説明

異方性導電フィルム、接合体、及び接合体の製造方法

【課題】絶縁膜が配置された回路部材の接続において、低温短時間圧着が可能であり、導通抵抗が低くかつ接着性に優れる異方性導電フィルム、並びに該異方性導電フィルムを用いた接合体、及び該接合体の製造方法。
【解決手段】少なくとも一部に絶縁膜が形成された第一の回路部材と、第二の回路部材とを電気的に接続するための異方性導電フィルムであって、導電性粒子を含有する導電性粒子含有層と、絶縁性接着剤から形成される絶縁性接着層とを有し、前記絶縁性接着層の平均厚みが、0.5μm〜3μmであり、前記絶縁性接着層を硬化させた後の硬化物の30℃における貯蔵弾性率が、500MPa〜1,500MPaである異方性導電フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICチップ、液晶ディスプレイ(LCD)における液晶パネル(LCDパネル)等の回路部材を電気的かつ機械的に接続可能な異方性導電フィルム、並びに、該異方性導電フィルムを用いた接合体、及び該接合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、回路部材を接続する手段として、導電性粒子が分散された熱硬化性樹脂を剥離フィルムに塗布したテープ状の接続材料(例えば、異方性導電フィルム(ACF;Anisotropic Conductive Film))が用いられている。
【0003】
この異方性導電フィルムは、例えば、フレキシブルプリント基板(FPC)やICチップの端子と、LCDパネルのガラス基板上に形成されたITO(Indium Tin Oxide)電極とを接続する場合を始めとして、種々の端子同士を接着すると共に電気的に接続する場合に用いられている。
【0004】
近年の異方性導電フィルムは、低温短時間接続における需要が増大し、アクリル系樹脂をバインダーとした異方性導電フィルムが用いられている。しかし、アクリル系樹脂をバインダーとした異方性導電フィルムは、エポキシ系異方性導電フィルムに比べ極性が低下し(樹脂中の水酸基量が低下するので)、回路部材に形成された配線材及び絶縁膜に対する接着性が十分満足できるものではないという問題がある。
【0005】
そこで、第一の回路部材と、第二の回路部材との間に介在し、前記第一の回路部材と前記第二の回路部材とを接着するために用いられる回路接続用接着フィルムにおいて、接着剤層Aと該接着剤層A上に積層された接着剤層Bとを備え、特定の剥離強度を有し、前記接着剤層Bの厚みが0.1μm〜5.0μmである回路接続用接着フィルムが提案されている(特許文献1)。しかし、前記回路接続用接着フィルムは、圧着前における異方性導電フィルムの貼り付け工程を良好にさせる為に絶縁性樹脂層を設けているが、回路部材に形成された絶縁膜に対する接着性については十分検討されていない。
【0006】
特許文献2では、単官能アクリレートを含有する異方性導電フィルムが明示されており、絶縁膜(窒化ケイ素)への接着性について記載があるが、単官能アクリレートを使用している為にバインダーの凝集力低下を引き起こし、導電性粒子の反発を押さえ込むことができず、接続信頼性の低下が懸念される。
【0007】
したがって、絶縁膜が配置された回路部材の接続において、低温短時間圧着が可能であり、導通抵抗が低くかつ接着性に優れる異方性導電フィルム、並びに該異方性導電フィルムを用いた接合体、及び該接合体の製造方法が求められているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−288551号公報
【特許文献2】特開2008−291199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、絶縁膜が配置された回路部材の接続において、低温短時間圧着が可能であり、導通抵抗が低くかつ接着性に優れる異方性導電フィルム、並びに該異方性導電フィルムを用いた接合体、及び該接合体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 少なくとも一部に絶縁膜が形成された第一の回路部材と、第二の回路部材とを電気的に接続するための異方性導電フィルムであって、
導電性粒子を含有する導電性粒子含有層と、絶縁性接着剤から形成される絶縁性接着層とを有し、
前記絶縁性接着層の平均厚みが、0.5μm〜3μmであり、
前記絶縁性接着層を硬化させた後の硬化物の30℃における貯蔵弾性率が、500MPa〜1,500MPaであることを特徴とする異方性導電フィルムである。
<2> 導電性粒子含有層及び絶縁性接着層が、膜形成樹脂、ラジカル重合性化合物、及び重合開始剤を含有する前記<1>に記載の異方性導電フィルムである。
<3> 少なくとも一部に絶縁膜が形成された第一の回路部材と、第二の回路部材と、前記第一の回路部材と前記第二の回路部材との間に介在して前記第一の回路部材と前記第二の回路部材とを電気的に接続する異方導電層とを有する接合体であって、
前記異方導電層が、前記<1>から<2>のいずれかに記載の異方性導電フィルムにより形成され、
前記第一の回路部材側に絶縁性接着層が配設され、前記第二の回路部材側に導電性粒子含有層が配設されていることを特徴とする接合体である。
<4> 絶縁膜が、窒化珪素を含有する膜である前記<3>に記載の接合体である。
<5> 第一の回路部材が、ガラス基板及びプラスチック基板のいずれかであり、第二の回路部材が、フレキシブル基板及びCOF基板のいずれかである前記<3>から<4>のいずれかに記載の接合体である。
<6> ガラス基板が、IZO付ガラス基板である前記<5>に記載の接合体である。
<7> 前記<3>から<6>のいずれかに記載の接合体を製造する接合体の製造方法であって、
第一の回路部材側に絶縁性接着層が配設され、第二の回路部材側に導電性粒子含有層が配設されるように、前記第一の回路部材、前記第二の回路部材、及び異方性導電フィルムを配置する配置工程と、
前記第一の回路部材及び前記第二の回路部材のいずれかを加熱押圧部材により加熱及び押圧して前記第一の回路部材と前記第二の回路部材とを接合する接合工程と、を含むことを特徴とする接合体の製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、絶縁膜が配置された回路部材の接続において、低温短時間圧着が可能であり、導通抵抗が低くかつ接着性に優れる異方性導電フィルム、並びに該異方性導電フィルムを用いた接合体、及び該接合体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の異方性導電フィルムの一例を示す概略断面図である。
【図2】図2は、配置工程における第一の回路部材、第二の回路部材、及び異方性導電フィルムの配置の一例を示す概略断面図である。
【図3】図3は、本発明の接合体の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(異方性導電フィルム)
本発明の異方性導電フィルムは、第一の回路部材と、第二の回路部材とを電気的に接続するための異方性導電フィルムであって、導電性粒子含有層と、絶縁性接着層とを少なくとも有し、更に必要に応じて、その他の層を有する。
【0014】
<第一の回路部材>
前記第一の回路部材としては、少なくとも一部に絶縁膜が形成された回路部材であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、絶縁膜が形成された、ガラス基板、プラスチック基板、ICチップ、TABテープなどが挙げられる。
前記絶縁膜としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、窒化珪素を含有する膜が挙げられる。
前記絶縁膜の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、パターン状が挙げられる。
前記ガラス基板としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、IZO(Indium Zinc Oxide)付ガラス基板などが挙げられる。
前記第一の回路部材は、配線材を有する。前記配線材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルミニウム、クロム、チタン、銅、モリブデン等の金属;ITO、IZO等の金属酸化物(透明電極材料)などが挙げられる。
前記第一の回路部材の表面としては、例えば、前記絶縁膜と前記配線材とが形成された表面が挙げられる。この表面の態様としては、例えば、前記絶縁膜と前記配線材とが交互に規則的に配列した態様、ランダムに配置した態様などが挙げられる。
【0015】
<第二の回路部材>
前記第二の回路部材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フレキシブル基板(FPC)、COF(チップオンフィルム)基板、ガラス製のLCD基板、ガラス製のPDP基板、ガラス製の有機EL基板などが挙げられる。
前記第一の回路部材は、配線材を有する。前記配線材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、Cu、NiSn、NiAuなどが挙げられる。
【0016】
<導電性粒子含有層>
前記導電性粒子含有層としては、導電性粒子を含有する層であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、導電性粒子を少なくとも含有し、膜形成樹脂、ラジカル重合性化合物、重合開始剤、更に必要に応じて、シランカップリング剤などのその他の成分を含有する層が挙げられる。
【0017】
−導電性粒子−
前記導電性粒子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、金属粒子、金属被覆樹脂粒子などが挙げられる。
前記金属粒子としては、例えば、ニッケル、コバルト、銀、銅、金、パラジウムなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ニッケル、銀、銅が好ましい。これらの表面酸化を防ぐ目的で、表面に金、パラジウムを施した粒子を用いてもよい。更に、表面に金属突起や有機物で絶縁皮膜を施したものを用いてもよい。
前記金属被覆樹脂粒子としては、例えば、樹脂コアの表面をニッケル、銅、金、及びパラジウムのいずれかの金属を被覆した粒子が挙げられる。同様に、最外表面に金、パラジウムを施した粒子を用いてもよい。更に、表面に金属突起や有機物で絶縁皮膜を施したものを用いてもよい。
前記樹脂コアへの金属の被覆方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、無電解めっき法、スパッタリング法などが挙げられる。
前記樹脂コアの材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、ベンゾグアナミン樹脂、架橋ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、スチレン−シリカ複合樹脂などが挙げられる。
前記導電性粒子含有層における前記導電性粒子の含有量としては、特に制限はなく、回路部材の配線ピッチや、接続面積などによって適宜調整することができる。
【0018】
−膜形成樹脂−
前記膜形成樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばフェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、飽和ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ブタジエン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂などが挙げられる。前記膜形成樹脂は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、製膜性、加工性、接続信頼性の点からフェノキシ樹脂が特に好ましい。
前記フェノキシ樹脂とは、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンより合成される樹脂であって、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
前記導電性粒子含有層における前記膜形成樹脂の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0019】
−ラジカル重合性化合物−
前記ラジカル重合性化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アクリル化合物、液状アクリレート等が例示され、具体的には、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、イソブチルアクリレート、リン酸基含有アクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、テトラメチレングリコールテトラアクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジアクリロキシプロパン、2,2−ビス[4−(アクリロキシメトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(アクリロキシエトキシ)フェニル]プロパン、ジシクロペンテニルアクリレート、トリシクロデカニルアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレートなどが挙げられる。なお、前記アクリレートをメタクリレートにしたものを用いることもできる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記導電性粒子含有層における前記ラジカル重合性化合物の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0020】
−重合開始剤−
前記重合開始剤としては、前記ラジカル重合性化合物を重合させることができるものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、熱又は光によって遊離ラジカルを発生する重合開始剤が好ましい。
前記熱又は光によって遊離ラジカルを発生する重合開始剤としては、有機過酸化物が好ましく、反応性と保存安定性の観点から1分間半減期温度が90℃〜180℃であり、かつ10時間半減期温度が40℃以上である有機過酸化物がより好ましい。
10秒間以下で接合を行うためには1分間半減期温度が180℃以下であることが好ましい。10時間半減期温度が40℃以下であると冷蔵5℃以下の保管が困難となることがある。
熱によって遊離ラジカルを発生する重合開始剤としては、例えば、有機過酸化物、アゾ化合物などが挙げられる。前記有機過酸化物としては、例えば、過酸化ベンゾイル、ターシャリーブチルパーオキシドなどが挙げられる。前記アゾ化合物としては、例えば、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(V−65)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス〔2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド〕、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メトキシプロピオネート)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
光によって遊離ラジカルを発生する重合開始剤としては、例えば、アルキルフェノン、ベンゾイン、ベンゾフェノン、ジカルボニル化合物、チオキサントン、アシルホスフィンオキサイド、又はこれらの誘導体などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記導電性粒子含有層における前記重合開始剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0021】
−シランカップリング剤−
前記シランカップリング剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、エポキシ系シランカップリング剤、アクリル系シランカップリング剤、チオール系シランカップリング剤、アミン系シランカップリング剤などが挙げられる。
前記導電性粒子含有層における前記シランカップリング剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0022】
前記導電性粒子含有層の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1μm〜100μmが好ましく、4μm〜30μmがより好ましい。前記平均厚みが、1μm未満であると、回路間に導電性粒子含有層が十分充填されないことがあり、100μmを超えると、導電性粒子含有層が十分に排除できずに導通不良が生じることがある。前記平均厚みが、前記特に好ましい範囲であると、適度に導電性粒子含有層が充填され、接着性、及び導通信頼性の点で有利である。
ここで、前記平均厚みは、任意に5箇所を測定した際の平均値である。
【0023】
<絶縁性接着層>
前記絶縁性接着層は、絶縁性接着剤から形成される。
前記絶縁性接着剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、膜形成樹脂と、ラジカル重合性化合物と、重合開始剤とを少なくとも含有し、更に必要に応じて、シランカップリング剤などのその他の成分を含有する絶縁性接着剤が挙げられる。前記膜形成樹脂、前記ラジカル重合性化合物、前記重合開始剤、及び前記シランカップリング剤としては、前記導電性粒子含有層の説明において記載した前記膜形成樹脂、前記ラジカル重合性化合物、前記重合開始剤、及び前記シランカップリング剤と同様のものが挙げられる。
【0024】
前記絶縁性接着層の平均厚みは、0.5μm〜3μmであり、1μm〜3μmが好ましい。前記平均厚みが、0.5μm未満であると、接着強度が低下し、3μmを超えると、導通抵抗が大きくなる。
ここで、前記平均厚みは、任意に5箇所を測定した際の平均値である。
【0025】
前記絶縁性接着層を硬化させた後の硬化物の30℃における貯蔵弾性率は、500MPa〜1,500MPaであり、500MPa〜1,000MPaが好ましい。前記貯蔵弾性率が、500MPa未満であると、導通抵抗が高くなり、1,500MPaを超えると、接着強度が低くなる。
【0026】
前記貯蔵弾性率は、例えば、以下の方法により測定することができる。
剥離処理したPET上に平均厚みが20μmの前記絶縁性接着層を形成する。続いて、その絶縁性接着層を200℃の加熱炉に入れ、30分間加熱することで前記絶縁性接着層を硬化させ、硬化物を得る。その硬化物を前記剥離処理したPETから剥離し、3.5mm×0.4mmの短冊状に切り出し、測定試料とする。
その測定試料の30℃における貯蔵弾性率を動的粘弾性測定器(DDV−01FP、ORIENTEC社製、周波数11Hz、昇温速度3℃/分)を用いて測定する。
【0027】
前記絶縁性接着層を硬化させた後の硬化物の30℃における貯蔵弾性率を500MPa〜1,500MPaとする方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記絶縁性接着層を形成する際の、原材料(例えば、前記膜形成樹脂、前記ラジカル重合性化合物、前記重合開始剤など)の配合量を、適宜調整する方法が挙げられる。前記配合量を適宜調整することで、前記貯蔵弾性率を高くすることができる。例えば、前記ラジカル重合性化合物の配合量を多くすることにより貯蔵弾性率を高くすることができる。
【0028】
(接合体)
本発明の接合体は、第一の回路部材と、第二の回路部材と、異方導電層とを少なくとも有し、更に必要に応じて、その他の部材を有する。
前記第一の回路部材、及び前記第二の回路部材としては、本発明の前記異方性導電フィルムの説明において記載した前記第一の回路部材、及び前記第二の回路部材と同じものが挙げられる。
前記異方導電層は、本発明の前記異方性導電フィルムにより形成される。前記異方導電層は、前記第一の回路部材と前記第二の回路部材との間に介在して前記第一の回路部材と前記第二の回路部材とを電気的に接続している。
前記接合体では、前記第一の回路部材側に前記異方性導電フィルムの前記絶縁性接着層が配設され、前記第二の回路部材側に前記異方性導電フィルムの前記導電性粒子含有層が配設されている。このことにより、前記第二の回路部材を加熱及び押圧して前記接合体を製造した際に、前記絶縁性接着層が適度に流動し、接着性のよい接合体が得られる。
なお、前記接合体において、前記絶縁性樹脂層は、前記第一の回路部材に形成された絶縁膜に接している。
【0029】
(接合体の製造方法)
本発明の接合体の製造方法は、配置工程と、接合工程とを少なくとも含み、更に必要に応じて、その他の工程を含む。
本発明の接合体の製造方法により、本発明の前記接合体が製造される。
【0030】
<配置工程>
前記配置工程としては、前記接合体において、前記第一の回路部材側に前記絶縁性接着層が配設され、前記第二の回路部材側に前記導電性粒子含有層が配設されるように、前記第一の回路部材、前記第二の回路部材、及び前記異方性導電フィルムを配置する工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記導電性粒子含有層、前記絶縁性接着層、前記第一の回路部材、前記第二の回路部材、及び前記異方性導電フィルムとしては、本発明の前記異方性導電フィルムの説明において記載したものがそれぞれ挙げられる。
【0031】
<接合工程>
前記接合工程としては、前記第一の回路部材及び前記第二の回路部材のいずれかを加熱押圧部材により加熱及び押圧して前記第一の回路部材と前記第二の回路部材とを接合する工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記第二の回路部材を加熱押圧部材により加熱及び押圧することが、前記絶縁性接着層のより適度な流動が得られる点で好ましい。
前記加熱押圧部材としては、例えば、加熱機構を有する押圧部材が挙げられる。前記加熱機構を有する押圧部材としては、例えば、ヒートツールなどが挙げられる。
前記加熱の温度としては、前記導電性粒子含有層、及び前記絶縁性接着層が硬化する温度であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、140℃〜200℃が好ましい。
前記押圧の圧力としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.1MPa〜10MPaが好ましい。
前記加熱及び押圧の時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、0.5秒間〜120秒間が挙げられる。
【0032】
ここで、図1から図3を用いて本発明の接合体の製造方法の一例を示す。図1は、本発明の異方性導電フィルムの一例を示す概略断面図である。図2は、配置工程における第一の回路部材、第二の回路部材、及び異方性導電フィルムの配置の一例を示す概略断面図である。図3は、本発明の接合体の一例を示す概略断面図である。
まず、図1に示すような異方性導電フィルム1を用意する。前記異方性導電フィルム1は、導電性粒子含有層2と絶縁性接着層3とを有している。前記導電性粒子含有層2は、導電性粒子4を含有している。続いて、前記配置工程として、図2に示すように、第一の回路部材5と、第二の回路部材9と、前記異方性導電フィルム1とを、得られる前記接合体において、前記第一の回路部材5側に前記絶縁性接着層3が配設され、前記第二の回路部材9側に前記導電性粒子含有層2が配設されるように、前記第一の回路部材5、前記第二の回路部材9、及び前記異方性導電フィルム1を配置する。ここで、前記第一の回路部材5は、ガラス基板6と絶縁膜7と配線材8とを有している。前記第二の回路部材9は、フレキシブル基板であり、ポリイミドフィルム10と配線材11とを有している。続いて、前記接合工程として、前記第二の回路部材9を加熱押圧部材(不図示)により加熱及び押圧して前記第一の回路部材5と前記第二の回路部材9とを接合することにより、前記第一の回路部材5の前記配線材8と、前記第二の回路部材9の前記配線材11とが、前記異方性導電フィルム1の硬化物(異方導電層)中の前記導電性粒子4を介して電気的に接続され、接合体が得られる(図3)。
【実施例】
【0033】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0034】
(製造例1)
<配合物の調製>
以下の表1に示す配合の配合物を用いて、各実施例、比較例を実施した。
【0035】
【表1】

表1中の配合の数値の単位は、「質量部」である。表1中の各成分は以下の通りである。なお、表1に記載のUR−1350及びUR−8200の配合量は、固形分の配合量である。
UR−1350:ポリエステルウレタン樹脂、東洋紡績社製、メチルエチルケトン/トルエン=65/35(質量比)の混合溶媒にて33質量%に溶解したもの
UR−8200:ポリエステルウレタン樹脂、東洋紡績社製、メチルエチルケトン/トルエン=50/50(質量比)の混合溶液にて33質量%に溶解したもの
IRR214:ラジカル重合性化合物、ダイセルサイテック社製
U−340A:ラジカル重合性化合物、新中村化学工業社製
EB−600:ラジカル重合性化合物、ダイセルサイテック社製
P−1M:リン酸基含有アクリレート(ラジカル重合性化合物)、共栄社化学社製
KBM−503:シランカップリング剤、信越化学工業社製
パーヘキサC:重合開始剤、日油社製
【0036】
<貯蔵弾性率の測定>
剥離処理したPET上に上記配合物を乾燥後の平均厚みが20μmとなるように塗布し、200℃の加熱炉に入れ、30分間加熱することで前記配合物を硬化させた。硬化させた配合物(硬化物)を前記剥離処理したPETから剥離し、3.5mm×0.4mmの短冊状に切り出し、測定試料とした。
その測定試料の30℃における貯蔵弾性率を動的粘弾性測定器(DDV−01FP、ORIENTEC社製、周波数11Hz、昇温速度3℃/分)を用いて測定した。結果を表1に示す。
【0037】
(実施例1)
<異方性導電フィルムの作製>
配合物1に、導電性粒子(AUL704、積水化学工業社製)を粒子密度が10,000個/mmとなるように分散させた。分散後の配合物を剥離処理したPET上に乾燥後の平均厚みが19μmとなるように塗布し、導電性粒子含有層を形成した。
配合物3を剥離処理したPET上に乾燥後の平均厚みが1μmとなるように塗布し、絶縁性接着層を形成した。
得られた導電性粒子含有層と絶縁性接着層とを貼り合わせ、異方性導電フィルムを作製した。
【0038】
<評価>
−接続抵抗(導通抵抗)の評価−
評価回路部材として、COF(ソニーケミカル&インフォメーションデバイス株式会社製の評価用回路部材、S’perflex基材、50μmピッチの厚み8μmのCu/厚み38μmのSnメッキのパターン)とIZOコーティングガラス(ソニーケミカル&インフォメーションデバイス株式会社製の評価用回路部材、全表面にIZOをコートした厚み0.7mmのガラス)を用いた。
異方性導電フィルムを1.5mm幅に切り出し、前記異方性導電フィルムの絶縁性樹脂層が前記IZOコーティングガラスに接するように、前記IZOコーティングガラスに貼り付けた。前記異方性導電フィルムの導電性粒子含有層上に、前記COFを配置した後、ヒートツールを1.5mm幅で用い、緩衝材として厚み100μmのテフロン(登録商標)を介し、接合条件190℃、3MPa、5秒間で、前記COFを加熱及び押圧することで、接合を行い接合体を得た。
作製した接合体について、初期と、温度85℃及び湿度85%RHの条件で500時間保管後の接続抵抗(導通抵抗)を、デジタルマルチメータ(デジタルマルチメータ7555、横河電機社製)を用い、4端子法にて電流1mAを流して測定した。結果を表2−1に示す。
【0039】
−接着強度の評価−
評価回路部材として、COF(ソニーケミカル&インフォメーションデバイス株式会社製の評価用回路部材、S’perflex基材、50μmピッチの厚み8μmのCu/厚み38μmのSnメッキのパターン)と窒化珪素コーティングガラス(ソニーケミカル&インフォメーションデバイス株式会社製の評価用回路部材、全表面に窒化珪素をコートした厚み0.7mmのガラス)を用いた。
異方性導電フィルムを1.5mm幅に切り出し、前記異方性導電フィルムの絶縁性樹脂層が前記窒化珪素コーティングガラスに接するように、前記窒化珪素コーティングガラスに貼り付けた。前記異方性導電フィルムの導電性粒子含有層上に、前記COFを配置した後、ヒートツールを1.5mm幅で用い、緩衝材として厚み100μmのテフロン(登録商標)を介し、接合条件190℃、3MPa、5秒間で、前記COFを加熱及び押圧することで、接合を行い接合体を得た。
作製した接合体について、初期と、温度85℃及び湿度85%RHの条件で500時間保管後の接着強度を、引張り試験機(RTC1201、エー・アンド・デイ社製)を用い、測定速度50mm/秒でCOFを引上げて測定した。結果を表2−1に示す。
【0040】
(実施例2)
<異方性導電フィルムの作製>
配合物1に、導電性粒子(AUL704、積水化学工業社製)を粒子密度が10,000個/mmとなるように分散させた。分散後の配合物を剥離処理したPET上に乾燥後の平均厚みが17μmとなるように塗布し、導電性粒子含有層を形成した。
配合物4を剥離処理したPET上に乾燥後の平均厚みが3μmとなるように塗布し、絶縁性接着層を形成した。
得られた導電性粒子含有層と絶縁性接着層とを貼り合わせ、異方性導電フィルムを作製した。
得られた異方性導電フィルムについて、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2−1に示す。
【0041】
(実施例3)
<異方性導電フィルムの作製>
配合物1に、導電性粒子(AUL704、積水化学工業社製)を粒子密度が10,000個/mmとなるように分散させた。分散後の配合物を剥離処理したPET上に乾燥後の平均厚みが19μmとなるように塗布し、導電性粒子含有層を形成した。
配合物4を剥離処理したPET上に乾燥後の平均厚みが1μmとなるように塗布し、絶縁性接着層を形成した。
得られた導電性粒子含有層と絶縁性接着層とを貼り合わせ、異方性導電フィルムを作製した。
得られた異方性導電フィルムについて、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2−1に示す。
【0042】
(実施例4)
<異方性導電フィルムの作製>
配合物1に、導電性粒子(AUL704、積水化学工業社製)を粒子密度が10,000個/mmとなるように分散させた。分散後の配合物を剥離処理したPET上に乾燥後の平均厚みが19.5μmとなるように塗布し、導電性粒子含有層を形成した。
配合物4を剥離処理したPET上に乾燥後の平均厚みが0.5μmとなるように塗布し、絶縁性接着層を形成した。
得られた導電性粒子含有層と絶縁性接着層とを貼り合わせ、異方性導電フィルムを作製した。
得られた異方性導電フィルムについて、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2−1に示す。
【0043】
(実施例5)
<異方性導電フィルムの作製>
配合物1に、導電性粒子(AUL704、積水化学工業社製)を粒子密度が10,000個/mmとなるように分散させた。分散後の配合物を剥離処理したPET上に乾燥後の平均厚みが19μmとなるように塗布し、導電性粒子含有層を形成した。
配合物5を剥離処理したPET上に乾燥後の平均厚みが1μmとなるように塗布し、絶縁性接着層を形成した。
得られた導電性粒子含有層と絶縁性接着層とを貼り合わせ、異方性導電フィルムを作製した。
得られた異方性導電フィルムについて、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2−1に示す。
【0044】
(実施例6)
<異方性導電フィルムの作製>
配合物3に、導電性粒子(AUL704、積水化学工業社製)を粒子密度が10,000個/mmとなるように分散させた。分散後の配合物を剥離処理したPET上に乾燥後の平均厚みが19μmとなるように塗布し、導電性粒子含有層を形成した。
配合物4を剥離処理したPET上に乾燥後の平均厚みが1μmとなるように塗布し、絶縁性接着層を形成した。
得られた導電性粒子含有層と絶縁性接着層とを貼り合わせ、異方性導電フィルムを作製した。
得られた異方性導電フィルムについて、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2−1に示す。
【0045】
(実施例7)
<異方性導電フィルムの作製>
配合物1に、導電性粒子(AUL704、積水化学工業社製)を粒子密度が10,000個/mmとなるように分散させた。分散後の配合物を剥離処理したPET上に乾燥後の平均厚みが19μmとなるように塗布し、導電性粒子含有層を形成した。
配合物7を剥離処理したPET上に乾燥後の平均厚みが1μmとなるように塗布し、絶縁性接着層を形成した。
得られた導電性粒子含有層と絶縁性接着層とを貼り合わせ、異方性導電フィルムを作製した。
得られた異方性導電フィルムについて、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2−1に示す。
【0046】
(実施例8)
<異方性導電フィルムの作製>
配合物1に、導電性粒子(AUL704、積水化学工業社製)を粒子密度が10,000個/mmとなるように分散させた。分散後の配合物を剥離処理したPET上に乾燥後の平均厚みが19μmとなるように塗布し、導電性粒子含有層を形成した。
配合物8を剥離処理したPET上に乾燥後の平均厚みが1μmとなるように塗布し、絶縁性接着層を形成した。
得られた導電性粒子含有層と絶縁性接着層とを貼り合わせ、異方性導電フィルムを作製した。
得られた異方性導電フィルムについて、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2−1に示す。
【0047】
(比較例1)
<異方性導電フィルムの作製>
配合物1に、導電性粒子(AUL704、積水化学工業社製)を粒子密度が10,000個/mmとなるように分散させた。分散後の配合物を剥離処理したPET上に乾燥後の平均厚みが20μmとなるように塗布し、異方性導電フィルムを作製した。
得られた異方性導電フィルムについて、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2−2に示す。
【0048】
(比較例2)
<異方性導電フィルムの作製>
配合物4に、導電性粒子(AUL704、積水化学工業社製)を粒子密度が10,000個/mmとなるように分散させた。分散後の配合物を剥離処理したPET上に乾燥後の平均厚みが20μmとなるように塗布し、異方性導電フィルムを作製した。
得られた異方性導電フィルムについて、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2−2に示す。
【0049】
(比較例3)
<異方性導電フィルムの作製>
配合物1に、導電性粒子(AUL704、積水化学工業社製)を粒子密度が10,000個/mmとなるように分散させた。分散後の配合物を剥離処理したPET上に乾燥後の平均厚みが19μmとなるように塗布し、導電性粒子含有層を形成した。
配合物2を剥離処理したPET上に乾燥後の平均厚みが1μmとなるように塗布し、絶縁性接着層を形成した。
得られた導電性粒子含有層と絶縁性接着層とを貼り合わせ、異方性導電フィルムを作製した。
得られた異方性導電フィルムについて、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2−2に示す。
【0050】
(比較例4)
<異方性導電フィルムの作製>
配合物1に、導電性粒子(AUL704、積水化学工業社製)を粒子密度が10,000個/mmとなるように分散させた。分散後の配合物を剥離処理したPET上に乾燥後の平均厚みが14μmとなるように塗布し、導電性粒子含有層を形成した。
配合物4を剥離処理したPET上に乾燥後の平均厚みが6μmとなるように塗布し、絶縁性接着層を形成した。
得られた導電性粒子含有層と絶縁性接着層とを貼り合わせ、異方性導電フィルムを作製した。
得られた異方性導電フィルムについて、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2−2に示す。
【0051】
(比較例5)
<異方性導電フィルムの作製>
配合物1に、導電性粒子(AUL704、積水化学工業社製)を粒子密度が10,000個/mmとなるように分散させた。分散後の配合物を剥離処理したPET上に乾燥後の平均厚みが16μmとなるように塗布し、導電性粒子含有層を形成した。
配合物4を剥離処理したPET上に乾燥後の平均厚みが4μmとなるように塗布し、絶縁性接着層を形成した。
得られた導電性粒子含有層と絶縁性接着層とを貼り合わせ、異方性導電フィルムを作製した。
得られた異方性導電フィルムについて、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2−2に示す。
【0052】
(比較例6)
<異方性導電フィルムの作製>
配合物1に、導電性粒子(AUL704、積水化学工業社製)を粒子密度が10,000個/mmとなるように分散させた。分散後の配合物を剥離処理したPET上に乾燥後の平均厚みが19.9μmとなるように塗布し、導電性粒子含有層を形成した。
配合物4を剥離処理したPET上に乾燥後の平均厚みが0.1μmとなるように塗布し、絶縁性接着層を形成した。
得られた導電性粒子含有層と絶縁性接着層とを貼り合わせ、異方性導電フィルムを作製した。
得られた異方性導電フィルムについて、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2−2に示す。
【0053】
(比較例7)
<異方性導電フィルムの作製>
配合物1に、導電性粒子(AUL704、積水化学工業社製)を粒子密度が10,000個/mmとなるように分散させた。分散後の配合物を剥離処理したPET上に乾燥後の平均厚みが19μmとなるように塗布し、導電性粒子含有層を形成した。
配合物6を剥離処理したPET上に乾燥後の平均厚みが1μmとなるように塗布し、絶縁性接着層を形成した。
得られた導電性粒子含有層と絶縁性接着層とを貼り合わせ、異方性導電フィルムを作製した。
得られた異方性導電フィルムについて、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2−2に示す。
【0054】
【表2−1】

【0055】
【表2−2】

【0056】
表2−1〜表2−2の結果から、実施例1〜8の、絶縁性樹脂層の平均厚みが0.5μm〜3μmであり、かつ絶縁性樹脂層を硬化させた後の硬化物の30℃における貯蔵弾性率が500MPa〜1,500MPaである本発明の異方性導電フィルムは、低温短時間圧着が可能であり、導通抵抗が初期及び80℃、85%RH下で500時間保管後において良好であり、かつ接着強度が初期及び80℃、85%RH下で500時間保管後において良好であった。
【0057】
一方、絶縁性接着層を有しない比較例1の異方性導電フィルムは、500時間保管後の接着強度が0.5N/cmであり低かった。絶縁性接着層を有しない比較例2の異方性導電フィルムは、導通抵抗が高く、特に500時間保管後の導通抵抗が41.1Ωであり高かった。絶縁性接着層を硬化させた後の硬化物の30℃における貯蔵弾性率が1,600MPaである比較例3の異方性導電フィルムは、前記貯蔵弾性率が高く、500時間保管後の接着強度が4.3N/cmであり低い値となった。絶縁性樹脂層の平均厚みが6μmである比較例4の異方性導電性フィルム、及び絶縁性樹脂層の平均厚みが4μmである比較例5の異方性導電性フィルムは、絶縁性樹脂層の平均厚みが厚く、500時間保管後の導通抵抗がそれぞれ、11.2Ω、及び7.7Ωであり高い値となった。絶縁性樹脂層の平均厚みが0.1μmである比較例6の異方性導電性フィルムは、絶縁性樹脂層の平均厚みが薄く、500時間保管後の接着強度が4.0N/cmであり低い値となった。絶縁性接着層を硬化させた後の硬化物の30℃における貯蔵弾性率が400MPaである比較例7の異方性導電フィルムは、前記貯蔵弾性率が低く、500時間保管後の導通抵抗が6.0Ωであり高い値となった。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の異方性導電フィルムは、絶縁膜が配置された回路部材の接続において、低温短時間圧着が可能であり、導通抵抗が低くかつ接着性に優れることから、ICチップ、液晶ディスプレイ(LCD)における液晶パネル(LCDパネル)等の回路部材の電気的かつ機械的な接続に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0059】
1 異方性導電フィルム
2 導電性粒子含有層
3 絶縁性接着層
4 導電性粒子
5 第一の回路部材
6 ガラス基板
7 絶縁膜
8 配線材
9 第二の回路部材
10 ポリイミドフィルム
11 配線材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一部に絶縁膜が形成された第一の回路部材と、第二の回路部材とを電気的に接続するための異方性導電フィルムであって、
導電性粒子を含有する導電性粒子含有層と、絶縁性接着剤から形成される絶縁性接着層とを有し、
前記絶縁性接着層の平均厚みが、0.5μm〜3μmであり、
前記絶縁性接着層を硬化させた後の硬化物の30℃における貯蔵弾性率が、500MPa〜1,500MPaであることを特徴とする異方性導電フィルム。
【請求項2】
導電性粒子含有層及び絶縁性接着層が、膜形成樹脂、ラジカル重合性化合物、及び重合開始剤を含有する請求項1に記載の異方性導電フィルム。
【請求項3】
少なくとも一部に絶縁膜が形成された第一の回路部材と、第二の回路部材と、前記第一の回路部材と前記第二の回路部材との間に介在して前記第一の回路部材と前記第二の回路部材とを電気的に接続する異方導電層とを有する接合体であって、
前記異方導電層が、請求項1から2のいずれかに記載の異方性導電フィルムにより形成され、
前記第一の回路部材側に絶縁性接着層が配設され、前記第二の回路部材側に導電性粒子含有層が配設されていることを特徴とする接合体。
【請求項4】
絶縁膜が、窒化珪素を含有する膜である請求項3に記載の接合体。
【請求項5】
第一の回路部材が、ガラス基板及びプラスチック基板のいずれかであり、第二の回路部材が、フレキシブル基板及びCOF基板のいずれかである請求項3から4のいずれかに記載の接合体。
【請求項6】
ガラス基板が、IZO付ガラス基板である請求項5に記載の接合体。
【請求項7】
請求項3から6のいずれかに記載の接合体を製造する接合体の製造方法であって、
第一の回路部材側に絶縁性接着層が配設され、第二の回路部材側に導電性粒子含有層が配設されるように、前記第一の回路部材、前記第二の回路部材、及び異方性導電フィルムを配置する配置工程と、
前記第一の回路部材及び前記第二の回路部材のいずれかを加熱押圧部材により加熱及び押圧して前記第一の回路部材と前記第二の回路部材とを接合する接合工程と、を含むことを特徴とする接合体の製造方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−49184(P2011−49184A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【公開請求】
【出願番号】特願2010−256057(P2010−256057)
【出願日】平成22年11月16日(2010.11.16)
【出願人】(000108410)ソニーケミカル&インフォメーションデバイス株式会社 (595)
【Fターム(参考)】