説明

画像処理装置および画像形成装置

【課題】 画像に対し、白トナーを作用させることで、画像のエッジ部が目立たない滑らかな高画質画像を得るための画像処理を可能とする画像処理装置を提供する
【解決手段】 (a)に示すような印字画像に対し、(b)に示すように、斜めエッジ部分に生じるシャギーのギザギザに白トナーを被せて印字し、シャギーの角のとがりをなくし、シャギーを滑らかにするスムージング効果を得ることで高精彩な画像を再現する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、画像形成装置において出力される画像データに対して、画像処理を施す画像処理装置に関するものであり、特に、白トナーを用いた画像形成を前提とした画像処理を可能とする画像処理装置および画像形成装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、複写機やプリンタ等の画像形成装置にて印字出力される画像の高画質化に伴い、滑らかな画像再現や細線再現性の向上を図ることが電子写真の分野で大きな課題となっている。
【0003】上記課題を達成するためには、一般的には、レーザーの光量やパルス幅を変えて1ドット内で多階調制御を行ったり、斜めラインの再現性を向上させるために、微小ドットで補間を行うことによって、高画質化が図られている。例えば、斜め線の再現性を向上させるためには、パーソナルコンピュータ等から送られてきた画像データに対し、画像処理部にて補正するドットを検出し、次に、そのドットの周囲にあるドットがどのような位置関係にあるかを調べる。これにより、これらドット間の段差を検出し、1ドットよりも小さいドット(多値階調の場合、パルス幅変調やパワー変調を行うことで形成する)を検出された段差部分を埋めていくように周囲に置く。これにより、出力画像においてエッジ部のぎざぎざを目立たなくすることができる。
【0004】一方、近年では、例えば、カラー画像の画像形成において、通常のC(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)の有色トナー以外に、さらに白トナーを用いる画像形成装置があり、白トナーの用途として、白トナーを黒トナーに加えることによって、グレー画像を作成し、モノクロ画像のハーフトーン再現性を向上するような技術が従来よりある。
【0005】特開平4−283756号公報には、ハーフトーン画像を形成する際に、有彩色印字面の余白部分に白トナーを印字し、階調再現性を向上させることが開示されている。この方法では、例えば、3×3ピクセル内で最大100レベルの階調再現が可能となる。
【0006】また、特開平3−4259号公報は、軟調モードと硬調モードを持つ電子写真方式の画像形成装置において、軟調モードが指定された際に現像スリーブ上に指定量の白トナーを供給し、滑らかなハーフトーンを形成することを開示している。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】ところが、上記従来の構成では、印字出力画像の高解像度化を進めるためにレーザーの光量やパルス幅を変えて1ドット内で多階調制御を行なおうとすると、、レーザーの駆動回路の信号応答性を高速化することが必至となり、用いられる制御回路が高価格で、かつ不安定性を多く含んだものとなる。
【0008】さらに、レーザー径を絞る技術は現状40μm程度が限界で、特に、高解像画像になると、レーザーのパルス幅、パワー変調を行わなければ、補間等に必要な小ドットの形成は不可能である。しかし、そうすると光量が低下し、感光体感度に対して十分な光量が得られなくなり、感光体上での画像形成が困難となる。
【0009】また、白トナーを用いて、画像の強調および平滑化を行おうとする技術は無い。
【0010】本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、その目的は、画像に対し、白トナーを作用させることで、画像のエッジ部が目立たない滑らかな高画質画像を得るための画像処理を可能とする画像処理装置を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明に係る画像処理装置は、上記の課題を解決するために、有色である第1の顕像剤によって画像形成される有色領域データのみからなる画像データに対し、該画像データ内に存在するシャギーを抽出するシャギー抽出手段と、上記シャギー抽出手段によって抽出されたシャギーに対して、第2の顕像剤によって上記シャギーの角を被覆するための被覆データを形成する被覆データ形成手段とを備えていることを特徴としている。
【0012】上記の構成によれば、有色顕像剤である第1の顕像剤によって形成された画像に対して、第2の顕像剤によるドットを重ねて印字し、斜め線や文字のエッジ部のぎざぎざ(シャギー)の角を隠蔽することによって、シャギーを滑らかにするスムージングの効果を得ることができ、高精彩な画像を再現できる。
【0013】また、上記画像処理装置は、上記第2の顕像剤として、白トナーおよび透明トナーの2種類を用いると共に、さらに、上記白トナーと転写紙の色との色差を検出する色差検出手段とを備え、上記被覆データ形成手段は、上記色差検出手段により検出される転写紙と前記白色トナーとの色差ΔEが15未満の場合には、上記被覆データを白トナーのみを用いた印字データとして形成し、色差ΔEが15以上の場合には、上記被覆データを白トナーの上に透明トナーを重ねて印字する印字データとして形成する構成とすることが好ましい。
【0014】エッジ部に印字した白トナーが隣接する画素の色(通常は、転写紙の下地色)に対しての色差が大きい場合、印字された白トナーが目立ち画像としては劣化することとなる。
【0015】一般的に、白色同士に関して色の差が識別可能となるのは、色差ΔEが15以上ある場合であり、よって、色差が15未満の目立たない場合に限り、エッジ部に白色トナーを印字することで上記不具合を回避できる。
【0016】また、色差が15以上ある場合は、白色トナーとの上からさらに透明トナーを印字することで、エッジ部のぎざぎざを隠蔽して滑らかなエッジを得ることができると共に、透明トナーの光拡散効果によって白トナーの目立ちを抑制することができる。
【0017】尚、上記色差ΔEは、白トナーおよび転写紙の色を、色の明るさ(L* )、色相(a* ,b* )の3値で表し、各色のL* ,a* ,b* の差をそれぞれ、ΔL* ,Δa* ,Δb* とした場合に、ΔE=√[(ΔL* ) ^2+(Δa* ) ^2+(Δb* )^2]
の式によって表される。
【0018】また、上記画像処理装置は、有色領域データにおいて発生するエッジ部の傾きを検出する傾き検出手段を備え、検出結果に応じて、上記第2の顕像剤による印字ドットのドット径を異ならせる構成とすることが好ましい。
【0019】すなわち、上記第2の顕像剤の印字ドットにより隠蔽されるシャギーは、該シャギーが生じているエッジ部の傾き(角度) によって、見た目のぎざぎざ感が変わるため、それに応じて上記第2の顕像剤のドット径を異ならせることにより、より効果的に滑らかな曲線画像が再現できる。
【0020】
【発明の実施の形態】本発明の実施の一形態について図1R>1ないし図8に基づいて説明すれば、以下の通りである。
【0021】本実施の形態に係る画像処理装置は、画像出力装置によって印字出力される画像データに対して白トナーを作用させる処理を行なうものであり、上記画像出力装置の画像形成部では白トナーによる画像形成を可能とする。このような画像形成部の構成を図2ないし図4R>4に示す。尚、図2ないし図4に示す画像形成部は電子写真方式を適用したものを例示しているが、上記画像出力装置では、画像データを記録媒体(例えば紙等)上に出力するもので、例えば、電子写真方式以外にも、白トナーの代わりに白インクを用いるインクジェット方式を用いたモノカラー・カラー画像出力装置等を挙げることができ、画像形成方式については特に限定されるものではない。
【0022】最初に、1プロセス方式にてモノクロ画像を形成する画像形成部の構成を図2を参照して説明する。
【0023】図2に示す画像形成部では、静電潜像担持体である感光体ドラム1の周囲に、該感光体ドラム1の回転方向(図中、矢印A方向)に沿って順に、第1の帯電部2、第1の露光部3、第1の現像部4、第2の帯電部5、第2の露光部6、第2の現像部7、転写部8、クリーニング部9が配置されている。
【0024】上記画像形成部における画像形成処理では、最初に感光体ドラム1の表面が第1の帯電部2によって均一に帯電された後、第1の露光部3によって白トナーについての画像データに応じてON/OFFされるレーザ光を照射されて潜像の書込みが行なわれる。次に第1の現像部4では、白トナーTwによって上記潜像に対する現像が行なわれ、上記感光体ドラム1上に白トナー像が形成される。
【0025】続いて、白トナー像が形成されている感光体ドラム1の表面が、第2の帯電部5によって再度均一帯電される。そして、第2の露光部6によって黒トナーについての画像データに応じてON/OFFされるレーザ光を照射されて潜像の書込みが行なわれ、第2の現像部7では、黒トナーTによって上記潜像に対する現像が行なわれる。
【0026】こうして、上記感光体ドラム1上に黒トナーTおよび白トナーTwによるトナー像が形成され、このトナー像は転写部8によって転写紙Pに転写される。転写後、感光体ドラム1上に残ったトナーはクリーニング部9によって除去される。
【0027】尚、図2記載の上記画像形成部は、第1の帯電部2、第1の露光部3、第1の現像部4を用いて、白トナー像の形成を行なう場合に特許請求の範囲に記載の第2の画像形成部として作用し、第2の帯電部5、第2の露光部6、第2の現像部7を用いて、黒トナー像の形成を行なう場合に第1の画像形成部として作用する。
【0028】次に、2プロセス方式にてモノクロ画像を形成する画像形成部の構成を図3を参照して説明する。
【0029】図3に示す画像形成部では、静電潜像担持体として、黒トナー像形成用の感光体ドラム11aと、白トナー像形成用の感光体ドラム11bとが備えられており、各感光体ドラム11a・11bの周囲には、それぞれその回転方向(図中、矢印A方向)に沿って順に、帯電部12a・12b、露光部13a・13b、現像部14a・14b、転写部15a・15b、クリーニング部16a・16bが配置されている。
【0030】上記画像形成部における画像形成処理では、感光体ドラム11a上に、帯電部12a、露光部13a、および現像部14aによって黒トナー像が形成され、該黒トナー像は転写部15aによって転写紙P上に転写される。また、転写後、感光体ドラム11a上に残った黒トナーTはクリーニング部16aによって除去される。
【0031】また、感光体ドラム11b上には、帯電部12b、露光部13b、および現像部14bによって白トナー像が形成され、該白トナー像は、転写部15bにより、黒トナー像の転写後、用紙搬送方向(図中、矢印B方向)に沿って搬送された転写紙P上に転写される。転写後、感光体ドラム11a上に残った白トナーTwはクリーニング部16bによって除去される。
【0032】上記トナー像が転写された後の転写紙Pは定着部17へ搬送され、上記トナー像が転写紙Pに定着される。
【0033】尚、図3記載の上記画像形成部は、感光体ドラム11a、帯電部12a、露光部13a、現像部14a、転写部15a、およびクリーニング部16aからなる黒トナー像形成用の画像形成部が特許請求の範囲に記載の第1の画像形成部に相当し、感光体ドラム11b、帯電部12b、露光部13b、現像部14b、転写部15b、およびクリーニング部16bからなる白トナー像形成用の画像形成部が第2の画像形成部に相当する。
【0034】次に、カラー画像を形成する画像形成部の構成を図4を参照して説明する。
【0035】図4に示す画像形成部では、静電潜像担持体である感光体ドラム21の周囲に、該感光体ドラム21の回転方向(図中、矢印A方向)に沿って順に、帯電部22、露光部23、現像部24、第1の転写部25、クリーニング部26が配置されている。また、上記現像部24は、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、Bk(ブラック)、W(ホワイト)の各色についての現像器を備えている。
【0036】上記画像形成部における画像形成処理では、最初に感光体ドラム21の表面が帯電部22によって均一に帯電された後、露光部23によってC,M,Y,Bk,Wの何れかについての画像データに応じてON/OFFされるレーザ光を照射されて潜像の書込みが行なわれる。
【0037】次に現像部24では、書き込まれた上記潜像に対応する色の現像器を用いて現像が行なわれ、上記感光体ドラム21上に単色トナー像が形成される。上記単色トナー像は、第1の帯電部25によって中間転写体27に転写される。この時、上記中間転写体27は、図中の矢印Bに示す方向に、上記感光体ドラム21と同期して回転されている。また、転写後、感光体ドラム21上に残ったトナーはクリーニング部26によって除去される。
【0038】上記処理をW,C,M,Y,Bkの各色について繰り返して行なうことにより、上記中間転写体27には上述の各単色トナー像が重ね合わされてできるカラートナー像が形成される。このカラートナー像は、第2の転写部28にて一括して転写紙Pに転写される。その後、上記転写紙Pは第2の転写部28の用紙搬送方向(図中、矢印C方向)の下流側に位置する定着部29へ搬送され、上記カラートナー像が転写紙Pに定着される。尚、上記各単色トナー像の形成順序については、転写紙P上において白トナー像が最上層となるように、少なくとも白トナー像が最初に形成される必要がある。
【0039】図4に示す画像形成部では、感光体ドラム21から中間転写体27を介して転写紙Pへトナー像を転写する構成を例示しているが、転写紙Pを担持しながら感光体ドラムと接触回転する転写ドラム等を用いて、感光体ドラムから転写紙Pへ直接トナー像を転写する構成の画像形成部を用いてもよい。また、上記画像形成部は、1つの感光体ドラムの周囲に複数の現像器を備えている構成であるが、W,C,M,Y,Bkの各色毎に感光体ドラムを備えた、所謂、タンデム型の画像形成部を用いてもよい。
【0040】尚、図4記載の上記画像形成部は、現像部4においてC,M,Y,Bkの現像器を用いた場合に特許請求の範囲に記載の第1の画像形成部として作用し、現像部4においてWの現像器を用いた場合に第2の画像形成部として作用する。
【0041】さらに、上記図2ないし図4の各画像形成部にて、各帯電部および転写部には非接触チャージャもしくはローラ等の接触帯電部材(又は接触転写部材)の何れを用いてもよく、定着部としても非接触定着若しくは接触定着の何れを用いてもかまわない。また、露光部としては、レーザ以外にもLED(Light Emitting Diode)光源を用いて書き込みを行なってもよい。
【0042】また、ここでは、以上3種類の画像形成方法を提案したが、これら以外の画像形成方法を用いることも可能である。例えば、本発明に係る画像形成装置では、白トナー以外に透明トナーを用いる場合もある。この場合、図2の構成では、感光体ドラム1の周囲に、第1の帯電部2の上流側において、さらに、透明トナー用の帯電部、露光部、現像部を配置すればよい。また、図3R>3の構成では、透明トナー用の画像プロセス部を白トナー用の画像プロセス部の後段に設ければよい。また、図4R>4の構成では、露光部23の下流で第1の現像部25の上流に、さらに透明トナー用の現像部を配置すればよい。
【0043】次に、本実施の形態に係る画像処理装置の構成を図5を参照して説明する。上記画像処理装置31は、例えばスキャナ部より構成される画像入力装置32から入力される画像データに対して画像処理を施し、処理が施された画像データを画像出力装置33に送信して出力させるものである。但し、本発明は、画像処理装置31および画像出力装置33のそれぞれを、画像処理部および画像出力部として具備した例えばプリンタのような画像形成装置や、画像処理装置31、画像入力装置32、および画像出力装置33のそれぞれを、画像処理部、画像入力部、および画像出力部として具備した例えば複写機のような画像形成装置として提供されるものであってもよい。
【0044】また、上記画像処理装置31には、A/D変換部41、シェーディング補正部42、入力階調補正部43、色補正部44、白データ画像処理部45、黒生成/下色除去部46、空間フィルタ処理部47、出力階調補正部48、階調再現処理部49、および領域分離処理部50が備えられている。
【0045】上記画像処理装置31では、先ず、上記アナログ信号がA/D(アナログ/デジタル)変換部41によりデジタル信号に変換される。そして、シェーディング補正部42にて画像入力装置32の照明系、結像系、撮像系で生じる各種の歪みを取り除く処理が行われる。その後、入力階調補正処理部43により、RGBの反射率信号を、カラーバランスを整えるのと同時に、濃度信号など画像処理システムの扱いやすい信号に変換する処理が施される。
【0046】次に、色再現の忠実化実現のために、色補正部44で不要吸収成分を含むCMY(C:シアン・M:マゼンタ・Y:イエロー)色材の分光特性に基づいた色濁りを取り除く処理が行われる。
【0047】上記色補正処理がなされたCMY信号の画像データには、白データ画像処理部45において、白トナーを作用させる画素を示す白データが付加される。そして、黒生成/下色除去部46では、色補正後のCMYの3色信号から黒(K)信号を生成する黒生成、元のCMY信号から黒生成で得たK信号を差し引いて新たなCMY信号を生成する処理が行われ、CMYの3色信号はCMYKの4色信号に変換される。
【0048】次に、空間フィルタ処理部47では、上記黒生成/下色除去部46までの処理で得られた画像データに対して、デジタルフィルタによる空間フィルタ処理が施され、空間周波数特性を補正することによって出力画像のボヤケや粒状性劣化を防ぐための処理が行われる。そして、出力階調補正部48では、濃度信号などの信号を画像出力装置33の特性値である網点面積率に変換する出力階調補正処理が行われ、最終的に、階調再現処理部49では、画像を画素に分割してそれぞれの階調を再現できるように処理する階調再現処理(中間調生成)が行われる。
【0049】また、領域分離処理部50は、文字及び写真混在原稿における特に黒文字あるいは色文字の再現性を高めるために、前述の色補正処理後の画像データに対して文字領域および写真領域の分離を行い、その分離結果を黒生成/下色除去部46ないし階調再現処理部49の各部に通知して最適な処理を行わせる。
【0050】すなわち、黒文字(場合によっては色文字も含む)として抽出された画像領域は、空間フィルタ処理部47における鮮鋭度強調処理により高域周波数の強調量が大きくされる。同時に、階調再現処理部49においては、高域周波数の再現に適した高解像のスクリーンでの二値化または多値化処理が選択されるように構成されている。
【0051】一方、上記領域分離処理部50にて写真と判別された領域に関しては、空間フィルタ処理部47において、入力網点成分を除去するためのローパス・フィルタ処理が施される。同時に、階調再現処理部49では、階調再現性を重視したスクリーンでの二値化または多値化処理が行われる。
【0052】上述した各処理が施された画像データは、一旦記憶手段に記憶され、所定のタイミングで読み出されて画像出力装置33に入力される。
【0053】尚、上記画像処理装置31では、白データ画像処理部45は色補正部44の下段、かつ黒生成/下色除去部46の上段に設けられている。しかしながら、上記白データ画像処理部45によって形成される白データは、黒生成/下色除去部46、空間フィルタ処理部47、出力階調処理部48、および階調再現処理部49での各処理に用いられるC,M,Y,Bkの画像データに対して、単に最終的に付加されるものであり、上記各部の処理に対し影響を及ぼすものでない。このため、上記白データ画像処理部45での処理は、それを行なうタイミングが特に限定されるものではなく、該白データ画像処理部45の配置箇所は図5の位置以外にも変更可能である。
【0054】また、上記画像処理装置31は、カラー画像の画像処理を行なうものであるが、モノクロ画像の処理を行なう装置では、通常の下色除去や黒生成が行われないだけで、その他の処理はカラーの場合と同じである。
【0055】さらに、上記白データ画像処理部45の構成および動作を図1および図6〜8を参照して説明する。
【0056】上記白データ画像処理部45は、図6に示すように、画像認識部(シャギー抽出手段)51、色差演算部(色差検出手段)52、白データ作成部(被覆データ形成手段)53、および白/透明データ作成部(被覆データ形成手段)54を備えている。上記画像認識部51は、色補正部44から送られてくる入力データに対してシャギーの抽出を行なう。
【0057】すなわち、上記白データ画像処理部45にて生成される白データは、斜めエッジにおいて発生するシャギーに対して、白トナーを被せてシャギーのぎざぎざを目立たなくすることで画質向上を図るものであり、例えば、図1(a)に示すように「て」の字の印字を行なう場合には、図1(b)に示すようにシャギーに対して白トナーが被せられる。この時、シャギーのぎざぎざの部分に白色トナーを被せることによって、角のとがりがなくなり、スムージング効果が得られ、画質も向上することがわかる。また、エッジが存在しない領域や、ほぼ主走査方向または副走査方向に沿って存在するエッジに対してはシャギーが発生しないため、白トナーを作用させる必要はない。
【0058】尚、シャギーの抽出については、これを領域分離処理部50にて行い、上記白データ画像処理部50は、該領域分離処理部50からの検出信号に基づいてシャギーの認識を行なうものとしてもよい。
【0059】さらに、上記図1(b)から明らかなように、白トナーをシャギーに被せて角のとがりを無くすためには、白トナーの印字ドットを、有色トナーによる印字ドットに対しある程度ずらすことが必要があるが、これは、露光時のパルス照射タイミングを時間でずらすことにより容易に行なえる。
【0060】また、シャギーにおいて白トナーを作用させる場合に、シャギーのエッジを構成する画素に隣接する画素(以下、隣接画素)と、作用させられる白トナーとの色差が大きい場合、単に白トナーをシャギーに被せるだけでは、図7(a)に示すように、作用させられた白トナーが目立ってしまい、かえって画質劣化を引き起こす虞がある。このような不具合を回避するために、上記白データ画像処理部45では、色差演算部52において、白トナーと隣接画素との色差を演算し、演算された色差の値に応じて、白トナー以外に透明トナーを用いてシャギーを抑制する印字を行なうことが好ましい。
【0061】ここで、色差とは、2つの色があった場合にその色の差を数値的に表したものである。ある2つの色を測色計で測定した場合、例えば、色の明るさ(L* )、色相(a* ,b* )の3値が算出される。そして、以下の式に示すように、各色のL* ,a* ,b* の差(それぞれ、ΔL* ,Δa* ,Δb* とする)を2乗したものを加えて、平方根をとったものが一般的に色差(ΔE)と呼ばれる。
【0062】ΔE=√[(ΔL* ) ^2+(Δa* ) ^2+(Δb* )^2]一般に、色差が15未満の2色については、人間の視覚では識別できない。このため、上記色差演算部52において、白トナーと隣接画素との色差が15未満であると判定された場合には、白トナー作成部53により白トナーを付加する画素を決定する。
【0063】一方、白トナーと隣接画素との色差が15以上である場合には、白/透明データ作成部54により白トナーおよび透明トナーを付加する画素を決定する。すなわち、白トナーと隣接画素との色差が15以上である場合に、白トナーのみを作用させると近隣の画素との色差が大きくなり該白トナーが目立って画質劣化が生じるため、図7(b)に示すように、白トナーの上にさらに透明トナーを付加させる。この時、該透明トナーによる光の拡散効果によって、白トナーの目立ちを抑えながら、シャギーにおける角のとがりをなくし画質向上を図ることができる。
【0064】上記色差演算部52において、用いられる白トナーの色(L* ,a* ,b* )は予め測色した上でメモリに記憶しておけばよい。隣接画素の色については、通常、該隣接画素に有色トナーが作用される場合には、色差が小となることはないので、隣接画素において有色トナーが作用されない場合のみ上記色差の演算を行ない、この時、転写紙の下地色を隣接画素の色とすればよい。転写紙の下地色については、これを印字前に測色し、そのL* ,a* ,b* を求めればよい。転写紙の測色については、該転写紙の搬送路上で、かつ転写部の上流側に測色用センサを配置し、該センサによって転写紙の測色を行なうことが好適である。
【0065】さらに、上記白トナーと透明トナーとの量は、白色トナーとエッジ部の隣接画素の色差によってより多段階に変化させることが可能で、例えば、色差15以上30未満の場合は1:1の割合で印字し、色差が30以上の場合は透明トナーのみを印字するといったようなことも可能である。
【0066】上記説明では、白トナーを印字する際の印字ドット径は、有色トナーと等しいものとしている。しかしながら、エッジの傾きによって白トナーのドット径を変化させれば、より良好な結果が得られる。
【0067】具体的には、エッジ部の傾きが主走査方向に対して45度の時には、シャギーのぎざぎざが最も目立つため、図8(a)に示すように、白色トナーの印字ドット径を小さく、細かくすることが好ましい。例えば、この場合は、白色トナーの印字ドット径を画像の解像度と等しいか、若しくは80%程度のドット径とすることが好ましい。
【0068】一方、エッジ部の傾きが主走査方向に対して鋭角もしくは鈍角になるほど、シャギーのぎざぎざは少なくなるが、滑らかな再現性が必要であるため、45度の傾きの場合に比べて、径の大きい白トナー印字を行うことが好適である。この場合、図8(b)、(c)に示すように、白色トナーの印字ドット径を画像の解像度に対して1.5倍〜3倍のドット径とすると良い。
【0069】尚、解像度より小さいドットを印字するためには、露光部におけるレーザーパワーやパルス幅を変えなくてはならないが、白トナーもしくは透明トナーの印字についてのみドット径を小さくするのであれば、全ての色のトナーに関してドット径を小さくして解像度を上げる場合に比べ、必要な回路の追加等も少なく、小さなコストアップで済む。
【0070】
【発明の効果】本発明の画像処理装置は、以上のように、有色である第1の顕像剤によって画像形成される有色領域データのみからなる画像データに対し、該画像データ内に存在するシャギーを抽出するシャギー抽出手段と、上記シャギー抽出手段によって抽出されたシャギーに対して、第2の顕像剤によって上記シャギーの角を被覆するための被覆データを形成する被覆データ形成手段とを備えている構成である。
【0071】それゆえ、有色顕像剤で形成された画像に対して、白トナーもしくは透明トナーである第2の顕像剤による印字ドットを、斜め線や文字のエッジ部のぎざぎざ(シャギー)の角を隠蔽するように被せることによって、シャギーを滑らかにするスムージングの効果を得ることができ、高精彩な画像を再現できるという効果を奏する。
【0072】また、上記画像処理装置は、上記第2の顕像剤として、白トナーおよび透明トナーの2種類を用いると共に、さらに、上記白トナーと転写紙の色との色差を検出する色差検出手段とを備え、上記被覆データ形成手段は、上記色差検出手段により検出される転写紙と前記白色トナーとの色差ΔEが15未満の場合には、上記被覆データを白トナーのみを用いた印字データとして形成し、色差ΔEが15以上の場合には、上記被覆データを白トナーの上に透明トナーを重ねて印字する印字データとして形成する構成とすることが好ましい。
【0073】すなわち、エッジ部に印字した白トナーが隣接する画素の色に対しての色差が大きい場合、印字された白トナーが目立ち画像劣化が生じるが、色差が15未満の目立たない場合に限り、エッジ部に白色トナーを印字することで上記不具合を回避できる。
【0074】また、色差が15以上ある場合は、白色トナーとの上からさらに透明トナーを印字することで、エッジ部のぎざぎざを隠蔽して滑らかなエッジを得ることができると共に、透明トナーの光拡散効果によって白トナーの目立ちを抑制することができる。
【0075】また、上記画像処理装置は、有色領域データにおいて発生するエッジ部の傾きを検出する傾き検出手段を備え、検出結果に応じて、上記第2の顕像剤による印字ドットのドット径を異ならせる構成とすることが好ましい。
【0076】これにより、シャギーが生じているエッジ部の傾き(角度) によって、見た目のぎざぎざ感が変わるものの、それに応じて上記第2の顕像剤のドット径を異ならせることにより、より効果的に滑らかな曲線画像が再現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を示すものであり、図1(a)は従来の印字例、図1(b)は白トナーによりシャギーの角を隠蔽して滑らかにした印字例を示す説明図である。
【図2】本発明の画像処理装置で処理された画像データを印字出力する画像形成プロセスの一例を示すものであり、1工程プロセスによるモノクロ画像形成プロセスを示す説明図である。
【図3】本発明の画像処理装置で処理された画像データを印字出力する画像形成プロセスの一例を示すものでありタンデムタイプによるモノクロ画像形成プロセスを示す説明図である。
【図4】本発明の画像処理装置で処理された画像データを印字出力する画像形成プロセスの一例を示すものであり、カラー画像形成プロセスを示す説明図である。
【図5】カラー画像形成を行なう画像形成装置において用いられる上記画像処理装置の構成を示すブロック図である。
【図6】上記画像処理装置における白データ画像処理部の構成を示すブロック図である。
【図7】白トナーと転写紙との色差が大きい場合の印字例を示す説明図であり、図7(a)は斜めエッジにおいて生じるシャギーのギザギザの隠蔽に白トナーのみを用いた場合、図7(b)は白トナーおよび透明トナーを用いた場合である。
【図8】白トナーを作用させるシャギーの生じる斜めエッジ部の傾きに応じて、該白トナーの印字ドット径を変化させる場合の説明図であり、図8(a)は斜めエッジの傾きが主走査方向に対してほぼ45度をなす場合、図8R>8(b)は斜めエッジの傾きが主走査方向に対して鋭角をなす場合、図8(c)は斜めエッジの傾きが主走査方向に対して鈍角をなす場合を示す。
【符号の説明】
51 画像認識部(シャギー抽出手段)
52 色差演算部(色差検出手段)
53 白データ作成部(被覆データ形成手段)
54 白/透明データ作成部(被覆データ形成手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】有色である第1の顕像剤によって画像形成される有色領域データのみからなる画像データに対し、該画像データ内に存在するシャギーを抽出するシャギー抽出手段と、上記シャギー抽出手段によって抽出されたシャギーに対して、第2の顕像剤によって上記シャギーの角を被覆するための被覆データを形成する被覆データ形成手段とを備えていることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】上記第2の顕像剤として、白トナーおよび透明トナーの2種類が用いられると共に、さらに、上記白トナーと転写紙の色との色差を検出する色差検出手段とを備えており、上記被覆データ形成手段は、上記色差検出手段により検出される転写紙と前記白色トナーとの色差ΔEが15未満の場合には、上記被覆データを白トナーのみを用いた印字データとして形成し、色差ΔEが15以上の場合には、上記被覆データを白トナーの上に透明トナーを重ねて印字する印字データとして形成することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】有色領域データにおいて発生するエッジ部の傾きを検出する傾き検出手段を備え、検出結果に応じて、上記第2の顕像剤による印字ドットのドット径を異ならせることを特徴とする請求項1または2記載の画像処理装置。
【請求項4】請求項1ないし3の何れかに記載の上記画像処理装置を画像処理手段として備え、さらに、第1の顕像剤を用いて上記有色領域データの画像形成を行なう第1の画像形成部と、第2の顕像剤を用いて上記被覆データの画像形成を行なう第2の画像形成部とを含み、上記画像処理手段によって被覆データが形成された後の上記画像データを印字出力する画像出力手段を備えていることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図7】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【公開番号】特開2001−341352(P2001−341352A)
【公開日】平成13年12月11日(2001.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−160831(P2000−160831)
【出願日】平成12年5月30日(2000.5.30)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】