説明

画像処理装置及び当該装置を備える画像形成装置

【課題】 網点領域内に描かれた画像のエッジがより鮮鋭に見えるようにすることを可能ならしめる画像処理装置を提供すること。
【解決手段】 対象画素が網点領域内の画素であって、文字画像等の画像のエッジを構成するエッジ画素に隣接する画素であると判定されると、当該対象画素のデータに対して各スムージングフィルタ481〜488を用いて平滑化処理を行い、その内、当該エッジ画素のデータが参照されずに平滑化処理が行われたフィルタにより平滑化処理されたデータを、当該対象画素の平滑化処理後のデータとして出力する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、画像処理装置に関し、特にデジタル画像データに基づいて画像を形成する画像形成装置において画質の劣化を抑制する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】デジタル画像データに基づいて画像を形成する画像形成装置では、例えば文字画像や網点画像など、画像の種類に応じて、該当部分の画素に対して各種の画像処理を行うことにより、画質の向上を図ることが行われている。より具体的には、網点領域と判定された画素については、モアレの発生を防止するために平滑化処理(スムージング処理)を行い、エッジ領域と判定された画素については、エッジ強調処理を行うのが一般的である。
【0003】スムージング処理の方法としては、スムージング処理の対象となる画素(以下、「対象画素」という。)を中心とした、例えば3画素*3画素からなるフィルタを設定し、当該フィルタに含まれる各画素の濃度値について重み付け加算による移動平均を行うことによって滑らかな再現画像のデータを作成する方法が従来から知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の画像処理装置を用いると、網点領域内に描かれた文字画像については、当該文字画像のエッジが鮮鋭に見えない場合が生じるという問題がある。すなわち、従来は網点領域と判定された全ての画素について、各画素を対象画素として同一のフィルタを用いてスムージング処理しており、そのため3画素*3画素のフィルタを用いた場合、例えば図15に示す画像において、画素901を対象画素とすると、周辺画素8個の中に文字画像領域の3つの画素(902、903、904)が含まれることになる。一方、対象画素を画素905とすると、周辺画素に文字画像領域の画素は全く含まれない、すなわち網点領域の画素だけということになる。
【0005】一般に、文字画像は、濃度が非常に高い画素が連続して存在しており、網点領域は、濃度の高い画素(図15で斜線を引いた画素)が濃度の低い画素(斜線を引いていない画素)中に孤立して存在している場合が多い。そのため同一のフィルタを用いて濃度値を演算すると、周辺画素に文字画像領域の画素が含まれる画素901の濃度値は、周辺画素が網点領域だけの画素902に比べて高くなってしまう。つまり、図15の画素903、901、905について見ると、その順に濃度が段々下がっていくことになり、結果的に文字画像のエッジ部から網点領域に掛けての濃度勾配がゆるくなって、エッジが鮮鋭に見えない、いいかえればぼやけて見える場合が生じることになる。
【0006】上記のような問題は、網点領域内に描かれた画像に限られず、例えば写真画像などの濃度平坦領域に文字等の画像が描かれている場合に、当該濃度平坦領域をより滑らかに再現するために当該領域についてスムージング処理を施す際にも生じ得る。本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであって、網点領域等に描かれた文字画像等のエッジがより鮮鋭に見えるように処理することにより、画質の劣化を抑制できる画像処理装置、及び当該画像処理装置を用いた画像形成装置を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明に係る画像処理装置は、対象画素を含む所定の範囲内に存する画素のデータに重み付けを行い、重み付けされた画素のデータに基づいて当該対象画素のデータを平滑化する平滑化手段を備える画像処理装置であって、前記対象画素を含む所定の範囲内の各画素について、文字画像領域内に存する画素であるか否かを判定する文字画像領域判定手段を備え、前記平滑化手段は、対象画素が文字画像領域内でないと判定され、かつ前記所定の範囲内に文字画像領域内と判定された画素が存する場合に、当該画素に対する重み付け量を、当該画素が文字画像領域内でないとした場合における重み付け量よりも小さくすることを特徴とする。
【0008】また、網点領域内に存する画素であるか否かを判定する網点領域判定手段を備え、前記平滑化手段は、対象画素が網点領域内と判定された場合には、前記文字画像領域内と判定された画素に対する重み付け量を、当該画素が網点領域内とした場合における重み付け量よりも小さくすることを特徴とする。また、前記文字画像領域内と判定された画素のデータに対する重み付け量がゼロであることを特徴とする。
【0009】ここで、「重み付け量がゼロ」とは、重み付け量がゼロとされた画素のデータが重み付けされるときの処理において参照されなくなることを意味する。また、前記所定の範囲内の、対象画素に対して所定の位置関係にある画素に対する重み付け量がゼロとなる構成のフィルタを複数種類備え、前記平滑化手段は、前記複数種類のフィルタの内、文字画像領域内と判定された画素に対する重み付け量がゼロとなるように構成されたフィルタを利用して平滑化を行うことを特徴とする。
【0010】また、本発明は、画像処理装置により平滑化されたデータに基づいて画像を形成する画像形成装置であって、当該画像処理装置として、上記本発明に係る画像処理装置を備えることを特徴とする。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明に係る画像処理装置及び画像形成装置の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
(1)画像形成装置の全体構成図1は、画像形成装置の一例としてのフルカラー複写機(以下、単に「複写機」という。)1の全体構成を示す概略断面図である。
【0012】複写機1は、画像読取部200で原稿を読み取って得たデジタル画像データを用いて画像形成部300で画像を形成するものであって、画像読取部200の上部には自動原稿送り装置100が設けられている。通常は、自動原稿送り装置100により画像読み取り位置に搬送された原稿を画像読取部200で読み取り、得られた画像データを画像形成部300に転送し、画像形成部300において記録シート上に画像を形成する。もっとも、外部インターフェース207によってパーソナル・コンピュータ(PC)等の外部機器との接続が可能である。これによって、画像読取部200で読み取って得た画像データを外部機器に出力するスキャナ機能や、外部機器から入力された画像データを用いて画像形成部300で画像を形成するプリンタ機能を実現することができる。
【0013】自動原稿送り装置100は、原稿トレイ101にセットされた原稿を画像読取部200の画像読み取り位置に搬送し、原稿の読み取りを行った後に原稿を原稿排出トレイ103上に排出する。原稿の搬送動作は、図示しない操作パネルからの指示に従って行われ、原稿の排出動作は画像読取部200からの読み取り終了信号に従って行われる。複数枚の原稿がセットされている場合には、これらの制御信号が連続的に発生され、原稿の搬送、読み取り、排出の各動作が順次実行される。
【0014】画像読取部200では、原稿ガラス208上に載置された原稿を露光ランプ201で照射し、3枚のミラー2021〜2023を含むミラー群202、及びレンズ203を介して反射光をCCDセンサ204上に結像させる。露光ランプ201及び第1ミラー2021は、スキャンモータ209により、複写倍率に応じた速度Vで矢印A方向に駆動され、これによって、原稿ガラス208上の原稿を全面にわたって走査する。露光ランプ201及び第1ミラー2021のスキャンにともない、第2ミラー2022及び第3ミラー2023は、速度V/2で同じく矢印A方向に移動する。露光ランプ201の位置は、ホーム位置からの移動量、即ちスキャンモータ209のステップ数とスキャンホームセンサ210の検出信号とにより算出され、制御される。
【0015】CCDセンサ204に入射した原稿の反射光は、CCDセンサ204内で電気信号に変換され、画像処理部205において、アナログ処理、AD変換、及びデジタル画像処理等が行われ、外部インターフェース207や画像形成部300に送られる。原稿ガラス208上の原稿読み取り位置とは別に、白色のシェーディング補正板206が配置されており、原稿上の画像情報の読み取りに先立って、シェーディング補正用の補正データの作成のために、このシェーディング補正板を読み取る。
【0016】次に、画像形成部300について説明する。まず、露光及びイメージングについて説明する。画像読取部200又は外部インターフェース207から送られてきた画像データは、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)の各色の印字用データに変換され、図示しない各露光ヘッドの制御部に送られる。各露光ヘッド制御部では、送られてきた画像データの画素値に応じてレーザを発光させる。そして、射出されたレーザ光をポリゴンミラー301により1次元走査し、各イメージングユニット302C、302M、302Y、302K内の感光体表面を露光する。
【0017】各イメージングユニット302C〜302K内には、感光体を中心として電子写真プロセスを行うために必要なエレメントが配置されており、C、M、Y、K用の各感光体が時計回りに回転することにより、電子写真プロセスが連続的に行われる。画像形成に必要な各イメージングユニット302C〜302Kは、各色ごとに一体化され、本体に着脱自在な構造となっている。各イメージングユニット302C〜302K内の感光体表面に、前記した露光によって形成された潜像は、各色の現像器により現像される。現像により形成された感光体表面のトナー像は、用紙搬送ベルト304内に感光体と対向して配置された転写チャージャ303C〜303Kにより、用紙搬送ベルト304上を搬送される記録シートに転写される。
【0018】次に、記録シートの給紙、搬送、及び定着について説明する。転写される側の記録シートは以下の順序で転写位置に供給され、その上に画像が形成される。給紙カセット310a〜310cの中には様々なサイズの記録シートがセットされており、所望のサイズの記録シートが各給紙カセット310a〜310cに取り付けられている給紙ローラ312a〜312cにより搬送路へ供給される。
【0019】搬送路へ供給された記録シートは、搬送ローラ対313により用紙搬送ベルト304上に送られる。ここでは、タイミングセンサ306により、用紙搬送ベルト304上の基準マークを検出し、搬送される記録シートの搬送タイミング合わせが行われる。また、イメージングユニット302C〜302Kの記録シート搬送方向最下流には、レジスト補正センサ312が主走査方向に沿って3個配置されており、用紙搬送ベルト304上にレジストパターンを形成した際に、このセンサ312によってC、M、Y、Kの各色の画像の主走査方向及び副走査方向の色ずれ量を検出し、プリントイメージ制御部(PIC部)での描画位置補正と画像歪み補正を行うことによって、記録シート上の色ずれを防止している。そして、転写された記録シート上のトナー像は、定着ローラ対307により加熱溶融されて記録シート上に定着された後、排紙トレイ311上に排出される。
【0020】なお、両面コピーの場合には、記録シート裏面への画像形成のため、定着ローラ対307によりトナー像が定着された記録シートは用紙反転ユニット309により反転され、両面ユニット308により導かれることにより、再度搬送径路に給紙される。なお、用紙搬送ベルト304は、ベルト待避ローラ305の上下の移動により、C、M、Yの各イメージングユニット302C、302M、302Yから待避でき、用紙搬送ベルト304と各色の感光体との間を非接触状態にすることができる。即ち、モノクロ画像の形成時には、各イメージングユニット302C、302M、302Yの駆動を停止することができるため、感光体その他の摩耗を防止することができる。
【0021】(2)画像処理部205の構成次に、画像読取部200に設けられる画像処理部205の信号処理の内容について説明する。図2及び図3は、画像処理部205の構成を示す機能ブロック図である。図2に示されるCCDセンサ204は、原稿面からの反射光の強さに応じて、原稿画像をR、G、Bの各色に分解した電気信号に変換する。CCDセンサ204の読み取り解像度は、400dpi、600dpi、800dpi、1200dpiなどに切り替えることができる。AD変換部401は、基準駆動パルス生成部411から出力されるタイミング信号に基づいて、CCDセンサ204から出力されるアナログ信号をR、G、Bの各色情報ごとに8ビットつまり256階調のデジタルデータに変換する。
【0022】シェーディング補正部402では、R、G、Bの各色の画像データの主走査方向の光量むらをなくすための補正を行う。シェーディング補正のためには、各色ごとに独立して、シェーディング補正板206を読み取って得たデータを、内部のシェーディングメモリに基準データとして格納しておく。具体的には、原稿の走査時に、基準データを逆数変換して画像データと乗算を行うことによって補正を行うことができる。
【0023】ライン間補正部403では、R、G、Bの各センサチップのスキャン方向の読み取り位置を合わせるために、スキャン速度に応じて、内部のフィールドメモリを用いて各色の画像データをライン単位でディレイ制御する。光学レンズによって生じる色収差現象によって、主走査側の原稿端部側ほどR、G、Bの各色の読み取り位相差が大きくなる。この影響によって、単なる色ずれ以外に後述するACS判定などで誤判別を引き起こす恐れがある。そこで、色収差補正部404では、R、G、Bの位相差を彩度情報に基づいて補正する。
【0024】変倍・移動制御部406では、R、G、Bの各色の画像データごとに、変倍用ラインメモリを2個用いて、1ラインごとに入出力を交互動作させ、そのライト・リードタイミングを独立して制御することで主走査方向の変倍・移動処理を行う。即ち、メモリへの書き込み時のデータを間引くことにより縮小を、メモリからの読み出し時にデータの水増しを行うことにより拡大を行う。なお、この制御において、変倍率に応じて縮小側ではメモリの書き込み前に、拡大側ではメモリの読み出し後に、それぞれ補間処理を行い、画像欠損やガタツキを防止している。このブロック上の制御とスキャン制御とを組合せて、拡大と縮小とだけでなく、センタリング、イメージリピート、綴じ代縮小などの処理を行う。
【0025】ヒストグラム生成部412及び自動カラー選択(ACS)判定部413では、原稿をコピーする動作に先立ち、予備スキャンして得られたR、G、B各色の画像データから明度データを作成し、そのヒストグラムをメモリ上に作成する一方、彩度データによって1ドットごとにカラードットか否かを判定し、原稿上で512ドット四方のメッシュごとのカラードット数をメモリ上に作成する。この結果に基づいて、コピー下地レベル自動制御(AE処理)及びカラーコピー動作かモノクロコピー動作かの自動カラー選択(ACS処理)を行う。
【0026】ラインバッファ部414では、画像読取部200で読み取ったR、G、Bの各色の画像データを1ライン分記憶できるメモリを有し、AD変換部401でのCCDセンサ204の自動感度補正や自動クランプ補正のための画像解析用に画像データのモニタが行えるようになっている。HVC変換部421では、データセレクタ422を介して入力されたR、G、Bの各色のデータから、3*3の行列演算によって、明度(Vデータ)及び色差信号(Cr、Cbデータ)に一旦変換する。
【0027】次に、AE処理部423において、先に述べた下地レベル制御値に基づいてVデータを補正し、操作パネル上で設定された彩度レベル及び色相レベルに応じてCr、Cbデータの補正を行う。その後、逆HVC変換部424において、3*3の逆行列演算を行い、R、G、Bの各色のデータに再変換する。図3に示される色補正部430では、LOG補正部431でR、G、Bの各色のデータを濃度データ(DR、DG、DBデータ)に変換後、墨量抽出部432において、DR、DG、DBデータの最小色レベルを原稿下色成分として検出し、同時に、R、G、Bの各色の最大色と最小色の階調レベル差を原稿彩度データとして検出する。
【0028】DR、DG、DBデータは、マスキング演算部433で3*6の非線型行列演算処理されて、プリンタの各色トナーにマッチングした色データ(C、M、Y、Kデータ)に変換される。下地除去・墨加刷処理部(UCR・BP処理部)434は、先に述べた原稿下色成分(Min(R,G,B))に対して、原稿彩度データに応じたUCR・BP係数を算出し、乗算処理によってUCR・BP量を決定し、マスキング演算後のC、M、Yデータから下色除去量(UCR)を差分して、C、M、YデータとKデータを算出する。また、モノクロデータ生成部435で、R、G、Bの各色のデータから明度成分を作成し、LOG補正してブラックデータ(DVデータ)を出力する。最後に、色データ選択部436でカラーコピー用画像であるC、M、Y、Kデータとモノクロコピー用画像であるDVデータ(C、M、Yは白)を選択する。
【0029】領域判別部440は、データセレクタ422を介して入力されるR、G、Bの各色の画像データに基づいて、各画素について、文字画像、罫線などの線画など背景画像との濃度差(強度差)が比較的大きいエッジ部を有する画像(以下、総称して「文字画像」という。)のエッジ領域の画素であるか否か、網点領域に存在する画素であるか否か等を判別し、判別結果を示す領域判別信号S10〜S13を出力する。領域判別部440の詳細な構成については後述する。
【0030】画像補正部460は、色補正部430からのC、M、Y、Kの各データに対して、第1のスムージング処理、第2のスムージング処理およびエッジ強調処理を施し、領域判別部440から出力される領域判別信号に基づいて、■第1のスムージング処理を施したものを出力する、■第2のスムージング処理を施したものを出力する、■エッジ強調処理を施したものを出力する、■いずれの処理も施さないで出力する、の内のいずれかを選択し、当該選択した補正処理が施されたものをプリントイメージ制御I/F(インターフェース)465に転送する。
【0031】ここで、第1のスムージング処理は、網点画像に対して従来から施されている平滑化処理であり、第2のスムージング処理は、本発明の特徴的な処理であって、第1のスムージング処理で用いられるスムージングフィルタとは異なる構成のフィルタを用いて平滑化処理するものである。第1と第2のスムージング処理のスムージングフィルタの構成、およびどのような領域判別信号が出力された場合に、どの補正処理を施したものを出力するかについては後に詳細に説明する。また、画像補正部460は、C、M、Y、Kのデータを、図2に示すデータセレクタ466を介して画像インターフェース部467に送る。
【0032】画像インターフェース部467は、外部装置と画像データの入出力を行う部分である。画像インターフェース部467によって、R、G、Bの各色のデータの同時入出力、及びC、M、Y、Kのデータの順次入出力が可能である。外部機器側は、複写機1のスキャナ機能やプリンタ機能を利用することができる。
(3)領域判別部440の構成図4は、領域判別部440の構成を示す図である。
【0033】領域判別部440は、R、G、Bの各色のデータから、領域判別の対象画素(以下、単に「対象画素」ともいう。)が、どのような領域に存在するものかを判別し、領域判別信号S10〜S13を画像補正部460に出力する。領域判別部440は、明度/彩度検出部441、網点検出部444、エッジ検出部447、およびエッジ周辺領域検出部448を有しており、各部の出力を以後の論理回路で処理することにより、領域判別信号S10〜S13を出力している。以下、各部の処理内容について詳細に説明する。
【0034】明度/彩度検出部441は、R、G、B各色のデータ(反射光データ)をLab変換し、彩度データ及び明度(L)データS1を生成する。本実施の形態では、彩度データに関する詳細な説明は省略する。網点検出部444は、孤立点検出部442と孤立点カウント部443からなり、孤立点検出部442は、まず、対象画素を中心とした所定の大きさ、例えば5画素*5画素のウィンドウを設定し、明度/彩度検出部441から送られてくる当該対象画素とその周辺画素の明度(L)データS1を比較し、その比較結果に基づき、当該対象画素が孤立点に該当するか否かを判定し、その判定結果を示す信号S2を出力する。
【0035】孤立点カウント部443は、対象画素を中心とした所定の大きさのウィンドウを設定し、孤立点検出部442の出力信号S2に基づいて、当該ウィンドウ内の孤立点、ここでは黒孤立点(明度の高い画素を背景として明度の低い画素が孤立して存在する場合の孤立点)の数をカウントする。カウントされた黒孤立点の数を予め設定された閾値REF1と比較し、孤立点の数が閾値REF1よりも多い場合に領域判別信号S10をハイとし、それ以外の場合にS10をローとする。S10がハイであった場合、当該対象画素は網点領域内の画素であることを示す。なお、この網点検出部444の構成については、例えば特開2000−59616号公報に詳しい。
【0036】一方、エッジ検出部447は、エッジ量算出部445とエッジカウント部446からなり、エッジ量算出部445は、対象画素を中心とした所定の大きさのウィンドウを設定し、明度/彩度検出部441にて生成された明度(L)データS1から、1次微分又は2次微分によりエッジ量を算出する。そして、算出されたエッジ量を予め設定されている所定の閾値REF2と比較し、エッジ量がREF2より大きければ、当該対象画素を文字画像のエッジ領域(以下、「文字エッジ領域」という。)内の画素と判断して出力信号(エッジ信号)S3をハイとし、それ以外の場合はエッジ領域内ではないとしてエッジ信号S3をローとする。
【0037】エッジカウント部446は、対象画素を中心とした所定の大きさ、例えば5画素*5画素のウィンドウを設定し、エッジ量算出部445からのエッジ信号S3に基づいて、当該ウィンドウ内に存在する文字エッジ領域内と判断された画素の数をカウントする。そして、カウントされた結果の値が所定の閾値REF3より多いか否かを判断し、多いと判断した場合に当該対象画素を文字エッジ領域の画素と決定して出力信号S13をハイとし、多くないと判断した場合は、文字エッジ領域の画素でないと決定して領域判別信号S13をローとする(以下、文字エッジ領域の画素と決定された画素を「エッジ画素」という。)。
【0038】このようにウインドウ内に存在するエッジ画素の数をカウントして所定の閾値REF3より多いか否かを判断するのは、次の理由による。すなわち、文字エッジ領域では、エッジ画素が連続して存在している可能性が高いはずであり、そうであれば、当該ウインドウ内には、エッジ画素が所定数以上含まれているはずである。したがって、カウントされた結果の値が上記閾値REF3以下である場合には、文字エッジ領域に該当しない可能性が高いこと、また文字画像に接している網点領域内の画素に該当する可能性もあることから、可能な限り誤判別を防止することが好ましいからである。連続する可能性が高いことを考慮して、文字エッジ領域の画素か否かを決定する条件に、さらに連続するエッジ画素の数が所定値以上であるか否かを判断するという条件を加えるようにすれば、より正確な判別を実現できる。
【0039】また、本実施の形態では、網点領域内に存在する文字画像のエッジ領域(以下、「網点中文字エッジ領域」という。)をより判断しやすくするため、無地(白地)に文字画像が存在する場合における文字エッジ領域を判断するために通常用いられる閾値よりも、上記REF2の値を小さくしている。これは、網点中文字エッジ領域においては、網点の下地に文字のエッジが存在するため、無地に存在する場合に比べてエッジ量が低めになることから、閾値を小さく設定してエッジを検出しやすくすることが好ましいからである。
【0040】エッジ周辺領域検出部448は、対象画素を中心とした所定の大きさ、本実施の形態では縦3画素*横3画素の大きさのウィンドウを設定し、当該ウインドウ内の対象画素以外の他の画素の中に、エッジ画素が存在するか否かを判断し、存在すると判断した場合は、当該対象画素を、エッジ画素の周辺の領域(以下、「エッジ周辺領域」という。)に存在する画素(以下、「エッジ周辺画素」という。)であると判定し、出力信号S21をハイとする。一方、エッジ画素が存在しないと判断した場合は、S21をローとする。このエッジ周辺領域検出部448の動作を図5を用いて具体的に説明する。
【0041】図5は、網点領域内に存在する文字画像のエッジの一部を縦5画素*横5画素の範囲に分解して示した模式図である。ここでは、V11、V21・・V51およびV12、V22・・V52の10画素が、文字画像領域の画素であり、エッジ画素と判定され、それ以外の他の15画素が、網点領域に属する画素であるとして説明する。
【0042】このような画像において、例えば対象画素をV33とした場合、縦3画素*横3画素の大きさのウィンドウ内に3つのエッジ画素V22、V32、V42が存在するので、V33は、エッジ周辺画素であると判定される。一方で、V34を対象画素とすると、当該ウインドウ内にはエッジ画素が一つも存在しなくなるので、エッジ周辺画素ではないと判定されることになる。これより、同図の画像において網点領域内の画素の内、エッジ周辺画素と判定されるのは、V13、V23・・V53が対象画素になった場合となる。
【0043】図4に戻って、AND回路449は、領域判別信号S10及びS13の双方がハイであるときに、領域判別信号S11をハイとする。すなわち、S11がハイである場合に、対象画素は、網点画像中に存在する文字画像のエッジ画素であると判定されることとなる。AND回路451は、出力信号S21およびS22(S13がインバータ450で反転された信号)の双方がハイであるときに、領域判別信号S12をハイとする。すなわち、S12がハイである場合に、対象画素は、エッジ周辺画素であると判定されることになる。なお、S21とS22の信号の論理和をとるようにしたのは、次の理由による。すなわち、エッジ周辺領域検出部448において、エッジ周辺画素であると判定された画素であっても、例えば図5の構成においては、3画素*3画素のウインドウを用いると、エッジ画素として判定されたV32を対象画素としたとき、当該V32がエッジ周辺画素としても判定されることになってしまい、結果的にエッジ周辺画素とエッジ画素とを区別することができない場合が生じるからである。そこで、本実施の形態では、論理和をとって、対象画素がエッジ画素と判定されずエッジ周辺画素として判定された場合に、領域判別信号S12がハイになるように構成することで、エッジ画素とエッジ周辺画素とを区別するようにしている。
【0044】(4)画像補正部460の処理内容図6は、画像補正部460の構成を示す図である。同図に示すように、画像補正部460は、スムージング処理部461、462、エッジ強調処理部463およびセレクタ464からなる。画像補正部460には、色補正部430からのC、M、Y、Kの各濃度データが入力され、当該データはそのままセレクタ464の0、1、2、3、7番端子に入力されると共に、スムージング処理部461、462、エッジ強調処理部463に入力される。
【0045】スムージング処理部461は、網点画像をスムージング処理するのに従来から用いられている公知のスムージング用のフィルタ、例えば図7に示すような縦3画素*横3画素のフィルタを用いて、周辺画素の濃度値の重み付け加算による移動平均を行って対象画素の濃度データにスムージング処理を施し、セレクタ464へ送出する。上記「第1のスムージング処理」は、このスムージング処理部461において行われるスムージング処理のことである。
【0046】一方、スムージング処理部462は、当該対象画素の濃度データに対して一のフィルタだけではなく、複数、ここでは8個のフィルタ(図9参照)を用いて別々にスムージング処理を施し、その中から所定の条件を満たす一のフィルタを用いてスムージング処理されたものをセレクタ464へ送出する。上記「第2のスムージング処理」は、本スムージング処理部462において行われるスムージング処理のことである。スムージング処理部462の構成については、後述する。
【0047】エッジ強調処理部463は、エッジ強調処理するのに従来から用いられている公知のフィルタを用いて、当該対象画素の濃度データにエッジ強調処理を施し、セレクタ464へ送出する。セレクタ464は、領域判別部440から送られてくる領域判別信号S10、S11、S12のハイ/ローの組み合わせによって、入力端子0〜7に入力される信号の内、いずれの信号を一の出力端子から出力するかを選択し、選択した信号をプリントイメージ制御I/F465へ出力させるものである。
【0048】下記の(表1)は、セレクタ464による処理内容をまとめたものである。
【0049】
【表1】


【0050】上記(表1)に示したように、本実施の形態の画像補正部460は、対象画素が網点領域内の画素であってエッジ周辺領域以外の領域に存在する画素と判定された場合(領域判別信号S10がハイ、S11がロー、S12がローの場合)、入力端子4番に入力されている信号を出力する。すなわち、スムージング処理部461による第1のスムージング処理が施されたデータを出力することになる。
【0051】一方、対象画素が網点領域内におけるエッジ周辺領域(以下、「網点中文字エッジ周辺領域」という。)に存在する画素と判定された場合(領域判別信号S10がハイ、S11がロー、S12がハイの場合)、入力端子5番に入力されている信号を出力する。すなわち、スムージング処理部462による第2のスムージング処理が施されたデータが出力されることになる。
【0052】また、対象画素が網点中文字エッジ領域内の画素と判定された場合(領域判別信号S10がハイ、S11がハイ、S12がローの場合)、入力端子6番に入力されている信号を出力する。すなわち、エッジ強調処理部463によるエッジ強調処理が施されたデータが出力されることになる。なお、上記以外の領域の画素、例えば網点領域内でもなく文字エッジ領域内でもない画素などについては、本実施の形態では、何も処理を行わずそのまま(スルーさせて)出力する。
【0053】すなわち、本実施の形態では、各画素それぞれについてその濃度データにスムージング処理部461による第1のスムージング処理、スムージング処理部462による第2のスムージング処理、およびエッジ強調処理部463によるエッジ強調処理が施されるが、各処理部により施された3つの濃度データおよび何も処理されない濃度データの内、プリントイメージ制御I/F465へ送られるのは、領域判別部440からの信号S10〜S12に基づいてセレクタ464により選択されたものだけとなる。
【0054】図8は、スムージング処理部462の構成を示す図である。同図に示すように、スムージング処理部462は、ラインバッファ470、フィルタ処理部471〜478、方向検出回路479およびセレクタ480からなる。ラインバッファ470は、フィルタ処理部471〜478におけるフィルタ処理に必要なライン分のデータを一時的に蓄積する。
【0055】フィルタ処理部471は、図9に示す3画素*3画素のスムージングフィルタ481を用い、周辺画素の濃度値の重み付け加算による移動平均を行って対象画素の濃度をスムージング処理し、スムージング処理された濃度データを出力する回路である。具体的には、縦3画素*横3画素のマトリクスで構成される画像の場合、その画像のi行目、j列目(1≦i≦3、1≦j≦3)の画素Vijの濃度データをDijとし、同様にスムージングフィルタ481のi行目、j列目の画素の係数をKijとしたときに、対象画素V22の濃度データD22を、 D22=Σ(Dij*Kij)/Σ(Kij)・・・(式1)
に基づいて演算し、平滑化するものである。例えば、図5R>5に示す画像において対象画素をV33としたときに、フィルタ481を用いると、V33の濃度データD33は、D33=(D23*2+D24*2+D33*4+D34*2+D43*2+D44*2)/(2+2+4+2+2+2)となる。
【0056】同様に、フィルタ処理部472〜478は、スムージングフィルタ482〜488を用いて平滑化した濃度データをそれぞれ出力する。これにより、一のデータに対して8個のスムージング処理されたデータが生成されてセレクタ480へ出力されることになる。なお、各スムージングフィルタ481〜488は、対象画素となる中心画素の周囲にフィルタリングするときの係数(重み付け量)が「0」となる画素を3つ含んでおり、対象画素からみて上、下、左、右および右上、右下、左下、左上の8つの方向にそれぞれ重み付けされる方向が変わるように、当該係数「0」の位置が設定されている。このような構成にした理由については、後述する。
【0057】次に、方向検出回路479の構成を図10を用いて説明する。図10に示すように、方向検出回路479は、ラインバッファ490、フィルタ処理部491〜498、MAX選択回路499からなり、エッジ画素が連続することにより形成される列(以下、「エッジ画素列」という。)が対象画素に対してどの方向に位置しているかを検出する。
【0058】ラインバッファ490は、フィルタ処理部491〜498におけるフィルタ処理に必要なライン分のデータを一時的に蓄積する。フィルタ処理部491は、図11に示す縦5画素*横5画素のフィルタ501を用い、対象画素の濃度データについてフィルタリングを行う。同様に、フィルタ処理部492〜498は、フィルタ502〜508を用いてフィルタリングを行う。フィルタリングによる演算の方法は、上記スムージングフィルタ481等と同様である。すなわち、上記変数i、jの範囲がそれぞれ1≦i≦5、1≦j≦5になり、対象画素をV33としたときに、その濃度データD33は、D33=Σ(Dij*Kij)/Σ(Kij)となる。
【0059】ここで、各フィルタ501〜508は、エッジ画素列が対象画素に接している場合において、そのエッジ画素列と、係数「1」となる画素列とが一致したときにフィルタリングされたときの演算値が最も大きくなるように、係数「1」の画素の位置が設定されている。したがって、例えば図5に示す画像において、対象画素をV33としたときに、フィルタ処理部491〜498により処理が行われると、フィルタ501を用いたときの演算値が最も大きくなる。同様に、対象画素がV23である場合にも、フィルタ501を用いたときの演算値が最も大きくなる。また、対象画素V33に対し、仮にエッジ画素がV14、V23、V32、V41である場合には、V14、V23、V32、V41の各画素と同じ位置関係になる画素に係数「1」が設定されるフィルタ507を用いたときの演算値が最も大きくなる。
【0060】すなわち、対象画素がエッジ画素列に接している場合には、各フィルタ処理部491〜498において演算された値の内、その値が最も大きくなるフィルタ処理部のフィルタに設定された係数「1」の画素列が、実質的に対象画素に対するエッジ画素列の位置を表わしていることになる。以下、フィルタ501〜508における係数「1」の各画素列を、対象画素に対するエッジ画素列の位置を表わしたものとして、各エッジ画素列の対象画素に対する位置を、フィルタ501・・・508の順に第1・・・第8の位置ということにする。
【0061】MAX選択回路499は、フィルタ処理部491〜498からの出力値の内、その値が最大となるフィルタ処理部がどれであるかを判断し、その判断結果から対象画素に対するエッジ画素列の位置を特定し、その位置を示す信号、例えば第1の位置であれば「1」、第2の位置であれば「2」・・第8の位置であれば「8」を示す信号を3ビットの信号にしてセレクタ480へ出力する。
【0062】図8に戻って、セレクタ480は、方向検出回路479からの信号を受信し、その信号が例えば「1」、すなわち対象画素に対するエッジ画素列の位置が第1の位置である場合には、フィルタ処理部471からの信号を選択してセレクタ464へ出力する。また「2」であればフィルタ処理部472からの信号を選択し、同様に「3」・・・「8」であれば、フィルタ処理部473・・・478からの信号を選択してセレクタ464へ出力する。
【0063】すなわち、セレクタ480は、スムージングフィルタ471〜478の内、方向検出回路479により対象画素に対してエッジ画素列と特定された位置に係数「0」の画素が位置するフィルタを用いてスムージング処理されたデータを選択することになる。このような構成にしたのは、網点中文字エッジ周辺領域に属する画素を対象画素としてスムージング処理を施す場合には、当該対象画素に隣接する網点中文字エッジ領域に属する画素の濃度データを参照しないようにして、エッジが従来よりも強調されるようにするためである。
【0064】すなわち、例えば、スムージングフィルタ481であれば、対象画素に隣接する左、左上、左下に位置する各画素に対応する係数が「0」になっている。したがって、図5に示す画像において、各画素V11〜V55のスムージング処理する前の濃度データが、例えば図12に示すようになっており(数値が高い程、濃度が高いことを示す。)、画素V33(斜線を引いた画素)が網点中文字エッジ周辺領域内の画素であり、画素V22、V32、V42が網点中文字エッジ領域内の画素であると判定された場合、V33を対象画素としたとき、このスムージングフィルタ481を用いると、網点中文字エッジ領域内の画素V22、V32、V42の濃度データ「255」が全く参照されず、上記式■よりスムージング後の濃度データD33は、「72.9」になる。
【0065】これに対し、従来は、網点領域の画素については、エッジ周辺領域の画素であってもなくても一様に、例えば図7に示すようなスムージングフィルタを用いているので、V33を対象画素としたとき、3つの画素V22、V32、V42の濃度データも演算結果に反映されてしまい、上記式■よりスムージング後の濃度データD33は、スムージングフィルタ481を用いる場合よりも大きくなり「128」となる。
【0066】すなわち、本実施の形態のスムージングフィルタ481を用いれば、画素V33のスムージング後の濃度データD33は、隣接する網点中文字エッジ領域の画素V32との濃度差が従来よりも大きくなる。画素V32との濃度差が大きくなるということは、その分エッジが強調されたことと同じことがいえるので、文字画像を見たときにそのエッジが従来よりも鮮鋭に見えるという効果を奏することになる。
【0067】このことは、他の網点中文字エッジ周辺領域内の画素についても同じことである。例えば、V23が対象画素のときには、本実施の形態では、上述したように方向検出回路479によりエッジ画素列が第1の位置を示す信号がセレクタ480へ送られるので、スムージングフィルタ481が用いられてスムージングされたデータが出力されることになる。この場合、上記式■より、網点中文字エッジ領域内の画素V12、V22、V32の濃度データが参照されないことになり、V33のときと同じくスムージング後の濃度データD23は「72.9」となる。一方、従来では、各画素V12、V22、V32の濃度データが参照されて「128」となる。
【0068】図13は、図5に示す各画素V11〜V55のスムージングする前の濃度データが図12に示す場合において、網点中文字エッジ領域の画素の濃度データを参照しない本発明の場合と、参照する従来の場合とで、網点領域内のV23、V33、V43およびV24、V34、V44について、それぞれを対象画素としたときのスムージング後の濃度データを具体的に示した図である。
【0069】図13(a)は、従来の場合を示しており、図13(b)は、本発明の場合を示している。なお、図13(b)では、画素V24、V34、V44については、従来のスムージングフィルタを用いてフィルタリングしたときの濃度データを示している。これは、本実施の形態では、上述の図6のところで説明したように、対象画素が網点領域内の画素であってエッジ周辺画素以外の画素である場合、スムージング処理部461による第1のスムージング処理が施されたデータがセレクタ464から出力されることになるからである。
【0070】図14(a)は、図12に示す各画素の濃度値を棒グラフで表わした図であり、図14(b)は、図13(a)に示す各画素のスムージング後の濃度値を棒グラフで表わした図であり、図14(c)は、図13(b)に示す各画素のスムージング後の濃度値を棒グラフで表わした図である。図13(a)と(b)および図1414(b)と(c)より、網点中文字エッジ周辺領域内の画素V23、V33、V43の濃度データD23、D33、D43を従来の場合と本発明の場合を比べると明らかなように、本発明の方が従来よりも低くなると共に、網点領域内の隣接する画素V24、V34、V44の濃度とほぼ等しくなっている。すなわち、網点中文字エッジ領域の画素との濃度差が大きくなった分、エッジがよりシャープ(鮮鋭)に見えるようになると共に、網点領域内においては隣接する画素V24、V34、V44との濃度差が従来よりも小さくなるので、より平滑化されて見えるようになるという効果を得られる。
【0071】(5)変形例(5−1)上記実施の形態では、第2のスムージング処理におけるスムージングフィルタ481〜488として、縦3画素*横3画素の大きさのものを用いたが、スムージングフィルタのサイズ(大きさ)は、これに限られず、画像の解像度やスムージング処理の強度などを考慮して決定される。例えば、縦5画素*横5画素の大きさの場合、係数「0」の位置は、スムージングフィルタ481に対するフィルタであれば、中央の画素V33から左側に位置するV11・・V51およびV12・・V52の10個となり、また、スムージングフィルタ488に対するフィルタであれば、V25、V34、V43、V52、V35、V44、V53、V45、V54、V55の10個となる。すなわち、上記実施の形態と同様に、エッジ画素の濃度データが参照されない位置に「0」が設定されることになる。
【0072】なお、スムージングフィルタ481〜488を縦5画素*横5画素の大きさにしても、エッジ周辺領域検出部448においてエッジ周辺画素を検出するのに用いるウインドウの大きさが縦3画素*横3画素の大きさのままであれば、当該縦5画素*横5画素のスムージングフィルタは、エッジ画素に隣接する画素(図5では、V13、V23・・V53)が対象画素になったときにだけ用いられることになる。
【0073】スムージングフィルタ481〜488を縦5画素*横5画素の大きさにするのに合わせて、上記ウインドウの大きさを縦5画素*横5画素の大きさに広げることもできる。この場合、ウインドウが大きくなった分、エッジ周辺領域も広くなり、エッジ画素の周囲を取り囲む2画素分の幅の範囲、例えば図5ではV13、V23・・V53に加えてV14、V24・・V54もエッジ周辺画素として判定されることになる。したがって、これらの画素が対象画素になった場合、当該画素に対しては、縦5画素*横5画素の大きさのスムージングフィルタによる第2のスムージング処理が施されることになる。
【0074】上記したように、縦5画素*横5画素の大きさになったスムージングフィルタも、縦3画素*横3画素の場合と同様にエッジ画素の濃度データを参照しないように係数「0」の位置が設定されるので、エッジ周辺画素と判定された各画素が対象画素になったときの濃度値は、他の網点領域の画素とほぼ同じ濃度値となるように平滑化処理されることになる。
【0075】また、スムージングフィルタ481〜488に設定される「0」以外の係数については、上記の値に限られることはなく、解像度等を考慮して決定される。
(5−2)上記実施の形態では、エッジ周辺画素が対象画素の場合、エッジ画素の濃度を参照しないようにして平滑化処理するため、各スムージングフィルタ481〜488は、8個の周辺画素の内、3つの画素の係数が「0」となるように設定されたが、当該係数は「0」に限られない。エッジをさらに強調する場合には、当該3つの画素の係数を例えば「−1」に設定したり、あるいは網点領域内における各画素の濃度のさらなる平滑化を図るために、当該3つの画素の係数を例えば「0.1」に設定した方が画質の点から都合がよい場合もあり得るからである。また、3つの画素の係数を異なるように設定してもよい。
【0076】すなわち、網点領域にある画素を対象画素としてスムージング処理する際に、当該対象画素を含む3画素*3画素の範囲内に存在する画素の中に、エッジ画素と判定された画素がある場合、当該エッジ画素に対する係数(重み付け量)を、当該エッジ画素が網点領域内の画素であると判定された場合における係数よりも小さくして演算するようにすれば、少なくとも従来よりはエッジを強調できるという効果を得ることができる。
【0077】なお、スムージングフィルタのサイズを大きくした場合に、例えばエッジ周辺領域内の、エッジ画素に隣接する画素を対象画素とすると、当該フィルタによりフィルタリングされる範囲内には、文字画像のベタ部分が含まれることもある。このような場合には、当該範囲内における画素について、文字画像(エッジ画素を含む。)領域に属する画素であるか否かを判定するように構成し、当該範囲内に文字画像領域内と判定された画素がある場合に、当該画素に対する係数を、当該画素が網点領域内の画素であると判定された場合における係数よりも小さくするようにすれば、上記同様の効果を得られることになる。
【0078】ここで、文字画像領域内の画素であるか否かの判断は、文字エッジ領域については、上記エッジ検出部447で行える。ベタ領域については、例えば判断対象の画素がエッジ画素でなく、かつ孤立点でなく、さらにその画素およびその画素を中心とした所定の範囲内に属する全画素の濃度が所定の濃度(例えば、プリントされるべき用紙の地肌の濃度)よりも高い場合を条件として行うことができる。
【0079】(5−3)上記実施の形態では、網点画像内に文字画像が描かれている場合について説明したが、本発明は、この場合に限られず、例えば濃度変化の少ない濃度平坦領域内に文字画像が描かれている場合にも適用できる。濃度平坦領域は、通常、画像を滑らかにするために当該領域内における各画素についてスムージング処理が施されており、この場合にも本発明を適用すれば文字画像のエッジを実質的に強調することができるからである。すなわち、本発明は、網点画像や濃度平坦領域などのスムージング処理の対象となる領域内に文字画像が描かれている場合全般に適用でき、対象画素についてスムージング処理する場合に、その周辺画素に文字画像領域内と判定された画素が存する場合、当該画素に対する重み付け量を、当該画素が文字画像領域内の画素でない、すなわち網点領域等のスムージング処理対象の画素であるとした場合における重み付け量よりも小さくすれば上記エッジ強調の効果を得られることになる。なお、濃度平坦領域に適用する場合、上記網点検出部444に代わりに対象画素が濃度平坦領域に存するか否かを判断する濃度平坦領域判断部が領域判別部440に配置される。濃度平坦領域であるか否かの判断は、特開平9−238261号公報などに詳細が記載されているので、ここでの説明は省略する。
【0080】(5−4)上記実施の形態では、各画素の濃度データに各スムージングフィルタ481〜488による重み付けがなされたが、例えば各画素のR、G、B色による明度データに重み付けを行い、そのデータに基づいてC、M、Y、K色の濃度データを求めるようにすることもできる。
(5−5)上記実施の形態の画像補正部460では、一の画素の濃度データについて、スムージング処理部461、462、エッジ強調処理部463による各処理を並行して行い、領域判別部440による判別結果に基づいて出力すべきデータを選択するようにしたが、例えば領域判別部440による判別結果に基づいて、動作させるべき処理部を選択するようにしてもよい。このことは、スムージング処理部462におけるフィルタ処理部471〜478によるスムージング処理においても同様である。すなわち、方向検出回路479からの検出結果に基づいて、動作させるべきフィルタ処理部を選択するようにしてもよい。
【0081】
【発明の効果】以上のように、本発明に係る画像処理装置によれば、対象画素が文字画像領域内でないと判定され、対象画素を含む所定の範囲内に文字画像領域内と判定された画素が存在する場合、当該画素に対する重み付け量を、当該画素が文字画像領域内でないとした場合における重み付け量よりも小さくするので、当該対象画素の平滑化処理後における濃度が従来よりも低くなって、エッジが従来よりも強調されて見えるようになり、もって画質の劣化を抑制することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】複写機1の全体構成を示す概略断面図である。
【図2】画像処理部205の構成を示す機能ブロック図である。
【図3】画像処理部205の構成を示す機能ブロック図である。
【図4】領域判別部440の構成を示す図である。
【図5】網点領域内に存在する文字画像のエッジの一部を5画素*5画素の範囲に分解して示した模式図である。
【図6】画像補正部460の構成を示す図である。
【図7】従来のスムージングフィルタの構成例を示す図である。
【図8】スムージング処理部462の構成を示す図である。
【図9】スムージング処理部462で用いられる3画素*3画素のスムージングフィルタ481〜488の構成例を示す図である。
【図10】方向検出回路479の構成を示す図である。
【図11】方向検出回路479において用いられるフィルタ501〜508の構成例を示す図である。
【図12】図5に示す各画素V11〜V55のスムージング処理する前の濃度データを示す図である。
【図13】(a)は、図5に示す各画素V11〜V55のスムージングする前の濃度データが図12に示す場合において、網点領域内の各画素を従来のスムージングフィルタを用いて平滑化処理したときの濃度値を示す図であり、(b)は、本発明のスムージングフィルタを用いたときの濃度値を示す図である。
【図14】(a)は、図12に示す各画素の濃度値を棒グラフで表わした図であり、(b)は、図13(a)に示す各画素のスムージング後の濃度値を棒グラフで表わした図であり、(c)は、図13(b)に示す各画素のスムージング後の濃度値を棒グラフで表わした図である。
【図15】従来のスムージング処理を説明するために用いる画像の一部を5画素*5画素の範囲に分解して示した図である。
【符号の説明】
200 画像読取部
205 画像処理部
440 領域判別部
441 明度/彩度検出部
442 孤立点検出部
443 孤立点カウント部
444 網点検出部
445 エッジ量算出部
446 エッジカウント部
447 エッジ検出部
448 エッジ周辺領域検出部
460 画像補正部
461、462 スムージング処理部
463 エッジ強調処理部
464、480 セレクタ
471〜478、491〜498 フィルタ処理部
479 方向検出回路
481〜488 スムージングフィルタ
499 MAX選択回路
501〜508 フィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 対象画素を含む所定の範囲内に存する画素のデータに重み付けを行い、重み付けされた画素のデータに基づいて当該対象画素のデータを平滑化する平滑化手段を備える画像処理装置であって、前記対象画素を含む所定の範囲内の各画素について、文字画像領域内に存する画素であるか否かを判定する文字画像領域判定手段を備え、前記平滑化手段は、対象画素が文字画像領域内でないと判定され、かつ前記所定の範囲内に文字画像領域内と判定された画素が存する場合に、当該画素に対する重み付け量を、当該画素が文字画像領域内でないとした場合における重み付け量よりも小さくすることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】 網点領域内に存する画素であるか否かを判定する網点領域判定手段を備え、前記平滑化手段は、対象画素が網点領域内と判定された場合には、前記文字画像領域内と判定された画素に対する重み付け量を、当該画素が網点領域内とした場合における重み付け量よりも小さくすることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】 前記文字画像領域内と判定された画素のデータに対する重み付け量がゼロであることを特徴とする請求項1もしくは2に記載の画像処理装置。
【請求項4】 前記所定の範囲内の、対象画素に対して所定の位置関係にある画素に対する重み付け量がゼロとなる構成のフィルタを複数種類備え、前記平滑化手段は、前記複数種類のフィルタの内、文字画像領域内と判定された画素に対する重み付け量がゼロとなるように構成されたフィルタを利用して平滑化を行うことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項5】 画像処理装置により平滑化されたデータに基づいて画像を形成する画像形成装置であって、前記画像処理装置として、請求項1ないし4のいずれかに記載の画像処理装置を備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図7】
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【図12】
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【図15】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【図10】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2002−281313(P2002−281313A)
【公開日】平成14年9月27日(2002.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−73596(P2001−73596)
【出願日】平成13年3月15日(2001.3.15)
【出願人】(000006079)ミノルタ株式会社 (155)
【Fターム(参考)】