説明

異方性導電材料及び接続構造体

【課題】硬化物の接着性が高く、かつ高い接着性を長期間に渡り維持できる異方性導電材料並びに該異方性導電材料を用いた接続構造体を提供する。
【解決手段】本発明に係る異方性導電材料は、加熱により硬化可能である。本発明に係る異方性導電材料は、硬化性化合物と、該硬化性化合物を熱硬化させるための熱カチオン発生剤と、有機金属化合物と、導電性粒子5とを含む。上記有機金属化合物は、有機チタネート化合物、有機ジルコネート化合物又は有機アルミネート化合物である。本発明に係る接続構造体1は、第1の接続対象部材2と、第2の接続対象部材4と、該第1,第2の接続対象部材2,4を電気的に接続している接続部3とを備える。接続部3は、上記異方性導電材料により形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の導電性粒子を含む異方性導電材料に関し、例えば、フレキシブルプリント基板、ガラス基板、ガラスエポキシ基板及び半導体チップなどの様々な接続対象部材の電極間を電気的に接続するために用いることができる異方性導電材料、並びに該異方性導電材料を用いた接続構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
ペースト状又はフィルム状の異方性導電材料が広く知られている。該異方性導電材料では、バインダー樹脂などに複数の導電性粒子が分散されている。
【0003】
上記異方性導電材料は、各種の接続構造体を得るために、例えば、フレキシブルプリント基板とガラス基板との接続(FOG(Film on Glass))、半導体チップとフレキシブルプリント基板との接続(COF(Chip on Film))、半導体チップとガラス基板との接続(COG(Chip on Glass))、並びにフレキシブルプリント基板とガラスエポキシ基板との接続(FOB(Film on Board))等に使用されている。
【0004】
上記異方性導電材料により、例えば、半導体チップの電極とガラス基板の電極とを電気的に接続する際には、ガラス基板上に、導電性粒子を含む異方性導電材料を配置する。次に、半導体チップを積層して、加熱及び加圧する。これにより、導電性粒子を圧縮変形し、異方性導電材料を硬化させて、導電性粒子を介して電極間を電気的に接続して接続構造体を得る。
【0005】
上記異方性導電材料の一例として、下記の特許文献1には、脂環式エポキシ樹脂と、ジオール類と、分子内にエポキシ基を有するスチレン系熱可塑性エラストマーと、紫外線活性型カチオン重合触媒と、導電性粒子とを含む導電性エポキシ樹脂組成物が開示されている。
【0006】
また、下記の特許文献2には、エポキシ化合物と、光カチオン発生剤と、カチオン重合の連鎖移動作用を有する連鎖移動剤と、導電性粒子とを含む接着剤組成物が開示されている。上記連鎖移動剤としては、活性エステル又は有機メタレートが挙げられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−60899号公報
【特許文献2】特開2007−100065号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1,2に記載のような従来のカチオン発生剤を含む異方性導電材料を用いて、上記接続構造体を得た場合には、異方性導電材料が硬化した硬化物の接着性が低くなりやすいという問題がある。さらに、得られた接続構造体を長期間使用すると、接着性が低下し、剥離が生じやすくなるという問題もある。
【0009】
本発明の目的は、硬化物の接着性が高く、かつ高い接着性を長期間に渡り維持できる異方性導電材料、並びに該異方性導電材料を用いた接続構造体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の広い局面によれば、加熱により硬化可能な異方性導電材料であって、硬化性化合物と、該硬化性化合物を熱硬化させるための熱カチオン発生剤と、有機金属化合物と、導電性粒子とを含み、上記有機金属化合物が、有機チタネート化合物、有機ジルコネート化合物又は有機アルミネート化合物である、異方性導電材料が提供される。
【0011】
本発明に係る異方性導電材料は、光の照射と加熱との双方により硬化可能な異方性導電材料であってもよい。この場合に、本発明に係る異方性導電材料は、上記硬化性化合物を光硬化させるための光硬化開始剤をさらに含むことが好ましい。
【0012】
上記硬化性化合物の全量100重量部に対して、上記有機金属化合物の含有量は0.01重量部以上、5重量部以下であることが好ましい。上記有機金属化合物は、有機チタネート化合物であることが特に好ましい。
【0013】
本発明に係る異方性導電材料は、フレキシブルプリント基板とガラス基板との接続、又は半導体チップとガラス基板との接続に用いられる異方性導電材料であることが好ましい。本発明に係る異方性導電材料は、フレキシブルプリント基板とガラス基板との接続に用いられる異方性導電材料であることがより好ましい。
【0014】
本発明に係る接続構造体は、第1の接続対象部材と、第2の接続対象部材と、該第1,第2の接続対象部材を電気的に接続している接続部とを備え、該接続部が、上述した異方性導電材料により形成されている。
【0015】
本発明に係る接続構造体では、上記第2の接続対象部材と上記第1の接続対象部材とが、フレキシブルプリント基板とガラス基板とであるか、又は半導体チップとガラス基板とであることが好ましい。本発明に係る接続構造体では、上記第2の接続対象部材と上記第1の接続対象部材とが、フレキシブルプリント基板とガラス基板とであることがより好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る異方性導電材料は、硬化性化合物と熱カチオン発生剤と有機金属化合物と導電性粒子とを含み、更に上記有機金属化合物が、有機チタネート化合物、有機ジルコネート化合物又は有機アルミネート化合物であるので、異方性導電材料の硬化物の接着性を高くすることができる。さらに、本発明に係る異方性導電材料の使用により、硬化物の高い接着性を長期間に渡り維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る異方性導電材料を用いた接続構造体を模式的に示す正面断面図である。
【図2】図2(a)〜(c)は、本発明の一実施形態に係る異方性導電材料を用いて接続構造体を得る各工程を説明するための正面断面図である。
【図3】図3(a)〜(c)は、実施例及び比較例で得られた接続構造体において、圧痕状態の評価における各判定基準で判定された圧痕状態の一例を示す画像である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の詳細を説明する。
【0019】
本発明に係る異方性導電材料は、加熱により硬化可能な異方性導電材料である。本発明に係る異方性導電材料は、光の照射と加熱との双方により硬化可能な異方性導電材料であってもよい。本発明に係る異方性導電材料は、硬化性化合物と、該硬化性化合物を熱硬化させるための熱カチオン発生剤と、有機金属化合物と、導電性粒子とを含む。上記有機金属化合物が、有機チタネート化合物、有機ジルコネート化合物又は有機アルミネート化合物である。
【0020】
本発明に係る異方性導電材料における上記構成の採用によって、本発明に係る異方性導電材料を電極間の電気的な接続に用いた場合に、異方性導電材料が硬化した接続部(硬化物層)の接着性を効果的に高めることができる。さらに、異方性導電材料を用いた接続構造体が長期間使用されても、接続部(硬化物層)の接着性が低下し難くなり、接続対象部材の剥離を抑制できる。このため、接続構造体を長期間使用することが可能になり、接続構造体の信頼性を高めることができる。さらに、上記構成の採用によって、本発明に係る異方性導電材料を用いた接続構造体において、ボイドが生じ難くなる。ボイドが生じ難くなることによっても、硬化物の接着性が高くなる。
【0021】
上記異方性導電材料は、加熱により硬化可能な異方性導電材料であり、上記硬化性化合物として、加熱により硬化可能な硬化性化合物(熱硬化性化合物、又は光及び熱硬化性化合物)を含む。該加熱により硬化可能な硬化性化合物は、光の照射により硬化しない硬化性化合物(熱硬化性化合物)であってもよく、光の照射と加熱との双方により硬化可能な硬化性化合物(光及び熱硬化性化合物)であってもよい。
【0022】
また、上記異方性導電材料は、光の照射と加熱との双方により硬化可能な異方性導電材料であり、上記硬化性化合物として、光の照射により硬化可能な硬化性化合物(光硬化性化合物、又は光及び熱硬化性化合物)をさらに含むことが好ましい。この場合には、光の照射により異方性導電材料を半硬化(Bステージ化)させ、異方性導電材料の流動性を低下させた後、加熱により異方性導電材料を硬化させることができる。上記光の照射により硬化可能な硬化性化合物は、加熱により硬化しない硬化性化合物(光硬化性化合物)であってもよく、光の照射と加熱との双方により硬化可能な硬化性化合物(光及び熱硬化性化合物)であってもよい。本発明に係る異方性導電材料は、光硬化開始剤を含むことが好ましい。本発明に係る異方性導電材料は、上記光硬化開始剤として、光ラジカル発生剤を含むことが好ましい。上記異方性導電材料は、上記硬化性化合物として、熱硬化性化合物を含み、光硬化性化合物、又は光及び熱硬化性化合物をさらに含むことが好ましい。上記異方性導電材料は、上記硬化性化合物として、熱硬化性化合物と光硬化性化合物とを含むことが好ましい。
【0023】
上記熱硬化性化合物又は上記光及び熱硬化性化合物は、エポキシ基を有する硬化性化合物を含むことが好ましく、不飽和二重結合を有する硬化性化合物を含むことも好ましく、(メタ)アクリロイル基を有する硬化性化合物を含むことがより好ましい。上記光硬化性化合物又は上記光及び熱硬化性化合物は、不飽和二重結合を有する硬化性化合物を含むことが好ましく、(メタ)アクリロイル基を有する硬化性化合物を含むことがより好ましい。
【0024】
また、本発明に係る異方性導電材料は、不飽和二重結合と熱硬化性官能基との双方を有する硬化性化合物を含むことが好ましい。
【0025】
以下、先ず、本発明に係る異方性導電材料に含まれている各成分、及び含まれることが好ましい各成分を詳細に説明する。
【0026】
[硬化性化合物]
本発明に係る異方性導電材料に含まれている硬化性化合物は特に限定されない。該硬化性化合物として、従来公知の硬化性化合物が使用可能である。上記硬化性化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0027】
上記硬化性化合物としては特に限定されず、不飽和二重結合を有する硬化性化合物及び環状エーテル基を有する硬化性化合物等が挙げられる。
【0028】
また、上記異方性導電材料の硬化性を高め、電極間の導通信頼性をより一層高め、更に硬化物の接着力をより一層高める観点からは、上記硬化性化合物は、不飽和二重結合を有する硬化性化合物を含むことが好ましく、(メタ)アクリロイル基を有する硬化性化合物を含むことが好ましい。上記不飽和二重結合は、(メタ)アクリロイル基であることが好ましい。上記不飽和二重結合を有する硬化性化合物としては、エポキシ基又を有さず、かつ不飽和二重結合を有する硬化性化合物、及びエポキシ基を有し、かつ不飽和二重結合を有する硬化性化合物が挙げられる。
【0029】
上記(メタ)アクリロイル基を有する硬化性化合物として、(メタ)アクリル酸と水酸基を有する化合物とを反応させて得られるエステル化合物、(メタ)アクリル酸とエポキシ化合物とを反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレート、又はイソシアネートに水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体を反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレート等が好適に用いられる。上記「(メタ)アクリロイル基」は、アクリロイル基とメタクリロイル基とを示す。上記「(メタ)アクリル」は、アクリルとメタクリルとを示す。上記「(メタ)アクリレート」は、アクリレートとメタクリレートとを示す。
【0030】
上記(メタ)アクリル酸と水酸基を有する化合物とを反応させて得られるエステル化合物は特に限定されない。該エステル化合物として、単官能のエステル化合物、2官能のエステル化合物及び3官能以上のエステル化合物のいずれも使用可能である。
【0031】
上記異方性導電材料の硬化性を高め、電極間の導通信頼性をより一層高め、更に硬化物の接着力をより一層高める観点からは、上記不飽和二重結合を有する硬化性化合物の分子量は好ましくは500以上、より好ましくは1000以上、好ましくは20000以下である。なお、本明細書において分子量とは、上記硬化性化合物が重合体ではない場合、及び上記硬化性化合物の構造式が特定できる場合は、当該構造式から算出できる分子量を意味する。また、上記硬化性化合物が重合体である場合は、重量平均分子量を意味する。
【0032】
上記異方性導電材料の硬化性を高め、電極間の導通信頼性をより一層高め、更に硬化物の接着力をより一層高める観点からは、上記異方性導電材料は、不飽和二重結合と熱硬化性官能基との双方を有する硬化性化合物を含むことが好ましい。上記熱硬化性官能基としては、エポキシ基、オキセタン基等が挙げられる。上記不飽和二重結合と熱硬化性官能基との双方を有する硬化性化合物は、エポキシ基を有し、かつ不飽和二重結合を有する硬化性化合物であることが好ましく、熱硬化性官能基と(メタ)アクリロイル基との双方を有する硬化性化合物であることが好ましく、エポキシ基を有し、かつ(メタ)アクリロイル基を有する硬化性化合物であることが好ましい。
【0033】
上記エポキシ基を有し、かつ(メタ)アクリロイル基を有する硬化性化合物は、エポキシ基を2個以上有する硬化性化合物の一部の水酸基を、(メタ)アクリロイル基に変換することにより得られる硬化性化合物であることが好ましい。このような硬化性化合物は、部分(メタ)アクリレート化エポキシ化合物である。
【0034】
上記硬化性化合物は、エポキシ基を2個以上有する化合物の水酸基と、(メタ)アクリル酸との反応物であることが好ましい。この反応物は、エポキシ基を2個以上有する化合物と(メタ)アクリル酸とを、常法に従って酸触媒の存在下で反応することにより得られる。水酸基の20%以上が(メタ)アクリロイル基に変換(転化率)されていることが好ましい。該転化率は、より好ましくは30%以上、好ましくは80%以下、より好ましくは70%以下である。水酸基の40%以上、60%以下が(メタ)アクリロイル基に変換されていることが最も好ましい。
【0035】
上記部分(メタ)アクリレート化エポキシ化合物としては、ビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート、クレゾールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート、カルボン酸無水物変性エポキシ(メタ)アクリレート、及びフェノールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0036】
上記硬化性化合物として、エポキシ基を2個以上有するフェノキシ樹脂の一部の水酸基を(メタ)アクリロイル基に変換した変性フェノキシ樹脂を用いてもよい。すなわち、エポキシ基と(メタ)アクリロイル基とを有する変性フェノキシ樹脂を用いてもよい。
【0037】
上記「フェノキシ樹脂」は、一般的には、例えばエピハロヒドリンと2価フェノール化合物とを反応させて得られる樹脂、又は2価のエポキシ化合物と2価のフェノール化合物とを反応させて得られる樹脂である。
【0038】
また、上記硬化性化合物は、架橋性化合物であってもよく、非架橋性化合物であってもよい。
【0039】
上記架橋性化合物の具体例としては、例えば、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、グリセリンメタクリレートアクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸ビニル、ジビニルベンゼン、ポリエステル(メタ)アクリレート、及びウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0040】
上記非架橋性化合物の具体例としては、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート及びテトラデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0041】
さらに、上記硬化性化合物としては、オキセタン化合物、エポキシ化合物、エピスルフィド化合物、(メタ)アクリル化合物、フェノール化合物、アミノ化合物、不飽和ポリエステル化合物、ポリウレタン化合物、シリコーン化合物及びポリイミド化合物等が挙げられる。
【0042】
上記異方性導電材料の硬化を容易に制御したり、接続構造体における導通信頼性をより一層高めたりする観点からは、上記硬化性化合物は、エポキシ基を有する硬化性化合物を含むことが好ましい。エポキシ基を有する硬化性化合物は、エポキシ化合物である。異方性導電材料の硬化性を高める観点からは、上記硬化性化合物100重量%中、上記エポキシ基を有する化合物の含有量は、好ましくは10重量%以上、より好ましくは20重量%以上、100重量%以下である。上記硬化性化合物の全量が上記エポキシ基を有する硬化性化合物であってもよい。
【0043】
また、本発明に係る異方性導電材料は、エポキシ基又はチイラン基を有する硬化性化合物と、不飽和二重結合を有する硬化性化合物とを含むことが好ましい。
【0044】
上記エポキシ基又はチイラン基を有する硬化性化合物は、芳香族環を有することが好ましい。上記芳香族環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、テトラセン環、クリセン環、トリフェニレン環、テトラフェン環、ピレン環、ペンタセン環、ピセン環及びペリレン環等が挙げられる。なかでも、上記芳香族環は、ベンゼン環、ナフタレン環又はアントラセン環であることが好ましく、ベンゼン環又はナフタレン環であることがより好ましい。また、ナフタレン環は、平面構造を有するためにより一層速やかに硬化させることができるので好ましい。
【0045】
熱硬化性化合物と光硬化性化合物とを併用する場合には、光硬化性化合物と熱硬化性化合物との配合比は、光硬化性化合物と熱硬化性化合物との種類に応じて適宜調整される。上記異方性導電材料は、光硬化性化合物と熱硬化性化合物とを重量比で、1:99〜90:10で含むことが好ましく、5:95〜60:40で含むことがより好ましく、10:90〜40:60で含むことが更に好ましい。
【0046】
(熱カチオン発生剤)
上記異方性導電材料は、熱カチオン発生剤を含む。該熱カチオン発生剤として従来公知の熱開始剤が使用可能である。また、本発明では、カチオン発生剤は、異方性導電材料を光硬化させるための光カチオン発生剤として用いているのではなく、異方性導電材料を熱硬化させるための熱カチオン発生剤として用いている。特に、異方性導電材料を熱硬化させるための熱カチオン発生剤を特定の上記有機金属化合物と併用することにより、硬化物の接着性を効果的に高め、かつ高い接着性を長期間に渡り効果的に維持することが可能になる。上記熱カチオン発生剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0047】
上記熱カチオン発生剤として、ヨードニウム塩やスルフォニウム塩が好適に用いられる。例えば、上記熱カチオン発生剤の市販品としては、三新化学社製のサンエイドSI−45L、SI−60L、SI−80L、SI−100L、SI−110L、SI−150Lや、ADEKA製のアデカオプトマーSP−150、SP−170等が挙げられる。
【0048】
好ましい熱カチオン発生剤のアニオン部分としては、PF、BF、及びB(Cが挙げられる。
【0049】
上記熱カチオン発生剤の含有量は特に限定されない。加熱により硬化可能な硬化性化合物100重量部に対して、上記熱カチオン発生剤の含有量は、好ましくは0.01重量部以上、より好ましくは0.05重量部以上、更に好ましくは5重量部以上、特に好ましくは10重量部以上、好ましくは40重量部以下、より好ましくは30重量部以下、更に好ましくは20重量部以下である。上記熱カチオン発生剤の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、異方性導電材料が充分に熱硬化する。
【0050】
(光硬化開始剤)
上記光硬化開始剤は特に限定されない。上記光硬化開始剤として、従来公知の光硬化開始剤を用いることができる。電極間の導通信頼性及び接続構造体の接続信頼性をより一層高める観点からは、上記異方性導電材料は、光ラジカル発生剤を含むことが好ましい。上記光硬化開始剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0051】
上記光硬化開始剤としては、特に限定されず、アセトフェノン光硬化開始剤(アセトフェノン光ラジカル発生剤)、ベンゾフェノン光硬化開始剤(ベンゾフェノン光ラジカル発生剤)、チオキサントン、ケタール光硬化開始剤(ケタール光ラジカル発生剤)、ハロゲン化ケトン、アシルホスフィノキシド及びアシルホスフォナート等が挙げられる。
【0052】
上記アセトフェノン光硬化開始剤の具体例としては、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、メトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、及び2−ヒドロキシ−2−シクロヘキシルアセトフェノン等が挙げられる。上記ケタール光硬化開始剤の具体例としては、ベンジルジメチルケタール等が挙げられる。
【0053】
上記光硬化開始剤の含有量は特に限定されない。光の照射により硬化可能な硬化性化合物100重量部に対して、上記光硬化開始剤の含有量(光硬化開始剤が光ラジカル発生剤である場合には光ラジカル発生剤の含有量)は、好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは0.2重量部以上、好ましくは2重量部以下、より好ましくは1重量部以下である。上記光硬化開始剤の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、異方性導電材料を適度に光硬化させることができる。異方性導電材料に光を照射し、Bステージ化することにより、異方性導電材料の流動を抑制できる。
【0054】
(有機金属化合物)
上記異方性導電材料に含まれている有機金属化合物は、有機チタネート化合物、有機ジルコネート化合物又は有機アルミネート化合物である。これらの特定の有機金属化合物を用いることで、熱カチオン発生剤を含む異方性導電材料の熱硬化がかなり効果的に進行する。さらに、これらの有機金属化合物を用いることで、熱カチオン発生剤を含む異方性導電材料を硬化させた硬化物の接着性がより一層高くなり、高い接着性をより一層長期間に渡り維持できる。上記有機金属化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0055】
硬化物の接着性をより一層高め、高い接着性をより一層長期間に渡り維持する観点からは、上記有機金属化合物は、アルコキシ基を有することが好ましく、アルコキシ基を有する有機チタネート化合物、アルコキシ基を有する有機ジルコネート化合物又はアルコキシ基を有する有機アルミネート化合物であることが好ましい。また、硬化物の接着性をより一層高め、高い接着性をより一層長期間に渡り維持する観点からは、上記有機金属化合物は、有機チタネート化合物又は有機ジルコネート化合物であることが好ましく、有機チタネート化合物であることがより好ましい。
【0056】
好ましい上記有機チタネート化合物としては、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラn−プロポキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラn−ブトキシチタン、テトラキス(2−エチルヘキシルオキシ)チタン及びチタニウム−イソプロポキシオクチレングリコレート、並びにこれらの重合体等が挙げられる。これら以外の有機チタネート化合物を用いてもよい。
【0057】
好ましい上記有機ジルコネート化合物としては、ジルコニウムテトラメトキシド、ジルコニウムテトラエトキシド、ジルコニウムテトライソプロポキシド及びジルコニウムテトラn−ブトキシド、並びにこれらの重合体等が挙げられる。これら以外の有機ジルコネート化合物を用いてもよい。
【0058】
好ましい上記有機アルミネート化合物としては、トリメトキシアルミニウム、トリエトキシアルミニウム、トリn−プロポキシアルミニウム、トリイソプロポキシアルミニウム、トリn−ブトキシアルミニウム及びアセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート、並びにこれらの重合体等が挙げられる。これら以外の有機アルミネート化合物を用いてもよい。
【0059】
硬化物の接着性をより一層高め、高い接着性をより一層長期間に渡り維持する観点からは、上記有機チタネート化合物は、炭素数4以下のアルコキシ基を有する有機チタン化合物又は該有機チタン化合物の誘導体であることが好ましく、テトラn−ブトキシチタン又はテトラn−ブトキシチタンの重合体であることがより好ましい。
【0060】
上記硬化性化合物100重量部に対して、有機チタネート化合物、有機ジルコネート化合物又は有機アルミネート化合物である上記有機金属化合物の含有量は、好ましくは0.001重量部以上、より好ましくは0.01重量部以上、更に好ましくは0.1重量部以上、好ましくは20重量部以下、より好ましくは10重量部以下、更に好ましくは5重量部以下である。上記有機金属化合物の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、硬化物の接着性がより一層高くなり、高い接着性をより一層長期間に渡り維持できる。
【0061】
硬化物の接着性を効果的に高め、かつ硬化物の高い接着性を長期間に渡り効果的に維持する観点からは、上記硬化性化合物100重量部に対して、上記有機金属化合物の含有量は、0.01重量部以上、5重量部以下であることが特に好ましい。
【0062】
(導電性粒子)
上記異方性導電材料に含まれている導電性粒子は、第1,第2の接続対象部材の電極間を電気的に接続する。上記導電性粒子は、導電性を有する粒子であれば特に限定されない。導電性粒子の導電層の表面が絶縁層により被覆されていてもよい。導電性粒子の導電層の表面が、絶縁性粒子により被覆されていてもよい。これらの場合には、接続対象部材の接続時に、導電層と電極との間の絶縁層又は絶縁性粒子が排除される。上記導電性粒子としては、例えば、有機粒子、無機粒子、有機無機ハイブリッド粒子もしくは金属粒子等の表面を金属層で被覆した導電性粒子、並びに実質的に金属のみで構成される金属粒子等が挙げられる。上記金属層は特に限定されない。上記金属層としては、金層、銀層、銅層、ニッケル層、パラジウム層及び錫を含有する金属層等が挙げられる。
【0063】
電極間の導通信頼性をより一層高める観点からは、上記導電性粒子は、樹脂粒子と、該樹脂粒子の表面上に配置された導電層とを有することが好ましい。
【0064】
上記導電性粒子の平均粒子径は、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上、好ましくは100μm以下、より好ましくは20μm以下、更に好ましくは15μm以下、特に好ましくは10μm以下、最も好ましくは5μm未満である。
【0065】
導電性粒子の平均粒子径は、1μm以上、5μm未満であることが最も好ましい。本発明に係る異方性導電材料の使用により、導電性粒子の平均粒子径が5μm未満であって、導電性粒子が小さくても、接続構造体の接続信頼性を十分に高めることができる。
【0066】
上記導電性粒子の「平均粒子径」は、数平均粒子径を示す。導電性粒子の平均粒子径は、任意の導電性粒子50個を電子顕微鏡又は光学顕微鏡にて観察し、平均値を算出することにより求められる。
【0067】
上記導電性粒子の含有量は特に限定されない。異方性導電材料100重量%中、上記導電性粒子の含有量は、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上、更に好ましくは1重量%以上、好ましくは40重量%以下、より好ましくは30重量%以下、更に好ましくは19重量%以下である。上記導電性粒子の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、接続されるべき上下の電極間に導電性粒子を容易に配置できる。さらに、接続されてはならない隣接する電極間が複数の導電性粒子を介して電気的に接続され難くなる。すなわち、隣り合う電極間の短絡をより一層防止できる。
【0068】
(他の成分)
上記異方性導電材料は、シランカップリング剤を含んでいてもよい。上記有機金属化合物と上記シランカップリング剤との併用により、硬化物の接着性がより一層高くなり、高い接着性をより一層長期間に渡り維持できる。上記シランカップリング剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0069】
上記シランカップリング剤としては、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、及びN−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。これら以外のシランカップリング剤を用いてもよい。上記シランカップリング剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0070】
上記硬化性化合物100重量部に対して、上記シランカップリング剤の含有量は、好ましくは0.001重量部以上、より好ましくは0.01重量部以上、更に好ましくは0.1重量部以上、好ましくは20重量部以下、より好ましくは10重量部以下、更に好ましくは5重量部以下である。上記シランカップリング剤の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、硬化物の接着性がより一層高くなり、高い接着性をより一層長期間に渡り維持できる。
【0071】
上記異方性導電材料は、フィラーを含むことが好ましい。フィラーの使用により、異方性導電材料の硬化物の熱線膨張率を抑制できる。上記フィラーの具体例としては、シリカ、窒化アルミニウム、アルミナ、ガラス、窒化ボロン、窒化ケイ素、シリコーン、カーボン、グラファイト、グラフェン及びタルク等が挙げられる。フィラーは1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。熱伝導率が高いフィラーを用いると、本硬化時間が短くなる。
【0072】
上記異方性導電材料は、溶剤を含んでいてもよい。該溶剤の使用により、異方性導電材料の粘度を容易に調整できる。上記溶剤としては、例えば、酢酸エチル、メチルセロソルブ、トルエン、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、n−ヘキサン、テトラヒドロフラン及びジエチルエーテル等が挙げられる。
【0073】
(異方性導電材料の詳細及び用途)
本発明に係る異方性導電材料は、ペースト状又はフィルム状の異方性導電材料であり、ペースト状の異方性導電材料であることが好ましい。ペースト状の異方性導電材料は、異方性導電ペーストである。フィルム状の異方性導電材料は、異方性導電フィルムである。異方性導電材料が異方性導電フィルムである場合、該導電性粒子を含む異方性導電フィルムに、導電性粒子を含まないフィルムが積層されてもよい。
【0074】
本発明に係る異方性導電材料は、異方性導電ペーストであって、ペースト状の状態で接続対象部材上に塗布される異方性導電ペーストであることが好ましい。
【0075】
上記異方性導電ペーストの25℃での粘度は、好ましくは20Pa・s以上、より好ましくは100Pa・s以上、好ましくは700Pa・s以下、より好ましくは300Pa・s以下である。上記粘度が上記下限以上であると、異方性導電ペースト中での導電性粒子の沈降を抑制できる。上記粘度が上記上限以下であると、導電性粒子の分散性がより一層高くなる。塗布前の上記異方性導電ペーストの上記粘度が上記範囲内であれば、第1の接続対象部材上に異方性導電ペーストを塗布した後に、硬化前の異方性導電ペーストの流動をより一層抑制でき、さらにボイドがより一層生じ難くなる。
【0076】
本発明に係る異方性導電材料は、様々な接続対象部材を接着するために使用できる。上記異方性導電材料は、第1,第2の接続対象部材が電気的に接続されている接続構造体を得るために好適に用いられる。
【0077】
図1に、本発明の一実施形態に係る異方性導電材料を用いた接続構造体の一例を模式的に断面図で示す。
【0078】
図1に示す接続構造体1は、第1の接続対象部材2と、第2の接続対象部材4と、第1,第2の接続対象部材2,4を電気的に接続している接続部3とを備える。接続部3は、硬化物層であり、導電性粒子5を含む異方性導電材料を硬化させることにより形成されている。
【0079】
第1の接続対象部材2は上面2aに、複数の第1の電極2bを有する。第2の接続対象部材4は下面4aに、複数の第2の電極4bを有する。第1の電極2bと第2の電極4bとが、1つ又は複数の導電性粒子5により電気的に接続されている。従って、第1,第2の接続対象部材2,4が導電性粒子5により電気的に接続されている。
【0080】
第1,第2の電極2b,4b間の接続は、通常、第1の接続対象部材2と第2の接続対象部材4とを異方性導電材料を介して第1,第2の電極2b,4b同士が対向するように重ね合わせた後に、異方性導電材料を硬化させる際に、加圧することにより行われる。加圧により、一般に導電性粒子5は圧縮される。
【0081】
第1,第2の接続対象部材は、特に限定されない。第1,第2の接続対象部材としては、具体的には、半導体チップ、コンデンサ及びダイオード等の電子部品、並びにプリント基板、フレキシブルプリント基板及びガラス基板等の回路基板などの電子部品等が挙げられる。上記異方性導電材料は、電子部品の接続に用いられる異方性導電材料であることが好ましい。
【0082】
図1に示す接続構造体1は、例えば、図2(a)〜(c)に示す状態を経て、以下のようにして得ることができる。
【0083】
図2(a)に示すように、第1の電極2bを上面2aに有する第1の接続対象部材2を用意する。次に、第1の接続対象部材2の上面2aに、複数の導電性粒子5を含む異方性導電材料を配置し、第1の接続対象部材2の上面2aに異方性導電材料層3Aを形成する。このとき、第1の電極2b上に、1つ又は複数の導電性粒子5が配置されていることが好ましい。
【0084】
次に、異方性導電材料層3Aに光を照射することにより、異方性導電材料層3Aの硬化を進行させる。図2(a)〜(c)では、異方性導電材料層3Aに光を照射して、異方性導電材料層3Aの硬化を進行させて、異方性導電材料層3AをBステージ化している。すなわち、図2(b)に示すように、第1の接続対象部材2の上面2aに、Bステージ化された異方性導電材料層3Bを形成している。Bステージ化により、第1の接続対象部材2とBステージ化された異方性導電材料層3Bとが仮接着される。Bステージ化された異方性導電材料層3Bは、半硬化状態にある半硬化物である。Bステージ化された異方性導電材料層3Bは、完全に硬化しておらず、熱硬化がさらに進行され得る。但し、異方性導電材料層3AをBステージ化せずに、異方性導電材料層3Aを加熱して、異方性導電材料層3Aを一度に硬化させてもよい。
【0085】
異方性導電材料層3Aの硬化を効果的に進行させるために、光を照射する際の光照射強度は0.1〜8000mW/cmの範囲内であることが好ましい。積算光量は、0.1〜20000J/cmであることが好ましい。光を照射する際に用いる光源は特に限定されない。該光源としては、例えば、波長420nm以下に充分な発光分布を有する光源等が挙げられる。また、光源の具体例としては、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプ及びLEDランプ等が挙げられる。
【0086】
次に、図2(c)に示すように、Bステージ化された異方性導電材料層3Bの上面3aに、第2の接続対象部材4を積層する。第1の接続対象部材2の上面2aの第1の電極2bと、第2の接続対象部材4の下面4aの第2の電極4bとが対向するように、第2の接続対象部材4を積層する。
【0087】
さらに、第2の接続対象部材4の積層の際に、Bステージ化された異方性導電材料層3Bを加熱することにより、Bステージ化された異方性導電材料層3Bをさらに硬化させ、接続部3を形成する。ただし、第2の接続対象部材4の積層の前に、Bステージ化された異方性導電材料層3Bを加熱してもよい。さらに、第2の接続対象部材4の積層の後にBステージ化された異方性導電材料層3Bを加熱してもよい。
【0088】
加熱により異方性導電材料層3A又はBステージ化された異方性導電材料層3Bを硬化させる際の加熱温度は、好ましくは130℃以上、より好ましくは150℃以上、好ましくは250℃以下、より好ましくは200℃以下である。
【0089】
Bステージ化された異方性導電材料層3Bを硬化させる際に、加圧することが好ましい。加圧によって第1の電極2bと第2の電極4bとで導電性粒子5を圧縮することにより、第1,第2の電極2b,4bと導電性粒子5との接触面積を大きくすることができる。このため、導通信頼性を高めることができる。さらに、導電性粒子5を圧縮することで、第1,第2の電極2b,4b間の距離が拡がっても、この拡がりに追従するように導電性粒子5の粒子径が大きくなる。
【0090】
Bステージ化された異方性導電材料層3Bを硬化させることにより、第1の接続対象部材2と第2の接続対象部材4とが、接続部3を介して接続される。また、第1の電極2bと第2の電極4bとが、導電性粒子5を介して電気的に接続される。このようにして、異方性導電材料を用いた図1に示す接続構造体1を得ることができる。ここでは、光硬化と熱硬化とが併用されているため、異方性導電材料を短時間で硬化させることができる。
【0091】
本発明に係る異方性導電材料は、例えば、フレキシブルプリント基板とガラス基板との接続(FOG(Film on Glass))、半導体チップとフレキシブルプリント基板との接続(COF(Chip on Film))、半導体チップとガラス基板との接続(COG(Chip on Glass))、又はフレキシブルプリント基板とガラスエポキシ基板との接続(FOB(Film on Board))等に使用できる。なかでも、上記異方性導電材料は、FOG用途又はCOG用途に好適であり、COG用途により好適である。本発明に係る異方性導電材料は、フレキシブルプリント基板とガラス基板との接続、又は半導体チップとガラス基板との接続に用いられる異方性導電材料であることが好ましく、フレキシブルプリント基板とガラス基板との接続に用いられる異方性導電材料であることがより好ましい。
【0092】
本発明に係る接続構造体では、上記第2の接続対象部材と上記第1の接続対象部材とが、フレキシブルプリント基板とガラス基板とであるか、又は半導体チップとガラス基板とであることが好ましく、フレキシブルプリント基板とガラス基板とであることがより好ましい。
【0093】
FOG用途では、L/Sが比較的広いため、導電性粒子の粒径も大きく濃度も低いので、接続時の圧力が低く、充分な圧痕や樹脂充填性が得られず、電極間の導通信頼性、及び硬化物層における空隙(ボイド)の発生が問題となることが多い。これに対して、本発明に係る異方性導電材料の使用により、FOG用途において、電極間の導通信頼性を効果的に高めることができ、硬化物層における空隙(ボイド)の発生を効果的に抑制できる。
【0094】
COG用途では、L/Sが比較的狭ピッチなことから、異方導電性材料を加熱したときの流動性が不足すると、電極ライン間に異方導電性材料が十分に充填されないため、電極間の導通信頼性、及び硬化物層におけるボイドの発生が問題となることが多い。これに対して、本発明に係る異方性導電材料の使用により、COG用途において、電極間の導通信頼性を効果的に高めることができ、硬化物層におけるボイドの発生を効果的に抑制できる。
【0095】
また、FOG用途では、フレキシブルプリント基板が比較的柔らかいために、異方性導電材料の硬化物の接着力が低い場合に剥離が生じやすいという問題がある。この問題に対して、本発明に係る異方性導電材料の使用により、硬化物の接着力を効果的に高くし、フレキシブルプリント基板の剥離を十分に抑制できる。
【0096】
以下、本発明について、実施例および比較例を挙げて具体的に説明する。本発明は、以下の実施例のみに限定されない。
【0097】
実施例及び比較例では、以下の材料を用いた。
【0098】
(有機金属化合物及び該有機金属化合物に類似した化合物)
(1)B−1(有機チタネート化合物、テトラ−n−ブトキシチタン(TBT)、日本曹達社製)
(2)B−4(有機チタネート化合物、テトラ−n−ブトキシチタンの重合体、日本曹達社製)
(3)TOT(有機チタネート化合物、テトラキス(2−エチルヘキシルオキシ)チタン、日本曹達社製)
(4)TBZRR(有機ジルコネート化合物、テトラ−n−ブトキシジルコニウム、日本曹達社製)
(5)プレンアクトAL−M(有機アルミネート化合物、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート、味の素ファインテクノ社製)
(6)KBM−403(3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、信越化学工業社製)
【0099】
(実施例1)
ビスフェノールA変性エポキシ樹脂(DIC社製「EPICLON EXA−4850−150」)40重量部、及びビスフェノールFエポキシ樹脂(DIC社製「EXA−835LV」)30重量部に、熱カチオン発生剤であるSI−60L(三新化学社製のサンエイド)3重量部と、光硬化性化合物であるエポキシアクリレート(ダイセル・サイテック社製「EBECRYL3702」)20重量部と、光重合開始剤であるアシルホスフィンオキサイド系化合物(チバ・ジャパン社製「DAROCUR TPO」)1重量部と、フィラーである平均粒子径0.25μmのシリカ10重量部及び平均粒子径10μmの導電性粒子4重量部と、有機金属化合物である上記(1)B−1(有機チタネート化合物、テトラ−n−ブトキシチタン(TBT)、日本曹達社製)1重量部とを添加し、遊星式攪拌機を用いて2000rpmで5分間攪拌することにより、異方性導電ペーストを得た。なお、用いた導電性粒子は、ジビニルベンゼン樹脂粒子の表面にニッケルめっき層が形成されており、かつ該ニッケルめっき層の表面に金めっき層が形成されている金属層を有する導電性粒子である。
【0100】
接続構造体(FOG)の作製:
L/Sが100μm/100μm、長さ1mmのアルミニウム電極パターンが上面に形成されたガラス基板(第1の接続対象部材)を用意した。また、L/Sが100μm/100μm、長さ2mmの金メッキされたCu電極パターンが下面に形成されたフレキシブルプリント基板(第2の接続対象部材)を用意した。
【0101】
上記ガラス基板上に、作製直後の異方性導電ペーストを厚さ40μmとなるようにディスペンサーを用いて塗工し、異方性導電ペースト層を形成した。次に、異方性導電ペースト層上に上記フレキシブルプリント基板を、電極同士が対向するように積層した。365nmの紫外線を光照射強度が3000mW/cmとなるように3秒間照射し、光重合によって異方性導電ペースト層を半硬化させ、Bステージ化した。その後、大橋製作所製BD−02を用い、異方性導電ペースト層の温度が170℃(本圧着温度)となるように加熱圧着ヘッドの温度を調整しながら、フレキシブルプリント基板の上面に加圧圧着ヘッドを載せ、1MPaの圧力をかけて170℃で5秒間異方性導電ペースト層を硬化させ、接続構造体Aを得た。
【0102】
(実施例2)
上記(1)B−1(有機チタネート化合物、テトラ−n−ブトキシチタン(TBT)、日本曹達社製)を、有機金属化合物である上記(2)B−4(有機チタネート化合物、テトラ−n−ブトキシチタンの重合体、日本曹達社製)に変更したこと以外は実施例1と同様にして、異方性導電ペーストを得た。得られた異方性導電ペーストを用いて、実施例1と同様にして、接続構造体を得た。
【0103】
(実施例3)
上記(1)B−1(有機チタネート化合物、テトラ−n−ブトキシチタン(TBT)、日本曹達社製)を、有機金属化合物である上記(3)TOT(有機チタネート化合物、テトラキス(2−エチルヘキシルオキシ)チタン、日本曹達社製)に変更したこと以外は実施例1と同様にして、異方性導電ペーストを得た。得られた異方性導電ペーストを用いて、実施例1と同様にして、接続構造体を得た。
【0104】
(実施例4)
上記(1)B−1(有機チタネート化合物、テトラ−n−ブトキシチタン(TBT)、日本曹達社製)を、有機金属化合物である上記(4)TBZRR(有機ジルコネート化合物、テトラ−n−ブトキシジルコニウム、日本曹達社製)に変更したこと以外は実施例1と同様にして、異方性導電ペーストを得た。得られた異方性導電ペーストを用いて、実施例1と同様にして、接続構造体を得た。
【0105】
(実施例5)
上記(1)B−1(有機チタネート化合物、テトラ−n−ブトキシチタン(TBT)、日本曹達社製)を、有機金属化合物である上記(5)プレンアクトAL−M(有機アルミネート化合物、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート、味の素ファインテクノ社製)に変更したこと以外は実施例1と同様にして、異方性導電ペーストを得た。得られた異方性導電ペーストを用いて、実施例1と同様にして、接続構造体を得た。
【0106】
(実施例6)
上記(1)B−1(有機チタネート化合物、テトラ−n−ブトキシチタン(TBT)、日本曹達社製)1重量部を、有機金属化合物である上記(2)B−4(有機チタネート化合物、テトラ−n−ブトキシチタンの重合体、日本曹達社製)0.5重量部とKBM−403(3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、信越化学工業社製)0.5重量部とに変更したこと以外は実施例1と同様にして、異方性導電ペーストを得た。得られた異方性導電ペーストを用いて、実施例1と同様にして、接続構造体を得た。
【0107】
(実施例7)
上記(1)B−1(有機チタネート化合物、テトラ−n−ブトキシチタン(TBT)、日本曹達社製)の配合量を6重量部に変更した以外は実施例1と同様にして、異方性導電ペーストを得た。得られた異方性導電ペーストを用いて、実施例1と同様にして、接続構造体を得た。
【0108】
(比較例1)
上記(1)B−1(有機チタネート化合物、テトラ−n−ブトキシチタン(TBT)、日本曹達社製)を配合しなかったこと以外は実施例1と同様にして、異方性導電ペーストを得た。得られた異方性導電ペーストを用いて、実施例1と同様にして、接続構造体を得た。
【0109】
(比較例2)
上記(1)B−1(有機チタネート化合物、テトラ−n−ブトキシチタン(TBT)、日本曹達社製)を、KBM−403(3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、信越化学工業社製)に変更した以外は実施例1と同様にして、異方性導電ペーストを得た。得られた異方性導電ペーストを用いて、実施例1と同様にして、接続構造体を得た。
【0110】
(評価)
(1)導通信頼性(接続抵抗値)
得られた接続構造体の上下の電極間の接続抵抗をそれぞれ、4端子法により測定した。
100箇所の接続抵抗の平均値を算出した。なお、電圧=電流×抵抗の関係から、一定の電流を流した時の電圧を測定することにより接続抵抗を求めることができる。得られた接続構造体の導通信頼性を下記の基準で判定した。
【0111】
[導通信頼性の判定基準]
○○:3Ω未満
○:3Ω以上、5Ω未満
×:5Ω以上
【0112】
(2)接着性
得られた接続構造体を用いて、90°ピール試験をすることにより接着性を評価した。接着性を下記の基準で判定した。
【0113】
[接着性の判定基準]
○○:ピール強度が10N/cm以上
○:ピール強度が5N/cm以上、10N/cm未満
×:ピール強度が5N/cm未満
【0114】
(3)圧痕状態
得られた接続構造体における導電性粒子と電極との接続部分について、電極に形成された圧痕の状態を観察した。
【0115】
偏光顕微鏡を使用し、1電極あたり(200μmあたり)に明らかな球状の圧痕が確認できる場合を、良好な圧痕が形成されていると判断した。圧痕状態を下記の判定基準で判定した。
【0116】
[圧痕状態の判定基準]
○○:圧痕が非常に濃い
○:圧痕が濃い
×:圧痕が薄い
【0117】
なお、図3(a)〜(c)に、実施例及び比較例で得られた接続構造体において、圧痕状態の評価における各判定基準で判定された圧痕状態の一例を示す画像を示した。図3(a)は、「○○」と判定された圧痕状態の画像であり、図3(b)は「○」と判定された圧痕状態の画像であり、図3(c)は「×」と判定された圧痕状態の画像である。
【0118】
(4)外観(ボイドの有無)
得られた接続構造体において、異方性導電ペーストが硬化した硬化物層にボイドが生じているか否かを、透明ガラス基板側から光学顕微鏡により観察した。
【0119】
得られた接続構造体の外観を下記の基準で判定した。
【0120】
[外観の判定基準]
○○:ボイドなし
○:接続構造体中、5個以下で30mm×30mmボイドあり
×:接続構造体中、1つ以上で100mm×100mmの大きさのボイドあり
【0121】
(5)長期接着性
得られた接続構造体を85℃85%で500時間放置した。放置後の接続構造体における接着性を上記(2)の接着性と同様にして評価した。長期接着性を下記の基準で判定した。
【0122】
[長期接着性の判定基準]
○○:3Ω未満
○:3Ω以上、4Ω未満
△:4Ω以上、5Ω未満
×:5Ω以上
【0123】
結果を下記の表1に示す。
【0124】
【表1】

【符号の説明】
【0125】
1…接続構造体
2…第1の接続対象部材
2a…上面
2b…第1の電極
3…接続部
3a…上面
3A…異方性導電材料層
3B…Bステージ化された異方性導電材料層
4…第2の接続対象部材
4a…下面
4b…第2の電極
5…導電性粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱により硬化可能な異方性導電材料であって、
硬化性化合物と、
前記硬化性化合物を熱硬化させるための熱カチオン発生剤と、
有機金属化合物と、
導電性粒子とを含み、
前記有機金属化合物が、有機チタネート化合物、有機ジルコネート化合物又は有機アルミネート化合物である、異方性導電材料。
【請求項2】
光の照射と加熱との双方により硬化可能な異方性導電材料であって、
前記硬化性化合物を光硬化させるための光硬化開始剤をさらに含む、請求項1に記載の異方性導電材料。
【請求項3】
前記硬化性化合物の全量100重量部に対して、前記有機金属化合物の含有量が0.01重量部以上、5重量部以下である、請求項1又は2に記載の異方性導電材料。
【請求項4】
前記有機金属化合物が、有機チタネート化合物である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の異方性導電材料。
【請求項5】
フレキシブルプリント基板とガラス基板との接続、又は半導体チップとガラス基板との接続に用いられる異方性導電材料である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の異方性導電材料。
【請求項6】
フレキシブルプリント基板とガラス基板との接続に用いられる異方性導電材料である、請求項5に記載の異方性導電材料。
【請求項7】
第1の接続対象部材と、第2の接続対象部材と、該第1,第2の接続対象部材を電気的に接続している接続部とを備え、
前記接続部が、請求項1〜6のいずれか1項に記載の異方性導電材料により形成されている、接続構造体。
【請求項8】
前記第2の接続対象部材と前記第1の接続対象部材とが、フレキシブルプリント基板とガラス基板とであるか、又は半導体チップとガラス基板とである、請求項7に記載の接続構造体。
【請求項9】
前記第2の接続対象部材と前記第1の接続対象部材とが、フレキシブルプリント基板とガラス基板とである、請求項8に記載の接続構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−28726(P2013−28726A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−165915(P2011−165915)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】