説明

発泡樹脂パネル及びその成形型

【課題】薄肉パネル部の剛性が高い発泡樹脂パネルを提供する。
【解決手段】ソリッド層からなるスキン層19が表面に形成されると共に該スキン層19よりも樹脂密度が低い発泡層21が内部に一体に形成された厚肉パネル部15と、厚肉パネル部15に隣接して該厚肉パネル部15の成形時にスキン層19と共に一体に成形されたソリッド層からなる薄肉パネル部17とを備え、厚肉パネル部15と薄肉パネル部17との境界にスキン層19からなる段差部15aが板厚方向に形成されたボンネットフード1において、厚肉パネル部15及び薄肉パネル部17に対して段差部15aに跨るように補強リブ25を一体に形成し、該補強リブ25は、薄肉パネル部17側では表面から突出させ、厚肉パネル部15側では該厚肉パネル部15に食い込んでスキン層19と融合させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コアバック法(Moving Cavity法)により射出成形された発泡樹脂パネル及びその成形型に関し、特に発泡樹脂パネルの薄肉部の剛性を高める対策に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、成形型のキャビティ内に射出充填した繊維入りの熱可塑性樹脂が固化する過程で、キャビティ容積を拡大させて上記繊維入り熱可塑性樹脂を発泡させるコアバック法により、スキン層が表面に形成されると共に多数の空隙を有する発泡層が内部に形成された厚肉パネル部と、成形時にキャビティ容積を拡大せず、発泡層を有しないソリッド層からなる薄肉パネル部とを備えた発泡樹脂パネルが開示されている。そして、この発泡樹脂パネルでは、厚肉パネル部と薄肉パネル部との境界に形成されたスキン層からなる段差部に連結するように薄肉パネル部にソリッド層からなる補強リブが一体に突設されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−7941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図11は、発泡樹脂パネルの成形工程図であり、(a)は熱可塑性樹脂Rの充填状態を示し、(b)は厚肉パネル部成形用キャビティの容積拡大状態を示している。図12は、発泡樹脂パネル201の要部断面図である。
【0005】
上述のような補強リブを有する発泡樹脂パネルは、図11(a),(b)に示す成形型301を用いて成形される。この成形型301は、固定型303及び可動型305を備えている。固定型303の成形面には、パネル外面側を構成する外面樹脂層203が予め成形されている。可動型305は、厚肉パネル部205に対応する可動コア型307と、薄肉パネル部207に対応する固定コア型309とを有し、固定コア型309に補強リブ形成用の溝部309aが形成されている。
【0006】
そして、成形型301は、図11(a)に示すように、固定型303と可動型305とを型閉じして、外面樹脂層203と可動型305との間に形成されるキャビティ311内に熱可塑性樹脂Rを射出充填し、該熱可塑性樹脂Rが固化する過程で、図11(b)に示すように、可動コア型307を型開き方向に後退移動させてキャビティ容積を拡大することにより、該可動コア型307対応箇所の熱可塑性樹脂Rを発泡させ、スキン層209内部に発泡層211を有する厚肉パネル部205を成形する一方、上記固定コア型309対応箇所の熱可塑性樹脂Rはそのまま固化させてソリッド層からなる薄肉パネル部207及び補強リブ213を成形するようになっている。
【0007】
しかしながら、上述の如くコアバック法により発泡樹脂パネルを成形する手法では、キャビティ容積を拡大させる際、可動コア型307と固定コア型309との境界近傍で一足早く固化し始めたスキン層が突っ張り、当該スキン層近傍内部の熱可塑性樹脂Rの発泡による膨張を妨げる。このため、厚肉パネル部205の段差部205aを構成する熱可塑性樹脂R部分が可動コア型307の成形面から離れ、該段差部205aに連続する厚肉パネル部205のコーナー部分にいわゆるアールダレ現象が生じる。これにより、薄肉パネル部207に突設した補強リブ213と厚肉パネル部205の段差部205aとの間に隙間Sが形成される。このようにして得られた発泡樹脂パネル201では、図12に示すように、厚肉パネル部205の段差部205aと補強リブ213との連結部分が小さいので、補強リブ213が揺動しやすくて薄肉パネル部207の補強機能を充分に発揮できず、該薄肉パネル部207の剛性が満足に高められない。
【0008】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、薄肉パネル部の剛性が高い発泡樹脂パネルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明は、薄肉パネル部を補強する補強リブと厚肉パネル部との連結部分の構造を工夫したものであり、具体的には以下の解決手段を講じた。
【0010】
すなわち、第1の発明は、ソリッド層からなるスキン層が表面に形成されると共に該スキン層よりも樹脂密度が低い発泡層が内部に一体に形成された厚肉パネル部と、上記厚肉パネル部に隣接して該厚肉パネル部の成形時に上記スキン層と共に一体に成形されたソリッド層からなる薄肉パネル部とを備え、上記厚肉パネル部と上記薄肉パネル部との境界に上記スキン層からなる段差部が板厚方向に形成された発泡樹脂パネルであって、上記厚肉パネル部及び薄肉パネル部には、補強リブが上記段差部に跨るように一体に形成され、上記補強リブは、上記薄肉パネル部側では表面から突出し、上記厚肉パネル部側では該厚肉パネル部に食い込んで上記スキン層と融合していることを特徴とする。
【0011】
第2の発明は、第1の発明の発泡樹脂パネルを成形する成形型であって、上記発泡樹脂パネルの一方のパネル面側を成形する第1型と、上記第1型に対向して配置され、該第1型との間に上記発泡樹脂パネル成形用のキャビティが形成される第2型とを備え、上記第1型は、上記薄肉パネル部に対応するように配置された固定コア型と、該固定コア型に隣接して上記厚肉パネル部に対応するように配置され、熱可塑性樹脂を射出充填する初期段階の型成形面の位置を第1位置として、該第1位置から上記厚肉パネル部の厚さに相当する第2位置に移動可能な可動コア型とを有し、上記固定コア型には、上記補強リブの薄肉パネル部側を成形する第1溝部が上記可動コア型対面側及び第2型側に開放するように形成され、且つ、上記固定コア型の可動コア型対面側には、凸状部が上記第1溝部における可動コア型対面側の開放箇所に対応するように突設され、上記可動コア型には、上記凸状部が反可動コア型移動方向にスライド可能に嵌入する凹状部が上記固定コア型対面側及び第2型側に開放するように形成され、上記可動コア型には、上記第1位置に位置する状態で、上記固定コア型の凸状部と上記凹状部との共同により上記第1溝部と連続して上記補強リブの厚肉パネル部側を成形する第2溝部が形成され、この状態から上記可動コア型を上記第2位置に移動させてキャビティ容積を拡大することによって、当該可動コア型に対応するキャビティ内で熱可塑性樹脂を発泡させるように構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
第1の発明によれば、厚肉パネル部と薄肉パネル部とに亘って形成された補強リブが、薄肉パネル部の表面に突設されると共に厚肉パネル部の段差部に食い込んでスキン層と融合していることにより、その厚肉パネル部に食い込んだ部分で強固に保持されているので、当該補強リブによる補強構造によって薄肉パネル部の剛性を確実に高めることができる。
【0013】
第2の発明によれば、固定コア型の凸状部と可動コア型の凹状部との共同により補強リブの厚肉パネル部側を成形する第2溝部が補強リブの薄肉パネル側を成形する第1溝部と連続するように形成されるので、厚肉パネル部の発泡成形時に、該厚肉パネル部の段差部に連続するコーナー部分にアールダレ現象が生じても、上記第2溝部内に充填された熱可塑性樹脂がキャビティ容積の拡大に影響されずにそのまま固化することで、上記段差部に跨るように薄肉パネル部側と連続した補強リブを厚肉パネル部側にも成形でき、該厚肉パネル部で補強リブを両側から挟み込むことができる。したがって、補強リブを厚肉パネル部に充分な面積で且つ確実に連結して成形できて、上述したように薄肉パネル部の補強に効果的な補強リブを有する発泡樹脂パネルを良好に成形することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施形態1に係るボンネットフードを示す裏面図である。
【図2】ボンネットフードの後側取付部を拡大して示す斜視図である。
【図3】図2のIII−III線における斜視断面図である。
【図4】図3のIV−IV線における断面図である。
【図5】図3のV−V線における断面図である。
【図6】ボンネットフードの成形における外面樹脂層の成形工程図である。
【図7】ボンネットフードの成形における基材樹脂層成形用の熱可塑性樹脂充填状態を示し、(a)は図4対応箇所における断面図、(b)は図5対応箇所における断面図である。
【図8】ボンネットフードの成形における基材樹脂層成形用の熱可塑性樹脂が固化し始めた状態を示し、(a)は図4対応箇所における断面図、(b)は図5対応箇所における断面図である。
【図9】ボンネットフードの成形における厚肉パネル部成形用キャビティの容積拡大状態を示し、(a)は図4対応箇所における断面図、(b)は図5対応箇所における断面図である。
【図10】ボンネットフード成形型における第2可動型の要部を型成形面側から見た平面図である。
【図11】先行技術文献の技術を利用した発泡樹脂パネルの成形工程図であり、(a)は熱可塑性樹脂充填状態を示し、(b)は厚肉パネル部成形用キャビティの容積拡大状態を示す。
【図12】先行技術文献の技術を利用した発泡樹脂パネルの要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0016】
《発明の実施形態》
図1は、この実施形態の発泡樹脂パネルであるボンネットフード1を示す裏面図である。
【0017】
ボンネットフード1は、車体前後方向及び車幅方向に延びる板状の部品であり、車体前方のエンジンルームを覆うように取り付けられる。このボンネットフード1は、車体前方に向かって徐々に幅が狭くなる左右対称の略台形形状であり、幅方向中央部分が両側部分よりも車体前方に位置するように幅方向になだらかに湾曲している。
【0018】
このボンネットフード1裏面の車体後側幅方向両端近傍には、車体に取り付けるための後側取付部3がそれぞれ設けられている。これら各後側取付部3には、締結部材5がインサートされて該締結部材5の一対の雄ネジ5aが表面から突出しており、図示しないが例えば、その締結部材5の雄ネジ5aにヒンジブラケットがナットで締結され、該ヒンジブラケットがヒンジを介して車体に取り付けられることにより、該車体にボンネットフード1の後端側部分を回動可能に固定できるようになっている。
【0019】
また、ボンネットフード1裏面の車体前側幅方向中央部には、車体に取り付けるための前側取付部9が設けられている。この前側取付部9にも、締結部材5がインサートされて該締結部材5の一対の雄ネジ5aが表面から突出しており、図示しないが例えば、その締結部材5の雄ネジ5aにストライカがナットで締結され、該ストライカを車体に取り付けられたラッチ機構に係止することにより、ボンネットフード1を車体に固定可能になっている。
【0020】
ボンネットフード1の後側取付部3及びその近傍の構造を図2〜図5に示す。図2は、ボンネットフード1の後側取付部3及びその近傍を拡大して示す斜視図であり、図3は図2のIII−III線における斜視断面図、図4は図3のIV−IV線における断面図、図5は図3のV−V線における断面図である。なお、以降、後側取付部3を示す図を参照しながら説明するが、前側取付部9も後側取付部3と同様な構造になっている。
【0021】
ボンネットフード1は、図2〜図5に示すように、外面側を構成する外面樹脂層11と、該外面樹脂層11の裏面に一体に成形された基材樹脂層13とを備えている。
【0022】
上記外面樹脂層11は、ABS(Acrylonitrile Butadiene Styrene)樹脂やポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂からなり、樹脂密度が高いソリッド層で構成されている。この外面樹脂層11は、ボンネットフード1の平滑な外表面を形成するためのものであり、軽量化のためにできるだけ薄く形成されており、射出成形で成形可能な例えば1.8mm〜2.3mm程度の厚さである。当該外面樹脂層11の外周縁部には、図4に示すように裏面側に周壁部11aが突設されており、該周壁部11aは、図1に示すようにボンネットフード1の外縁を形成している。
【0023】
上記基材樹脂層13は、ガラス繊維やカーボン繊維、植物系繊維などの長繊維入りのABS樹脂やポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂からなり、上記長繊維を含むことで剛性が高められると共に線膨張率が低く抑えられている。基材樹脂層13は、ボンネットフード1の剛性を確保するためのものであって当該ボンネットフード1の主体をなしており、上記周壁部11aの内側であって外面樹脂層11の裏面全体に設けられている。
【0024】
この基材樹脂層13は、図1に示すように、ボンネットフード1の上記後側及び前側取付部3,9を除く外面樹脂層11の裏面部分に設けられた厚肉パネル部15と、該厚肉パネル部15に隣接して上記後側及び前側取付部3,9の外面樹脂層11の裏面部分に設けられた薄肉パネル部17とで構成されている。
【0025】
上記厚肉パネル部15は、例えば2.5mm〜7mm程度の厚さであり、図3〜図5に示すように、樹脂密度が高いソリッド層からなるスキン層19が表面全体に形成され、該スキン層19の内部には、多数の空隙を有し上記スキン層19に比べて樹脂密度が低い発泡層21が一体に形成されている。このように発泡層21を内部に有する厚肉パネル部15が基材樹脂層13の大部分を構成することで、ボンネットフード1の軽量化が図られている。
【0026】
この厚肉パネル部15の裏面側の上記スキン層19には、図1に示すように、ボンネットフード1の熱変化による変形防止用にソリッド樹脂からなるリブ23が略全体に亘って網状に、詳細には例えば、厚肉パネル部15の外周縁部に沿う枠状、且つ該枠内に前後方向に対して左右斜め方向に延びる線状体が組み合わされた格子状に一体に突設されている。これによって、ボンネットフード1に熱変化が作用した際、該ボンネットフード1全体に対して外面樹脂層11とリブ23とにより基材樹脂層13の両面側で膨張又は収縮がバランス良く生じ、当該ボンネットフード1に反りなどの変形が発生することが防止される。
【0027】
また、上記リブ23は、ボンネットフード1を閉じた状態でエンジンに対向するようになっている。これにより、ボンネットフード1に人が衝突するなどして、該ボンネットフード1に対していわゆるヘッドインパクトなどの大きな衝撃が加わった場合には、当該箇所でボンネットフード1が変形し、上記リブ23が対向するエンジンに突き当たって座屈すると共に発泡層21が潰れることにより、衝撃エネルギーを効率的に吸収でき、乗員に対する衝撃を緩和することができる。このリブ23は、後述する成形過程で上記長繊維が含まれ難い例えば10mm〜20mm程度の高さで0.5mm〜2.5mm程度の幅を有し、当該リブ23内部には、上記長繊維が含まれていないか、含まれていても少量である。
【0028】
一方、上記薄肉パネル部17は、例えば1.5mm〜4mm程度の厚さであって、厚肉パネル部15の成形時にスキン層19と共に一体に成形されたソリッド層からなり、締結部材5が内部に一体にインサートされている。このように発泡層21を内部に含む厚肉パネル部15よりも堅いソリッド層からなる薄肉パネル部17に締結部材5がインサートされていることにより、当該締結部材5のボンネットフード1への取付強度が高められている。
【0029】
上述した厚肉パネル部15と薄肉パネル部17との境界には、図2〜図4に示すように、厚肉パネル部15のスキン層19からなる段差部15aが板厚方向に形成されてフード側方又は前後方向に臨む面を呈している。そして、厚肉パネル部15及び薄肉パネル部17には、薄肉パネル部17を補強する複数の補強リブ25が上記段差部15aに跨るように所定の間隔をあけて一体に形成されている。これら各補強リブ25は、例えば上記段差部15aと同じ高さであり、上記薄肉パネル部17では表面から突出し、上記厚肉パネル部15では該厚肉パネル部15に食い込んでスキン層19と融合している。つまり、図5に示すように、厚肉パネル部15の補強リブ25周辺部分では、裏面側のスキン層19が内側に落ち込むと共に補強リブ25と一体に連結し、該補強リブ25は厚肉パネル部15内部を裏面側から表面側のスキン層19にまで延びて該スキン層19と一体に連結している。
【0030】
−ボンネットフード1の成形型−
上述の如きボンネットフード1は、図6〜図10に示すような成形型101を用いて成形することができる。図6及び図7〜図9の各(a)は、図4に対応する箇所を示し、図7〜図9の各(b)は、図5に対応する箇所を示している。また、これら図6〜図9では、図中左側がボンネットフード1の表面側、図中右側がボンネットフード1の裏面側である。図10は、第2可動型107の要部を型成形面111b,113a側から見た図であり、便宜上、固定コア型111側を斜線で示している。
【0031】
成形型101は、ボンネットフード1の外面樹脂層11を成形するための第2型である固定型103、及び第1可動型105を備えている(図6参照)。また、ボンネットフード1の基材樹脂層13を上記固定型103とで射出成形するための第1型である第2可動型107をも備えている(図7参照)。
【0032】
上記固定型103は、パネル成形用の凹部103aを有し、該凹部103a内面で外面樹脂層11の表面形状に対応した成形面103bが構成されている(図6参照)。上記第1可動型105は、上記固定型103の凹部103aに対応するように固定型103に向かって突出する凸部105aを有し、該凸部105a表面及びその近傍周囲の面で外面樹脂層11の裏面形状に対応した成形面105bが構成されている(図6参照)。この第1可動型105は、型閉じ状態で、凸部105aが固定型103における凹部103aの側壁及び下壁から離間する中途部まで該凹部103aに嵌入し、且つその成形面103bが固定型の成形面103bとの間に外面樹脂層11成形用のキャビティ109を形成するようになっている。
【0033】
また、上記第2可動型107は、薄肉パネル部17に対応する箇所、つまり後側及び前側取付部3,9に対応する箇所に配置された固定コア型111と、該固定コア型111に隣接して厚肉パネル部15に対応する箇所に配置された可動コア型113とを備えている(図7参照)。
【0034】
上記固定コア型111には、補強リブ25の薄肉パネル部17側を成形するための第1溝部111aが可動コア型113対面側及び固定型103側に開放するように形成されており、該第1溝部111aを含んで薄肉パネル部17の裏面形状に対応した成形面111bが構成されている。この固定コア型111の成形面111bには、図示しないが、締結部材5の雄ネジ5aを嵌入可能な保持凹部が形成されており、該保持凹部は、内部に磁石が挿着されて磁力により締結部材5を保持するようになっている。
【0035】
さらに、固定コア型111の可動コア型113対面側には、上記第1溝部111aにおける可動コア型113対面側の開放箇所に対応し、且つ該開放箇所に隣接するように平板形の凸状部111cが突設されて補強リブ25の厚肉パネル部15側に対応する箇所に位置している。この凸状部111cの厚さは、図10に示すように、第1溝部111aの幅と一致している。
【0036】
上記可動コア型113は、厚肉パネル部15の補強リブ25形成部分を除く裏面形状に対応した成形面113aを有し、熱可塑性樹脂を射出充填する初期段階の型成形面113aの位置(図7で図示の位置)を第1位置として、図示しない油圧シリンダなどの作動により該第1位置から厚肉パネル部15の厚さに相当する第2位置(図9で図示の位置)に向かって型開き方向に移動可能に構成されている。この可動コア型113には、上記固定コア型111の凸状部111cが反可動コア型移動方向にスライド可能に嵌入する、つまり当該可動コア型113の移動により相対的にスライド可能なように嵌入する凹状部113bが固定コア型111対向面及び固定型103側に開放するように形成されている。そして、この可動コア型113には、上記第1位置に位置する状態で、上記固定コア型111の凸状部111cと凹状部113bとの共同により補強リブ25の厚肉パネル部15側を成形する第2溝部113cが上記第1溝部111aと連続して形成され、第2位置に位置する状態で、上記凸状部111cの第2溝部113c構成面が当該可動コア型113の成形面113aに面一に位置付けられる。また、この可動コア型113の成形面113aには、図示しないが、ボンネットフード1の変形を防止するためのリブ23成形用の幅狭の溝部も形成されている。
【0037】
そして、第2可動型107は、型閉じ状態の上記初期段階で、各々の成形面111b,113aが面一に位置付けられるように固定コア型111及び可動コア型113が固定型103の凹部103a直上に配置して、これら固定コア型111及び可動コア型113の各成形面111b,113aと固定型103に先に成形した外面樹脂層11の裏面との間に基材樹脂層13成形用のキャビティ115を形成するようになっており、この状態から上記可動コア型113を型開き方向に移動させ、該可動コア型113に対応するキャビティ容積を拡大可能に構成されている。
【0038】
−ボンネットフード1の成形方法−
上記成形型101を用いてボンネットフード1を成形するには、まず、図6に示すように、第1可動型105を固定型103に接近させて成形型101を型閉じする。この型閉じ状態で、固定型103の成形面103bと第1可動型105の成形面105bとの間に外面樹脂層11を成形するためのキャビティ109が形成される。
【0039】
次いで、上記キャビティ109内に射出機(不図示)から外面樹脂層11成形用の熱可塑性樹脂R1(例えばポリプロピレン)をゲート(不図示)を経て射出充填する。図6はこの射出充填状態を示している。
【0040】
その後、上記キャビティ109内で熱可塑性樹脂R1が固化して外面樹脂層11が成形される。そして、外面樹脂層11が成形されると、図7(a),(b)に示すように、該外面樹脂層11を固定型103に残した状態で、第1可動型105を第2可動型107に取り換える。すなわち、成形型101を型開きして第1可動型105を固定型103から離間させ、該第1可動型105に代えて第2可動型107を固定型103に接近させて成形型101を型閉じする。このとき、第2可動型107の固定コア型111には予め保持凹部によって締結部材5が保持されており、該締結部材5が外面樹脂層11に当接する。この型閉じ状態の初期段階で、可動コア型113は第1位置に位置し、固定コア型111の凸状部111cと可動コア型113の凹状部113bとの共同により第2溝部113cが固定コア型111の第1溝部111aと連続して形成され、第2可動型107の成形面111b,113aと外面樹脂層11の裏面との間に基材樹脂層13を成形するためのキャビティ115が形成される。
【0041】
続いて、上記キャビティ115内に射出機(不図示)から基材樹脂層13成形用の熱可塑性樹脂R2(例えばガラス長繊維入りのポリプロピレン)をゲート(不図示)を経て射出充填する。図7(a),(b)はこの射出充填状態を示している。このとき、熱可塑性樹脂R2に含まれるガラス長繊維は、幅狭の溝部内には進入しにくく殆ど入らないので、該溝部内に成形されるリブ23の線膨張率がガラス繊維の混入に起因して低下することを防止できる。上記基材樹脂層13成形用の熱可塑性樹脂R2は、例えば、化学反応によりガスを発生させる化学的発泡剤や、MuCell(ミューセル:登録商標)Processのように二酸化炭素ガス及び窒素ガスなどの不活性ガス(物理的発泡剤)などが超臨界状態で混入された熱可塑性樹脂である。
【0042】
上記キャビティ115内に射出充填された熱可塑性樹脂R2における外面樹脂層11の裏面近傍及び第2可動型107(固定コア型111及び可動コア型113)の成形面111b,113a近傍部分は、外面樹脂層11の表面温度及び第2可動型107の型温により冷却されて早期に固化し始め、図示しない変形防止用のリブと共に、図8(a),(b)に示すように、ソリッド層17’、スキン層19’及び補強リブ25’が生成されるが、これらソリッド層17’、スキン層19’及び補強リブ25’及びリブは未だ完全に固化しきっていない。またこの段階では、後に発泡層21を構成する熱可塑性樹脂R2の内側部分は外面樹脂層11の表面温度及び型温の影響を受けにくく、粘度の高いゲル状態になっている。
【0043】
そして、上記熱可塑性樹脂R2における外面樹脂層11の表面近傍及び第2可動型107の成形面111b,113a近傍部分にソリッド層17’、スキン層19’、補強リブ25’及び変形防止用のリブが生成され始めた時点で(熱可塑性樹脂R2が固化する過程で)、図9(a),(b)に示すように、第2可動型107の可動コア型113と外面樹脂層11との間隔が基材樹脂層13の厚さとなるように可動コア型113を第2位置まで型開き方向Xに後退移動させて、キャビティ容積を例えば1.25倍〜4.5倍程度に拡大する。
【0044】
これにより、それまで外面樹脂層11と第2可動型107の可動コア型113との間で圧縮(膨張が規制)されていた熱可塑性樹脂R2が可動コア型113の成形面113aに引っ張られると共に、熱可塑性樹脂R2中の化学反応により発生したガスや不活性ガス等により発泡膨張する。このとき、当該熱可塑性樹脂R2中に含まれるガラス繊維も上記圧縮が軽減されて弾性的に復元し、この弾性復元力(スプリングバック現象)によっても熱可塑性樹脂R2が膨張する。その結果、表面全体にスキン層19が形成されると共に、該スキン層19の内部に発泡層21が一体に形成された厚肉パネル部15が上記外面樹脂層11の裏面に一体に成形される。この際、可動コア型113の溝部内の熱可塑性樹脂R2はそのまま固化し、上記厚肉パネル部15裏面側のスキン層19に変形防止用のリブ23が成形される。
【0045】
一方、後側及び前側取付部3,9に対応する箇所の熱可塑性樹脂R2は、固定コア型111が締結部材5を外面樹脂層11に押し付けた状態で移動せず、キャビティ容積が変化しないので、外面樹脂層11の表面温度及び固定コア型111の型温により冷却されてそのまま固化し、締結部材5がインサートされた薄肉パネル部17が成形される。この締結部材5のインサート時には先に成形された外面樹脂層11は既にソリッド状態になっているので、外面樹脂層11の締結部材5に対応する箇所にひけが発生せず、外観品質が損なわれない。
【0046】
また、キャビティ容積を拡大する際、固定コア型111と可動コア型113との境界近傍で一足早く固化し始めたスキン層19’が突っ張って、当該スキン層19’近傍内部の熱可塑性樹脂R2の発泡による膨張が妨げられることにより、厚肉パネル部15の段差部15aに連続するコーナー部分にアールダレ現象が生じるが、上記段差部15aとの間に隙間を生じさせることなく厚肉パネル部15と薄肉パネル部17とに亘って補強リブ25を形成することができる。
【0047】
つまり、固定コア型111の凸状部111cと可動コア型113の凹状部113bとの共同により形成された第2溝部113c内の熱可塑性樹脂R2がキャビティ容積の拡大に影響されずにそのまま固化することで、上記段差部に跨るように薄肉パネル部17側と連続した補強リブ25を厚肉パネル部15側にも成形でき、該厚肉パネル部15で補強リブ25を両側から挟み込むことができる。したがって、補強リブ25を厚肉パネル部15に充分な面積で且つ確実に連結して成形できて、薄肉パネル部17の補強に効果的な補強リブ25を形成できる。
【0048】
以上のようにして、ボンネットフード1を成形することができる。しかる後、成形型101を型開きして第2可動型107を固定型103から離間させて、ボンネットフード1を固定型103から脱型し、最後に、成形型101のゲートに残留して固化し該ボンネットフード1に付着しているゲート残留固化物を切除して、ボンネットフード1が得られる。
【0049】
このようにして得られたボンネットフード1では、厚肉パネル部15と薄肉パネル部17とに亘って形成された補強リブ25が、薄肉パネル部17の表面に突設されると共に厚肉パネル部15の段差部15aに食い込んでスキン層19と融合していることにより、その厚肉パネル部15に食い込んだ部分で強固に保持されているので、当該補強リブ25による補強構造によって薄肉パネル部17の剛性を確実に高めることができる。
【0050】
なお、本実施形態では、外面樹脂層11を備えたボンネットフード1について説明したが、該外面樹脂層11は必ずしも備えていなくてもよく、ボンネットフード1は基材樹脂層13のみで構成されていても構わない。
【0051】
また、本実施形態では、補強リブ25が厚肉パネル部15の段差部15aと同じ高さであるとしたが、本発明はこれに限らず、補強リブ25は、上記段差部15aよりも高くてもよく、逆に低くても構わない。すなわち、可動コア型113を型開き方向Xに後退移動させた際、固定コア型111の凸状部111cにおける第2溝部113c構成面と当該可動コア型113の成形面113aとは必ずしも面一に位置付けられなくてもよく、これら凸状部111cの第2溝部113c構成面及び可動コア型113の成形面113aの一方が他方に対して固定型103側に位置付けられてもよい。
【0052】
また、固定コア型111の凸状部111cは、第1溝部111aにおける可動コア型113対面側の開放箇所に隣接するように突設されているとしたが、該第1溝部111a開放箇所に対応する箇所であれば、該第1溝部111a開放箇所から間隔をおいて突設されていても構わない。
【0053】
また、本実施形態では、第2可動型107の固定コア型111及び可動コア型113が、型閉じ状態における初期段階の第1位置で、各々の成形面111b,113aが面一に位置付けられるとしたが、これに限らず、上記初期段階の第1位置で、固定コア型111及び可動コア型113の成形面111b,113aは、一方が他方に対して固定型103側に位置付けられてもよい。
【0054】
また、本実施形態では、固定コア型111の凸状部111cの厚さが第1溝部111aの幅と一致しているとしたが、特にこれに限るものではなく、凸状部111cの厚さは第1溝部111aの幅に比べて、大きくてもよく、逆に小さくても構わない。すなわち、補強リブ25は、厚肉パネル部15側と薄肉パネル部17側とで厚さが異なっていてもよい。
【0055】
また、本実施形態では、変形防止用のリブ23が枠状且つ該枠内に格子状に形成されているとし、ここでの格子状は前後方向に対して左右斜め方向に延びる線状体が組み合わされた格子状であるとしたが、上記リブ23は、前後方向及び左右方向に沿って延びる格子状を有していてもよいし、ハニカム状などのその他の網状に形成されていてもよい。また、当該リブ23は、必ずしも形成されていなくてもよい。
【0056】
また、本実施形態では、基材樹脂層13が長繊維を含んでいるとし、これら基材樹脂層13成形用の熱可塑性樹脂R2としてガラス長繊維入りの熱可塑性樹脂を例示したが、基材樹脂層13は必ずしも長繊維を含んでいなくてもよい。
【0057】
またその他に、本実施形態では、外面樹脂層11を固定型103に残した状態で、第1可動型105を第2可動型107に取り換え、上記外面樹脂層11の裏面に基材樹脂層13を成形するようにしたが、別途成形した外面樹脂層11を用意して固定型103にセットし、該外面樹脂層11の裏面に基材樹脂層13を成形するようにしてもよい。
【0058】
以上、上記実施形態では、ボンネットフードに本発明を適用した場合を例示したが、本発明は、フェンダーパネル、リア側面のパネル等の自動車の他の外装樹脂パネルにも、ピラートリム、ドアトリム、インストルメントパネル等の自動車の内装樹脂パネルにも、さらにその他、エンジンカバーやドアモジュールパネル等にも適用可能である。また、上記実施形態が例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせに、さらにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【産業上の利用可能性】
【0059】
以上説明したように、本発明は、薄肉パネル部及び厚肉パネル部を有するボンネットフードなどの発泡樹脂パネルについて有用であり、特に、薄肉パネル部に充分な剛性が要望される発泡樹脂パネルに適している。
【符号の説明】
【0060】
R,R1,R2 熱可塑性樹脂
1 ボンネットフード(発泡樹脂パネル)
15 厚肉パネル部
15a 段差部
17 薄肉パネル部
19 スキン層
21 発泡層
25 補強リブ
101 成形型
103 固定型(第2型)
107 第2可動型(第1型)
111 固定コア型
111a 第1溝部
111c 凸状部
113 可動コア型
113b 凹状部
113c 第2溝部
115 基材樹脂層成形用のキャビティ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソリッド層からなるスキン層が表面に形成されると共に該スキン層よりも樹脂密度が低い発泡層が内部に一体に形成された厚肉パネル部と、
上記厚肉パネル部に隣接して該厚肉パネル部の成形時に上記スキン層と共に一体に成形されたソリッド層からなる薄肉パネル部とを備え、
上記厚肉パネル部と薄肉パネル部との境界に上記スキン層からなる段差部が板厚方向に形成された発泡樹脂パネルであって、
上記厚肉パネル部及び薄肉パネル部には、補強リブが上記段差部に跨るように一体に形成され、
上記補強リブは、上記薄肉パネル部側では表面から突出し、上記厚肉パネル部側では該厚肉パネル部に食い込んで上記スキン層と融合している
ことを特徴とする発泡樹脂パネル。
【請求項2】
請求項1に記載の発泡樹脂パネルを成形する成形型であって、
上記発泡樹脂パネルの一方のパネル面側を成形する第1型と、
上記第1型に対向して配置され、該第1型との間に上記発泡樹脂パネル成形用のキャビティが形成される第2型とを備え、
上記第1型は、上記薄肉パネル部に対応するように配置された固定コア型と、該固定コア型に隣接して上記厚肉パネル部に対応するように配置され、熱可塑性樹脂を射出充填する初期段階の型成形面の位置を第1位置として、該第1位置から上記厚肉パネル部の厚さに相当する第2位置に移動可能な可動コア型とを有し、
上記固定コア型には、上記補強リブの薄肉パネル部側を成形する第1溝部が上記可動コア型対面側及び第2型側に開放するように形成され、且つ、上記固定コア型の可動コア型対面側には、凸状部が上記第1溝部における可動コア型対面側の開放箇所に対応するように突設され、
上記可動コア型には、上記凸状部が反可動コア型移動方向にスライド可能に嵌入する凹状部が上記固定コア型対面側及び第2型側に開放するように形成され、
上記可動コア型には、上記第1位置に位置する状態で、上記固定コア型の凸状部と上記凹状部との共同により上記第1溝部と連続して上記補強リブの厚肉パネル部側を成形する第2溝部が形成され、この状態から上記可動コア型を上記第2位置に移動させてキャビティ容積を拡大することにより、当該可動コア型に対応するキャビティ内で熱可塑性樹脂を発泡させるように構成されている
ことを特徴とする発泡樹脂パネルの成形型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−207118(P2011−207118A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−78187(P2010−78187)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(390026538)ダイキョーニシカワ株式会社 (492)
【Fターム(参考)】