説明

発泡体付き成形部材

【課題】付属部材の変形による発泡体付き成形部材の外観品質の低下を防止する。
【解決手段】エアバッグドア50の基材10と対向する裏面54Aに、基材10に設けたドア設置部12に当接して弾性変形したもとで、これらエアバッグドア50と基材10との間に閉塞空間Sを画成する当接部60が突設される。当接部60は、エアバッグドア50の外郭縁に沿って延在する第1突片部62と、第1突片部62の内側で該第1突片部62と所要間隔をもって延在する第2突片部64とで二重の環状をなす。従って、第1突片部62および第2突片部64がドア設置部12に当接することで両突片部62,64の間に閉塞空間Sが画成され、この閉塞空間Sにより発現する吸盤効果によりエアバッグドア50の変形が規制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面側に付属部材が組付けられた基材と、これら基材および付属部材の表面側で発泡成形して両部材に積層された発泡体とを備える発泡体付き成形部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インストルメントパネルIPは、図11に示すように、その裏側にエアバッグ装置AUを内装した状態で乗員室前方に組付けられる。このため、インストルメントパネルIPを構成する基材10には、エアバッグ装置AUに対応した部位に開口部14が形成されると共に、この開口部14を覆蓋するエアバッグドア20が、該基材10の表面を部分的に被覆するように設けられている。またインストルメントパネルIPは、基材10およびエアバッグドア20の表面側で発泡成形されて両部材10,20に積層された発泡体30を備え、所謂「発泡体付き成形部材」である。なお、図11に示すインストルメントパネルIPは、発泡体30の表面側に表皮40が配設されており、基材10、発泡体30および表皮40からなる3層構造となっている。
【0003】
エアバッグドア20は、基材10とは異なる材質の合成樹脂素材、例えばオレフィン系の熱可塑性エラストマ(TPO)から形成されている。このエアバッグドア20は、図12に示すように、開口部14の開口サイズよりも大きく、該開口部14の周囲に形成されたドア設置部12の内周端縁13より一回り小さい略長方形状に形成され、該ドア設置部12に重なって整合する外周部分が取付枠部24とされている。そして、取付枠部24の内側に、開口部14に整合するドアパネル22が形成されている。またエアバッグドア20の裏側には、エアバッグ装置AUに連結される角筒状の連結筒体部26が、ドアパネル22と取付枠部24との境界部分から裏側へ延出形成されている。従ってエアバッグドア20は、図11に示すように、基材10の表面側から連結筒体部26を開口部14に挿通させ、取付枠部24を設置部12に整合させた状態で基材10に組付けられる。前述したドア設置部12は、図11および図12に示すように、エアバッグドア20の厚み分だけ基材10の表面から凹んだ段差状に形成されており、基材10の表面とエアバッグドア20の表面とは段差のない略同一平面となる。なお、連結筒体部26の外周面には複数の係止爪部28が突設され、各係止爪部28が開口部14の端縁において基材10に係止される。このような発泡体付き成形部材は、特許文献1に開示されている。
【特許文献1】特開2004−243594号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前述した基材10およびエアバッグドア20は、何れも合成樹脂製の成形部材であるため、成形歪みや熱変形が発生し易く、これによる寸法誤差が生じ易い。このため、エアバッグドア20を基材10に組付けた状態では、図13に示すように、両部材10,20の変形や寸法誤差等により、取付枠部24と設置部12との間に間隙Wが形成されることがある。このような間隙Wが形成された状態において、基材10およびエアバッグドア20の表面側で発泡体30を発泡成形すると、図14(a)に示すように、該発泡体30の発泡圧により取付枠部24が変形して基材10に押し付けられ、該取付枠部24が設置部12に密着した状態で発泡体30が硬化する。しかし、発泡体30の発泡成形後に、インストルメントパネルIPを発泡成形型Mから脱型すると、図14(b)に示すように、取付枠部24は元の形状に変形(バックリング)してしまうため、発泡体30の該取付枠部24に対応する部分が押し上げられる。この結果として、インストルメントパネルIPの意匠面が部分的に膨出するようになり、該インストルメントパネルIPの外観品質の低下を招来していた。
【0005】
従って本発明では、基材に組付けられた付属部材が発泡体の発泡成形後に変形しないようにして、該付属部材の変形による外観品質の低下を防止するようにした発泡体付き成形部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決し、所期の目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、
表面側に付属部材が組付けられた基材と、前記基材および付属部材の前記表面側で発泡成形して両部材に積層された発泡体とを備える発泡体付き成形部材において、
弾力性を有すると共に、前記付属部材の前記基材と対向する裏面に突設され、前記基材に当接して弾性変形したもとで基材と付属部材との間に閉塞空間を画成する当接部を備えたことを特徴とする。
【0007】
従って、請求項1に係る発明によれば、基材と付属部材との間に、当接部が弾性変形したもとで閉塞空間を画成するので、当接部が元の形状に復帰しようとすると吸盤効果が発現し、付属部材が基材に吸着される。これにより、付属部材の変形を防止できる。そして、発泡体付き成形部材の意匠面が変形しないので、該発泡体付き成形部材の外観品質低下を防止し得る。
【0008】
請求項2に記載の発明は、前記当接部は、前記裏面の外郭縁に沿って延在する第1突片部と、前記第1突片部の内側で該第1突片部と所要間隔をもって延在する第2突片部とで二重の環状をなし、第1突片部と第2突片部との間に前記閉塞空間を画成することを要旨とする。
従って、請求項2に係る発明によれば、基材と付属部材との間に、第1突片部と第2突片部とが弾性変形したもとで両突片部に挟まれた閉塞空間を画成するので、両突片部が元の形状に復帰しようとすると吸盤効果が発現し、付属部材が基材に吸着される。これにより、付属部材の変形を防止できる。しかも、閉塞空間が裏面の外郭縁に沿って画成されるので、付属部材の外郭部分を基材に好適に吸着させ得る。
また、裏面の外郭縁に沿って延在する第1突片部が基材に当接しているため、発泡成形中の発泡体が、基材と付属部材との間に流入し難くなる。更に、第1突片部の内側に延在する第2突片部が基材に当接しているため、万一、発泡成形中の発泡体が基材と付属部材との間に流入しても、流入した該発泡体を第2突片部で食い止めることができる。
【0009】
請求項3に記載の発明は、前記当接部は、前記裏面に配置されて一重の環状をなす環状突片部からなり、環状突片部内に前記閉塞空間を画成することを要旨とする。
従って、請求項3に係る発明によれば、基材と付属部材の間に、環状突片部が弾性変形したもとで該環状突片部に囲まれた閉塞空間を画成するので、環状突片部が元の形状に復帰しようとすると吸盤効果が発現し、付属部材が基材に吸着される。これにより、付属部材の変形を防止できる。
【0010】
請求項4に記載の発明は、前記閉塞空間が負圧となることを要旨とする。
従って、請求項4に係る発明によれば、付属部材が基材から離間しそうになると閉塞空間が負圧となって吸盤効果が発現し、該付属部材が該基材に適切に吸着される。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る発泡体付き成形部材によれば、付属部材と基材との間に画成された閉塞空間により吸盤効果が発現するので、付属部材を基材に吸着させ得る。これにより、発泡体の発泡成形後における付属部材の変形を防止できる。従って、発泡体付き成形部材の意匠面が変形しないので、該発泡体付き成形部材の外観品質が低下しない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、本発明に係る発泡体付き成形部材につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照しながら以下説明する。
【実施例】
【0013】
本願が定義する「発泡体付き成形部材」は、前述したように、所要形状に成形した基材と、この基材の表面側で発泡成形されて該部材に積層される発泡体とを備えたものである。更に、基材の発泡体が発泡成形される表面側に、該表面を部分的に被覆する付属部材が組付けられたものが前提とされる。このような発泡体付き成形部材としては、図11に例示したインストルメントパネルIPが挙げられるので、実施例では該インストルメントパネルIPを引用して説明する。従って、従来技術の説明に際して既出の部材・部位と同一の部材・部位は、同一の符号で指示する。
【0014】
(第1実施例)
図1は、第1実施例に係るインストルメントパネルIPを、エアバッグドア50を組付けた部位で破断して要部を拡大して示す断面図である。このインストルメントパネルIPは、略長方形状に形成されてエアバッグ挿通口として機能する開口部14を開設した基材10と、この基材10の表面側に組付けられる付属部材としてのエアバッグドア50と、これら基材10およびエアバッグドア50の表面側で発泡成形されて、両部材10,20に密着状態で積層される発泡体30とを有する。なお、発泡体30の外面には、該発泡体30を被覆する表皮40が配設されており、インストルメントパネルIPは、エアバッグドア50を組付けた基材10、発泡体30および表皮40からなる3層構造となっている。
【0015】
基材10は、例えばPP(ポリプロピレン)、PPF(フィラー入りポリプロピレン)またはASG等の合成樹脂素材を材質とした比較的硬質のインジェクション成形部材である。そして、図2に示すように、基材10の開口部14を囲繞する周辺部分が、エアバッグドア50を組付けるためのドア設置部12とされている。このドア設置部12は、基材10の表面から一段下がった段差状に凹設されており、エアバッグドア50をこのドア設置部12に組付けた際には、該エアバッグドア50の表面と基材10の表面とが略同一平面となる(図1)。
【0016】
エアバッグドア50は、エアバッグ装置AUのエアバッグによる衝撃力を受けても破損し難くする必要があるため、オレフィン系の熱可塑性エラストマー(TPO)等の柔軟性および靭性に優れた合成樹脂材料を材質としたインジェクション成形部材である。そしてエアバッグドア50は、開口部14の開口サイズよりも大きく、かつドア設置部12の内周端縁13よりも一回り小さい略長方形状の外部輪郭形状に形成され、ドア設置部12に重なって整合する外周輪郭部分が取付枠部54とされている。なお実施例のエアバッグドア50は、裏側に両Y字形の破断予定部51が延設され、この破断予定部51が破断することで分離した4枚の各ドアパネル52が、4方向へ開放する4方開きタイプである。但し、エアバッグドア50の開放形態はこれに限定されず、破断予定部をH字形に延設した2枚のドアパネルからなる両開きタイプや、破断予定部をコ字形に延設した1枚のドアパネル52からなる片開きタイプであってもよい。
【0017】
エアバッグドア50の裏側には、図1および図2に示すように、ドアパネル52と取付枠部54との境界部分に対応する角筒状の連結筒体部56が一体的に形成されている。この連結筒体部56は、開口部14に挿通してエアバッグ装置AUのケース本体を囲繞するようになり(図11)、基材10に組付けたエアバッグドア50を該エアバッグ装置AUに連結させるためのものである。また、連結筒体部56の外周面には、開口部14の内周縁に係止される複数個の係止爪部58が突設されている。なお連結筒体部56には、エアバッグ装置AUに設けた係止ピンが挿通係止される複数の係止口59が形成されている。
【0018】
そして、第1実施例のインストルメントパネルIPでは、図1〜図4に示すように、エアバッグドア50の取付枠部54において、ドア設置部12に対向する裏面54Aに、基材10側へ突出する当接部60が突設されている。この当接部60は、取付枠部54と一体的に形成されて弾力性を有し、後述するように、基材10のドア設置部12に当接して弾性変形するようになっている。そして、エアバッグドア50を基材10に組付けた際に、当接部60がドア設置部12に当接して弾性変形することで、基材10とエアバッグドア50との間に負圧となる閉塞空間Sを画成して、該閉塞空間Sにより吸盤効果が発現することで、エアバッグドア50を基材10に吸着させるよう構成されている。
【0019】
第1実施例の当接部60は、図3に示すように、裏面54Aの外郭縁に沿って延在する第1突片部62と、第1突片部62の内側で該第1突片部62と所要間隔をもって延在する第2突片部64とを備えている。すなわち当接部60は、第1突片部62の内側に第2突片部64が位置した二重の環状をなしている。そして、図5および図6に示すように、第1突片部62および第2突片部64がドア設置部12に当接して弾性変形した際には、両突片部62,64の間に前述した閉塞空間Sが画成され得る。
【0020】
第1突片部62は、図4に示すように、短手方向で破断した断面形状が、取付枠部54に連接される基部62A側から先端部62Bに向かうにつれて漸次薄くなる先細状を呈すると共に、先端部62Bが取付枠部54の外郭縁方向を指向するよう湾曲状を呈している。そして第1突片部62は、前述した熱可塑性エラストマから形成されるエアバッグドア50に一体的に形成されるため、基材10のドア設置部12に当接すると倒伏的に弾性変形し、該ドア設置部12に密着すると共に、取付枠部54の裏面54Aにも密着するようになっている。
【0021】
第2突片部64は、図4に示すように、短手方向で破断した断面形状が、取付枠部54に連接される基部64A側から先端部64Bに向かうにつれて漸次薄くなる先細状を呈すると共に、先端部64Bが取付枠部54の外郭縁方向と反対側、すなわち連結筒体部56の方向を指向する湾曲状を呈している。そして第2突片部64は、第1突片部62と同様に、基材10のドア設置部12に当接すると倒伏的に弾性変形し、該ドア設置部12に密着すると共に、取付枠部54の裏面54Aにも密着するようになっている。
【0022】
なお、第1突片部62および第2突片部64が、湾曲状を呈していることにより、エアバッグドア50の成形時にアンダーカット形状となる。しかし、前述したように、エアバッグドア50が熱可塑性エラストマから形成されていて、第1突片部62および第2突片部64が弾力性を有しているので、脱型時に両突片部62,64が適宜弾性変形することで、インジェクション成形型(図示せず)からのエアバッグドア50の脱型に支障を来たすことがない。
【0023】
第1突片部62および第2突片部64は、図5に示すように、エアバッグドア50を基材10に組付ける際に各係止爪部58が基材10に係止されると、基材10のドア設置部12に当接して弾性変形する。すなわち、第1突片部62および第2突片部64は、基材10に対するエアバッグドア50の組付け時に、長手方向の全周に亘ってドア設置部12に密着するようになる。従って、基材10のドア設置部12とエアバッグドア50の取付枠部54との間において、第1突片部62と第2突片部とで挟まれた部位に、前述した閉塞空間Sが画成される。
【0024】
また第1突片部62および第2突片部64は、図6に示すように、発泡成形型Mにより基材10およびエアバッグドア50の表面側において発泡体30を発泡成形する際には、発泡体30の発泡圧により、該エアバッグドア50が基材10側へ押されるようになる。これにより、第1突片部62および第2突片部64が夫々更に弾性変形して押し潰されることで、取付枠部54が基材10の側へ移動する。取付枠部54が基材10側へ近接移動すると閉塞空間Sの容積が減少するため、該閉塞空間S内に残留している空気が、第2突片部64と基材10との当接部分を介して開口部14へ押し出される。
【0025】
そして、発泡体30の発泡成形が完了した後に、インストルメントパネルIPを発泡成形型Mから脱型すると、押し潰された第1突片部62および第2突片部64の弾力性により、エアバッグドア50を基材10から離間させる力が発現する。しかし、閉塞空間Sの容積が拡大しそうになると、該閉塞空間S内が負圧となって吸盤効果が発現する。このため、取付枠部54が基材10に吸着された状態に保持されると共に、該エアバッグドア50の変形も規制される。
【0026】
従って、第1実施例のインストルメントパネルIPでは、基材10および該基材10に組付けたエアバッグドア50の表面側で発泡体30を発泡成形する際に、基材10と取付枠部54との間に第1突片部62と第2突片部64とで挟まれた閉塞空間Sが画成される。そして、エアバッグドア50に発泡圧が作用すると、閉塞空間Sの容積が減少して、該閉塞空間S内の空気が外部へ押し出される。これにより、閉塞空間S内を負圧とし得る。従って、発泡体30の発泡成形後においては、閉塞空間Sにより吸盤効果が発現して、エアバッグドア50が基材10に吸着された状態に保持され、該エアバッグドア50の変形を防止できる。これにより、図1に示すように、インストルメントパネルIPの意匠面が変形しないので、該インストルメントパネルIPの外観品質低下を防止し得る。また、閉塞空間Sが裏面54Aの外郭縁に沿って画成されているので、該エアバッグドア50の外郭部分が全周に亘って基材10に密着するようになり、エアバッグドア50が基材10に好適に組付けられる。
【0027】
また、取付枠部54における裏面54Aの外郭縁に沿って延在する第1突片部62が、該エアバッグドア50の全周に亘って基材10に当接しているため、発泡成形中の発泡体30が、基材10とエアバッグドア50との間に流入し難くなる。更に、第1突片部62の内側に延在する第2突片部64が、開口部14の全周に亘って基材10に当接しているため、万一、発泡成形中の発泡体30が基材10と取付枠部54との間に流入しても、流入した該発泡体30を第2突片部64で食い止めることができる。従って、発泡体30が、開口部14を介して基材10の裏側へ漏出することを防止し得る。
【0028】
(第2実施例)
図7および図8は、第2実施例のインストルメントパネルIPにおいて、エアバッグドア50における取付枠部54の裏面54Aに突設した当接部60を示している。すなわち、第2実施例のインストルメントパネルIPは、第1実施例のインストルメントパネルIPと比較して、エアバッグドア50に設けた当接部60の形態を変更したものである。第2実施例の当接部60は、取付枠部54の裏面から夫々突出して一重の環状をなす複数の環状突片部66からなり、各環状突片部66の内側に閉塞空間Sを画成するようにしたものである。各環状突片部66は、取付枠部54の裏面54Aにおいて、該取付枠部54の周方向へ所要間隔毎に複数(第2実施例では12個)が形成されており、各環状突片部66の内側に閉塞空間Sが夫々画成される。
【0029】
各環状突片部66は、図8に示すように、短手方向で破断した断面形状が、取付枠部54に連接される基部66A側から先端部66Bに向かうにつれて漸次薄くなる先細状を呈すると共に、先端部66Bが基部66Aより外側に偏倚した湾曲状を呈している。そして各環状突片部66は、前述した熱可塑性エラストマから形成されるエアバッグドア50に一体的に形成されるため、基材10のドア設置部12に当接すると倒伏的に弾性変形し、該ドア設置部12に密着すると共に、取付枠部54の裏面54Aにも密着するようになっている。
【0030】
従って、基材10に対するエアバッグドア50の組付け時には、各環状突片部66が全周に亘ってドア設置部12に密着し、基材10のドア設置部12とエアバッグドア50の取付枠部54との間において各環状突片部66の内側に、閉塞空間Sが夫々画成される。そして、発泡体30の発泡成形時には、発泡体30の発泡圧によりエアバッグドア50が基材10側へ押されると、各環状突片部66が更に弾性変形して押し潰される。このとき、各閉塞空間Sの容積が減少するため、該閉塞空間S内に残留している空気が開口部14へ押し出される。
【0031】
そして、発泡体30が硬化して発泡成形が完了した後に、インストルメントパネルIPを発泡成形型Mから脱型すると、押し潰された第1突片部62および第2突片部64の弾力性により、エアバッグドア50を基材10から離間させる力が発現する。しかし、閉塞空間Sの容積が拡大しそうになると該閉塞空間S内が負圧となって吸盤効果が発現する。このため、取付枠部54が基材10に吸着した状態に保持され、エアバッグドア50が基材10から離間移動することがないと共に、該エアバッグドア50の変形も規制される。
【0032】
従って、第2実施例のインストルメントパネルIPでは、基材10および該基材10に組付けたエアバッグドア50の表面側で発泡体30を発泡成形する際に、基材10と取付枠部54との間に各環状突片部66に囲まれた複数の閉塞空間Sが画成されると共に、発泡圧により各閉塞空間Sが負圧となる。従って、発泡体30の発泡成形後においては、閉塞空間Sにより吸盤効果が発現して、エアバッグドア50が基材10に吸着された状態に保持されるので、該エアバッグドア50の変形を防止できる。これにより、図1に示すように、インストルメントパネルIPの意匠面が変形しないので、該インストルメントパネルIPの外観品質低下を防止し得る。
【0033】
(変更例)
(1)図9は、第1実施例の変更例を示す断面図であって、第1突片部62および第2突片部64に隣接する部位に、各々の突片部62,64に沿って延在する溝部70,70を設けたものである。第1突片部62に隣接して設けた溝部70には、基材10に当接して弾性変形した該第1突片部62が収容され得るようにし、第2突片部64に隣接して設けた溝部70には、基材10に当接して弾性変形した該第2突片部64が収容され得るように構成したものである。これにより、エアバッグドア50に発泡圧が加わった際には、第1突片部62および第2突片部64が対応の溝部70,70内へ夫々収容されることで、エアバッグドア50の取付枠部54を、基材10に密着する状態まで近接させ得る。なお、第2実施例における環状突片部66に隣接して溝部を設けても、同様の効果が得られる。
(2)図10は、図8に示す第2実施例の当接部60を基本として、各環状突片部66の間に、裏面54Aの外郭縁に沿って延在する外郭突片部68を夫々設けたものである。各外郭突片部68は、閉塞空間Sを画成するために寄与するものではない。しかし、各外郭突片部68を設けたことにより、裏面54Aの外郭縁の全周に亘って突片部(環状突片部66および外郭突片部68)が形成されることになり、第1実施例の第1突片部62と同様に、発泡成形中の発泡体30が基材10とエアバッグドア50との間に進入することを阻止し得る効果が得られる。
(3)第2実施例では、合計12個の環状突片部66を設けた場合を例示したが、この環状突片部66の個数はこれに限定されず、これより多くても少なくてもよい。また、裏面54Aに全域に延在する1つの環状突片部66を設けるようにしてもよい。
(4)各実施例では、基材10にエアバッグドア50を組付けた際に、当接部60(第1突片部62、第2突片部64、環状突片部66)が基材10のドア設置部12に当接して弾性変形する場合を例示したが、この組付け時においては、当接部60が基材10に当接することは必須ではない。すなわち、吸盤効果による基材10に対する当接部60の当接は、少なくとも基材10およびエアバッグドア50の表面側において発泡体30を発泡成形する際だけでよく、組付け時には当接部60が基材10に当接していなくてもよい。
【0034】
本願が対象とする発泡体付き成形部材は、各実施例で例示したインストルメントパネルIPに限定されるものではなく、これ以外の車両内装部材(フロアコンソール、ドアパネル等)や、椅子やソファ等の家具等も対象とされる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】第1実施例のインストルメントパネルを、エアバッグドアを組付けた部位の要部を拡大して示す断面図である。
【図2】基材に設けた設置部と、エアバッグドアとを示す斜視図である。
【図3】エアバッグドアの背面図である。
【図4】図3のIV−IV線断面図である。
【図5】エアバッグドアを基材に組付けた状態を示す部分断面図である。
【図6】基材とエアバッグドアとの表面側で発泡体を発泡成形している状態を示す部分断面図である。
【図7】第2実施例におけるエアバッグドアの背面図である。
【図8】図7のVIII−VIII線断面図である。
【図9】変更例に係るエアバッグドアの要部を示す拡大断面図である。
【図10】第2実施例の変更例に係るエアバッグドアの背面図である。
【図11】発泡体付き成形部材であるインストルメントパネルを、エアバッグドアの配設部位で破断して示す断面図である。
【図12】基材に設けた設置部とエアバッグドアとの従来例を示す斜視図である。
【図13】基材にエアバッグドアを組付ける状態を示す断面図であって、該基材とエアバッグドアとの間に間隙が形成されることを示している。
【図14】(a)は、基材とエアバッグドアとの表面側で発泡体を発泡成形する際に、該発泡体の発泡圧によりエアバッグドアが基材に押し付けられることを示す断面図であり、(b)は、発泡体の発泡成形後にエアバッグドアが元の形状に変形することで、インストルメントパネルの意匠面が膨出変形することを示す断面図である。
【符号の説明】
【0036】
10 基材,30 発泡体,50 エアバッグドア(付属部材),54A 裏面,60 当接部
62 第1突片部,64 第2突片部,66 環状突片部,S 閉塞空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面側に付属部材が組付けられた基材と、前記基材および付属部材の前記表面側で発泡成形して両部材に積層された発泡体とを備える発泡体付き成形部材において、
弾力性を有すると共に、前記付属部材の前記基材と対向する裏面に突設され、前記基材に当接して弾性変形したもとで基材と付属部材との間に閉塞空間を画成する当接部を備えた
ことを特徴とする発泡体付き成形部材。
【請求項2】
前記当接部は、前記裏面の外郭縁に沿って延在する第1突片部と、前記第1突片部の内側で該第1突片部と所要間隔をもって延在する第2突片部とで二重の環状をなし、第1突片部と第2突片部との間に前記閉塞空間を画成する請求項1記載の発泡体付き成形部材。
【請求項3】
前記当接部は、前記裏面に配置されて一重の環状をなす環状突片部からなり、環状突片部内に前記閉塞空間を画成する請求項1記載の発泡体付き成形部材。
【請求項4】
前記閉塞空間が負圧となる請求項1〜3の何れか一項に記載の発泡体付き成形部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−69854(P2010−69854A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−243193(P2008−243193)
【出願日】平成20年9月22日(2008.9.22)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】