説明

発光素子コーティング用組成物および発光装置、ならびに発光素子コーティング用組成物の製造方法

【課題】透明性に優れ、高温下でも黄色化や分解劣化しにくく、耐熱性、耐紫外線性および耐湿熱性に優れた発光素子コーティング用組成物およびそれを用いた発光素子、ならびに発光素子コーティング用組成物の製造方法を提供すること。
【解決手段】有機溶媒中、塩基性化合物、酸性化合物または金属キレート化合物の存在下で、
(A)金属酸化物微粒子、および
(B1)下記平均組成式(1)
1aSiOb(OR2c (1)
で表され、特定の重量平均分子量を有するアルコキシ末端の多官能ポリシロキサン(b1)と、特定の重量平均分子量を有するヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサン(b2)とを反応させて得られる多官能ポリシロキサン等を混合して得られる発光素子コーティング用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光ダイオードなどの発光素子のコーティングに用いられる組成物、その製造方法、および発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、照明等の用途に発光ダイオード(LED)等の発光装置が注目されている。図1はLEDの模式図である。発光素子部50は周囲に封止材51で封止されている。発光素子部50としては図2のようにバインダー53と蛍光体54とを含有する蛍光部52を有する場合もある。また、封止材51中に蛍光体が分散されている場合もある。
【0003】
このとき、発光素子部50を形成している半導体の屈折率は非常に高く3〜5程度である。これに対して封止材51やバインダー53の屈折率は1.4〜1.5程度と低く、半導体と封止材の界面における全反射角度は非常に小さく、それゆえ発光素子部50からの光の取出し効率は悪いものとなっている。従って、発光素子から発せられた光を効率的に取り出すためにこの封止材には高屈折性が要求されている(たとえば、特許文献1乃至3参照)。
【0004】
従来、この封止材に用いられる樹脂としてはエポキシ樹脂が一般であった(たとえば、特許文献4参照)が、発光素子として青色LED素子や紫外線LED素子を用いた青色LED、白色LED、紫外LEDでは、青色LED素子から発せられる近紫外光や紫外線LED素子から発せられる紫外光により、発光素子近傍でエポキシ樹脂封止材が黄変したり、発光素子の発熱により熱劣化したりするという問題があった。特に、電灯や照明、テレビやディスプレーのバックライトなどの高輝度が要求される用途では、青色LED素子や紫外線LED素子からの発光量も多く、黄変や熱劣化が起こり易かった。
【0005】
これに対して、耐久性に優れるシロキサン系材料と高屈折性の金属酸化物とを複合化することが検討されている(たとえば、特許文献5参照)。このシロキサン系バインダーの1つとして、ポリジメチルシロキサンが知られている。このポリジメチルシロキサンは通常200℃以上の高温下でない限り劣化せず、耐熱性、耐紫外線性に優れたシロキサン系バインダーとして有用であり、さらに柔軟性にも優れている点で様々な用途に使用される。ところが、ポリジメチルシロキサンに金属酸化物微粒子を配合した場合、これらを含む組成物は分散性に劣り、その硬化体は白化しやすく、たとえ透明塗膜が得られたとしても高温、高湿下で保存した場合、経時的にポリジメチルシロキサン成分消失に起因する重量減少が観察され、封止層が白化し透明性が低下するという問題があった。
【0006】
また、シロキサン系バインダーと金属酸化物とを複合化する場合、これらは分散液の形態で調製されることが多い。ところが、シロキサン系バインダーは水に溶け難いため、分散媒として有機溶剤を使用する必要があり、一方、金属酸化物微粒子は有機溶媒中で凝集しやすいため、水媒体中に分散させることが多い。このため、有機溶媒中に金属酸化物微粒子を微分散させるには、ポリオキシエチレン基などの炭素数6以上の有機基を有するリン酸、スルホン酸またはカルボン酸(特許文献6参照)等の化合物を分散剤として用いる必要があった。
【0007】
しかしながら、これらの化合物を使用して金属酸化物微粒子を有機溶媒中に微分散させる方法で、金属酸化物微粒子とシロキサン系バインダーとを複合化させた場合、分散液の分散性は良好であるが、上記化合物とシロキサン系バインダーとの相溶性が悪く、たとえば、溶媒を除去して塗膜を形成した場合、塗膜が白化することがあった。また、製膜条件等を制御して透明な塗膜を形成しても、この塗膜には、これらの化合物が残存するため、紫外線照射下や150℃以上の高温下等の過酷な環境下では塗膜の着色やクラック発生等の不具合が生じることがあった。

【特許文献1】特開昭和62−22491号公報
【特許文献2】特開2000−49387号公報
【特許文献3】特開2001−203392号公報
【特許文献4】特開2000−281868号公報
【特許文献5】特開2006−299251号公報
【特許文献6】特開2004−283822号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記のような従来技術に伴う問題を解決しようとするものであって、透明性に優れ、高温下でも黄色化や分解劣化しにくく、耐熱性、耐紫外線性および耐湿熱性に優れた発光素子コーティング用組成物およびそれを用いた発光素子、ならびに発光素子コーティング用組成物の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記問題点を解決すべく鋭意研究した結果、ポリジメチルシロキサンと金属酸化物微粒子とを配合した硬化体を多湿下で保持すると、ポリジメチルシロキサンが分解されて硬化体の劣化が起こることを見出した。この分解機構の詳細は明らかではないが、ポリジメチルシロキサンの加水分解劣化であると推測された。また、金属酸化物微粒子の一次粒子径が小さいほどポリジメチルシロキサンの加水分解劣化が起こりやすいことを見出した。そこで、金属酸化物微粒子をシランモノマー等のシランカップリング剤で表面処理したが、ポリジメチルシロキサンの加水分解劣化を十分に抑制することはできなかった。一方、多官能ポリシロキサンについては金属酸化物微粒子の存在下、多湿下で保持しても加水分解劣化しないことも併せて見出した。多官能シロキサンが多湿下で分解劣化しない要因は明らかではないが、多官能ポリシロキサンが3次元構造またはラダー構造であるため主鎖(Si−O結合)がその立体障害効果により保護され、金属酸化物微粒子と水による加水分解作用を受け難いためと推測される。
【0010】
本発明者は、予め、ヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサンと高分子量のアルコキシ末端多官能ポリシロキサンとを、あるいはアルコキシ基含有ポリジメチルシロキサンと高分子量のシラノール末端多官能ポリシロキサンとを脱アルコール反応させて、ジメチルシロキサン連鎖を有する多官能ポリシロキサンを形成し、この多官能ポリシロキサンを含有する有機溶媒中で、塩基性化合物、酸性化合物または金属キレート化合物の存在下、金属酸化物微粒子を処理することにより、ポリシロキサンを含有する有機溶媒中で酸化物微粒子が高度に分散した発光素子コーティング用組成物が得られることを見出し、さらに、この組成物から得られる硬化体が、透明性に優れ、高温下でも黄色化や分解劣化しにくく、耐熱性、耐紫外線性および耐湿熱性に優れていることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明に係る発光素子コーティング用組成物は、有機溶媒中、塩基性化合物、酸性化合物または金属キレート化合物の存在下で、
(A)金属酸化物微粒子、および
(B1)下記平均組成式(1)
1aSiOb(OR2c (1)
(式中、R1は水素原子またはオキシアルキレン基を有しない1価の炭化水素基であり、
1が複数存在する場合には互いに同じであっても異なっていてもよく、R2はアルキル基であり、R2が複数存在する場合には互いに同じであっても異なっていてもよく、aは0を超えて2未満、bは0を超えて2未満、cは0を超えて4未満、かつa+b×2+c=4である)
で表され、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量が3,000以上100,000以下の範囲にあるアルコキシ末端の多官能ポリシロキサン(b1)と、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量が2,000以上100,000以下の範囲にあるヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサン(b2)とを、これらの合計100重量部に対して、重量比(b1/b2)が30/70〜95/5の範囲で脱アルコール反応させて得られる多官能ポリシロキサン、あるいは
(B2)下記平均組成式(1’)
1aSiOb(OH)c (1’)
(式中、R1は水素原子またはオキシアルキレン基を有しない1価の炭化水素基であり、R1が複数存在する場合には互いに同じであっても異なっていてもよく、aは0を超えて2未満、bは0を超えて2未満、cは0を超えて4未満、かつa+b×2+c=4である)
で表され、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量が3,000以上100,000以下の範囲にあるヒドロキシ末端の多官能ポリシロキサン(b3)と、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量が2,000以上100,000以下の範囲にあるアルコキシ末端ポリジメチルシロキサン(b4)とを、これらの合計100重量部に対して、重量比(b3/b4)が30/70〜95/5の範囲で脱アルコール反応させて得られる多官能ポリシロキサンを混合して、前記金属酸化物微粒子(A)を有機溶媒中に分散させることにより得られる。
【0012】
本発明に係る発光素子コーティング用組成物の製造方法は、下記平均組成式(1)
1aSiOb(OR2c (1)
(式中、R1は水素原子またはオキシアルキレン基を有しない1価の炭化水素基であり、
1が複数存在する場合には互いに同じであっても異なっていてもよく、R2はアルキル基であり、R2が複数存在する場合には互いに同じであっても異なっていてもよく、aは0
を超えて2未満、bは0を超えて2未満、cは0を超えて4未満、かつa+b×2+c=4である)
で表され、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量が3,000以上100,000以下の範囲にあるアルコキシ末端の多官能ポリシロキサン(b1)と、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量が2,000以上100,000以下の範囲にあるヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサン(b2)とを、これらの合計100重量部に対して、重量比(b1/b2)が30/70〜95/5の範囲で脱アルコール反応させて多官能ポリシロキサン(B1)、あるいは
下記平均組成式(1’)
1aSiOb(OH)c (1’)
(式中、R1は水素原子またはオキシアルキレン基を有しない1価の炭化水素基であり、R1が複数存在する場合には互いに同じであっても異なっていてもよく、aは0を超えて2未満、bは0を超えて2未満、cは0を超えて4未満、かつa+b×2+c=4である)
で表され、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量が3,000以上100,000以下の範囲にあるヒドロキシ末端の多官能ポリシロキサン(b3)と、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量が2,000以上100,000以下の範囲にあるアルコキシ末端ポリジメチルシロキサン(b4)とを、これらの合計100重量部に対して、重量比(b3/b4)が30/70〜95/5の範囲で脱アルコール反応させて得られる多官能ポリシロキサン(B2)
を調製した後、
該多官能ポリシロキサン(B1)または(B2)と(A)酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化タンタル、酸化インジウム、酸化ハフニウム、酸化スズ、酸化ニオブおよびこれらの複合体からなる群から選択される少なくとも1種の金属酸化物の微粒子とを、有機溶媒中、塩基性化合物、酸性化合物または金属キレート化合物の存在下で混合することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、炭素数6以上の有機基を有するリン酸等やオキシアルキレン基を有する化合物を使用せずに、ジメチルシロキサン連鎖を有するポリシロキサンを含む有機溶媒に高屈折性の金属酸化物微粒子が高度に分散した組成物が得られる。この組成物は分散安定性に優れているとともに、金属酸化物微粒子と上記ポリシロキサンとを含有する透明な硬化体を形成できる。さらに、上記ポリシロキサンが、適度な長さのジメチルシロキサン連鎖と3次元構造やラダー構造を有する多官能ポリシロキサンを含むため、柔軟性に優れた厚膜の硬化体を形成できるとともに、高温下でも黄色化や分解劣化しにくく、耐熱性、耐紫外線性および耐湿熱性に優れた硬化体が得られる。上記硬化体は、特に発光素子として青色LED素子や紫外線LED素子を用いたLED素子に用いることができ、高輝度のLED素子の封止材に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明に係る発光素子コーティング用組成物は、金属酸化物微粒子(A)とジメチルシロキサン連鎖を有する多官能ポリシロキサン(B)とを、炭素数6以上の有機基を有するリン酸等やオキシアルキレン基を有する化合物を使用せずに、有機溶媒中、塩基性化合物、酸性化合物または金属キレート化合物の存在下で混合して分散処理を施すことにより得ることができる。
【0015】
〔金属酸化物微粒子(A)〕
(A)金属酸化物微粒子
本発明では、硬化体に高屈折性を付与するために高屈折性の微粒子を使用する。このような微粒子は、25℃における波長400nmの光の屈折率が好ましくは1.55以上、より好ましくは1.60以上、特に好ましくは1.70以上の微粒子であれば特に制限されないが、たとえば、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化タンタル、酸化インジウム、酸化ハフニウム、酸化スズ、酸化ニオブおよびこれらの複合体などの金属酸化物微粒子(以下、「金属酸化物微粒子(A)」という)が挙げられる。また、上記酸化チタンは、TiO2構造を有すれば特に限定されず、たとえばアナターゼ型、ルチル型、ブルッカイト型が挙げられる。これらの金属酸化物微粒子(A)は、1種単独で、または2種以上を混合して使用してもよい。これらの金属酸化物微粒子のうち、酸化ジルコニウムが好ましい。
【0016】
金属酸化物微粒子(A)の1次平均粒子径は、好ましくは0.1〜100nm、より好ましくは0.1〜70nm、特に好ましくは0.1〜50nmである。金属酸化物微粒子(A)の1次平均粒子径が上記範囲にあると、光透過性に優れた硬化体を得ることができる。
【0017】
このような金属酸化物微粒子(A)は、溶媒に分散されていない粉体の状態で添加しても、イソプロピルアルコールなどの極性溶媒中やトルエンなどの非極性溶媒中に分散した分散体の状態で添加してもよい。添加前の金属酸化物微粒子(A)は、凝集して二次粒子を形成していてもよい。本発明では、多官能ポリシロキサン(B)の溶解性を考慮して適切な有機溶媒を適宜選択できる点で、粉体を使用することが好ましい。また、本発明の製造方法は、粉体の状態で添加する場合に、特に有効である。
【0018】
〔多官能ポリシロキサン(B)〕
本発明に用いられる多官能ポリシロキサン(B)は、ジメチルシロキサン連鎖を有する多官能ポリシロキサンであり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量が3,000以上100,000以下の範囲にあるアルコキシ末端多官能ポリシロキサン(b1)と、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量が2,000以上100,000以下の範囲にあるヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサン(b2)とを脱アルコール反応させて得られるポリシロキサン(B1)、および、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量が3,000以上100,000以下の範囲にあるヒドロキシ末端多官能ポリシロキサン(b3)と、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量が2,000以上100,000以下の範囲にあるアルコキシ末端ポリジメチルシロキサン(b4)とを脱アルコール反応させて得られるポリシロキサン(B2)が挙げられる。
【0019】
(b1)アルコキシ末端多官能ポリシロキサン:
本発明に用いられるアルコキシ末端多官能ポリシロキサン(b1)は、下記平均組成式(1)
1aSiOb(OR2c (1)
で表される、アルコキシ基を有する多官能ポリシロキサンである。
【0020】
式(1)中、R1は水素原子またはオキシアルキレン基を有しない1価の炭化水素基であり、R1が複数存在する場合には互いに同じであっても異なっていてもよく、R2はアルキル基であり、R2が複数存在する場合には互いに同じであっても異なっていてもよい。aは0を超えて2未満、bは0を超えて2未満、cは0を超えて4未満、かつa+b×2+c=4である。R1、R2がそれぞれ複数存在する場合には、aは、水素原子とオキシアルキレン基を有しない1価の炭化水素基との合計のケイ素原子に対する割合、cは、アルコキシ基のケイ素原子に対する割合を表す。
【0021】
上記アルコキシ末端多官能ポリシロキサン(b1)の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算値で、3,000以上100,000以下、より好ましくは3,000以上80,000以下、特に好ましくは3,500以上50,000以下である。上記範囲の重量平均分子量を有するアルコキシ末端多官能ポリシロキサン(b1)を使用すると、硬化体形成時におけるクラック発生の抑制と湿熱下における分解劣化の抑制とを両立できる。
【0022】
上記1価の炭化水素基は、オキシアルキレン基を有しなければ特に限定されないが、置換または無置換の1価の炭化水素基が挙げられる。上記1価の無置換炭化水素基としては、炭素数1〜8のアルキル基、フェニル基、ベンジル基、トリル基が挙げられる。炭素数1〜8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基などが挙げられる。また、上記1価の置換炭化水素基としては、炭素数1〜8の置換アルキル基が挙げられる。上記置換アルキル基の置換基としては、ハロゲン、アミノ基、メルカプト基、イソシアネート基、グリシジル基、グリシドキシ基、ウレイド基などが挙げられる。
【0023】
また、上記R2で表されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基などが挙げられる。これらのアルキル基のうち、メチル基、エチル基が好ましい。
【0024】
このアルコキシ末端多官能ポリシロキサン(b1)は、たとえば、上記平均組成式を満たすように、多官能のアルコキシシランまたは多官能クロロシランを適宜組み合わせて加水分解・縮合させることによって製造できる。ただし、テトラアルコキシシラン類のみでの加水分解・縮合、およびジアルコキシシラン類のみでの加水分解・縮合は除く。本発明では、金属酸化物微粒子(A)と水との存在下における耐分解性が優れる点から、3官能アルコキシシランおよび/または3官能クロロシランを50重量%以上用いて得られるアルコキシ末端多官能ポリシロキサンが特に好ましい。
【0025】
上記多官能のアルコキシシランとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−i−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシランなどのテトラアルコキシシラン類;メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、i−プロピルトリメトキシシラン、i−プロピルトリエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、n−ペンチルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘプチルトリメトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシランなどのトリアルコキシシラン類;ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジ−n−プロピルジメトキシシラン、ジ−n−プロピルジエトキシシラン、ジ−i−プロピルジメトキシシラン、ジ−i−プロピルジエトキシシラン、ジ−n−ブチルジメトキシシラン、ジ−n−ブチルジエトキシシラン、ジ−n−ペンチルジメトキシシラン、ジ−n−ペンチルジエトキシシラン、ジ−n−ヘキシルジメトキシシラン、ジ−n−ヘキシルジエトキシシラン、ジ−n−ヘプチルジメトキシシラン、ジ−n−ヘプチルジエトキシシラン、ジ−n−オクチルジメトキシシラン、ジ−n−オクチルジエトキシシラン、ジ−n−シクロヘキシルジメトキシシラン、ジ−n−シクロヘキシルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシランなどのジアルコキシシラン類が挙げられる。これらのアルコキシシラン類は1種単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0026】
また、多官能のアルコキシシランに加えて、1官能のアルコキシシランを併用することもできる。1官能のアルコキシシランとしては、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリエチルメトキシシラン、トリエチルエトキシシランなどが挙げられる。これらの1官能のアルコキシシランは、使用するアルコキシシラン全量に対して、10重量%以下、好ましくは7重量%以下、より好ましくは5重量%以下で使用することが望ましい。
【0027】
また、上記分子量を満たすアルコキシ末端多官能ポリシロキサン(b1)として、GE東芝シリコーン社製のXR31−B0270、XR31−B2733(以上、商品名)などの市販のシロキサンポリマーを用いることもできる。
【0028】
なお、上記アルコキシ末端多官能ポリシロキサン(b1)は、本発明の効果を損なわない範囲でSi−OH結合を有していてもよい。
【0029】
(b2)ヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサン:
本発明に用いられるヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサン(b2)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量が2,000以上100,000以下、より好ましくは2,000以上80,000以下、特に好ましくは3,000以上70,000以下である。上記範囲の重量平均分子量を有するヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサン(b2)を使用すると、柔軟性に優れた多官能ポリシロキサン(B1)が得られ、硬化体形成時におけるクラック発生の抑制と硬化性とを両立できるため、硬化体の厚膜化を図ることができる。
【0030】
このヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサン(b2)は、たとえば、ジメチルジアルコキシシランまたはジメチルジクロロシランを加水分解・縮合させることによって製造できる。
【0031】
上記ジメチルジアルコキシシランとしては、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジ−i−プロポキシシラン、ジメチルジ−n−ブトキシシランなどが挙げられる。これらのジメチルジアルコキシシランは1種単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0032】
また、上記ヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサン(b2)は、環状オルガノシロキサンを開環縮合させることによっても製造できる。環状オルガノシロキサンとしては、ヘキサフェニルシクロトリシロキサン、オクタフェニルシクロテトラシロキサン、テチラビニルテトラメチルシクロテトラシロキサン、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、ペンタメチルシクロテトラシロキサン、ヘキサメチルシクロテトラシロキサン、テトラメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等が挙げられる。
【0033】
また、上記分子量を満たすヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサン(b2)として、GE東芝シリコーン社製のYF−3057、YF−3800、YF−3802、YF−3807、YF−3897、XF−3905(以上、商品名)などの市販のヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサンを用いることもできる。
【0034】
(b3)ヒドロキシ末端多官能ポリシロキサン:
本発明に用いられるヒドロキシ末端多官能ポリシロキサン(b3)は、下記平均組成式(1’)
1aSiOb(OH)c (1’)
で表される、ヒドロキシ基を有する多官能ポリシロキサンであり、3次元架橋構造を有することが好ましい。
【0035】
式(1’)中、R1は、上記式(1)におけるR1と同様に定義される。aは0を超えて2未満、bは0を超えて2未満、cは0を超えて4未満、かつa+b×2+c=4である。R1が複数存在する場合には、aは、水素原子とオキシアルキレン基を有しない1価の炭化水素基との合計のケイ素原子に対する割合を表す。
【0036】
上記ヒドロキシ末端多官能ポリシロキサン(b3)の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算値で、3,000以上100,000以下、より好ましくは3,000以上80,000以下、特に好ましくは3,500以上50,000以下である。上記範囲の重量平均分子量を有するヒドロキシ末端多官能ポリシロキサン(b3)を使用すると、硬化体形成時におけるクラック発生の抑制と湿熱下における分解劣化の抑制とを両立できる。
【0037】
上記1価の炭化水素基は、オキシアルキレン基を有しなければ特に限定されないが、置換または無置換の1価の炭化水素基が挙げられる。上記置換もしくは無置換の1価の炭化水素基としては、上記アルコキシ末端多官能ポリシロキサン(b1)で例示した置換または無置換の1価の炭化水素基と同様のものを挙げることができる。
【0038】
このヒドロキシ末端多官能ポリシロキサン(b3)は、たとえば、上記平均組成式を満たすように、多官能のアルコキシシランまたは多官能クロロシランを適宜組み合わせて加水分解・縮合させることによって製造できる。ただし、テトラアルコキシシラン類のみでの加水分解・縮合、およびジアルコキシシラン類のみでの加水分解・縮合は除く。本発明では、金属酸化物微粒子(A)と水との存在下における耐分解性が優れる点から、3官能アルコキシシランおよび/または3官能クロロシランを50重量%以上用いて得られるヒドロキシ末端多官能ポリシロキサンが特に好ましい。
【0039】
上記多官能のアルコキシシランとしては、上記アルコキシ末端多官能ポリシロキサン(b1)で例示した多官能アルコキシシランと同様のものを挙げることができ、1種単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0040】
また、ヒドロキシ末端多官能ポリシロキサン(b3)においても、多官能のアルコキシシランに加えて、上記アルコキシ末端多官能ポリシロキサン(b1)で例示した1官能のアルコキシシランを併用してもよい。このとき、1官能のアルコキシシランは、使用するアルコキシシラン全量に対して、10重量%以下、好ましくは7重量%以下、より好ましくは5重量%以下で使用することが望ましい。
【0041】
なお、上記アルコキシ末端多官能ポリシロキサン(b3)は、本発明の効果を損なわない範囲でSi−OR結合を有していてもよい。
(b4)アルコキシ末端ポリジメチルシロキサン:
本発明に用いられるアルコキシ末端ポリジメチルシロキサン(b4)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量が2,000以上100,000以下、より好ましくは2,000以上80,000以下、特に好ましくは3,000以上70,000以下である。上記範囲の重量平均分子量を有するアルコキシ末端ポリジメチルシロキサン(b4)を使用すると、柔軟性に優れた多官能ポリシロキサン(B2)が得られ、硬化体形成時におけるクラック発生の抑制と硬化性とを両立できるため、硬化体の厚膜化を図ることができる。
【0042】
このアルコキシ末端ポリジメチルシロキサン(b4)は、たとえば、ジメチルジアルコキシシランまたはジメチルジクロロシランを加水分解・縮合させることによって製造できる。
【0043】
上記ジアルコキシシランとしては、上記ヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサン(b2)で例示したジアルコキシシランと同様のものを挙げることができ、これらは1種単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0044】
(多官能ポリシロキサン(B)の製造方法)
上記多官能ポリシロキサン(B1)は、上記アルコキシ末端多官能ポリシロキサン(b1)と上記ヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサン(b2)とを脱アルコール反応させることにより製造できる。また、上記多官能ポリシロキサン(B2)は、上記ヒドロキシ末端多官能ポリシロキサン(b3)と上記アルコキシ末端ポリジメチルシロキサン(b4)とを脱アルコール反応させることにより製造できる。この多官能ポリシロキサン(B1)および(B2)は、通常水を添加した後、さらに加水分解・縮合させることが好ましい。これにより、多官能ポリシロキサン(B1)および(B2)が高分子量化し、得られる硬化体の透明性が向上する。上記各反応は、通常、有機溶媒中で触媒を用いて行なわれる。
【0045】
上記アルコキシ末端多官能ポリシロキサン(b1)と上記ヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサン(b2)との混合比は、これらの合計100重量部に対して、重量比(b1/b2)で、30/70〜95/5であり、好ましくは50/50〜95/5、より好ましくは50/50〜90/10である。また、上記ヒドロキシ末端多官能ポリシロキサン(b3)と上記アルコキシ末端ポリジメチルシロキサン(b4)との混合比は、これらの合計100重量部に対して、重量比(b3/b4)で、30/70〜95/5であり、好ましくは50/50〜95/5、より好ましくは50/50〜90/10である。ポリシロキサン(b1)と(b2)との混合比、およびポリシロキサン(b3)と(b4)との混合比が上記範囲にあると、ポリジメチルシロキサンの劣化が抑制でき、耐熱性、耐紫外線性および耐湿熱性に優れた硬化体を得ることができる。特に、アルコキシ末端多官能ポリシロキサン(b1)およびヒドロキシ末端多官能ポリシロキサン(b3)の割合が少ないと、耐熱性、耐紫外線性および耐湿熱性が低下する。
【0046】
(脱アルコール反応)
上記脱アルコール反応の温度は、好ましくは30〜150℃、より好ましくは40〜120℃、特に好ましくは50〜100℃である。反応時間は、好ましくは0.1〜24時間、より好ましくは0.5〜12時間、特に好ましくは1〜8時間である。また、脱アルコール反応は、各成分を反応容器に一括で仕込んで実施してもよいし、一方の成分に他方の成分を間欠的にもしくは連続的に添加しながら実施してもよい。
【0047】
上記脱アルコール反応により、ヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサン(b2)の両末端に、アルコキシ末端多官能ポリシロキサン(b1)が結合した構造の多官能ポリシロキサン(B1)、または、アルコキシ末端ポリジメチルシロキサン(b4)の両末端に、ヒドロキシ末端多官能ポリシロキサン(b3)が結合した構造の多官能ポリシロキサン(B2)が形成される。
【0048】
(加水分解・縮合反応)
加水分解・縮合反応の際に添加される水の量は、多官能ポリシロキサン(B1)または(B2)100重量部に対して、通常1〜500重量部、好ましくは10〜300重量部、より好ましくは20〜200重量部である。水の添加量が上記範囲にあると、加水分解・縮合反応が十分に進行するとともに、反応後に除去する水の量が少ないため好ましい。
【0049】
上記加水分解・縮合反応の温度は、好ましくは20〜150℃、より好ましくは30〜100℃、特に好ましくは40〜80℃である。反応時間は、好ましくは0.1〜24時間、より好ましくは0.5〜12時間、特に好ましくは1〜8時間である。
【0050】
(有機溶媒)
上記脱アルコール反応および加水分解・縮合反応において用いられる有機溶媒としては、たとえば、アルコール類、芳香族炭化水素類、エーテル類、ケトン類、エステル類などを挙げることができる。上記アルコール類としては、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、i−ブチルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、n−ヘキシルアルコール、n−オクチルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレンモノメチルエーテルアセテート、ジアセトンアルコールなどを挙げることができる。また、芳香族炭化水素類としては、ベンゼン、トルエン、キシレンなどが挙げられ、エーテル類としては、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどが挙げられ、ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトンなどが挙げられ、エステル類としては、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、炭酸プロピレン、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ノルマルプロピル、乳酸イソプロピル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチルなどが挙げられる。これらの有機溶剤は、1種単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。これらの有機溶媒のうち、脱アルコール反応では、反応を促進する観点から、アルコール以外の有機溶媒、たとえば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレンなどを使用することが好ましい。また、これらの有機溶媒は、予め脱水処理を施して、水分を除去した状態で使用することが好ましい。
【0051】
上記有機溶媒は、脱アルコール反応および加水分解・縮合反応のコントロール、得られる多官能ポリシロキサン(B1)または(B2)を含む溶液の濃度もしくは粘度の調整、または硬化体製造時の厚み調整などを目的として適宜使用することができる。有機溶媒を使用する場合、その使用量は所望の条件に応じて適宜設定することができるが、たとえば、得られる多官能ポリシロキサン(B1)または(B2)の濃度が、完全加水分解縮合物換算で、好ましくは5〜99重量%、より好ましくは7〜95重量%、特に好ましくは10〜90重量%となる量である。
【0052】
(触媒)
上記脱アルコール反応または加水分解・縮合反応に用いられる触媒としては、たとえば、塩基性化合物、酸性化合物および金属キレート化合物が挙げられる。
【0053】
(塩基性化合物)
上記塩基性化合物としては、アンモニア(アンモニア水溶液を含む)、有機アミン化合物、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド等のアルカリ金属のアルコキシドが挙げられる。これらのうち、アンモニアおよび有機アミン化合物が好ましい。
【0054】
有機アミンとしては、アルキルアミン、アルコキシアミン、アルカノールアミン、アリールアミンなどが挙げられる。
アルキルアミンとしては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、N,N−ジメチルアミン、N,N−ジエチルアミン、N,N−ジプロピルアミン、N,N−ジブチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミンなどの炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキルアミンなどが挙げられる。
【0055】
アルコキシアミンとしては、メトキシメチルアミン、メトキシエチルアミン、メトキシプロピルアミン、メトキシブチルアミン、エトキシメチルアミン、エトキシエチルアミン、エトキシプロピルアミン、エトキシブチルアミン、プロポキシメチルアミン、プロポキシエチルアミン、プロポキシプロピルアミン、プロポキシブチルアミン、ブトキシメチルアミン、ブトキシエチルアミン、ブトキシプロピルアミン、ブトキシブチルアミンなどの炭素数1〜4のアルコキシ基を有するアルコキシアミンなどが挙げられる。
【0056】
アルカノールアミンとしては、メタノールアミン、エタノールアミン、プロパノールアミン、ブタノールアミン、N−メチルメタノールアミン、N−エチルメタノールアミン、N−プロピルメタノールアミン、N−ブチルメタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、N−プロピルエタノールアミン、N−ブチルエタノールアミン、N−メチルプロパノールアミン、N−エチルプロパノールアミン、N−プロピルプロパノールアミン、N−ブチルプロパノールアミン、N−メチルブタノールアミン、N−エチルブタノールアミン、N−プロピルブタノールアミン、N−ブチルブタノールアミン、N,N−ジメチルメタノールアミン、N,N−ジエチルメタノールアミン、N,N−ジプロピルメタノールアミン、N,N−ジブチルメタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジプロピルエタノールアミン、N,N−ジブチルエタノールアミン、N,N−ジメチルプロパノールアミン、N,N−ジエチルプロパノールアミン、N,N−ジプロピルプロパノールアミン、N,N−ジブチルプロパノールアミン、N,N−ジメチルブタノールアミン、N,N−ジエチルブタノールアミン、N,N−ジプロピルブタノールアミン、N,N−ジブチルブタノールアミン、N−メチルジメタノールアミン、N−エチルジメタノールアミン、N−プロピルジメタノールアミン、N−ブチルジメタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N−プロピルジエタノールアミン、N−ブチルジエタノールアミン、N−メチルジプロパノールアミン、N−エチルジプロパノールアミン、N−プロピルジプロパノールアミン、N−ブチルジプロパノールアミン、N−メチルジブタノールアミン、N−エチルジブタノールアミン、N−プロピルジブタノールアミン、N−ブチルジブタノールアミン、N−(アミノメチル)メタノールアミン、N−(アミノメチル)エタノールアミン、N−(アミノメチル)プロパノールアミン、N−(アミノメチル)ブタノールアミン、N−(アミノエチル)メタノールアミン、N−(アミノエチル)エタノールアミン、N−(アミノエチル)プロパノールアミン、N−(アミノエチル)ブタノールアミン、N−(アミノプロピル)メタノールアミン、N−(アミノプロピル)エタノールアミン、N−(アミノプロピル)プロパノールアミン、N−(アミノプロピル)ブタノールアミン、N−(アミノブチル)メタノールアミン、N−(アミノブチル)エタノールアミン、N−(アミノブチル)プロパノールアミン、N−(アミノブチル)ブタノールアミンなどの炭素数1〜4のアルキル基を有するアルカノールアミンが挙げられる。
【0057】
アリールアミンとしてはアニリン、N−メチルアニリンなどが挙げられる。 さらに、上記以外の有機アミンとして、テトラメチルアンモニウムハイドロキサイド、テトラエチルアンモニウムハイドロキサイド、テトラプロピルアンモニウムハイドロキサイド、テトラブチルアンモニウムハイドロキサイドなどのテトラアルキルアンモニウムハイドロキサイド;テトラメチルエチレンジアミン、テトラエチルエチレンジアミン、テトラプロピルエチレンジアミン、テトラブチルエチレンジアミンなどのテトラアルキルエチレンジアミン;メチルアミノメチルアミン、メチルアミノエチルアミン、メチルアミノプロピルアミン、メチルアミノブチルアミン、エチルアミノメチルアミン、エチルアミノエチルアミン、エチルアミノプロピルアミン、エチルアミノブチルアミン、プロピルアミノメチルアミン、プロピルアミノエチルアミン、プロピルアミノプロピルアミン、プロピルアミノブチルアミン、ブチルアミノメチルアミン、ブチルアミノエチルアミン、ブチルアミノプロピルアミン、ブチルアミノブチルアミンなどのアルキルアミノアルキルアミン;ピリジン、ピロール、ピペラジン、ピロリジン、ピペリジン、ピコリン、モルホリン、メチルモルホリン、ジアザビシクロオクラン、ジアザビシクロノナン、ジアザビシクロウンデセンなども挙げられる。
【0058】
このような塩基性化合物は、1種単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。これらのうち、トリエチルアミン、テトラメチルアンモニウムハイドロキサイド、ピリジンが特に好ましい。
【0059】
(酸性化合物)
上記酸性化合物としては、有機酸および無機酸が挙げられる。有機酸としては、たとえば、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、シュウ酸、マレイン酸、無水マレイン酸、メチルマロン酸、アジピン酸、セバシン酸、没食子酸、酪酸、メリット酸、アラキドン酸、ミキミ酸、2−エチルヘキサン酸、オレイン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレイン酸、サリチル酸、安息香酸、p−アミノ安息香酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、モノクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、ギ酸、マロン酸、メタンスルホン酸、フタル酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸などが挙げられる。上記無機酸としては、たとえば、塩酸、硝酸、硫酸、フッ酸、リン酸などが挙げられる。
【0060】
このような酸性化合物は、1種単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。これらのうち、マレイン酸、無水マレイン酸、メタンスルホン酸、酢酸が特に好ましい。
(金属キレート化合物)
上記金属キレート化合物としては、有機金属化合物および/またはその部分加水分解物(以下、有機金属化合物および/またはその部分加水分解物をまとめて、「有機金属化合物類」という)が挙げられる。
【0061】
上記有機金属化合物類としては、たとえば、下記式(a)
M(OR7r(R8COCHCOR9s (a)
(式中、Mは、ジルコニウム、チタンおよびアルミニウムからなる群からを選択される少なくとも1種の金属原子を表し、R7およびR8は、それぞれ独立に、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基などの炭素数1〜6個の1価の炭化水素基を表し、R9は、前記炭素数1〜6個の1価の炭化水素基、または、
メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基、ラウリルオキシ基、ステアリルオキシ基などの炭素数1〜16個のアルコキシル基を表し、rおよびsは、それぞれ独立に0〜4の整数であって、(r+s)=(Mの原子価)の関係を満たす)
で表される化合物(以下、「有機金属化合物(a)」という)、1つのスズ原子に炭素数1〜10個のアルキル基が1〜2個結合した4価のスズの有機金属化合物(以下、「有機スズ化合物」という)、あるいは、これらの部分加水分解物などが挙げられる。
【0062】
有機金属化合物(a)として、たとえば、テトラ−n−ブトキシジルコニウム、トリ−n−ブトキシ・エチルアセトアセテートジルコニウム、ジ−n−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、n−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(n−プロピルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(アセチルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(エチルアセトアセテート)ジルコニウムなどの有機ジルコニウム化合物;
テトラ−i−プロポキシチタニウム、ジ−i−プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタニウム、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセテート)チタニウム、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトン)チタニウムなどの有機チタン化合物;
トリ−i−プロポキシアルミニウム、ジ−i−プロポキシ・エチルアセトアセテートアルミニウム、ジ−i−プロポキシ・アセチルアセトナートアルミニウム、i−プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)アルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、トリス(アセチルアセトナート)アルミニウム、モノアセチルアセトナート・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウムなどの有機アルミニウム化合物が挙げられる。
【0063】
有機スズ化合物として、たとえば、
【0064】
【化1】

【0065】
【化2】

【0066】
【化3】

【0067】
【化4】

【0068】
などのクロライド型有機スズ化合物;
(C492SnO、(C8172SnOなどの有機スズオキサイドや、これらの有機スズオキサイドとシリケート、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、フタル酸ジオクチルなどのエステル化合物との反応生成物;などが挙げられる。
【0069】
このような金属キレート化合物は、1種単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。これらのうち、トリ−n−ブトキシ・エチルアセトアセテートジルコニウム、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタニウム、ジ−i−プロポキシ・エチルアセトアセテートアルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、あるいはこれらの部分加水分解物が好ましい。
【0070】
塩基性化合物、酸性化合物および金属キレート化合物のうち、脱アルコール反応では金属キレート化合物が好ましく、加水分解・縮合では塩基性化合物が好ましい。金属キレート化合物は他の化合物に比べて脱アルコール反応性に優れ、また、水分存在下で塩基性化合物を触媒として使用すると縮合反応速度に比較し加水分解反応速度が早いため、得られるポリシロキサンの残存アルコキシ基を低減することができ、結果として得られるポリシロキサンの体積収縮を低減できるため、耐クラック性に優れる硬化体を形成できる。
【0071】
上記脱アルコール反応において、上記塩基性化合物、酸性化合物または金属キレート化合物は、多官能ポリシロキサン(b1)または(b3)とポリジメチルシロキサン(b2)または(b4)との合計100重量部に対して、通常0.001〜20重量部、好ましくは0.005〜10重量部、より好ましくは0.01〜5重量部添加される。
【0072】
上記加水分解・縮合反応において、上記塩基性化合物、酸性化合物または金属キレート化合物は、多官能ポリシロキサン(b1)または(b3)とポリジメチルシロキサン(b2)または(b4)との合計100重量部に対して、通常1〜50重量部、好ましくは2〜40重量部、より好ましくは3〜30重量部添加される。
【0073】
上記で得られた多官能ポリシロキサン(B1)および(B2)の貯蔵安定性、および以降の金属酸化物微粒子分散安定性確保の点から、加水分解縮合後に脱触媒工程として水洗を行うことが好ましい。特に加水分解縮合触媒として塩基性化合物を使用した場合、反応後に酸性化合物による中和を行った上で、水洗を行うことがより好ましい。
【0074】
中和に使用する酸性化合物は上記例示した酸性化合物を使用することができる。酸性化合物の使用量は加水分解縮合に使用した塩基性化合物1モルに対し、通常0.5〜2.0モル、好ましくは0.8〜1.5モル、さらに好ましくは0.9〜1.3モルである。酸性化合物を水に溶解して使用する場合は、多官能ポリシロキサン(b1)または(b3)とポリジメチルシロキサン(b2)または(b4)との合計100重量部に対して、通常10〜500重量部、好ましくは20〜300部、より好ましくは30〜200部の水に溶解する。中和後、十分に攪拌混合して静置し、水相と有機溶媒相との相分離を確認後、下層の水分を除去する。
【0075】
中和後の水洗に使用する水は、多官能ポリシロキサン(b1)または(b3)とポリジメチルシロキサン(b2)または(b4)との合計100重量部に対して、通常10〜500重量部、好ましくは20〜300部、より好ましくは30〜200部である。
【0076】
水洗は、水を添加して十分に攪拌した後、静置し、水相と有機溶媒相との相分離を確認後、下層の水分を除去することにより行う。水洗回数は好ましくは1回以上、さらに好ましくは2回以上である。
【0077】
上記方法により得られる多官能ポリシロキサン(B1)および(B2)の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算値で通常3,000〜200,000、好ましくは4,000〜150,000、より好ましくは5,000〜100,000である。
【0078】
〔蛍光体〕
また、本発明の発光素子コーティング用組成物は、さらに蛍光体を含有することができる。蛍光体は、硬化体中70体積%以下となるように添加する。
【0079】
(有機溶媒)
上記有機溶媒としては、上記多官能ポリシロキサン(B1)または(B2)製造時の脱アルコール反応や加水分解・縮合反応において例示した有機溶媒が挙げられる。これらの有機溶媒のうち、発光素子コーティング用組成物の分散安定性および高粘度化が図れるという点でアルコール以外の有機溶媒、たとえば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、およびこれらの混合物などが好ましい。また、これらの有機溶媒は、予め脱水処理を施して、水分を除去した状態で使用することが好ましい。
【0080】
上記有機溶媒の使用量は、金属酸化物微粒子(A)を均一に分散できる量であれば特に制限されないが、得られる発光素子コーティング用組成物の固形分濃度が、好ましくは5〜80重量%、より好ましくは7〜70重量%、特に好ましくは10〜60重量%となる量である。
【0081】
(塩基性化合物、酸性化合物および金属キレート化合物)
上記塩基性化合物、酸性化合物および金属キレート化合物としては、上記多官能ポリシロキサン(B1)または(B2)製造時の脱アルコール反応や加水分解・縮合反応において例示した化合物が挙げられる。これらの塩基性化合物、酸性化合物および金属キレート化合物のうち、塩基性化合物および酸性化合物が好ましく、塩基性化合物がより好ましく、有機アミン化合物がさらに好ましく、トリエチルアミン、テトラメチルアンモニウムハイドロキサイド、ピリジンが特に好ましい。
【0082】
上記塩基性化合物、酸性化合物または金属キレート化合物は、本発明の発光素子コーティング用組成物に、上記金属酸化物微粒子(A)100重量部に対して、通常0.001〜20重量部、好ましくは0.005〜10重量部、より好ましくは0.01〜5重量部、さらに好ましくは0.01〜1重量部、特に好ましくは0.01〜0.5重量部含有されていることが望ましい。上記範囲にあると金属酸化物微粒子(A)の分散安定性と金属酸化物微粒子含有ポリシロキサンの組成物の粘度を容易に制御できる。
【0083】
本発明の発光素子コーティング用組成物には、たとえば、組成物の粘度の調整や、塗膜の強度を高めるために、必要に応じて無機充填材を含有することができる。無機充填材としては、無機化合物の粉体、ゾル、コロイドが挙げられ、塗膜の所望の特性に応じて配合される。上記無機化合物としては、SiO、Al、AlGaAs、Al(OH)、Sb、Si、Sn−In、Sb−In、MgF、CeF、CeO、3Al・2SiO、BeO、SiC、AlN、Fe、Co、Co−FeO、CrO、FeN、BaTiO、BaO−Al−SiO、Baフェライト、SmCO、YCO、CeCO、PrCO、SmCO17、NdFe14B、Al、α−Si、SiN、CoO、Sb−SnO、Sb、MnO、MnB、Co、CoB、LiTaO、MgO、MgAl、BeAl、ZrSiO、ZnSb、PbTe、GeSi、FeSi、CrSi、CoSi、MnSi1.73、MgSi、β−B、BaC、BP、TiB、ZrB、HfB、RuSi、TiO、PbTiO、AlTiO、ZnSiO、ZrSiO、2MgO−Al−5SiO、Nb、LiO−Al−4SiO、Mgフェライト、Niフェライト、Ni−Znフェライト、Liフェライト、Srフェライトを挙げることができる。これらの無機化合物は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。 上述したように、無機充填材は、粉体、水に分散した水系のゾルもしくはコロイド、またはイソプロピルアルコールなどの極性溶媒やトルエンなどの非極性溶媒に分散した溶媒系のゾルもしくはコロイドなどの形態で使用することもできる。溶媒系のゾルもしくはコロイドの場合、配合後に溶媒溜去することもできる。無機化合物の分散性を向上させるために表面処理して用いてもよい。 これらの無機充填材の平均粒子径は、通常0.001〜1μm、さらに好ましくは0.005〜0.5μm、特に好ましくは0.005〜0.2μmである。 無機充填材が水系のゾルもしくはコロイド、または溶媒系のゾルもしくはコロイドである場合、その固形分濃度は通常0重量%を超えて50量%以下、好ましくは0.01重量%以上40重量%以下である。 本発明では、無機充填材として、特に粉末状シリカが好適に用いられる。表面処理未処理の粉末状シリカとしては、日本アエロジル社製の#150、#200、#300、疎水化処理の粉末状シリカとして、日本アエロジル社製のR972、R974、R976、RX200、RX300、RY200S、RY300、R106、東ソー社製のSS50A、富士シリシアのサイロホービック100等が挙げられる。無機充填材は、上記酸化物微粒子(A)と上記多官能ポリシロキサン(B)とを混合する前に添加してもよいし、混合した後に添加してもよい。無機充填材の使用量は、組成物の固形分に対して、固形分換算で通常0重量%を超えて50重量%以下、好ましくは5重量%以上40重量%以下である。
【0084】
〔発光素子コーティング用組成物およびその用途〕
本発明に係る発光素子コーティング用組成物は、金属酸化物微粒子(A)とジメチルシロキサン連鎖を有する多官能ポリシロキサン(B1)または(B2)とを、炭素数6以上の有機基を有するリン酸等やオキシアルキレン基を有する化合物を分散剤として使用せずに、有機溶媒中、塩基性化合物、酸性化合物または金属キレート化合物の存在下で混合して分散処理を施すことにより得ることができる。また、本発明に係る発光素子コーティング用組成物の硬化体は、発光ダイオードの封止材や蛍光部のバインダー等、発光素子をコーティングするための部材として好適に用いることができる。
【0085】
〔発光装置〕
本発明の発光装置は、LED素子等の発光素子に本発明の組成物をコーティングし、硬化させることにより得ることができる。LED素子としては、青色LED素子、白色LED素子、紫外LED素子等を用いることができる。さらに、硬化体中に蛍光体を含有させ、LED素子から発せられた光を変換することもできる。なお、本発明において「コーティング」とは、発光素子表面に組成物を塗布し硬化させる場合と、発光素子を本発明の組成物からなる硬化体中に封止する場合の両方を含有する概念を示す。
【0086】
(発光素子コーティング用組成物の製造方法)
上記発光素子コーティング用組成物は、有機溶媒に金属酸化物微粒子(A)とジメチルシロキサン連鎖を有する多官能ポリシロキサン(B1)または(B2)と、塩基性化合物、酸性化合物または金属キレート化合物とを添加し、これらを十分に混合して金属酸化物微粒子(A)を有機溶媒中に分散させることにより調製することができる。このとき、ボールミル、サンドミル(ビーズミル,ハイシェアビーズミル)、ホジナイザー、超音波ホモジナイザー、ナノマイザー、プロペラミキサー、ハイシェアミキサー、ペイントシェーカーなどの公知の分散機を用いることが好ましく、特に高分散の微粒子分散体ボールミル、サンドミル(ビーズミル,ハイシェアビーズミル)が好適に使用される。上記のように、塩基性化合物、酸性化合物または金属キレート化合物の存在下で金属酸化物微粒子(A)と多官能ポリシロキサン(B1)または(B2)とを混合すると、塩基性化合物、酸性化合物または金属キレート化合物の触媒作用により金属酸化物微粒子(A)の表面で多官能ポリシロキサン(B1)または(B2)の縮合反応が進行し、金属酸化物微粒子(A)の表面が疎水性となり、有機溶媒中に微分散しやすくなると推測される。
【0087】
本発明の発光素子コーティング用組成物は、金属酸化物微粒子(A)100重量部に対して、多官能ポリシロキサン(B1)または(B2)を完全加水分解縮合物換算で、好ましくは1〜1000重量部、より好ましくは5〜900重量部、特により好ましくは10〜800重量部含有することが望ましい。
【0088】
また、上記発光素子コーティング用組成物は、金属酸化物微粒子(A)が、体積平均分散粒径が300nm以下、好ましくは200nm以下で高度に分散した組成物である。
【0089】
また、本発明の発光素子コーティング用組成物は、ポリエチレングリコール等の有機系増粘剤を使用せずに分散処理時間を延長することで高粘度化することができ、ゲル化や酸化物微粒子(A)の沈降も発生せず、高比重の添加剤を混合した場合にも沈降分離を抑制できる。
【0090】
上記発光素子コーティング用組成物は、東機産業(株)製のRE80型粘度計により測定した25℃、ローター回転数5rpm、固形分濃度20重量%における粘度が、好ましくは20mPa・s以上、より好ましくは30mPa・s以上、特に好ましくは50mPa・s以上である。発光素子コーティング用組成物の粘度が上記範囲にあると、高比重の充填剤を配合した場合にも分離することなく、容易に厚膜の硬化体を製造することができる。
【0091】
上記発光素子コーティング用組成物は、金属酸化物微粒子(A)とジメチルシロキサン連鎖を有するポリシロキサン(B1)または(B2)とを含有するが、ポリシロキサン(B1)または(B2)中に含まれる多官能ポリシロキサン(b1)または(b3)が金属酸化物微粒子表面に存在するため、ジメチルシロキサン連鎖と金属酸化物微粒子との接触が抑制できると推定され、高温高湿下でもジメチルシロキサン連鎖の分解反応が起こりにくく、その硬化体は耐熱性、耐湿熱性に優れている。また、上記ポリシロキサンが柔軟性に優れるため、厚さが10μm〜500nmの硬化体も形成できる。
【0092】
さらに、上記多官能ポリシロキサン(B1)および(B2)が複数の末端アルコキシ基を有するため、上記組成物中では、金属酸化物微粒子(A)が、炭素数6以上の有機基を有するリン酸等やオキシアルキレン基を有する化合物を使用せずに、高度に分散されている。これにより、過酷な環境下に曝しても劣化せず、透明性に優れた硬化体を形成できる。また、この硬化体には、架橋構造に炭素−炭素結合が存在せず、耐紫外線性にも優れている。たとえば、上記硬化体は、5000mW/m2、200時間の紫外線照射によっても黄変(黄色化)しない。
【0093】

本発明の発光素子コーティング用組成物は、硬化体の収縮−膨張を緩和するためにガラス繊維を含有していてもよい。ガラス繊維を含有する組成物を使用するとさらに厚膜の硬化体を形成することができる。また、硬化体の透明性を確保するために、上記多官能ポリシロキサン(B1)または(B2)と上記ガラス繊維との屈折率差は0.01以下が好ましい。
【0094】
[実施例]
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は、この実施例により何ら限定されるものではない。なお、実施例および比較例中の「部」および「%」は、特記しない限り、「重量部」および「重量%」を示す。また、実施例および比較例における各種測定は、下記の方法により行なった。
【0095】
〔GPC測定〕
シロキサンの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより下記条件で測定したポリスチレン換算値として示した。
装置:HLC−8120C(東ソー(株)製)
カラム:TSK−gel MultiporeHXL−M(東ソー社製)
溶離液:THF、流量0.5mL/min、負荷量5.0%、100μL
〔分散性〕
得られた組成物の外観を目視により観察した。微粒子の沈降が見られなかった組成物の体積平均分散粒径を、マイクロトラック超微粒子粒度分布計(日機装(株)製「UPA150」)により測定し、下記基準で評価した。
AA:分離沈降なし。体積平均分散粒径≦150nm。
A:分離沈降なし。体積平均分散粒径≦200nm。
B:分離沈降なし。200nm<体積平均分散粒径≦300nm。
C:分離沈降なし。300nm<体積平均分散粒径。
D:分離沈降あり。
【0096】
[厚膜形成性]
得られた組成物を、乾燥膜厚が50μmになるように石英ガラス板上に塗布した後、100℃で1時間乾燥硬化させ、次いで、200℃で1時間乾燥硬化させて石英ガラス板上に膜厚50μmの硬化体を作製した。この硬化体の外観を目視で観察して下記基準で評価した。
A:クラックなし。
B:クラック発生。
【0097】
〔塗膜透明性〕
得られた組成物を、乾燥膜厚が20μmになるように石英ガラス板上に塗布した後、100℃で1時間乾燥硬化させ、次いで、200℃で1時間乾燥硬化させて石英ガラス板上に膜厚20μmの硬化体を作製した。この硬化体の波長500〜700nmにおける分光透過率を紫外可視分光光度計により測定し、下記基準で評価した。
A:光透過率が90%超。
B:光透過率が85%以上90%以下。
C:光透過率が70&以上85%未満。
D:光透過率が70%未満。
【0098】
〔黄色度〕
得られた分散体を、乾燥膜厚が20μmになるように石英ガラス板上に塗布した後、100℃で1時間乾燥硬化させ、次いで、200℃で1時間乾燥硬化させて石英ガラス板上に膜厚20μmの硬化体を作製した。この硬化体の波長450nmの光透過率を紫外可視分光光度計により測定して、下記基準で評価した。
A:光透過率が90%超。
B:光透過率が70〜90%。
C:光透過率が70%未満。
【0099】
〔耐紫外線性〕
得られた組成物を、乾燥膜厚が20μmになるように石英製ガラス板上に塗布した後、100℃で1時間乾燥硬化させた。次いで、200℃で1時間乾燥硬化させて石英製ガラス板上に膜厚200μmの硬化体を形成した。この硬化体にスポットUV照射装置(ウシオ電機(株)製「SP−V」)を使用して波長365nmの紫外線照度が5000mW/cm2の条件で紫外線を200時間照射した後、膜の外観を目視観察して下記基準で評価
した。
A:着色なし。クラックなし。
B:わずかに着色。クラックなし。
C:着色あり。クラックなし。
D:着色あり。クラック発生。
【0100】
〔耐熱性〕
得られた組成物を、アルミ皿に約2g(下四桁まで正確に秤量)採取し、100℃で1時間、次いで、200℃で1時間乾燥硬化させて硬化体を形成した。この硬化体を150℃で70時間保管し、保管前後の硬化体の重量を測定し、下記式
重量保持率(%)=保管後の硬化体重量/保管前の硬化体重量×100
により重量保持率を算出し、下記基準で評価した。
A:重量保持率が95%超。
B:重量保持率が90%以上95%未満。
C:重量保持率が70%以上90%未満。
D:重量保持率が70%未満。
【0101】
〔耐湿熱性〕
得られた組成物を、アルミ皿に約2g(下四桁まで正確に秤量)採取し、100℃で1時間、次いで、200℃で1時間乾燥硬化させて硬化体を形成した。この硬化体を温度85℃、湿度85%RHで70時間保管し、保管前後の硬化体の重量を測定し、下記式
重量保持率(%)=保管後の硬化体重量/保管前の硬化体重量×100
により重量保持率を算出し、下記基準で評価した。
A:重量保持率が95%超。
B:重量保持率が90%以上95%未満。
C:重量保持率が70%以上90%未満。
D:重量保持率が70%未満。
【0102】
〔屈折率〕
得られた組成物を、乾燥膜厚が20μmになるように石英ガラス上に塗布した後、100℃で1時間乾燥硬化させ、次いで200℃で1時間乾燥硬化させて硬化体を作製した。この硬化体について、25℃における波長400nmの光の屈折率をFILMETRICS社製の膜厚測定装置F20で測定した。
【0103】
[調製例1]
攪拌機および還流冷却器を備えた反応器に、Mw=20,000のアルコキシ末端ポリシロキサン(GE東芝シリコーン(株)製、商品名:XR31−B2733)60重量部と、Mw=4000のヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサン(GE東芝シリコーン(株)製、商品名:YF−3800)40重量部と、トルエン42重量部と、ジ−i−プロポキシ・エチルアセトアセテートアルミニウムのイソプロピルアルコール75%希釈液0.2重量部とを入れて混合し、攪拌しながら80℃で3時間脱アルコール反応を行なった。次いで、メチルイソブチルケトン288重量部、メタノール70重量部、水80重量部およびトリエチルアミン12重量部を添加して、60℃で3時間加水分解・縮合反応を行なった。その後、得られた反応液をシュウ酸で中和し、水相(下層)を除去した後に、水洗と水相除去を3回実施後、溶媒を留去してMw=30,000の多官能ポリシロキサンを得た。この多官能ポリシロキサンにメチルイソブチルケトン100重量部を添加し、固形分濃度50重量%のポリシロキサン溶液(I)を得た。
【0104】
[調製例2]
アルコキシ末端ポリシロキサン(XR31−B2733)の量を80重量部、ヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサン(YF−3800)の量を20重量部に変更した以外は調製例1と同様にして、Mw=25,000の多官能ポリシロキサンを含む、固形分濃度50重量%のポリシロキサン溶液(II)を得た。
【0105】
[調製例3]
アルコキシ末端ポリシロキサン(XR31−B2733)の量を95重量部に変更し、ヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサン(YF−3800)の代わりにMw=10,000のヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサン(GE東芝シリコーン(株)製、商品名:XF−3905)5重量部を使用した以外は調製例1と同様にして、Mw=22,000の多官能ポリシロキサンを含む、固形分濃度50重量%のポリシロキサン溶液(III)を得た。
【0106】
[調製例4]
アルコキシ末端ポリシロキサン(XR31−B2733)の量を40重量部、ヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサン(YF−3800)の量を60重量部に変更した以外は調製例1と同様にして、Mw=33,000の多官能ポリシロキサンを含む、固形分濃度50重量%のポリシロキサン溶液(IV)を得た。
【0107】
[調製例5]
攪拌機および還流冷却器を備えた反応器に、Mw=20,000のアルコキシ末端ポリシロキサン(GE東芝シリコーン(株)製、商品名:XR31−B2733)60重量部と、Mw=4000のヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサン(GE東芝シリコーン(株)製、商品名:YF−3800)40重量部と、トルエン42重量部と、ジ−i−プロポキシ・エチルアセトアセテートアルミニウムのイソプロピルアルコール75%希釈液0.2重量部とを入れて混合し、攪拌しながら80℃で3時間脱アルコール反応を行なった。得られた反応液にメチルイソブチルケトン58重量部を添加し、Mw=25,000の多官能ポリシロキサンを含む、固形分濃度50重量%のポリシロキサン溶液(V)を得た。
【0108】
[調製例6]
Mw=10,000のアルコキシ末端ポリシロキサン(XR31−B2733)の代わりにMw=1000のアルコキシ末端シロキサンオリゴマー(信越化学工業(株)製X40−9220)60重量部を使用した以外は調製例1と同様にして、Mw=5,000の多官能ポリシロキサンを含む、固形分濃度50重量%のポリシロキサン溶液(i)を得た。
【0109】
[調製例7]
アルコキシ末端ポリシロキサン(XR31−B2733)の量を20重量部、ヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサン(YF−3800)の量を80重量部に変更した以外は調製例1と同様にして、Mw=30,000の多官能ポリシロキサンを含む、固形分濃度50重量%のポリシロキサン溶液(ii)を得た。
【0110】
[実施例1]
粉体状の酸化ジルコニウム微粒子(一次平均粒径:20nm)120重量部と、ポリシロキサン成分として上記ポリシロキサン溶液(I)160重量部(固形分換算で80重量部)と、トリエチルアミン0.1重量部と、ジイソブチルケトン720重量部とを容器に入れ、この混合物に0.1mm径のジルコニアビーズ2000重量部を添加して、ペイントシェーカーを用いて6時間微粒子を分散させ、固形分濃度20重量%の発光素子コーティング用組成物(1)を得た。屈折率は1.70であった。この組成物の特性を評価した結果を表1に示す。
【0111】
[実施例2〜5]
ポリシロキサン溶液(I)の代わりに、それぞれポリシロキサン溶液(II)〜(V)160重量部(固形分換算で80重量部)を使用した以外は実施例1と同様にして固形分濃度20重量%の発光素子コーティング用組成物(2)〜(5)を調製した。これらの組成物の特性を評価した結果を表1に示す。
【0112】
[実施例6]
トリエチルアミンの代わりにメタンスルホン酸0.1重量部を使用した以外は、実施例2と同様にして固形分濃度20重量%の発光素子コーティング用組成物(6)を調製した。この組成物の特性を評価した結果を表1に示す。
【0113】
[実施例7]
酸化ジルコニウム微粒子の代わりに粉体状のルチル型酸化チタン微粒子(一次平均粒径:30nm)120重量部を使用した以外は、実施例1と同様にして固形分濃度20重量%の発光素子コーティング用組成物(8)を調製した。屈折率は1.60であった。この組成物の特性を評価した結果を表1に示す。
【0114】
[比較例1]
粉体状の酸化ジルコニウム微粒子(一次平均粒径:20nm)120重量部と、Mw=4000のヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサン(GE東芝シリコーン(株)製、商品名:YF−3800)80重量部と、トリエチルアミン0.1重量部と、メチルエチルケトン800重量部とを容器に入れ、この混合物に0.1mm径のジルコニアビーズ2000重量部を添加して、ペイントシェーカーを用いて6時間微粒子を分散させ、固形分濃度20重量%の発光素子コーティング用組成物(C1)を得た。この組成物の特性を評価した結果を表2に示す。
【0115】
[比較例2]
ポリシロキサン成分として上記ポリシロキサン溶液(I)の代わりにポリシロキサン溶液(i)160重量部(固形分換算で80重量部)を使用した以外は、実施例1と同様にして固形分濃度20重量%の発光素子コーティング用組成物(C2)を調製した。この組成物の特性を評価した結果を表2に示す。
【0116】
[比較例3]
粉体状の酸化ジルコニウム微粒子(一次平均粒径:20nm)120重量部と、ポリシロキサン成分として上記ポリシロキサン溶液(I)160重量部(固形分換算で80重量部)と、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル(楠本化成(株)製、商品名:PLADD ED151)9重量部と、アセチルアセトン5重量部と、メチルエチルケトン720重量部とを容器に入れ、この混合物に0.1mm径のジルコニアビーズ2000重量部を添加して、ペイントシェーカーを用いて6時間微粒子を分散させ、固形分濃度20重量%の発光素子コーティング用組成物(C3)を得た。この組成物の特性を評価した結果を表2に示す。
【0117】
[比較例4]
トリエチルアミンを使用しなかった以外は実施例3と同様にして固形分濃度20重量%の発光素子コーティング用組成物(C4)を調製した。この組成物の特性を評価した結果を表2に示す。
【0118】
[比較例5]
ポリシロキサン成分として上記ポリシロキサン溶液(I)の代わりにポリシロキサン溶液(ii)160重量部(固形分換算で80重量部)を使用した以外は、実施例3と同様にして固形分濃度20重量%の発光素子コーティング用組成物(C5)を調製した。この組成物の特性を評価した結果を表2に示す。
【0119】
【表1】

【0120】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】発光ダイオードの模式図である。
【図2】蛍光部を有する発光ダイオードの模式図である。
【符号の説明】
【0122】
50 発光素子
51 封止材
52 蛍光部
53 バインダー
54 蛍光体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機溶媒中、塩基性化合物、酸性化合物または金属キレート化合物の存在下で、
(A)酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化タンタル、酸化インジウム、酸化ハフニウム、酸化スズ、酸化ニオブおよびこれらの複合体からなる群から選択される少なくとも1種の金属酸化物の微粒子、および
(B1)下記平均組成式(1)
1aSiOb(OR2c (1)
(式中、R1は水素原子またはオキシアルキレン基を有しない1価の炭化水素基であり、R1が複数存在する場合には互いに同じであっても異なっていてもよく、R2はアルキル基であり、R2が複数存在する場合には互いに同じであっても異なっていてもよく、aは0を超えて2未満、bは0を超えて2未満、cは0を超えて4未満、かつa+b×2+c=4である)
で表され、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量が3,000以上100,000以下の範囲にあるアルコキシ末端の多官能ポリシロキサン(b1)と、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量が2,000以上100,000以下の範囲にあるヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサン(b2)とを、これらの合計100重量部に対して、重量比(b1/b2)が30/70〜95/5の範囲で脱アルコール反応させて得られる多官能ポリシロキサン、あるいは
(B2)下記平均組成式(1’)
1aSiOb(OH)c (1’)
(式中、R1は水素原子またはオキシアルキレン基を有しない1価の炭化水素基であり、R1が複数存在する場合には互いに同じであっても異なっていてもよく、aは0を超えて2未満、bは0を超えて2未満、cは0を超えて4未満、かつa+b×2+c=4である)
で表され、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量が3,000以上100,000以下の範囲にあるヒドロキシ末端の多官能ポリシロキサン(b3)と、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量が2,000以上100,000以下の範囲にあるアルコキシ末端ポリジメチルシロキサン(b4)とを、これらの合計100重量部に対して、重量比(b3/b4)が30/70〜95/5の範囲で脱アルコール反応させて得られる多官能ポリシロキサン
を混合して、前記金属酸化物微粒子(A)を有機溶媒中に分散させることにより得られる発光素子コーティング用組成物。
【請求項2】
前記多官能ポリシロキサン(B1)または(B2)をさらに加水分解・縮合した後、前記金属酸化物微粒子(A)と混合することを特徴とする請求項1に記載の発光素子コーティング用組成物。
【請求項3】
前記加水分解・縮合における触媒が塩基性触媒であることを特徴とする請求項2に記載の発光素子コーティング用組成物。
【請求項4】
前記脱アルコール反応における触媒が金属キレート化合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の発光素子コーティング用組成物。
【請求項5】
前記金属酸化物微粒子(A)と前記多官能ポリシロキサン(B1)または(B2)とを塩基性化合物の存在下で混合することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の発光素子コーティング用組成物。
【請求項6】
前記金属酸化物微粒子(A)と前記多官能ポリシロキサン(B1)または(B2)とをビーズミルにより混合することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の発光素子コーティング用組成物。
【請求項7】
前記金属酸化物微粒子(A)100重量部に対して、前記多官能ポリシロキサン(B1)または(B2)を完全加水分解縮合物換算で1〜1000重量部混合することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の発光素子コーティング用組成物。
【請求項8】
蛍光体を含有する請求項1〜7のいずれかに記載の発光素子コーティング用組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の発光素子コーティング用組成物から得られる硬化体。
【請求項10】
下記平均組成式(1)
1aSiOb(OR2c (1)
(式中、R1は水素原子またはオキシアルキレン基を有しない1価の炭化水素基であり、R1が複数存在する場合には互いに同じであっても異なっていてもよく、R2はアルキル基であり、R2が複数存在する場合には互いに同じであっても異なっていてもよく、aは0を超えて2未満、bは0を超えて2未満、cは0を超えて4未満、かつa+b×2+c=4である)
で表され、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量が3,000以上100,000以下の範囲にあるアルコキシ末端の多官能ポリシロキサン(b1)と、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量が2,000以上100,000以下の範囲にあるヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサン(b2)とを、これらの合計100重量部に対して、重量比(b1/b2)が30/70〜95/5の範囲で脱アルコール反応させて多官能ポリシロキサン(B1)、あるいは
下記平均組成式(1’)
1aSiOb(OH)c (1’)
(式中、R1は水素原子またはオキシアルキレン基を有しない1価の炭化水素基であり、R1が複数存在する場合には互いに同じであっても異なっていてもよく、aは0を超えて2未満、bは0を超えて2未満、cは0を超えて4未満、かつa+b×2+c=4である)
で表され、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量が3,000以上100,000以下の範囲にあるヒドロキシ末端の多官能ポリシロキサン(b3)と、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量が2,000以上100,000以下の範囲にあるアルコキシ末端ポリジメチルシロキサン(b4)とを、これらの合計100重量部に対して、重量比(b3/b4)が30/70〜95/5の範囲で脱アルコール反応させて得られる多官能ポリシロキサン(B2)
を調製した後、
該多官能ポリシロキサン(B1)または(B2)と酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化タンタル、酸化インジウム、酸化ハフニウム、酸化スズ、酸化ニオブおよびこれらの複合体からなる群から選択される少なくとも1種の金属酸化物の微粒子(A)とを、有機溶媒中、塩基性化合物、酸性化合物または金属キレート化合物の存在下で混合することを特徴とする発光素子コーティング用組成物の製造方法。
【請求項11】
前記多官能ポリシロキサン(B1)または(B2)をさらに加水分解・縮合した後、前記金属酸化物微粒子(A)と混合することを特徴とする請求項10に記載の発光素子コーティング用組成物の製造方法。
【請求項12】
前記加水分解・縮合における触媒が塩基性触媒であることを特徴とする請求項11に記載の発光素子コーティング用組成物の製造方法。
【請求項13】
前記脱アルコール反応における触媒が金属キレート化合物であることを特徴とする請求項10〜12のいずれかに記載の発光素子コーティング用組成物の製造方法。
【請求項14】
前記金属酸化物微粒子(A)と前記多官能ポリシロキサン(B1)または(B2)とを塩基性化合物の存在下で混合することを特徴とする請求項10〜13のいずれかに発光素子コーティング用組成物の製造方法。
【請求項15】
前記金属酸化物微粒子(A)と前記多官能ポリシロキサン(B1)または(B2)とをビーズミルにより混合することを特徴とする請求項10〜14のいずれかに記載の発光素子コーティング用組成物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−91380(P2009−91380A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−260231(P2007−260231)
【出願日】平成19年10月3日(2007.10.3)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】