説明

発振検出回路

【課題】低電力化を可能とし、リーク電流による誤動作の発生を無くした発振検出回路を提供する。
【解決手段】発振検出回路は、基準電圧源に接続された第1の入力端子と発振回路出力端に接続された第2の入力端子とを有しており、複数のバイポーラトランジスタにより構成される差動回路を採用し、差動回路の出力端に接続され出力端の電位に応じて充電または放電を行う容量素子と、容量素子の電位に基づいて発振信号端の所望の発振状態を検出する検出回路を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発振回路における発振出力の振幅が所望以上になったことを検出するための発振検出回路に関する。
【背景技術】
【0002】
CMOSインバータ等からなる反転増幅回路の入出力間に圧電振動子を接続して用いる発振回路において、この発振回路の発振状態を検出するものとして、特許文献1に開示された発振検出回路が知られている。そして、当該特許文献1に記載された発振検出回路は、基準電圧を入力とする第1の入力端子と発振出力を入力とする第2の入力端子とを有するCMOS回路で構成された差動増幅器と、差動増幅器に流れる電流を制限する電流制限手段と、差動増幅器の出力に応じて容量素子の充電または放電を制御する制御回路とを有し、容量素子の電位に基づいて発振出力の所望の状態を検出するものである。
【0003】
しかし、特許文献1に記載された発振検出回路は、全てCMOS回路により構成されているため、高い周波数の発振出力が要求される発振回路においては最良の構成とは言いがたい。すなわち、今まで水晶発振用のICは、チップサイズの小型化及び低消費電流の要求よりCMOS回路で開発されてきたが、発振周波数が高くなるにつれて、圧電振動子として用いられる水晶に流せる電力(水晶電力)が制限されるようになってきた。そして、その対策としてCMOSではRd(出力抵抗)内蔵発振回路(出願人により特許取得済み、特許文献2)等の改良が試みられました。そして、今後の発振回路おける更なる低電力の要求に答える為、バイポーラトランジスタを用いた回路の採用が必要となっている。バイポーラ発振回路はその構造上、電力が流れ難いという特徴を持っている。
【0004】
また、バイポーラトランジスタを用いた発振検出回路として、先に出願人が開発した回路があり、その構成を図3に示す。発振検出回路は、一端が発振回路1の出力端に接続され他端がNPNバイポーラトランジスタ6のベースに接続された容量素子2と、該NPNバイポーラトランジスタ6のベースを所望の電位にバイアスするための電源−接地間に直列に接続された抵抗3及び抵抗4と、所望の電位にバイアスされたNPNバイポーラトランジスタ6のコレクタに接続された充放電用の容量素子7と、容量素子7の電位に基づいて発振出力の所望の状態を検出するCMOSインバータ8とから構成される。
【0005】
このような回路構成によると、理想的な動作では、発振開始時に発振出力の振幅(電圧値)が、設定された所望の値以下の場合には、容量素子2の他端の電位により制御されるベース電位はNPNバイポーラトランジスタ6のコレクタ電流を流すまでには至らない。その後、該振幅が所望の値以上になった場合には、NPNバイポーラトランジスタ6のコレクタ電流は流れ、それによって容量素子7は放電され、CMOSインバータ8の出力は反転し発振を検出した信号(Vout)を出力する。
【0006】
【特許文献1】特許第3564976号公報
【特許文献2】特許第2535802号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、バイポーラトランジスタを使ったとしても図3に示すような回路では、次のような課題が存在する。すなわち、NPNバイポーラトランジスタ6自身のリーク電流が原因で発振検出回路全体として誤動作が生じる場合がある。
【0008】
詳細には、NPNバイポーラトランジスタ6自身にリーク電流が無ければ、発振出力の振幅が所望の値以下の場合には、NPNバイポーラトランジスタ6はオフし、容量素子7は抵抗5の電圧降下分で決まる特定の電位が保持される。これに反して、リーク電流が有った場合には、NPNバイポーラトランジスタ6を経由して容量素子7は徐々に放電され、その電位は意図せずに低下していく。そして、この容量素子7の電位低下が原因で、発振出力の振幅が所望の値以上にならないうちに、CMOSインバータ8の出力が反転し、発振を検出した信号を出力するということが生じてしまう。
【0009】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたもので、発振出力の振幅が所望以上の大きさになったことを検出するための発振検出回路において、更なる低電力の要求に答える為にバイポーラトランジスタを用いることを可能とし、そして、リーク電流による誤動作の発生を無くした発振検出回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の発振検出回路は、一端が発振回路の発振信号端に接続された第1の容量素子と、複数のバイポーラトランジスタによって構成され、基準電圧源に接続された第1の入力端子と上記第1の容量素子の他端に接続された第2の入力端子とを有し、両端子間の電位の比較結果に基づく電圧を出力する差動回路と、上記差動回路の出力端に接続され上記出力端の電位に応じて充電または放電を行う第2の容量素子と、上記第2の容量素子の電位に基づいて、上記発振信号端の所望の発振状態を検出する検出回路を備えたことを特徴とする。
【0011】
また、上記差動回路における上記第2の入力端子は、上記発振回路からの発振信号が無いとき及び発振初期状態では、上記第1の入力端子に入力される基準電圧よりも低い電圧にバイアスされ、上記差動回路の出力電位は高レベルであることを特徴とする。
【0012】
また、上記差動回路における上記第2の入力端子は、上記発振回路からの発振信号が無いとき及び発振初期状態では、上記第1の入力端子に入力される基準電圧よりも高い電圧にバイアスされ、上記差動回路の出力電位は低レベルであることを特徴とする。
【0013】
また、上記差動回路は、上記第1及び第2の端子間の電位の比較結果に基づく出力電位を生成する差動部と、電源間に直列接続されたバイポーラトランジスタと抵抗素子とを含み上記差動部出力の反転電位を生成する反転部とを有することを特徴とする。
【0014】
また、上記検出回路は、シュミット回路から構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の発振検出回路によれば、発振開始時の小振幅時における第2の容量素子の電位変化を抑制することができる。これにより、発振信号端が所望の状態に達しないタイミングでの誤った検出を防ぐことが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態に係わる発振検出回路の回路図であり、図2は、図1に示した発振検出回路の各ノードにおける電圧の変化を示す波形図である。また、図3は、第1図中に示した発振回路の構成を示す回路図である。
【0017】
発振検出回路は、発振回路11の発振出力(Vosc)が入力され、この入力と基準電圧を比較し、その結果に基づく電圧を出力する差動回路と、差動回路の出力に応じて充電または放電を行う容量素子20と、容量素子20の電位変化に基づいて所望の発振状態を検出し、その結果をVoutとして出力する検出回路21より構成されている。
【0018】
具体的には、差動回路は、高電位側電源Vdd及び低電位側電源Vssの電源間の電流路内で直列接続されたPNPバイポーラトランジスタ15及びNPNバイポーラトランジスタ17と、同じく電源間の電流路内で直列接続されたPNPバイポーラトランジスタ16及びNPNバイポーラトランジスタ18とを有し、NPNバイポーラトランジスタ17及びNPNバイポーラトランジスタ18の両エミッタは共通接続されて定電流源19に接続される。また、PNPバイポーラトランジスタ15及びPNPバイポーラトランジスタ16の両ベースは共通接続されるとともに、該共通接続点は、PNPバイポーラトランジスタ15のコレクタに接続される。
【0019】
そして、NPNバイポーラトランジスタ17のベースには、電源間に直列接続された抵抗素子13及び14によって生成される基準電圧(Vref)が入力され、NPNバイポーラトランジスタ18のベースには、発振回路11の発振出力電圧(Vosc)が入力される。また、発振回路からの発振信号が無いときは、抵抗素子23及び抵抗素子24の分圧比により、基準電圧(Vref)よりも低い電圧にNPNバイポーラトランジスタ18のベースはバイアスされている。これにより、トランジスタ17、18のべースに印加される両入力電圧による差動が構成される。
【0020】
差動回路の出力は、NPNバイポーラトランジスタ18のコレクタ側から取り出され、その出力電圧に応じて容量素子20は充電または放電が行われ、容量素子20の電位変化(放電の結果)に基づいて検出回路21は、所望の発振状態を検出する。検出回路21は、例えばCMOSインバータから構成される。
【0021】
次に、第1図中に示した発振回路の構成の図3の回路図を用いて説明する。同図に示す構成は典型的なコルピッツ型発振回路の一例であり、その使用形態により種々の変更が加えられる。発振回路は、コレクタが負荷抵抗106を介して高電位側電源(Vdd)に接続され、エミッタが抵抗素子107を介して低電位側電源(Vss)に接続された発振用バイポーラトランジスタ103と、そのベースと低電位側電源(Vss)との間に接続された水晶振動子100と、発振用バイポーラトランジスタ103のベースにバイアスを与えるための直列接続された抵抗素子104及び105を有している。また、水晶振動子100の両端の信号を直列接続された容量素子101及び102で分圧しており、その接続点とバイポーラトランジスタ103のエミッタとが接続される。
【0022】
そして、発振用バイポーラトランジスタ103のコレクタ側から出力される発振信号は、容量素子108を介して、発振出力(Vosc)として次段の回路(図1に示した発振検出回路)へ提供される。この発振回路においては、容量素子108を介して発振出力取り出しているが、発振出力のバイアスが安定していれば、この容量素子108無くてもよい。
【0023】
次に、図2を参照し上述の第1の実施の形態に係わる発振検出回路の動作を説明する。図2は、各ノードの電圧の変化を示す波形図であり、図(a)はノードa、図(b)はノードb、図(c)はノードcの状態をそれぞれ示している。
【0024】
発振回路11において発振が開始すると、ノードa(=Vout)の発振波形の振幅(電圧レベル)は徐々に大きくなり、所定時間の経過により、その振幅が、基準電圧にて設定されるしきい値(Vref)を超えると、NPNバイポーラトランジスタ18がオンし、ノードbの電位を下降させる。(図(b)参照)すなわち、一端が電源に接続されていることで充電状態であった容量素子20の電位を、NPNバイポーラトランジスタ18にコレクタ電流を流すことにより放電させる。
【0025】
そして、容量素子20の保持電位が、検出回路21(CMOSインバータ)の反転しきい値のレベル(Vth-inv)に達すると、接地レベル(Vss)であった検出回路の出力(Vout)を、電源電圧レベル(Vdd)に変化させる。(図(c)参照)これにより、発振状態の検出となる。
【0026】
このように、バイポーラトランジスタによる差動回路を用いた発振検出回路を採用したことにより、低電力化した回路構成においてもリーク電流の発生を抑制することができ、発振信号端が所望の状態に達しないタイミングでの誤った検出を防ぐことが可能になる。
【0027】
以下、本発明の第2の実施の形態にについて図面を参照して説明する。図4は、本発明の第2の実施の形態に係わる発振検出回路の回路図であり、図5は、図4に示した発振検出回路の各ノードにおける電圧の変化を示す波形図である。尚、図4の回路図において付した参照番号は、前述の第1の実施の形態の構成要件と対応した構成要件については同じ参照番号を付している。
【0028】
発振検出回路は、発振回路11の発振出力(Vosc)が入力され、この入力と基準電圧(Vref)を比較し、その結果に基づく電圧を出力する差動回路と、差動回路の出力に応じて充電または放電を行う容量素子20と、容量素子20の電位変化に基づいて所望の発振状態を検出し、その結果をVoutとして出力する検出回路21より構成されている。
【0029】
差動回路は、差動部と反転部とから構成される。差動部は、高電位側電源Vdd及び低電位側電源Vssの電源間の電流路内で直列接続されたPNPバイポーラトランジスタ15及びNPNバイポーラトランジスタ17と、同じく電源間の電流路内で直列接続されたPNPバイポーラトランジスタ16及びNPNバイポーラトランジスタ18とを有し、NPNバイポーラトランジスタ17及びNPNバイポーラトランジスタ18の両エミッタは共通接続されて定電流源19に接続される。また、PNPバイポーラトランジスタ15及びPNPバイポーラトランジスタ16の両ベースは共通接続されるとともに、該共通接続点は、PNPバイポーラトランジスタ15のコレクタに接続される。
【0030】
そして、NPNバイポーラトランジスタ17のベースには、電源間に直列接続された抵抗素子13及び14によって生成される基準電圧(Vref)が入力され、NPNバイポーラトランジスタ18のベースには、発振回路11の発振出力電圧(Vosc)が入力される。また、発振回路からの発振信号が無いときは、抵抗素子23及び抵抗素子24の分圧比により、基準電圧よりも低い電圧にNPNバイポーラトランジスタ18のベースはバイアスされている。これにより、トランジスタ17、18のべースに印加される両入力電圧による差動が構成され、差動部の出力は、NPNバイポーラトランジスタ18のコレクタ側から取り出される。
【0031】
反転部は、高電位側電源Vdd及び低電位側電源Vssの電源間の電流路内で直列接続されたPNPバイポーラトランジスタ25と抵抗素子26とから構成される。そして、PNPバイポーラトランジスタ25のベースに差動部の出力(NPNバイポーラトランジスタ18のコレクタ)が接続され、そのコレクタの電位が、後段の容量素子20は充放電を制御する出力となっている。
【0032】
容量素子20は、PNPバイポーラトランジスタ25のコレクタ電位に応じて充電または放電が行なわれ、容量素子20の電位変化(充電の結果)に基づいて検出回路21は、所望の発振状態を検出する。検出回路21は、例えばCMOSインバータから構成される。
【0033】
同図中ブロックで示した発振回路11は、第1の実施の形態と同様に図3の構成と同じであり、ここでは説明を省略する。
【0034】
次に、図5を参照し第2の実施の形態に係わる発振検出回路の動作を説明する。図5は、各ノードの電圧の変化を示す波形図であり、図(a)はノードa、図(b)はノードb、図(c)はノードc、図(d)はノードdの状態をそれぞれ示している。
【0035】
発振回路11において発振が開始すると、ノードa(=Vout)の発振波形の振幅(電圧レベル)は徐々に大きくなり、所定時間の経過により、その振幅が、基準電圧にて設定されるしきい値(Vref)を超えると、NPNバイポーラトランジスタ18がオンし、ノードbの電位を下降させる。(図(b)参照)すなわち、PNPバイポーラトランジスタ16を介して高電位(Vdd)に接続されていた状態であったノードbの電位を、NPNバイポーラトランジスタ18にコレクタ電流を流すことにより低電位側(Vss)にシフトさせる。これにより、それまでオフ状態であったPNPバイポーラトランジスタ25がオンし、ノードcの電位を上昇させる。(図(c)参照)すなわち、検出端が抵抗素子26を介して低電位側電源(Vss)に接続されていることで、放電状態であった容量素子20の電位を、PNPバイポーラトランジスタ25にコレクタ電流を流すことにより充電させる。
【0036】
そして、容量素子20の保持電位が、検出回路21(CMOSインバータ)の反転しきい値のレベル(Vth-inv)に達すると、高レベル(Vdd)であった検出回路の出力(Vout)を、低レベル(Vss)に変化させる。(図(d)参照)これにより、発振状態の検出となる。
【0037】
このように、バイポーラトランジスタによる差動回路を用いた発振検出回路を採用したことにより、低電力化した回路構成においてもリーク電流の発生を抑制することができ、発振信号端が所望の状態に達しないタイミングでの誤った検出を防ぐことが可能になる。更に、容量素子の充放電の時定数はPNPバイポーラトランジスタ25のGmで決まるが、そのベース電位は、発振出力ではなく差動回路の出力で決まるので設計の自由度が向上する。
【0038】
以下、本発明の第3の実施の形態にについて図面を参照して説明する。図6は、本発明の第3の実施の形態に係わる発振検出回路の回路図であり、図7は、図6に示した発振検出回路の各ノードにおける電圧の変化を示す波形図である。尚、図6の回路図において付した参照番号は、前述の第1及び第2の実施の形態の構成要件と対応した構成要件については同じ参照番号を付している。
【0039】
発振検出回路は、発振回路11の発振出力(Vosc)が入力され、この入力と基準電圧を比較し、その結果に基づく電圧を出力する差動回路と、差動回路の出力に応じて充電または放電を行う容量素子34と、容量素子34の電位変化に基づいて所望の発振状態を検出し、その結果をVoutとして出力する検出回路21より構成されている。
【0040】
差動回路は、差動部と反転部とから構成される。差動部は、高電位側電源Vdd及び低電位側電源Vssの電源間の電流路内で直列接続されたPNPバイポーラトランジスタ35及びNPNバイポーラトランジスタ37と、同じく電源間の電流路内で直列接続されたPNPバイポーラトランジスタ36及びNPNバイポーラトランジスタ38とを有し、PNPバイポーラトランジスタ35及びPNPバイポーラトランジスタ36の両エミッタは共通接続されて定電流源39に接続される。また、NPNバイポーラトランジスタ37及びNPNバイポーラトランジスタ38の両ベースは共通接続されるとともに、該共通接続点は、NPNバイポーラトランジスタ37のコレクタに接続される。
【0041】
そして、PNPバイポーラトランジスタ35のベースには、電源間に直列接続された抵抗素子13及び14によって生成される基準電圧(Vref)が入力され、PNPバイポーラトランジスタ36のベースには、発振回路11の発振出力電圧(Vosc)が入力される。また、発振回路からの発振信号が無いときは、抵抗素子23及び抵抗素子24の分圧比により、基準電圧よりも高い電圧にPNPバイポーラトランジスタ36のベースはバイアスされている。これにより、トランジスタ35、36のべースに印加される両入力電圧による差動が構成され、差動部の出力は、PNPバイポーラトランジスタ36のコレクタ側から取り出される。
【0042】
反転部は、高電位側電源Vdd及び低電位側電源Vssの電源間の電流路内で直列接続された抵抗素子32とNPNバイポーラトランジスタ33とから構成される。そして、NPNバイポーラトランジスタ33のベースに差動部の出力(NPNバイポーラトランジスタ36のコレクタ)が接続され、そのコレクタの電位が、後段の容量素子34は充放電を制御する出力となっている。
【0043】
容量素子34は、NPNバイポーラトランジスタ33の出力に応じて充電または放電が行なわれ、容量素子34の電位変化(放電の結果)に基づいて検出回路21は、所望の発振状態を検出する。検出回路21は、例えばCMOSインバータから構成される。
【0044】
同図中においてブロックで示した発振回路11は、第1の実施の形態と同様に図3の構成と同じであり、ここでは説明を省略する。
【0045】
次に、図7を参照し第3の実施の形態に係わる発振検出回路の動作を説明する。図7は、各ノードの電圧の変化を示す波形図であり、図(a)はノードa、図(b)はノードb、図(c)はノードc、図(d)はノードdの状態をそれぞれ示している。
【0046】
発振回路11において発振が開始すると、ノードa(=Vout)の発振波形の振幅(電圧レベルの変化)は徐々に大きくなり、所定時間の経過により、その低電位側の振幅が、基準電圧にて設定されるしきい値(Vref)以下になる、PNPバイポーラトランジスタ36がオンし、ノードbの電位を上降させる。(図(b)参照)即ち、NPNバイポーラトランジスタ38を介して低電位側電源(Vss)に接続されていた状態であったノードbの電位を、PNPバイポーラトランジスタ36にコレクタ電流を流すことにより高電位側(Vdd)にシフトさせる。これにより、それまでオフ状態であったNPNバイポーラトランジスタ33がオンし、ノードcの電位を下降させる。(図(c)参照)すなわち、検出端が抵抗素子32を介して高電位側電源(Vdd)に接続されていることで、充電状態であった容量素子34の電位を、NPNバイポーラトランジスタ33にコレクタ電流を流すことにより放電させる。
【0047】
そして、容量素子34の保持電位が、検出回路21(CMOSインバータ)の反転しきい値のレベル(Vth-inv)に達するまで下降すると、低レベル(Vss)であった検出回路の出力(Vout)は、高レベル(Vdd)に変化する。(図(d)参照)これにより、発振状態の検出となる。
【0048】
このように、バイポーラトランジスタによる差動回路を用いた発振検出回路を採用したことにより、低電力化した回路構成においてもリーク電流の発生を抑制することができ、発振信号端が所望の状態に達しないタイミングでの誤った検出を防ぐことが可能になる。更に、容量素子の充放電の時定数はNPNバイポーラトランジスタ33のGmで決まるが、そのベース電位は、発振出力ではなく差動回路の出力で決まるので設計の自由度が向上する。
【0049】
上述の第1乃至第3の実施の形態においては、最終的に発振状態の検出を行う検出回路21をCMOSインバータで構成することで説明したが、本発明はこれに限られるものではない。即ち、検出回路をシュミット回路により構成することもできる。
【0050】
検出回路は、その前段の容量素子の電位が所望値に到達したことを検出して出力を反転させているが、発振初期状態では容量素子の電位は不安定であり、前述の所望の値付近で不安定な状態を繰り返すと、その電位に追従して検出回路の出力も不安定になってしまう。検出回路をシュミット回路により構成することで、一度反転した検出回路の出力は、そのヒステリシス特性により、その後の微小な容量素子電位の変化には追従せず、反転出力を維持するため、安定した検出結果を得ることできる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係わる発振検出回路を示す回路図である。
【図2】図1に示した発振検出回路の各ノードにおける電圧変化を示す波形図である。
【図3】図1中に示した発振回路の構成を示す回路図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係わる発振検出回路を示す回路図である。
【図5】図4に示した発振検出回路の各ノードにおける電圧変化を示す波形図である。
【図6】本発明の第3の実施の形態に係わる発振検出回路を示す回路図である。
【図7】図6に示した発振検出回路の各ノードにおける電圧変化を示す波形図である。
【図8】従来技術に係わる発振検出回路を示す回路図である。
【符号の説明】
【0052】
1、11 発振回路
2、7、20、101、102、108 容量素子
3、4、5、13、14、104〜107 抵抗素子
6、17、18 NPNバイポーラトランジスタ
15、16、103 PNPバイポーラトランジスタ
19 定電流源
8、21 検出回路
100 水晶振動子


【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部に設けられる水晶振動子に接続され発振信号を出力する発振回路と、
複数のバイポーラトランジスタによって構成され、基準電圧源に接続された第1の入力端子と上記発振回路の出力端に接続された第2の入力端子とを有し、両端子間の電位の比較結果に基づく出力を有する差動回路と、
上記差動回路の出力端に接続され、その電位に応じて充電または放電を行う容量素子と、
上記容量素子の電位に基づいて、上記発振信号の所望の状態を検出する検出回路とを備えたことを特徴とする発振検出回路。

【請求項2】
上記差動回路における上記第2の入力端子は、上記発振回路からの発振信号が無いとき及び発振初期状態では、上記第1の入力端子に入力される基準電圧よりも低い電圧にバイアスされ、上記差動回路の出力電位は高レベルであることを特徴とする請求項1記載の発振検出回路。
【請求項3】
上記差動回路における上記第2の入力端子は、上記発振回路からの発振信号が無いとき及び発振初期状態では、上記第1の入力端子に入力される基準電圧よりも高い電圧にバイアスされ、上記差動回路の出力電位は低レベルであることを特徴とする請求項1記載の発振検出回路。
【請求項4】
上記差動回路は、上記第1及び第2の端子間の電位の比較結果に基づく出力電位を生成する差動部と、電源間に直列接続されたバイポーラトランジスタと抵抗素子とを含み上記差動部出力の反転電位を生成する反転部とを有することを特徴とする請求項2または請求項3に記載の発振検出回路。
【請求項5】
上記検出回路は、シュミット回路から構成されることを特徴とする請求項1に記載の発振検出回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−28496(P2010−28496A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−188092(P2008−188092)
【出願日】平成20年7月22日(2008.7.22)
【出願人】(390009667)セイコーNPC株式会社 (161)
【Fターム(参考)】