説明

画像形成装置

【課題】簡易な構成で、トップカバーを開閉する際に露光部材がプロセスユニットの上方に退避するまでの移動軌跡の水平成分を小さくすることができ、トナー容量を確保しつつプロセスユニットを小型化し、装置本体も小型化できる画像形成装置を提供すること。
【解決手段】複数のプロセスユニット1a〜1dと、回動軸13を中心として装置本体に対して回動するとともに、複数のプロセスユニット1a〜1dの各々に対して配列され感光体3a〜3dを露光する複数のLEDヘッド4a〜4dを、露光位置と退避位置との間で移動させるトップカバー11と、トップカバー11の回動に伴って回動軸13に直交する方向に移動可能にトップカバー11内に設けられ、複数のLEDヘッド4a〜4dを保持するLED保持部材20と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、ファクシミリ、プリンタ等の画像形成装置に関し、詳しくは、感光体の長手方向に発光素子およびロッドレンズを配置した露光部材を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の画像形成装置としては、装置本体に対して開閉可能なトップカバーの回動軸をラック機構等によってスライドするように構成することで、トップカバーに搭載された露光部材としてのLEDヘッドが現像ユニットに接触しないようにした技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1では、トップカバーの回動軸をスライドさせる場合には、実際にはラック同士が噛み合うギヤに接点部を支点としてトップカバーの軸が回動動作しその回動動作の水平成分の分力がスライドさせる力に変換される。このようにトップカバーの回動軸は接触するギヤを中心とした回動運動なので、軸を保持しガイドする部分には水平成分の力と垂直成分の力が加わる。一般的に回動中心であるギヤからの距離が遠ければ水平成分が大きくなり、逆に近い場合は垂直成分が大きくなる。垂直成分が大きくなると、ガイドに保持されたトップカバーの回動軸はガイドとの摩擦が大きくなり水平方向に移動することが困難になる。そのため、できるだけ垂直成分を減らすために回動支点となるラック部分の距離を遠くすると装置が大きくなるという欠点を持つ。また、トップカバーの回動軸の移動をし易いようにするためには、回動中心軸をガイドする形状が横方向ではなく斜めにすることが必要である。するとトップカバーは水平方向に移動する距離が小さくなり、本来の効果であるLEDヘッドを真上に抜く効果が薄れてしまう。更には、トップカバーを開閉する際の力は作業者によって異なり強く開閉される場合もあるので、それに耐え得るギヤの強度を持たなければならない。すると必然的にラックのギヤが大きくなる。このように、トップカバーの回動軸を開閉動作とともに移動する機構においては、装置本体が大きくなったり保持部分の破損の恐れがある。
【0003】
また、この種の画像形成装置としては、トップカバーがLEDヘッドを保持するように構成された画像形成装置においてトップカバーを開いて用紙ジャム解除や感光体ユニットの取り出し等の作業を行う際に、トップカバーから突出するLEDヘッドに接触しないようにトップカバーの回動支点近傍に配置された駆動手段によってトップカバーが所定の角度まで開口した後、LEDヘッドを退避位置まで回動させる構成とした技術が知られている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2では、トップカバーの開閉によってLEDヘッドを移動させるものではあるが、トップカバーが開口した後にLEDヘッドが退避する構成であるので、プロセスユニットを抜ける際のLEDヘッドの移動軌跡についてはトップカバーの回動中心とした軌跡のままであるので、LEDヘッドの動く軌跡の幅を小さくすることには寄与していない。そのため、プロセスユニットのトナー容量を確保した状態での小型化にはつながらない。
【0004】
また、この種の画像形成装置としては、LEDヘッドの退避動作を伴う旨の記載は無いが、LEDヘッドの位置決め方式について記載されたものが知られている(例えば、特許文献3参照)。
【0005】
図10に、感光体(像担持体)の長手方向に発光素子およびロッドレンズを配置したLEDヘッド(光書込ヘッド)を備えた一般的な画像形成装置の概略を示す。
【0006】
図10に示すように、一般的な画像形成装置はイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックもトナー像を形成する4つのプロセスユニット101a〜101dを備えている。各プロセスユニット101a〜101dは同様の構成を有しているためプロセスユニット101dを例に説明する。プロセスユニット101dにおいて、帯電装置102dは感光体103dの表面を一様に帯電させ、一様に帯電された感光体103dの表面は、光書込ヘッドであるLEDヘッド104dによって露光され、静電潜像を担持する。この静電潜像は現像部105dによってトナー像を現像され、感光体103d上のトナー像は転写工程によって転写ベルト106に転写される。他のプロセスユニット101a〜101cにおいても同様にトナー像が形成され、転写ベルト106に転写される。感光体クリーニング装置107dは転写工程後の感光体103dに付着している転写残トナーを除去し、再び感光体103dへの帯電・露光・現像・清掃が繰り返される。転写ベルト106上のトナー像は二次転写部108において用紙に転写され、用紙は定着器109によって過熱・加圧されることでトナーが用紙に定着し、更に搬送されて画像形成装置のスタック部に排出される。
【0007】
一般に、電子写真方式の画像形成装置において感光体の長手方向に発光素子およびロッドレンズを配置したLEDヘッド(光書込ヘッド)を装置本体に搭載したものは、従来のポリゴンミラー方式の光学ユニットに対して小型化できる特徴を持っている。LEDヘッドは各感光体に対して1つ必要であるので、タンデム型画像形成装置においては、複数の色の現像装置に対してそれぞれの感光体に対してLEDヘッドを搭載することになる。消耗品であるプロセスユニットの交換の際には着脱の操作性の向上という点から画像形成装置の上部から抜き差しする方法が多く取られている。すなわち、画像形成装置のトップカバーが開閉できる構成で、そこからプロセスユニットを着脱する方法が一般的である。また、LEDヘッドはその特性上LED発光部からの焦点距離が短く、感光体に対してその距離を1mm程度まで近づけて実装する必要がある。なお、ポリゴンミラーを用いた従来方式の光学ユニットは焦点距離は長く(例えば200mm以上)取ることができるので、光学ユニットの実装位置は比較的自由になる。このようにLEDヘッドはプロセスユニットの感光体に対して接近して実装されているので、プロセスユニットの着脱の際にはLEDヘッドを退避させる必要がある。そのため、プロセスユニットの着脱する際の画像形成装置のトップカバーの開閉に応じてLEDヘッドが感光体から退避・当接する方法がとられる。このとき、プロセスユニットの形状は、LEDヘッドが退避・当接する空間を空けておく必要がある。
【0008】
図11は、LEDヘッド104a〜104dがトップカバー111に固定された保持部材112a〜112dに固定されている従来方式の構成である。
【0009】
図11に示す構成において、トップカバー111を開けると、トップカバー111は、回動軸113を中心に図中の閉塞位置Aから開放位置Bまで回動して停止し保持される。このとき、LEDヘッド104a〜104dの移動軌跡115a〜115dはトップカバー111の回動軸113を中心とする円弧となる。LEDヘッド104a〜104dが筐体116から抜けるまでの間は、真上には抜けずに図の横方向に移動する。この移動の量(距離)は、例えば、LEDヘッド104aにおいては横方向(水平方向)への移動距離(移動距離の水平成分)は、水平移動距離117aであり、LEDヘッド104dにおいては水平移動距離117dである。プロセスユニット101a〜101dはLEDヘッド104a〜104dの移動軌跡115a〜115dを避けなければならない。筐体116を抜けるまでのLEDヘッド104a〜104dの横方向への移動距離は回動軸113を中心とした円運動となるために、回動軸113から離れたLEDヘッド104aにおいては水平移動距離117aは相対的に短く、回動軸113に近いLEDヘッド104dにおいては水平移動距離17dは相対的に長いものとなる。すなわち、プロセスユニット101a〜101dの特に現像部105dにおけるトナーを収容する部分(図10の現像部105dの上方の部分)を縮小することが必要になってしまう。
【0010】
図12は、LEDヘッド104a〜104dがトップカバー111に継ぎ手118a〜118dを介して固定されている従来方式の構成である。
【0011】
図12に示す構成において、LEDヘッド104a〜104dはトップカバー111に対して継ぎ手118a〜118dを介して保持されている。LEDヘッド104a〜104dと継ぎ手118a〜118dは固定されているが、トップカバー11に対して継ぎ手118a〜118dはヒンジ119a〜119dを中心に回動できる構成である。そのため、トップカバー111を開けたときのLEDヘッド104a〜104dの動きは、先の図11に示すLEDヘッド104a〜104dがトップカバー111から延びる保持部材112a〜112dに保持されたときの動きとは異なり、トップカバーの回動軸113に対して近づく方向に移動する移動軌跡となる。LEDヘッド104a〜104dのうち、より回動軸113に近い側の方のLEDヘッド104dにおける横方向への水平移動距離117dが、回動軸113に遠い側のLEDヘッド104aにおける横方向への水平移動距離117aに対して大きくなってしまうことは図11に示す構成と同じである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、これら従来の技術においては、プロセスユニットの感光体からのLEDヘッドの退避方法は、画像形成装置のトップカバーの回動軸を中心とした回動動作となる。回動軸付近にLEDヘッドの搭載位置があると、プロセスユニットを抜くための高さまで移動するためには横方向の移動量が大きくなる。
【0013】
従って、カラー画像形成装置においては4色のプロセスユニットを実装するので、それぞれのプロセスユニットの位置でのLEDヘッドの動く軌跡は異なる。すなわち、プロセスユニットを抜く高さまでのLEDヘッドの横方向の移動距離は、トップカバーの回動中心に近い側の方が大きく、回動中心から離れるほど小さくなる。また、画像形成装置の各機能部品の配置において、トップカバーの回動支点に対して一番奥側のプロセスユニットに対する距離が変化する。画像形成装置における定着器の位置を正面に対して奥側にある構成では、トップカバーの回動支点を一番奥側のプロセスユニットに対して奥に位置することが可能になる。逆に定着器の位置を正面手前にある構成においては、一番奥のプロセスユニットに対してトップカバーの回動支点の位置が近くにある。
【0014】
このように回動支点に近いほどプロセスユニットの形状はLEDヘッドの退避・当接する際の空間を大きく確保することが必要になり、形状的にもトナーを収容できる容量が小さくなってしまう。
【0015】
通常4色のプロセスユニットは基本的には同じ形状で、搭載するトナーだけを変えている物がほとんどである。本来の搭載する色の位置に他の色のプロセスユニットが入らないように、一部分の形状の違いはあるが、LEDの搭載部やトナーの収容形状などは同じである。これは基本的形状を同じにすることでプロセスユニットのコストを低くすることができたり、消耗品の販売形態である梱包箱においても箱の形状や緩衝材の形状を同じにすることでも同様にコストを低くすることができ、かつ管理も簡単にできる。するとプロセスユニットの形状は、必然的に全ての色位置においてもLEDヘッドが退避・当接できるような空間を確保する必要があり、一つの色位置について考えれば、プロセスユニットは余分なLEDヘッドの退避スペースを持つことになってしまい、更にトナーを収容する容量を減らしてしまうことになる。
【0016】
このようにトップカバーにLEDヘッドが搭載された画像形成装置において、LEDヘッドの移動軌跡はトップカバーの回動支点に依存し、トップカバーの回動支点から近い位置に配置されるLEDヘッドの移動軌跡の曲率半径は小さくなり、LEDヘッドがプロセスユニットに対し接触しないように退避・当接することが難しく、かつプロセスユニットの形状はLEDヘッドの移動する空間を確保するためにトナー収容部の容量が小さくなるという欠点があった。
【0017】
本発明はこのような問題を解決するためになされたもので、簡易な構成で、トップカバーを開閉する際に露光部材がプロセスユニットの上方に退避するまでの移動軌跡の水平成分を小さくすることができ、トナー容量を確保しつつプロセスユニットを小型化し、本体も小型化できる画像形成装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明に係る画像形成装置は、装置本体内に複数列設され、感光体を有する複数のプロセスユニットと、前記複数のプロセスユニットの列設方向における一端側の回動軸を中心として前記装置本体に対して回動するとともに、前記複数のプロセスユニットの各々に対して配列され前記感光体を露光する複数の露光部材を、前記複数の露光部材が前記感光体を露光する露光位置と前記複数の露光部材が前記複数のプロセスユニットから抜け出す退避位置との間で移動させる回動部材と、前記回動部材の回動に伴って前記回動軸に直交する方向に移動可能に前記回動部材内に設けられ、前記複数の露光部材を保持する保持部材と、を備えたことを特徴とする。
【0019】
この構成により、保持部材が回動部材の回動に伴って回動軸に直交する方向に回動部材内を移動することで、回動部材が回動して露光部材がプロセスユニットから退避するときの移動軌跡が回動軸を中心とした円よりも内側となり、より直線的な動きとなるので、露光部材がプロセスユニットから退避する空間を小さくすることができ、プロセスユニットのトナー容量を確保することができる。
【0020】
したがって、簡易な構成で、トップカバーを開閉する際に露光部材がプロセスユニットの上方に退避するまでの移動軌跡の水平成分を小さくすることができ、トナー容量を確保しつつプロセスユニットを小型化し、装置本体も小型化できる画像形成装置を提供することができる。
【0021】
また、本発明に係る画像形成装置は、前記保持部材は、前記回動部材の回動に伴って前記回動部材に対する姿勢を変えながら前記回動軸に直交する方向に移動することを特徴とする。
【0022】
この構成により、回動部材の回動時における露光部材のプロセスユニットからの退避軌跡がより直線的になり、また、回動部材を回動して開放した状態において、プロセスユニットと露光部材との距離を多くとることが可能になるため、プロセスユニットの着脱の操作性が向上し、かつ露光部材の破損を防止することができる。
【0023】
また、本発明に係る画像形成装置は、前記回動軸の外周にギヤを形成するとともに前記回動軸の近傍に前記ギヤと歯合する伝達ギヤを設け、前記保持部材に前記伝達ギヤに歯合するラックを形成し、前記伝達ギヤと前記ラックの歯合により、前記保持部材が前記回動部材の回動に伴って前記回動軸に直交する方向に前記回動部材内を移動することを特徴とする。
【0024】
この構成により、回動部材の回動と保持部材との連動をギヤおよびラックにより行うことが可能になり、確実に保持部材を動作(移動)させることができる。
【0025】
また、本発明に係る画像形成装置は、前記装置本体における前記回動軸側の位置に一端部が固定されるとともに、前記保持部材における前記回動軸とは反対方向の端部に他端部が固定され、前記回動部材における前記回動軸とは反対方向の端部に設けたプーリーに張架された連結部材を備え、前記連結部材に生じる張力により、前記保持部材が前記回動部材の回動に伴って前記回動軸に直交する方向に前記回動部材内を移動することを特徴とする。
【0026】
この構成により、回動部材の回動と保持部材との連動を連結部材により行うことが可能になり、回動部材にギヤを設けることが困難な場合においても、確実に保持部材を動作(移動)させることができる。
【0027】
また、本発明に係る画像形成装置は、前記連結部材が、ワイヤーまたはベルトであることを特徴とする。
【0028】
この構成により、回動部材の回動と保持部材との連動をワイヤーまたはベルトにより行うことが可能になり、回動部材にギヤを設けることが困難な場合においても、確実に保持部材を動作(移動)させることができる。
【0029】
また、本発明に係る画像形成装置は、前記保持部材が前記回動部材の回動軸方向に動くように荷重を与える荷重付与手段を備えたことを特徴とする。
【0030】
この構成により、回動部材の回動と保持部材との連動を連結部材により行う際に、保持部材が確実に初期位置に戻ることができる。
【0031】
また、本発明に係る画像形成装置は、前記保持部材が、前記複数の露光部材のうち前記回動軸に近い側の1つ以上の露光部材を保持することを特徴とする。
【0032】
この構成により、保持部材が全ての露光部材を保持しなくても、露光部材がプロセスユニットから退避する空間を小さくすることができるので、回動部材の回動とともに移動する部品の重量を低減することが可能になり、回動部材の回動の作業性を向上することができる。
【0033】
また、本発明に係る画像形成装置は、前記保持部材が、前記回動部材の回動に伴って前記回動部材の回動方向とは逆の方向に前記露光部材を回動させる継ぎ手を介して前記露光部材を保持することを特徴とする。
【0034】
この構成により、露光部材と保持部材との間に継ぎ手を持つような構成において、より露光部材の退避軌跡を直線的にすることができる。
【0035】
また、本発明に係る画像形成装置は、前記露光部材が発光素子としてのLEDを有することを特徴とする。
【0036】
この構成により、LEDを搭載した光学部に対して有効である。
【0037】
また、本発明に係る画像形成装置は、前記露光部材が発光素子としてのEL素子を有することを特徴とする。
【0038】
この構成により、EL素子を搭載した光学部に対して有効である。
【発明の効果】
【0039】
本発明によれば、簡易な構成で、トップカバーを開閉する際に露光部材がプロセスユニットの上方に退避するまでの移動軌跡の水平成分を小さくすることができ、トナー容量を確保しつつプロセスユニットを小型化し、装置本体も小型化できる画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る画像形成装置の断面図であり、トップカバーが開くに連れて、保持部材がトップカバーの回動軸の方向にスライドする構成を示すものである。
【図2】本発明の第2の実施の形態に係る画像形成装置の断面図であり、回動可能な継ぎ手を介して保持部材がLEDヘッドを保持し、トップカバーが開くに連れて、保持部材がトップカバーの回動軸とは逆の方向にスライドしつつLEDヘッドも継ぎ手により回動する構成を示すものである。
【図3】本発明の第3の実施の形態に係る画像形成装置の断面図であり、トップカバーが開くに連れて、保持部材が姿勢を変えながらトップカバーの回動軸の方向にスライドする構成を示すものである。
【図4】本発明の第4の実施の形態に係る画像形成装置の断面図であり、保持部材が2つのLEDヘッドのみ保持するようにした構成を示すものである。
【図5】本発明の第5の実施の形態に係る画像形成装置の断面図であり、回動可能な継ぎ手を介して保持部材が2つのLEDヘッドのみ保持するようにした構成を示すものである。
【図6】(a)は、本発明の第6の実施の形態に係る画像形成装置の断面図であり、トップカバーが開くに連れて、ギヤにより保持部材がトップカバーの回動軸の方向にスライドする構成を示すものである。また、(b)は、トップカバーが閉塞位置にあるときのギヤの拡大図であり、(c)は、トップカバーが閉塞位置にあるときのギヤの拡大図である。
【図7】本発明の第7の実施の形態に係る画像形成装置の断面図であり、トップカバーが開くに連れて、ギヤにより保持部材がトップカバーの回動軸とは逆の方向にスライドしつつLEDヘッドも継ぎ手により回動する構成を示すものである。
【図8】本発明の第8の実施の形態に係る画像形成装置の断面図であり、トップカバーが開くに連れて、ワイヤーにより保持部材がトップカバーの回動軸の方向にスライドする構成を示すものである。
【図9】本発明の第9の実施の形態に係る画像形成装置の断面図であり、トップカバーが開くに連れて、ワイヤーにより保持部材がトップカバーの回動軸とは逆の方向にスライドしつつLEDヘッドも継ぎ手により回動する構成を示すものである。
【図10】従来の画像形成装置の断面図である。
【図11】従来の画像形成装置の他の例を示す断面図である。
【図12】従来の画像形成装置の他の例を示す断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0042】
まず、構成について説明する。
【0043】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る画像形成装置の断面図である。
【0044】
図1に示すように、画像形成装置はイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックもトナー像を形成する4つのプロセスユニット1a〜1dを備えている。各プロセスユニット1a〜1dは、図10を参照して説明した従来の構成と同様であり、感光体3a〜3dの表面を一様に帯電させる各帯電装置(図示省略)と、一様に帯電された感光体3a〜3dの表面を露光して静電潜像を形成する露光部材(光書込ヘッド)としての各LEDヘッド4a〜4dと、静電潜像にトナーを付与して現像(トナー像を形成)する現像部(プロセスユニット1dの現像部5dのみ図示)と、を備えている。LEDヘッド4a〜4dは、感光体3a〜3dの長手方向に発光素子(本実施の形態ではLED)およびロッドレンズを配置したものである。感光体3a〜3d上のトナー像は転写工程によって転写ベルト6に転写される。感光体クリーニング装置(図示省略)は、転写工程後の感光体3a〜3dに付着している転写残トナーを除去する。転写残トナーが除去された後は、再びの帯電・露光・現像・清掃が繰り返される。トナー像は、二次転写部8において転写ベルト6から用紙に転写され、定着器9によって過熱・加圧されることで用紙に定着する。トナー像が定着された用紙は、更に搬送されて画像形成装置のスタック部(トップカバー11の上部)に排出される。
【0045】
図1において、トップカバー11は、画像形成装置の筐体16に対して回動軸13を中心に回動動作を行うようになっている。トップカバー11は、通常は筐体16に対して閉じた閉塞位置Aにあり略水平状態となっているが、消耗品であるプロセスユニット1a〜1d等を取り外して交換する際には、筐体16に対して開いた開放位置Bで保持されるようになっている。
【0046】
トップカバー11は、回動軸13を中心とした回動動作により、複数のLEDヘッド4a〜4dを、複数のLEDヘッド4a〜4dが感光体3a〜3dを露光する露光位置と複数のLEDヘッド4a〜4dが複数のプロセスユニット1a〜1dから抜け出す退避位置との間で移動させるようになっている。トップカバー11が閉塞位置AにあるときにLEDヘッド4a〜4dが露光位置に配置され、トップカバー11が開放位置BにあるときにLEDヘッド4a〜4dが退避位置に配置される。
【0047】
感光体3a〜3dに対して露光するためのLEDヘッド4a〜4dは、感光体3a〜3dに対して一定の距離になる位置となるようにLED保持部材20によって保持される。LED保持部材20には長穴21が設けられ、トップカバー11に設けられたガイドピン22と勘合しトップカバー11に取り付けられている。
【0048】
ガイドピン22の直径はLED保持部材20の長穴21の幅よりも小さくなっており、LED保持部材20は、ガイドピン22によって長穴21の長手方向に対して摺動(スライド)可能に保持される。LED保持部材20には、後述する移動伝達手段(図1では図示省略)によってトップカバー11の開閉に際して特定の方向に力がかかるようになっている。
【0049】
移動伝達手段は、第6の実施の形態以降で詳細について説明をするが、本実施の形態では、トップカバー11を開けるときにはLED保持部材20をトップカバー11の回動軸13の方向に向かって移動させ、トップカバー11を閉める際にはLED保持部材20を回動軸13とは逆の方向に向かって移動させるようになっている。
【0050】
この移動伝達手段によって、トップカバー11を開けるときのLED保持部材20は、ガイドピン22によって長穴21の長手方向でかつ回動軸13の方向に向かう方向に移動する。すると、LED保持部材20の端部に取り付けられたLEDヘッド4a〜4dは、トップカバー11が開くことで上に移動をしながらも、長穴21の長手方向である横方向(水平方向)に移動する。LEDヘッド4a〜4dの水平方向への移動距離(移動距離の水平成分)は、LEDヘッド4aにおいては水平移動距離17aであり、LEDヘッド4dにおいては水平移動距離17dである。
【0051】
これによって、LEDヘッド4a〜4dは、従来の回動軸13を中心とする円弧の軌跡に対して、感光体3a〜3dに対して設置されている位置は変わらないが、上方向に向かって移動するときに図1で示した従来の方式による回動軸13を中心とする軌跡より、内側の軌跡を取ることになる。すなわち、LEDヘッド4a〜4dは、より直線的に画像形成装置のプロセスユニット1a〜1dの間を抜けるようになる。換言すると、プロセスユニット1a〜1dの間を抜けるときには、LEDヘッド4a〜4dは、真上に向かって直線的に移動するような軌跡をとるようになる。
【0052】
一方、トップカバー11を閉める際には、LED保持部材20は回動軸13とは逆方向に向かって移動するので、ガイドピン22によって長穴21の長手方向でかつ回動軸13とは逆方向に向かって移動する。すなわち、トップカバー11の開閉角度が同じであればトップカバー11を開くときも閉じるときもLED保持部材20およびLEDヘッド4a〜4dは略同位置となるのでトップカバー11の開閉動作に際し、LEDヘッド4a〜4dの移動する軌跡は同じになる。
【0053】
このように、LEDヘッド4a〜4dの移動軌跡15a〜15dが回動軸13を中心とした円よりも内側となり、より上下方向に直線的な動きとなることで、移動軌跡15a〜15dの水平成分(水平移動距離17aや水平移動距離17d)が小さくなり、プロセスユニット1a〜1dにおける現像部(例えば、現像部5d)の体積を拡大することができる。特に現像部のトナー収容部(例えば、現像部5dの上部空間)を大きくすることができるので、各プロセスユニット1a〜1dで印刷可能な枚数を増やすことができる。
【0054】
消耗品であるプロセスユニット1a〜1dのコストにおいてはその構造体よりトナーの方が安価であるので、トナーの容量を増やした分のコストが上がったとしても1ページ当たりのコストを下げることができ、よりコストの低い画像形成装置を提供することができる。
【0055】
図2は、本発明の第2の実施の形態に係る画像形成装置の断面図である。
【0056】
本実施の形態は、基本構成は前述の第1の実施の形態と同じであるが、トップカバー11を開けるときのLEDヘッド4a〜4dの軌跡とLED保持部材20の動く方向が第1の実施の形態とは異なる。
【0057】
LEDヘッド4a〜4dを保持するLED保持部材20やトップカバー11に設けられたガイドピン22によってスライドする構成は図1の第1の実施の形態と同様である。
【0058】
LED保持部材20には図示しない移動伝達手段によってトップカバー11の開閉に際して特定の方向に力がかかる構成をとる。
【0059】
詳細については、第7の実施の形態以降で説明をするが、本実施の形態では、トップカバー11を開けるときにはLED保持部材20をトップカバー11の回動軸13とは逆の方向に移動させ、トップカバー11を閉める際にはLED保持部材20を回動軸13の方向に向かって移動させる移動伝達手段を備える。
【0060】
また、LEDヘッド4a〜4dは、LED保持部材20に対して継ぎ手18a〜18dを介して保持されている。継ぎ手18a〜18dは、LEDヘッド4a〜4dには固定されているが、トップカバー11に対してはヒンジ19a〜19dを中心に回動できる構成となっている。
【0061】
これによって、LEDヘッド4a〜4dは、従来の回動軸13を中心とする円弧の軌跡に対して、感光体3a〜3dに対して設置されている位置は変わらないが、上方向に向かって移動するときに回動軸13を中心とする軌跡より外側の軌跡を取り、LEDヘッド4a〜4dが筐体16を抜けるまでのその水平方向の移動距離を、図12に示す従来の構成よりも小さくすることができる。LEDヘッド4a〜4dの水平方向への移動距離は、LEDヘッド4aにおいては水平移動距離17aであり、LEDヘッド4dにおいては水平移動距離17dである。
【0062】
図12に示す従来の構成と比較すると、より直線的に真上に向かってLEDヘッド4a〜4dはプロセスユニット1a〜1dの間を抜けるようになる。
【0063】
このようにLEDヘッド4a〜4dの移動軌跡が図12に示す回動軸113を中心とする円弧よりも外側となり、より直線的な動きとなることでプロセスユニット1a〜1dにおける現像部(特にトナー収容部)の体積を拡大することができる。
【0064】
図3は、本発明の第3の実施の形態に係る画像形成装置の断面図である。
【0065】
画像形成装置のトップカバー11は用紙排出口23に対して傾斜し徐々に高くなっているのが一般的である。これは、トップカバー11は用紙を溜める場所も兼ねており、その傾斜によって用紙が排出される際にトップカバー11の傾斜によって用紙が落下することを防止することと、また、トップカバー11に印刷済みの用紙が複数枚排出された状態でも、トップカバー11の傾斜によって用紙の後端部が比較的同じ位置に揃うので取り出し易くなるという利便性を持っている。
【0066】
画像形成装置の構成において定着器9や用紙を排出搬送用ローラ24の実装によって、特に排出搬送用ローラ24は用紙排出口23よりも高い位置になるので、実際にトップカバー11の用紙排出方向に傾斜があっても画像形成装置自体の高さにはほとんど影響が無い。
【0067】
このようにトップカバー11の傾斜によって用紙排出方向である回動軸13の方向に高くなった場合、画像形成装置内のプロセスユニット1a〜1dとトップカバー11までの間の空間の高さも回動軸13の方向に向かって徐々に広がっていくが、この空間は特に有効に使われることがほとんどない単なる空間として残ってしまう。
【0068】
本実施の形態は、図1を参照して前述した第1の実施の形態において、LED保持部材20に設けられたそれぞれの長穴21の方向が異なる構成とすることで、トップカバー11を開けたときに回動軸13を中心とする変位角度がそれぞれの長穴21において変わり、LEDヘッド4a〜4dがトップカバー11に近づく動きができるようになる。すなわち、トップカバー11を回動して開けたときに、トップカバー11に対する姿勢を変えながらLED保持部材20が移動するため、LEDヘッド4a〜4dの軌跡は、プロセスユニット1a〜1dの間から真上に移動するような軌跡となる。
【0069】
LED保持部材20にはトップカバー11に設けられたガイドピン22に対して長穴21が設けられ摺動(スライド)可能となっている。2箇所ある長穴21に対して、回動軸13に対して離れている方の長穴21は第1の実施の形態と同様に水平方向に延在する長穴形状であるが、回動軸13に近い方の長穴21は水平方向ではなく角度を変えている。すなわち、回動軸13に近い方の長穴21は水平方向に対して所定角度傾斜した方向に延在する長穴形状となっている。
【0070】
回動軸13側の長穴21の傾斜角度は、LED保持部材20がトップカバー11を開けたときに移動する方向に対して、トップカバー11の内側に接近するような方向になるように図に示すような角度で設けられている。
【0071】
そのためトップカバー11を開けると回動軸13に近い側のLED保持部材20はトップカバー11に接近し、LEDヘッド4a〜4dをよりトップカバー11の内側方向へと近づける。すなわち、トップカバー11からLEDヘッド4a〜4dまでの距離は、閉じた状態の距離25>開けた状態の距離26となる。
【0072】
従来はプロセスユニット1a〜1dを取り出す際にはトップカバー11の回動軸13に近い方がよりLEDヘッド4a〜4dが接近してしまうので取り出し難かったり、プロセスユニット1a〜1dをLEDヘッド4a〜4dにぶつけてしまう危険性があった。
【0073】
本実施の形態によって回動軸13に近いLEDヘッド4a〜4dがトップカバー11の内側に向かって移動する機能を持つので、プロセスユニット1a〜1dの着脱の軌跡から距離を離すことができ、プロセスユニット1a〜1dのメンテナンス時における操作性を向上し、LEDヘッド4a〜4dの破損を防止することができる。
【0074】
なお、この移動方向を回動軸13に近い側を変える方法については第2の実施の形態においても適用可能である。
【0075】
図4は、本発明の第4の実施の形態に係る画像形成装置の断面図である。
【0076】
本実施の形態は、図1を参照して前述した第1の実施の形態において、移動可能なLED保持部材20が、4台あるプロセスユニット1a〜1dのうち、トップカバー11の回動軸13に近い側にある2台のプロセスユニット1c、1dのLEDヘッド4c、4dを保持する構成となっている。動作については第1の実施の形態と同様である。
【0077】
図11の従来の構成でも示したように、LEDヘッド4a〜4dがトップカバー11に直接取り付けられた状態でも、回動軸13と離れた位置にあるLEDヘッド4a〜4dは、筐体16から退避するまでの水平方向への動きは小さく、回動軸13の方向に近いLEDヘッド4a〜4dは、筐体16から退避するまでの水平方向への動きは大きくなる。そのため、本実施の形態のように、より効果の大きい回動軸13に近い側のみにおいて、移動可能なLED保持部材20が、2台のプロセスユニット1c、1dのLEDヘッド4c、4dを保持するようにしても、第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0078】
本実施の形態では、LED保持部材20は、LEDヘッド4cとLEDヘッド4dが付く大きさに小さくすることができるので、図1の第1の実施の形態よりも重量を減らすことができる。
【0079】
すなわち、LED保持部材20を動かす際の運動エネルギーを小さくすることができ、より、少ない荷重でLED保持部材20を動かすことができ、また、トップカバー11の開閉時における操作力を軽くでき、操作性を向上することができる。
【0080】
図5は、本発明の第5の実施の形態に係る画像形成装置の断面図である。
【0081】
本実施の形態は、図2を参照して前述した第2の実施の形態において、移動可能なLED保持部材20が、4台あるプロセスユニット1a〜1dのうち、トップカバー11の回動軸13に近い側にある2台のプロセスユニット1c、1dのLEDヘッド4c、4dを保持する構成となっている。本実施の形態では、第2の実施の形態の効果に加えて、第4の実施の形態の効果を奏する。
【0082】
図6(a)〜図6(c)は、本発明の第6の実施の形態に係る画像形成装置の断面図である。
【0083】
本実施の形態は、トップカバー11の開閉に際してLED保持部材20を移動させる移動伝達手段の具体例を示すものである。
【0084】
この移動伝達手段は、前述した第1、第3、第5の実施の形態に適用可能である。トップカバー11の回動軸13は筐体16に固定されており回動せず、その回動軸13の外周には固定ギヤ28が設けられている。
【0085】
トップカバー11内には2段ギヤ29とドライブギヤ31が設けられ、2段ギヤ29の小さい歯数のギヤは回動軸13に取り付けられた固定ギヤ28と噛み合い、歯数の多いギヤは次に取り付けられたドライブギヤ31と噛み合う。
【0086】
本実施の形態において、トップカバー11を開けるときは、固定ギヤ28に対して、2段ギヤ29は図示の矢印方向である反時計方向に回転し、次のドライブギヤ31は時計方向に回転する。するとドライブギヤ31と噛み合うLED保持部材20のラック32は図示方向の回動軸13の方向に向かって動く。すなわち、トップカバー11を回動して開けるときは、移動伝達手段としての固定ギヤ28、2段ギヤ29、ドライブギヤ31、ラック32によって、LED保持部材20が回動軸13の方向に移動する。
【0087】
一方、トップカバー11を閉めるときは上記開けるときの逆の動作となり、ラック32は回動軸13とは逆方向に向かって動くようになる。すなわち、トップカバー11を回動して閉めるときは、移動伝達手段としての固定ギヤ28、2段ギヤ29、ドライブギヤ31、ラック32によって、LED保持部材20が回動軸13とは逆の方向に移動する。
【0088】
このときのラック32の移動する距離は、各ギヤのギヤ比に依存する。LED保持部材20の移動距離を確保するためには、できるだけ固定ギヤ28の歯数を大きく取り、それに噛み合う2段ギヤ29の歯数を小さく取ることが望ましい。更には、ドライブギヤ31の歯数を小さくし、ドライブギヤ31と噛み合う2段ギヤ29の歯数を大きく取ることが望ましい。
【0089】
このように、トップカバー11を開けるときには、LED保持部材20がトップカバー11の回動軸13の方向に向かって動き、逆にトップカバー11を閉める際には、LED保持部材20が回動軸13とは逆の方向に向かって動くようになる。
【0090】
図7は、本発明の第7の実施の形態に係る画像形成装置の断面図である。
【0091】
本実施の形態は、トップカバー11の開閉に際してLED保持部材20を移動させる移動伝達手段の具体例を示すものである。
【0092】
本実施の形態は、移動伝達手段の基本構成は前述した第6の実施の形態と同じであるが、ギヤ列の中にアイドラギヤ30を追加して、ドライブギヤ31の回転方向を第6の実施の形態とは逆の方向にしたものであり、前述した第2、第5の実施の形態に適用可能である。
【0093】
本実施の形態において、トップカバー11を回動して開けるときは、移動伝達手段としての固定ギヤ28、2段ギヤ29、アイドラギヤ30、ドライブギヤ31、ラック32によって、LED保持部材20が回動軸13とは逆の方向に移動する。
【0094】
一方、トップカバー11を回動して閉めるときは、移動伝達手段としての固定ギヤ28、2段ギヤ29、アイドラギヤ30、ドライブギヤ31、ラック32によって、LED保持部材20が回動軸13の方向に移動する。
【0095】
図8は、本発明の第8の実施の形態に係る画像形成装置の断面図である。
【0096】
本実施の形態は、トップカバー11の開閉に際してLED保持部材20を移動させる移動伝達手段の具体例を示すものである。この移動伝達手段は、前述した第1、第3、第5の実施の形態について適用可能である。
【0097】
LED保持部材20のトップカバー11の回動軸13に近い方の端部(LED保持部材20の図中左側端部)にはワイヤー33の一端部が固定され、ワイヤー33の他端部は筐体16に固定されている。ワイヤー33は張力が加わってもほとんど伸びないような物で、トップカバー11が閉じられている状態では、LEDヘッド4a〜4dが感光体3a〜3dに対して対向する所定の位置にLED保持部材20があるとき、わずかに緩みがある程度である。
【0098】
ワイヤー33の筐体16への固定位置はトップカバー11の回動軸13と同じではなく下に位置させているので、この状態からトップカバー11を開けると、ワイヤー33は緩んだ状態から張った状態へと変化する。ワイヤー33自体は伸びないので、そのままトップカバー11を開けるとワイヤー33によってLED保持部材20が引っ張られて回動軸13の方向へと移動する。
【0099】
また、LED保持部材20の回動軸13とは逆方向の端部、すなわちLED保持部材20のトップカバー11の回動軸13から遠い方の端部(LED保持部材20の図中右側端部)では、引っ張りコイルバネ34によってトップカバー11と連結されている。引っ張りコイルバネ34の仕様としては、トップカバー11が閉じられた状態であるLED保持部材20が水平状態のときに、ガイドピン22を摺動(スライド)しながら長穴21の端部に突き当たる程度の荷重以上が必要である。これによりLED保持部材20は常に回動軸13とは逆方向に向かって移動する力が掛けられる。
【0100】
従って、トップカバー11を閉じていくと、LED保持部材20の角度が変化することで、LED保持部材20の自量による長穴21の長手方向の荷重成分が減少しLED保持部材20が回動軸13の反対方向へと引っ張られる。かつワイヤー33を結んだ筐体16とLED保持部材20の端部の距離は長くなるので、LED保持部材20は長穴21の突き当たる位置まで移動し、元の状態に戻る。
【0101】
このように、トップカバー11を開けるときにはLED保持部材20がトップカバー11の回動軸13の方向に向かって動き、逆にトップカバー11を閉める際にはLED保持部材20が回動軸13とは逆の方向に向かって動くようになる。
【0102】
なお、本実施の形態ではワイヤー33を搭載した形態をとっているが、ワイヤー33の代わりにベルト状の物を使用しても同様の効果が得られる。
【0103】
図9は、本発明の第9の実施の形態に係る画像形成装置の断面図である。
【0104】
本実施の形態は、トップカバー11の開閉に際してLED保持部材20を移動させる移動伝達手段の具体例を示すものである。この移動伝達手段は、前述した第2、第5の実施の形態に適用可能である。
【0105】
LED保持部材20のトップカバー11の回動軸13から遠い方の端部(LED保持部材20の図中右側端部)にはワイヤー33の端部が固定され、ワイヤー33は途中でトップカバー11の先端付近に設けられたプーリー35を介してその向きを変えて、ワイヤー33の他端部は筐体16に固定される。
【0106】
また、LED保持部材20は筐体16にある回動軸13に対して引っ張りコイルバネ34によって回動軸13の方向に向かって荷重が掛けられている。
【0107】
ワイヤー33の筐体16への固定位置はトップカバー11の回動軸13と同じではなく下に位置させているので、この状態からトップカバー11を開けると、トップカバー11の回動軸13からプーリー35までの距離は変化しないが、筐体16側のワイヤー33の固定端からプーリー35まではその距離が変化し長くなる。ワイヤー33自体は伸びないので、トップカバー11を開けると筐体16側のワイヤー33の固定端からとプーリー35までの距離の長くなった分だけ、プーリー35を支点としてワイヤー33によってLED保持部材20が引っ張られる。
【0108】
このように、トップカバー11を開けるLED保持部材20はトップカバー11の回動軸13とは逆の方向に移動する。
【0109】
一方、トップカバー11を閉じるときは、筐体16側のワイヤー33の固定端からとプーリー35までの距離が短くなるので、その分プーリー35からLED保持部材20側までのワイヤー33の距離は長くなり、更に引っ張りコイルバネ34の荷重によってLED保持部材20は回動軸13の方向に動く。トップカバー11の開閉によるワイヤー33の動きやその効果については、前述した第8の実施の形態と考え方は同じである。
【0110】
このように、トップカバー11を開けるときには、LED保持部材20がトップカバー11の回動軸13の方向とは逆の方向に向かって動き、逆にトップカバー11を閉める際には、LED保持部材20が回動軸13の方向に向かって動くようになる。
【0111】
以上のように、本実施の形態に係る画像形成装置は、装置本体内に複数列設され、感光体3a〜3dを有する複数のプロセスユニット1a〜1dと、複数のプロセスユニット1a〜1dの列設方向における一端側の回動軸13を中心として装置本体に対して回動するとともに、複数のプロセスユニット1a〜1dの各々に対して配列され感光体3a〜3dを露光する複数のLEDヘッド4a〜4dを、複数のLEDヘッド4a〜4dが感光体3a〜3dを露光する露光位置と複数のLEDヘッド4a〜4dが複数のプロセスユニット1a〜1dから抜け出す退避位置との間で移動させるトップカバー11と、トップカバー11の回動に伴って回動軸13に直交する方向に移動可能にトップカバー11内に設けられ、複数のLEDヘッド4a〜4dを保持するLED保持部材20と、を備えたことを特徴とする。
【0112】
この構成により、LED保持部材20がトップカバー11の回動に伴って回動軸13に直交する方向にトップカバー11内を移動することで、トップカバー11が回動してLEDヘッド4a〜4dがプロセスユニット1a〜1dから退避するときの移動軌跡が回動軸13を中心とした円よりも内側となり、より直線的な動きとなるので、LEDヘッド4a〜4dがプロセスユニット1a〜1dから退避する空間を小さくすることができ、プロセスユニット1a〜1dのトナー容量を確保することができる。
【0113】
したがって、簡易な構成で、トップカバー11を開閉する際にLEDヘッド4a〜4dがプロセスユニット1a〜1dの上方に退避するまでの移動軌跡の水平成分を小さくすることができ、トナー容量を確保しつつプロセスユニット1a〜1dを小型化し、装置本体も小型化できる画像形成装置を提供することができる。
【0114】
また、本実施の形態に係る画像形成装置は、LED保持部材20は、トップカバー11の回動に伴ってトップカバー11に対する姿勢を変えながら回動軸13に直交する方向に移動することを特徴とする。
【0115】
この構成により、トップカバー11の回動時におけるLEDヘッド4a〜4dのプロセスユニット1a〜1dからの退避軌跡がより直線的になり、また、トップカバー11を回動して開放した状態において、プロセスユニット1a〜1dとLEDヘッド4a〜4dとの距離を多く取ることが可能になるため、プロセスユニット1a〜1dの着脱の操作性が向上し、かつLEDヘッド4a〜4dの破損を防止することができる。
【0116】
また、本実施の形態に係る画像形成装置は、回動軸13の外周に固定ギヤ28を形成するとともに回動軸13の近傍に固定ギヤ28と歯合する伝達ギヤとしての2段ギヤ29、ドライブギヤ31を設け、LED保持部材20に伝達ギヤに歯合するラック32を形成し、伝達ギヤとラック32の歯合により、LED保持部材20がトップカバー11の回動に伴って回動軸13に直交する方向にトップカバー11内を移動することを特徴とする。
【0117】
この構成により、トップカバー11の回動とLED保持部材20との連動を固定ギヤ28およびラック32により行うことが可能になり、確実にLED保持部材20を動作(移動)させることができる。
【0118】
また、本実施の形態に係る画像形成装置は、装置本体における回動軸13側の位置に一端部が固定されるとともに、LED保持部材20における回動軸13とは反対方向の端部に他端部が固定され、トップカバー11における回動軸13とは反対方向の端部に設けたプーリー35に張架された連結部材としてのワイヤー33を備え、このワイヤー33に生じる張力により、LED保持部材20がトップカバー11の回動に伴って回動軸13に直交する方向にトップカバー11内を移動することを特徴とする。
【0119】
この構成により、トップカバー11の回動とLED保持部材20との連動をワイヤー33により行うことが可能になり、トップカバー11にギヤを設けることが困難な場合においても、確実にLED保持部材20を動作(移動)させることができる。
【0120】
また、本実施の形態に係る画像形成装置は、連結部材としてワイヤー33またはベルトを用いることを特徴とする。
【0121】
この構成により、トップカバー11の回動とLED保持部材20との連動をワイヤー33またはベルトにより行うことが可能になり、トップカバー11にギヤを設けることが困難な場合においても、確実にLED保持部材20を動作(移動)させることができる。
【0122】
また、本実施の形態に係る画像形成装置は、LED保持部材20がトップカバー11の回動軸13の方向に動くように荷重を与える荷重付与手段としての引っ張りコイルバネ34を備えたことを特徴とする。
【0123】
この構成により、トップカバー11の回動とLED保持部材20との連動を連結部材としてのワイヤー33またはベルトにより行う際に、LED保持部材20が確実に初期位置に戻ることができる。
【0124】
また、本実施の形態に係る画像形成装置は、LED保持部材20が、複数のLEDヘッド4a〜4dのうち回動軸13に近い側の1つ以上の露光部材であるLEDヘッド4c、4dを保持することを特徴とする。
【0125】
この構成により、LED保持部材20が全てのLEDヘッド4a〜4dを保持しなくても、LEDヘッド4a〜4dがプロセスユニット1a〜1dから退避する空間を小さくすることができるので、トップカバー11の回動とともに移動する部品の重量を低減することが可能になり、トップカバー11の回動の作業性を向上することができる。
【0126】
また、本実施の形態に係る画像形成装置は、LED保持部材20が、トップカバー11の回動に伴ってトップカバー11の回動方向とは逆の方向にLEDヘッド4a〜4dを回動させる継ぎ手18a〜18dを介してLEDヘッド4a〜4dを保持することを特徴とする。
【0127】
この構成により、LEDヘッド4a〜4dとLED保持部材20との間に継ぎ手18a〜18dを持つような構成において、よりLEDヘッド4a〜4dの退避軌跡を直線的にすることができる。
【0128】
また、本実施の形態に係る画像形成装置は、LEDヘッド4a〜4dが発光素子としてのLEDを有することを特徴とする。
【0129】
この構成により、LEDを搭載した光学部に対して有効である。
【0130】
また、本実施の形態に係る画像形成装置は、露光部材が発光素子としてのEL素子を有することを特徴とする。
【0131】
この構成により、EL素子を搭載した光学部に対して有効である。
【産業上の利用可能性】
【0132】
以上説明したように、本発明に係る画像形成装置は、簡易な構成で、トップカバーを開閉する際に露光部材がプロセスユニットの上方に退避するまでの移動軌跡の水平成分を小さくすることができ、トナー容量を確保しつつプロセスユニットを小型化し、装置本体も小型化できるという効果を有し、感光体の長手方向に発光素子およびロッドレンズを配置した露光部材を備えた画像形成装置として有用である。
【符号の説明】
【0133】
1a〜1d プロセスユニット
3a〜3d 感光体
4a〜4d LEDヘッド(露光部材)
5d 現像部
6 転写ベルト
8 二次転写部
9 定着器
11 トップカバー(回動部材)
13 回動軸
15a〜15d 移動軌跡
16 筐体
17a、17d 水平移動距離
18a〜18d 継ぎ手
19a〜19d ヒンジ
20 LED保持部材(保持部材)
21 長穴
22 ガイドピン
23 用紙排出口
24 排出搬送用ローラ
28 固定ギヤ(ギヤ)
29 2段ギヤ(伝達ギヤ)
30 アイドラギヤ(伝達ギヤ)
31 ドライブギヤ(伝達ギヤ)
32 ラック
33 ワイヤー(連結部材)
34 引っ張りコイルバネ(荷重付与手段)
35 プーリー
【先行技術文献】
【特許文献】
【0134】
【特許文献1】特開2009−134004号公報
【特許文献2】特開2007−065125号公報
【特許文献3】特開2000−203084号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体内に複数列設され、感光体を有する複数のプロセスユニットと、
前記複数のプロセスユニットの列設方向における一端側の回動軸を中心として前記装置本体に対して回動するとともに、前記複数のプロセスユニットの各々に対して配列され前記感光体を露光する複数の露光部材を、前記複数の露光部材が前記感光体を露光する露光位置と前記複数の露光部材が前記複数のプロセスユニットから抜け出す退避位置との間で移動させる回動部材と、
前記回動部材の回動に伴って前記回動軸に直交する方向に移動可能に前記回動部材内に設けられ、前記複数の露光部材を保持する保持部材と、を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記保持部材は、前記回動部材の回動に伴って前記回動部材に対する姿勢を変えながら前記回動軸に直交する方向に移動することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記回動軸の外周にギヤを形成するとともに前記回動軸の近傍に前記ギヤと歯合する伝達ギヤを設け、
前記保持部材に前記伝達ギヤに歯合するラックを形成し、
前記伝達ギヤと前記ラックの歯合により、前記保持部材が前記回動部材の回動に伴って前記回動軸に直交する方向に前記回動部材内を移動することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記装置本体における前記回動軸側の位置に一端部が固定されるとともに、前記保持部材における前記回動軸とは反対方向の端部に他端部が固定され、前記回動部材における前記回動軸とは反対方向の端部に設けたプーリーに張架された連結部材を備え、
前記連結部材に生じる張力により、前記保持部材が前記回動部材の回動に伴って前記回動軸に直交する方向に前記回動部材内を移動することを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記連結部材が、ワイヤーまたはベルトであることを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記保持部材が前記回動部材の回動軸方向に動くように荷重を与える荷重付与手段を備えたことを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記保持部材が、前記複数の露光部材のうち前記回動軸に近い側の1つ以上の露光部材を保持することを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れかに記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記保持部材が、前記回動部材の回動に伴って前記回動部材の回動方向とは逆の方向に前記露光部材を回動させる継ぎ手を介して前記露光部材を保持することを特徴とする請求項1乃至請求項7の何れかに記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記露光部材が発光素子としてのLEDを有することを特徴とする請求項1乃至請求項8の何れかに記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記露光部材が発光素子としてのEL素子を有することを特徴とする請求項1乃至請求項8の何れかに記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−88480(P2012−88480A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−234356(P2010−234356)
【出願日】平成22年10月19日(2010.10.19)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】