説明

発泡固形潤滑剤封入軸受

【課題】潤滑剤保持力に優れ、長寿命で高速回転でも運転が可能であるとともに、製造工程を比較的簡単にすることができ低コスト化の要望に応じ得る耐熱、耐久性に優れる発泡固形潤滑剤封入軸受を提供する。
【解決手段】軸受31内部に発泡固形潤滑剤37が封入されてなる発泡固形潤滑剤封入軸受であって、上記発泡固形潤滑剤37は、潤滑成分と、高分子主鎖が炭化水素から構成され、該主鎖末端に水酸基価が25〜110 mgKOH/gとなる量の水酸基を有する液状ゴムと、分子内にイソシアネート基を有する有機化合物である硬化剤と、発泡剤とを含む混合物を発泡・硬化させてなり、上記液状ゴムと硬化剤との割合は、液状ゴムに含まれる水酸基と硬化剤に含まれるイソシアネート基とが当量比で(OH/NCO)=1/(1.0〜2.0)の範囲であり、混合物全体に対して、上記潤滑成分を40〜80 重量%、上記液状ゴムを5〜45重量%含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は発泡固形潤滑剤を封入した発泡固形潤滑剤封入軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車や産業用機械に代表されるようなほとんどの機械の摺動部や回転部において潤滑剤が使用されている。通常、転がり軸受は、その内部にグリースを充填して転動体と軸受内外輪および保持器相互の摩擦面を潤滑しており、充填されたグリースが外部へ流出しないように、また、その内部へ塵や水分等が侵入しないように、シール等の密封装置が設けられている。しかし、密封装置付きの転がり軸受であっても、グリースを完全に密封することは困難であり、長時間使用すると徐々に流出したり、軸受内に外部から浸入した水分によってグリースが徐々に劣化することがある。このようなグリースの密封不良および劣化防止に関する問題点を解決するべく、潤滑油を増ちょうさせて保形性を持たせたグリースや、液体潤滑剤を保持してその飛散や垂れ落ちを防止できる固形潤滑剤も知られている。
【0003】
例えば、潤滑油やグリースに、超高分子量ポリオレフィン、またはウレタン樹脂およびその硬化剤を混合し、樹脂の分子間に液状の潤滑成分を保持させて徐々に滲み出る物性を持たせた固形潤滑剤が知られている(特許文献1〜特許文献3参照)。
また、潤滑剤の存在下でポリウレタン原料であるポリオールとジイソシアネートとを潤滑成分中で反応させた自己潤滑性のポリウレタンエラストマーが知られている(特許文献4参照)。
また、樹脂成分である固形成分を発泡体化し、これに潤滑油を後含浸させ、軸受内部の摩擦接触部の近傍に設ける含油発泡体が知られている(特許文献5参照)。
【0004】
これらの固形潤滑剤は、軸受に封入して固化させると、潤滑油を徐々に滲み出させるものであり、これを用いると潤滑油の補充のためのメンテナンスが不要になり、水分の多い厳しい使用環境や強い慣性力の働く環境などでも軸受寿命の長期化に役立てることを狙ったものである。
【0005】
また、上記した従来技術による固形潤滑剤を充填した転がり軸受では、寿命が短い、高速回転においては焼き付きやすい、そして発熱が大きくなるために母材である樹脂成分が溶融してしまうために使用できないという欠点がある。また、フルパック仕様においては、前述の固形潤滑剤を軸受内で固化させた後冷却する過程において、固形潤滑剤が収縮するために潤滑剤自身が転動体を抱きこんでしまい、回転トルクが大きくなりやすく発熱しやすいという問題点がある。
また、このような固形潤滑剤を製造する工程では、潤滑油やグリースを確実に含浸させるために多くの製造工程が必要になり、これでは低コスト化の要求に応えることも困難である。
【0006】
また、ポリオール成分とイソシアネート成分とで生成されるポリウレタン樹脂内に潤滑油を含ませた潤滑性組成物が知られている(特許文献6〜特許文献8参照)。
また、瀝青などによる油展が可能な原料として水酸基末端ポリジエン化合物がこれまでに報告されている。(特許文献9参照)
しかしながら、圧縮・屈曲などの外部応力の働く部位において使用できるようなゴム弾性を有し、潤滑剤の保持性が高く、かつ大きな変形を許容する発泡固形潤滑剤は知られていない。
【特許文献1】特開平6−41569号公報
【特許文献2】特開平6−172770号公報
【特許文献3】特開2000−319681号公報
【特許文献4】特開平11−286601号公報
【特許文献5】特開平9−42297号公報
【特許文献6】特開昭60−173010号公報
【特許文献7】特開昭62−241997号公報
【特許文献8】特開平8−3259号公報
【特許文献9】特開昭58−189243号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような問題点に対処するためになされたものであり、潤滑剤保持力に優れ、長寿命で高速回転でも運転が可能であるとともに、製造工程を比較的簡単にすることができ低コスト化の要望に応じ得る発泡潤滑剤封入軸受を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の発泡固形潤滑剤封入軸受は、軸受内部に発泡固形潤滑剤が封入されてなる発泡固形潤滑剤封入軸受であって、上記発泡固形潤滑剤は、潤滑成分と、分子内に水酸基を有する液状ゴムと、硬化剤と、発泡剤とを含む混合物を発泡・硬化させてなり、上記潤滑成分は炭化水素系潤滑油および炭化水素系グリースから選ばれた少なくとも1つの潤滑成分であり、上記液状ゴムは高分子主鎖が炭化水素から構成され、該主鎖末端に水酸基価が 25 〜 110 mgKOH/g となる量の水酸基を有する液状ゴムであり、上記硬化剤は分子内にイソシアネート基を有する有機化合物であり、上記発泡剤が水であり、上記液状ゴムと上記硬化剤との割合は、上記液状ゴムに含まれる水酸基と上記硬化剤に含まれるイソシアネート基とが当量比で(OH/NCO)=1/( 1.0 〜 2.0 )の範囲であり、上記混合物は、混合物全体に対して、上記潤滑成分を 40 〜80 重量%、上記液状ゴムを 5 〜45 重量%含むことを特徴とする。
【0009】
上記液状ゴムがブタジエンもしくはイソプレンの重合体の主鎖末端に水酸基を有する数平均分子量 1000〜3500 の水酸基末端ジエン系重合体、または該ジエン系重合体を水添処理した変性水酸基末端ジエン系重合体であることを特徴とする。
【0010】
上記分子内にイソシアネート基を持つ有機化合物は、分子内に2個以上のイソシアネート基を有し、イソシアネート基の割合が 2.5 〜 5.0 NCO%からなるプレポリマーであるか、または、芳香族ポリイソシアネート、特にトリレンジイソシアネートであることを特徴とする。
上記潤滑成分と、分子内に水酸基を有する液状ゴムと、硬化剤と、発泡剤とを含む混合物は、少なくとも転動体の周囲に封入された後に、発泡・硬化されてなることを特徴とする。
【0011】
本発明の発泡固形潤滑剤封入軸受は、転がり軸受またはすべり軸受の内部に上記発泡固形潤滑剤が封入されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の発泡固形潤滑剤封入軸受は、発泡固形潤滑剤を軸受内部(保持器と内・外輪との空間、保持器のない転がり軸受における内・外輪間の空間など)に封入する。この発泡固形潤滑剤は、潤滑成分と、分子内に水酸基を有する炭化水素系液状ゴムと、硬化剤と、発泡剤とを含む混合物を発泡・硬化させるので、潤滑成分が発泡・硬化した固形成分内に吸蔵される。このため、軸受の回転運動に伴う遠心力や圧縮、屈曲、膨張などの外的な応力や毛細管現象によって発泡固形潤滑剤中より外部に潤滑油が徐放されるので、高速回転でも運転が可能であり、潤滑剤保持力に優れ、軸受の小型化、高性能化および長寿命化が図れる。
【0013】
発泡固形潤滑剤は、外部からの塵・水分等の侵入に対してはシール部材の役割をも果たす。その上、多孔質な部分を多く持つので、軸受の軽量化の点でも有利である。
また、組み立て後に潤滑剤を封入する必要がないので、生産効率が向上し、安価に製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の発泡固形潤滑剤封入軸受に用いる固形潤滑剤として、潤滑剤保持力に優れ、潤滑油滲み出し量を必要最小限に抑制できる固形潤滑剤について鋭意検討の結果、潤滑成分と、分子内に水酸基を有する液状ゴムと、硬化剤と、発泡剤とを含む混合物を発泡・硬化させて発泡固形潤滑剤を得た。この発泡固形潤滑剤は、分子内に水酸基を有する液状ゴムと、硬化剤とから構成されるウレタン樹脂が発泡・硬化して多孔質化された固形物であり、かつ潤滑成分を樹脂内部に吸蔵してなる発泡固形潤滑剤である。なお、潤滑成分が発泡・硬化した固形成分内に吸蔵されるとは、後述する潤滑油やグリースなどの液体・半固体状の潤滑成分が、発泡・硬化した固形成分中に分子内に水酸基を有する液状ゴムや硬化剤と反応することなく、化合物にならないで含まれることをいう。
この発泡固形潤滑剤は潤滑油などの保持力に優れ、外力による変形を受けても潤滑油滲み出し量を必要最小限に抑制し、かつ安価に製造でき、軸受の必要箇所にのみ封入でき、軸受を効率よく製造できることがわかった。本発明はこのような知見に基づくものである。
【0015】
本発明の発泡固形潤滑剤封入軸受は、封入した発泡固形潤滑剤の液状ゴム内に潤滑成分を吸蔵させるので、液状ゴムの柔軟性により、例えば圧縮、膨張、屈曲、ねじりなどの外力による変形により潤滑剤を滲み出させて液状ゴムの分子間から外部に徐放できる。この際、滲み出す潤滑油量は、外力の大きさに応じて弾性変形する程度を液状ゴムの選択などによって変えることにより、必要最小限にすることができる。なお、本発明において「吸蔵」とは、液体・半固体状の潤滑成分が他の配合成分と反応することなく、発泡・硬化した固形成分(液状ゴム)内に化合物にならないで含まれることをいう。
また、本発明の軸受に用いる発泡固形潤滑剤において液状ゴムは、発泡により表面積が大きくなっており、滲み出した余剰の潤滑油を再び発泡体の気泡内に一時的に保持することもできて滲み出す潤滑油量は安定しており、また液状ゴム内に潤滑剤を吸蔵させるとともに気泡内に含浸させることによって非発泡の状態より潤滑油の保持量も多くなる。
【0016】
その上、本発明の軸受に用いる発泡固形潤滑剤は、非発泡体と比較して屈曲時に必要なエネルギーが非常に小さく、潤滑油を高密度に保持しながら柔軟な変形が可能である。よって、該発泡固形潤滑剤を固化させた後冷却する過程において、発泡固形潤滑剤が収縮し転動体を抱き込んだとしても屈曲・変形時に必要なエネルギーが小さいために容易に変形することができ、回転トルクが大きくなるという問題を防ぐことができる。また、発泡部分すなわち多孔質な部分を多く持つため、軽量化の点でも有利である。
また、潤滑成分と、分子内に水酸基を有する液状ゴムと、硬化剤と、発泡剤とを含む混合物を発泡・硬化させるだけであるので、特別な設備も不要であり、任意の場所に充填して成形することが可能である。
また、上記混合物の配合成分の配合量をコントロールすることにより発泡固形潤滑剤の密度を変化させることができる。
【0017】
本発明の軸受に使用する発泡固形潤滑剤に用いられる固形成分には耐熱性および柔軟性に優れ、低コスト化が可能となるウレタン樹脂を用いるのが好ましい。ウレタン樹脂を形成する水酸基含有成分としては、分子内に水酸基を有する液状ゴムが好ましく、この液状ゴムは高分子主鎖が炭化水素から構成され、該主鎖末端に水酸基価が 25 〜 110 mgKOH/g となる量の水酸基を有する液状ゴムであることが好ましい。水酸基価が 25 mg KOH/g 未満では、発泡・硬化が十分でなく、水酸基価が 110 mg KOH/g をこえると、発泡固形潤滑剤の弾力性が失われる場合がある。
この液状ゴムは、ブタジエンもしくはイソプレンの重合体の主鎖末端に水酸基を有する数平均分子量 1000〜3500 の水酸基末端ジエン系重合体、または該ジエン系重合体を水添処理した変性水酸基末端ジエン系重合体を用いることができる。
水酸基末端液状ポリブタジエンとしては、poly-bd R45HT(出光興産社製)、poly-bd R15HT(出光興産社製)、NISSO−PB G−1000、G−2000、G−3000(日本曹達社製)が挙げられ、水酸基末端液状ポリイソプレンとしては、poly-ip(出光興産社製)が挙げられ、水添処理した水酸基末端ポリジエン化合物としては、エポール(出光興産社製)、NISSO−PB GI−1000、GI−2000、GI−3000(日本曹達社製)等が挙げられる。
【0018】
また、これら水酸基末端ポリジエン化合物または水添処理した水酸基末端ポリジエン化合物の末端水酸基をイソシアネート基やエポキシ基などで一部変性した水酸基末端ポリジエン化合物または水添処理した水酸基末端ポリジエン化合物も水酸基が末端に含まれれば使用することができる。製造された発泡体の物性を制御するなどの目的でこれら化合物を2種類以上混合して用いてもよい。
【0019】
上記水酸基末端ポリジエン系重合体または水添処理した水酸基末端ポリジエン系重合体は、後述する炭化水素から構成されるパラフィン系やナフテン系の鉱物油からなる潤滑成分と分子構造が類似するので、潤滑成分を構成する分子との化学的親和性に優れ、水酸基末端ポリジエン系重合体または水添処理した水酸基末端ポリジエン系重合体と潤滑成分分子とが比較的弱い相互作用によって絡み合っていると考えられる。そのため多くの潤滑成分をその水酸基末端ポリジエン系重合体または水添処理した水酸基末端ポリジエン系重合体の分子内に含浸させることが可能であり、高い潤滑成分保持性を発揮することができる。これに熱や遠心力などの強い力を加えることで、水酸基末端ポリジエン系重合体または水添処理した水酸基末端ポリジエン系重合体と潤滑成分の相互作用が壊され、潤滑成分を徐放させることができる。
【0020】
本発明に使用できる硬化剤として、分子内にイソシアネート基を有する有機化合物を挙げることができ、液状ゴム内の水酸基と反応し、分子鎖を延長させ、または架橋させるイソシアネート化合物であれば、特に制限なく使用できる。好ましいイソシアネート化合物としては、ポリイソシアネート類を挙げることができる。ポリイソシアネート類は後述する発泡剤となる水と反応して気体を発生させることができるので特に好ましい。
ポリイソシアネート類としては、ポリイソシアネートおよび/または分子内に2個以上のイソシアネート基を有するプレポリマーが挙げられる。
【0021】
ポリイソシアネート類は芳香族、脂肪族、または脂環族ポリイソシアネート類を挙げることができる。
芳香族ポリイソシアネート類としては、トリレンジイソシアネート(以下、TDIと記す)、ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、MDIと記す)、TDIの多量体、MDIの多量体、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、フェニレンジイソシアネート、ジフェニレンジイソシアネート等が挙げられる。
脂肪族ポリイソシアネート類としては、オクタデカメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、へキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
脂環族ポリイソシアネート類としては、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等が挙げられる。
また、上記ポリイソシアネート類とトリメチロールプロパンなどのポリオールとの付加物も使用できる。
液状ゴムの末端官能基である水酸基との反応を高温度で行なう場合は、フェノール類、ラクタム類、アルコール類、オキシム類などのブロック剤でイソシアネート基をブロックしたブロックイソシアネート等を使用することができる。
【0022】
水酸基末端ポリジエン系重合体と反応させる場合、ポリイソシアネート類の中で芳香族ポリイソシアネート類が好ましく、更には水酸基末端ポリジエン系重合体等との発泡性および反応性に優れるTDIが好ましい。
【0023】
分子内に2個以上のイソシアネート基を有するプレポリマーとしては、イソシアネート基の割合が 2.5 〜 5.0 NCO%からなるプレポリマーであれば使用できる。なお、NCO%は、プレポリマー中におけるNCO基の重量%である。 2.5 〜 5.0 NCO%のプレポリマーは水酸基末端ポリジエン系重合体等と反応して弾力性に富んだウレタンを得ることができる。
プレポリマー類には重合させるモノマーの種類によりPPG系、PTMG系、エステル系、カプロラクトン系などに分類される。PPG系にはタケネートL−1170(三井化学ポリウレタン社製)、L−1158(三井化学ポリウレタン社製)があり、PTMG系にはコロネート4090(日本ポリウレタン社製)がある。また、エステル系としてはコロネート4047(日本ポリウレタン社製)などがあり、カプロラクトン系にはタケネートL-1350(三井化学ポリウレタン社製)、タケネートL-1680(三井化学ポリウレタン社製)、サイアナプレン7−QM(三井化学ポリウレタン社製)、プラクセルEP1130(ダイセル化学工業社製)などを挙げることができる。
上記プレポリマーは、目的に応じて2種類以上を混合して用いることができる。
【0024】
末端水酸基を有する水酸基末端ポリジエン系重合体または水添処理した水酸基末端ポリジエン系重合体とイソシアネート基を有するイソシアネート化合物との配合割合は、水酸基(−OH)とイソシアネート基(−NCO)との当量比で(OH/NCO)=1/( 1.0 〜 2.0 )の範囲が好ましく、特に優れた発泡性および弾力性を考慮すると、(OH/NCO)=1/( 1.1 〜 1.9 )の範囲が好ましい。(OH/NCO)が 1/ 1.0 より大きいときには架橋するイソシアネート基が不足するため硬化が十分でなくなる。また、(OH/NCO)が 1/ 2.0 より小さい場合にはイソシアネート基が過剰なため架橋密度が大きくなり、ゴム弾性が小さくなり、変形を許容できないなどの問題を生じることがある。
【0025】
本発明の軸受に用いる発泡固形潤滑剤を発泡させる手段である発泡剤としては、原料にイソシアネート化合物を用いることから、イソシアネート化合物と反応して二酸化炭素ガスを発生させる水を用いることが好ましい。
【0026】
また、このような反応を伴う発泡を用いる場合には必要に応じて触媒を使用することが好ましく、例えば、3級アミン系触媒や有機金属触媒などを用いることができる。使用する3級アミン系触媒としてはモノアミン類、ジアミン類、トリアミン類、環状アミン類、アルコールアミン類、エーテルアミン類などが挙げられる。また、有機金属触媒としてはスタナオクタエート、ジブチルチンジアセテート、ジブチルチンジラウレート、ジブチルチンメルカプチド、ジブチルチンチオカルボキシレート、ジブチルチンマレエート、ジオクチルチンジメルカプチド、ジオクチルチンチオカルボキシレートなどが挙げられる。また、反応のバランスを整えるなどの目的でこれら複数種類を混合して用いてもよい。
【0027】
本発明に使用できる潤滑成分は、発泡体を形成する固形成分を溶解しないものであれば使用することができる。潤滑成分としては、炭化水素系潤滑油、炭化水素系グリース、または炭化水素系潤滑油と炭化水素系グリースとの混合物が挙げられる。
炭化水素系潤滑油としては、パラフィン系やナフテン系の鉱物油、炭化水素系合成油、GTL基油等が挙げられる。これらは単独でも混合油としても使用できる。
炭化水素系グリースは炭化水素油を基油して増ちょう剤を加えたものであり、基油としては上述の炭化水素系潤滑油を挙げることができる。増ちょう剤としては、リチウム石けん、リチウムコンプレックス石けん、カルシウム石けん、カルシウムコンプレックス石けん、アルミニウム石けん、アルミニウムコンプレックス石けん等の石けん類、ジウレア化合物、ポリウレア化合物等のウレア系化合物が挙げられるが、特に限定されるものではない。
ジウレア化合物は、例えばジイソシアネートとモノアミンの反応で得られる。ジイソシアネートとしては、フェニレンジイソシアネート、ジフェニルジイソシアネート、フェニルジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、オクタデカンジイソシアネート、デカンジイソシアネート、へキサンジイソシアネート等が挙げられ、モノアミンとしては、オクチルアミン、ドデシルアミン、へキサデシルアミン、オクタデシルアミン、オレイルアミン、アニリン、p−トルイジン、シクロヘキシルアミン等が挙げられる。ポリウレア化合物は、例えば、ジイソシアネートとモノアミン、ジアミンとの反応で得られる。ジイソシアネート、モノアミンとしては、ジウレア化合物の生成に用いられるものと同様のものが挙げられ、ジアミンとしては、エチレンジアミン、プロパンジアミン、ブタンジアミン、ヘキサンジアミン、オクタンジアミン、フェニレンジアミン、トリレンジアミン、キシレンジアミン等が挙げられる。
【0028】
上記潤滑成分には、炭化水素系合成ワックス、ポリエチレンワックス、高級脂肪酸エステル系ワックス、高級脂肪酸アミド系ワックス、ケトン・アミン類、水素硬化油などを混合して使用することができる。これらのワックスに油を混合してもよく使用する油成分としては上述の潤滑油と同様のものを用いることができる。
【0029】
本発明の軸受に封入する発泡固形潤滑剤は、上記潤滑成分と、液状ゴムと、硬化剤と、発泡剤とを含む混合物を発泡・硬化させて得られる。
上記潤滑成分の配合割合は、混合物全体に対して、 40 重量%〜80 重量%である。潤滑成分が 40 重量%未満であると、潤滑油などの供給量が少なく発泡固形潤滑剤としての機能を発揮できず、80 重量%より多いときには固化しなくなる。
上記液状ゴムの配合割合は、混合物全体に対して、 5 重量%〜45 重量%、好ましくは 9 重量%〜42 重量%である。5 重量%より少ないときは固化しないため発泡固形潤滑剤としての機能を持たず、45 重量%より多いときには潤滑剤の供給が少なく、発泡固形潤滑剤としての機能を持たない。
【0030】
上記硬化剤の配合割合は、液状ゴムの配合量と発泡倍率により、上記発泡剤の配合割合は、後述する発泡倍率との関係でそれぞれ定まる。すなわち、硬化剤量は液状ゴムの水酸基当量と水の当量との関係で定まる。
【0031】
本発明の軸受に用いる発泡固形潤滑剤の発泡倍率は 1.1 倍〜 50 倍であることが好ましく、より好ましくは 1.1 倍〜10 倍である。発泡倍率 1.1 倍未満の場合は気泡体積が小さく、外部応力が加わったときに変形を許容できない。また、発泡固形潤滑剤が硬すぎるため、外部応力に追随した変形ができないなどの不具合がある。また、発泡倍率が 50 倍をこえる場合は外部応力に耐える強度を得ることが困難となり、破損や破壊に至ることがある。
【0032】
本発明の軸受に用いる発泡固形潤滑剤において、潤滑成分と、分子内に水酸基を有する液状ゴムと、硬化剤と、発泡剤とを含む成分を混合する方法は、特に限定されることなく、例えばヘンシェルミキサー、リボンミキサー、ジューサーミキサー、ミキシングヘッド等、一般に用いられる撹拌機を使用して混合することができる。
得られた混合物は発泡・硬化する前は流動性があるので形状が複雑な軸受内の任意の部位にも容易に充填することが可能である。
【0033】
上記混合物は、市販のシリコーン系整泡剤などの界面活性剤を使用し、各原料分子を均一に分散させておくことが望ましい。また、この整泡剤の種類によって表面張力を制御し、生じる気泡の種類を連続気泡または独立気泡に制御することが可能となる。このような界面活性剤としては陰イオン系界面活性剤、非イオン系界面活性剤、陽イオン系界面活性剤、両性界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤などが挙げられる。
【0034】
本発明において発泡固形潤滑剤には必要に応じて顔料や帯電防止剤、難燃剤、防黴剤やフィラーなどの各種添加剤等を添加することができる。
さらに二硫化モリブデン、グラファイト等の固体潤滑剤、有機モリブデン等の摩擦調整剤、アミン、脂肪酸、油脂類等の油性剤、アミン系、フェノール系などの酸化防止剤、石油スルフォネート、ジノニルナフタレンスルフォネート、ソルビタンエステルなどの錆止め剤、イオウ系、イオウ−リン系などの極圧剤、有機亜鉛、リン系などの摩耗防止剤、ベンゾトリアゾール、亜硝酸ソーダなどの金属不活性剤、ポリメタクリレート、ポリスチレンなどの粘度指数向上剤などの各種添加剤を含んでいてもよい。
【0035】
本発明において潤滑油などの潤滑成分存在下で発泡反応と硬化反応とを同時に行なう反応型含浸法を用いることが、潤滑成分の高充填化と材料物性の高伸化を同時に両立させるためには望ましい。これは発泡体形成段階において発泡体に形成された気泡に潤滑剤が均一に含浸されるとともに、潤滑成分が発泡・硬化した固形成分内に吸蔵されることにより潤滑剤の高充填化と材料物性の高伸化が両立するものと考えられる。
これに対してあらかじめ発泡体を製造しておき、これに潤滑剤を含浸させる後含浸法では潤滑剤保持力が十分でなく、短時間で潤滑剤が放出され長期的に使用すると潤滑剤が供給不足となる。
【0036】
本発明において分子内に水酸基を有する液状ゴムを発泡により多孔質化する際に生成させる気泡は気泡が連通している連続気泡であることが好ましい。これは、外部応力によって潤滑成分を樹脂の表面から連続気泡を介して外部に直接供給するためである。気泡間が連通していない独立気泡の場合は固形成分中の潤滑油の全量が一時的に独立気泡中に隔離され気泡間での移動が困難となり、必要なときに外部に十分供給されない場合がある。
【0037】
発泡固形潤滑剤は、軸受内の少なくとも転動体の周囲に上記混合物を流し込んだ後、発泡・硬化させてもよく、また常圧で発泡・硬化した後に裁断や研削等で目的の形状に後加工し、軸受内に組み込むこともできる。
また、発泡固形潤滑剤は柔軟なため、フルパック仕様にしても回転トルクが大きくなりにくく、発熱を抑えることができる。また、外部からの塵や水分等の侵入に対してはシールの役割をも果たす。
形状が複雑な軸受内の任意の部位にも容易に充填することが可能であり、発泡成形体を得るための成形金型や研削工程等も不要であることから、本発明では、混合物を発泡・硬化前に軸受内に流し込み、軸受内において発泡・硬化させる方法を採用することが好ましい。該方法を採用することで、製造工程が簡易となり低コスト化が図れる。
【0038】
これらの発泡固形潤滑剤は、各種の周知な形式の軸受に封入することができる。例として、深溝玉軸受、アンギュラ玉軸受、スラスト玉軸受、円筒ころ軸受、針状ころ軸受、スラスト円筒ころ軸受、スラスト針状ころ軸受、円すいころ軸受、スラスト円すいころ軸受、自動調心玉軸受、自動調心ころ軸受、スラスト自動調心ころ軸受、すべり軸受などが挙げられる。また、これらの軸受に対して、シール部材またはシールド板の有無は問わず適用することができる。
すべり軸受に使用する場合、内輪と外輪の間に封入して用いる方法や、焼結金属に隣接する潤滑剤供給部材として用いることですべり軸受としての機能を発揮することができる。
【0039】
本発明の発泡固形潤滑剤封入軸受の一例を図5に基づいて説明する。図5は本発明の一実施例に係る深溝玉軸受の断面図である。
図5に示すように軸受31は内輪32と、内輪32と同心に配置された外輪33と、これら内、外輪間に介在する複数個の転動体34と、この複数個の転動体34を保持する保持器36と、外輪33等に固定されるシール部材35とにより構成される。少なくとも転動体34の周囲に上述の発泡固形潤滑剤37が封入される。
【0040】
本発明のすべり軸受の一例を図6および図7に基づいて説明する。図6は本発明の他の実施例に係るすべり軸受を用いたプリンターの駆動部を示す斜視図であり、図7は図6におけるすべり軸受の断面図である。
図6に示すようにプリンターの駆動部は、軸42と、すべり軸受44と、すべり軸受44によって軸支され、軸42上を直線移動するキャリッジ41とを備えてなる。
図7(a)および図7(b)に示すように、すべり軸受44は、軸42と摺動する焼結金属多孔体45と、該焼結金属多孔体45に隣接する部位に上述の発泡固形潤滑剤46とを備え、摺動面43(軸42の外周面)で摺動案内される。
【0041】
軸受への発泡固形潤滑剤の封入方法の例を、図1〜図3に基づいて説明する。
図1は、本発明の他の実施例に係るラジアル玉軸受(シール部材なし)への封入例を示す模式図である。図1に示すように、軸受外径7より大きい鉄板5もしくはそれに類似する治具の上に内輪2と、外輪3と、内、外輪間に介在する転動体4とを有する軸受1を置き、よく撹拌した発泡直前の発泡固形潤滑剤成分の混合物6を内輪2と、外輪3と、鉄板5とに囲まれた空間に流し込み、発泡・硬化させる。この場合、混合物6を軸受1内に流し込んだ後にさらに軸受1上部に軸受外径7より大きい鉄板5もしくはそれに類似する治具をかぶせてもよい。鉄板もしくは治具をかぶせる場合、軸受内での発泡固形潤滑剤の充填率が向上する。混合物6の発泡・硬化終了後に鉄板5もしくはそれに類似する治具を外して、発泡固形潤滑剤封入軸受を得る。
【0042】
図2は、本発明の他の実施例に係るラジアル玉軸受(シール部材付き)への封入例を示す模式図である。図2に示すように、内輪12と、外輪13と、内、外輪間に介在する転動体14と、片側のみに装着されたシール部材15を有する軸受11を、シール部材15を下側にして静置する。そして、よく撹拌した発泡直前の発泡固形潤滑剤成分の混合物16を軸受11に流し込み、発泡・硬化させる。この場合、図1と同様に軸受内での発泡固形潤滑剤の充填率を向上させるために、混合物16を軸受11内に流し込んだ後にさらに軸受11上部に軸受外径より大きい鉄板もしくはそれに類似する治具をかぶせてもよい。上側のシール部材は、充填率向上のための治具の代わりとして、発泡過程中に装着してもよいし、発泡・硬化が終わってから軸受11に装着してもよい。
【0043】
図3は本発明の他の実施例に係るスラスト玉軸受への封入例を示す模式図である。図4は、図3にて円筒治具の使用を示す模式図である。図3および図4に示すように、スラスト玉軸受21が収まる金型25を準備し、内輪22と外輪23と、内、外輪間に介在する転動体24とを有する軸受21を設置する。軸受21の内径側からよく撹拌した発泡直前の発泡固形潤滑剤成分の混合物26を軸受21に流し込み、内径と同径の円筒治具27を内径部に差し込み、発泡・硬化させる。混合物26が発泡・硬化し発泡固形潤滑剤28となった後、金型25と円筒治具27を外して、発泡固形潤滑剤封入軸受を得る。
また、軸受への潤滑剤の封入には、射出成型機等を用いることもできる。この場合、軸受は金型に装着され、スクリュー内で混合された発泡固形潤滑剤成分はノズルより軸受内へ封入される。
【0044】
本発明の発泡固形潤滑剤封入軸受において、発泡固形潤滑剤中に含浸された状態で含まれる潤滑成分は、外力による発泡体の変形によっても急激に滲み出すことがなく、潤滑成分を効率よく摺動面に滲み出させて用いることができる。その結果、該軸受は潤滑成分量が必要最小限でよく、長寿命で高速回転でも運転が可能である。
【実施例】
【0045】
以下に本発明の実施例を挙げ、本発明をさらに説明するが、本発明はこれにより何ら制限されるものではない。
実施例および比較例に用いた潤滑成分、液状ゴム、硬化剤、発泡剤、触媒を以下に示す。なお、( )内は表中での略号を表す。
潤滑成分
潤滑油(潤滑油):タービン100(新日本石油社製)
潤滑グリース(グリース):NTG2218M(協同油脂社製)
液状ゴム
水酸基末端ポリブタジエン(PBOH1):Poly-bd R45HT(水酸基価:46.6mgKOH/g、数平均分子量:2,800、出光興産社製)
水酸基末端ポリブタジエン(PBOH2):Poly-bd R15HT(水酸基価:102.7mgKOH/g 、数平均分子量:1,200、出光興産社製)
水酸基末端ポリイソプレン(PipOH):Poly-ip(水酸基価:46.6mgKOH/g 、数平均分子量:2,500、出光興産社製)
水添水酸基末端ポリイソプレン(HPipOH):エポール(水酸基価:50.5mgKOH/g 、数平均分子量:2,500、出光興産社製)
硬化剤
イソシアネート化合物(TDI):コロネートT−80(日本ポリウレタン社製)
エラストマ1(UE1):コロネート4090(4.4NCO% 日本ポリウレタン社製)
エラストマ2(UE2):プラクセルEP1130(3.3NCO% ダイセル化学工業社製)
発泡剤(発泡剤) イオン交換水
整泡剤(整泡剤) SRX298(東レダウ社製)
触媒(触媒) DM70(東ソー社製)
【0046】
実施例1〜実施例15
ポリテトラフルオロエチレン樹脂製容器(直径 70 mm×高さ 150 mm )内で硬化剤を除く配合材料を表1および表2に示す配合割合でよく混合した。次に硬化剤を加えて素早く混合した後、この混合物を、玉軸受6204(NTN社製)の内部空間に充填した。数秒後に発泡反応が始まり、常温で放置し硬化させて発泡固形潤滑剤封入軸受の試験片を得た。この試験片を用いて以下に示す実機耐久試験を行ない、実機での耐久性を評価した。
【0047】
<実機耐久試験>
得られた試験片について、Fa=Fr=67 N の荷重を負荷し、100℃で 10000 rpmで回転させ、回転軸を駆動している電動機の入力電流が制限電流を超過した時(回転トルクが始動トルクの 2 倍をこえた時)までの寿命時間を測定した。評価として、1000 時間を超える寿命を示したものに「○」印を付し、それ以外を「×」とした。結果を表1および表2に併記する。
【0048】
【表1】

【表2】

【0049】
比較例1〜比較例4
上述の実施例1〜15と同様に、硬化剤を除く配合材料を表3に示す配合割合でよく混合し、硬化剤を加えて混合した後、玉軸受6204の内部空間に充填した。比較例1では油と樹脂が分離し、うまく硬化できなかった。また、比較例2および比較例3では硬化せず、液状のままであった。比較例4では潤滑油の放出がほとんどなく、潤滑剤としての効能を発揮しなかった。結果を表3に併記する。
【0050】
比較例5
玉軸受6204に2液性ポリウレタン軟質フォーム(日本ポリウレタン社製、NEF−337・CEF−268)を封入し発泡させた後に、表3の配合となるように潤滑油を後含浸させた。実施例1と同様の条件で、実機耐久試験を行ったが、潤滑成分の過剰放出が起こり、固形潤滑剤としての効果を発揮しなかった。結果を表3に併記する。
【0051】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の発泡固形潤滑剤封入軸受は、潤滑剤保持力に優れ、長寿命で高速回転でも運転が可能であるので、撚線機、電動機器、印刷機、自動車部品、電装補機、建設機械等の各種産業用機械に用いられる発泡固形潤滑剤封入軸受として、特に自動車用電装・補機に用いられる発泡固形潤滑剤封入軸受として好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の他の実施例に係るラジアル玉軸受(シール部材なし)への封入例を示す模式図である。
【図2】本発明の他の実施例に係るラジアル玉軸受(シール部材付き)への封入例を示す模式図である。
【図3】本発明の他の実施例に係るスラスト玉軸受(シール部材なし)への封入例を示す模式図である。
【図4】図3にて円筒治具の使用を示す模式図である。
【図5】本発明の一実施例に係る深溝玉軸受の断面図である。
【図6】本発明の他の実施例に係るすべり軸受を用いたプリンターの駆動部を示す斜視図である。
【図7】図6におけるすべり軸受の断面図である。
【符号の説明】
【0054】
1、11 ラジアル玉軸受
2、12、22、32 内輪
3、13、23、33 外輪
4、14、24、34 ボール(転動体)
5 鉄板
6、16、26 発泡固形潤滑剤成分の混合物
7 軸受外径
15、35 シール部材
21 スラスト玉軸受
25 金型
27 円筒治具
28 発泡固形潤滑剤
31 深溝玉軸受
36 保持器
37 発泡固形潤滑剤
41 キャリッジ
42 軸
43 摺動面
44 すべり軸受
45 焼結金属多孔体
46 発泡固形潤滑剤


【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸受内部に発泡固形潤滑剤が封入されてなる発泡固形潤滑剤封入軸受であって、
前記発泡固形潤滑剤は、潤滑成分と、分子内に水酸基を有する液状ゴムと、硬化剤と、発泡剤とを含む混合物を発泡・硬化させてなり、
前記潤滑成分は炭化水素系潤滑油および炭化水素系グリースから選ばれた少なくとも1つの潤滑成分であり、
前記液状ゴムは高分子主鎖が炭化水素から構成され、該主鎖末端に水酸基価が 25 〜 110 mgKOH/g となる量の水酸基を有する液状ゴムであり、
前記硬化剤は分子内にイソシアネート基を有する有機化合物であり、
前記発泡剤が水であり、
前記液状ゴムと前記硬化剤との割合は、前記液状ゴムに含まれる水酸基と前記硬化剤に含まれるイソシアネート基とが当量比で(OH/NCO)=1/( 1.0 〜 2.0 )の範囲であり、
前記混合物は、混合物全体に対して、前記潤滑成分を 40 〜80 重量%、前記液状ゴムを 5 〜45 重量%含むことを特徴とする発泡固形潤滑剤封入軸受。
【請求項2】
前記液状ゴムがブタジエンもしくはイソプレンの重合体の主鎖末端に水酸基を有する数平均分子量 1000〜3500 の水酸基末端ジエン系重合体、または該ジエン系重合体を水添処理した変性水酸基末端ジエン系重合体であることを特徴とする請求項1記載の発泡固形潤滑剤封入軸受。
【請求項3】
前記分子内にイソシアネート基を持つ有機化合物は、分子内に2個以上のイソシアネート基を有し、イソシアネート基の割合が 2.5 〜 5.0 NCO%からなるプレポリマーであることを特徴とする請求項1または請求項2記載の発泡固形潤滑剤封入軸受。
【請求項4】
前記分子内にイソシアネート基を持つ有機化合物は、芳香族ポリイソシアネートであることを特徴とする請求項1または請求項2記載の発泡固形潤滑剤封入軸受。
【請求項5】
前記芳香族ポリイソシアネートがトリレンジイソシアネートであることを特徴とする請求項4記載の発泡固形潤滑剤封入軸受。
【請求項6】
前記混合物は、少なくとも転動体の周囲に封入された後に、発泡・硬化されてなることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか一項記載の発泡固形潤滑剤封入軸受。
【請求項7】
前記軸受は、転がり軸受であることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか一項記載の発泡固形潤滑剤封入軸受。
【請求項8】
前記軸受は、すべり軸受であることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか一項記載の発泡固形潤滑剤封入軸受。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−297366(P2008−297366A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−142669(P2007−142669)
【出願日】平成19年5月29日(2007.5.29)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】