説明

画像形成装置用ローラの製造方法、画像形成装置用ローラ及び画像形成装置用ローラの製造用成形金型

【課題】 電子写真、静電記録技術を利用した複写機等に組み込まれて使用され、ローラ表面にセルが開口したローラ製造において型の表面性を維持するために煩雑な工程を要することなく、セル開口に適した表面を安定して得ることが出来て、安定した脱型性及びセル開口性を両立させ、良好な性能の得られる画像形成装置用ローラ、該ローラの製造方法及び該ローラの製造用成形金型を提供することにある。
【解決手段】 芯金と、該芯金上に形成された一層以上のポリウレタンフォーム層を有する画像形成装置用ローラの製造方法であって、
該芯金を配置し該ポリウレタンフォーム層の材料液を注入して用いる金型内側に液状シリコーンゴムを硬化させてなる塗布膜を設ける工程、
該金型内で該ポリウレタンフォーム層の材料液を発泡成形する工程、
を有することを特徴とする画像形成装置用ローラの製造方法、該画像形成装置用ローラ及び製造用成形金型。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に装着して使用される表面セルが開口した発泡体ローラ、例えば帯電ローラ、現像ローラ、転写ローラ、トナー供給ローラ及びクリーニングローラ等に好適に利用できる画像形成装置用ローラ、該画像形成装置用ローラの製造方法、その際に使用する画像形成装置用ローラの製造用成形金型に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、画像をデジタル化して扱うコンピュータ等での画像の需要が増し、これに伴いより高精細、高品位な画像が要求され、更にはカラー画像と電子写真画像の改良が求められている。これらの目的に使用されるゴム弾性を有する高分子材料を含む部材には、トナーへのストレス低減や再生画像の画質向上のためにスキンレスのポリウレタンフォームの適用が増加してきている。ポリウレタンフォームをトナー供給ローラ等の画像形成装置用弾性部材の用途に供する場合、低硬度であると同時に微細セルを有し、スキンレスの表面の均一性が要求される。例えば、トナー供給ローラにはトナーの供給やその不要分の掻き取りのために、また転写ローラには紙の搬送のためである。
【0003】
それらの要求を満足するローラの製法としては、例えば、トナー供給ローラでは芯金の表面にポリウレタンフォームあるいは発泡シリコーン等の弾性スポンジを担持し、その担持したスポンジの外面を加工してローラ状に成形し、ローラの表面セルが開口される。スポンジのローラ形状加工、即ち外径加工は、研磨機等の機械加工あるいは発熱したニクロム線によるカット等の溶融切断加工により行われていることが一般的である。
【0004】
しかしながら、トナー供給ローラは、現像装置において、現像ローラに対してトナーを供給し、またその不要分を掻き取り、現像ローラ上に均一にトナーを供給する機能が求められているが、前記の研磨による加工方法において得られる弾性ローラにおける表面の毛羽立ちは、トナー供給ローラとしてのトナー搬送量を不安定化し、画像不良の問題を惹起する他、ローラ表面から毛羽が欠落した場合には、電子写真システムの他の部位に詰まる等の異物となり、画像不良や故障の原因となることとなる。
【0005】
更に、ニクロム線による加工の場合、スポンジの密度が高くて、硬い硬度のもの、更に発泡セル径が小さいものは、ニクロム線が変形したり切れ易く、加工精度が低下し易い。一方、ニクロム線に負荷がかからないように加工速度を小さくすると、ニクロム線は切れないが、ローラの生産性が低くなる。またニクロム線への通電量を多くして発熱温度を高くすると、スポンジの溶け代が大きくなって加工面が波状になり、平滑にならないという課題があった。
【0006】
何れもそれら従来の表面セルが開口したローラの製法にあっては、各種の課題が内在しており、研磨や切削等製造工程が煩雑であり、更に不要部分の廃棄分が多く、寸法精度が悪い等の課題を内在している。
【0007】
そこで、ポリウレタンスポンジ層が、スキン層を有すると共に、該スキン層の直下に位置する各セルが開口部によってそれぞれ独立して外部に開口しているトナー供給ローラを製造する方法として、成形キャビティにおけるロール外周面を形成する型内面に、前記凹凸表面構造を与える複数の凸条に対応した凹溝が形成され、更に表面10点平均粗さ:Rzが5〜20μmとなるように調整されてなると共に、シリコーン系若しくは弗素系離型剤のコーティング層が設けられてなる成形型を用い、軟質ポリウレタンスポンジ層を形成したことを特徴とするトナー供給ローラの製造法が提案されている(特許文献1参照)。
【0008】
また、内周面に反応性の基を有するシリコーンオイルを塗布した金型にウレタン材料を注入することにより、ポリウレタンフォームの表面を改質されてなるトナー供給ローラの製造方法が提案されている(特許文献2参照)。
【0009】
しかしながら、前記特許文献1にあっては、型内面のコーティング層は一般的な離型剤であり、金型からの移行が問題となったり、成分については全く検討されていない。更に、金型を粗すと金型へのウレタンの付着といった問題が発生し易くなる場合がある。前記特許文献2にあっては、反応性の基を有するシリコーンオイルとポリウレタンフォーム材料とが反応するため、発泡成形中のポリウレタンフォーム材料に入り込み異常発泡を起こしたり、粘度が低く、流動性が良いため、成形時にシリコーンオイルが流れてしまい、ローラの表面セルに長手差ができるといった問題が起こり易い。更には、画像形成装置用ローラ表面に多量のシリコーンオイルが付着し、これらが接触する他部材やトナーを汚染することもあるので好ましくない。
【0010】
また、主な離型剤として、離型剤膜の破壊又は型−離型剤膜界面で成形物を離型する移行型離型剤と型面に密着反応し固形膜を形成する非移行型離型剤がある。一般にポリウレタンフォームの型成形においては、移行型離型剤が用いられており、その何れの離型剤も成形物に移行するので、場合によってはローラ洗浄が必要であり、更に成形毎に離型剤の塗布と型の清掃が必要となったり、一般に前記離型剤は融点を持つので、型温が高過ぎるとフォームに混入し表面を粗し、一方型温が低過ぎると離型性が低下するといった問題がある。また、これら離型剤は、型との馴染みが悪く均一な塗布が困難な場合があり、部分的にスキン層が形成されたり脱型性が悪い部分のフォームがちぎれたりして寸法精度が悪化する場合があった。
【0011】
更に、繰り返して成形すると、型内に離型剤やポリウレタンの蓄積により型の表面性が悪くなり、セル開口に適した表面粗さを安定して得られなくなったり、成形されたローラの脱型性が低下していくため、型の清掃頻度や離型剤の塗布回数が増えたりする場合があった。
【特許文献1】特許第3536598号公報
【特許文献2】特開2002−341642号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、上記課題を解決することであり、主に、電子写真、静電記録技術を利用した複写機等に組み込まれて使用され、ローラ表面にセルが開口したローラ製造において型の表面性を維持するために煩雑な工程を要することなく、セル開口に適した表面を安定して得ることが出来て、安定した脱型性及びセル開口性を両立させ、良好な性能の得られる画像形成装置用ローラを提供することである。
【0013】
本発明の別の目的は、上記画像形成装置用ローラの製造方法及び画像形成装置用ローラの製造用成形金型を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、前記問題を解決するため鋭意研究を行い、以下の発明により前記本発明の目的を達成できることを見出した。
【0015】
本発明に従って、芯金と、該芯金上に形成された一層以上のポリウレタンフォーム層を有する画像形成装置用ローラの製造方法であって、
該芯金を配置し該ポリウレタンフォーム層の材料液を注入して用いる金型内側に液状シリコーンゴムを硬化させてなる塗布膜を設ける工程、
該金型内で該ポリウレタンフォーム層の材料液を発泡成形する工程、
を有することを特徴とする画像形成装置用ローラの製造方法が提供される。
【0016】
また、本発明に従って、上記の製造方法による、芯金と、該芯金上に形成された一層以上のポリウレタンフォーム層を有する画像形成装置用ローラであって、
該ポリウレタンフォーム層の密度は50kg/m以上200kg/m以下、かつ350g以下の硬度を有すると共に、該ポリウレタンフォーム層の表層部に存在する各セルの外部への平均開口径が100μm以上800μm以下であり、且つそれらセル開口面積率が該ポリウレタンフォーム層表面の20%以上であることを特徴とする画像形成装置用ローラが提供される。
【0017】
更に、本発明に従って、芯金と、該芯金を配置する金型本体と、該芯金両端を固定する補助金型とを有する画像形成装置用ローラの製造用成形金型であって、
該金型は、その内側に液状シリコーンゴムを硬化させてなる塗布膜を設けたことを特徴とする画像形成装置用ローラの製造用成形金型が提供される。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、主に、電子写真、静電記録技術を利用した複写機等に組み込まれて使用され、ローラ表面にセルが開口したローラ製造において型の表面性を維持するために煩雑な工程を要することなく、セル開口に適した表面を安定して得ることが出来るので、成形後の安定した脱型性及び、ローラ表面におけるセル開口性を両立させることが可能になり、よって良好な性能の得られる画像形成装置用ローラ、該画像形成装置用ローラの製造方法及び画像形成装置用ローラの製造用成形金型を提供することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
次に、本発明の実施の形態について説明する。
【0020】
本発明は、芯金と、該芯金上に形成された一層以上のポリウレタンフォーム層を有する画像形成装置用ローラの製造方法であって、該芯金を配置し該ポリウレタンフォーム層の材料液を注入して用いる金型内側に液状シリコーンゴムを硬化させてなる塗布膜を設ける工程、該金型内で該ポリウレタンフォーム層の材料液を発泡成形する工程を有する画像形成装置用ローラの製造方法である。
【0021】
(シリコーンゴムについて)
シリコーンゴムは、耐熱性に優れるだけでなくゴム弾性体として復元性に優れるため寸法安定性が良好であり、更に、表面の離型性が良く、シリコーン以外のほとんどの材料は容易に剥がれる。
【0022】
液状シリコーンゴムとしては、加工性に優れている、硬化反応に伴う副生成物の発生がないため寸法安定性が良好である、硬化後の物性が安定している等の理由から、付加反応架橋型シリコーンゴムポリマーがより好ましい。
【0023】
このシリコーンゴムポリマーは、例えば下記式(1)で表されるオルガノポリシロキサン、及び下記式(2)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンを含み、更に触媒や他の添加物と適宜混合させて用いることができる。
【0024】
【化1】

【0025】
オルガノポリシロキサンはシリコーンゴム原料のベースポリマーであり、その分子量は特に限定されないが10万以上100万以下が好ましく、平均分子量は40万以上70万以下がより好ましい。更に加工特性及び得られるシリコーンゴム組成物の特性等の観点から、オルガノポリシロキサンの粘度は、下限値として10Pa・s以上が好ましく、50Pa・s以上がより好ましく、上限値としては300Pa・s以下が好ましく、250Pa・s以下がより好ましい。
【0026】
上記オルガノポリシロキサンのアルケニル基は、オルガノハイドロジェンポリシロキサンの活性水素と反応して架橋点を形成する部位であり、その種類は特に限定されないが、活性水素との反応性が高い等の理由から、ビニル基及びアリル基の少なくとも一方であることが好ましく、ビニル基が特に好ましい。
【0027】
【化2】

【0028】
オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、硬化工程における付加反応の架橋剤の働きをするもので、一分子中のケイ素原子結合水素原子の数は2コ以上であり、硬化反応を最適に行わせるために、3個以上のポリマーが好ましい。ポリオルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子量に特に制限は無く、1000〜10000まで含有されるが、硬化反応を適切に行わせるために、比較的低分子量1000以上5000以下が好ましい。
【0029】
液状シリコーンゴムは添加剤として、架橋触媒、硬化反応遅延剤、補強充填剤及び増量剤、導電材、他の弾性体ポリマー、可塑剤、そのほか加工助剤、着色剤、紫外線吸収剤、難燃剤、耐油性向上剤、発泡剤、スコーチ防止剤、粘着付与剤、滑剤等を必要に応じて添加できる。各種添加物については、材料の粘度上昇・高硬度化等の問題が、ポリマーの架橋密度もしくはポリマー自体の粘度により調整可能な範囲であれば、より多く配合することがコストの面から考えても有利であり、実際の材料についてもできる限りコストを考慮して、上記添加物の量を可能な限り多く配合していることが知られている。
【0030】
しかしながら、上記各種添加物の配合量を多くすることは、材料中のゴム弾性を発現するためのポリマー成分の挙動が各種添加物分子により阻害されることになり、液状シリコーンゴム中に含ませることのできる各種添加物の量としては、材料に対する補強性を確保しつつ、かつ液状シリコーンゴム中のポリマーの挙動を阻害しない範囲にすることが好ましい。
【0031】
(接触角について)
液状シリコーンゴムの塗布膜のエチレングリコールを用いた接触角が70度以上であることが好ましい。ウレタン原料の中のポリエーテルポリオールと類似構造を持つエチレングリコールの接触角が70度以上になる成形型内面を用いることにより、該成形型の少なくとも成形キャビティ内面を構成する、そのウレタンとの非相溶作用又は表面張力作用により、液状のポリウレタン原料の発泡成形にて生じるセルの型内面に最も近接する部分、換言すればスキン層の厚さが最も薄くなるセル中央部相当部位に、ポリウレタン原料の不存在部分が生じ、これによって、形成されるウレタンフォーム層表面のスキン層に開口部が生じ、この開口部を通じて、セルが外部に開口するようになるのである。この成形型内面のエチレングリコールの接触角が70度よりも小さくなると、充分にウレタン非相溶作用乃至は表面張力等の作用による効果が発揮できず、セル開口にムラが生じ、また充分な開口径となり難い。また、エチレングリコールの接触角が70度よりも小さい型内面だと、ウレタンフォームの発泡時の接着性が強くなり、型内で発泡して得られるウレタンフォームを型から離型することが困難になる。
【0032】
つまり、成形型内面に対して、前記した従来使用の離型剤を用いるのとは異なり、本発明にかかる液状シリコーンゴムの塗布膜の存在によって、成形型内面は撥油作用や表面張力の作用を受け、セルを外部に連通せしめたるための開口部が効果的に形成し、脱型性も良好で、幅広い成形型温度で使用できる上に、ローラ表面を粗すことが無くなり、ポリウレタンフォームに離型剤が移行しないので、他部材への汚染がなく、ローラの洗浄が不必要となるのである。
【0033】
なお、エチレングリコールの接触角は、協和界面科学株式会社製の接触角計(画像処理式)CA−X型で測定を行った。具体的には、接触角θは図1に示すようにエチレングリコールと測定試料との接点におけるエチレングリコールの接線と試料がなす角度である。
【0034】
図2は本発明の画像形成装置用ローラの一例を示す斜視図である。図2に示すように、画像形成装置用ローラ3は、円柱状の芯金4と、芯金4の両端部を除いて芯金4の周りに設けられた発泡弾性体であるポリウレタンフォームからなる表面層5を備える。
【0035】
(ポリウレタンフォーム層の密度について)
該ポリウレタンフォーム層の密度は、50kg/m以上200kg/mが好ましく、更に70kg/m以上100kg/mであることがより好ましい。該ポリウレタンフォーム層の密度は、JIS K 6400法に準じ計測した。密度が50kg/m未満であると、ローラとして成形が困難であり、出来ても発泡剤である水を過剰に用いるため永久変形が大きく画質が低下し、使用に耐えないものとなる。一方、200kg/mを超える場合は、必然的にローラが高硬度化し、トナー劣化を促進する等の問題がある。
【0036】
(ポリウレタンフォーム層の硬度について)
該ポリウレタンフォーム層の硬度は、温度15〜32.5℃/相対湿度10〜80%RHにおいて、350g以下が好ましく、更に100g以上300g以下であることがより好ましい。硬度が350gを超える場合にはトナー劣化を促進する等の問題がある。
【0037】
(開口径・セル開口面積率について)
ポリウレタンフォーム層の表層部に存在する各セルの外部への平均開口径は100μm以上800μm以下が好ましい。より好ましくは200μm以上700μm以下である。例えば、トナー供給ローラとして用いた場合、100μmよりも小さくなると、開口部を通じてセル内に侵入したトナーが出難くなり、硬度が上昇し、画像不具合が発生するからであり、また該開口径が800μmを超えるようになると、トナー供給量が減少して、濃度低下、スジ発生を引き起こす等の問題がある。
【0038】
セル開口面積率が該ポリウレタンフォーム層表面の20%以上を占めていることが好ましい。より好ましくは50〜90%である。20%未満では表面の開口が不均一になり易いため好ましくない。例えば、トナー供給ローラとして用いた場合、トナー搬送量が不安定化し、トナーを均一に供給することができなくなったり、更にはポリウレタンフォーム層内部にトナーが詰まり易く、これによって部分的に硬度が上昇し、画像の悪化を招き易くなる。
【0039】
本発明のポリウレタンフォームを用いた画像形成装置用ローラの種類としては特に制限は無いが、帯電ローラ、現像ローラ、転写ローラ、トナー供給ローラ及びクリーニングローラ等を挙げることが出来る。本発明のポリウレタンフォームを元に、各ローラの使用形態に応じて、必要な導電性の付与、必要な被膜の形成を施すことは、言うまでも無い。
【0040】
本発明の画像形成装置用ローラは、ポリウレタンフォームからなり、前記ポリウレタンフォームが、少なくともポリオールとポリイソシアネートとを含むウレタン原料から形成されたものである。
【0041】
ポリウレタン原料は、従来と同様な液状のものであって、型内で発泡硬化する、従来から公知の反応性原料(ポリオール成分とポリイソシアネート成分との配合物)の何れもが、特に限定されることなく、適宜に選択使用されることとなる。
【0042】
(ポリオール成分について)
例えば、そのような液状のポリウレタン原料を構成するポリオール成分としては、一般に軟質ポリウレタンフォームの製造に用いられている、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール及びポリマーポリオール等の公知のポリオール類の何れもが用いられ得る。
【0043】
(ポリイソシアネート成分について)
またポリイソシアネート成分としては、公知の2官能以上のポリイソシアネートの全てが用いられ得、例えば2,4−及び2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、オルトトルイジンジイソシアネート(TODI)、ナフチレンジイソシアネート(NDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、カーボジイミド変成MDI、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート及びポリメリックポリイソシアネート等が、単独で、又は併用して使用され得るものである。
【0044】
また、これらポリオール成分とポリイソシアネート成分とが配合されてなるポリウレタン原料には、更に、従来と同様に、架橋剤、発泡剤(水、低沸点物、ガス体等)、界面活性剤、触媒等が、目標とする発泡成形後のポリウレタンスポンジ層の構造、即ち、連続気泡型若しくは独立気泡型の何れか一方を生ぜしめ易い公知の配合となるように添加されて、反応性の発泡原料とされるが、また、そのような原料には、必要に応じて難燃剤や充填剤、更にはローラに所望の導電性を付与するための導電性付与剤や、帯電防止剤等も、従来と同様に添加せしめられる。
【0045】
(画像形成装置用ローラ用成形型について)
図3は、本発明の画像形成装置用ローラの製造用成形金型の一例を示す説明図である。本発明の画像形成装置用ローラ用成形型は特に限定されず、従来公知の材質、形状の中から適宜選択して使用することが出来る。例えば、ステンレス(SUS304)製で、ベントホール(型内にガスが溜まり発泡体に欠肉を生じるのを未然に防止するため設けられた孔径約1mm程度の金型内外に連通する小孔)を有し、内面に凹凸形状を有するパイプ状成形型等がある。
【0046】
本発明の成形金型は、芯金と、該芯金を配置する金型本体と該芯金両端を固定する補助金型を有する画像形成装置用ローラの製造用成形金型において、該金型内側に液状シリコーンゴムを硬化させてなる塗布膜を設けたことを特徴とする画像形成装置用ローラの製造用成形金型である。
【0047】
(成形型のシリコーンゴム塗布膜について)
金型内に液状シリコーンゴムを硬化させてなる塗布膜の厚さは、一般に、1〜10μm程度とされることとなる。この塗布膜の厚さが薄くなり過ぎると、塗布膜の機能を充分に発揮し得なくなるからであり、また厚くなり過ぎると、それ以上の効果は得られず、却ってコスト高となり、熱伝導性が低下し、凹凸形状を有する成形型においては凹凸表面構造の形態が悪化するため好ましくない。また、前記液状シリコーンゴムは、型内面に塗布された後、加熱硬化により皮膜強度の向上せしめられた塗布膜とされることとなる。塗布方法は特に限定されず、常法によればよい。その一例を示せば次の通りである。まず、溶剤により固形分が3〜5%の溶液に希釈した液状シリコーンゴムを金型内に均一に約5μm塗布し、100℃、20分間加熱して反応硬化させることによりシリコーンゴム塗布膜を形成することができる。
【0048】
必要に応じて金型と液状シリコーンゴムの間に接着層を設けることが出来る。この接着層としては、プライマーや接着剤等の公知の材料を用いることが出来る。
【0049】
(離型剤について)
離型剤は公知の物を使用することができ、好ましくはシリコーンゴム塗布膜への濡れ性の良好な離型剤であり、液状シリコーンゴムの塗布膜上にシリコーン樹脂系、フッ素樹脂系離型剤等を適宜選定して用いることができる。また、シリコーンオイル及びフッ素系化合物、且つ一種以上のワックスを含有する水系離型剤が環境面、表面性からも好ましい。
【0050】
塗布する離型剤の膜厚については、製品寸法に影響を与えない範囲であれば特に制限しないが、前記膜厚としては、1〜1000μmであるとより好ましい。
【0051】
(画像形成装置用ローラの製造方法)
本発明の画像形成装置用ローラの製造方法は特に限定されず、常法によれば良い。その一例を示せば次の通りである。まず、金型内に液状シリコーンゴムを均一に塗布し、100℃、20分間加熱して反応硬化させることによりシリコーンゴム塗布膜を約5μm形成した。前記ポリオール、ポリイソシアネート、触媒及び所望により用いられる整泡剤、水、その他助剤等を均質に混合してウレタン原料を調整した後、これを型に注入し、加熱して反応硬化させることによりポリウレタンフォームを形成することができる。なお、このようなポリウレタンフォーム層の発泡成形後に、公知のクラッシングを適宜実施してもよく、例えば、所定の圧力の圧縮空気等を吹き付ける方法が、有利に採用される。
【0052】
前記ウレタン原料を混合する際の温度や時間については特に制限は無いが、混合温度は、通常10〜90℃、好ましくは20〜60℃の範囲であり、混合時間は、通常1秒〜10分間、好ましくは3秒〜5分間程度である。
【0053】
また、加熱して反応硬化させる際、従来公知の方法により、発泡させることにより、ポリウレタンフォームからなる画像形成装置用ローラを作製することが出来る。発泡方法については特に制限は無く、発泡剤を用いる方法、機械的な撹拌により気泡を混入する方法等、いずれの方法をも用いることが出来る。この発泡時の成形型の温度を35〜100℃にすることが好ましく、40〜80℃にすることがより好ましい。
【0054】
(画像形成装置用ローラ)
本発明の画像形成装置用ローラは、このようにして得られたポリウレタンフォームを用いたものであって通常、鉄にメッキを施したものやステンレス鋼等からなる例えば直径が4〜6mm、長さが200〜400mmの芯金を、前記ポリウレタンフォームで被覆して弾性体層を形成することにより製造することができる。用途によっては、導電性や半導電性、或いは絶縁性の塗料により、その外側を塗装してもよい。
【0055】
本発明の画像形成装置用ローラの外径は特に限定されず、その目的によりさまざまな外径を有するものとすることができるが、一般的には10〜20mmの外径を有する。
【0056】
芯金とポリウレタンフォームとの接合方法については特に限定されないが、芯金を予めモールド(成形型)内部に配設し、ポリウレタン原料を注型し硬化する方法や、ポリウレタンフォームを所定の形状に成形した後に接着する方法等を用いることが出来る。どちらの方法においても、必要に応じて芯金とポリウレタンフォームの間に接着層を設けることが出来る。この接着層としては、接着剤やホットメルトシート等の公知の材料を用いることが出来る。
【0057】
画像形成装置用ローラは、前記構成のものに限定されるわけではなく、ポリウレタンフォーム層の内周側及び外周側に更に複数の層を有していてもよい。
【0058】
本発明は、従来の如き、研磨工程等の面倒な工程も採用する必要がなく、極めて簡便に画像形成装置用ローラを製造することが出来、また、寸法精度の向上は勿論、ロール表面の毛羽立ち、スキン層の破れ、他部材への離型材の移行等の問題を効果的に解消することが出来ると共に、繰り返して成形しても安定して脱型性及びセル開口性を両立させ、良好な性能の得られる画像形成装置用ローラを製造することが可能となる。
【実施例】
【0059】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【0060】
(実施例1、2)
まず、成形型としては、パイプ型を用い、型内面に相当するステンレス(SUS304)製金型パイプの内面に対して液状シリコーンゴムを均一に塗布し、反応硬化させることによりシリコーンゴム塗布膜を5μm形成した。
【0061】
「ウレタン原料」
ポリオール:(商品名:MF78、三井武田ケミカル(株)製) 100質量部
整泡剤:(商品名:L−5366、日本ユニカー(株)製) 1質量部
触媒:(商品名:TOYOCAT−ET、東ソー(株)製) 0.1質量部
(商品名:TOYOCAT−MR、東ソー(株)製) 0.3質量部
蒸留水 2.0質量部
ポリイソシアネート:(商品名:TM−50、三井武田ケミカル(株)製)
15.2質量部
上記のポリオール成分(ポリオール、整泡剤、触媒、水等)、ポリイソシアネート成分を液温25℃に調整した。そして、両液を配合し撹拌羽根で5秒間撹拌した後、100kg/mの密度になる材料量を、予めSUS304製の直径5mm、長さ270mmの芯金を内部の所定位置に取り付けた金型内に流し込んだ。次に、100℃の電気炉で画像形成装置ローラ用成形型を60℃に温度調節し、この金型内で20分間硬化し金型から取り出して外径が16mmの画像形成装置ローラを製造した。脱型性の確認のため、成形回数10回までできる限り繰り返し成形した。
【0062】
(比較例1)
SUS304製金型パイプの内面にフッ素樹脂を均一に塗布し、塗布膜を約5μm形成したパイプ型を用いた以外は、実施例1と同様にしてトナー供給ローラを製造した。
【0063】
(比較例2)
SUS304製金型パイプの内面に液状シリコーンゴムを塗布せずにシリコーン(樹脂)系の市販の非移行型離型剤としてDEXTER社フリーコート770NCを塗布し、型面に密着反応し固形膜を形成したパイプ型を用いた以外は、実施例1と同様にしてトナー供給ローラを製造した。
【0064】
(比較例3)
SUS304製金型パイプの内面に液状シリコーンゴムを塗布せずにワックス系の市販の移行型離型剤としてコニシ(株)製URH−511を塗布したパイプ型を用い、成形毎に離型剤を塗布した以外は、実施例1と同様にしてトナー供給ローラを製造した。
【0065】
型内面処理の接触角及び作製した画像形成装置用ローラの物性の測定値は、下記の方法により測定し、その結果を表1に示した。
【0066】
<密度測定>
該ポリウレタンフォーム層の密度は、JIS K 6400法に準じ計測した。画像形成装置用ローラのウレタンフォームの体積を計算し、また、画像形成装置用ローラのウレタンフォームの質量を測定することにより、密度を求めた。
【0067】
<硬度測定>
画像形成装置用ローラを、その両端の芯金部分において支持し、そしてその表面層を、長さ50mm(ローラ長手方向)×幅10mm(厚さ:10mm)の板状押圧面を有する治具にて、10mm/minの速度で押圧して1mm変形させた時の該ローラ表面にかかる荷重から求めた。その数値が大きくなるほど、ポリウレタンフォームからなる表面層が硬いことを示している。硬度は、軸方向に3ヶ所、各軸方向に於いて周方向の90度毎に4ヶ所、計12ヶ所測定し、その平均値を求めた。測定環境は、温度23℃/相対湿度53%RHで行った。
【0068】
<接触角測定>
エチレングリコールの接触角の測定は、テストピース片にパイプ型と同じ加工を施し、図1に示すようにエチレングリコール(和光純薬工業(株)製)とテストピースとの接触角を接触角測定装置(協和界面科学(株)製CA−DT型)を用いて測定した。測定環境は、温度23℃/相対湿度53%RHで行った。
【0069】
<平均開口径、セル開口面積率の測定>
そして、得られたローラのセル開口について、リアルタイム走査型レーザー顕微鏡を用いて表面の画像を取り込み、セル開口径を測定し平均値を求めた。また画像解析により2値化処理を行いセル開口面積率を求めた。
【0070】
セル開口面積率[%]=セル開口面積/画像範囲×100
なお表中の数値は、成形1回目/5回目の画像形成装置用ローラの値である。
【0071】
<脱型性の評価>
成形回数10回以上繰り返し使用しても軽剥離性が持続するものを○、成形回数5回以上10回未満まで軽剥離性が持続するものを△、成形回数5回未満で剥離が重くなる又は成形初期から脱型出来ないものを×とした。
【0072】
なお、得られた各種の画像形成装置ローラにおけるポリウレタンフォーム層は、いずれも、硬度が180〜220g、密度が100kg/mのものであった。
【0073】
総合判定は、成形回数によらず平均開口径が100〜800μm、セル開口面積率が20%以上、かつ脱型性が良好:○、いずれか範囲外である場合:×とした。
【0074】
【表1】

【0075】
本結果より本実施例に示したポリウレタンフォーム製画像形成装置用ローラにおいて、該ポリウレタンフォーム層は、内側に液状シリコーンゴムを硬化させてなる塗布膜を設けた金型内で発泡成形を行うことを特徴とすることで、成形を繰り返した場合にも安定して脱型性及びセル開口性を両立させ、良好な性能の得られる画像形成装置用ローラが得られることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】接触角θの測定を示す説明図である。
【図2】本発明の画像形成装置用ローラの一例を示す斜視図である。
【図3】本発明の画像形成装置用ローラの製造用成形金型の一例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0077】
1 エチレングリコール
2 測定試料
3 画像形成装置用ローラ
4 芯金
5 表面層
6 パイプ金型
7 上駒
8 下駒
9 注入孔
10 ガス抜き用隙間
11 容器
12 液状シリコーンゴム塗布膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯金と、該芯金上に形成された一層以上のポリウレタンフォーム層を有する画像形成装置用ローラの製造方法であって、
該芯金を配置し該ポリウレタンフォーム層の材料液を注入して用いる金型内側に液状シリコーンゴムを硬化させてなる塗布膜を設ける工程、
該金型内で該ポリウレタンフォーム層の材料液を発泡成形する工程、
を有することを特徴とする画像形成装置用ローラの製造方法。
【請求項2】
前記液状シリコーンゴムが付加反応架橋型シリコーンゴムポリマーである請求項1に記載の画像形成装置用ローラの製造方法。
【請求項3】
前記液状シリコーンゴムの塗布膜のエチレングリコールを用いた接触角が70度以上である請求項1又は2に記載の画像形成装置用ローラの製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法による、芯金と、該芯金上に形成された一層以上のポリウレタンフォーム層を有する画像形成装置用ローラであって、
該ポリウレタンフォーム層の密度は50kg/m以上200kg/m以下、かつ350g以下の硬度を有すると共に、該ポリウレタンフォーム層の表層部に存在する各セルの外部への平均開口径が100μm以上800μm以下であり、且つそれらセル開口面積率が該ポリウレタンフォーム層表面の20%以上であることを特徴とする画像形成装置用ローラ。
【請求項5】
前記画像形成装置用ローラが、帯電ローラ、現像ローラ、転写ローラ、トナー供給ローラ、クリーニングローラのいずれかである請求項4に記載の画像形成装置用ローラ。
【請求項6】
芯金と、該芯金を配置する金型本体と、該芯金両端を固定する補助金型とを有する画像形成装置用ローラの製造用成形金型であって、
該金型は、その内側に液状シリコーンゴムを硬化させてなる塗布膜を設けたことを特徴とする画像形成装置用ローラの製造用成形金型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−79111(P2007−79111A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−266688(P2005−266688)
【出願日】平成17年9月14日(2005.9.14)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】