説明

発振装置および電子機器

【課題】小型で大音量の再生が可能な発振装置を提供する。
【解決手段】圧電素子10が弾性部材である第一樹脂部材41で固定されているため、振動時の可動範囲が大きく、振幅が拡大する。また、第一樹脂部材41と支持体45の間に、第一樹脂部材41より低剛性の第二樹脂部材42が介在しているため、剛性のインピーダンス整合がとれる。このため、圧電素子10の特長である高い機械品質係数Qを利用して、特定周波数に限定した超音波を発振させることで可聴音を再生させることができ、大音量の再生が可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電素子を備えた発振装置、この発振装置を有する電子機器、に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話機やノート型コンピュータなどの携帯型の電子機器の需要が拡大している。このような電子機器では、テレビ電話や動画再生、ハンズフリー電話などの音響機能を商品価値とした薄型の携帯端末の開発が進められている。このような開発の中、音響部品である発振装置(スピーカ装置)に対して、高音質でかつ小型・薄型化への要求が高まっている。
【0003】
従来、携帯電話等の電子機器には、発振装置として動電型発振装置が利用されてきた。この動電型発振装置は、永久磁石とボイスコイルと振動膜から構成されている。しかし、動電型発振装置は、その動作原理および構造から、薄型化には限界がある。一方、特許文献1、2には、圧電素子を発振装置として使用することが記載されている。
【0004】
また、圧電素子を用いる発振装置の他の例としては、スピーカ装置のほか、圧電素子から発振された音波を用いて対象物までの距離などを検出する音波センサ(特許文献3を参照)など、種々の発振装置や電子機器が知られている。例えば、同一形状で同一材料の二個の圧電素子を弾性部材に二段に積層することで、バイモルフの発振装置を実現する提案がある(特許文献4)。また、平面形状のサイズが相違する二個の圧電素子を弾性部材の両面に一個ずつ配置することで、バイモルフの発振装置を実現する提案もある(特許文献5)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2007−026736号公報
【特許文献2】特表2007−083497号公報
【特許文献3】特開平03−270282号公報
【特許文献4】特開2002−112391号公報
【特許文献5】特開2008−28593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
圧電素子を用いる発振装置は、圧電層の圧電効果を利用して、電気信号の入力による電歪作用により、振動振幅を発生させるものである。そして、動電型発振装置がピストン型の進退運動によって振動を発生させるのに対して、圧電素子を用いる発振装置は屈曲型の振動姿態をとるために振幅が小さくなる。このため、上記した動電型の発振装置に対して薄型化に優位である。
【0007】
しかしながら、セラミック材料は脆性材料である上に、機械損失が小さいため、機械品質係数Qが、有機フィルムから振幅を発生させる動電型電気音響変換器に比べ、高い傾向にある。例えば、動電型は機械品質係数Qが3〜5程度に対して、圧電型では約50程度となる。機械品質係数Qは共振時に先鋭度を示すため、要約すれは、圧電型電気音響変換器では、基本共振周波数近傍では音圧が高く、それ以外の帯域では音圧が減衰することを意味する。
【0008】
すなわち、音圧レベル周波数特性において、音響特性の山谷が発生し、特定周波数の音が強調されたり、消失されたりして、音楽再生などに十分な音質が得られない問題点を持つ。また、音響特性と同様に放射面積に対しての問題点を持つ。圧電型の電気音響変換器においても、電磁型の変換器と同様に、音圧レベルは、体積排除量(放射面積と振幅との積)に依存するため、薄型化は可能であっても放射面積の低減には限界があり、携帯電話用の電気音響変換器として十分な機能を満たしていない。このため、高音質で小型な電気音響変換器を生み出す画期的な技術が要求されていた。
【0009】
本発明は上述のような課題に鑑みてなされたものであり、小型でも大音量の再生が可能な発振装置、この発振装置を利用した電子機器、を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の発振装置は、電界の印加により伸縮運動する平板状の圧電素子と、圧電素子の二つの主面の一方を拘束している平板状の弾性部材と、少なくとも圧電素子を支持している第一樹脂部材と、第一樹脂部材より縦弾性係数が小さく第一樹脂部材を支持している第二樹脂部材と、少なくとも第二樹脂部材を支持している枠状の支持体と、を有する。
【0011】
本発明の第一の電子機器は、本発明の発振装置と、発振装置に可聴域の音波を出力させる発振駆動部と、を有する。
【0012】
本発明の第二の電子機器は、本発明の発振装置と、発振装置から発振されて測定対象物で反射した超音波を検知する超音波検知部と、検知された超音波から測定対象物までの距離を算出する測距部と、を有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の発振装置では、圧電素子が弾性部材である第一樹脂部材で固定されているため、振動時の可動範囲が大きく、振幅が拡大する。また、第一樹脂部材と支持体の間に、第一樹脂部材より低剛性の第二樹脂部材が介在しているため、剛性のインピーダンス整合がとれる。このため、圧電素子の特長である高い機械品質係数Qを利用して、特定周波数に限定した超音波を発振させることで可聴音を再生させることができ、大音量の再生が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の第一の形態の発振装置の構造を示す模式的な縦断正面図である。
【図2】発振装置の外観を示す模式的な平面図である。
【図3】圧電素子の構造を示す模式的な縦断正面図である。
【図4】一変形例の発振装置の構造を示す模式的な平面図である。
【図5】発振装置の要部の動作を示す模式図である。
【図6】発振装置の動作を示す模式図である。
【図7】発振装置の要部の動作を示す模式図である。
【図8】本発明の実施の第二の形態の発振装置の構造を示す模式的な縦断正面図である。
【図9】バイモルフ型圧電素子の動作を示す模式図である。
【図10】本発明の実施の第三の形態の発振装置の圧電素子の組立構造を示す分解斜視図である。
【図11】本発明の実施の第四の形態の発振装置の構造を示す模式的な平面図である。
【図12】本発明の実施の第五の形態の発振装置の構造を示す模式的な平面図である。
【図13】一従来例の発振装置の構造を示す縦断正面図である。
【図14】電子機器である携帯電話機の外観を示す模式的な正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[実施の第一の形態]
本発明の実施形態について図1、図2を参照して説明する。図1は本実施形態の電気音響変換器を示す概略断面図であり、図2は概略上面図である。図1に示すように、本実施形態の動電式電気音響変換器である発振装置50は、電界の印加により伸縮運動する平板状の圧電素子10と、圧電素子10の二つの主面の一方を拘束している平板状の弾性部材20と、少なくとも圧電素子10を支持している第一樹脂部材41と、第一樹脂部材41より縦弾性係数が小さく少なくとも第一樹脂部材41を支持している第二樹脂部材42と、少なくとも第二樹脂部材42を支持している枠状の支持体45と、を有する。
【0016】
より具体的には、圧電素子10の下側の主面は弾性部材20により拘束されて振動子を形成しており、その両端が第一樹脂部材41で支持されている。この第一樹脂部材41の下面と支持体45の底面とに第二樹脂部材42が介在している。圧電素子10と弾性部材20は互いの弾性率が異なる二つの第一樹脂部材41と第二樹脂部材42とを介して接合している。また、リード線46は、圧電素子10と弾性部材20の端部に接合されており、第一樹脂部材41と第二樹脂部材42との中に固着されており、支持体45の外淵部の端子47に接続されている。
【0017】
本発明の圧電素子10は図3で示される構成であり、圧電材料3−bは、その上下主面が電極材料3−a、3−cで拘束されている。圧電材料3−bは、圧電効果を有する材料であれば、無機材料、有機材料ともに特に限定されないが、電気機械変換効率が高い材料、例えば、ジルコン酸チタン酸鉛(PZT)や、チタン酸バリウム(BaTiO)などの材料が使用可能である。また、厚みは特に限定されないが、10μm〜1mmであることが好ましい。
【0018】
脆性材料であるセラミック材料として厚み10μm未満の薄膜を使用した場合、取り扱い時に機械強度の弱さから、欠けや破損などが生じて、取り扱いが困難となる。また、厚み1mmを超えるセラミックを使用した場合は電気エネルギから機械エネルギに変換する変換効率が著しく低下し、発振装置50として十分な性能が得られない。一般的に、電気信号の入力により電歪効果を発生させる圧電セラミックにおいては、その変換効率は電界強度に依存する。この電界強度は分極方向に対する厚み/入力電圧で表されることから、厚みの増加は必然的に変換効率の低下を招いてしまう問題がある。
【0019】
本発明の圧電素子10には電界を発生させるために主面に電極層が形成されている。その材料は特に限定されないが、例えば、銀や銀/パラジウムを使用することが可能である。銀は低抵抗な汎用的な電極材料して使用されており、製造プロセスやコストなどに利点があり、銀/パラジウムは耐酸化に優れた低抵抗材料であるため、信頼性の観点から利点がある。
【0020】
また、電極材料の厚みは特に限定されないが、その厚みが1〜50μmであるのが好ましい。厚み1μm未満では、膜厚が薄いため、電極上に均一に成形できず、変換効率が低下する可能性がある。また、電極の膜厚が100μmを超える場合は、製造上に特に問題はないが、電極層が圧電セラミック材料に対して拘束面となり、エネルギ変換効率を低下させてしまう問題点がある。
【0021】
本発明の圧電素子10は、その片側の主面が弾性部材20によって拘束されている。弾性部材20は、圧電素子10から発生した振動を支持体45に伝播させる機能を持つ。また、同時に弾性部材20には、圧電素子10の基本共振周波数を調整する機能を持つ。機械振動子の基本共振周波数は、以下の数式で示されるように、負荷重量と、コンプライアンスに依存する。言い換えれば、コンプライアンスは振動子の機械剛性であるため、このことは圧電素子10の剛性を制御することで基本共振周波数を制御できることを意味する。
【0022】
[数1]
f=1/(2πL√(mC))
なお、"m"は質量、"C"はコンプライアンス、である。
【0023】
弾性率の高い材料の選択や、弾性部材20の厚みを低減することで、基本共振周波数は低域にシフトさせることが可能となる。弾性部材20には、金属や樹脂など脆性材料であるセラミックに対して高い弾性率を持つ材料であれば特に限定されないが、加工性やコストの観点からリン青銅やステンレスなどの汎用材料が使用される。また、厚みについては、5〜1000μmであることが好ましい。厚みが5μm未満の場合、機械強度が弱く、拘束部材として機能を損なうことや、加工精度による低下により、製造ロット間で振動子の機械振動特性のばらつきが生じてしまう問題点がある。
【0024】
また、厚みが1000μmを超える場合は、剛性増による圧電素子10への拘束が強まり、振動変位量の減衰を生じさせてしまう問題点がある。また、本実施形態の弾性部材20は、材料の剛性を示す指標である縦弾性係数が、1〜500GPaであることが好ましい。上述のように、弾性部材20の剛性が過度に低い場合や、過度に高い場合は、機械振動子として特性や信頼性を損なう問題点がある。
【0025】
本発明の発振装置50では、圧電素子10と弾性部材20の端部が二種類の第一樹脂部材41と第二樹脂部材42とを介して支持体45に接合している。第一樹脂部材41は圧電材料や弾性部材20に接合しており、振動を拡大する機構として機能する。従来の圧電型の発振装置50では、圧電素子10を拘束する弾性部材20は支持体45に直接接合されていた。しかしながら、撓み振動においては、図5に示すように、支持体45と弾性部材20に応力が集中するため、この構成では固定端の機能を果たすため、撓み変形の理論から低剛性の方が変位拡大の観点から優位である。
【0026】
また、本発明では、第一樹脂部材41と支持体45の底部との間に、第二樹脂部材42が介在している。この第二樹脂部材42は、第一樹脂部材41と比較して低剛性の材料であり、弾性率が低いことを特徴とし、振動変位を拡大する機能と、落下衝撃安定性を向上させる機能を有する。第二樹脂部材42の弾性率は、第一樹脂部材41の弾性率に対して、1/10以下が好ましい。
【0027】
また、第二樹脂部材42と第一樹脂部材41とは、接着材により接合されており、その接着にはエポキシ系接着材などが使用できる。第二樹脂部材42と第一樹脂部材41ともにエポキシ接着に対して接合強度が高い材料であることが好ましい。さらに、接合部での振動エネルギロスを低減するために、その接着材厚みは20μm以下であることが好ましい。図6で示されるように、圧電素子10の撓み振動は圧電素子10の厚み方向に変換される。すなわち、発振装置50の厚み方向への振幅運動が発生し、図7で示されるように、厚み方向に対して、圧電素子10からの駆動力と慣性が作用する。
【0028】
そこで、弾性変形率が高い第二樹脂部材42の復元力を利用して変形量を拡大させるのが本発明の特徴である。また、落下時の衝撃安定性についても、第二樹脂部材42で衝撃時のエネルギを吸収するため、信頼性が向上する。なお、第一樹脂部材41と第二樹脂部材42とについては、縦弾性係数が、100GPa以下の高分子材料であれば特に限定されないが、汎用性の観点から、ポリエチレンテレフタレートや、ポリエチレン、ウレタン、シリコンゴム、天然ゴム、合成ゴム、などの使用が可能である。
【0029】
本発明の発振装置50の製造方法を以下に説明する。まず、圧電素子10は、圧電材料の外径=5×3mm、厚み=200μm(0.2mm)の圧電板であり、その両面に、それぞれ厚み8μmの上部電極材料3−aおよび下部電極材料3−bが形成されている。弾性部材20は、外径=7×3mm、厚み=300μm(0.3mm)のリン青銅である。支持体45は、その材質がSUS304であり、弾性部材20と直接接合している。支持体45は、外径=10×5mm、内径=8×3.5mmのバスタブ状のケースであり、SUS304で形成されている。
【0030】
圧電材料および弾性部材20は、中央に同心状に配置した。また、圧電材料には、ジルコン酸チタン酸鉛系セラミックを用い、電極層には銀/パラジウム合金(重量比70%:30%)を使用した。この圧電セラミックの製造はグリーンシート法で行い、大気中で1100℃−2時間にわたって焼成し、その後、圧電材料層に分極処理を施した。圧電素子10と弾性部材20との接着には、何れもエポキシ系接着剤を用いた。また、第一樹脂部材41には、ポリエチレンを、第二樹脂部材42には天然ゴムを使用した。
【0031】
以下に本発明の発振装置50の動作原理を説明する。本発明の発振装置50は、並列に配置された複数の振動子から放射面に向かった音波を発生させる。その周波数は特に限定されないが、ここで発振される超音波は変調波の輸送体として利用されるため、可聴帯域外が好ましく、例えば、100KHzなどが適している。また、本発明の発振装置50による音響再生方法を述べる。
【0032】
本構成では、超音波を変調波の輸送体として利用する音響再生器であるパラメトリックスピーカの動作原理を利用している。ここでは、AM(Amplitude Modulation)変調やDSB(Double Side Band amplitude modulation)変調、SSB(Single-Sideband Modulation)変調、FM(Frequency Modulation)変調をかけた超音波を空気中に放射し、超音波が空気中に伝播する際の非線形特性により、可聴音が出現する原理で音響再生を行っている。
【0033】
非線形とは、流れの慣性作用と粘性作用の比で示されるレイノルズ数が大きくなると、層流から乱流に推移する現象が挙げられる。すなわち、音波は流体内で微少にじょう乱しているため、音波は非線形で伝播している。しかしながら、低周波数帯域での音波の振幅は非線形でありがら、振幅差が非常に小さく、通常、線形理論の現象として取り扱っている。
【0034】
これに対して、超音波では非線形性が容易に観察でき、空気中に放射した場合、非線形性を伴う高調波が顕著に発生する。概略すれば、音波が空気中は分子集団が濃淡に混在する疎密状態であり、空気分子が圧縮よりも復元するのに時間が生じた場合、圧縮後に復元できない空気が、連続的に伝播する空気分子と衝突し、衝撃波が生じて可聴音が発生する原理である。
【0035】
以上のように、本発明に係る発振装置50は、信頼性が高く、小型で大音量の再生ができる。また、超音波を利用しているため、指向性が狭く、ユーザのプライバシー保護などの点で、工業的な価値は大きい。
【0036】
以上をまとめると、本発明の発振装置50は、電子機器(例えば、携帯電話機、ラップトップ型パーソナルコンピュータ、小型ゲーム機器など)の音源としても利用可能である。発振装置50全体が大型化せず、音響特性が向上することから、携帯型の電子機器に対しても好適に利用することが可能である。
【0037】
なお、上記形態では圧電素子10と弾性部材20と支持体45とが平面形状で矩形の発振装置50を例示した。しかし、図4に示すように、圧電素子10と弾性部材20と支持体45とが円形の発振装置も実施可能である。
【0038】
[実施の第二の形態]
本発明の実施の第二の形態を、図8を参照し説明する。本実施形態では、実施の第一の形態に対して、弾性部材20を二つの圧電素子10a,10bで拘束していることが特徴である。すなわち、二つの圧電素子10a,10bを利用したバイモルフ構造である。このバイモルフ型圧電素子10a,10bは、図9で示すように、分極方向を逆にした二枚の圧電セラミックを張り合わせ、一方を長手方向に伸ばし、もう一方を縮めることにより屈曲させることで、実施の第一の形態の一枚の圧電素子10a,10bからなるユニモルフ構造に比べて、より大きな変位を得ることが可能となる。なお、二つの圧電素子10a,10bについては、実施の第一の形態と同様の圧電性材料を使用することができる。また、二つの圧電素子10a,10bが互いに同一形状であっても、互いに異なる形状であってもよい。
【0039】
以上、本実施形態に発振装置は、電子機器(例えば、携帯電話機、ラップトップ型パーソナルコンピュータ、小型ゲーム機器など)の音源としても利用可能である。発振装置全体が大型化せず、音響特性が向上することから、携帯型の電子機器に対しても好適に利用することが可能である。
【0040】
[実施の第三の形態]
本発明の実施の第三の形態について図10を参照して説明する。本実施形態では、積層型圧電素子から構成されている。図10で示されるように、圧電素子12は、圧電材料からなる圧電板13a〜13eが5層に積層された多層構造である。圧電板同士の間には電極層(導体層)14a〜14dが一層ずつ形成されている。各圧電板13a〜13eの分極方向は一層ごとに逆向きとなっており、また、電界の向きも交互に逆向きとなるように構成されている。このような積層構造の圧電素子12によれば、電極層14a〜14d間に生じる電界強度が高いため、圧電板13a〜13eの積層数に応じた分だけ、圧電素子全体としての駆動力が向上する。
【0041】
以上、本実施形態に係る発振装置は、電子機器(例えば、携帯電話機、ラップトップ型パーソナルコンピュータ、小型ゲーム機器など)の音源としても利用可能である。発振装置全体が大型化せず、音響特性が向上することから、携帯型の電子機器に対しても好適に利用することが可能である。
【0042】
[実施の第四の形態]
本発明の実施の第四の形態について、図11を参照して説明する。本実施形態では、実施の第一の形態に対して圧電素子10の形状が変化している。このように圧電素子10の形状を変更することで、量産工程が確立された任意の材料を使用することができ、設計自由度が向上する。形状については、矩形や楕円形、円形などいかなる形状の材料も使用できる。
【0043】
以上、本実施形態に発振装置は、電子機器(例えば、携帯電話機、ラップトップ型パーソナルコンピュータ、小型ゲーム機器など)の音源としても利用可能である。発振装置全体が大型化せず、音響特性が向上することから、携帯型の電子機器に対しても好適に利用することが可能である。
【0044】
[実施の第五の形態]
本発明の実施の第五の形態について、図12を参照して説明する。本実施形態では、実施の第一の形態に対して圧電素子10の形状と数が変化している。本構成では、小型の圧電素子10を二個使用している。このように圧電素子10の数や形状を変更することで、実施の第四の形態と同様に、量産工程が確立された任意の材料を使用するにことができ、設計自由度が向上する。
【0045】
以上、本実施形態に発振装置は、電子機器(例えば、携帯電話機、ラップトップ型パーソナルコンピュータ、小型ゲーム機器など)の音源としても利用可能である。発振装置全体が大型化せず、音響特性が向上することから、携帯型の電子機器に対しても好適に利用することが可能である。
【0046】
[発明の他の実施例]
本発明の発振装置の特性評価を、以下、評価1〜評価2の評価項目で行った。
【0047】
(評価1)音圧レベル周波数特性の測定:交流電圧1V入力時の音圧レベルを、圧電素子から所定距離だけ離れた位置に配置したマイクロホンにより測定した。なお、この所定距離は、特に明記しない限り10cmであり、周波数の測定範囲は10Hz〜10kHzとした。
【0048】
(評価2)落下衝撃試験:発振装置を搭載した携帯電話を50cm直上から、5回自然落下させ、落下衝撃安定性試験を行った。具体的には、落下衝撃試験後の割れ等の破壊を目視で確認し、さらに、試験後の音圧特性を測定した。その結果、音圧レベル差(試験前の音圧レベルと試験後の音圧レベルとの差のことを指す)が3dB以内を○とし、3dB以上を×とした。
【0049】
[実施例1]
本発明の第一の実施の形態で記載した発振装置の特性評価を実施した。
[比較例1]
比較例1として、図13の従来の動電型発振装置を作製した。
[実施例2]
実施例2として、実施の第二の形態の発振装置を作成した。
[実施例3]
実施例3として、実施の第三の形態の発振装置を作成した。
[実施例4]
実施例4として、実施の第四の形態の発振装置を作成した。
[実施例5]
実施例5として、実施の第五の形態の発振装置を作成した。
【0050】
【表1】

上記の結果より明らかのように、実施例1〜5の発振装置によれば、小型でかつ高い音圧レベルを有し、音圧レベル周波数特性は平坦である。
【0051】
[実施例6]
実施例6として、図14に示すような携帯電話機を用意し、その筐体内に実施例1の発振装置を搭載した。具体的には、携帯電話機の筐体内側面に、発振装置を貼り付ける構成とした。
[実施例7]
実施例7として、図14に示すような携帯電話機を用意し、その筐体内に実施例2の発振装置を搭載した。具体的には、携帯電話機の筐体内側面に、発振装置を貼り付ける構成とした。
[実施例8]
実施例8として、図14に示すような携帯電話機を用意し、その筐体内に実施例3の発振装置を搭載した。具体的には、携帯電話機の筐体内側面に、発振装置を貼り付ける構成とした。
[実施例9]
実施例9として、図14に示すような携帯電話機を用意し、その筐体内に実施例4の発振装置を搭載した。具体的には、携帯電話機の筐体内側面に、発振装置を貼り付ける構成とした。
[実施例10]
実施例10として、図14に示すような携帯電話機を用意し、その筐体内に実施例5の発振装置を搭載した。具体的には、携帯電話機の筐体内側面に、発振装置を貼り付ける構成とした。
【0052】
【表2】

上記の結果より明らかのように、実施例6〜10の発振装置によれば、小型でかつ高い音圧レベルを有することが確認された。
【0053】
なお、本発明は本実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で各種の変形を許容する。例えば、上記形態では発振装置50を携帯電話機の発音装置として利用することを例示した。しかし、発振装置50と、発振装置50から発振されて測定対象物で反射した超音波を検知する超音波検知部と、検知された超音波から測定対象物までの距離を算出する測距部と、を有する電子機器(図示せず)なども実施可能である。
【符号の説明】
【0054】
3−a 電極材料
3−b 圧電材料
3−c 弾性材料
10 圧電素子
12 圧電素子
20 弾性部材
41 第一樹脂部材
42 第二樹脂部材
45 支持体
46 リード線
47 端子
50 発振装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電界の印加により伸縮運動する平板状の圧電素子と、
前記圧電素子の二つの主面の一方を拘束している平板状の弾性部材と、
少なくとも前記圧電素子を支持している第一樹脂部材と、
前記第一樹脂部材より縦弾性係数が小さく少なくとも前記第一樹脂部材を支持している第二樹脂部材と、
少なくとも前記第二樹脂部材を支持している枠状の支持体と、
を有する発振装置。
【請求項2】
前記第一樹脂部材と前記第二樹脂部材との縦弾性係数が100GPa以下である請求項1に記載の発振装置。
【請求項3】
前記第一樹脂部材が前記圧電材料と前記弾性部材とに直接接合されており、
前記第二樹脂部材が前記支持体と前記第一樹脂部材とに介在している請求項1または2に記載の発振装置。
【請求項4】
前記圧電素子の発振周波数が20kHz以上である請求項1ないし3の何れか一項に記載の発振装置。
【請求項5】
前記圧電素子の主面の平面形状が矩形である請求項1ないし4の何れか一項に記載の発振装置。
【請求項6】
前記圧電素子の主面の平面形状が円形である請求項1ないし4の何れか一項に記載の発振装置。
【請求項7】
前記圧電素子は、セラミック層と電極層とが交互に積層された積層構造からなる請求項1ないし6の何れか一項に記載の発振装置。
【請求項8】
前記圧電素子が可聴波の超音波変調波を発振する請求項1ないし7の何れか一項に記載の発振装置。
【請求項9】
請求項1ないし8の何れか一項に記載の発振装置と、
前記発振装置に可聴域の音波を出力させる発振駆動部と、
を有する電子機器。
【請求項10】
請求項1ないし8の何れか一項に記載の発振装置と、
前記発振装置から発振されて測定対象物で反射した超音波を検知する超音波検知部と、
検知された前記超音波から前記測定対象物までの距離を算出する測距部と、
を有する電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−100042(P2012−100042A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−245658(P2010−245658)
【出願日】平成22年11月1日(2010.11.1)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】