説明

発光装置および発光装置の製造方法

【課題】反射構造を形成するための光散乱材含有樹脂と波長変換部材としての蛍光体含有樹脂とを有する発光装置において、光散乱材含有樹脂の充填量の変動に伴う発光効率の低下や色度ばらつきの発生を回避することができる発光装置およびその製造方法を提供する。
【解決手段】
発光装置は、基板と、基板の上面に設けられて基板の上面と交差する方向に突出した素子搭載凸部と、素子搭載凸部の上面に搭載された発光素子と、素子搭載凸部の上面において発光素子を被覆する蛍光体含有樹脂部と、基板の上面および素子搭載凸部の側面を覆う光散乱材含有樹脂部と、を有する。素子搭載凸部は、上面を含む上部が基板に接続される下部に対して張り出しているオーバハング部を有し、蛍光体含有樹脂部と光散乱材含有樹脂部とは、オーバハング部を介して互いに隔てられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光ダイオード等の発光素子を有する発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)等の発光素子を用いて白色光を出力する発光装置が、照明装置や液晶表示装置のバックライト等に利用されている。例えば青色光を出射する発光素子を、蛍光体を含有させた樹脂で封止することにより、発光素子から出射される青色光の一部を蛍光体によって黄色光に変換し、青色光と黄色光とを混色させることにより白色光として出力させるようにした発光装置が知られている。一方、近年におけるLEDの照明用途への展開等に伴って、表面実装型の発光装置のニーズが高まりつつある。表面実装型の発光装置では、発光効率を高めるために光反射構造が設けられている。
【0003】
特許文献1には、側壁を有するパッケージ成形体の底部にサブマウント基板に載置された発光素子を搭載し、パッケージ成形体の底部および側壁を光反射性を有するコーティング部材で被覆した半導体発光装置が記載されている。コーティング部材は、エポキシ樹脂等からなる基材に酸化チタン等の光散乱材を含有させたものであり、発光素子に非接触となるように形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−136379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1には、コーティング部材が発光素子に対して非接触であることが記載されている。しかしながら、単に発光素子をサブマウントを介してパッケージ成形体の底部に搭載する構造では、コーティング部材がサブマウントの側面および発光素子の側面に這い上がりやすい。発光素子の側面にコーティング部材が付着すると、発光素子から放射された光が再び発光素子内部に導入されて減衰し、発光効率の低下を招くため好ましくない。従って、コーティング部材の塗布量を厳重に管理する必要があり、高歩留りを確保するのが困難となる。また、特許文献1に記載の構造において、発光素子を埋設するようにパッケージ成形体の内側を蛍光体含有樹脂で封止する場合、コーティング部材の充填量のばらつきが蛍光体含有樹脂の充填量のばらつきを招来し、ひいては発光色の色度ばらつきを招来することとなる。
【0006】
本発明は、上記した点に鑑みてなされたものであり、反射構造を形成するための光散乱材含有樹脂部と波長変換部材としての蛍光体含有樹脂部とを有する発光装置において、光散乱材含有樹脂の充填量の変動に伴う発光効率の低下や色度ばらつきの発生を回避することができる発光装置およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の発光装置は、基板と、前記基板の上面に設けられて前記基板の上面と交差する方向に突出した素子搭載凸部と、前記素子搭載凸部の上面に搭載された発光素子と、前記素子搭載凸部の上面において前記発光素子を被覆する蛍光体含有樹脂部と、前記基板の上面および前記素子搭載凸部の側面を覆う光散乱材含有樹脂部と、を有し、前記素子搭載凸部は、上面を含む上部が前記基板に接続される下部に対して張り出しているオーバハング部を有し、前記蛍光体含有樹脂部と前記光散乱材含有樹脂部とは、前記オーバハング部を介して互いに隔てられていることを特徴としている。
【0008】
また、本発明の発光装置の製造方法は、基板と、前記基板の上面に設けられて前記基板の上面と交差する方向に突出した素子搭載凸部と、を有する基体を用意する工程と、前記素子搭載凸部の上面に発光素子を搭載する工程と、前記素子搭載凸部の上面において前記発光素子を蛍光体含有樹脂で被覆する工程と、前記基板の上面および前記素子搭載凸部の側面を覆うように光散乱材含有樹脂を充填する工程と、を含み、前記素子搭載凸部は、上面を含む上部が前記基板に接続される下部に対して張り出しているオーバハング部を有し、前記素子搭載凸部の側面を覆う光散乱材含有樹脂は、前記オーバハング部を介して前記素子搭載凸部の上面から隔てられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の発光装置およびその製造方法によれば、光散乱材含有樹脂の充填量にばらつきが生じた場合でも、素子搭載凸部に形成された軒構造(又は庇構造)により、蛍光体含有樹脂および発光素子を含む発光部が光散乱材含有樹脂から隔てられているので、光散乱材含有樹脂の這い上がり生じにくくなり、発光効率の低下が回避される。また、蛍光体含有樹脂は、素子搭載凸部の上面によって形成範囲が画定されるので、発光素子を覆う蛍光体含有樹脂の被覆厚は、光散乱材含有樹脂の充填量のばらつきの影響を受けず、従って色度ばらつきの発生も回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1(a)は本発明の実施例に係る発光装置の構成を示す平面図、図1(b)は図1(a)における1b−1b線に沿った断面図、図1(c)は本発明の実施例に係る素子搭載凸部の構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施例に係る発光装置の構成を示す断面図である。
【図3】本発明の実施例に係る素子搭載凸部の構成を示す断面図である。
【図4】図4(a)〜(c)は、本発明の実施例に係る発光装置の製造方法を示す断面図である。
【図5】図5(a)〜(c)は、本発明の実施例に係る発光装置の製造方法を示す断面図である。
【図6】本発明の実施例に係る素子搭載凸部の他の構成を示す断面図である。
【図7】本発明の実施例に係る素子搭載凸部の他の構成を示す斜視図である。
【図8】図8(a)は本発明の実施例に係る面状光源装置の構成を示す平面図、図8(b)は図8(a)における8b−8b線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施例について図面を参照しつつ説明する。尚、以下に示す図において、実質的に同一又は等価な構成要素、部分には同一の参照符を付している。
【0012】
図1(a)は本発明の実施例に係る発光装置1の平面図、図1(b)および図2は図1(a)における1b−1b線に沿った断面図、図1(c)は本発明の実施例に係る素子搭載凸部の構成を示す斜視図である。
【0013】
基体10は、導電性および熱伝導性が良好な例えばAl又はCu等の金属からなり、発光装置1の外形形状を画定している。基体10は、発光装置1の底面を形成する基板部11と、基板部11の上面中央から略垂直方向に突出した素子搭載凸部12と、素子搭載凸部12を囲む側壁を形成する枠部13とにより構成されている。基体10を構成するこれらの各構成部分は、プレス加工により成型されて一体的な形態を有している。尚、基体10の表面には、はんだ濡れ性等を向上させるために全体的又は部分的に適宜Niめっき等のめっき処理が施されていてもよい。
【0014】
基体10は、スリット14により互いに分離された第1の部分10aと第2の部分10bとからなり、それぞれ発光素子20のp電極およびn電極にボンディングワイヤ22を介して接続されている。素子搭載凸部12は、基体10の第1の部分10aにおいてスリット14に面する位置に設けられている。
【0015】
素子搭載凸部12の上面は、平坦であり、発光素子20を搭載するための素子搭載面を形成している。素子搭載凸部12は、素子搭載面を含む上部が基板部11に接続された下部(支柱部12b)に対して外側に張り出したオーバハング部12aとなっており、いわゆる軒構造(又は庇構造)を形成している。すなわち、素子搭載凸部12は、支柱部12bとオーバハング部12aとからなり、素子搭載面を含むオーバハング部12aが支柱部12bに対してオーバハングしており、素子搭載凸部12の全体形状は、図1(b)に示す断面において略T字型となっている。本実施例では、オーバハング部12aの側面は、その上面および下面に対し略垂直となっている。素子搭載凸部12の上面には、発光素子20がダイアタッチ剤を介して接合されている。
【0016】
素子搭載凸部12の上面(素子搭載面)の面積は、発光素子20の面積よりも大きい。例えば、発光素子20は0.3mm×0.5mmの矩形形状を有し、素子搭載凸部12の上面(素子搭載面)は0.9mm×1.2mmの矩形形状を有する。すなわち、発光素子20を素子搭載凸部12の上面の中央に配置したときに、発光素子20の各辺から素子搭載面の外縁までの距離がそれぞれ略等しくなる。
【0017】
支柱部12bは、例えば四角柱状であり、幅W1が0.6mm、高さT1が0.4mmである。オーバハング部12aの支柱部12bに対する張り出し幅W2は、例えば0.15mmである。オーバハング部12aの厚さT2は例えば0.2mmである。つまり、基板部11の上面から突出した素子搭載凸部12の全体の高さ(T1+T2)は、例えば0.6mmである。
【0018】
発光素子20は、例えばGaN系窒化物半導体からなるn型半導体層、活性層、p型半導体層とを有する青色LEDである。発光素子20は、上面にn側電極およびp側電極が形成されたいわゆるフェイスアップ型の発光素子である。
【0019】
蛍光体含有樹脂部30は、素子搭載凸部12の上面に亘って延在し、発光素子20を埋設しつつ素子搭載凸部12の上面を覆っている。蛍光体含有樹脂部30は、シリコーン樹脂等の光透過性樹脂を主成分とし、これにYAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット:YAl12)に付活剤としてCe(セリウム)を導入したYAG:Ce蛍光体を分散した蛍光体含有樹脂を用いて形成される。YAG:Ce蛍光体は、発光素子20から放射されるピーク波長が例えば約460nmの青色光を吸収してこれを例えば波長560nm前後に発光ピークを持つ黄色光に変換する。発光装置1の光放射面からは、蛍光体により波長変換された黄色光と、波長変換されずに蛍光体含有樹脂部30を透過した青色光が混ざることにより白色光が得られるようになっている。
【0020】
蛍光体含有樹脂部30は、所定重量の液状の蛍光体含有樹脂を発光素子20の上方から滴下した後、熱硬化することにより形成される。蛍光体含有樹脂部30の形成範囲および形状は、蛍光体含有樹脂が熱硬化前の液体の状態にあるときに、表面張力によってセルフアライン的に定まる。すなわち、液状の蛍光体含有樹脂は、素子搭載凸部12の上面の外縁まで濡れ拡がる。従って、蛍光体含有樹脂部30の底面の形状は、素子搭載凸部12の上面形状に応じた形状すなわち本実施例においては矩形形状となる。一方、蛍光体含有樹脂部30の上面は、半球ドーム状の曲面となる。発光素子20の各辺から素子搭載凸部12の上面の外縁までの距離がそれぞれ等しくなるように発光素子20を素子搭載凸部12の上面中央に配置することにより、発光素子20の側面を覆う蛍光体含有樹脂部30の被覆厚は発光素子20の各辺においてそれぞれ均一となる。発光素子20の上面を覆う蛍光体含有樹脂部30の被覆厚を、側面における被覆厚と一致させることにより、色むらのない発光色を得ることが可能となる。
【0021】
枠部13は、基板部11の外縁に沿って設けられ、基板部11の上面に対して略垂直方向に伸長する側壁を有し、素子搭載凸部12を囲むように円形状に連なる壁面を形成する。すなわち、枠部13は円形のキャビティを形成している。素子搭載凸部12は枠部13により形成される円形のキャビティ内の中央に配置される。枠部13により形成される側壁は、発光素子20およびボンディングワイヤ22のループトップよりも高い位置まで伸長している。
【0022】
光散乱材含有樹脂部40は、シリコーン樹脂等の樹脂材に二酸化チタン(TiO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化アルミニウム(Al)等の光散乱材を分散させた白色の光散乱含有樹脂を用いて形成される。光散乱材含有樹脂部40は、枠部13によって形成される側壁の内側を充填するように形成される。光散乱材含有樹脂部40は、枠部13の側壁、基板部11の上面および素子搭載凸部12の側面を覆う。素子搭載凸部12が軒構造(又は庇構造)を有することにより、光散乱材含有樹脂の這い上がりはオーバハング部12aの下面で堰き止められる。すなわち、発光素子20および蛍光体含有樹脂部30を含む発光部と光散乱材含有樹脂部40とは、オーバハング部12aを間に挟んで互いに離間しており、発光部と光散乱材含有樹脂部40とは非接触となっている。素子搭載凸部12が軒構造(又は庇構造)を有することにより、光散乱材含有樹脂の充填量が多少変動した場合でも、発光部と光散乱材含有樹脂部40の非接触状態は維持される。また、蛍光体含有樹脂部30は、光散乱材含有樹脂部40から隔てられた素子搭載凸部12の上面に形成されるので、光散乱材含有樹脂の充填量の変動によって発光素子20を覆う蛍光体含有樹脂部30の被覆厚が変動することはなく、発光色の色度ばらつきを防止することができる。
【0023】
光散乱材含有樹脂部40は、枠部13の上端から素子搭載凸部12に至る表面が下方(基板部11)に向けて凹んだ曲面を形成している。すなわち、光散乱材含有樹脂部40は、すり鉢形状の光反射面を形成している。発光素子20は、このすり鉢形状の光反射面の底部に配置される。かかる構成により、投光方向前方に向かう光の量を増大させることができ発光効率の向上を図ることができる。光散乱材含有樹脂は、基体10を分割するスリット14内にも充填され、分割された基体10の第1の部分10aと第2の部分10bとは、電気的絶縁状態を維持したまま結合される。
【0024】
封止樹脂部50は、シリコーン樹脂等の光透過性樹脂からなり、枠部13によって形成される側壁の内側を充填するように形成される。封止樹脂部50は、蛍光体含有樹脂部30で覆われた発光素子20および光散乱材含有樹脂部40の表面を覆い、発光素子20およびボンディングワイヤ22を封止する。封止樹脂部50は、上面が平坦であり且つ枠部13の上面と同一面内に延在するように形成される。封止樹脂部50の上面と素子搭載凸部12の上面(素子搭載面)との間の距離T3は例えば0.4mmである。
【0025】
図3は、発光素子20から発せられる熱の放熱性を考慮した素子搭載凸部12の構成を示す断面図である。図3において、発光素子20から発せられる熱の拡散範囲を破線で示す。発光素子20から発せられた熱は、基体10に向けて概ね斜め45°の拡がりを持って拡散する。基体10が光散乱材含有樹脂よりも熱伝導率の高い材料により構成されている場合には、図3に示すように、放熱経路上に光散乱材含有部40が存在しなくなるように素子搭載凸部12の支柱部12aの幅W1を設定する。これにより、パッケージの放熱性を向上させることが可能となる。この場合、素子搭載面の拡大に伴って光散乱材含有樹脂部40の面積が減少することによる光束の低下を考慮する必要がある。
【0026】
尚、上記の実施例では、基体10を構成する基板部11、素子搭載凸部12および枠部13は、一体的な形態を有するものとしたが、これらの各構成部分が別体として形成され、これらを組み合わせることで基体10を構成することとしてもよい。また、基体10は、金属の他、アルミナセラミックス、ガラスエポキシ樹脂等の絶縁体により構成されていてもよく、また、各構成部分が互いに異なる材料により構成されていてもよい。基体10が絶縁体により構成される場合には、基板部11には、適宜導体配線が形成される。また、上記の実施例では、発光素子20の上面にp電極およびn電極を有する発光素子を搭載する場合を例に説明したが、発光素子の下面に一方の電極が形成されるタイプの発光素子を搭載する場合にも適用可能である。
【0027】
上記した構成を有する発光装置1の製造方法について以下に説明する。図4(a)〜(c)および図5(a)〜(c)は、発光装置1の製造工程におけるプロセスステップ毎の断面図(上段)および上面図(下段)である。
【0028】
(基体の作製)
発光装置1の外形形状を画定する基体10を作製する。厚さ1.2〜2mm程度の純Al板材又はCu板材を用意する。板材には、適宜Niめっき等のめっき処理が施される。次に、基板部11、素子搭載凸部12、枠部13およびスリット14をプレス加工により成型する。その後、エッチングにより素子搭載凸部12においてオーバハング部12aおよび支柱部12bを形成する。基体10の第1の部分10aおよび第2の部分10bは、分離しないようにタイバー60により結合されている(図4(a))。
【0029】
(発光素子の搭載)
ディスペンス法または印刷法などにより素子搭載凸部12の上面(素子搭載面)に例えばシリコーン樹脂系のダイアタッチ材を適量塗布する。酸化チタン、アルミナ、ZnO等の光散乱材を含有した白色のダイアタッチ材又は銀フィラー等を含有した熱伝導性の高いダイアタッチ材が好適である。次に、発光素子20を素子搭載凸部12の上面にマウントし、ダイアタッチ材を熱硬化する。尚、発光素子20の裏面に金めっきを施すことにより共晶接合することも可能である。次に、発光素子20の上面のp電極およびn電極と基体10の第1の部分10aと第2の部分10bとをボンディングワイヤ22で接続する(図4(b))。
【0030】
(光散乱材含有樹脂部の形成)
枠部13により形成される側壁の内側の空間、すなわち、枠部13によって形成される円形キャビティ内に所定量の光散乱材含有樹脂を充填する。光散乱材含有樹脂は、例えば、シリコーン樹脂等の樹脂材に二酸化チタン(TiO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化アルミニウム(Al)等の光散乱材を分散させた白色の樹脂である。光散乱材含有樹脂は、枠部13の側壁、基板部11の上面および素子搭載凸部12の側面を被覆するように充填される。光散乱材含有樹脂は表面張力により素子搭載凸部12の支柱部12bの側面を這い上がるが、外側に張り出したオーバハング部12aによって這い上がりが堰き止められる。従って、光散乱材含有樹脂の充填量が多少変動した場合でも、光散乱材含有樹脂の這い上がりは、オーバハング部12aの下面で遮断され、素子搭載凸部12の上面まで達しない。
【0031】
光散乱材含有樹脂は、基体10を分割するスリット14内にも充填される。スリット14からの樹脂漏れ防止のために、基体10の底面にスリット14の開口面を塞ぐテフロン治具70を当接した状態で光散乱材含有樹脂が充填される。その後、熱処理により光散乱材含有樹脂を硬化させ、光散乱材含有樹脂部40を形成する。
【0032】
光散乱材含有樹脂部40は、枠部13の上端から素子搭載部12に至る上面が下方(基板部11)に向けて凹んだすり鉢状の光反射面を形成する。発光素子20は、すり鉢状の光反射面の底部に配置される。光散乱材含有樹脂部40は、上端が発光素子20およびボンディングワイヤ22のループトップよりも上方に位置するように形成される(図4(c))。
【0033】
(蛍光体含有樹脂部の形成)
液状のシリコーン樹脂にYAG:Ce蛍光体を分散させた蛍光体含有樹脂を例えばディスペンス法により発光素子20の表面に滴下する。蛍光体含有樹脂は、発光素子20の表面を覆い、素子搭載凸部12の上面の外縁にまで濡れ拡がる。蛍光体含有樹脂が、素子搭載凸部12上面の外縁の超えて濡れ拡がらないように作用する表面張力が生じる為、樹脂の滴下のみによって蛍光体含有樹脂部30の形成範囲および形状が定まる。蛍光体含有樹脂は、素子搭載凸部12上面によって画定される形成範囲を維持したまま表面張力によって半球ドーム形状を呈する。その後、蛍光体含有樹脂を熱硬化することにより蛍光体含有樹脂部30を形成する。このように、素子搭載凸部12を設けることにより発光素子20の周囲に段差を設け、表面張力を利用することにより、蛍光体含有樹脂部30の形成範囲および形状をセルフアライン的に定めることができる。従って、個々の装置間における色度ばらつき等を低減することが可能となる。
【0034】
尚、蛍光体含有樹脂部30の形状を安定化させるためには、オーバハング部12aの上面と側面とが交差する角部が丸みを帯びていないことが望ましい。また、本実施例においては、光散乱材含有樹脂部40を形成した後に蛍光体含有樹脂部30を形成しているが、いずれを先に形成しても構わない。
【0035】
素子搭載面は、オーバハング部12aを介して一定のクリアランスを保持しつつ光散乱材含有樹脂部40から隔てられているので、光散乱材含有樹脂部40と非接触となるように蛍光体含有樹脂部30を形成することが容易となる。尚、蛍光体含有樹脂部30をスクリーン印刷法により形成することも可能である。この場合においても蛍光体含有樹脂部30の形状および形成範囲を安定化させることができる。ただし、スクリーン印刷法においては印刷用マスクを使用する都合上、光散乱材含有樹脂部40を形成する前に蛍光体含有樹脂の印刷を実施する必要がある(図5(a))。
【0036】
(封止樹脂部の形成)
枠部13によって形成される側壁の内側の空間、すなわち、枠部13によって形成される円形キャビティ内に所定量のシリコーン樹脂等の光透過性樹脂をディスペンス法などにより充填し、これを熱硬化することにより封止樹脂部50を形成する。封止樹脂部50は、蛍光体含有樹脂部30で覆われた発光素子20および光散乱材含有樹脂部40の表面を覆い、発光素子20およびボンディングワイヤ22を封止する。封止樹脂部50は、上面が枠部13の上面と同一面内に延在するように形成される(図5(b))。封止樹脂部50の上面から素子搭載面までの距離は、0.4mm以上であることが好ましい。発光素子20の上部を覆う封止樹脂部50の被覆厚が薄くなると、ボンディングワイヤ22や蛍光体含有樹脂部30が封止樹脂部50の上面から露出してしまう場合がある。これを防止するために、蛍光体含有樹脂部30の高さを制限すると、所望の色味を得るために蛍光体の含有率を増加させる必要性が生じる。しかしながら、蛍光体の含有率を増加させると、蛍光体含有樹脂部30の厚さばらつきに対する色度ばらつきが顕著となり、また、蛍光体含有樹脂の粘度が高くなるため蛍光体含有樹脂部30の成形が困難となる。従って、封止樹脂部50の厚さは、発光素子20の厚さ等を考慮して適宜設定することが好ましい。
【0037】
(パッケージ分離工程)
ダイシングによりタイバー60を基本10から切り離し、発光装置1を個片化する。基体10にタイバー60の分割ラインに沿って予めダイシング溝を形成しておくことが望ましい。これにより、作業時間を短縮することができるとともにダイシング時の飛沫による樹脂へのダメージを低減することができる。以上の各工程を経ることにより、発光装置1が完成する(図5(c))。発光装置1は、裏面が実装面となっており、はんだ付け等によりプリント基板等に実装される。
【0038】
上記した実施例においては、図1(b)に示すように、オーバハング部12aおよび支柱部12bからなる素子搭載凸部12の断面形状を略T字型としたが、これに限定されるものではない。図6(a)〜(d)に素子搭載凸部12における軒構造(又は庇構造)のバリエーションを示す。図6(a)〜(d)は、素子搭載凸部12の他の構成を示したものであり、図1(b)に示す断面と同一の断面を示している。図6(a)〜(d)において、オーバハング部12aの上面と側面とのなす角をA、オーバハング部12aの側面と下面とのなす角をB、オーバハング部12aの下面と支柱部12bの側面とのなす角をCと表示している。
【0039】
オーバハング部12aの上面と側面とのなす角Aは、60°以上100°以下であることが好ましい。角Aを90°以上とすることは、プレス加工においてプレスが抜き易く製造が容易となる点で好ましい。一方、角Aを100°以上とすると蛍光体含有樹脂の表面張力が低下して、半球ドーム形状を維持することが困難となる。また、角Aを90°以下とすることは、蛍光体含有樹脂の形状維持に有効となる。一方、角Aを60°以下とするとオーバハング部12aを形成するたのエッチングに時間を要し、また、強度が低下する。
【0040】
オーバハング12aの側面と下面とのなす角Bは、60°以上150°以下であることが好ましい。角Bの大きさが小さい程、光散乱材含有樹脂の這い上がりを抑制する効果が高いものと考えられる。角Bを150°以下とすることで光散乱材含有樹脂の這い上がり抑制効果を十分に発揮させることが可能となる。一方、角Bを60°以下とするとオーバハング部12aを形成するたのエッチングに時間を要し、また、強度が低下する。
【0041】
オーバハング部12aの下面と支柱部12bの側面とのなす角Cの好ましい範囲は、上記した角Aと角Bの好ましい範囲から導かれる。すなわち、角Aが上記した好ましい範囲の最大値(100°)をとり且つ角Bが上記した好ましい範囲の最大値(150°)をとる場合、角Cは160°となり、この角度が角Cの最大値となる。一方、角Aが上記した好ましい範囲の最小値(60°)をとり且つ角Bが上記した好ましい範囲の最小値(60°)をとる場合、角Cは30°となり、この角度が角Cの最小値となる。
【0042】
図1および図6(c)に示すように、角Bおよび角Cが共に90°以下となる構造とすることにより、オーバハング部12aの下面と支柱部12bの側面との間の空間に光散乱材含有樹脂が充填されやすくなるため、光散乱材含有樹脂の這い上がりを抑制する効果が高くなる。一方、図1、図6(b)および図6(d)に示すように、角Aおよび角Cが90°以上となる構造とすることにより、オーバハング部12aの加工が容易となる。
【0043】
また、図7に示すように、オーバハング部12aおよび支柱部12bの形状を円柱形状としてもよい。すなわち、素子搭載凸部12の上面形状は円形となり、オーバハング部12aの側面は曲面となる。かかる構成とすることにより、光散乱材含有脂の這い上がり抑制効果をさらに向上させる効果が期待できる。
【0044】
上記したいずれの構成もオーバハング部12aの下面が光散乱材含有樹脂の這い上がりを堰き止める軒構造(又は庇構造)を有し、製造工程において蛍光体含有樹脂部30と光散乱材含有樹脂部40との非接触状態を維持することが容易となる。
【0045】
本発明の実施例に係る発光装置1を面状光源装置に応用した場合の構成例を図8(a)および(b)に示す。図8(a)は、本発明の実施例に係る面状光源装置2の構成を示す平面図、図8(b)は図8(a)における8b−8b線に沿った断面図である。
【0046】
面状光源装置2は、発光装置1を行方向および列方向に配列することにより構成される。複数の発光素子20を搭載するために、基板部11の表面に複数の素子搭載凸部12が例えば等間隔で形成されている。枠部13は、複数の円形キャビティを形成し、素子搭載凸部12は、それぞれ円形キャビティの中央に配置される。基体10を構成する基板部11、複数の素子搭載凸部12および複数の円形キャビティを形成する枠部13は、一体的な形態を有するものであってもよく、またこれらの各構成部分が別体として形成され、これらを組み合わせることで基体を構成することとしてもよい。
【0047】
面状光源2は、素子搭載凸部20の各々の上面に発光素子20を搭載し、各キャビティ内に光散乱材含有樹脂を充填し、素子搭載凸部12の上面において発光素子20を埋設するように蛍光体含有樹脂を塗布し、これらの樹脂を硬化させることにより光散乱材含有樹脂部40および蛍光体含有樹脂部30を形成した後、封止樹脂部50によって発光素子20およびボンディングワイヤ22を封止することにより製造される。尚、図8(a)において破線で示す領域を切り取って線状光源装置を製造することも可能である。
【0048】
以上の説明から明らかなように、本発明の実施例に係る発光装置およびその製造方法によれば、素子搭載凸部12は、支柱部12bに対してオーバハング部12aが外側に張り出した軒構造(又は庇構造)を有するので、蛍光体含有樹脂部30を形成した後に光散乱材含有樹を充填する場合にあっては、光散乱材含有樹脂の充填量が多少変動した場合であっても、オーバハング部12aの下面において樹脂の這い上がりを堰き止めることができる。従って、発光素子20および蛍光体含有樹脂部30を含む発光部と光散乱材含有樹脂部40との非接触状態が維持される。これにより、発光部への光散乱材含有樹脂の付着に伴う光束の低下を防止することができる。一方、光散乱材含有樹脂部40を形成した後に蛍光体含有樹脂部30を形成する場合にあっては、軒構造(又は庇構造)によって素子搭載面と光散乱材含有樹脂部40とのクリアランスが確保されているので、表面張力を利用した蛍光体含有樹脂部30の成形を安定的に行うことが可能となる。また、蛍光体含有樹脂部30は、光散乱材含有樹脂部40から隔てられた素子搭載凸部12の上面に形成されるので、光散乱材含有樹脂の充填量の変動によって発光素子20を覆う蛍光体含有樹脂部30の被覆厚が変動することはなく、発光色の色度ばらつきを防止することができる。
【0049】
素子搭載凸部が上記実施例の如き軒構造(又は庇構造)を有していない発光装置においては、以下のような問題が生じることが考えられる。すなわち、蛍光体含有樹脂部30を形成した後に光散乱材含有樹材を充填する場合にあっては、充填量が僅かでも増加すると光散乱材含有樹脂が素子搭載凸部12の上面の高さまで這い上がり、蛍光体含有樹脂部30と光散乱材含有樹脂部40とが接触し、その結果、光束が低下する。一方、光散乱材含有樹脂部40を形成した後に蛍光体含有樹脂部30を形成する場合にあっては、素子搭載面と光散乱材含有樹脂部40とのクリアランスの制御が困難となり、素子搭載面と光散乱材含有樹脂部40の表面とが連続面を形成しやすくなる。この場合、表面張力を利用した蛍光体含有樹脂部30の成形が困難となる。すなわち、液状の蛍光体含有樹脂は素子搭凸部12の上面の外縁を超えて光散乱材含有樹脂部40の表面まで濡れ拡がりやすくなり、蛍光体含有樹脂部30を所望の形状とすることができず、色むらの原因となる。上記の問題は、樹脂量の管理によって解決することは困難である。本発明の実施例に係る発光装置およびその製造方法によれば、蛍光体含有樹脂部30および光散乱材含有樹脂部40のいずれを先に形成する場合であっても、上記の問題を解消することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の上面に設けられて前記基板の上面と交差する方向に突出した素子搭載凸部と、
前記素子搭載凸部の上面に搭載された発光素子と、
前記素子搭載凸部の上面において前記発光素子を被覆する蛍光体含有樹脂部と、
前記基板の上面および前記素子搭載凸部の側面を覆う光散乱材含有樹脂部と、を有し、
前記素子搭載凸部は、上面を含む上部が前記基板に接続される下部に対して張り出しているオーバハング部を有し、
前記蛍光体含有樹脂部と前記光散乱材含有樹脂部とは、前記オーバハング部を介して互いに隔てられていることを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記蛍光体含有樹脂部は、前記素子搭載凸部の上面の外縁まで延在していることを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記素子搭載凸部を囲む側壁を形成する枠部を更に有し、
前記光散乱材含有樹脂部は、前記側壁と前記素子搭載凸部との間に充填されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記光散乱材含有樹脂部は、前記枠部の上端から前記素子搭載凸部に至る表面が前記基板側に向けて凹んだ曲面であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1つに記載の発光装置。
【請求項5】
基板と、前記基板の上面に設けられて前記基板の上面と交差する方向に突出した素子搭載凸部と、を有する基体を用意する工程と、
前記素子搭載凸部の上面に発光素子を搭載する工程と、
前記素子搭載凸部の上面において前記発光素子を蛍光体含有樹脂で被覆する工程と、
前記基板の上面および前記素子搭載凸部の側面を覆うように光散乱材含有樹脂を充填する工程と、を含み、
前記素子搭載凸部は、上面を含む上部が前記基板に接続される下部に対して張り出しているオーバハング部を有し、
前記素子搭載凸部の側面を覆う光散乱材含有樹脂は、前記オーバハング部を介して前記素子搭載凸部の上面から隔てられていることを特徴とする発光装置の製造方法。
【請求項6】
前記蛍光体含有樹脂で被覆する工程は、前記発光素子を埋設し且つ前記素子搭載凸部の外縁まで濡れ拡がるように液状の蛍光体含有樹脂を塗布する工程を含むことを特徴とする請求項5に記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−94689(P2012−94689A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−240835(P2010−240835)
【出願日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】