点位置(i+1)を用いて、実施例1と同様に、VE画像の生成、切断位置の決定、合成用VE画像の生成、MPR画像の生成を順次行なう。
【0062】
そして、領域決定部38は、図9の(B)に示すように、視点位置(i)の処理において決定したMPR画像の非表示領域(i)を芯線方向に沿って「移動間隔:d」だけ移動させた断面において、非表示領域(i)と同一の空気領域にある断面を、非表示領域(i+1)として決定する。これにより、画像処理装置30は、視点位置(i+1)における合成画像の生成および表示処理を行なう。
【0063】
なお、実施例2における画像処理装置30の処理では、図8におけるステップS102にて設定されるパラメータに「移動間隔:d」が追加される。また、実施例2における画像処理装置30は、最初の視点位置においては、図8におけるステップS103〜ステップS112の処理を実施例1と同様に行なう。そして、実施例2における画像処理装置30は、第二の視点位置以降においては、図8におけるステップS103〜ステップS112の処理のうちステップS111の処理を上記にて説明した処理により行なう。
【0064】
上述してきたように、実施例2では、視点位置が移動されて合成画像が順次合成表示される場合、直前に決定された非表示領域を用いて新規の非表示領域を決定するので、合成画像を生成する際の処理負荷を軽減することが可能となる。
【0065】
なお、上記した実施例1および2では、画像処理装置30が医用画像診断装置30と独立に設置される場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、医用画像診断装置10に画像処理装置30が組み込まれる場合であってもよい。すなわち、3次元X線CT画像を生成可能なX線CT装置、3次元MRI画像を生成可能なMRI装置、3次元超音波画像を生成可能な超音波診断装置などに画像処理装置30が組み込まれる場合であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0066】
以上のように、本発明に係る画像処理装置および医用画像診断装置は、仮想内視鏡表示を行なう場合に有用であり、特に、仮想内視鏡画像を用いた画像診断を効率的に行なうことに適する。
【符号の説明】
【0067】
10 医用画像診断装置
20 医用画像データベース
30 画像処理装置
31 入力部
32 表示部
33 3次元画像データ記憶部
34 VE画像生成部
35 切断位置決定部
36 合成用VE画像生成部
37 MPR画像生成部
38 領域決定部
39 合成画像生成部
310 表示制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
視点位置、視線方向および視野角度を含む設定情報を用いた透視投影法により3次元医用画像データから投影画像を生成する投影画像生成手段と、
前記投影画像生成手段によって生成された前記投影画像にて、前記設定情報によって定まる関心領域が含まれる切断位置を決定する切断位置決定手段と、
前記投影画像生成手段によって生成された前記投影画像から、前記切断位置決定手段によって決定された前記切断位置に対して前記視点位置側に位置する領域を切削することで第一の画像を生成する第一の画像生成手段と、
前記切断位置決定手段によって決定された前記切断位置における前記3次元医用画像データの断面画像を第二の画像として生成する第二の画像生成手段と、
前記第二の画像生成手段によって生成された前記第二の画像において前記関心領域が含まれる空気領域を決定する領域決定手段と、
前記第一の画像において前記領域決定手段によって決定された前記空気領域に該当する領域と、前記第二の画像において前記領域決定手段によって決定された前記空気領域以外の領域に該当する領域とを合成した合成画像を生成する合成画像生成手段と、
前記合成画像生成手段によって生成された前記合成画像を、所定の表示部に表示するように制御する表示制御手段と、
を備えたことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記視線方向に沿って前記視点位置を所定の間隔で移動させることにより、前記合成画像の生成および表示が順次行なわれる場合、
前記領域決定手段は、前記第二の画像生成手段によって新たに生成された第二の画像において前記関心領域が含まれる空気領域を、直前に決定した空気領域と前記所定の間隔とに基づいて決定することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
3次元医用画像データを収集する画像データ収集手段と、
視点位置、視線方向および視野角度を含む設定情報を用いた透視投影法により前記画像データ収集手段によって収集された3次元医用画像データから投影画像を生成する投影画像生成手段と、
前記投影画像生成手段によって生成された前記投影画像にて、前記設定情報によって定まる関心領域が含まれる切断位置を決定する切断位置決定手段と、
前記投影画像生成手段によって生成された前記投影画像から、前記切断位置決定手段によって決定された前記切断位置に対して前記視点位置側に位置する領域を切削することで第一の画像を生成する第一の画像生成手段と、
前記切断位置決定手段によって決定された前記切断位置における前記3次元医用画像データの断面画像を第二の画像として生成する第二の画像生成手段と、
前記第二の画像生成手段によって生成された前記第二の画像において前記関心領域が含まれる空気領域を決定する領域決定手段と、
前記第一の画像において前記領域決定手段によって決定された前記空気領域に該当する領域と、前記第二の画像において前記領域決定手段によって決定された前記空気領域以外の領域に該当する領域とを合成した合成画像を生成する合成画像生成手段と、
前記合成画像生成手段によって生成された前記合成画像を、所定の表示部に表示するように制御する表示制御手段と、
を備えたことを特徴とする医用画像診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−72534(P2011−72534A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−226791(P2009−226791)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】