説明

画像形成装置

【課題】転写部間距離が感光体周長の整数倍の値から外れるように構成した場合に、アイドラギヤを介して接続される2つの感光体駆動ギヤ間において生じ得る特定色ズレを、これらを同一ギヤにて形成した場合でも軽減する。
【解決手段】本プリンタは、いわゆるタンデム型のもので、モータギヤをM用感光体駆動ギヤに直接接続し、かつ、アイドラギヤをC用感光体駆動ギヤとM用感光体駆動ギヤとに直接接続して単一駆動源により両方を駆動し、M用感光体駆動ギヤの偏心成分Eの現実振幅に対するC用感光体駆動ギヤの偏心成分の理想振幅の比率を示す理想振幅比率から1を差し引いた値の絶対値が最大許容振幅比率以下となるように、C及びMの感光体の直径、これらの転写部間距離、モータ入力角度及びアイドラ入力角度を設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面が周回移動する感光体等の潜像担持体を中間転写体や記録材等の被転写体の表面移動方向に沿って2以上備え、各潜像担持体表面上の潜像を現像して得られる可視像を互いに重なり合うように被転写体上へ転写して最終画像を得る、複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の画像形成装置としては、例えば、イエロー、マゼンタ、シアン、黒の4色それぞれの可視像を形成するための4つの感光体(潜像担持体)を備えたタンデム型の画像形成装置として知られている。このように、各感光体上に形成した可視像を互いに重なり合うように被転写体上へ転写する画像形成装置においては、各可視像間における被転写体上への相対的な転写位置ズレ(以下、適宜「色ズレ」という。)を少なくすることが、画質向上の点で重要である。
【0003】
色ズレの中には、感光体の回転軸に固定された感光体駆動ギヤ(被駆動伝達用回転体)の偏心に起因した当該感光体駆動ギヤの外周振れによって生じるものがある。この色ズレについて詳しく説明すると、感光体駆動ギヤは、その偏心により外周振れが生じ、その半径が最も長くなっている箇所がこれに回転駆動力を伝達するモータギヤやアイドラギヤに噛み合う時に最も遅い回転角速度で回転する。これにより、感光体の線速を変動させ得る他の変動成分を考慮しなければ、その感光体駆動ギヤが設けられた感光体の回転角速度がこの時に最も遅くなり、感光体の線速もこの時に最も遅くなる。また、同様に考えると、半径が最も短くなっている感光体駆動ギヤの箇所がモータギヤやアイドラギヤに噛み合う時に、その感光体駆動ギヤは最も速く回転角速度で回転し、これが設けられた感光体の線速は最も速くなる。感光体の線速を最も遅くする前者の箇所と感光体の線速を最も速くする後者の箇所は、感光体駆動ギヤの回転中心に対して点対称の位置、すなわち、その回転位置が180°異なる位置にある。そのため、感光体駆動ギヤの回転角速度は、その1周分の周期を有する正弦波の変動成分を有し、これにより、感光体の線速には、感光体駆動ギヤ1周分の周期を有する正弦波の変動成分が表れる。そして、この変動成分の上限付近の線速で感光体が回転している時に感光体上から被転写体上へ転写されたトナー像(可視像)は、本来よりも副走査方向(被転写体の表面移動方向)に縮んだ形状となる。逆に、この変動成分の下限付近の線速で感光体が回転している時に感光体上から被転写体上へ転写されたトナー像は、本来よりも副走査方向に伸びた形状となる。その結果、2つの感光体の一方から転写された最も縮んだ形状となっているトナー像と、他方の感光体から転写された最も伸びた形状となっているトナー像とが被転写体上の同一地点に転写されると、最大の色ズレが生じる。
【0004】
通常、それぞれの感光体に設けられた感光体駆動ギヤとしては同一のものが用いられるので、その偏心に起因した当該感光体駆動ギヤの外周振れの振幅値は同じものであると言える。したがって、この偏心に起因した感光体の線速に表れる変動成分の振幅値も同じであり、これに起因する被転写体上へ転写されたトナー像の伸び縮みの最大量も同じである。したがって、最も縮んだ形状となっているトナー像同士あるいは最も伸びた形状となっているトナー像同士が被転写体上の同一地点に転写されるように、感光体駆動ギヤの相対的な回転位置を調整すれば、理論上、感光体駆動ギヤの偏心に起因した色ズレを防止することが可能である。
【0005】
従来、3つ以上の感光体を駆動する構成として、各感光体に設けられた感光体駆動ギヤそれぞれに対して、駆動源に接続されたモータギヤ(駆動伝達用回転体)を直接接続し、各感光体を駆動するものが知られている。この構成であれば、一方の感光体の転写部を被転写体上の特定地点(被転写体表面移動方向における任意の地点)が通過する時点における当該一方の感光体の感光体駆動ギヤが有する偏心の位相が、他方の感光体の転写部をその特定地点が通過する時点における当該他方の感光体の感光体駆動ギヤが有する偏心の位相と一致するように調整することで、理論上、感光体駆動ギヤの偏心に起因した色ズレを防止することが可能である。しかし、この構成では、少なくとも2つの駆動源が必要となり、コストが高騰するとともに装置の小型化が困難であるという不具合が生じる。
【0006】
一方で、3つ以上の感光体を駆動する構成として、駆動源に接続されたモータギヤを一部の感光体駆動ギヤに直接接続し、残りの感光体駆動ギヤについては他の感光体駆動ギヤとアイドラギヤ(従動回転体)を介して接続するものも知られている(特許文献1、特許文献2等)。この構成は、単一の駆動源によりすべての感光体を駆動することが可能であることから、アイドラギヤを用いずに各感光体駆動ギヤに対してモータギヤを直接接続する上述した構成と比較して、低コスト及び装置小型化を実現できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、アイドラギヤを用いる従来の構成では、アイドラギヤを介して接続される2つの感光体駆動ギヤ間において、これらの感光体駆動ギヤの相対的な回転位置を上述したように調整しても、感光体駆動ギヤの偏心に起因した色ズレが生じてしまうという問題があった。
【0008】
この問題について、アイドラギヤを介して接続される2つの感光体駆動ギヤが、駆動源のモータギヤに直接接続された感光体駆動ギヤ(以下「第2感光体駆動ギヤ」という。)と、この第2感光体駆動ギヤが回転駆動することで従動回転するアイドラギヤから回転駆動力が伝達される感光体駆動ギヤ(以下「第1感光体駆動ギヤ」という。)とからなる場合を例に挙げて説明する。この場合、第2感光体駆動ギヤに設けられた感光体(以下「第2感光体」という。)においてその感光体線速の変動成分に影響を与える感光体駆動ギヤの偏心は、これに設けられる第2感光体駆動ギヤの偏心のみである。これに対し、第1感光体駆動ギヤに設けられた感光体(以下「第1感光体」という。)においてその感光体線速の変動成分に影響を与える感光体駆動ギヤの偏心は、これに設けられる第1感光体駆動ギヤの偏心だけでなく、アイドラギヤを介して伝達される第2感光体駆動ギヤの偏心も含まれる。すなわち、第1感光体駆動ギヤの回転角速度には、両者の感光体駆動ギヤの各偏心による変動成分の合成波(以下「合成波変動成分」という。)が含まれる結果、第1感光体の線速には、この合成波変動成分が線速変動成分として表れる。
【0009】
この構成において上述した調整を行う場合、第1感光体の転写部を被転写体上の特定地点が通過する時点における第1感光体駆動ギヤの回転角速度の合成波変動成分の位相が、第2感光体の転写部をその特定地点が通過する時点における第2感光体駆動ギヤの偏心による第2感光体駆動ギヤの回転角速度の変動成分の位相と一致するように、第1感光体駆動ギヤ及び第2感光体駆動ギヤの相対的な回転位置を設定する。これにより、最も縮んだ形状となっているトナー像同士あるいは最も伸びた形状となっているトナー像同士が被転写体上の同一地点に転写されるようになる。
【0010】
第1感光体及び第2感光体間の転写部間距離がこれらの感光体の周長の整数倍となるように構成すれば、各感光体駆動ギヤとして同一のものを用いても、第1感光体駆動ギヤの回転角速度の合成波変動成分の振幅値と、第2感光体駆動ギヤの偏心による第2感光体駆動ギヤの回転角速度の変動成分の振幅値とを一致させることができる。よって、この構成とすれば、上述した調整により、感光体駆動ギヤの偏心に起因した色ズレを防止することができる。
【0011】
しかし、このような構成することは、画像形成装置の内部レイアウトを大きく制限することとなり、例えば、転写部間距離を感光体の周長の整数倍よりも少しでも小さくして装置をなるべく小型化したいというような要望には応えることができない。また、他の制約によりそのような構成を採ることができない場合もある。そのため、従来の画像形成装置は、一般に、第1感光体及び第2感光体間の転写部間距離がこれらの感光体の周長の整数倍の値から外れるように構成されている。この場合、第1感光体駆動ギヤの回転角速度の合成波変動成分の振幅値は、第2感光体駆動ギヤの偏心による第2感光体駆動ギヤの回転角速度の変動成分の振幅値と一致しなくなる。その結果、第1感光体の線速変動成分の振幅値と第2感光体の線速変動成分の振幅値も互いに一致しなくなるので、被転写体上において最も縮んだ形状となっているトナー像の副走査方向の縮み量あるいは最も伸びた形状となっているトナー像の副走査方向の伸び量が、第1感光体と第2感光体との間で互いに異なるものとなる。したがって、最も縮んだ形状となっているトナー像同士あるいは最も伸びた形状となっているトナー像同士が被転写体上の同一地点に転写されるように調整しても、この縮み量あるいは伸び量の差分の色ズレ(以下「特定色ズレ」という。)は残ってしまう。
【0012】
この特定色ズレは、第1感光体駆動ギヤと第2感光体駆動ギヤとして、互いに偏心量が異なる個別の回転体を用い、第1感光体駆動ギヤの偏心量を当該特定色ズレを解消できる量に設定すれば、上述した調整を行うことで、当該特定色ズレが生じないようにすることが可能である。しかし、第1感光体駆動ギヤと第2感光体駆動ギヤとして、互いに偏心量が異なるものを用いることは、コストを高騰させる要因となる上、当該特定色ズレを解消できるような偏心量を持つ第1感光体駆動ギヤを製造することは困難であることも、コスト高騰の要因となる。
【0013】
本発明は、上記問題に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、装置の小型化等のために、第1潜像担持体及び第2潜像担持体間の転写部間距離がこれらの潜像担持体の周長の整数倍の値から外れるように構成した場合に、アイドラギヤ等の従動回転体を介して接続される2つの感光体駆動ギヤ等の被駆動伝達用回転体間において生じ得る特定色ズレを、これらの被駆動伝達用回転体として同一の回転体を用いた場合でも軽減し得る画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、表面が周回移動する潜像担持体を被転写体の表面移動方向に沿って2以上備え、潜像担持体ごとに設けられた被駆動伝達用回転体に対して駆動源からの回転駆動力を伝達することにより各潜像担持体の表面を周回移動させ、所定の潜像形成箇所で形成した各潜像担持体表面上の潜像を現像して得られる可視像を互いに重なり合うように被転写体上へ転写して最終画像を得る画像形成装置において、互いに同じ直径Rを有する2つの潜像担持体の転写部間距離Lが該2つの潜像担持体の周長πRの整数倍の値から外れるように構成されており、上記2つの潜像担持体のうち被転写体表面移動方向下流側に位置する第1潜像担持体に設けられた第1被駆動伝達用回転体と、被転写体表面移動方向上流側に位置する第2潜像担持体に設けられた第2被駆動伝達用回転体とを、互いに同一の回転体で構成し、上記第1潜像担持体の転写部を上記被転写体上の特定地点が通過する時点における上記第1被駆動伝達用回転体の偏心と上記第2被駆動伝達用回転体の偏心とによる該第1被駆動伝達用回転体の回転角速度の変動成分の位相と、上記第2潜像担持体の転写部を該特定地点が通過する時点における該第2被駆動伝達用回転体の偏心による該第2被駆動伝達用回転体の回転角速度の変動成分の位相とが互いに一致するように、該第1被駆動伝達用回転体及び該第2被駆動伝達用回転体の相対的な回転位置が設定されており、駆動源側に接続された駆動伝達用回転体を上記第2被駆動伝達用回転体に直接接続し、かつ、従動回転する従動回転体を上記第1被駆動伝達用回転体と該第2被駆動伝達用回転体とに直接接続することで、該駆動伝達用回転体から伝達される回転駆動力により上記第1潜像担持体及び上記第2潜像担持体の両方を駆動し、上記従動回転体の回転軸方向から見た場合に、該従動回転体の回転中心が上記第1被駆動伝達用回転体の回転中心と上記第2被駆動伝達用回転体の回転中心とを結んだ第1の仮想直線よりも該第2被駆動伝達用回転体の回転方向上流側となるように、該従動回転体を配置し、上記従動回転体の回転軸方向から見た場合に、上記第1の仮想直線と、該第2被駆動伝達用回転体の回転中心と上記駆動伝達用回転体の回転中心とを結んだ第2の仮想直線とのなす角度を、該第2被駆動伝達用回転体の回転方向を正として、αと規定し、かつ、上記従動回転体の回転軸方向から見た場合に、上記第1の仮想直線と、上記第1被駆動伝達用回転体の回転中心と該従動回転体の回転中心とを結んだ第3の仮想直線とのなす角度を、該第1被駆動伝達用回転体の回転方向を正として、βと規定した場合、該第2被駆動伝達用回転体が有する偏心に起因した該第2被駆動伝達用回転体の外周振れの現実振幅に対する、該第1被駆動伝達用回転体及び該第2被駆動伝達用回転体の偏心に起因して上記第1潜像担持体と上記第2潜像担持体との間で生じる相対的な転写位置ズレを理論上ゼロにし得る該第1被駆動伝達用回転体の外周振れの理想振幅の比率を示す理想振幅比率Yを、下記の式(1)で定義したとき、該理想振幅比率Yから1を差し引いた値の絶対値が、該第2被駆動伝達用回転体の外周振れの該現実振幅に対する該転写位置ズレの最大許容量である10μmの比率を示す最大許容振幅比率以下となるように、上記2つの潜像担持体の直径R、該2つの潜像担持体の転写部間距離L、上記角度α及び上記角度βが設定されていることを特徴とするものである。
【数1】

ただし、Yの周期はL/πRである。
また、上記式(1)中のA、B及びCは、それぞれ下記の式(2)〜(4)により定義されるものである。
A=cos(−X+α−β)−Z×cos(θ+β−180) ・・・(2)
B=sin(−X+α−β)−Z×sin(θ+β−180) ・・・(3)
【数2】

また、上記式(2)及び上記式(3)中のXは下記の式(5)により定義され、上記式(2)及び上記式(3)中のZは下記の式(6)により定義されるものである。
【数3】

【数4】

ただし、Aは上記第2被駆動伝達用回転体の偏心振幅であり、θ=180−αであり、θ=βである。
また、請求項2の発明は、請求項1の画像形成装置において、上記理想振幅比率Yから1を差し引いた値の絶対値が、0.7以下となるように、上記2つの潜像担持体の直径R、該2つの潜像担持体の転写部間距離L、上記角度α及び上記角度βが設定されていることを特徴とするものである。
また、請求項3の発明は、請求項2の画像形成装置において、上記理想振幅比率Yから1を差し引いた値の絶対値が、0.06以下となるように、上記2つの潜像担持体の直径R、該2つの潜像担持体の転写部間距離L、上記角度α及び上記角度βが設定されていることを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像形成装置において、上記2つの潜像担持体の表面が所定の潜像形成箇所から被転写体への転写部までを移動する間に、上記駆動伝達用回転体及び上記従動回転体が整数回、回転するように構成したことを特徴とするものである。
また、請求項5の発明は、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像形成装置において、上記第1被駆動伝達用回転体及び上記第2被駆動伝達用回転体の相対的な回転位置を調整するための回転位置調整手段を設けたことを特徴とするものである。
また、請求項6の発明は、請求項5の画像形成装置において、上記回転位置調整手段は、上記第1被駆動伝達用回転体及び上記第2被駆動伝達用回転体として用いられる上記同一の回転体上に形成された、該回転体の回転により周回移動する第1マーク及び第2マークで構成されており、上記第1マーク及び上記第2マークは、上記相対的な回転位置が調整された後における上記第1被駆動伝達用回転体上の第1マークと上記第2被駆動伝達用回転体上の第2マークとが互いに同じ回転位置となるように、該同一の回転体上に形成されていることを特徴とするものである。
また、請求項7の発明は、請求項5の画像形成装置において、上記回転位置調整手段は、上記第1被駆動伝達用回転体及び上記第2被駆動伝達用回転体として用いられる上記同一の回転体上に形成された、該回転体の回転により周回移動する第1マーク及び第2マークと、該第1被駆動伝達用回転体及び該第2被駆動伝達用回転体を支持する支持部材上に形成された、該第1マークに対応する第3マーク及び該第2マークに対応する第4マークとで構成されており、上記第1マークは、その回転体が上記第1被駆動伝達用回転体として用いられる場合に、上記相対的な回転位置が調整された後における回転位置が上記支持部材上の第3マークに最も近接する位置となるように、該同一の回転体上に形成されており、上記第2マークは、その回転体が上記第2被駆動伝達用回転体として用いられる場合に、上記相対的な回転位置が調整された後における回転位置が上記支持部材上の第4マークに最も近接する位置となるように、該同一の回転体上に形成されていることを特徴とするものである。
【0015】
本発明においては、最も縮んだ形状となっているトナー像同士あるいは最も伸びた形状となっているトナー像同士が被転写体上の同一地点に転写されるように調整されているので、第1被駆動伝達用回転体及び第2被駆動伝達用回転体の偏心に起因して第1潜像担持体と第2潜像担持体との間で生じる相対的な転写位置ズレは、理論上、上述した特定色ズレのみである。この特定色ズレは、上述したように、第1被駆動伝達用回転体及び第2被駆動伝達用回転体として、互いに偏心量が異なる個別の回転体を用い、第1被駆動伝達用回転体の偏心量を当該特定色ズレを解消できる量に設定することで解消することができるものである。
本発明者らは、詳しくは後述するが、第2被駆動伝達用回転体の外周振れの現実振幅に対する当該特定色ズレを理論上ゼロにし得る第1被駆動伝達用回転体の外周振れの理想振幅の比率である理想振幅比率Yが、上述した式(1)〜(6)に示すように、2つの潜像担持体の直径Rと、これらの潜像担持体間における転写部間距離Lと、上記角度α(以下「モータ入力角度α」という。)と、上記角度β(以下「アイドラ入力角度β」という。)という4つのパラメータによって決まることを見出した。そして、特定色ズレの最大量は、この理想振幅比率Yと、第2被駆動伝達用回転体の外周振れの現実振幅に対する第1被駆動伝達用回転体の外周振れの現実振幅の比率である現実振幅比率との差分値(絶対値)に比例する。具体的には、特定色ズレの最大量は、当該差分値に対し、第2被駆動伝達用回転体の外周振れの現実振幅を乗じたものとなる。近年では、高画質化の要求により、当該特定色ズレの最大許容量が10μm程度に設定されることが想定される。特定色ズレの最大量をこの最大許容量(10μm)以下とするには、当該差分値が、第2被駆動伝達用回転体の外周振れの現実振幅に対する最大許容量(10μm)の比率である最大許容振幅比率以下となるようにすればよい。本発明では、第1被駆動伝達用回転体及び第2被駆動伝達用回転体として同一の回転体を用いているので、現実振幅比率は1である。したがって、理想振幅比率Yから1を差し引いた値の絶対値が最大許容振幅比率以下となるような理想振幅比率Yが得られるように、潜像担持体の直径R、転写部間距離L、モータ入力角度α及びアイドラ入力角度βを設定する本発明によれば、特定色ズレの最大量を10μm以下とすることができる。
【発明の効果】
【0016】
以上、本発明によれば、装置の小型化等のために、第1潜像担持体及び第2潜像担持体間の転写部間距離がこれらの潜像担持体の周長の整数倍の値から外れるように構成した場合に、従動回転体を介して接続される2つの被駆動伝達用回転体間において生じ得る特定色ズレの量を、これらの被駆動伝達用回転体として同一の回転体を用いた場合でも10μm以下まで軽減することができるという優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施形態に係るプリンタを示す概略構成図である。
【図2】同プリンタのプロセスユニットの1つを示す概略構成図である。
【図3】同プリンタに設けられる3つのカラー感光体の駆動装置を図1とは反対側から見たときの斜視図である。
【図4】回転軸に感光体駆動ギヤが固定されたカラー感光体の斜視図である。
【図5】駆動力伝達部を構成するプリンタ本体側駆動力伝達部を示す斜視図である。
【図6】駆動力伝達部を構成する感光体側駆動力伝達部を示す斜視図である。
【図7】露光部と転写部との距離と転写位置ずれ(色ズレ)との関係について説明するための説明図である。
【図8】3つのカラー感光体の回転軸方向から見たときの各感光体駆動ギヤ、モータギヤ及びアイドラギヤの配置を示す正面図である。
【図9】3つの感光体駆動ギヤに対するモータギヤ及びアイドラギヤの相対的な配置関係を示す模式図である。
【図10】モータギヤに直接接続されている2つの感光体駆動ギヤ間における、感光体駆動ギヤの偏心に起因した外周振れの位相関係を示す説明図である。
【図11】アイドラギヤに直接接続されている2つの感光体駆動ギヤ間における、感光体駆動ギヤの偏心成分の位相関係を示す説明図である。
【図12】Y用感光体駆動ギヤの合成偏心成分とM用感光体駆動ギヤの偏心成分との位相関係を示す説明図である。
【図13】M用感光体駆動ギヤの偏心成分と、アイドラギヤを介してY用感光体駆動ギヤに伝達されるM用感光体駆動ギヤの偏心成分との位置関係を示す説明図である。
【図14】M用感光体駆動ギヤに対するY用感光体駆動ギヤの相対的な回転位置(組み付け位置)を示す説明図である。
【図15】M用感光体駆動ギヤの偏心成分の現実振幅に対する特定色ズレを理論上ゼロにし得るY用感光体駆動ギヤの偏心成分の理想振幅の比率を示す理想振幅比率と、これらの転写部間距離/感光体周長との関係を示すグラフである。
【図16】実施形態で用いることが可能な位相調整手段の一例を示す説明図である。
【図17】実施形態で用いることが可能な位相調整手段の他の例を示す説明図である。
【図18】実施形態で用いることが可能な位相調整手段の更に他の例を示す説明図である。
【図19】同位相調整手段の使用例を説明するための説明図である。
【図20】変形例における3つの感光体駆動ギヤに対するモータギヤ及びアイドラギヤの相対的な配置関係を示す模式図である。
【図21】変形例において、モータギヤに直接接続されている2つの感光体駆動ギヤ間における感光体駆動ギヤの偏心に起因した外周振れの位相関係を示す説明図である。
【図22】変形例において、アイドラギヤに直接接続されている2つの感光体駆動ギヤ間における感光体駆動ギヤの偏心成分の位相関係を示す説明図である。
【図23】変形例において、Y用感光体駆動ギヤの合成偏心成分とM用感光体駆動ギヤの偏心成分との位相関係を示す説明図である。
【図24】変形例において、M用感光体駆動ギヤの偏心成分と、アイドラギヤを介してY用感光体駆動ギヤに伝達されるM用感光体駆動ギヤの偏心成分との位置関係を示す説明図である。
【図25】変形例において、M用感光体駆動ギヤの偏心成分の現実振幅に対する特定色ズレを理論上ゼロにし得るY用感光体駆動ギヤの偏心成分の理想振幅の比率を示す理想振幅比率と、これらの転写部間距離/感光体周長との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を適用した画像形成装置として、電子写真方式のプリンタ(以下、単に「プリンタ」という。)の一実施形態について説明する。
図1は、実施形態に係るプリンタを示す概略構成図である。
同図において、実施形態に係るプリンタは、イエロー,マゼンタ,シアン,ブラック(以下、それぞれY,M,C,Kと記す。)のトナー像(可視像)を生成するための4つのプロセスユニット6Y,6M,6C,6Kを備えている。これらは、画像形成物質として、Y、M、C、Kトナーを用いるが、それ以外は同様の構成になっており、寿命到達時に交換される。Yトナー像を生成するためのプロセスユニット6Yを例にすると、図2に示すように、潜像担持体であるドラム状の感光体1Y、ドラムクリーニング装置2Y、除電装置(不図示)、帯電装置4Y、現像器5Y等を備えている。画像形成ユニットたるプロセスユニット6Yは、プリンタ本体に脱着可能であり、一度に消耗部品を交換できるようになっている。
【0019】
帯電装置4Yは、図示しない駆動手段によって図中時計回りに回転せしめられる感光体1Yの表面を一様帯電せしめる。感光体1Yの一様帯電せしめられた表面は、レーザ光Lによって露光走査されてY用の静電潜像を担持する。このYの静電潜像は、Yトナーと磁性キャリアとを含有するY現像剤を用いる現像器5YによってYトナー像に現像される。そして、後述する被転写体としての中間転写ベルト8上に中間転写される。ドラムクリーニング装置2Yは、中間転写工程を経た後の感光体1Y表面に残留したトナーを除去する。また、上記除電装置は、クリーニング後の感光体1Yの残留電荷を除電する。この除電により、感光体1Yの表面が初期化されて次の画像形成に備えられる。他色のプロセスユニット6M,6C,6Kにおいても、同様にして感光体1M,1C,1K上にそれぞれM、C、Kトナー像が形成されて、中間転写ベルト8上に中間転写される。
【0020】
現像器5Yは、そのケーシングの開口から一部露出させるように配設された現像ロール51Yを有している。また、互いに平行配設された2つの搬送スクリュー55Y、ドクターブレード52Y、トナー濃度センサ(以下「Tセンサ」という。)56Yなども有している。
【0021】
現像器5Yのケーシング内には、磁性キャリアとYトナーとを含む図示しないY現像剤が収容されている。このY現像剤は2つの搬送スクリュー55Yによって撹拌搬送されながら摩擦帯電せしめられた後、上記現像ロール51Yの表面に担持される。そして、ドクターブレード52Yによってその層厚が規制されてからY用の感光体1Yに対向する現像領域に搬送され、ここで感光体1Y上の静電潜像にYトナーを付着させる。この付着により、感光体1Y上にYトナー像が形成される。現像器5Yにおいて、現像によってYトナーを消費したY現像剤は、現像ロール51Yの回転に伴ってケーシング内に戻される。
【0022】
2つの搬送スクリュー55Yの間には仕切壁が設けられている。この仕切壁により、現像ロール51Yや図中右側の搬送スクリュー55Y等を収容する第1供給部53Yと、図中左側の搬送スクリュー55Yを収容する第2供給部54Yとがケーシング内で分かれている。図中右側の搬送スクリュー55Yは、図示しない駆動手段によって回転駆動せしめられ、第1供給部53Y内のY現像剤を図中手前側から奥側へと搬送しながら現像ロール51Yに供給する。図中右側の搬送スクリュー55Yによって第1供給部53Yの端部付近まで搬送されたY現像剤は、上記仕切壁に設けられた図示しない開口部を通って第2供給部54Y内に進入する。第2供給部54Y内において、図中左側の搬送スクリュー55Yは、図示しない駆動手段によって回転駆動せしめられ、第1供給部53Yから送られてくるY現像剤を図中右側の搬送スクリュー55Yとは逆方向に搬送する。図中左側の搬送スクリュー55Yによって第2供給部54Yの端部付近まで搬送されたY現像剤は、上記仕切壁に設けられたもう一方の開口部(図示せず)を通って第1供給部53Y内に戻る。
【0023】
透磁率センサからなる上述のTセンサ56Yは、第2供給部54Yの底壁に設けられ、その上を通過するY現像剤の透磁率に応じた値の電圧を出力する。トナーと磁性キャリアとを含有する二成分現像剤の透磁率は、トナー濃度と良好な相関を示すため、Tセンサ56YはYトナー濃度に応じた値の電圧を出力することになる。この出力電圧の値は、図示しない制御部に送られる。この制御部は、Tセンサ56Yからの出力電圧の目標値であるY用Vtrefを格納したRAMを備えている。このRAM内には、他の現像器に搭載された図示しないTセンサからの出力電圧の目標値であるM用Vtref、C用Vtref、K用Vtrefのデータも格納されている。Y用Vtrefは、後述するY用のトナー搬送装置の駆動制御に用いられる。具体的には、上記制御部は、Tセンサ56Yからの出力電圧の値をY用Vtrefに近づけるように、図示しないY用のトナー搬送装置を駆動制御して第2供給部54Y内にYトナーを補給させる。この補給により、現像器5Y内のY現像剤中のYトナー濃度が所定の範囲内に維持される。他のプロセスユニットの現像器についても、M,C,K用のトナー搬送装置を用いた同様のトナー補給制御が実施される。
【0024】
先に示した図1において、プロセスユニット6Y,6M,6C,6Kの図中下方には、潜像形成手段としての光書込ユニット7が配設されている。光書込ユニット7は、画像情報に基づいて発したレーザ光Lにより、プロセスユニット6Y,6M,6C,6Kにおけるそれぞれの感光体を走査する。この走査により、感光体1Y,1M,1C,1K上にY、M、C、K用の静電潜像が形成される。なお、光書込ユニット7は、光源から発したレーザ光Lを、モータによって回転駆動されるポリゴンミラー上での反射によって主走査方向に偏向せしめながら、複数の光学レンズやミラーを介して感光体に照射するものである。
【0025】
光書込ユニット7の図中下側には、給紙カセット26、これらに組み込まれた給紙ローラ27など有する紙収容手段が配設されている。給紙カセット26は、シート状の記録材である転写紙Pを複数枚重ねて収納しており、それぞれの一番上の転写紙Pには給紙ローラ27を当接させている。給紙ローラ27が図示しない駆動手段によって図中反時計回りに回転せしめられると、一番上の転写紙Pが給紙路70に向けて送り出される。
【0026】
この給紙路70の末端付近には、レジストローラ対28が配設されている。レジストローラ対28は、転写紙Pを挟み込むべく両ローラを回転させるが、挟み込んですぐに回転を一旦停止させる。そして、転写紙Pを適切なタイミングで後述の2次転写ニップに向けて送り出す。
【0027】
プロセスユニット6Y,6M,6C,6Kの図中上方には、被転写体である中間転写体としての中間転写ベルト8を張架しながら無端移動せしめる転写ユニット15が配設されている。この転写ユニット15は、中間転写ベルト8の他、2次転写バイアスローラ19、クリーニング装置10などを備えている。また、4つの1次転写バイアスローラ9Y,9M,9C,9K、駆動ローラ12、クリーニングバックアップローラ13、テンションローラ14なども備えている。中間転写ベルト8は、これら7つのローラに張架されながら、駆動ローラ12の回転駆動によって図中反時計回りに無端移動せしめられる。1次転写バイアスローラ9Y,M,C,Kは、このように無端移動せしめられる中間転写ベルト8を感光体1Y,1M,1C,1Kとの間に挟み込んでそれぞれ1次転写ニップを形成している。これらは中間転写ベルト8の裏面(ループ内周面)にトナーとは逆極性(例えばプラス極性)の転写バイアスを印加する方式のものである。1次転写バイアスローラ9Y,9M,9C,9Kを除くローラは、すべて電気的に接地されている。中間転写ベルト8は、その無端移動に伴ってY、M、C、K用の1次転写ニップを順次通過していく過程で、感光体1Y,1M,1C,1K上のY、M、C、Kトナー像が重ね合わせて1次転写される。これにより、中間転写ベルト8上に4色重ね合わせトナー像(以下「4色トナー像」という。)が形成される。
【0028】
上記駆動ローラ12は、2次転写ローラ19との間に中間転写ベルト8を挟み込んで2次転写ニップを形成している。中間転写ベルト8上に形成された可視像たる4色トナー像は、この2次転写ニップで転写紙Pに転写される。そして、転写紙Pの白色と相まって、フルカラートナー像となる。2次転写ニップを通過した後の中間転写ベルト8には、転写紙Pに転写されなかった転写残トナーが付着している。これは、クリーニング装置10によってクリーニングされる。2次転写ニップで4色トナー像が一括2次転写された転写紙Pは、転写後搬送路71を経由して定着装置20に送られる。
【0029】
定着装置20は、内部にハロゲンランプ等の発熱源を有する定着ローラ20aと、これに所定の圧力で当接しながら回転する加圧ローラ20bとによって定着ニップを形成している。定着装置20内に送り込まれた転写紙Pは、その未定着トナー像担持面を定着ローラ20aに密着させるようにして、定着ニップに挟まれる。そして、加熱や加圧の影響によってトナー像中のトナーが軟化さしめられて、フルカラー画像が定着せしめられる。
【0030】
定着装置20内でフルカラー画像が定着せしめられた転写紙Pは、定着装置20を出た後、排紙路72と反転前搬送路73との分岐点にさしかかる。この分岐点には、第1切替爪75が揺動可能に配設されており、その揺動によって転写紙Pの進路を切り替える。具体的には、爪の先端を反転前送路73に近づける方向に動かすことにより、転写紙Pの進路を排紙路72に向かう方向にする。また、爪の先端を反転前搬送路73から遠ざける方向に動かすことにより、転写紙Pの進路を反転前搬送路73に向かう方向にする。
【0031】
第1切替爪75によって排紙路72に向かう進路が選択されている場合には、転写紙Pは、排紙路72から排紙ローラ対100を経由した後、機外へと配設されて、プリンタ筺体の上面に設けられたスタック50a上にスタックされる。これに対し、第1切替爪75によって反転前搬送路73に向かう進路が選択されている場合には、転写紙Pは反転前搬送路73を経て、反転ローラ対21のニップに進入する。反転ローラ対21は、ローラ間に挟み込んだ転写紙Pをスタック部50aに向けて搬送するが、転写紙Pの後端をニップに進入させる直前で、ローラを逆回転させる。この逆転により、転写紙Pがそれまでとは逆方向に搬送されるようになり、転写紙Pの後端側が反転搬送路74内に進入する。
【0032】
反転搬送路74は、鉛直方向上側から下側に向けて湾曲しながら延在する形状になっており、路内に第1反転搬送ローラ対22、第2反転搬送ローラ対23、第3反転搬送ローラ対24を有している。転写紙Pは、これらローラ対のニップを順次通過しながら搬送されることで、その上下を反転させる。上下反転後の転写紙Pは、上述の給紙路70に戻された後、再び2次転写ニップに至る。そして、今度は、画像非担持面を中間転写ベルト8に密着させながら2次転写ニップに進入して、その画像非担持面に中間転写ベルトの第2の4色トナー像が一括2次転写される。この後、転写後搬送路71、定着装置20、排紙路72、排紙ローラ対100を経由して、機外のスタック部50a上にスタックされる。このような反転搬送により、転写紙Pの両面にフルカラー画像が形成される。
【0033】
上記転写ユニット15と、これよりも上方にあるスタック部50aとの間には、ボトル支持部31が配設されている。このボトル支持部31は、Y、M、C、Kトナーを収容するトナー収容部たるトナーボトル32Y,32M,32C,32Kを搭載している。トナーボトル32Y,32M,32C,32Kは、互いに水平よりも少し傾斜した角度で並ぶように配設され、Y、M、C、Kという順で配設位置が高くなっている。トナーボトル32Y,32M,32C,32K内のY、M、C、Kトナーは、それぞれ後述するトナー搬送装置により、プロセスユニット6Y,6M,6C,6Kの現像器に適宜補給される。これらのトナーボトル32Y,32M,32C,32Kは、プロセスユニット6Y,6M,6C,6Kとは独立してプリンタ本体に脱着可能である。
【0034】
本プリンタは、モノクロモードのプリントジョブでは、4つの感光体1Y,1M,1C,1Kのうち、K用の感光体1Kだけを駆動する。このとき、転写ユニット15の姿勢の調整により、中間転写ベルト8を4つの感光体1Y,1M,1C,1KのうちK用の感光体1Kだけに接触させる。一方、カラーモードのプリントジョブでは、4つの感光体1Y,1M,1C,1Kのすべてを駆動する。このとき、転写ユニット15の姿勢の調整により、中間転写ベルト8を4つの感光体1Y,1M,1C,1Kのすべてに接触させる。
【0035】
以下、本発明の特徴部分である、カラー感光体1Y,1M,1Cの駆動装置について説明する。
図3は、カラー感光体1Y,1M,1Cの駆動装置を図1とは反対側から見たときの斜視図である。
駆動装置80には、主に、駆動源であるモータ81と、このモータ81からそれぞれの感光体1Y,1M,1Cまで回転駆動力を伝達するための後述する駆動力伝達部と、これらを保持するための保持部材82a,82bとから構成されている。
【0036】
図4は、回転軸に感光体駆動ギヤ83Y,83M,83Cが固定された感光体1Y,1M,1Cの斜視図である。
図5は、駆動力伝達部を構成するプリンタ本体側駆動力伝達部を示す斜視図である。
図6は、駆動力伝達部を構成する感光体側駆動力伝達部を示す斜視図である。
駆動力伝達部は、主に、感光体1Y,1M,1Cの回転軸上に設けられた被駆動連結部84Y,84M,84Cと、この被駆動連結部84Y,84M,84Cに固定される感光体駆動ギヤ83Y,83M,83Cと、モータ81のモータ軸上に固定されたモータギヤ85と、アイドラギヤ86とから構成される。本実施形態において、感光体駆動ギヤ83Y,83M,83Cは同一のものである。感光体1Y,1M,1Cの回転軸上の被駆動連結部84Y,84M,84Cは、感光体駆動ギヤ83Y,83M,83Cの回転軸上の駆動連結部87Y,87M,87Cと同軸上で連結する。これにより、感光体1Y,1M,1Cは、それぞれの感光体駆動ギヤ83Y,83M,83Cと一体的に回転する。なお、感光体1Y,1M,1Cの回転軸上に設けられた被駆動連結部84Y,84M,84Cと感光体駆動ギヤ83Y,83M,83Cとは一体形成されたものでも、本実施形態のように別体形成されたものでもよい。
【0037】
ここで、図7を用いて、潜像形成箇所である露光部と転写部との距離と、転写位置ずれ(色ズレ)との関係について、Yトナー像を生成するための感光体1Yを例に挙げて説明しておく。
感光体1Yの回転角速度が何らかの要因で変動すると、その回転角速度が速い時に露光部で形成される静電潜像部分における感光体上の位置は、本来よりも感光体表面移動方向下流側にズレた位置となる。また、感光体1Yの回転角速度が速い時に転写部で転写されるトナー像部分における中間転写ベルト8上の位置は、本来よりも中間転写ベルト表面移動方向上流側にズレた位置となる。逆に、感光体1Yの回転角速度が遅い時に露光部で形成される静電潜像部分における感光体上の位置は、本来よりも感光体表面移動方向上流側にズレた位置となり、感光体1Yの回転角速度が遅い時に転写部で転写されるトナー像部分における中間転写ベルト8上の位置は、本来よりも中間転写ベルト表面移動方向下流側にズレた位置となる。
【0038】
しかしながら、感光体1Yの回転角速度に変動が生じている場合であっても、感光体上の特定地点についての露光時の回転角速度と転写時の回転角速度との間に差が発生しない場合には、中間転写ベルト8上においてトナー像は本来の位置に転写される。これは、例えば、感光体1Yの回転角速度が速い時に露光された静電潜像部分は、上述したように感光体表面移動方向下流側にズレた位置に形成されるが、この静電潜像部分に対応するトナー像部分が転写部で転写される時の回転角速度も同様に速い(同じ速度である)場合には、そのトナー像部分が上述したように本来よりも中間転写ベルト表面移動方向上流側にズレた位置に転写される結果、露光時のズレと転写時のズレが互いに相殺されるからである。したがって、このように露光時と転写時との間で回転角速度差が生じないような回転角速度変動であれば、感光体間における色ズレを生じさせることはない。
【0039】
次に、本実施形態におけるカラー感光体1Y,1M,1Cについてのギヤ構成について説明する。
図8は、カラー感光体1Y,1M,1Cの回転軸方向から見たときの感光体駆動ギヤ83Y,83M,83C、モータギヤ85及びアイドラギヤ86の配置を示す正面図である。
図9は、感光体駆動ギヤ83Y,83M,83Cに対するモータギヤ85及びアイドラギヤ86の相対的な配置関係を示す模式図である。
本実施形態において、モータ81に接続された駆動伝達用回転体であるモータギヤ85は、第2被駆動伝達用回転体としてのM用感光体駆動ギヤ83Mと、第3被駆動伝達用回転体としてのY用感光体駆動ギヤ83Yとに直接接続されている。また、従動回転体としてのアイドラギヤ86は、第1被駆動伝達用回転体としてのC用感光体駆動ギヤ83CとM用感光体駆動ギヤ83Mとに直接接続されている。これにより、モータギヤ85から伝達されるモータ81の回転駆動力により、第1潜像担持体としてのC用感光体1C及び第2潜像担持体としてのM用感光体1Mを含む3つの感光体1Y,1M,1Cを駆動することができる。
【0040】
図9に示すように、本実施形態においては、アイドラギヤ86の回転軸方向から見た場合に、アイドラギヤ86の回転中心がC用感光体駆動ギヤ83Cの回転中心とM用感光体駆動ギヤ83Mの回転中心とを結んだ第1の仮想直線D1よりもM用感光体駆動ギヤ83Mの回転方向上流側となるように、アイドラギヤ86が配置されている。
なお、本実施形態において、上記第1の仮想直線D1と、C用感光体駆動ギヤ83Cの回転中心とアイドラギヤ86の回転中心とを結んだ第3の仮想直線D3とのなす角度(アイドラ入力角度)を、C用感光体駆動ギヤ83Cの回転方向(図9中時計回り方向)を正として、βと規定している。したがって、本実施形態において、アイドラ入力角度βは正の値をとる。
【0041】
また、図9に示すように、本実施形態においては、モータギヤ85の回転軸方向から見た場合に、モータギヤ85の回転中心が上記第1の仮想直線D1よりもM用感光体駆動ギヤ83Mの回転方向下流側となるように、モータギヤ85が配置されている。
なお、本実施形態において、上記第1の仮想直線D1と、M用感光体駆動ギヤ83Mの回転中心とモータギヤ85の回転中心とを結んだ第2の仮想直線D2とのなす角度(モータ入力角度)を、M用感光体駆動ギヤ83Mの回転方向(図9中時計回り方向)を正として、αと規定している。したがって、本実施形態において、モータ入力角度αは正の値をとる。
【0042】
図10は、モータギヤ85に直接接続されている2つの感光体駆動ギヤ83M,83Y間における、感光体駆動ギヤの偏心に起因した外周振れの位相関係を示す説明図である。
図中符号E,Eで示すものは、それぞれの感光体駆動ギヤ83M,83Yの偏心による外周振れ(以下「偏心成分」という。)を表すベクトルであり、それぞれの感光体駆動ギヤ83M,83Yの偏心による外周振れが最大となる半径方向(半径が最も長い半径方向)を位相基準としている。したがって、図中符号E,Eで示すベクトルの向きは基準位相を示している。また、図中符号E,Eで示すベクトルの大きさは、その方向における偏心量に応じた外周振れの大きさを示すものである。したがって、図中符号E,Eで示すベクトルの大きさは、その偏心位相の現実振幅を示している。ただし、図示のベクトルの向きや大きさは仮定のものであり、本実施形態における構成と正確に対応したものではない。以下に述べるベクトルについても同様である。
【0043】
これらの感光体駆動ギヤ83M,83Yが設けられている2つの感光体1M,1Yとの間における色ズレ量をゼロにするには、一方の感光体1Mの転写部を中間転写ベルト8上の特定地点(中間転写ベルト表面移動方向における任意の地点)が通過する時点における感光体駆動ギヤ83Mの偏心成分Eの位相と、他方の感光体1Yの転写部をその特定地点が通過する時点における感光体駆動ギヤ83Yの偏心成分Eの位相とが互いに一致するように調整すればよい。
【0044】
各感光体駆動ギヤ83M,83Yは、それぞれの偏心成分E,Eの基準位相がモータギヤ85の方向を向いたときに、その回転角速度が最も小さくなる。よって、中間転写ベルト表面移動方向下流側に位置するM用感光体1Mの感光体駆動ギヤ83Mの偏心成分Eの基準位相がモータギヤ85の方向を向いた時点を基準に考えると、Y用感光体駆動ギヤ83Yは、その偏心成分Eの基準位相がモータギヤ85の方向を向く回転位置から更に下記の式(7)により算出されるX°だけ回転させた方向に向くように調整すればよい。
【数5】

ただし、上記式(7)において、「st_num」は、Y用感光体駆動ギヤ83Yが色ズレの基準となる感光体(本実施形態ではM用感光体1M)から何個目の感光体かを示すもので、ここでは1である。
また、上記式(7)中、「L」は2つの感光体1M,1Yの転写部間距離であり、「R]は2つの感光体1M,1Yの直径である。
なお、本実施形態では、少なくともカラー感光体1Y,1M,1C間において、それぞれの転写部間距離はいずれのLであり、同一の感光体が用いられているのでいずれの直径もRである。
【0045】
図11は、アイドラギヤ86に直接接続されている2つの感光体駆動ギヤ83C,83M間における、感光体駆動ギヤの偏心成分の位相関係を示す説明図である。
図中符号Eで示すものは、感光体駆動ギヤ83Cの偏心による外周振れすなわち感光体駆動ギヤ83Cの偏心成分を表すベクトルであり、感光体駆動ギヤ83Cの偏心による外周振れが最大となる半径方向(半径が最も長い半径方向)を位相基準としている。したがって、図中符号Eで示すベクトルの向きは基準位相を示している。また、図中符号Eで示すベクトルの大きさは、その方向における偏心量に応じた外周振れの大きさを示すものである。したがって、図中符号Eで示すベクトルの大きさは、その偏心成分の現実振幅を示している。
【0046】
上述したように、モータギヤ85から回転駆動力が直接伝達される感光体駆動ギヤ83M,83Yに設けられた感光体1M,1Yにおいて、それぞれの感光体線速の変動成分に影響を与える感光体駆動ギヤの偏心は、それぞれの感光体駆動ギヤ83M,83Yの偏心のみである。これに対し、アイドラギヤ86から回転駆動力が伝達されるC用感光体駆動ギヤ83Cに設けられた感光体1Cにおいて、その感光体線速の変動成分に影響を与える感光体駆動ギヤの偏心は、これに設けられるC用感光体駆動ギヤ83Cの偏心だけでなく、アイドラギヤ86を介して伝達されるM用感光体駆動ギヤ83Mの偏心も含まれる。すなわち、C用感光体駆動ギヤ83Cの回転角速度には、2つの感光体駆動ギヤ83C,83Mの偏心成分の合成波による変動成分が含まれ、その結果、C用感光体1Cの線速には、この合成波による変動成分が線速変動成分として表れる。
【0047】
図11では、アイドラギヤ86を介して伝達されるM用感光体駆動ギヤ83Mの偏心成分を符号E’で示し、この偏心成分E’とC用感光体駆動ギヤ83Cの偏心成分Eとの合成波(以下「合成偏心成分」という。)をE’で示している。したがって、C用感光体駆動ギヤ83Cは、合成偏心成分E’の基準位相がアイドラギヤ86の方向を向いたときに、その回転角速度が最も小さくなる。よって、図12に示すように、M用感光体1Mの感光体駆動ギヤ83Mの偏心成分Eの基準位相がモータギヤ85の方向を向いた時点を基準に考えると、C用感光体駆動ギヤ83Cは、合成偏心成分E’の基準位相がアイドラギヤ86の方向を向いた回転位置から更に上記式(7)により算出されるX°だけ回転させた方向に向くように調整すれば、カラー感光体1Y,1M,1C間において、最も縮んだ形状となっているトナー像同士あるいは最も伸びた形状となっているトナー像同士が中間転写ベルト8上の同一地点に転写されるようになる。
【0048】
図13は、M用感光体駆動ギヤ83Mの偏心成分Eと、アイドラギヤ86を介してC用感光体駆動ギヤ83Cに伝達されるM用感光体駆動ギヤ83Mの偏心成分E’との位置関係を示す説明図である。
M用感光体駆動ギヤ83Mの回転角速度が最も遅くなるのは、すなわち、M用感光体1Mの回転角速度が最も遅くなるのは、上述したように、M用感光体駆動ギヤ83Mの偏心成分Eの基準位相がモータギヤ85の方向を向いた時である(図13中符号E1で示す方向)。また、M用感光体駆動ギヤ83Mの回転角速度がアイドラギヤ86へ最も遅く伝達されるのは、M用感光体駆動ギヤ83Mの偏心成分Eの基準位相がアイドラギヤ86の方向とは180°反対側を向いた時である(図13中符号E2で示す方向)。これより、アイドラギヤ86の回転角速度が最も遅くなるのは、符号E1で示す方向と符号E2で示す方向との中間に位置する方向にM用感光体駆動ギヤ83Mの偏心成分Eの基準位相が向いた時となる。この時、アイドラギヤ86の回転角速度が最も遅いということは、C用感光体駆動ギヤ83Cの線速が最も遅いということになる。したがって、この時に、アイドラギヤ86を介してC用感光体駆動ギヤ83Cに伝達されるM用感光体駆動ギヤ83Mの偏心成分E’の基準位相は、アイドラギヤ86の方向を向くことになる。
【0049】
以上より、アイドラギヤ86の回転角速度が最も遅い時の回転角度θは、下記の式(8)により表現できる。また、M用感光体駆動ギヤ83Mの偏心成分Eの振幅がC用感光体駆動ギヤ83Cに伝わるときの振幅増幅率Zは、下記の式(9)により定義される。
【数6】

【数7】

ただし、「A」はM用感光体駆動ギヤ83Mの偏心振幅であり、θ=180−αであり、θ=−βである。
【0050】
図14は、M用感光体駆動ギヤ83Mに対するC用感光体駆動ギヤ83Cの相対的な回転位置(組み付け位置)を示す説明図である。
M用感光体駆動ギヤ83Mの偏心成分Eを下記の式(10)により定義すると、C用感光体駆動ギヤ83C上における合成偏心成分E’は下記の式(11)により表され、アイドラギヤ86からC用感光体駆動ギヤ83Cに伝わるM用感光体駆動ギヤ83Mの偏心成分E’は、下記の式(12)により表される。
【数8】

【数9】

【数10】

【0051】
C用感光体駆動ギヤ83Cの偏心成分Eは、合成偏心成分E’からアイドラギヤ86を介して伝わった偏心成分E’を引いたものであるから、C用感光体駆動ギヤ83Cの偏心成分Eは、下記の式(13)となる。
【数11】


ただし、Eの周期はL/πRである。また、上記式(13)中のA、B及びCは、それぞれ下記の式(14)〜(16)により定義されるものである。
A=cos(−X+α−β)−Z×cos(θ+β−180) ・・・(14)
B=sin(−X+α−β)−Z×sin(θ+β−180) ・・・(15)
【数12】

【0052】
上記式(10)と上記式(13)とを比較すると、上記C用感光体駆動ギヤ83Cの偏心成分Eの振幅(A2+B21/2が1以外の場合には、C用感光体駆動ギヤ83Cの合成偏心成分E’の振幅とM用感光体駆動ギヤ83Mの偏心成分Eの振幅とを一致させることができない。これらの振幅を一致させることができないと、上述したカラー感光体1Y,1M,1C間において、最も縮んだ形状となっているトナー像同士あるいは最も伸びた形状となっているトナー像同士が中間転写ベルト8上の同一地点に転写されるようになっていても、その振幅差に応じた特定色ズレが残ってしまう。
【0053】
C用感光体駆動ギヤ83Cの偏心成分Eの振幅(A2+B21/2を1とする方法としては、C用感光体駆動ギヤ83Cに、M用感光体駆動ギヤ83Mとは異なる偏心量を持った別個のギヤを用いる方法が挙げられる。しかし、この方法では、上述したように製造コストを高騰させるので好ましくない。したがって、別の方法で、この振幅(A2+B21/2を1とすることができれば、あるいは、なるべく1に近付けることができれば、C用感光体駆動ギヤ83C及びM用感光体駆動ギヤ83Mとして同じギヤを用いる構成で、特定色ズレを無くすあるいは軽減することができる。
【0054】
そこで、本実施形態では、カラー感光体1Y,1M,1Cの各感光体駆動ギヤ83Y,83M,83Cとして同じギヤを用いる構成において、次のような構成を採用することで、各感光体駆動ギヤ83Y,83M,83Cの偏心成分E,E,Eによる特定色ズレを無くすあるいは軽減している。なお、モータギヤ85に直接接続されている2つの感光体駆動ギヤ83M,83Y間では特定色ズレが生じないので、アイドラギヤ86に直接接続されている2つの感光体駆動ギヤ83C,83Mの間における特定色ズレを無くすあるいは軽減できれば、カラー感光体1Y,1M,1C間における特定色ズレを無くすあるいは軽減できる。
【0055】
なお、各感光体1Y,1M,1Cの回転角速度には、モータギヤ85やアイドラギヤ86の偏心による外周振れも影響し得るが、この影響は、各感光体1Y,1M,1Cが露光部から転写部まで回転する間に、モータギヤ85やアイドラギヤ86が整数回、回転するように構成することでキャンセルすることができる。このように構成すれば、モータギヤ85やアイドラギヤ86の偏心による外周振れにより感光体の回転角速度(線速)が最も速い時に露光部を通過した地点は、感光体の線速も最も速い時に転写部を通過することになる。したがって、このように構成すれば、露光時の回転角速度と転写時の回転角速度との間に差が発生せず、図7を用いて説明したように、モータギヤ85やアイドラギヤ86の偏心に起因した色ズレは生じない。
【0056】
ここで、モータギヤ85及びアイドラギヤ86が感光体駆動ギヤよりも大きくなることは通常では考えられないので、本実施形態において実質的にとり得るモータ入力角度αは0°以上+60°以下の範囲内であり、アイドラ入力角度βも0°以上+60°以下の範囲内である。
【0057】
図15は、本実施形態の構成において、M用感光体駆動ギヤ83Mの偏心成分Eの現実振幅に対する特定色ズレを理論上ゼロにし得るC用感光体駆動ギヤ83Cの偏心成分Eの理想振幅の比率を示す理想振幅比率Yと、これらの転写部間距離L/感光体周長πRとの関係を示すグラフである。このグラフのY軸は、M用感光体駆動ギヤ83Mの偏心成分Eの振幅に対するC用感光体駆動ギヤ83Cの偏心成分Eの振幅の比率である。
【0058】
図15に描かれているグラフF1は、モータ入力角度αが10°でアイドラ入力角度βが40°であるときに、転写部間距離L/感光体周長πRを振ることにより描かれる理想振幅比率Yの軌跡を示すものである。モータ入力角度αとアイドラ入力角度βの値を変更すると、理想振幅比率Yと転写部間距離L/感光体周長πRとの関係が変化するが、いずれの場合も、必ず、偏心成分Eの振幅に対する偏心成分Eの振幅の比率が1であって、かつ、転写部間距離L/感光体周長πRも自然数である地点を通る。これは、C用感光体駆動ギヤ83C及びM用感光体駆動ギヤ83Mとして同じ偏心成分をもつ同一のギヤを用いても、転写部間距離Lが感光体周長πRの整数倍となるように構成すれば、モータ入力角度αとアイドラ入力角度βがどのような値であっても、特定色ズレを無くすことができることを意味する。しかし、このような構成とすることは、本プリンタの小型化のために、転写部間距離Lを感光体周長πRの整数倍の値よりも小さくしたい、特に転写部間距離Lを感光体周長πRよりも小さくしたい場合が多い。
【0059】
ここで、図15に示したグラフF1は、転写部間距離Lが感光体周長πRの整数倍の値よりも小さいところ、具体的には、転写部間距離L/感光体周長πR=0.8のあたりで、偏心成分Eの振幅に対する偏心成分Eの振幅の比率が1である地点を通過している。本実施形態では、C用感光体駆動ギヤ83C及びM用感光体駆動ギヤ83Mとして同一のギヤを用いているので、偏心成分Eの振幅に対する偏心成分Eの振幅の比率が1である。したがって、グラフF1の例であれば、モータ入力角度αを10°とし、アイドラ入力角度βを40°とし、更に、転写部間距離L/感光体周長πRが、このグラフのY軸(偏心成分Eの振幅に対する偏心成分Eの振幅の比率)が1となるときのX軸の値となるように、転写部間距離L及び感光体周長πRを設定すれば、C用感光体駆動ギヤ83C及びM用感光体駆動ギヤ83Mとして同一のギヤを用いても、転写部間距離Lが感光体周長πRの整数倍の値よりも小さく設定しつつ、特定色ズレを無くすことができる。
【0060】
なお、通常、特定色ズレを完全に無くす必要はなく、特定色ズレが、要求される特定色ズレ量の許容範囲内に収めることができればよい。特定色ズレ量の最大許容量は、近年の高画質化の要求により、10μm程度に設定されることが想定される。よって、本実施形態では、理想振幅比率Yから1を差し引いた値の絶対値が、M用感光体駆動ギヤ83Mの偏心成分Eの現実振幅に対する当該最大許容量である10μmの比率を示す最大許容振幅比率以下となるように、感光体1Y,1M,1Cの直径R、転写部間距離L、モータ入力角度α及びアイドラ入力角度βを設定している。
【0061】
仮に、M用感光体駆動ギヤ83Mの偏心成分Eの現実振幅が15μmであったとすると、最大許容振幅比率はおよそ0.7となる。この場合、理想振幅比率Yが0.3〜1.7の範囲内となるように感光体1Y,1M,1Cの直径R、転写部間距離L、モータ入力角度α及びアイドラ入力角度βを設定することで、C用感光体駆動ギヤ83C及びM用感光体駆動ギヤ83Mとして同一のギヤを用いても、転写部間距離Lが感光体周長πRの整数倍の値よりも小さく設定しつつ、特定色ズレ量を10μm以下に抑えることができる。
【0062】
次に、各感光体駆動ギヤ83Y,83M,83Cの相対的な回転位置(組み付け位置)を調整するための回転位置調整手段である位相調整手段の一例について説明する。
図16は、本実施形態で用いることが可能な位相調整手段の一例を示す説明図である。
この位相調整手段は、感光体駆動ギヤ83Y,83M,83Cとして用いられるギヤの軸方向端面上に、位相合わせ基準となる印(マーク)88が形成されている。このマーク88は、感光体駆動ギヤ83Y,83M,83Cの回転に伴ってギヤ軸を中心に周回移動する位置に設けられている。一方、保持部材82a側には、それぞれの感光体駆動ギヤ83Y,83M,83Cの回転位置が上述したように調整されたときにマーク88と対向する部分(最も近接する部分)に、それぞれマーク89Y,89M,89Cが形成されている。したがって、これらの感光体駆動ギヤ83Y,83M,83Cを組み付ける際に、マーク88がそれぞれマーク89Y,89M,89Cに対向するように回転位置を調整して組み付けるだけで、感光体駆動ギヤ83Y,83M,83Cの回転位置を上述したように調整することができ、感光体駆動ギヤ83Y,83M,83Cの偏心に起因した色ズレ(特定色ズレを含む。)を解消又は低減することができる。
【0063】
図17は、本実施形態で用いることが可能な位相調整手段の他の例を示す説明図である。
図16に示した位相調整手段では、保持部材82a側に設けるマーク89Y,89M,89Cの位置が制限されてしまい、そのマーク89Y,89M,89Cが他の部品などに隠れて組み付け作業員に見えにくいものとなったり、マーク89Y,89M,89Cを形成すること自体が困難となる場合がある。
図17に示す位相調整手段は、感光体駆動ギヤ83Y,83M,83Cとして用いられるギヤの軸方向端面上に、各感光体駆動ギヤ83Y,83M,83Cに対応した3つの位相合わせ基準用マークR,C,Lが形成されている。各マークR,C,Lは、回転位置が調整された後において、Y用感光体駆動ギヤ83Y上のマークR、M用感光体駆動ギヤ83M上のマークC、C用感光体駆動ギヤ83C上のマークLが、いずれも同じ回転位置(例えば図示の例では図中下側の位置)となるギヤの軸方向端面上の位置に形成されている。したがって、これらの感光体駆動ギヤ83Y,83M,83Cを組み付ける際に、対応するマークR,C,Lが同じ回転位置となるように各感光体駆動ギヤ83Y,83M,83Cの回転位置を調整して組み付けるだけで、感光体駆動ギヤ83Y,83M,83Cの回転位置を上述したように調整することができ、感光体駆動ギヤ83Y,83M,83Cの偏心に起因した色ズレ(特定色ズレを含む。)を解消又は低減することができる。
【0064】
図18は、本実施形態で用いることが可能な位相調整手段の更に他の例を示す説明図である。
この例は、図17に示した例と同様に、感光体駆動ギヤ83Y,83M,83Cとして用いられるギヤの軸方向端面上に、各感光体駆動ギヤ83Y,83M,83Cに対応した3つの位相合わせ基準用マークR,C,Lが形成されている。また、保持部材82a側には、それぞれの感光体駆動ギヤ83Y,83M,83Cの回転位置が上述したように調整されたときに、対応するマークR,C,Lと対向する部分(最も近接する部分)に、それぞれ同一のマークR,C,Lが形成されている。したがって、これらの感光体駆動ギヤ83Y,83M,83Cを組み付ける際、Y用感光体駆動ギヤ83YについてはR同士、M用感光体駆動ギヤ83MについてはC同士、C用感光体駆動ギヤ83CについてはL同士がそれぞれ互いに対向するように回転位置を調整して組み付けるだけで、感光体駆動ギヤ83Y,83M,83Cの回転位置を上述したように調整することができ、感光体駆動ギヤ83Y,83M,83Cの偏心に起因した色ズレ(特定色ズレを含む。)を解消又は低減することができる。
【0065】
また、この例によれば、保持部材82a側のマークR,C,Lのいずれか(例えばY用感光体駆動ギヤ83Yのマーク)の位置を移動させたい場合、図19に示すように、例えばY用感光体駆動ギヤ83Yに対応するマークとC用感光体駆動ギヤ83Cに対応するマークとを入れ替える。そして、保持部材82a側には、それぞれの感光体駆動ギヤ83Y,83M,83Cの回転位置が上述したように調整されたときに、入れ替え後の対応するマークL,C,Rと対向する部分(最も近接する部分)に、それぞれ同一のマークL,C,Rを形成する。これにより、感光体駆動ギヤ83Y,83M,83Cの回転位置関係は図18に示したものと同じまま、保持部材82a側のマーク位置を変更することができず。つまり、ギヤ側のマーク位置を変更することにより、保持部材82a側のマーク位置を自由に変更することができる。よって、ギヤ側のマークや保持部材82a側のマークが他の部品に隠れることなくマークを配置することが可能となる。
【0066】
〔変形例〕
次に、上記実施形態におけるカラー感光体1Y,1M,1Cの駆動装置の変形例について説明する。
図20は、本変形例における感光体駆動ギヤ83Y,83M,83Cに対するモータギヤ85及びアイドラギヤ86の相対的な配置関係を示す模式図である。
本変形例では、モータギヤ85の回転軸方向から見た場合に、モータギヤ85の回転中心が第1の仮想直線D1よりもM用感光体駆動ギヤ83Mの回転方向上流側となるように、モータギヤ85が配置されている。よって、第1の仮想直線D1と、M用感光体駆動ギヤ83Mの回転中心とモータギヤ85の回転中心とを結んだ第2の仮想直線D2’とのなす角度(モータ入力角度)αは、上記実施形態と同様にM用感光体駆動ギヤ83Mの回転方向(図9中時計回り方向)を正とすると、負の値をとる。なお、アイドラ入力角度βは、上記実施形態と同じように正の値をとる。なお、その他の構成については、上記実施形態と同じである。
【0067】
図21は、本変形例における、モータギヤ85に直接接続されている2つの感光体駆動ギヤ83M,83Y間における、感光体駆動ギヤの偏心に起因した外周振れの位相関係を示す説明図である。
中間転写ベルト表面移動方向下流側に位置するM用感光体1Mの感光体駆動ギヤ83Mの偏心成分Eの基準位相がモータギヤ85の方向を向いた時点を基準に考えると、Y用感光体駆動ギヤ83Yは、その偏心成分Eの基準位相がモータギヤ85の方向を向く回転位置から更に上記式(7)により算出されるX°だけ回転させた方向に向くように調整すればよい。
【0068】
図22は、本変形例における、アイドラギヤ86に直接接続されている2つの感光体駆動ギヤ83C,83M間における、感光体駆動ギヤの偏心成分の位相関係を示す説明図である。
C用感光体駆動ギヤ83Cは、上述した実施形態と同様、合成偏心成分E’の基準位相がアイドラギヤ86の方向を向いたときに、その回転角速度が最も小さくなる。よって、図23に示すように、M用感光体1Mの感光体駆動ギヤ83Mの偏心成分Eの基準位相がモータギヤ85の方向を向いた時点を基準に考えると、C用感光体駆動ギヤ83Cは、合成偏心成分E’の基準位相がアイドラギヤ86の方向を向いた回転位置から上記式(7)により算出されるX°だけ逆方向に回転させた方向に向くように調整すれば、カラー感光体1Y,1M,1C間において、最も縮んだ形状となっているトナー像同士あるいは最も伸びた形状となっているトナー像同士が中間転写ベルト8上の同一地点に転写されるようになる。
【0069】
図24は、本変形例における、M用感光体駆動ギヤ83Mの偏心成分Eと、アイドラギヤ86を介してC用感光体駆動ギヤ83Cに伝達されるM用感光体駆動ギヤ83Mの偏心成分E’との位置関係を示す説明図である。
本変形例においても、アイドラギヤ86の回転角速度が最も遅くなるのは、符号E1で示す方向と符号E2で示す方向との中間に位置する方向にM用感光体駆動ギヤ83Mの偏心成分Eの基準位相が向いた時となる。この時、アイドラギヤ86の回転角速度が最も遅いということは、C用感光体駆動ギヤ83Cの線速が最も遅いということになる。したがって、この時に、アイドラギヤ86を介してC用感光体駆動ギヤ83Cに伝達されるM用感光体駆動ギヤ83Mの偏心成分E’の基準位相は、アイドラギヤ86の方向を向くことになる。
【0070】
アイドラギヤ86の回転角速度が最も遅い時の回転角度θは、上記実施形態と同様、上記式(8)により表現でき、M用感光体駆動ギヤ83Mの偏心成分Eの振幅がC用感光体駆動ギヤ83Cに伝わるときの振幅増幅率Zも、上記実施形態と同様、上記式(9)により定義される。また、M用感光体駆動ギヤ83Mの偏心成分Eを上記式(10)により定義すると、C用感光体駆動ギヤ83C上における合成偏心成分E’は、上記実施形態と同様、上記式(11)により表され、アイドラギヤ86からC用感光体駆動ギヤ83Cに伝わるM用感光体駆動ギヤ83Mの偏心成分E’も、上記実施形態と同様、上記式(12)により表される。したがって、本変形例においても、上記C用感光体駆動ギヤ83Cの偏心成分Eの振幅(A2+B21/2が1以外の場合には、C用感光体駆動ギヤ83Cの合成偏心成分E’の振幅とM用感光体駆動ギヤ83Mの偏心成分Eの振幅とを一致させることができない。これらの振幅を一致させることができないと、上述したカラー感光体1Y,1M,1C間において、最も縮んだ形状となっているトナー像同士あるいは最も伸びた形状となっているトナー像同士が中間転写ベルト8上の同一地点に転写されるようになっていても、その振幅差に応じた特定色ズレが残ってしまう。
【0071】
本変形例においても、カラー感光体1Y,1M,1Cの各感光体駆動ギヤ83Y,83M,83Cとして同じギヤを用いる構成において、上記実施形態と同様の構成を採用することで、各感光体駆動ギヤ83Y,83M,83Cの偏心成分E,E,Eによる特定色ズレを無くすあるいは軽減している。なお、モータギヤ85及びアイドラギヤ86が感光体駆動ギヤよりも大きくなることは通常では考えられないので、本実施形態において実質的にとり得るモータ入力角度αは0°以上−60°以下の範囲内であり、アイドラ入力角度βも0°以上+60°以下の範囲内である。
【0072】
図25は、本変形例の構成において、M用感光体駆動ギヤ83Mの偏心成分Eの現実振幅に対する特定色ズレを理論上ゼロにし得るC用感光体駆動ギヤ83Cの偏心成分Eの理想振幅の比率を示す理想振幅比率Yと、これらの転写部間距離L/感光体周長πRとの関係を示すグラフである。このグラフのY軸は、M用感光体駆動ギヤ83Mの偏心成分Eの振幅に対するC用感光体駆動ギヤ83Cの偏心成分Eの振幅の比率である。
【0073】
図25に描かれている理想振幅比率の軌跡を示すグラフF2は、モータ入力角度αが−10°でアイドラ入力角度βが40°であるときのものである。ただし、本変形例でも、モータ入力角度αとアイドラ入力角度βの値を変更すると、理想振幅比率Yと転写部間距離L/感光体周長πRとの関係が変化する。ただし、上記のとおり、モータ入力角度αとアイドラ入力角度βの値を変更しても、必ず、偏心成分Eの振幅に対する偏心成分Eの振幅の比率が1であって、かつ、転写部間距離L/感光体周長πRも自然数である地点を通る。これは、C用感光体駆動ギヤ83C及びM用感光体駆動ギヤ83Mとして同じ偏心成分をもつ同一のギヤを用いても、転写部間距離Lが感光体周長πRの整数倍となるように構成すれば、モータ入力角度αとアイドラ入力角度βがどのような値であっても、特定色ズレを無くすことができることを意味する。しかし、このような構成することは、本プリンタの小型化のために、転写部間距離Lを感光体周長πRの整数倍の値よりも小さくしたい、特に転写部間距離Lを感光体周長πRよりも小さくしたい場合が多いので、本変形例でも採用しない。
【0074】
図25に示したグラフF2は、転写部間距離Lが感光体周長πRの整数倍の値よりも小さいところ、具体的には、転写部間距離L/感光体周長πR=0.9のあたりで、偏心成分Eの振幅に対する偏心成分Eの振幅の比率が1である地点を通過している。本変形例では、C用感光体駆動ギヤ83C及びM用感光体駆動ギヤ83Mとして同一のギヤを用いているので、偏心成分Eの振幅に対する偏心成分Eの振幅の比率が1である。したがって、本変形例によれば、モータ入力角度αを−10°とし、アイドラ入力角度βを40°とし、更に、転写部間距離L/感光体周長πRが、このグラフのY軸(偏心成分Eの振幅に対する偏心成分Eの振幅の比率)が1となるときのX軸の値(0.9付近)となるように、転写部間距離L及び感光体周長πRを設定すれば、C用感光体駆動ギヤ83C及びM用感光体駆動ギヤ83Mとして同一のギヤを用いても、転写部間距離Lが感光体周長πRの整数倍の値よりも小さく設定しつつ、特定色ズレを無くすことができる。
【0075】
ここで、上述したように、通常、特定色ズレを完全に無くす必要はないので、本変形例では、理想振幅比率Yから1を差し引いた値の絶対値が、M用感光体駆動ギヤ83Mの偏心成分Eの現実振幅に対する当該最大許容量である10μmの比率を示す最大許容振幅比率以下となるように、感光体1Y,1M,1Cの直径R、転写部間距離L、モータ入力角度α及びアイドラ入力角度βを設定している。仮に、M用感光体駆動ギヤ83Mの偏心成分Eの現実振幅が15μmであったとすると、最大許容振幅比率はおよそ0.7となる。この場合、理想振幅比率Yが0.3〜1.7の範囲内となるように感光体1Y,1M,1Cの直径R、転写部間距離L、モータ入力角度α及びアイドラ入力角度βを設定することで、C用感光体駆動ギヤ83C及びM用感光体駆動ギヤ83Mとして同一のギヤを用いても、転写部間距離Lが感光体周長πRの整数倍の値よりも小さく設定しつつ、特定色ズレ量を10μm以下に抑えることができる。
【0076】
以上、本実施形態(上記変形例を含む。以下同じ。)に係るプリンタは、表面が周回移動する潜像担持体としての感光体1Y,1M,1C,1Kを被転写体としての中間転写ベルト8の表面移動方向に沿って2以上備え、感光体ごとに設けられた被駆動伝達用回転体としての感光体駆動ギヤ83Y,83M,83C,83Kに対して駆動源としてのモータ81からの回転駆動力を伝達することにより各感光体1Y,1M,1C,1Kの表面を周回移動させ、所定の潜像形成箇所で形成した各感光体表面上の潜像を現像して得られる可視像(トナー像)を互いに重なり合うように中間転写ベルト8上へ転写して最終画像を得る、いわゆるタンデム型の画像形成装置である。このプリンタは、互いに同じ直径Rを有する2つの感光体1C,1Mの転写部間距離Lが当該2つの感光体1C,1Mの周長πRの整数倍の値から外れるように構成されており、当該2つの感光体1C,1Mのうち中間転写ベルト表面移動方向下流側に位置する第1感光体としてのC用感光体1Cに設けられた第1被駆動伝達用回転体としてのC用感光体駆動ギヤ83Cと、中間転写ベルト表面移動方向上流側に位置する第2感光体としてのM用感光体1Mに設けられた第2被駆動伝達用回転体としてのM用感光体駆動ギヤ83Mとを、互いに同一のギヤ(回転体)で構成している。このプリンタでは、C用感光体1Cの転写部を中間転写ベルト8上の特定地点が通過する時点におけるC用感光体駆動ギヤ83Cの偏心とM用感光体駆動ギヤ83Mの偏心とによるC用感光体駆動ギヤ83Cの回転角速度の変動成分の位相が、M用感光体1Mの転写部をその特定地点が通過する時点におけるM用感光体駆動ギヤ83Mの偏心によるM用感光体駆動ギヤ83Mの回転角速度の変動成分の位相と一致するように、C用感光体駆動ギヤ83C及びM用感光体駆動ギヤ83Mの相対的な回転位置が設定されている。これにより、当該2つの感光体1C,1M間において、最も縮んだ形状となっているトナー像同士あるいは最も伸びた形状となっているトナー像同士が中間転写ベルト8上の同一地点に転写されるようになる。更に、モータ81側に接続された駆動伝達用回転体としてのモータギヤ85をM用感光体駆動ギヤ83Mに直接接続し、かつ、従動回転する従動回転体としてのアイドラギヤ86をC用感光体駆動ギヤ83CとM用感光体駆動ギヤ83Mとに直接接続することで、モータギヤ85から伝達される回転駆動力によりC用感光体1C及びM用感光体1Mの両方を駆動している。そのため、上記のとおり、特定色ズレが生じ得る。よって、本実施形態では、アイドラギヤ86の回転軸方向から見た場合に、アイドラギヤ86の回転中心がC用感光体駆動ギヤ83Cの回転中心とM用感光体駆動ギヤ83Mの回転中心とを結んだ第1の仮想直線D1よりもM用感光体駆動ギヤ83Mの回転方向上流側となるようにアイドラギヤ86を配置し、アイドラギヤ86の回転軸方向から見た場合に、上記第1の仮想直線D1と、M用感光体駆動ギヤ83Mの回転中心とモータギヤ85の回転中心とを結んだ第2の仮想直線とのなす角度D2,D2’を、M用感光体駆動ギヤ83Mの回転方向を正として、αと規定し、かつ、アイドラギヤ86の回転軸方向から見た場合に、上記第1の仮想直線D1と、C用感光体駆動ギヤ83Cの回転中心とアイドラギヤ86の回転中心とを結んだ第3の仮想直線D3とのなす角度を、C用感光体駆動ギヤ83Cの回転方向を正として、βと規定した場合、M用感光体駆動ギヤ83Mが有する偏心に起因したM用感光体駆動ギヤ83Mの外周振れである偏心成分Eの現実振幅に対する、C用感光体駆動ギヤ83C及びM用感光体駆動ギヤ83Mの偏心に起因してC用感光体1CとM用感光体1Mとの間で生じる相対的な転写位置ズレ(特定色ズレ)を理論上ゼロにし得るC用感光体駆動ギヤ83Cの偏心成分の理想振幅の比率を示す理想振幅比率Yを、上記式(1)で定義したとき、その理想振幅比率Yから1を差し引いた値の絶対値が、M用感光体駆動ギヤ83Mの偏心成分Eの現実振幅に対する当該特定色ズレの最大許容量である10μmの比率を示す最大許容振幅比率以下となるように、当該2つの感光体1C,1Mの直径R、当該2つの感光体1C,1Mの転写部間距離L、モータ入力角度α及びアイドラ入力角度βが設定されている。これにより、小型化等の目的で転写部間距離Lが感光体周長πRの整数倍の値から外れるように構成した場合でも、アイドラギヤ86を介して接続される2つの感光体駆動ギヤ83C,83M間において生じ得る特定色ズレの量を10μm以下まで軽減することができる。
特に、理想振幅比率Yから1を差し引いた値の絶対値が0.7以下となるようにすれば、一般的な偏心量を持ったギヤを感光体駆動ギヤ83C,83Mとして用いる場合でも、特定色ズレの量を10μm以下まで軽減することができる。
また、理想振幅比率Yから1を差し引いた値の絶対値が0.06以下となるようにすれば、特定色ズレ量を大幅に少なくできるので、より高い画質を実現できるようになる。また、特定色ズレ量を大幅に少なくできる結果、他の色ズレ変動要因の色ズレ量の許容量を相対的に増やすことが可能となり、これにより装置全体での設計等の自由度が高まるなどの効果が得られる。
また、本実施形態では、2つの感光体1C,1Mの表面が所定の潜像形成箇所(露光部)から中間転写ベルト8への転写部までを移動する間に、モータギヤ85及びアイドラギヤ86が整数回、回転するように構成されている。これにより、モータギヤ85及びアイドラギヤ86の偏心の影響が色ズレとなって表れることを防止することができる。
また、本実施形態のように、C用感光体駆動ギヤ83C及び上記M用感光体駆動ギヤ83Mの相対的な回転位置を調整するための回転位置調整手段としての位相調整手段を設けることで、その調整を容易にすることが可能となる。
特に、上述したように、位相調整手段として、C用感光体駆動ギヤ83C及びM用感光体駆動ギヤ83Mとして用いられる同一のギヤ上に、当該ギヤの回転により周回移動する第1マークR及び第2マークCを形成し、これらの第1マークR及び第2マークCを、上記相対的な回転位置が調整された後におけるC用感光体駆動ギヤ83C上の第1マークRとM用感光体駆動ギヤ83M上の第2マークCとが互いに同じ回転位置となるように形成することで、他の部品に邪魔されることなく容易に調整が可能となる。
また、上述したように、位相調整手段として、C用感光体駆動ギヤ83C及びM用感光体駆動ギヤ83Mとして用いられる同一のギヤ上に、当該ギヤの回転により周回移動する第1マークR及び第2マークCを形成するとともに、C用感光体駆動ギヤ83C及びM用感光体駆動ギヤ83Mを支持する支持部材としての保持部材82a上に、その第1マークRに対応する第3マークR及びその第2マークCに対応する第4マークCを形成し、第1マークRは、そのギヤがC用感光体駆動ギヤ83Cとして用いられる場合に、上記相対的な回転位置が調整された後における回転位置が保持部材82a上の第3マークRに最も近接する位置となるように形成されており、第2マークCは、そのギヤがM用感光体駆動ギヤ83Mとして用いられる場合に、上記相対的な回転位置が調整された後における回転位置が上記保持部材82a上の第4マークCに最も近接する位置となるように形成することで、保持部材82a上のマークにギヤのマークを合わせるだけで調整が可能となり、その調整が容易となる。
【符号の説明】
【0077】
1Y,1M,1C,1K 感光体
7 光書込ユニット
8 中間転写ベルト
80 駆動装置
81 モータ
82a,82b 保持部材
83Y,83M,83C,83K 感光体駆動ギヤ
85 モータギヤ
86 アイドラギヤ
88 マーク
89Y,89M,89C マーク
R,C,L マーク
D1 第1の仮想直線
D2,D2’ 第2の仮想直線
D3 第3の仮想直線
Y用感光体駆動ギヤの偏心成分
M用感光体駆動ギヤの偏心成分
C用感光体駆動ギヤの偏心成分
’ 合成偏心成分
α モータ入力角度
β アイドラ入力角度
【先行技術文献】
【特許文献】
【0078】
【特許文献1】特開2003−329090号公報
【特許文献2】特開2004−117386号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面が周回移動する潜像担持体を被転写体の表面移動方向に沿って2以上備え、潜像担持体ごとに設けられた被駆動伝達用回転体に対して駆動源からの回転駆動力を伝達することにより各潜像担持体の表面を周回移動させ、所定の潜像形成箇所で形成した各潜像担持体表面上の潜像を現像して得られる可視像を互いに重なり合うように被転写体上へ転写して最終画像を得る画像形成装置において、
互いに同じ直径Rを有する2つの潜像担持体の転写部間距離Lが該2つの潜像担持体の周長πRの整数倍の値から外れるように構成されており、
上記2つの潜像担持体のうち被転写体表面移動方向下流側に位置する第1潜像担持体に設けられた第1被駆動伝達用回転体と、被転写体表面移動方向上流側に位置する第2潜像担持体に設けられた第2被駆動伝達用回転体とを、互いに同一の回転体で構成し、
上記第1潜像担持体の転写部を上記被転写体上の特定地点が通過する時点における上記第1被駆動伝達用回転体の偏心と上記第2被駆動伝達用回転体の偏心とによる該第1被駆動伝達用回転体の回転角速度の変動成分の位相と、上記第2潜像担持体の転写部を該特定地点が通過する時点における該第2被駆動伝達用回転体の偏心による該第2被駆動伝達用回転体の回転角速度の変動成分の位相とが互いに一致するように、該第1被駆動伝達用回転体及び該第2被駆動伝達用回転体の相対的な回転位置が設定されており、
駆動源側に接続された駆動伝達用回転体を上記第2被駆動伝達用回転体に直接接続し、かつ、従動回転する従動回転体を上記第1被駆動伝達用回転体と該第2被駆動伝達用回転体とに直接接続することで、該駆動伝達用回転体から伝達される回転駆動力により上記第1潜像担持体及び上記第2潜像担持体の両方を駆動し、
上記従動回転体の回転軸方向から見た場合に、該従動回転体の回転中心が上記第1被駆動伝達用回転体の回転中心と上記第2被駆動伝達用回転体の回転中心とを結んだ第1の仮想直線よりも該第2被駆動伝達用回転体の回転方向上流側となるように、該従動回転体を配置し、
上記従動回転体の回転軸方向から見た場合に、上記第1の仮想直線と、該第2被駆動伝達用回転体の回転中心と上記駆動伝達用回転体の回転中心とを結んだ第2の仮想直線とのなす角度を、該第2被駆動伝達用回転体の回転方向を正として、αと規定し、かつ、上記従動回転体の回転軸方向から見た場合に、上記第1の仮想直線と、上記第1被駆動伝達用回転体の回転中心と該従動回転体の回転中心とを結んだ第3の仮想直線とのなす角度を、該第1被駆動伝達用回転体の回転方向を正として、βと規定した場合、該第2被駆動伝達用回転体が有する偏心に起因した該第2被駆動伝達用回転体の外周振れの現実振幅に対する、該第1被駆動伝達用回転体及び該第2被駆動伝達用回転体の偏心に起因して上記第1潜像担持体と上記第2潜像担持体との間で生じる相対的な転写位置ズレを理論上ゼロにし得る該第1被駆動伝達用回転体の外周振れの理想振幅の比率を示す理想振幅比率Yを、下記の式(1)で定義したとき、該理想振幅比率Yから1を差し引いた値の絶対値が、該第2被駆動伝達用回転体の外周振れの該現実振幅に対する該転写位置ズレの最大許容量である10μmの比率を示す最大許容振幅比率以下となるように、上記2つの潜像担持体の直径R、該2つの潜像担持体の転写部間距離L、上記角度α及び上記角度βが設定されていることを特徴とする画像形成装置。
【数1】


ただし、Yの周期はL/πRである。
また、上記式(1)中のA、B及びCは、それぞれ下記の式(2)〜(4)により定義されるものである。
A=cos(−X+α−β)−Z×cos(θ+β−180) ・・・(2)
B=sin(−X+α−β)−Z×sin(θ+β−180) ・・・(3)
【数2】


また、上記式(2)及び上記式(3)中のXは下記の式(5)により定義され、上記式(2)及び上記式(3)中のZは下記の式(6)により定義されるものである。
【数3】


【数4】


ただし、Aは上記第2被駆動伝達用回転体の偏心振幅であり、θ=180−αであり、θ=βである。
【請求項2】
請求項1の画像形成装置において、
上記理想振幅比率Yから1を差し引いた値の絶対値が、0.7以下となるように、上記2つの潜像担持体の直径R、該2つの潜像担持体の転写部間距離L、上記角度α及び上記角度βが設定されていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項2の画像形成装置において、
上記理想振幅比率Yから1を差し引いた値の絶対値が、0.06以下となるように、上記2つの潜像担持体の直径R、該2つの潜像担持体の転写部間距離L、上記角度α及び上記角度βが設定されていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像形成装置において、
上記2つの潜像担持体の表面が所定の潜像形成箇所から被転写体への転写部までを移動する間に、上記駆動伝達用回転体及び上記従動回転体が整数回、回転するように構成したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像形成装置において、
上記第1被駆動伝達用回転体及び上記第2被駆動伝達用回転体の相対的な回転位置を調整するための回転位置調整手段を設けたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項5の画像形成装置において、
上記回転位置調整手段は、上記第1被駆動伝達用回転体及び上記第2被駆動伝達用回転体として用いられる上記同一の回転体上に形成された、該回転体の回転により周回移動する第1マーク及び第2マークで構成されており、
上記第1マーク及び上記第2マークは、上記相対的な回転位置が調整された後における上記第1被駆動伝達用回転体上の第1マークと上記第2被駆動伝達用回転体上の第2マークとが互いに同じ回転位置となるように、該同一の回転体上に形成されていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項5の画像形成装置において、
上記回転位置調整手段は、上記第1被駆動伝達用回転体及び上記第2被駆動伝達用回転体として用いられる上記同一の回転体上に形成された、該回転体の回転により周回移動する第1マーク及び第2マークと、該第1被駆動伝達用回転体及び該第2被駆動伝達用回転体を支持する支持部材上に形成された、該第1マークに対応する第3マーク及び該第2マークに対応する第4マークとで構成されており、
上記第1マークは、その回転体が上記第1被駆動伝達用回転体として用いられる場合に、上記相対的な回転位置が調整された後における回転位置が上記支持部材上の第3マークに最も近接する位置となるように、該同一の回転体上に形成されており、
上記第2マークは、その回転体が上記第2被駆動伝達用回転体として用いられる場合に、上記相対的な回転位置が調整された後における回転位置が上記支持部材上の第4マークに最も近接する位置となるように、該同一の回転体上に形成されていることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate


【公開番号】特開2010−217570(P2010−217570A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−64979(P2009−64979)
【出願日】平成21年3月17日(2009.3.17)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】