説明

発光性高分子

【課題】単独重合が可能で、非配位性溶媒に溶解し、モノマーの毒性が低い有機金属系発光性高分子を提供する。
【解決手段】励起によって可視領域で発光する、次の一般式で表されるモノマーであって、(化1)Mn+(L)n-(CL)x、n+は、Mの価数を表し、(L)は、1又は2以上の総計n−価を有するアニオンリガンドを表し、前記リガンドの少なくとも1つは次の式を有する。(化2)Ch−X−Y、Chは、キレート結合部及びキレート結合部が共役されたリガンドの残りの部分を含むリガンドの断片であるキレート基であり、Yは、オレフィン基を表し、Xは、少なくとも4の炭素及び/又はヘテロ原子の鎖を含むスペーサーであり、xは0,1又は2であり、CLは中性コリガンドであり、Mは2、12、13族、d−ブロック又はf−ブロックの金属原子を表すモノマー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機金属系発光性高分子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高分子構造に組み込まれた発光性金属錯体は、イオンの拡散及び発光層の結晶化が高分子燐光体によって妨げられるため、十分に改善されたEL特性を有するはずである。これははるかにより安定した装置構造をもたらす。さらに、この新しいタイプの金属モノマー錯体は、化学線(UV光、可視光、電子線又はX線)への像様露光によって、容易にパターン形成することができる。
一般的に、金属イオン含有高分子には4つのグループがある。
(1)配位高分子及び高分子電解質
(2)金属錯体をドープした中性極性基を含有する高分子
(3)高分子の脱プロトン化とこれに続く金属塩との反応により調製された高分子金属錯体、及び
(4)金属モノマー錯体の重合によって調製された金属高分子錯体
【0003】
これらのグループの大半は重大な欠点があり、それがEL装置への応用の障害になっている。具体的には、配位高分子は、その塩類似の構造によって有機溶媒に溶解しにくい傾向にある。高分子にドーピングすると、例えば、ランタニドジケトネート添加エポキシ樹脂、ランタニドハロゲン化物添加ポリ(プロピレンオキサイド)、金属窒化物添加ポリ(エチレングリコール)、又はEu(2)塩添加高分子系クラウンエーテルは、金属配位環境が乏しい、定義されない混合物をもたらし、低質な発光特性を示す。他の欠点は、このタイプの高分子の電子的絶縁特性であり、これによって電荷注入を非常に困難にしている。金属高分子錯体の最大のグループは、酸性又はβ−ジケトネート基含有高分子からなり、これは、容易に脱プロトン化され、ランタニド又はアルミニウムイオンとの強力なイオン結合を形成する。公知の錯体としては、カルボン酸単独又は共重合体、例えば、ポリ(スチレンアクリル酸)、ポリ(ジカルボン酸スチレン)、ポリ(ジケトネート)及び側鎖に8−ヒドロキシキノリンを有するポリ(アリーレンエーテル)並びにドープされたポリ(ピリジン)がある。ここでの主な欠点は、通常、低いドープレベルしか得られないことである(一般的には、最大で10重量%)。
【0004】
このような大きな欠点を避けるために、第4のアプローチが使われている。金属錯体は、重合可能な基、例えば、アクリレートを含むリガンドから調製される。モノマー金属錯体の重合は、明確な構造の高分子を与える。化合物のこれらのタイプは、選ばれた有機金属錯体の発光特性、例えば、ランタニド発光の発色純度に、高分子の利点を結合させることによって、EL装置における優れた特性を示す潜在性を有している。この分類の高分子の例としては、ポリ(ランタニドメタクリレート)及びポリ(ランタニドオクタノエート)があげられるが、これらは発光性を有しない。増感リガンドとのヘテロレプティックアクリレート錯体、例えば、β−ジケトネート、サリチレート、及びナフトエート、並びにこれらのメチルメタクリレート及びスチレンとの共重合が報告されている。このタイプの材料を用いるEL装置は非常に非効率的であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような発光性ランタニドアクリレートモノマーの使用は、欠点をもたらす。特に、立体障害により単独重合が不可能である。したがって、ランタニドモノマーはメチルメタクリレート又はスチレンと共重合されてきた。これによって、ランタニド含量が低い絶縁性高分子がもたらされる。他の欠点としては、非配位性溶媒に対するアクリレート錯体の非常に低い溶解性、並びに、アクリル酸及び高蒸気圧を有する類似のモノマーの非常に強い毒性がある。
【0006】
したがって、これらの欠点が減少あるいは除去されたモノマーから導かれた発光性高分子が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、次の一般式で表されるモノマーが提供される。
(化6) Mn+(L)n-(CL)x
【0008】
この式において、n+は、Mの価数を表し、(L)は、1又は2以上の総計n−価を有するアニオンリガンドを表し、前記リガンドの少なくとも1つは次の式を有する。
(化7) Ch−X−Y
【0009】
この式において、Chは、キレート結合部及びキレート結合部が共役されたリガンドの残りの部分からなるリガンドの断片であるキレート/イオン結合基を表し、Yは、オレフィン基を表し、Xは、少なくとも4の炭素及び/又はヘテロ原子の鎖からなるスペーサー又はリンカーを表し、xは0、1又は2であり、CLは中性コリガンドを表し、Mは2、12、13族、d−ブロック又はf−ブロックの金属原子を表し、但し、Yがスチレン又は置換されているスチレン基の一部であるときはMがf−ブロック又はd−ブロック金属であり、前記モノマーは励起により可視光を放射する、すなわち可視領域での発光を行うものである。
【0010】
キレート化の定義は、IUPAC Compendium of Chemical Technology,2nd Ed.1997において見ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例17に記載される装置における電流密度に対する電圧の変化を示す。
【図2】実施例17に記載される装置における発光スペクトルを示す。
【図3】実施例20に記載される装置の電流−電圧(J−V)の変化を示す。
【図4】実施例20に記載される装置の効率−電圧特性を示す。
【図5】実施例20に記載される装置のEL(直線)、溶媒(CH2Cl)中のAl(MAEQ)3のPL(破線)及び固体状のAl(MAEQ)3のPL(点線)の発光スペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
このようなモノマーは、これまでに提案されたものよりすぐれた利点を有する。特に、リガンドのキレート/イオン結合基とオレフィン基の間のスペーサーの存在によって、貴金属モノマーの単独重合が可能となる。また、これらモノマーは、非配位有機溶媒の広い範囲にわたって非常に可溶であるため、溶液処理が一般的には非常に容易であり、また、特に、モノマーにおいてかさばった有機基が存在するときに優れた薄膜形成能を示す。オレフィン基は、化学線によって重合できる。モノマー薄膜の像様露光は、したがって、励起によって可視光を発する不溶なパターン化された高分子薄膜を提供する。これは、長寿命を有することができるパターン化された多色ELディスプレイの生産を容易にする。さらに、オレフィンリガンドの毒性はこれら化合物のより低い揮発性のため大いに低下されている。
【0013】
中央のイオンは、周期律表の2、12、13族、d−ブロック又はf−ブロックの金属原子である(Inorganic Chemistry, Striver Atkins,Langford,OUP,1990 参照)。好ましい金属としては、ベリリウム、アルミニウム、亜鉛、イリジウム、白金、ロジウム、オスミウム、ルテニウム、ユウロピウム、サマリウム、テルビウム、イットリウム、ジスプロシウム、セリウム及びガドリニウムである。これに関連して、イオンは通常3価であるが、モノマーがBe2+、Zn2+及びEu2+のような2価のイオン、又はCe4+のような4価の原子を有することも可能であることが理解されよう。
【0014】
本発明のモノマーの主要な特徴点は、これらが一般式Ch−X−Yで表される少なくとも1つのリガンドを有することである。示されているように、スペーサーXの存在は、単独重合体を得ることを可能にし、一方、Y基は、重合化を生起せしめることを可能にする。
【0015】
キレート基、Chの性質は、特に重要ではなく、金属イオンの公知の結合基は、カルボン酸、ジカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸、β−ジケトネート、又は、実に、アシルフェノール及びイミノアシル基を含むシッフ塩基型リガンドを含むキレート基の一部を形成することができる。好ましいキレート基は、カルボン酸基である。Mが2、12若しくは13族、又はd−ブロックの金属の場合、金属キレート基は、ヒドロキシキノリン又はメタアクリル酸−2−(8−ヒドロキシキノール−5−イルメトキシ)エチルエステルのような誘導体、シッフ塩基及び誘導体であることができる。キレート基の一部を形成することができる追加の金属結合基は、β−ジケトネート、カルボン酸、アルコキシド、アミド、イミド、アリール及びアリールオキシドである。Mがd−ブロック金属であるときは、他の金属キレート基は、2-フェニルピリジン及び誘導体、2-ピリジルチオフェン及び誘導体、又は7,8−ベンゾキノリン及び誘導体である。誘導体は、典型的には、アルキル、ハロ、ハロアルキル及びアルキルオキシのような従来の電子求引又は供与基によって置換された対応する化合物である。Ch基は、結合部、例えばカルボン酸基に加えて、結合部が共役している周囲原子を含むことが理解されよう。このように、Chは、例えば、次のようであり、単に、−COO、又は、−COOHではない。
【0016】
【化8】

これは、スペーサーにおける原子の数を計算する上で重要である。示されたフタレート基における原子のいずれも、スペーサーの一部を形成することはない。示されているように、スペーサーは、少なくとも4つの炭素及び/又はヘテロ原子の鎖からなる。これは、オレフィン基Yのオレフィン2重結合とキレート基の間の原子の数を表している。典型的には、スペーサーは、4から30の原子、より一般的には4から20の原子、好ましくは6から16、より好ましくは6から12、特に、6から10の原子を含有する。一般的には、鎖は、窒素、硫黄及びリンを含む他のヘテロ原子の存在を排除しないが、炭素原子、及び、選択的に酸素原子を含有する。このように、スペーサーは、例えば、ジオール又はジアミン、例えば、エチレンジアミンから導かれ得る、又はアルキル/アリール鎖であり得る。下記にさらに詳細に示すように、スペーサーは、Mに配位することができる1または2以上のドナー基も有することができる。
【0017】
オレフィン基、Yは、典型的には、アクリル化合物、例えば、アクリレート、メタクリレート、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド及びメタクリルアミドの一部である。この他に、有益なのは、モノカルボン酸及びポリカルボン酸のビニルエステル、N−ビニルピロリドンのようなN−ビニルラクタム、並びにモノヒドロキシ及びポリヒドロキシ化合物のビニルエーテルがある。すなわち、アリル化合物、例えば、モノカルボン酸及びポリカルボン酸のアリルエステル、並びに、モノヒドロキシ又はポリヒドロキシ化合物のアリルエーテル及びアリル環状エーテルがある。スチレン、ビニルナフタレン、又はN−ビニルカルバゾールのようなビニル芳香族化合物は、発光性モノマーの重合が光により開始する場合は好ましくないことがある。スチレンは、例えば、発光性モノマーを活性化するために用いられる可視光活性化開始剤の3重項エネルギーと同様の、非常に低い3重項エネルギーレベル、〜463nm(Handbook of Photochemistry,New York,1973)を有する。これによって、スチレンは可視活性化開始剤を抑制してしまい、効率的に光重合することができない。発光性モノマーはUV領域における光を吸収し、その結果、重合は不完全であり、また、UV光は材料を損傷するから、可視光活性化開始剤が好ましい。より短い波長を吸収するランタニド錯体の場合、スチレンと相容性のあるより高い3重項エネルギーを有する開始剤を使うことが可能であろう。しかしながら、2、12及び13族の場合、スチレン及び低い3重項エネルギーを有する他のビニル芳香族基は適切でない。
Y基は、次の一般式で表すことができる。
【0018】
【化9】

この式において、R及びRは、同じか異なるが、水素原子又は1から6の炭素原子のアルキル基を表す。ビニル芳香族化合物と共に、例えば、芳香族基はリンカーの一部を形成することが理解されよう。好ましい実施例において、Yは、メタクリレート基を含む。この関連において、カルボニル炭素原子はスペーサ鎖Xの第1員を表し、一方、カルボキシレート酸素原子はスペーサー鎖の第2員を表すことは指摘されるべきである。
【0019】
一般式で示されるように、本発明のモノマーは、総計n−価(Mイオンに架かる電荷がバランスされるように)の1又は2以上のアニオンリガンドを含む。金属3+イオンの典型的場合に、これは、アニオンリガンドの総電荷が3−となることを意味する。示されるように、1又は2以上のリガンドCh−X−Yが存在し得る。Ch−X−Yでないいずれのリガンドも通常のアニオンリガンドであることができ、好ましくは、酸素又は窒素供与システムを有し、典型的には、芳香族カルボン酸、ジカルボン酸、β−ジケトネート又はヒドロキシカルボン酸又はシッフ塩基を有する。具体例としては、イソキノリンカルボン酸、1−ナフトエ酸及び4−t−ブチル安息香酸などの芳香族カルボン酸がある。Mがd−ブロック金属のとき、Ch−X−Yでないいずれのリガンドは、2−フェニルピリジン及び誘導体のような炭素窒素供与システムでもあり得る。全てのL基が同じであるとき、ホモレプティック錯体が形成される。少なくとも1つのL基が異なるとき、ヘテロレプティック錯体が形成される。
【0020】
Mがf−ブロック、特にランタニドのイオンのとき、増感基がリガンドCh−X−Y中に存在すべきであり、又はそうでないときは他のリガンドL中に存在する。よく知られているように、適切な増感リガンドはランタニド原子の第1励起状態より高い3重項エネルギーを有し、発光色はランタニド金属の選択によって決められる。Mが典型金属又はd−ブロック金属の場合、可視光を放射する、又は電荷移動を基礎とした錯体からの発光を可能とするリガンドを基礎とした断片はリガンドCh−X−Y又は他のリガンドLに存在すべきである。発光の中心のバンドギャップは、可視領域にあるように750nm以下の波長において発光を提供するのに十分な大きさであるべきである。当業者なら適宜、分子を調整することができよう。例えば、化合物のバンドギャップが広すぎる場合、電子供与官能基はそれを減少させるために組み込まれることがある。一般的に、しかしながら、電子供与基の存在は、狭すぎるバンドギャップをもたらす。適切なリガンドを基礎とした断片又は増感基は、置換β-ジケトネート、シッフ塩基、ヒドロキシフェノール及び誘導体、芳香族及びヘテロ芳香族基並びにベンゼン、ナフタレン、ベンゾフェノン、キノリン、ピロール、ピラゾール、ピラゾロン、ポルフィリン、フラン、チオフェン、インドール及びチオナフテン(thionapthene)のようなこれらの置換誘導体を含む。適切な増感リガンドの具体例としては、ユウロピウムのための1−ナフトエ酸(napthoic acid)及びイソキノリンカルボン酸、テルビウムのための4−t−ブチル安息香酸、アルミニウムのためのヒドロキシキノリン、及びイリジウムのための2−フェニルピリジン、2−フェニルベンゾオキサゾール、2−フェニルベンゾチアゾール又は2−ピリジルチアナフテンがある。好ましい実施例において、増感基は、リガンドCh−X−Yに存在し、例えば、次の一般式の基におけるようにキレート基の一部として存在する。
【0021】
【化10】

ランタニド金属にとって特に好ましいリガンドCh−X−Yは、次の式を有するモノ−2−(メタクリロイルオキシ)エチルフタレート[H(MEP)]から導かれるものである。
【0022】
【化11】

この化合物において、キレート基Chはフタレートであり、Yはメタクリレート基の一部であり、一方、リンカーXは炭素及び酸素原子である4原子の鎖を有し、より詳しくは3炭素原子及び1酸素原子であり、炭素原子の1つはカルボニル基として存在する。このリガンド、H(MEP)は、ランタニド金属に適合し、しかし、2、12、13族又はd−ブロック金属と共に用いるには適当ではない。HMEPの3重項レベルは、Eu又はTbのための増感リガンドとして働き、結果として発光ランタニド錯体をもたらすために適切に位置されている。しかしながら、バンドギャップは、HMEPが2、12、13族又はd−ブロック金属を有する発光錯体を形成するには大きすぎる。
【0023】
本発明のモノマーは、水又は他の溶媒分子が金属イオンに配位するのを防ぐための1又は2の中性コリガンドも含み得る。通常のコリガンドは、この目的のために使用され得る。このような中性コリガンドは、中央のMイオンの周囲の配位圏を満たすことができる。これは、ランタニドイオンが2、12、13族又はd−ブロック金属イオンより高い配位数を有する傾向にあるため、Mがランタニドのときに特に関係する。適当なコリガンドはランタニドイオンを増感することもでき、モノマーの溶解性を改良することができる。コリガンドは、単座配位子又は二座配位子であり得る。適切なコリガンドは、1,10−フェナントロリン及びその誘導体、2,2’−ビピリジル及びその誘導体、ジメトキシエタン、エチレングリコール、ホスフィンオキサイド、1又は2供与原子を含むアミンを有するエチレンジアミンを含む。アニオンリガンドが増感要素として働かないときは、増感要素を含むコリガンドが存在すべきである。増感コリガンドは、1,10−フェナントロリン、2,2’−ビピリジル、ピリジンN−オキシド、バソフェナントロリン並びにベンゾフェノン及びそれらの誘導体を含む。アニオンリガンドの一部である(及びリンカーの一部であり得る)追加の供与基により、金属イオンの配位圏を飽和することも可能である。
【0024】
Mが3価のランタニドイオンであるとき、発光は金属から生じ、金属の選択が発光色を決める。そうでない場合は、発光色はリガンド(L)の選択だけでなく金属の選択に依存する。金属Mが、ベリリウム、亜鉛又はアルミニウムのような2、12又は13金属グループ、又はd−ブロック軽金属であるとき、錯体は蛍光を発する。Alについての好ましい例においては、Ch−X−YリガンドはCh基として8−ヒドロキシキノリンを含有し、ここで、スペーサーXは6原子の鎖からなり、より詳細には、炭素原子の1つがカルボニル基として存在する4つの炭素原子と2つの酸素原子からなる。このように、このタイプの好ましいモノマーは次の式を有する。
【0025】
【化12】

この式において、ORはアルミニウムに結合するリガンドであり、第3のメタクリル酸−2−(8−ヒドロキシキノリン−5−イルメトキシ)エチルエステルリガンド、又は2,4,6−トリフェニルフェノラト若しくは2,4,6−2−ナフトラトのような代替的リガンド又は米国特許5,141,671号に開示されているものなどの他の適切な公知例であり得る。金属Mが、イリジウム、ロジウム、オスミウム、白金又はルテニウムなどのd−ブロック重金属のとき、スピン軌道結合は燐光を生じさせる(3重項状態からの放射)。知られているように、このような錯体は有機発光装置(OLED)において燐光を放射することができ、これは明確な効率上の利点を有することができる。基本的には、OLEDにおいては、1重項励起子の3倍の3重項励起子が形成される。ランタニド錯体及び他の重金属燐光放射体は共に3重項励起子を捕獲し、放射性発光を行う状態にこれらを移行させることができる。一方、蛍光化合物によって1重項励起子だけが放射的に減衰することができ、残留エネルギーは、非放射プロセスにおいて失われる。d−ブロック重金属の好ましい実施例においては、Ch−X−Yリガンドはβ−ジケトネートCh基を包含し、2つの他のフェニル−ピリジンアニオンリガンドが存在する。このように、このタイプの好ましいイオンは次の式を有する。
【0026】
【化13】

ここで、R、R’及びR”の1つは、X−Yに対応し、他の置換基は、水素、炭素原子1から6のアルキル、ハロゲン、ハロアルキル、フェニル及びチオニルを含む。
【0027】
金属含有モノマーは、本技術の関係者に知られている標準的な方法によって調製され得る。本発明のモノマーは、一般的には、Ch−X−Y式で表される化合物及び選択的に任意の他のアニオンリガンド化合物を脱プロトン化し、選択的に1又は2の中性リガンド化合物の存在下で脱プロトン化した化合物をMイオンの塩と反応させることによって調製される。モノマーは、典型的には、Ch−X−Y式の化合物をエタノール又は他の水溶性溶媒に溶解することによって調製される。次いでCh−X−Yが脱プロトン化される。例えば、リガンドカルボン酸はCOO-に転換される。これは、炭酸塩、硝酸塩、塩化物のようなハロゲン化物又は酢酸塩のようなカルボン酸塩のような金属塩によって達成される。典型的な金属は、ナトリウム及びカリウムである。カルボン酸塩が使われるときはリガンドよりも弱い酸であることが望ましい。そうでない場合は、過剰なリガンドが用いられるべきである。一般的には、リガンド含有化合物のほぼ等モル量及び脱プロトン化要素が使われるべきである。他のアニオンリガンドが使われる場合は、これらは同様に扱われ、次いで、中性のコリガンドが組み込まれるべきである。金属イオンが次いで添加され、典型的には滴下される。ランタニド又は他の金属イオンが、通常、水溶性塩、典型的には塩化物のようなハロゲン化物の形で提供される。反応は通常に進行するが、ゆるやかな加熱が必要であろう。望まれる生成物は、次いで単離することができ、例えば、水の添加によって溶媒から沈殿させ、次いでろ過される。錯体は、無水有機溶媒を用いて、当業者に慣用の技術によって準備され得る。
【0028】
示されるように、本発明のモノマーは容易に高分子に転化され得る。これらの高分子は次の式の繰り返し単位を有する。
【0029】
(化14) Mn+(L)n-(CL)x
この式において、M、CL、n及びxは上記のように定義され、リガンドの少なくとも1つは次の式を有するように、(L)は総計n−価の1又は2以上のアニオンリガンドを表す。
【0030】
【化15】

この式において、Ch及びXは上記で定義され、R及びRは、同じか又は異なり、水素原子、又は炭素原子1から6、好ましくは炭素原子1又は2のアルキル基を表す。好ましくは、R2は水素を表し、R1はメチルを表す。
【0031】
本発明の高分子は、単独重合体でよく、又は、例えば、(L)に関して上述したタイプのN−ビニルカルバゾール及びアクリレートモノマーのような単官能基モノマーを含む1又は2以上のオレフィンコモノマー、及び、選択的にジ、トリ及びテトラ官能基モノマーから導かれ得る。ポリマー主鎖は一般に非伝導性であることが理解されよう。
【0032】
高分子が、不溶性、好ましくは架橋された高分子を生じせしめるラジカル開始剤によって容易に得られることは、本発明の特に有利な点である。架橋高分子は、一般に、モノマーに2以上のCh−X−Yタイプのリガンドが存在すれば、製造することができる。モノマー層は、熱的に、又は、特に好ましくは、UV光、可視光、電子線及びX線を含む化学線により重合されてもよい。典型的には、モノマーの重合はその場で行われる。別の言い方をすれば、モノマーの溶液はLEDにおける高分子が望まれる位置に注入し、重合することができる。照射による重合の場合は、層は像様露光により形成することができる。架橋を基礎とした光による構造形成可能なシステムは、例えば、印刷版およびフォトレジストに関連した産業においては公知である(例えば、US−A−5922481号参照)。
【0033】
最初に、適切な基板がモノマー溶液によって被覆される。適切な基板の例としては、伝導層、さらに、選択的に正孔注入及び輸送材料が提供されるガラス及び薄膜がある。選択的にコモノマー、架橋剤並びに熱開始剤又は光開始剤などのさらなる選択的な成分に加えて金属含有モノマーを含む非配位溶媒の適当な溶液をスピン若しくはディップコーティングにより、ナイフコーター又は印刷により基板に適用し、好ましくは化学線によって重合させる。光重合は、酸素が存在しない雰囲気、例えば、窒素雰囲気中で行われるのが好ましい。像様露光の場合、未露光部はモノマーに対する溶媒によって洗浄除去され得る。意図する構造によって、層の相互混合が生じないように、スピン若しくはナイフコーティング又は蒸着によって更なる層が積層され得る。
【0034】
好ましい実施例においては、典型的には20から500、例えば、50から100nmの厚さの高分子層を得るために、モノマー溶液がスピン注入される。モノマーは、ゆっくりと蒸発し、したがって良質な薄膜を生成するように、望ましくは相対的に高い沸点を有する非配位溶媒に溶解されるべきである。典型的な溶媒は、クロロホルム、キシレン、トルエン及びハロベンゼン、特に、オルトジクロロベンゼンのようなクロロベンゼンを含む沸点70から150℃を有するものである。明らかに、使用する濃度は溶媒の性質及び溶媒のスピン速度に依存するであろう。典型的には、しかしながら、濃度は5から100mg/mlである。ディップコーティング及び印刷など他の方法も当然用いることができる。
【0035】
本発明の高分子は発光装置における発光層の形成に有益である。一番簡単な形では、有機発光又は電子発光装置は、少なくとも1つが放射光を透過しなければならない2つの電極に挟まれた発光層から形成され得る。このような装置は、透明基板層、透明電極層、発光層及び背面電極からなる従来の構成を有することができる。この目的のためには標準の材料を用いることができる。このように、透明基板層は、PET、アクリル樹脂のような透明材料及びナイロンのようなポリアミドも使用することができるが、典型的にはガラスからなる。
【0036】
アノードを典型的に形成する透明電極は、酸化インジウム/酸化錫、酸化錫/アンチモン及び酸化亜鉛/アルミニウムを含む他の類似の材料を用いることもできるが、好ましくは、インジウム錫酸化物(ITO)から製造することができる。PANI(ポリアニリン)のような導電性高分子も用いることができる。
【0037】
背面電極は、通常、Al、Ca、Mg、Li又はMgAgのような低い仕事関数を有する金属又は合金からなる。よく知られているように、正孔輸送材料及び/又は電子輸送材料を含む他の層も存在させることが可能である。代替的な構成として、基板をケイ素のような不透明の材料とすることができ、光は反対の電極を通して放出する。
【0038】
本発明の特に有利な点は、本発明の高分子層はその場で組み込むことが可能であることにある。典型的には、したがって、モノマーの溶液が透明な電極層上に適用され、次いで重合され、そして、他の層が適用される前に重合されない材料が除去される。重合材料は、典型的には不溶性であり、高分子層を損壊することなく他の溶液を上に積層させることができる。知られているように、PEDOT/PSSのような正孔輸送材料は透明アノードと発光層の間に選択的に形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下の実施例は、本発明をさらに示す。
【実施例1】
【0040】
[Eu(MEP)bath]の合成
エタノール200ml中のモノ−2−(メタクリロイルオキシ)エチルフタレート(MEP)の4.57g(16.4 mmol)を10mlのH2O中のNa2CO3870mg(8.2mmol)と反応させた。次いで、2.2g(1.2当量、6.6mmol)のバソフェナントロリン(bath)がこの反応混合物に溶解され、10mlのH2O中の2g(5.5mmol)のEuCl3×6H2Oが滴下された。清澄になるまで混合物は緩和に加温され、次いでろ過された。生成物は、180mlの水の滴下により、ろ過溶液から沈殿された。反応混合物は30分攪拌された。ろ過後、沈殿物は200mlのエタノール/H2O20:80、50mlのH2Oで洗浄され、真空中で一晩乾燥されて5.6g(77%収率)の無色の固体が得られた。
C66H59EuN2O18:予測値/実測値: C 60.05 / 60.16, H 4.5 / 4.52, N 2.1 / 2.3, Eu 11.51 / 11.81. フォトルミネセンス: 励起: λmax367 nm; 放射:λmax 613 + 616 nm。
同様の方法が次の化合物を調製するために使われた。
【実施例2】
【0041】
[Eu(MEP)3 phen] (phenは、1,10−フェナントロリンである) 5.0g(78 %)
C54H47EuN2O18:予測値/実測値: C 55.72 / 54.59, H 4.07 / 3.83, N 2.41 / 2.18. フォトルミネセンス:励起:λ max 270 + 348 nm; 発光:λ max613 + 617 + 619 nm。
【実施例3】
【0042】
[Sm(MEP)3 x H2O]1.29g(57%)
C54H47N2O18Sm:予測値/実測値: C 50.44 / 50.44, H 4.13 / 4.19, Sm 15.04 / 15.44. フォトルミネセンス無し。
【実施例4】
【0043】
[Tb(MEP)phen]980mg(76%)
C54H47N2O18Tb:予測値/実測値: C 55.39 / 54.75, H 4.05 / 4.09, N 2.39 / 2.20. フォトルミネセンス:励起: λmax 270 + 348 nm; 発光: λmax613 + 617 + 619 nm。
【実施例5】
【0044】
[Y(MEP)phen]969mg(75%)
C54H47N2O18Y:予測値/実測値: C 58.92 / 57.45, H 4.30 / 4.01, N 2.54 / 2.35. 1H-NMR (300 MHz, CDCl3); 9.59 ppm (s, 2H), 8.09 (d, 2H), 7.67 (s, 2H), 7.48 (m, 5H), 7.08 (m, 9H), 5.8 (s, 3H), 5.4 (s, 3H), 3.82 (d, 12H), 1.75 (s, 9H).フォトルミネセンス無し。
【実施例6】
【0045】
[Tb(MEP)3bipy] (bipyは、2,2’−ビピリジルである) 810 mg(50%)
C52H58N2O18Tb:予測値/実測値: C53.94' 52.56, H 5.05 / 5.08, N 2.42 / 2.21, Tb 13.72 / 14.04. フォトルミネセンス:励起: λmax287 nm; 発光: λmax 543 nm。
【実施例7】
【0046】
[Tb(MEP)tBu−bipy](tBu−bipyは、 4,4’−ジ−t−ブチル−2,2’−ビピリジルである) 2.1g(29%)
C60H66N2O18Tb:予測値/実測値: C 57.1 / 56.3, H 5.27 / 5.14, N 2.22 / 2.18, Tb 12.59 / 12.64.フォトルミネセンス:励起:λ max296 + 335 nm; 発光: λmax 542 nm。
【実施例8】
【0047】
[Eu(MEP)(IQA)2xH2O]の合成
1.25g(4.5mmol)のモノ−2−(メタクリロイルオキシ)エチルフタレート及び1.56g(9mmol)のイソキノリンカルボン(IQA)酸が5mlのメタノールに溶解され、50℃で3mlのメタノール/H2O(1:1)中の1.13g(13.5mmol)のNaHCO3溶液に加えられた。45分間攪拌した後、溶液はろ過され、6mlメタノール中の1.65g(4.5mmol)のEuCl3.6H2Oの溶液に滴下された。50℃で45分間撹拌した後、全ての揮発物質を真空下で蒸発させ、生成物を30mlのCHClで抽出した。真空中での溶媒の蒸発後、粗製生成物はTHFに2回溶解され、ヘキサン中で沈殿させた。沈殿物は、真空中で一晩乾燥され、3.02g(85%収率)の生成物が無色の固体として得られた。
C34H27EuN2O11 予測値/実測値: C 51.59 / 51.79, H 3.44 / 3.26, N 3.54 / 3.66, Eu 19.20 / 18.52. フォトルミネセンス (CH2Cl2): 発光:λ max 615 nm, 励起: λmax 339 nm。
同様の方法が次の化合物を調製するのに用いられた。
【実施例9】
【0048】
[Sm(MEP)(IQA)2xH2O]3.01g(78%)
C34H27N2O11Sm 予測値/実測値: C 51.69 / 50.58, H 3.44 / 3.20, N 3.55 / 3.66, Sm 19.04 / 20.13. フォトルミネセンス無し。
【実施例10】
【0049】
[Eu(MEP)(NA)2xH2O](NAは、1−ナフトエ酸である)650mg(58%)
C36H29EuO11予測値/実測値: C 54.76 / 55.12, H 3.70 / 3.73, Eu 19.25 / 19.07. フォトルミネセンス (CH2Cl2): 発光:λmax 613 nm, 励起: λmax 251 nm。
【実施例11】
【0050】
[Sm(MEP)(NA)2xH2O]2.68g(81%)
C36H29O11Sm 予測値/実測値: C 54.87 / 55.19, H 3.71 / 3.88, Sm 19.09 / 19.15. フォトルミネセンス無し。
【実施例12】
【0051】
[Tb(MEP)(TBA)](TBAは、4−t−ブチル安息香酸である)1.62g(41%)
C36H39O10Tb予測値/実測値: C 54.69 / 55.26, H 4.97 / 5.48, Tb 20.10 / 20.12. フォトルミネセンス (CH2Cl2): 発光: λmax 543 nm, 励起: λmax 253 nm。
【実施例13】
【0052】
[Dy(MEP)(TBA)2xH2O]1.0g(27%)
C36H39O10Dy 予測値/実測値: C 53.24 / 53.04, H 5.09 / 5.01, Dy 20.01 / 21.12. フォトルミネセンス無し。
【実施例14】
【0053】
[Eu(MEP)3bath]の光重合
[Eu(MEP)3bath]の光重合が、5重量%のジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキサイドと共に開始された。トルエン中のユウロピウムモノマーの溶液(30mg/ml)がガラス基板上にスピン注入された。ガラス基板に、その後、窒素雰囲気中でUV光へ露光した。フォトマスクを使用することによって、基板のパターニングがなし遂げられた。照射後、未露光部のモノマーはトルエンによる基板の洗浄で除去され、100nmの厚さの高分子薄膜が得られた。
【実施例15】
【0054】
[Tb(MEP)3bipy]及び[Eu(MEP)3bath]を有する、赤−緑発光基板
CHCl中の10重量%の1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトンと共に[Tb(MEP)3bipy]がガラス上にスピン注入された。窒素雰囲気中でのフォトマスクを通じたUV露光の後、未反応モノマーはCHCl3により洗浄除去された。10重量%の1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトンと共に[Eu(MEP)bath]がトルエン溶液からスピン注入された。フォトマスクを通じた照射後、未反応モノマーがトルエンにより除去された。
【実施例16】
【0055】
[Eu(MEP)(IQA)2xH2O]とメチルメタクリレートMMAの共重合
アルゴン雰囲気中で[Eu(MEP)(IQA)2xH2O](5〜30重量%)が抑制剤無しのMMAに溶解される。AIBNがラジカル開始剤として添加された。封止されたチューブが60℃の油浴に置かれた。反応が完結(10〜30分)された後、生成物は真空中で30分間乾燥され無色透明なプラスチックが得られた。
【0056】
同様の態様で、[Eu(MEP)(IQA)2xH2O]がスチレン及びN−ビニルカルバゾールと共重合された。
(1)[Eu(MEP)(IQA)2xH2O]とMMA5、10、30重量%との共重合。フォトルミネセンス:最大発光:615nm、最大励起:374
(2)[Eu(MEP)(IQA)2xH2O]とスチレン10、30、50重量%との共重合。フォトルミネセンス:最大発光:614nm、最大励起:365nm
(3)[Eu(MEP)(IQA)2xH2O]とN−ビニルカルバゾール1、5、10重量%との共重合。フォトルミネセンス:最大発光:615nm、最大励起:390nm
【実施例17】
【0057】
[Eu(MEP)3phen]を有する有機発光ダイオード
【化16】

スピンコートと従来の蒸着のコンビネーションにより形成された有機発光ダイオードが発光材料として上記に示された有機ランタニド化合物とともに調査された。
【0058】
パターン化されたITO基板がNH3/H22(1:1)の洗浄液中、次いで脱イオン水中で超音波予備処理され、その後炉の中で乾燥され、O2プラズマ処理(65W,4分)された。
典型的な実施装置構造は、次のように形成された。
【0059】
4〜7重量%の[Eu(MEP)3phen]、PVK(ポリ−(9−ビニルカルバゾール)(CHCl中の14mgml−1)中の47重量%PBD(2,4−ビフェニルイル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール)からなる発光層が、約80nm厚の薄膜をスピンコート(2000rpm)することにより、用意されたITO基板に積層された。薄膜は不活性雰囲気(70℃、2時間を超える)中のホットプレート上で乾燥された。スピンコート層の上に、Al(100nm)で被覆されたCa(20nm)からなる金属接点が蒸着(10−6mmHg及び蒸着速度0.1nms−1)された。
【0060】
添付の図面の図1に、電流密度に対する電圧のプロットを示す。図2に発光スペクトルを示す。電流/電圧、輝度/電圧の分析はKeithley2400を用いて行われた。ソースメータは、IBMコンパチブルPCからプログラムされた。ピーク電流は、40mAcm-2(25V)のオーダーであり、ピーク輝度は、1〜2cdm-2(25V)であった。EL発光スペクトルはccdカメラにより測定され、ユウロピウムイオンの発光スペクトルとして典型的な発光スペクトル(最大615nm)を生じた。
【実施例18】
【0061】
メタクリル酸−2−(8−ヒドロキシキノリン−5−イルメトキシ)エチルエステルH(MAEQ)の合成
5−クロロメチル−8−ヒドロキシキノリン塩酸塩(5.0g,21.7mmol)及び2−ヒドロキシエチルメタクリレート(20ml,143mmol)の混合物が2日間真空中60℃で加熱された。室温まで冷却された後、H2O(150ml)が加えられ、溶液は希薄NH3水溶液によってアルカリ性とした。生成物は沈殿し、フィルター上で回収され、希薄NH3水溶液によって洗浄され、真空中で一晩乾燥させた。この粗製生成物はTHF(250ml)に抽出され不溶性の残留物からろ過された。真空中でのTHFの蒸発から、ヘキサンから2回再結晶された固体が得られ、針状の純生成物の無色の結晶が得られた(4.9g,17mmol,79%)。
Mp: 89 ℃. IR(薄膜): 3055 cm-1, 2955, 2857, 1713 (C=O), 1635 (C=C), 1581 (C=C).1H-NMR (δ, 300 MHz, DMSO-d6): 8.86 ppm (m, 1H), 8.48 (m, 1H), 7.55 (dd, 1H, 3J= 4.1 ,8.5 Hz), 7.43 (d, 1H, 3J= 7.8 Hz), 7.0 (d, 1H, 3J= 8.2 Hz), 5.95 (m, 1H), 5.64 (m, 1H), 4.84 (s, 2H), 4.23 (m, 2H), 3.69 (m, 2H), 1.83 (s, 3H). 13C {1H} NMR (δ, 300 MHz, DMSO-d6): 166.3 ppm, 153.4, 147.8, 138.7, 135.6, 138.1, 128.5, 127.3, 125.6, 123.9, 121.6, 109.8, 69.9, 67.0, 63.5, 17.8. UV / Vis (CH2Cl2): 245 nm, 323。
【実施例19】
【0062】
アルミニウムトリス(メタクリル酸−2−(8−オキシキノリン−5−イルメトキシ)エチルエステル)Al(MAEQ)3の合成
窒素雰囲気中−80℃で、乾燥トルエン(125ml)中のトリメチルアルミニウム(2.5mmolトルエン中2M溶液1.25ml)が同様に乾燥トルエン(250ml)中のメタクリル酸−2−(8−ヒドロキシキノリン−5−イルメトキシ)エチルエステル(2.15g、7.5mmol)に滴下された。混合物は、−20℃まで3時間暖められ、その時点でEtOH(3ml)の添加によって反応がクエンチされ、放置して室温まで暖められた。真空中での溶媒の蒸発後、残留物はトルエン(250ml)に溶解され、セライトのパッドを通過させてろ過され、体積を約10mlまで減少させた。このトルエン溶液は、次いで、ヘキサン(400ml)に滴下された。ろ過後、固体がトルエン(10ml)に溶解され、ヘキサン中で沈殿された。これを3回繰り返し、明るい黄色の固体1.54g(69%)が得られた。
C48H48AlN3O12: 予想値/実測値: C 65.08 / 63.68, H 5.46 / 5.32, N 4.74 / 4.81, Al 3.05 / 3.06. M.P.: m.p.なし, 60℃で重合開始。IR (薄膜): 2954 cm-1, 2864, 1713 (C=O), 1636 (C=C), 1604 (C=C), 1580 (C=C). 1H-NMR (δ, 300 MHz, DMSO-d6): 8.64 ppm (m, 6H), 7.49 (m, 6H), 6.75 (dd, 3H), 5.6 (m, 6H), 4.81 (m, 6H), 4.2(m, 6H), 3.67 (m, 6H), 1.74 (m, 9H). FAB-MS: m/z = 885 (20 %, M+), 599 (100 %). UV / Vis (CH2Cl2): 261 nm, 390. フォトルミネセンス (CH2Cl2):発光: λmax 534 nm, 励起: λmax 381 nm. フォトルミネセンス (粉末): 発光: λmax 532 nm, 励起: λmax 381 nm。
【実施例20】
【0063】
Al(MAEQ)3を有する有機発光ダイオード
パターン化されたITO基板が洗浄液及びDI水中の超音波による通常の方法で予備処理され、炉中で乾燥された。40nmの厚さのPEDOT/PSSの正孔注入/輸送層が基板上のITO面にスピンコートにより積層された。薄膜は、20分間、120℃のホットプレート上で乾燥された。80nmの厚さのAl(MAEQ)3からなる発光/電子輸送層がトルエン(15mg/ml)からスピンコートにより積層された。1.5nmの厚さを有するLiF発光層の上に、厚さ200nmを有するAlカソードが真空中で堆積された。
【0064】
添付の図面の図3及び4は、それぞれ、装置の電流−電圧(J−V)及び効率−電圧特性を示す。0.07lm/Wの電力効率及び0.25Cd/Aの光効率が達成された。起動電圧は8.5V及び11Vであり、輝度は6cd/mであった。図5は、装置のEL(直線)、溶液(CHCl)中のAl(MAEQ)3のPL(破線)及び固体状のAl(MAEQ)のPL(点線)の発光スペクトルを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
励起によって可視領域で発光する、次の一般式で表されるモノマー。
(化1) Mn+(L)n-(CL)x
この式において、n+は、Mの価数を表し、(L)は、1又は2以上の総計n−価を有するアニオンリガンドを表し、前記リガンドの少なくとも1つは次の式を有する。
(化2) Ch−X−Y
この式において、Chは、キレート結合部及びキレート結合部が共役されたリガンドの残りの部分を含むリガンドの断片であるキレート基であり、Yは、オレフィン基を表し、Xは、少なくとも4の炭素及び/又はヘテロ原子の鎖を含むスペーサーであり、xは0,1又は2であり、CLは中性コリガンドであり、Mは2、12、13族、d−ブロック又はf−ブロックの金属原子を表し、ただし、Yがスチレン又は置換されているスチレン基の一部であるときはMがf−ブロック又はd−ブロック金属である。
【請求項2】
Chが酸素又は窒素供与体である請求項1に記載のモノマー。
【請求項3】
Chがカルボン酸、ジカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸、β−ジケトネート基又はヒドロキシキノリン基である請求項1又は2に記載のモノマー。
【請求項4】
スペーサーが6から12までの原子を含む請求項1ないし3のいずれか一項に記載のモノマー。
【請求項5】
スペーサーが炭素原子及び選択的に酸素原子を含む請求項1ないし4のいずれか一項に記載のモノマー。
【請求項6】
スペーサーが電子供与基又は配位基を含む請求項1ないし5のいずれか一項に記載のモノマー。
【請求項7】
Yがアクリレート基又は置換アクリレート基の一部である請求項1ないし6のいずれか一項に記載のモノマー。
【請求項8】
Yがメタクリレート基の一部である請求項7に記載のモノマー。
【請求項9】
Mがユウロピウム、サマリウム、テルビウム、ジスプロシウム、セリウム、イットリウム又はガドリニウムを表す請求項1ないし8のいずれか一項に記載のモノマー。
【請求項10】
Mがベリリウム、亜鉛、アルミニウム、イリジウム、ロジウム、オスミウム、白金、またはルテニウムを表す請求項1ないし8のいずれか一項に記載のモノマー。
【請求項11】
(L)がCh−X−Yではない1又は2のアニオンリガンドである請求項1ないし10のいずれか一項に記載のモノマー。
【請求項12】
Ch−X−Yでないアニオンリガンドがフェニルピリジンである請求項11に記載のモノマー。
【請求項13】
Ch−X−Yでないアニオンリガンドが、イソキノリンカルボン酸、1−ナフトエ酸又は4−t−ブチル安息香酸である請求項9又は11に記載のモノマー。
【請求項14】
Ch−X−Yでないアニオンリガンドが8−ヒドロキシキノリンである請求項10又は11に記載のモノマー。
【請求項15】
芳香族又はヘテロ芳香族増感基を含む請求項1ないし14のいずれか一項に記載のモノマー。
【請求項16】
フェニル増感基を含む請求項15に記載のモノマー。
【請求項17】
xが1又は2である請求項1ないし16のいずれか一項に記載のモノマー。
【請求項18】
Ch−X−Yが次の式を有する請求項1ないし17のいずれか一項に記載のモノマー。
【化3】

【請求項19】
本明細書で特に特定される請求項1に記載のモノマー。
【請求項20】
請求項1において定義される式Ch−X−Yの化合物、及び、選択的に、1又は2の他のアニオンリガンド化合物を脱プロトン化し、次いで、脱プロトン化された化合物を、選択的に1又は2の中性リガンド化合物の存在下において、請求項1で定義されるMイオン塩と反応させることを含む、請求項1ないし19のいずれか一項に記載のモノマーを調製するための方法。
【請求項21】
脱プロトン化が炭酸塩、硝酸塩、ハロゲン化物又はカルボン酸塩である金属塩によって行われる請求項20に記載の方法。
【請求項22】
実質的に実施例1ないし13のいずれかに記載される請求項20に記載の方法。
【請求項23】
請求項20ないし22のいずれか一項に記載の方法によって調製された請求項1に記載の式を有するモノマー。
【請求項24】
次の式の繰返し単位を有する高分子。
(化4) Mn+(L)n-(CL)x
この式において、M、CL、n及びxは請求項1で定義され、(L)は、少なくとも1つのリガンドが次式を有し、総計n−価を有する1又は2以上のアニオンリガンドを表す。
【化5】

この式において、Ch及びXは請求項1で定義され、R1及びR2は、同じか又は異なり、水素原子又は1から6の炭素原子を有するアルキル基を表す。
【請求項25】
が水素を表し、Rがメチルを表す請求項24に記載の高分子。
【請求項26】
他のオレフィンモノマーの繰返し単位を含む請求項24又は25に記載の高分子。
【請求項27】
非導伝性骨格を有する請求項24ないし26のいずれか一項に記載の高分子。
【請求項28】
実質的に実施例14ないし16のいずれかに記載される請求項24に記載の高分子。
【請求項29】
請求項1ないし19及び23のいずれか一項に記載のモノマーをラジカル開始を受けさせることを含む、請求項24ないし28のいずれか一項に記載の高分子の製造方法。
【請求項30】
ラジカル開始がUV光若しくは可視光及び光開始剤によって達成される請求項29に記載の方法。
【請求項31】
請求項1ないし19及び23のいずれか一項に記載のモノマーを化学線にさらすことを含む請求項24ないし28のいずれか一項に記載の高分子の製造方法。
【請求項32】
高分子の存在が望まれる場所において重合が行われる請求項29ないし31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
モノマーの溶液がLED層を形成するためにスピンキャストされ、次いで重合される請求項32に記載の方法。
【請求項34】
重合がフォトマスクを用いて行われ、未露光部がモノマーが溶解する有機溶媒を用いて除去される請求項33に記載の方法。
【請求項35】
実質的に実施例14ないし16のいずれかに記載される請求項29に記載の方法。
【請求項36】
請求項29ないし35のいずれか一項に記載の方法によって製造された請求項24ないし28のいずれか一項に記載の高分子。
【請求項37】
請求項24ないし28及び36のいずれか一項に記載の高分子の層を含む発光装置。
【請求項38】
透明な基板層、透明な電極層、発光層及び背面電極からなり、前記発光層が前記高分子を含むことを特徴とする請求項37に記載の発光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−80071(P2011−80071A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−254354(P2010−254354)
【出願日】平成22年11月15日(2010.11.15)
【分割の表示】特願2002−568657(P2002−568657)の分割
【原出願日】平成14年2月26日(2002.2.26)
【出願人】(502144729)アイシス イノベイシヨン リミテツド (18)
【Fターム(参考)】