画像処理装置
【課題】医師や技師等による弁膜症に関する作業効率や診断精度の向上を可能とする画像処理装置の提供。
【解決手段】記憶部11は、被検体の心臓領域に関する3次元画像を記憶する。断面設定部13は、前記心臓領域に含まれる血管領域に断面を設定する。輪郭抽出部15は、前記断面における前記血管領域から前記血管領域の輪郭を画像処理により抽出する。評価円生成部17は、前記輪郭の形状に基づいて心臓弁の形状を模式的に表現する模式的弁画像を生成する。弁画素特定部19は、前記模式的弁画像を構成する画素毎に、前記3次元画像に含まれる前記心臓弁に関する弁画素を既定方向に沿って探索し、前記弁画素があるか否かを特定する。色付き評価円生成部21は、前記模式的弁画像と前記弁画素があるか否かの情報とに基づいて前記心臓弁の開閉度合いを画素毎に色で表現する色画像を生成する。
【解決手段】記憶部11は、被検体の心臓領域に関する3次元画像を記憶する。断面設定部13は、前記心臓領域に含まれる血管領域に断面を設定する。輪郭抽出部15は、前記断面における前記血管領域から前記血管領域の輪郭を画像処理により抽出する。評価円生成部17は、前記輪郭の形状に基づいて心臓弁の形状を模式的に表現する模式的弁画像を生成する。弁画素特定部19は、前記模式的弁画像を構成する画素毎に、前記3次元画像に含まれる前記心臓弁に関する弁画素を既定方向に沿って探索し、前記弁画素があるか否かを特定する。色付き評価円生成部21は、前記模式的弁画像と前記弁画素があるか否かの情報とに基づいて前記心臓弁の開閉度合いを画素毎に色で表現する色画像を生成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、心臓領域に関する3次元画像データ(ボリュームデータ)を画像処理する画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
弁膜症が生じている心臓弁は、正常に動作せず、完全に閉じなかったり、完全に開かなかったりする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2006/068271号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
弁膜症の治療方針や治療計画を検討する際に医師は、弁口面積等を判断材料としている。例えば、弁膜症の治療方針の決定や治療計画において医師は、心臓弁に関する3次元画像データを利用して目視で弁口面積を推定し、この推定された弁口面積に基づいて病変部の重篤度合いを評価している。しかしながら、弁膜症の治療方針や治療計画において、各心臓弁の性状を定量的に評価する技術は確立されていない。
【0005】
目的は、医師や技師等による弁膜症に関する作業効率や診断精度の向上を可能とする画像処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態に係る画像処理装置は、被検体の心臓領域に関する3次元画像を記憶する記憶部と、前記心臓領域に含まれる血管領域に断面を設定する設定部と、前記断面における前記血管領域から前記血管領域の輪郭を画像処理により抽出する抽出部と、前記輪郭の形状に基づいて心臓弁の形状を模式的に表現する模式的弁画像を生成する第1生成部と、前記模式的弁画像を構成する画素毎に、前記3次元画像に含まれる前記心臓弁に関する弁画素を既定方向に沿って探索し、前記弁画素があるか否かを特定する特定部と、前記模式的弁画像と前記弁画素があるか否かの情報とに基づいて前記心臓弁の開閉度合いを画素毎に色で表現する色画像を生成する第2生成部と、を具備する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本実施形態に係る画像処理装置の構成を示す図。
【図2】本実施形態の画像診断対象である心臓弁(大動脈弁)の解剖学的構造を模式的に示す図。
【図3】図2の大動脈弁が完全に開放しているときの様子を示す図。
【図4】図2の大動脈弁が完全に閉鎖しているときの様子を示す図。
【図5】図2の制御部の制御のもとに実行される大動脈弁の定量的評価処理の典型的な流れを示す図。
【図6】図5のステップS1において断面設定部により実行される評価断面の設定処理を説明するための図。
【図7】図5のステップS2において輪郭抽出部により実行される弁口位置血管輪郭の抽出処理を説明するための図。
【図8】図5のステップS3において評価円生成部により実行される評価円の生成処理の処理過程を示す第1の図。
【図9】図5のステップS3において評価円生成部により実行される評価円の生成処理の処理過程を示す第2の図。
【図10】図5のステップS3において評価円生成部により実行される評価円の生成処理の処理過程を示す第3の図。
【図11】図5のステップS4において弁画素特定部により実行される弁画素の特定処理を説明するための図。
【図12】図5のステップS4において弁画素特定部により開情報又は閉情報が割り付けられた評価円を示す図。
【図13】図5のステップS5において開閉指標計算部により実行される開閉指標の計算処理を説明するための図。
【図14】図5のステップS7において表示部により表示される色付き評価円の表示パターン1を示す図。
【図15】図5のステップS7において表示部により表示される色付き評価円の表示パターン2を示す図。
【図16】図5のステップS7において表示部により表示される色付き評価円の表示パターン3を示す図。
【図17】図5のステップS7において表示部により表示される色付き評価円の表示パターン4を示す図。
【図18】図5のステップS7において表示部により表示される色付き評価円の表示パターン5を示す図。
【図19】図5のステップS7において表示部により表示される色付き評価円の表示パターン6を示す図。
【図20】本実施形態の変形例に係わる表示部により表示される色付きMPR画像の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら本実施形態に係わる画像処理装置を説明する。
【0009】
図1は、本実施形態に係る画像処理装置1の構成を示す図である。本実施形態に係る画像処理装置1は、心臓弁を画像診断の対象とする。よく知られているように、心臓弁には、大動脈弁、僧帽弁、肺動脈弁、三尖弁がある。本実施形態は、これらあらゆる部位の心臓弁に適用可能であるが、以下の実施形態を具体的に説明するため、心臓弁は大動脈弁であるとする。
【0010】
図2に示すように、大動脈弁31は、左心室33と大動脈35との間にあり、左心室33から駆出された血液の逆流を防止する役目を担う。大動脈弁35は、図2には2つしか示されていないが、3つの弁尖から成る。3つの弁尖31に囲まれる空間は、弁口37と呼ばれる。3つの弁尖31を通る断面における弁口37の面積は、弁口面積と呼ばれている。換言すれば、断面上における弁口輪郭内の面積が弁口面積である。各弁尖31と大動脈35の内壁との間の空間は、大動脈洞(いわゆるバルサルバ洞:sinus of valsalva)39と呼ばれている。
【0011】
図3に示すように、左心室が収縮する場合(例えば、収縮末期)、正常な大動脈弁31は開く。反対に左心室が弛緩する場合(例えば、拡張末期)、図4に示すように、正常な大動脈弁31は閉じる。
【0012】
弁膜症が生じている大動脈弁は、正常に動作せず、完全に閉じなかったり、完全に開かなかったりする。例えば、弁狭窄の場合、収縮末期であっても大動脈弁が完全には開かない。閉塞不全の場合、拡張末期であっても大動脈弁が完全には閉じない。すなわち弁口面積は、心臓に弁膜症が発症しているか否かを評価するための1つの指標となりうる。
【0013】
図1に示すように、画像処理装置1は、記憶部11、断面設定部13、輪郭抽出部15、評価円生成部17、弁画素特定部19、色付き評価円生成部21、3次元画像処理部23、操作部25、表示部27、及び制御部29を備える。
【0014】
記憶部11は、被検体の心臓領域に関する3次元画像のデータ(ボリュームデータ)を記憶する。3次元画像のデータは、X線コンピュータ断層撮影装置や磁気共鳴イメージング装置、X線診断装置、超音波診断装置等の診断モダリティにより収集される。以下の説明を具体的に行うため、3次元画像のデータを収集する診断モダリティは、X線コンピュータ断層撮影装置であるとする。X線コンピュータ断層撮影装置は、例えば、造影剤により造影された心臓をX線でダイナミックスキャンし、少なくとも1心拍分の複数の心位相に関する複数の3次元画像のデータを収集する。記憶部11は、3次元画像のデータと心位相とを関連付けて記憶する。
【0015】
断面設定部13は、画像処理やユーザによる操作部25を介した指示に従って、造影剤によりコントラストが強調された、大動脈部分の血管領域に交差する断面(以下、評価断面と呼ぶことにする。)を3次元画像内に設定する。換言すれば、評価断面は、弁口や大動脈洞の近傍に設定される。
【0016】
輪郭抽出部15は、評価断面上の血管領域から血管領域の輪郭(以下、弁口位置血管輪郭と呼ぶことにする。)を既存の画像処理により抽出する。
【0017】
評価円生成部17は、弁口位置血管輪郭に基づいて、大動脈弁の形状を模式的に表現する大動脈弁のテンプレート(以下、評価円と呼ぶことにする。)を生成する。評価円は、開状態における正常な大動脈弁の形状と閉状態における正常な大動脈弁の形状とが評価断面に描画された画像である。
【0018】
弁画素特定部19は、評価円を構成する画素毎に、3次元画像に含まれる大動脈弁に関する画素(以下、弁画素と呼ぶことにする。)を既定方向に沿って探索し、弁画素があるか否かを特定する。既定方向は、例えば、断面の垂直方向に設定される。以下、弁画素があるか否かの情報を弁開閉情報と呼ぶことにする。すなわち弁画素特定部19は、断面を構成する画素毎に弁開閉情報を生成する。
【0019】
色付き評価円生成部21は、評価円と弁開閉情報とに基づいて、被検体の大動脈弁の開閉度合いを画素毎に色で表現する画像(以下、色付き評価円と呼ぶことにする。)を生成する。具体的には、色付き評価円生成部21は、開閉指標計算部211と色情報割付部213とを有する。開閉指標計算部211は、評価円と弁開閉情報とに基づいて、被検体の大動脈弁の開閉度合いを示す指標(以下、開閉指標と呼ぶことにする。)を計算する。開閉指標は、例えば、被検体の大動脈弁の開閉度合いと正常な大動脈弁の開閉度合いとの相違度合いを表す。色情報割付部213は、色付き評価円を生成するために、計算された開閉指標に対応する色情報を評価円上の画素に割り付ける。これにより色付き評価円が生成される。
【0020】
3次元画像処理部23は、3次元画像のデータを3次元画像処理し、2次元のCT画像のデータを発生する。3次元画像処理としては、例えば、MPR(multi planar reconstruction)やボリュームレンダリング(volume rendering)が採用される。例えば、3次元画像処理部23は、3次元画像のデータに基づいて評価断面に関するMPR画像のデータを発生する。
【0021】
操作部25は、ユーザからの各種指令や情報入力を受け付ける。操作部25としては、マウスやトラックボールなどのポインティングデバイス、モード切替スイッチ等の選択デバイス、あるいはキーボード等の入力デバイスが適宜利用可能である。
【0022】
表示部27は、色付き評価円やMPR画像、ボリュームレンダリング画像等を表示機器に表示する。表示機器としては、例えばCRTディスプレイや、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ等が適宜利用可能である。
【0023】
制御部29は、画像処理装置1の中枢として機能する。制御部29は、操作部25からの定量的評価処理の開始要求を受けると、画像処理装置1内の各部を制御して、大動脈弁の定量的評価処理を実行する。
【0024】
なお、画像処理装置1は、汎用のコンピュータ装置を基本ハードウェアとして利用することができる。画像処理装置1は、コンピュータ装置に搭載されたプロセッサ(CPU:central processor unit)が画像処理プログラムを実行することにより、大動脈弁の定量的評価処理を実現することができる。画像処理プログラムは、コンピュータ装置に予めインストールされている。あるいは画像処理プログラムは、磁気ディスクや光磁気ディスク、光ディスク、半導体メモリ等のようなリムーバブルな記録媒体に記録されてコンピュータ装置1に配布されたり、あるいはネットワークを介してコンピュータ装置1に配布されたりしてもよい。配布された画像処理プログラムは、コンピュータ装置1に適宜インストールされて実現される。なお、上記の各部は、その一部または全てをロジック回路等のハードウェアにより実現することも可能である。また、上記の各部は、ハードウェアとソフトウェア制御とを組み合わせて実現することも可能である。
【0025】
次に画像処理装置1の動作例について説明する。図5は、制御部29の制御のもとに実行される大動脈弁の定量的評価処理の典型的な流れを示す図である。
【0026】
ユーザにより操作部25を介して大動脈弁の定量的評価処理の開始指示がなされることを契機として制御部29は、記憶部11に記憶されている複数の3次元画像のデータの中から、処理対象の3次元画像のデータを読み出す。処理対象の3次元画像は、いかなる心位相のものにも適用可能である。また、処理対象の3次元画像は、1つに限定されず、複数であってもよい。複数の場合、各3次元画像に以下の処理がなされる。処理対象の3次元画像は、ユーザにより操作部25を介して、例えば、心位相を指定することにより任意に設定可能である。
【0027】
3次元画像のデータを読み出すと制御部29は、読み出された3次元画像のデータを断面設定部13に供給し、断面設定部13に断面設定処理を行わせる(ステップS1)。ステップS1において断面設定部13は、ユーザによる操作部25を介した指示に従って、あるいは画像処理により血管領域に評価断面を設定する。以下に断面設定処理の具体例を幾つか挙げる。
【0028】
断面設定処理1: ユーザは、操作部25を介して評価断面の位置を直接指定する。例えば、ユーザは、図6に示すように、大動脈弁領域41や弁口領域43の近傍であって、弁口領域43から数ミリ程度大動脈領域45の奥側に進んだ位置を操作部25を介して指定する。位置が指定されると断面設定部13は、指定された位置を含むように評価断面47を設定する。例えば、断面設定部13は、指定された位置を含み、血管芯線49に直交するように評価断面47を設定する。なお大動脈弁領域41は、大動脈弁が取りうるCT値範囲に属する画素領域である。弁口領域43は、造影剤によりコントラストが強調された弁口部分の血管が取りうるCT値範囲に属する画素領域である。大動脈領域45は、造影剤によりコントラストが強調された大動脈血管が取りうるCT値範囲に属する画素領域である。左心室領域51は、造影剤によりコントラストが強調された左心室内の血流路が取りうるCT値範囲に属する画素領域である。すなわち、弁口領域43、大動脈領域45、及び左心室領域51は、略同一のCT値範囲に属する。
【0029】
断面設定処理2: ユーザは、操作部25を介して評価断面を間接的に指定する。例えば、ユーザは、CT画像上で視認が容易な、大動脈領域の大動脈弓部を指定する。断面設定部13は、指定された大動脈弓部の位置を始点として領域生成処理を実行し、3次元画像から大動脈弓部及び左心室領域を抽出する。断面設定部13は、抽出された大動脈弓部及び左心室領域の中から解剖学的な構造に基づいて弁口領域を特定する。そして断面設定部13は、特定された弁口領域よりも数ミリ程度大動脈の奥側に進んだ位置に評価断面を設定する。この場合も評価断面は、例えば、血管芯線に直交するように設定される。
【0030】
なお、処理対象の3次元画像が複数の場合、複数の3次元画像に関する複数の評価断面は、解剖学的に同一位置、あるいは同一座標に設定される。
【0031】
ステップS1が実行されると制御部29は、輪郭抽出部15に輪郭抽出処理を行わせる(ステップS2)。ステップS2において輪郭抽出部15は、図7に示すように、評価断面47上の大動脈領域45から弁口位置血管53を抽出する。具体的には、輪郭抽出部15は、評価断面47上の大動脈領域45に2値化処理を施し、大動脈領域45の外側輪郭53を弁口位置血管輪郭として抽出する。弁口位置血管輪郭53は、標準的には、3つの弧を組み合わせた形状を有している。弁口位置血管輪郭53が描画された画像(以下、輪郭画像と呼ぶことにする。)のデータは、制御部29により評価円生成部17に供給される。
【0032】
ステップS2が実行されると制御部29は、評価円生成部17に評価円の生成処理を実行させる(ステップS3)。ステップS3において評価円生成部17は、ステップS2において抽出された弁口位置血管輪郭に基づいて評価円を生成する。まず、評価円生成部17は、図8に示すように、弁口位置血管輪郭53上の3つの尖点55を特定する。尖点55は、例えば、ユーザによる操作部25を介した指示に従って、あるいは画像処理により特定される。ここで、3つの尖点55をそれぞれ尖点55A、尖点55B、尖点55Cとする。3つの尖点55(尖点55A、尖点55B、及び尖点55C)が特定されると評価円生成部17は、特定された3つの尖点55に接する円57を計算し、計算された円57を輪郭画像上に描画する。円57は、弁口位置血管輪郭53内に収まる円のうちの最大径を有する円となる。円57が描画されると評価円生成部17は、図9に示すように、円57の中心点59、尖点55A、尖点55B、及び尖点55Cのうちの全ての2点間を結ぶ直線61(直線61A、直線61B、直線61C、直線61D、直線61E、直線61F)を輪郭画像上に描画する。直線61が描画されると評価円生成部17は、図10に示すように、弁口位置血管輪郭を輪郭画像上から削除する。これにより評価円63が生成される。なお、評価円63の生成処理において必ずしも弁口位置血管輪郭が削除される必要はなく、図9に示すような弁口位置血管輪郭が残っているものを評価円としてもよい。
【0033】
三角形65A(直線61A、61D、及び61Eにより形成される三角形)、三角形65B(直線61B、61E、及び61Fにより形成される三角形)、三角形65C(直線61C、61F、及び61Dにより形成される三角形)は、図4と比較すればわかるように、拡張末期時における正常な弁尖の形状を模式的に表現している。円57に内接する三角形(直線61A、61B、及び61Cにより形成される三角形)は、図3と比較すればわかるように、収縮末期時における正常な弁尖の形状、換言すれば、弁口輪郭の形状を模式的に表現している。ここで、三角形65A、三角形65B、三角形65Cを推定正常弁尖とする。このように、評価円63は、開放時における正常な心臓弁の推定形状と、閉塞時における正常な心臓弁の推定形状とを模式的に表現している。
【0034】
なお、評価円上の三角形65A、三角形65B、及び三角形65Cは、実際の被検体の弁口位置血管輪郭に基づいて形成されるので、同じ形状にならない場合がある。この場合、評価円生成部17は、三角形65A、三角形65B、及び三角形65Cが全て同一の形状となるように、三角形65A、三角形65B、及び三角形65Cの形状を調整(正規化)してもよい。
【0035】
ステップS3が実行されると制御部29は、弁画素特定部19に弁画素の特定処理を実行させる(ステップS4)。ステップS4において弁画素特定部19は、図11に示すように、評価円を構成する画素毎に、3次元画像に含まれる弁画素を既定の探索方向に沿って制限範囲内で探索し、弁画素があるか否か、すなわち心臓弁の開閉を特定する。ここで弁画素は、大動脈弁領域41上の画素である。探索方向は、例えば、評価円の断面47(すなわち、評価断面)の垂直方向に規定される。制限範囲は、30ミリ程度が適当である。なお、探索方向や制限範囲は、ユーザにより操作部25を介して任意に設定可能である。例えば、評価円63上の画素Aから探索方向Aに沿う制限範囲内には、大動脈弁領域41が存在する。従って画素Aについては、弁画素があると特定される。この場合、弁画素特定部19は、評価円63上の画素Aに、弁画素が存在する旨の閉情報を割り付ける。また、評価円63上の画素Bから探索方向Bに沿う制限範囲内には、大動脈弁領域41が存在しない。従って画素Bについては、弁画素がないと特定される。弁画素特定部19は、画素Bに、弁画素が存在しない旨の開情報を割り付ける。ここで、開情報が割り付けられた画素領域を弁尖非存在領域、閉情報が割り付けられた画素領域を弁尖存在領域と呼ぶことにする。このように開閉情報を評価円63に割り付けることで、例えば図12に示すように、評価円63上に弁尖非存在領域67と弁尖存在領域69とが設けられる。
【0036】
ステップS4が実行されると制御部29は、色付き評価円生成部21の開閉指標計算部211に開閉指標の計算処理を実行させる(ステップS5)。ステップS5において開閉指標計算部211は、ステップS4において特定された開閉情報と評価円とに基づいて、被検体の心臓弁の開閉指標を計算する。計算された開閉指標は、心位相に関連付けて記憶部11に記憶される。開閉指標は、例えば、以下のように計算される。
【0037】
まず開閉指標計算部211は、図13に示すように、各三角形65(三角形65A、65B、65C)の底辺61A、61B、61Cから垂直方向に心臓弁の開閉状態を調べる。具体的には、開閉指標計算部211は、底辺61A、61B、61Cを構成する単位画素毎に、探索方向に沿って弁尖非存在領域67を探索する。探索方向は、例えば、底辺の垂直方向である。単位画素は、底辺上の連続する所定数(例えば、10個)の画素からなる画素群である。なお探索方向や単位画素は、ユーザにより操作部25を介して任意に設定可能である。開閉指標計算部211は、探索結果に基づいて開閉指標を計算する。開閉指標は、例えば、底辺上の単位画素と底辺に対向する辺までの最短距離xと、底辺上の画素から探索方向に沿う弁尖非存在領域までの最短距離yとに基づいて計算される。さらに具体的には、開閉指標zは、例えば、以下の(1)式に基づいて計算される指標であり、百分率で表現される。
【0038】
z=(y/x)×100 ・・・(1)
なお、弁尖非存在領域が探索されなかった場合、y=xとなる。従って、大動脈弁が完全に閉じている場合、開閉指標z=100%となる。一方、大動脈弁が完全に開いている場合、y=0であり、開閉指標z=0%となる。
【0039】
また、開閉指標計算部211は、三角形65毎の開閉指標を計算してもよい。三角形65毎の開閉指標は、計算対象の三角形の底辺上にある複数の単位画素の開閉指標の単純平均値や底辺上の位置に応じた加重平均値である。
【0040】
なお開閉指標は、被検体の大動脈弁の開閉度合いと正常な大動脈弁の開閉度合いとの相違度合いを表すものであれば、上述の(1)式により規定されるもののみに限定されない。例えば開閉指標は、最短距離xと最短距離yとの単純な比率により表現されてもより。また、開閉指標は、最短距離xと最短距離yとの差分(正常弁尖輪郭との実際の弁尖輪郭との位置ずれ量)に基づいて計算され、ミリメートルやピクセル等を単位とする距離により表現されてもよい。あるいは、開閉指標は、ミリメートルやピクセル等を単位として、単純に最短距離yで表現されてもよい。
【0041】
ステップS5が実行されると制御部29は、色付き評価円生成部21の色情報割付部213に色情報の割付処理を実行させる(ステップS6)。ステップS6において色情報割付部213は、計算された開閉指標を、評価円上の対応する画素にプロットする。具体的には、色情報割付部213は、開閉指標と色情報とを関連付けたテーブルを保持している。色情報割付部213は、計算された開閉指標にテーブル上で関連付けられた色情報を特定し、特定された色情報を割付対象の画素にプロットする。割付対象の画素は、評価円上の画素であって、その開閉指標を計算した際の探索経路上の画素である。すなわち、一つの探索経路上には、一の色情報が割り付けられる。底辺の位置が異なれば、異なる色情報が割り付けられる場合もある。
【0042】
ステップS6が実行されると制御部29は、表示部27に表示処理を実行させる(ステップS7)。ステップS7において表示部27は、予め設定された表示パターンで色付き評価円を表示する。表示部27は、開閉度合いの評価精度・効率を向上するための様々な表示パターンを用意している。以下に表示部27による色付き評価円の具体的な表示パターンを説明する。
【0043】
表示パターン1:図14は、表示部27により表示される色付き評価円の表示パターン1を示す図である。図14に示すように、表示部27は、1心拍のうちの拡張末期に関する色付き評価円71を表示したり、収縮末期に関する色付き評価円73を表示したり、あるいは両方の色付き評価円71、73を同時に表示する。拡張末期の色付き評価円71は、1心拍分の複数の色付き評価円のうちの最大弁口面積を有するものとして特定され、収縮末期の色付き評価円73は、1心拍分の複数の色付き評価円のうちの最小弁口面積を有するものとして、例えば、表示部27により特定される。なお拡張末期や収縮末期は、操作部25を介して任意に指定可能である。また表示部27は、色付き評価円71と並べて拡張末期のMPR画像75を、色付き評価円73と並べて収縮末期のMPR画像77を表示するとよい。MPR画像75、77は、3次元画像処理部23により生成される。色付き評価円71、73と同一の断面(すなわち、ステップS1において設定された評価断面)に関する。MPR画像75、77上でも開閉度合いを視覚的に評価できるように、表示部27は、色付き評価円71、73上の三角形の輪郭(推定正常弁尖位置)をMPR画像75、77上に重ねて表示されるとよい。
【0044】
図14に示すように、色付き評価円71、73は、大動脈弁の開閉度合いの空間分布を色の違いで表現している。従ってユーザは、色付き評価円を71、73観察することにより、大動脈弁の部分的な開閉度合いを色で把握することができる。従ってユーザは、感覚的に開閉度合いを評価できる。この際、表示部27は、色付き評価円71、73の近傍には、開閉指標と色との対応関係をユーザに示すために、開閉指標と色との対応関係を示すカラーバー79、81が表示されるとよい。また表示部27は、色付き評価円71、73内の各三角形の近傍に、ステップS5において計算された三角形の開閉指標(例えば、三角形内の平均開閉指標)を表示するとよい。例えば、拡張末期の色付き評価円71には、左の三角形の近傍には50%、右の三角形の近傍には90%、下の三角形の近傍には70%が表示される。このように、三角形の開閉指標が表示されることにより、ユーザは、色だけでなく数字としても心臓弁の開閉度合いを評価できる。なお、表示パターン1の表示対象の色付き評価円の心位相は、拡張末期や収縮末期に限定されず、任意の心位相でもよい。
【0045】
表示パターン2: 図15は、表示部27により表示される色付き評価円の表示パターン2を示す図である。図15に示すように、表示パターン2の色付き評価円83、85は、閾値との大小関係に応じて色づけされている。具体的には、閾値より大きい開閉指標を有する画素は、第1の色(例えば、赤)で表示され、閾値より小さい開閉指標を有する画素は、第2の色(例えば、青)で表示される。換言すれば、色情報割付部213により、閾値より大きい開閉指標を有する画素には第1の色に対応する色情報が割り付けられ、閾値より小さい開閉指標を有する画素には第2の色に対応する色情報が割り付けられる。この閾値は、表示部27により表示される。例えば表示部27は、閾値を示すスライダ87、89をカラーバー91、93に表示する。この場合、操作部25を介してスライダ87、89がカラーバー91、93上でスライドされることにより、スライダ87、89の位置に応じた数値に閾値が変更される。あるいは表示部27は、単に閾値を示す数値を表示してもよい。この場合、操作部25を介して閾値を示す数値が入力されることで、閾値が変更される。このように表示パターン2においては、閾値との大小関係に応じて評価円が色づけされるので、色づけ評価円83、85を観察することで、閾値より開閉度合いが良い弁尖部位と悪い弁尖部位とを視覚的に容易に把握できる。閾値が臨床的に適切に設定されることで、機能障害を有している弁尖部位を容易に特定することも可能となる。なお閾値の個数は、1つに限定されず、複数あってもよい。閾値の個数の増加に応じて、色付き評価円の表示色の個数も増加する。例えば、閾値が2個の場合、表示色は、3個になる。なお、表示パターン2の表示対象の色付き評価円の心位相は、拡張末期や収縮末期に限定されず、任意の心位相でもよい。
【0046】
表示パターン3: 図16は、表示部27により表示される色付き評価円の表示パターン3を示す図である。図16に示すように、表示パターン3の場合、表示部27は、評価円と同一の心位相に関する弁尖領域の輪郭(以下、弁尖輪郭と呼ぶことにする。)95を色付き評価円71上に重ねて表示する。弁尖輪郭95は、評価断面に関するMPR画像から輪郭抽出部15により抽出される。このように、色付き評価円71上に弁尖輪郭95が表示されることで、ユーザは、より心臓弁の開閉度合いをより簡便且つ正確に評価できるようになり、また、開閉度合いの評価の信頼性が向上する。なお、表示パターン3の表示対象の色付き評価円は、拡張末期の色付き評価円に限定されず、任意の心位相の色付き評価円に適用可能である。なお、表示パターン3の表示対象の色付き評価円の心位相は、拡張末期に限定されず、任意の心位相でもよい。また表示部27は、一つの色付き評価円上に複数の心位相に関する複数の弁尖輪郭を表示してもよい。
【0047】
表示パターン4: 図17は、表示部27により表示される色付き評価円の表示パターン4を示す図である。図17に示すように、表示パターン4の色付き評価円97、99は、正常弁尖輪郭との位置ずれ量((1)式の最短距離xと最短距離yとの差分)に対応する色で表示される。位置ずれ量は、ミリメートル[mm]で表示される。
【0048】
表示パターン1〜4を利用することにより、ユーザは、表示中の心位相に関する色付き評価円を観察することにより、簡便に心臓弁の性状を定量的に評価することができる。従って画像処理装置1は、弁膜症の治療方針の決定や治療計画におけるユーザの作業効率や診断精度を向上することができる。
【0049】
表示パターン5: 図18は、表示部27により表示される色付き評価円の表示パターン5を示す図である。図18に示すように、表示パターン5の場合、表示部27は、複数の心位相に関する複数の色付き評価円を動画表示する。具体的には、上述の制御部29による制御のもと、少なくとも1心拍分の複数の心位相に関する色付き評価円が生成され、記憶部11に記憶される。表示部27は、記憶部11に記憶された色付き評価円を時系列で動画表示する。この際、色付き評価円は、上述のようにカラーバーとともに表示されるとよい。表示速度は、例えば、通常の1倍速だけでなく、0.5倍速等の低速再生や2倍速等の高速再生も可能である。表示速度は、操作部25を介して任意に変更可能である。動画表示によりユーザは、心臓弁の開閉度合いの時間変化を色の変化として把握することができる。また、操作部25を介して動画表示の停止指示がなされることで表示部27は、動画表示を停止し、停止指示がなされた時点に表示されていた色付き評価円を表示し続けることも可能である。なお、表示パターン5の色付き評価円は、表示パターン1〜4の何れにも対応可能である。
【0050】
表示パターン6: 図19は、表示部27により表示される色付き評価円の表示パターン6を示す図である。図19に示すように、表示パターン6の場合、表示部27は、色付き評価円の動画表示とともに、心電図波形や開閉指標の波形を表示する。より詳細には、表示画面には、心電図波形107のための表示領域101、開閉指標の波形109のための表示領域103、色付き評価円71のための表示領域105が配置される。表示領域103には、被検体に関する開閉指標の波形109の他に、健常者と被検体との比較のため、健常者に関する開閉指標の波形111も表示されるとよい。波形111は、上述のステップにより生成されたものであってもよいし、理論的に計算されたものであってもよいし、あるいは経験的に作成されたものであってもよい。なお開閉指標の波形109、111は、横軸が時間、縦軸が開閉指標に規定されている。
【0051】
表示中の色付き評価円の心位相が心電図波形107や開閉指標の波形の109、111上のどの位置にあたるのかがわかると、開閉度合いの評価に便利である。上述のように色付き評価円71と開閉指標とは、心位相に関連付けて記憶部11に記憶されている。この関連付けを利用して表示部27は、心電図波形107と開閉指標のグラフ109、111とに、表示中の色付き評価円71の心位相を示すスライダ113を重ねて表示する。スライダ113は、表示される色付き評価円71の切り替わりに伴って心電波形107や開閉指標の波形109、111の横軸に沿って移動される。なお、表示パターン6の色付き評価円71は、表示パターン1〜4の何れにも対応可能である。
【0052】
表示パターン5及び6を利用することによりユーザは、複数の心位相に関する開閉度合いを考慮して弁膜症の治療方針の決定や治療計画をすることができる。従って、一つの心位相では重症と思える場合であっても複数の心位相では軽症である場合、治療の要/不要を検討することできる。
【0053】
かくして本実施形態に係る画像処理装置は、医師や技師等による弁膜症に関する作業効率や診断精度の向上を可能とすることが実現する。
【0054】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。
【0055】
(変形例1)
変形例1に係る表示部27は、図20に示すように、色付きMPR画像115を表示する。色付きMPR画像115は、上述のステップS4において特定された開閉情報に応じて色情報が、色情報割付部213により割付されたMPR画像である。以下に色付きMPR画像115の生成方法について説明する。
【0056】
まず弁画素特定部19は、評価断面に関するMPR画像に弁画素が有るか否かの情報を写像する。具体的には、弁画素特定部19は、ステップS4と同様の方法により、評価断面に関するMPR画像の画素について心臓弁の開閉(すなわち、評価断面の垂直方向に弁画素があるか否か)を特定する。弁画素があると特定された画素に閉情報を割付、弁画素がないと特定された画素に開情報を割り付ける。開情報や閉情報がMPR画像に割り付けられると色付情報割付部33は、開情報が割り付けられた画素に開情報に対応する色情報を、閉情報が割り付けられた画素に閉情報に対応する色情報を割り付ける。これにより色付きMPR画像115が生成される。そして表示部27は、色付きMPR画像115を表示する。例えば、閉情報が割り付けられている画素領域(弁尖存在領域)67は青で、開情報が割り付けられている画素領域(弁尖非存在領域)69は赤で表示される。色付きMPR画像が表示されることでユーザは、2次元のMPR画像上で、心臓弁の3次元的な開閉状態を色により判断できる。
【0057】
(変形例2)
本実施形態においては、心臓弁は大動脈弁であるとした。従って弁尖の数は3つであるとした。しかしながら、本実施形態の弁尖の数は3つに限定されず、心臓弁の種類に応じて適宜変更可能である。また、これに伴って弁尖の形状を三角形から四角形等の他の幾何学形状に変更することも可能である。
【0058】
また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0059】
1…画像処理装置、11…記憶部、13…断面設定部、15…輪郭抽出部、17…評価円生成部、19…弁画素特定部、21…色付き評価円生成部、211…開閉指標計算部、213…色情報割付部、23…3次元画像処理部、25…操作部、27…表示部、29…制御部
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、心臓領域に関する3次元画像データ(ボリュームデータ)を画像処理する画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
弁膜症が生じている心臓弁は、正常に動作せず、完全に閉じなかったり、完全に開かなかったりする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2006/068271号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
弁膜症の治療方針や治療計画を検討する際に医師は、弁口面積等を判断材料としている。例えば、弁膜症の治療方針の決定や治療計画において医師は、心臓弁に関する3次元画像データを利用して目視で弁口面積を推定し、この推定された弁口面積に基づいて病変部の重篤度合いを評価している。しかしながら、弁膜症の治療方針や治療計画において、各心臓弁の性状を定量的に評価する技術は確立されていない。
【0005】
目的は、医師や技師等による弁膜症に関する作業効率や診断精度の向上を可能とする画像処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態に係る画像処理装置は、被検体の心臓領域に関する3次元画像を記憶する記憶部と、前記心臓領域に含まれる血管領域に断面を設定する設定部と、前記断面における前記血管領域から前記血管領域の輪郭を画像処理により抽出する抽出部と、前記輪郭の形状に基づいて心臓弁の形状を模式的に表現する模式的弁画像を生成する第1生成部と、前記模式的弁画像を構成する画素毎に、前記3次元画像に含まれる前記心臓弁に関する弁画素を既定方向に沿って探索し、前記弁画素があるか否かを特定する特定部と、前記模式的弁画像と前記弁画素があるか否かの情報とに基づいて前記心臓弁の開閉度合いを画素毎に色で表現する色画像を生成する第2生成部と、を具備する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本実施形態に係る画像処理装置の構成を示す図。
【図2】本実施形態の画像診断対象である心臓弁(大動脈弁)の解剖学的構造を模式的に示す図。
【図3】図2の大動脈弁が完全に開放しているときの様子を示す図。
【図4】図2の大動脈弁が完全に閉鎖しているときの様子を示す図。
【図5】図2の制御部の制御のもとに実行される大動脈弁の定量的評価処理の典型的な流れを示す図。
【図6】図5のステップS1において断面設定部により実行される評価断面の設定処理を説明するための図。
【図7】図5のステップS2において輪郭抽出部により実行される弁口位置血管輪郭の抽出処理を説明するための図。
【図8】図5のステップS3において評価円生成部により実行される評価円の生成処理の処理過程を示す第1の図。
【図9】図5のステップS3において評価円生成部により実行される評価円の生成処理の処理過程を示す第2の図。
【図10】図5のステップS3において評価円生成部により実行される評価円の生成処理の処理過程を示す第3の図。
【図11】図5のステップS4において弁画素特定部により実行される弁画素の特定処理を説明するための図。
【図12】図5のステップS4において弁画素特定部により開情報又は閉情報が割り付けられた評価円を示す図。
【図13】図5のステップS5において開閉指標計算部により実行される開閉指標の計算処理を説明するための図。
【図14】図5のステップS7において表示部により表示される色付き評価円の表示パターン1を示す図。
【図15】図5のステップS7において表示部により表示される色付き評価円の表示パターン2を示す図。
【図16】図5のステップS7において表示部により表示される色付き評価円の表示パターン3を示す図。
【図17】図5のステップS7において表示部により表示される色付き評価円の表示パターン4を示す図。
【図18】図5のステップS7において表示部により表示される色付き評価円の表示パターン5を示す図。
【図19】図5のステップS7において表示部により表示される色付き評価円の表示パターン6を示す図。
【図20】本実施形態の変形例に係わる表示部により表示される色付きMPR画像の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら本実施形態に係わる画像処理装置を説明する。
【0009】
図1は、本実施形態に係る画像処理装置1の構成を示す図である。本実施形態に係る画像処理装置1は、心臓弁を画像診断の対象とする。よく知られているように、心臓弁には、大動脈弁、僧帽弁、肺動脈弁、三尖弁がある。本実施形態は、これらあらゆる部位の心臓弁に適用可能であるが、以下の実施形態を具体的に説明するため、心臓弁は大動脈弁であるとする。
【0010】
図2に示すように、大動脈弁31は、左心室33と大動脈35との間にあり、左心室33から駆出された血液の逆流を防止する役目を担う。大動脈弁35は、図2には2つしか示されていないが、3つの弁尖から成る。3つの弁尖31に囲まれる空間は、弁口37と呼ばれる。3つの弁尖31を通る断面における弁口37の面積は、弁口面積と呼ばれている。換言すれば、断面上における弁口輪郭内の面積が弁口面積である。各弁尖31と大動脈35の内壁との間の空間は、大動脈洞(いわゆるバルサルバ洞:sinus of valsalva)39と呼ばれている。
【0011】
図3に示すように、左心室が収縮する場合(例えば、収縮末期)、正常な大動脈弁31は開く。反対に左心室が弛緩する場合(例えば、拡張末期)、図4に示すように、正常な大動脈弁31は閉じる。
【0012】
弁膜症が生じている大動脈弁は、正常に動作せず、完全に閉じなかったり、完全に開かなかったりする。例えば、弁狭窄の場合、収縮末期であっても大動脈弁が完全には開かない。閉塞不全の場合、拡張末期であっても大動脈弁が完全には閉じない。すなわち弁口面積は、心臓に弁膜症が発症しているか否かを評価するための1つの指標となりうる。
【0013】
図1に示すように、画像処理装置1は、記憶部11、断面設定部13、輪郭抽出部15、評価円生成部17、弁画素特定部19、色付き評価円生成部21、3次元画像処理部23、操作部25、表示部27、及び制御部29を備える。
【0014】
記憶部11は、被検体の心臓領域に関する3次元画像のデータ(ボリュームデータ)を記憶する。3次元画像のデータは、X線コンピュータ断層撮影装置や磁気共鳴イメージング装置、X線診断装置、超音波診断装置等の診断モダリティにより収集される。以下の説明を具体的に行うため、3次元画像のデータを収集する診断モダリティは、X線コンピュータ断層撮影装置であるとする。X線コンピュータ断層撮影装置は、例えば、造影剤により造影された心臓をX線でダイナミックスキャンし、少なくとも1心拍分の複数の心位相に関する複数の3次元画像のデータを収集する。記憶部11は、3次元画像のデータと心位相とを関連付けて記憶する。
【0015】
断面設定部13は、画像処理やユーザによる操作部25を介した指示に従って、造影剤によりコントラストが強調された、大動脈部分の血管領域に交差する断面(以下、評価断面と呼ぶことにする。)を3次元画像内に設定する。換言すれば、評価断面は、弁口や大動脈洞の近傍に設定される。
【0016】
輪郭抽出部15は、評価断面上の血管領域から血管領域の輪郭(以下、弁口位置血管輪郭と呼ぶことにする。)を既存の画像処理により抽出する。
【0017】
評価円生成部17は、弁口位置血管輪郭に基づいて、大動脈弁の形状を模式的に表現する大動脈弁のテンプレート(以下、評価円と呼ぶことにする。)を生成する。評価円は、開状態における正常な大動脈弁の形状と閉状態における正常な大動脈弁の形状とが評価断面に描画された画像である。
【0018】
弁画素特定部19は、評価円を構成する画素毎に、3次元画像に含まれる大動脈弁に関する画素(以下、弁画素と呼ぶことにする。)を既定方向に沿って探索し、弁画素があるか否かを特定する。既定方向は、例えば、断面の垂直方向に設定される。以下、弁画素があるか否かの情報を弁開閉情報と呼ぶことにする。すなわち弁画素特定部19は、断面を構成する画素毎に弁開閉情報を生成する。
【0019】
色付き評価円生成部21は、評価円と弁開閉情報とに基づいて、被検体の大動脈弁の開閉度合いを画素毎に色で表現する画像(以下、色付き評価円と呼ぶことにする。)を生成する。具体的には、色付き評価円生成部21は、開閉指標計算部211と色情報割付部213とを有する。開閉指標計算部211は、評価円と弁開閉情報とに基づいて、被検体の大動脈弁の開閉度合いを示す指標(以下、開閉指標と呼ぶことにする。)を計算する。開閉指標は、例えば、被検体の大動脈弁の開閉度合いと正常な大動脈弁の開閉度合いとの相違度合いを表す。色情報割付部213は、色付き評価円を生成するために、計算された開閉指標に対応する色情報を評価円上の画素に割り付ける。これにより色付き評価円が生成される。
【0020】
3次元画像処理部23は、3次元画像のデータを3次元画像処理し、2次元のCT画像のデータを発生する。3次元画像処理としては、例えば、MPR(multi planar reconstruction)やボリュームレンダリング(volume rendering)が採用される。例えば、3次元画像処理部23は、3次元画像のデータに基づいて評価断面に関するMPR画像のデータを発生する。
【0021】
操作部25は、ユーザからの各種指令や情報入力を受け付ける。操作部25としては、マウスやトラックボールなどのポインティングデバイス、モード切替スイッチ等の選択デバイス、あるいはキーボード等の入力デバイスが適宜利用可能である。
【0022】
表示部27は、色付き評価円やMPR画像、ボリュームレンダリング画像等を表示機器に表示する。表示機器としては、例えばCRTディスプレイや、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ等が適宜利用可能である。
【0023】
制御部29は、画像処理装置1の中枢として機能する。制御部29は、操作部25からの定量的評価処理の開始要求を受けると、画像処理装置1内の各部を制御して、大動脈弁の定量的評価処理を実行する。
【0024】
なお、画像処理装置1は、汎用のコンピュータ装置を基本ハードウェアとして利用することができる。画像処理装置1は、コンピュータ装置に搭載されたプロセッサ(CPU:central processor unit)が画像処理プログラムを実行することにより、大動脈弁の定量的評価処理を実現することができる。画像処理プログラムは、コンピュータ装置に予めインストールされている。あるいは画像処理プログラムは、磁気ディスクや光磁気ディスク、光ディスク、半導体メモリ等のようなリムーバブルな記録媒体に記録されてコンピュータ装置1に配布されたり、あるいはネットワークを介してコンピュータ装置1に配布されたりしてもよい。配布された画像処理プログラムは、コンピュータ装置1に適宜インストールされて実現される。なお、上記の各部は、その一部または全てをロジック回路等のハードウェアにより実現することも可能である。また、上記の各部は、ハードウェアとソフトウェア制御とを組み合わせて実現することも可能である。
【0025】
次に画像処理装置1の動作例について説明する。図5は、制御部29の制御のもとに実行される大動脈弁の定量的評価処理の典型的な流れを示す図である。
【0026】
ユーザにより操作部25を介して大動脈弁の定量的評価処理の開始指示がなされることを契機として制御部29は、記憶部11に記憶されている複数の3次元画像のデータの中から、処理対象の3次元画像のデータを読み出す。処理対象の3次元画像は、いかなる心位相のものにも適用可能である。また、処理対象の3次元画像は、1つに限定されず、複数であってもよい。複数の場合、各3次元画像に以下の処理がなされる。処理対象の3次元画像は、ユーザにより操作部25を介して、例えば、心位相を指定することにより任意に設定可能である。
【0027】
3次元画像のデータを読み出すと制御部29は、読み出された3次元画像のデータを断面設定部13に供給し、断面設定部13に断面設定処理を行わせる(ステップS1)。ステップS1において断面設定部13は、ユーザによる操作部25を介した指示に従って、あるいは画像処理により血管領域に評価断面を設定する。以下に断面設定処理の具体例を幾つか挙げる。
【0028】
断面設定処理1: ユーザは、操作部25を介して評価断面の位置を直接指定する。例えば、ユーザは、図6に示すように、大動脈弁領域41や弁口領域43の近傍であって、弁口領域43から数ミリ程度大動脈領域45の奥側に進んだ位置を操作部25を介して指定する。位置が指定されると断面設定部13は、指定された位置を含むように評価断面47を設定する。例えば、断面設定部13は、指定された位置を含み、血管芯線49に直交するように評価断面47を設定する。なお大動脈弁領域41は、大動脈弁が取りうるCT値範囲に属する画素領域である。弁口領域43は、造影剤によりコントラストが強調された弁口部分の血管が取りうるCT値範囲に属する画素領域である。大動脈領域45は、造影剤によりコントラストが強調された大動脈血管が取りうるCT値範囲に属する画素領域である。左心室領域51は、造影剤によりコントラストが強調された左心室内の血流路が取りうるCT値範囲に属する画素領域である。すなわち、弁口領域43、大動脈領域45、及び左心室領域51は、略同一のCT値範囲に属する。
【0029】
断面設定処理2: ユーザは、操作部25を介して評価断面を間接的に指定する。例えば、ユーザは、CT画像上で視認が容易な、大動脈領域の大動脈弓部を指定する。断面設定部13は、指定された大動脈弓部の位置を始点として領域生成処理を実行し、3次元画像から大動脈弓部及び左心室領域を抽出する。断面設定部13は、抽出された大動脈弓部及び左心室領域の中から解剖学的な構造に基づいて弁口領域を特定する。そして断面設定部13は、特定された弁口領域よりも数ミリ程度大動脈の奥側に進んだ位置に評価断面を設定する。この場合も評価断面は、例えば、血管芯線に直交するように設定される。
【0030】
なお、処理対象の3次元画像が複数の場合、複数の3次元画像に関する複数の評価断面は、解剖学的に同一位置、あるいは同一座標に設定される。
【0031】
ステップS1が実行されると制御部29は、輪郭抽出部15に輪郭抽出処理を行わせる(ステップS2)。ステップS2において輪郭抽出部15は、図7に示すように、評価断面47上の大動脈領域45から弁口位置血管53を抽出する。具体的には、輪郭抽出部15は、評価断面47上の大動脈領域45に2値化処理を施し、大動脈領域45の外側輪郭53を弁口位置血管輪郭として抽出する。弁口位置血管輪郭53は、標準的には、3つの弧を組み合わせた形状を有している。弁口位置血管輪郭53が描画された画像(以下、輪郭画像と呼ぶことにする。)のデータは、制御部29により評価円生成部17に供給される。
【0032】
ステップS2が実行されると制御部29は、評価円生成部17に評価円の生成処理を実行させる(ステップS3)。ステップS3において評価円生成部17は、ステップS2において抽出された弁口位置血管輪郭に基づいて評価円を生成する。まず、評価円生成部17は、図8に示すように、弁口位置血管輪郭53上の3つの尖点55を特定する。尖点55は、例えば、ユーザによる操作部25を介した指示に従って、あるいは画像処理により特定される。ここで、3つの尖点55をそれぞれ尖点55A、尖点55B、尖点55Cとする。3つの尖点55(尖点55A、尖点55B、及び尖点55C)が特定されると評価円生成部17は、特定された3つの尖点55に接する円57を計算し、計算された円57を輪郭画像上に描画する。円57は、弁口位置血管輪郭53内に収まる円のうちの最大径を有する円となる。円57が描画されると評価円生成部17は、図9に示すように、円57の中心点59、尖点55A、尖点55B、及び尖点55Cのうちの全ての2点間を結ぶ直線61(直線61A、直線61B、直線61C、直線61D、直線61E、直線61F)を輪郭画像上に描画する。直線61が描画されると評価円生成部17は、図10に示すように、弁口位置血管輪郭を輪郭画像上から削除する。これにより評価円63が生成される。なお、評価円63の生成処理において必ずしも弁口位置血管輪郭が削除される必要はなく、図9に示すような弁口位置血管輪郭が残っているものを評価円としてもよい。
【0033】
三角形65A(直線61A、61D、及び61Eにより形成される三角形)、三角形65B(直線61B、61E、及び61Fにより形成される三角形)、三角形65C(直線61C、61F、及び61Dにより形成される三角形)は、図4と比較すればわかるように、拡張末期時における正常な弁尖の形状を模式的に表現している。円57に内接する三角形(直線61A、61B、及び61Cにより形成される三角形)は、図3と比較すればわかるように、収縮末期時における正常な弁尖の形状、換言すれば、弁口輪郭の形状を模式的に表現している。ここで、三角形65A、三角形65B、三角形65Cを推定正常弁尖とする。このように、評価円63は、開放時における正常な心臓弁の推定形状と、閉塞時における正常な心臓弁の推定形状とを模式的に表現している。
【0034】
なお、評価円上の三角形65A、三角形65B、及び三角形65Cは、実際の被検体の弁口位置血管輪郭に基づいて形成されるので、同じ形状にならない場合がある。この場合、評価円生成部17は、三角形65A、三角形65B、及び三角形65Cが全て同一の形状となるように、三角形65A、三角形65B、及び三角形65Cの形状を調整(正規化)してもよい。
【0035】
ステップS3が実行されると制御部29は、弁画素特定部19に弁画素の特定処理を実行させる(ステップS4)。ステップS4において弁画素特定部19は、図11に示すように、評価円を構成する画素毎に、3次元画像に含まれる弁画素を既定の探索方向に沿って制限範囲内で探索し、弁画素があるか否か、すなわち心臓弁の開閉を特定する。ここで弁画素は、大動脈弁領域41上の画素である。探索方向は、例えば、評価円の断面47(すなわち、評価断面)の垂直方向に規定される。制限範囲は、30ミリ程度が適当である。なお、探索方向や制限範囲は、ユーザにより操作部25を介して任意に設定可能である。例えば、評価円63上の画素Aから探索方向Aに沿う制限範囲内には、大動脈弁領域41が存在する。従って画素Aについては、弁画素があると特定される。この場合、弁画素特定部19は、評価円63上の画素Aに、弁画素が存在する旨の閉情報を割り付ける。また、評価円63上の画素Bから探索方向Bに沿う制限範囲内には、大動脈弁領域41が存在しない。従って画素Bについては、弁画素がないと特定される。弁画素特定部19は、画素Bに、弁画素が存在しない旨の開情報を割り付ける。ここで、開情報が割り付けられた画素領域を弁尖非存在領域、閉情報が割り付けられた画素領域を弁尖存在領域と呼ぶことにする。このように開閉情報を評価円63に割り付けることで、例えば図12に示すように、評価円63上に弁尖非存在領域67と弁尖存在領域69とが設けられる。
【0036】
ステップS4が実行されると制御部29は、色付き評価円生成部21の開閉指標計算部211に開閉指標の計算処理を実行させる(ステップS5)。ステップS5において開閉指標計算部211は、ステップS4において特定された開閉情報と評価円とに基づいて、被検体の心臓弁の開閉指標を計算する。計算された開閉指標は、心位相に関連付けて記憶部11に記憶される。開閉指標は、例えば、以下のように計算される。
【0037】
まず開閉指標計算部211は、図13に示すように、各三角形65(三角形65A、65B、65C)の底辺61A、61B、61Cから垂直方向に心臓弁の開閉状態を調べる。具体的には、開閉指標計算部211は、底辺61A、61B、61Cを構成する単位画素毎に、探索方向に沿って弁尖非存在領域67を探索する。探索方向は、例えば、底辺の垂直方向である。単位画素は、底辺上の連続する所定数(例えば、10個)の画素からなる画素群である。なお探索方向や単位画素は、ユーザにより操作部25を介して任意に設定可能である。開閉指標計算部211は、探索結果に基づいて開閉指標を計算する。開閉指標は、例えば、底辺上の単位画素と底辺に対向する辺までの最短距離xと、底辺上の画素から探索方向に沿う弁尖非存在領域までの最短距離yとに基づいて計算される。さらに具体的には、開閉指標zは、例えば、以下の(1)式に基づいて計算される指標であり、百分率で表現される。
【0038】
z=(y/x)×100 ・・・(1)
なお、弁尖非存在領域が探索されなかった場合、y=xとなる。従って、大動脈弁が完全に閉じている場合、開閉指標z=100%となる。一方、大動脈弁が完全に開いている場合、y=0であり、開閉指標z=0%となる。
【0039】
また、開閉指標計算部211は、三角形65毎の開閉指標を計算してもよい。三角形65毎の開閉指標は、計算対象の三角形の底辺上にある複数の単位画素の開閉指標の単純平均値や底辺上の位置に応じた加重平均値である。
【0040】
なお開閉指標は、被検体の大動脈弁の開閉度合いと正常な大動脈弁の開閉度合いとの相違度合いを表すものであれば、上述の(1)式により規定されるもののみに限定されない。例えば開閉指標は、最短距離xと最短距離yとの単純な比率により表現されてもより。また、開閉指標は、最短距離xと最短距離yとの差分(正常弁尖輪郭との実際の弁尖輪郭との位置ずれ量)に基づいて計算され、ミリメートルやピクセル等を単位とする距離により表現されてもよい。あるいは、開閉指標は、ミリメートルやピクセル等を単位として、単純に最短距離yで表現されてもよい。
【0041】
ステップS5が実行されると制御部29は、色付き評価円生成部21の色情報割付部213に色情報の割付処理を実行させる(ステップS6)。ステップS6において色情報割付部213は、計算された開閉指標を、評価円上の対応する画素にプロットする。具体的には、色情報割付部213は、開閉指標と色情報とを関連付けたテーブルを保持している。色情報割付部213は、計算された開閉指標にテーブル上で関連付けられた色情報を特定し、特定された色情報を割付対象の画素にプロットする。割付対象の画素は、評価円上の画素であって、その開閉指標を計算した際の探索経路上の画素である。すなわち、一つの探索経路上には、一の色情報が割り付けられる。底辺の位置が異なれば、異なる色情報が割り付けられる場合もある。
【0042】
ステップS6が実行されると制御部29は、表示部27に表示処理を実行させる(ステップS7)。ステップS7において表示部27は、予め設定された表示パターンで色付き評価円を表示する。表示部27は、開閉度合いの評価精度・効率を向上するための様々な表示パターンを用意している。以下に表示部27による色付き評価円の具体的な表示パターンを説明する。
【0043】
表示パターン1:図14は、表示部27により表示される色付き評価円の表示パターン1を示す図である。図14に示すように、表示部27は、1心拍のうちの拡張末期に関する色付き評価円71を表示したり、収縮末期に関する色付き評価円73を表示したり、あるいは両方の色付き評価円71、73を同時に表示する。拡張末期の色付き評価円71は、1心拍分の複数の色付き評価円のうちの最大弁口面積を有するものとして特定され、収縮末期の色付き評価円73は、1心拍分の複数の色付き評価円のうちの最小弁口面積を有するものとして、例えば、表示部27により特定される。なお拡張末期や収縮末期は、操作部25を介して任意に指定可能である。また表示部27は、色付き評価円71と並べて拡張末期のMPR画像75を、色付き評価円73と並べて収縮末期のMPR画像77を表示するとよい。MPR画像75、77は、3次元画像処理部23により生成される。色付き評価円71、73と同一の断面(すなわち、ステップS1において設定された評価断面)に関する。MPR画像75、77上でも開閉度合いを視覚的に評価できるように、表示部27は、色付き評価円71、73上の三角形の輪郭(推定正常弁尖位置)をMPR画像75、77上に重ねて表示されるとよい。
【0044】
図14に示すように、色付き評価円71、73は、大動脈弁の開閉度合いの空間分布を色の違いで表現している。従ってユーザは、色付き評価円を71、73観察することにより、大動脈弁の部分的な開閉度合いを色で把握することができる。従ってユーザは、感覚的に開閉度合いを評価できる。この際、表示部27は、色付き評価円71、73の近傍には、開閉指標と色との対応関係をユーザに示すために、開閉指標と色との対応関係を示すカラーバー79、81が表示されるとよい。また表示部27は、色付き評価円71、73内の各三角形の近傍に、ステップS5において計算された三角形の開閉指標(例えば、三角形内の平均開閉指標)を表示するとよい。例えば、拡張末期の色付き評価円71には、左の三角形の近傍には50%、右の三角形の近傍には90%、下の三角形の近傍には70%が表示される。このように、三角形の開閉指標が表示されることにより、ユーザは、色だけでなく数字としても心臓弁の開閉度合いを評価できる。なお、表示パターン1の表示対象の色付き評価円の心位相は、拡張末期や収縮末期に限定されず、任意の心位相でもよい。
【0045】
表示パターン2: 図15は、表示部27により表示される色付き評価円の表示パターン2を示す図である。図15に示すように、表示パターン2の色付き評価円83、85は、閾値との大小関係に応じて色づけされている。具体的には、閾値より大きい開閉指標を有する画素は、第1の色(例えば、赤)で表示され、閾値より小さい開閉指標を有する画素は、第2の色(例えば、青)で表示される。換言すれば、色情報割付部213により、閾値より大きい開閉指標を有する画素には第1の色に対応する色情報が割り付けられ、閾値より小さい開閉指標を有する画素には第2の色に対応する色情報が割り付けられる。この閾値は、表示部27により表示される。例えば表示部27は、閾値を示すスライダ87、89をカラーバー91、93に表示する。この場合、操作部25を介してスライダ87、89がカラーバー91、93上でスライドされることにより、スライダ87、89の位置に応じた数値に閾値が変更される。あるいは表示部27は、単に閾値を示す数値を表示してもよい。この場合、操作部25を介して閾値を示す数値が入力されることで、閾値が変更される。このように表示パターン2においては、閾値との大小関係に応じて評価円が色づけされるので、色づけ評価円83、85を観察することで、閾値より開閉度合いが良い弁尖部位と悪い弁尖部位とを視覚的に容易に把握できる。閾値が臨床的に適切に設定されることで、機能障害を有している弁尖部位を容易に特定することも可能となる。なお閾値の個数は、1つに限定されず、複数あってもよい。閾値の個数の増加に応じて、色付き評価円の表示色の個数も増加する。例えば、閾値が2個の場合、表示色は、3個になる。なお、表示パターン2の表示対象の色付き評価円の心位相は、拡張末期や収縮末期に限定されず、任意の心位相でもよい。
【0046】
表示パターン3: 図16は、表示部27により表示される色付き評価円の表示パターン3を示す図である。図16に示すように、表示パターン3の場合、表示部27は、評価円と同一の心位相に関する弁尖領域の輪郭(以下、弁尖輪郭と呼ぶことにする。)95を色付き評価円71上に重ねて表示する。弁尖輪郭95は、評価断面に関するMPR画像から輪郭抽出部15により抽出される。このように、色付き評価円71上に弁尖輪郭95が表示されることで、ユーザは、より心臓弁の開閉度合いをより簡便且つ正確に評価できるようになり、また、開閉度合いの評価の信頼性が向上する。なお、表示パターン3の表示対象の色付き評価円は、拡張末期の色付き評価円に限定されず、任意の心位相の色付き評価円に適用可能である。なお、表示パターン3の表示対象の色付き評価円の心位相は、拡張末期に限定されず、任意の心位相でもよい。また表示部27は、一つの色付き評価円上に複数の心位相に関する複数の弁尖輪郭を表示してもよい。
【0047】
表示パターン4: 図17は、表示部27により表示される色付き評価円の表示パターン4を示す図である。図17に示すように、表示パターン4の色付き評価円97、99は、正常弁尖輪郭との位置ずれ量((1)式の最短距離xと最短距離yとの差分)に対応する色で表示される。位置ずれ量は、ミリメートル[mm]で表示される。
【0048】
表示パターン1〜4を利用することにより、ユーザは、表示中の心位相に関する色付き評価円を観察することにより、簡便に心臓弁の性状を定量的に評価することができる。従って画像処理装置1は、弁膜症の治療方針の決定や治療計画におけるユーザの作業効率や診断精度を向上することができる。
【0049】
表示パターン5: 図18は、表示部27により表示される色付き評価円の表示パターン5を示す図である。図18に示すように、表示パターン5の場合、表示部27は、複数の心位相に関する複数の色付き評価円を動画表示する。具体的には、上述の制御部29による制御のもと、少なくとも1心拍分の複数の心位相に関する色付き評価円が生成され、記憶部11に記憶される。表示部27は、記憶部11に記憶された色付き評価円を時系列で動画表示する。この際、色付き評価円は、上述のようにカラーバーとともに表示されるとよい。表示速度は、例えば、通常の1倍速だけでなく、0.5倍速等の低速再生や2倍速等の高速再生も可能である。表示速度は、操作部25を介して任意に変更可能である。動画表示によりユーザは、心臓弁の開閉度合いの時間変化を色の変化として把握することができる。また、操作部25を介して動画表示の停止指示がなされることで表示部27は、動画表示を停止し、停止指示がなされた時点に表示されていた色付き評価円を表示し続けることも可能である。なお、表示パターン5の色付き評価円は、表示パターン1〜4の何れにも対応可能である。
【0050】
表示パターン6: 図19は、表示部27により表示される色付き評価円の表示パターン6を示す図である。図19に示すように、表示パターン6の場合、表示部27は、色付き評価円の動画表示とともに、心電図波形や開閉指標の波形を表示する。より詳細には、表示画面には、心電図波形107のための表示領域101、開閉指標の波形109のための表示領域103、色付き評価円71のための表示領域105が配置される。表示領域103には、被検体に関する開閉指標の波形109の他に、健常者と被検体との比較のため、健常者に関する開閉指標の波形111も表示されるとよい。波形111は、上述のステップにより生成されたものであってもよいし、理論的に計算されたものであってもよいし、あるいは経験的に作成されたものであってもよい。なお開閉指標の波形109、111は、横軸が時間、縦軸が開閉指標に規定されている。
【0051】
表示中の色付き評価円の心位相が心電図波形107や開閉指標の波形の109、111上のどの位置にあたるのかがわかると、開閉度合いの評価に便利である。上述のように色付き評価円71と開閉指標とは、心位相に関連付けて記憶部11に記憶されている。この関連付けを利用して表示部27は、心電図波形107と開閉指標のグラフ109、111とに、表示中の色付き評価円71の心位相を示すスライダ113を重ねて表示する。スライダ113は、表示される色付き評価円71の切り替わりに伴って心電波形107や開閉指標の波形109、111の横軸に沿って移動される。なお、表示パターン6の色付き評価円71は、表示パターン1〜4の何れにも対応可能である。
【0052】
表示パターン5及び6を利用することによりユーザは、複数の心位相に関する開閉度合いを考慮して弁膜症の治療方針の決定や治療計画をすることができる。従って、一つの心位相では重症と思える場合であっても複数の心位相では軽症である場合、治療の要/不要を検討することできる。
【0053】
かくして本実施形態に係る画像処理装置は、医師や技師等による弁膜症に関する作業効率や診断精度の向上を可能とすることが実現する。
【0054】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。
【0055】
(変形例1)
変形例1に係る表示部27は、図20に示すように、色付きMPR画像115を表示する。色付きMPR画像115は、上述のステップS4において特定された開閉情報に応じて色情報が、色情報割付部213により割付されたMPR画像である。以下に色付きMPR画像115の生成方法について説明する。
【0056】
まず弁画素特定部19は、評価断面に関するMPR画像に弁画素が有るか否かの情報を写像する。具体的には、弁画素特定部19は、ステップS4と同様の方法により、評価断面に関するMPR画像の画素について心臓弁の開閉(すなわち、評価断面の垂直方向に弁画素があるか否か)を特定する。弁画素があると特定された画素に閉情報を割付、弁画素がないと特定された画素に開情報を割り付ける。開情報や閉情報がMPR画像に割り付けられると色付情報割付部33は、開情報が割り付けられた画素に開情報に対応する色情報を、閉情報が割り付けられた画素に閉情報に対応する色情報を割り付ける。これにより色付きMPR画像115が生成される。そして表示部27は、色付きMPR画像115を表示する。例えば、閉情報が割り付けられている画素領域(弁尖存在領域)67は青で、開情報が割り付けられている画素領域(弁尖非存在領域)69は赤で表示される。色付きMPR画像が表示されることでユーザは、2次元のMPR画像上で、心臓弁の3次元的な開閉状態を色により判断できる。
【0057】
(変形例2)
本実施形態においては、心臓弁は大動脈弁であるとした。従って弁尖の数は3つであるとした。しかしながら、本実施形態の弁尖の数は3つに限定されず、心臓弁の種類に応じて適宜変更可能である。また、これに伴って弁尖の形状を三角形から四角形等の他の幾何学形状に変更することも可能である。
【0058】
また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0059】
1…画像処理装置、11…記憶部、13…断面設定部、15…輪郭抽出部、17…評価円生成部、19…弁画素特定部、21…色付き評価円生成部、211…開閉指標計算部、213…色情報割付部、23…3次元画像処理部、25…操作部、27…表示部、29…制御部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の心臓領域に関する3次元画像を記憶する記憶部と、
前記心臓領域に含まれる血管領域に断面を設定する設定部と、
前記断面における前記血管領域から前記血管領域の輪郭を画像処理により抽出する抽出部と、
前記輪郭の形状に基づいて心臓弁の形状を模式的に表現する模式的弁画像を生成する第1生成部と、
前記模式的弁画像を構成する画素毎に、前記3次元画像に含まれる前記心臓弁に関する弁画素を既定方向に沿って探索し、前記弁画素があるか否かを特定する特定部と、
前記模式的弁画像と前記弁画素があるか否かの情報とに基づいて前記心臓弁の開閉度合いを画素毎に色で表現する色画像を生成する第2生成部と、
を具備する画像処理装置。
【請求項2】
前記色画像を表示する表示部をさらに備える請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記模式的弁画像は、開状態における正常な心臓弁の推定形状と閉状態における正常な心臓弁の推定形状とを模式的に表現する、請求項1記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記第2生成部は、前記被検体の心臓弁に関する開閉度合いと正常な心臓弁に関する開閉度合いとの相違度合いに応じた色情報を前記画素毎に割り付ける、請求項1記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記第2生成部は、前記色画像を複数の心位相について生成し。
前記表示部は、前記複数の心位相に関する色画像を動画表示する、
請求項2記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記抽出部は、さらに前記評価断面上の心臓弁領域から前記心臓弁領域の輪郭を画像処理により抽出し、
前記表示部は、前記色画像に前記心臓弁領域の輪郭を重ねて表示する、
請求項2記載の画像処理装置。
【請求項7】
被検体の心臓領域に関する3次元画像を記憶する記憶部と、
前記3次元画像中に前記心臓領域に含まれる血管領域に交差する断面を設定する設定部と、
前記断面に関する断面画像を前記3次元画像に基づいて生成する第1生成部と、
前記3次元画像に含まれる心臓弁に関する弁画素を前記断面から既定方向に沿って探索し、前記断面画像を構成する画素毎に前記弁画素の有無を特定する特定部と、
前記断面画像と前記弁画素の有無とに基づいて画素毎に前記弁画素が有るか否かを色で表現する色画像を生成する第2生成部と、
を具備する画像処理装置。
【請求項1】
被検体の心臓領域に関する3次元画像を記憶する記憶部と、
前記心臓領域に含まれる血管領域に断面を設定する設定部と、
前記断面における前記血管領域から前記血管領域の輪郭を画像処理により抽出する抽出部と、
前記輪郭の形状に基づいて心臓弁の形状を模式的に表現する模式的弁画像を生成する第1生成部と、
前記模式的弁画像を構成する画素毎に、前記3次元画像に含まれる前記心臓弁に関する弁画素を既定方向に沿って探索し、前記弁画素があるか否かを特定する特定部と、
前記模式的弁画像と前記弁画素があるか否かの情報とに基づいて前記心臓弁の開閉度合いを画素毎に色で表現する色画像を生成する第2生成部と、
を具備する画像処理装置。
【請求項2】
前記色画像を表示する表示部をさらに備える請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記模式的弁画像は、開状態における正常な心臓弁の推定形状と閉状態における正常な心臓弁の推定形状とを模式的に表現する、請求項1記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記第2生成部は、前記被検体の心臓弁に関する開閉度合いと正常な心臓弁に関する開閉度合いとの相違度合いに応じた色情報を前記画素毎に割り付ける、請求項1記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記第2生成部は、前記色画像を複数の心位相について生成し。
前記表示部は、前記複数の心位相に関する色画像を動画表示する、
請求項2記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記抽出部は、さらに前記評価断面上の心臓弁領域から前記心臓弁領域の輪郭を画像処理により抽出し、
前記表示部は、前記色画像に前記心臓弁領域の輪郭を重ねて表示する、
請求項2記載の画像処理装置。
【請求項7】
被検体の心臓領域に関する3次元画像を記憶する記憶部と、
前記3次元画像中に前記心臓領域に含まれる血管領域に交差する断面を設定する設定部と、
前記断面に関する断面画像を前記3次元画像に基づいて生成する第1生成部と、
前記3次元画像に含まれる心臓弁に関する弁画素を前記断面から既定方向に沿って探索し、前記断面画像を構成する画素毎に前記弁画素の有無を特定する特定部と、
前記断面画像と前記弁画素の有無とに基づいて画素毎に前記弁画素が有るか否かを色で表現する色画像を生成する第2生成部と、
を具備する画像処理装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2011−239889(P2011−239889A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−113522(P2010−113522)
【出願日】平成22年5月17日(2010.5.17)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月17日(2010.5.17)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】
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