説明

発泡粘着シートおよびその製造方法

【課題】発泡の均一性に優れ、かつ粘着性に優れた発泡粘着シートおよびその効率的な製造方法を提供する。
【解決手段】スチレン系熱可塑性エラストマー(A)、粘着付与剤(B)および熱膨張性マイクロカプセル型発泡剤(C)の各成分を含み、スチレン系熱可塑性エラストマー(A)が10〜90重量%、粘着剤付与剤(B)が90〜10重量%(但し、成分(A)と成分(B)の合計を100重量%とする。)であり、かつ成分(A)および成分(B)の合計100重量部に対し熱膨張性マイクロカプセル型発泡剤(C)が1〜5重量部である組成物をTダイ2を有する押出機1により170〜250℃で発泡成形してなることを特徴とする発泡粘着シート6の製造方法。及び発泡粘着シート6と基材5をプレスロール3と冷却ロール4にてラミネートしてなる積層粘着シート7の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡の均一性に優れ、かつ粘着性に優れた発泡粘着シートに関する。更に詳しくは、発泡剤を含む、スチレン系熱可塑性エラストマーと粘着付与剤を含む樹脂組成物をTダイ押出機によりシート状に押出して発泡成形した発泡粘着シートおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
粘着テープや粘着シートの粘着剤層を微細な発泡構造とすることにより、見かけの弾性率を低下させて、粘着特性を向上させ、また粘着剤使用量の低減により材料費を削減する取り組みがなされている。また、かかる発泡粘着剤層を基材上に密着成形した積層粘着防塵クリーナーも知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
ところで、従来の発泡粘着テープや粘着シートの製造においては、粘着組成物を溶剤で希釈して支持体に塗布するなど、溶剤を用いるのが一般的であり、近年、環境対策の観点から溶剤を使用しない製法の開発が進められている。たとえば、既存の粘着シートを高圧力の不活性ガス雰囲気下において粘着剤層中に該雰囲気ガスを溶解させた後、圧力を開放することで粘着剤層を発泡させる方法が開示されている(特許文献3参照)。しかし、この方法では、工程が複雑であり、高圧力の不活性ガスを使用することから連続生産という観点から不利であった。また、粘着剤層を構成するポリマーを含む粘着剤組成物と粘着剤組成物中のポリマーを架橋させる架橋剤を、加圧下、超臨界状態又は不活性流体と共に混練する工程を有する発泡粘着シートの製法が知られている(特許文献4参照)。しかし、この方法でも、粘着剤組成物中のポリマーを架橋する架橋剤を使用し、また希ガスや無機系ガスを加圧下に超臨界状態又は液体状態で使用する必要があった。
【0004】
また、粘着剤層を形成するポリマーとしては、イソシアネート基反応性官能基を有するアクリル酸化合物(特許文献1参照)やアクリル系エステル共重合体(特許文献4参照)が使用されているが、スチレン系熱可塑性エラストマーを原材料として使用し、溶剤を使用することなく、Tダイ押出機により発泡を行うと同時にシートを得る方法は実用化されていなかった。
【0005】
【特許文献1】特開平7-165964号公報
【特許文献2】特開平7-157588号公報
【特許文献3】特開2000−169803号公報
【特許文献4】特開2006−36870号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
かかる状況下、本発明の目的は、発泡の均一性に優れ、かつ粘着性に優れた発泡粘着シートの提供にある。更には、特定の発泡剤、スチレン系熱可塑性エラストマー及び粘着付与剤を含む樹脂組成物をTダイ押出機によりシート状に押出して発泡成形した発泡粘着シートおよびその効率的な製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者は、上記課題を解決するために種々の検討を行った結果、Tダイ押出機における樹脂成形温度を制御した状態で熱膨張性マイクロカプセル型発泡剤を使用し、スチレン系熱可塑性エラストマーと粘着付与剤を組み合わせることで、発泡の均一性および粘着性に優れた粘着性発泡シートが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、次の(1)から(10)の発明に係るものである。
【0008】
(1) スチレン系熱可塑性エラストマー(A)、粘着付与剤(B)および熱膨張性マイクロカプセル型発泡剤(C)の各成分を含み、スチレン系熱可塑性エラストマー(A)が10〜90重量%、粘着剤付与剤(B)が90〜10重量%(但し、成分(A)と成分(B)の合計を100重量%とする。)であり、かつ成分(A)および成分(B)の合計100重量部に対し熱膨張性マイクロカプセル型発泡剤(C)が1〜5重量部である組成物をTダイ押出機により170〜250℃で発泡成形してなる発泡粘着シート。
【0009】
(2)熱膨張性マイクロカプセル型発泡剤(C)が、熱可塑性樹脂を殻壁として、液化した低沸点炭化水素を内包した二重構造の平均粒子径10〜40μmの微小球体である前記(1)記載の発泡粘着シート。
【0010】
(3)発泡粘着シートの厚さが、100〜300μmである前記(1)または(2)記載の発泡粘着シート。
【0011】
(4)スチレン系熱可塑性エラストマー(A)、粘着付与剤(B)および熱膨張性マイクロカプセル型発泡剤(C)の各成分を含み、スチレン系熱可塑性エラストマー(A)が10〜90重量%、粘着剤付与剤(B)が90〜10重量%(但し、成分(A)と成分(B)の合計を100重量%とする。)であり、かつ成分(A)および成分(B)の合計100重量部に対し熱膨張性マイクロカプセル型発泡剤(C)が1〜5重量部である組成物をTダイ押出機により170〜250℃で発泡してなる発泡粘着樹脂が基材にラミネートされてなる積層粘着シート。
【0012】
(5)熱膨張性マイクロカプセル型発泡剤(C)が、熱可塑性樹脂を殻壁として、液化した低沸点炭化水素を内包した二重構造の平均粒子径10〜40μmの微小球体である前記(4)の積層粘着シート。
【0013】
(6) 積層粘着シートの厚さが、120〜350μmである前記(4)または(5)に記載の積層粘着シート。
【0014】
(7)スチレン系熱可塑性エラストマー(A)、粘着付与剤(B)および熱膨張性マイクロカプセル型発泡剤(C)の各成分を含み、スチレン系熱可塑性エラストマー(A)が10〜90重量%、粘着剤付与剤(B)が90〜10重量%(但し、成分(A)と成分(B)の合計を100重量%とする。)であり、かつ成分(A)および成分(B)の合計100重量部に対し熱膨張性マイクロカプセル型発泡剤(C)が1〜5重量部である組成物をTダイ押出機により170〜250℃で発泡成形する発泡粘着シートの製造方法。
【0015】
(8) スチレン系熱可塑性エラストマー(A)、粘着付与剤(B)および熱膨張性マイクロカプセル型発泡剤(C)の各成分を含み、スチレン系熱可塑性エラストマー(A)が10〜90重量%、粘着剤付与剤(B)が90〜10重量%(但し、成分(A)と成分(B)の合計を100重量%とする。)であり、かつ成分(A)および成分(B)の合計100重量部に対し熱膨張性マイクロカプセル型発泡剤(C)が1〜5重量部である組成物をTダイ押出機により170〜250℃で発泡した発泡粘着樹脂を基材にラミネートする積層粘着シートの製造方法。
【0016】
(9)前記(1)から(3)のいずれかに記載の発泡粘着シートを粘着剤層として含む粘着防塵テープ。
【0017】
(10)前記(4)から(6)のいずれかに記載の積層粘着シートを含んでなる粘着防塵テープ。
【発明の効果】
【0018】
本発明の発泡粘着性シートは、発泡の均一性に優れ、十分な粘着性と化学安定性を有する。さらに、本発明の発泡粘着性シートは、Tダイ押出機にて容易に発泡シート成形を行うことができ、非常に高い生産性を有する。このように、本発明の発泡粘着性シートは、粘着性に優れ、溶剤を用いない(溶剤フリーである)ことから、特にクリーンルーム用の粘着防塵テープやシートとして好適に使用される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明は、スチレン系熱可塑性エラストマー(A)、粘着付与剤(B)および熱膨張性マイクロカプセル型発泡剤(C)の各成分を含み、スチレン系熱可塑性エラストマー(A)が10〜90重量%、粘着剤付与剤(B)が90〜10重量%(但し、成分(A)と成分(B)の合計を100重量%とする。)であり、かつ成分(A)および成分(B)の合計100重量部に対し熱膨張性マイクロカプセル型発泡剤(C)が1〜5重量部である組成物をTダイ押出機により170〜250℃で発泡成形してなる発泡粘着シートにかかるものである。ここで、本発明で用いられるスチレン系熱可塑性エラストマー(A)とは、ビニル芳香族化合物−共役ジエン共重合体又はその水添物をいう。
【0020】
ビニル芳香族化合物としては、例えば、炭素原子数8〜12のビニル芳香族化合物が用いられ、そのビニル基の1位又は2位がメチル基などのアルキル基などで置換されていてもよく、具体的には、スチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレンなどをあげることができ、これらは1種又は2種以上組み合わせて用いられる。
【0021】
共役ジエンとしては、例えば、炭素原子数4〜8の共役ジエンが用いられ、ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエンなどをあげることができ、これらは1種又は2種以上組み合わせて用いられる。
【0022】
ビニル芳香族化合物−共役ジエン共重合体としては、たとえば、スチレンとブタジエンとの共重合体、スチレンとイソプレンとの共重合体などがあげられる。
【0023】
具体的には、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体等が挙げられる。かかる共重合体においてスチレン、ブタジエン、イソプレンの各モノマーは、それらがランダムに共重合した構造のものでもよく、各モノマーが単独重合したブロック構造のものであってもよい。これらの例としては、スチレンブロック−ブタジエンブロック共重合体や、スチレンブロック−スチレン/ブタジエンブロック共重合体が挙げられる。
【0024】
また、ビニル芳香族化合物−共役ジエン共重合体水添物とは、前述のビニル芳香族化合物−共役ジエン共重合体を水素添加することにより得られる重合体である。これらは1種または2種以上組み合わせて用いられる。
【0025】
本発明で用いられるスチレン系熱可塑性エラストマー(A)の具体例としては、スチレンブロック−ブタジエンブロックスチレンブロック共重合体(SBS)、スチレンブロック−イソプレンブロック−スチレンブロック共重合体(SIS)や、それらの部分的又は完全な水素添加物が挙げられる(一般にはそれぞれSEBS、SEPSと称されている。)。粘着シートの用途によっては、スチレンブロック−ブタジエンブロック共重合体、スチレンブロック−スチレン/ブタジエンブロック共重合体や、それらの部分的又は完全な水素添加物が好適に用いられる。
【0026】
上記共重合体の市売品としては、スチレンブロック−ブタジエンブロックスチレンブロック共重合体水添物やスチレンブロック−イソプレンブロック−スチレンブロック共重合体水添物として、「クレイトン−G」(クレイトンポリマージャパン株式会社:商品名)、「タフテック」(旭化成株式会社:商標名)、「セプトン」(株式会社クラレ:商標名)の商品が例示され、スチレンブロック−スチレン/ブタジエンブロック共重合体の水添物として「タフテック・S.O.E」(旭化成株式会社:商標名)等の商品が例示される。
【0027】
スチレン系熱可塑性エラストマーのJIS K−7210に従って230℃、荷重21.18Nで測定したメルトフローレート(MFR)は、成形時における溶融性をより高める観点から、好ましくは1〜200g/10分であり、より好ましくは3〜100g/10分である。
【0028】
次に、本発明で用いられる粘着性付与剤としては、ロジン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂、テルペン系樹脂、非芳香族炭化水素系変性テルペン樹脂、石油樹脂等が使用される。これらの樹脂の軟化点は、好ましくは120℃以下、より好ましくは110℃以下である。粘着付与剤は、スチレン系熱可塑性エラストマーに予めブレンドしたマスターバッチとして使用することが好ましい。マスターバッチ中の粘着付与剤の量は、一般には10〜70重量%である。また、マスターバッチには、粘着性付与や柔軟性付与の為に、後述する液状エラストマーを適宜加えることが望ましい。かかる粘着付与剤としては、例えば、水添石油樹脂「アルコンP−100」(荒川化学工業株式会社、商品名)、不均化ロジンエステル「スーパーエステルA−100」(荒川化学工業株式会社、商品名)、テルペンフェノール樹脂「YSポリスターT−115」(ヤスハラケミカル株式会社、商品名)が挙げられる。
【0029】
なお、スチレン系熱可塑性エラストマーとして、予め粘着性付与剤入りのスチレン系熱可塑性エラストマーを使用することも可能である。かかる樹脂としては、プロペル(積水フーラー株式会社:商品名)がある。この場合、最終製品の物性(粘性、弾性等)調整のために他のスチレン系熱可塑性エラストマーと組み合わせることがより好ましい。組み合わせるスチレン系熱可塑性エラストマーとしては、上記スチレン系熱可塑性エラストマーが適宜使用されるが、中でもスチレンブロック−スチレン/ブタジエンブロック共重合体の水添物である「タフテック・S.O.E」が好適に使用される。一方、スチレン系熱可塑性エラストマー以外のポリオレフィンとの組み合わせでは、理由は不明であるが粘着性の良好なシートが得られない。
【0030】
本発明の熱膨張性マイクロカプセル型発泡剤(C)としては、本発明のスチレン系熱可塑性エラストマーと粘性付与剤を含む組成物をTダイ押出し成形する温度および独立気泡性の発泡シートを得る両方の観点から選択される。本発明では、170〜250℃、好ましくは180〜230℃で使用可能な炭酸ガスや低沸点炭化水素を内包した熱膨張性マイクロカプセル型発泡剤が好適に用いられる。
【0031】
熱膨張性マイクロカプセル型発泡剤(C)のなかでも、熱可塑性樹脂を殻壁として、液化した低沸点炭化水素を内包した二重構造の熱膨張性マイクロカプセル型発泡剤が好適に使用される。マイクロカプセルは、平均粒子径10〜40μm(特に好適には15〜30μm)の熱可塑性樹脂性の微小球体である。殻壁としての熱可塑性樹脂としては、前記の熱可塑性樹脂が使用できるが、そのなかでもエチレンやプロピレンの単独重合体やこれらの共重合体が好適に使用できる。特に、流れ性の良い低密度ポリエチレンが好適に使用できる。この熱膨張性マイクロカプセル型発泡剤は、通常、熱可塑性樹脂とのマスターバッチとして使用される。具体的には、ファインセルマスターMSシリーズ(大日精化工業株式会社)が挙げられる。これらの発泡剤には、分解温度を調節するために発泡助剤を適宜添加しても良い。
【0032】
本発明においてスチレン系熱可塑性エラストマー(A)、粘着付与剤(B)および熱膨張性マイクロカプセル型発泡剤(C)の各成分を含む組成物は、スチレン系熱可塑性エラストマー(A)が10〜90重量%、粘着剤付与剤(B)が10〜90重量%(但し、成分(A)と成分(B)の合計を100重量%とする。)であり、かつ成分(A)および成分(B)の合計100重量部に対し熱膨張性マイクロカプセル型発泡剤(C)が1〜5重量部である。スチレン系熱可塑性エラストマー(A)と粘着剤付与剤(B)との割合は、目的とする発泡シートにより適宜決められるが、たとえば粘着防塵テープやシートの用途では、粘着性と均一発泡の観点より熱スチレン系熱可塑性エラストマー(A)と粘着剤付与剤(B)の割合は、20〜40重量%/60〜80重量%の範囲で好適に使用できる。
【0033】
一方、発泡剤(C)は、上記のように、成分(A)および成分(B)の合計100重量部を基準として、1〜5重量部であり、好ましくは2〜4重量部である。これ未満では均一発泡が得られず、これを超えても発泡効率は向上しない。
【0034】
本発明の樹脂組成物には、粘着性付与や柔軟性付与の為に、パラフィン系、ナフテン系、芳香族系の鉱物性や石油性炭化水素、ポリブテンやポリイソブチレンのような液状エラストマーを加えることが望ましい。これらは、通常、重量平均分子量が300から2000、好ましくは500から1500のものである。例えば、パラフィン系オイルとしてはダイアナプロセスオイルPW90(出光興産株式会社)が使用できる。
これらの添加量は、成分(A)および成分(B)の合計100重量部を基準として、10から200重量部である。
【0035】
また、本発明の樹脂組成物には、さらに、酸化防止剤や紫外線吸収剤などの樹脂劣化を防ぐ材料や帯電防止材等が適宜添加してもよい。
【0036】
本発明の樹脂組成物は、Tダイ押出機を用いて発泡成形し、シートやテープとされる。なお、本発明において、「シート」なる用語はμmオーダーのフイルムをも含む概念である。
Tダイ押出機の発泡成形温度は、使用される樹脂組成物の組成により適宜決定されるが、170〜250℃、好ましくは170〜230℃、より好ましくは180〜220℃に保つことが重要である。
即ち、本発明の樹脂組成物から発泡成形されたシートが独立発泡性を有し、かつ効率的にTダイ押出機にてシートを得るには、発泡成形温度を上記範囲内にコントロールする必要がある。発泡温度が170℃より低温であると、発泡の偏りが生じ均一な独立発泡のシートが得られず、一方、発泡温度が250℃より高温であると、製品の劣化や発泡性の不均一化という問題が生じる。
【0037】
本発明で得られる発泡粘着シートは、独立気泡性を有するスチレン系熱可塑性エラストマーと粘着付与剤を含む粘着性樹脂発泡シートであり、発泡剤による気泡が内部に包含されるため、軽量で粘着性に優れ、かつ溶剤フリーという特色を有する。
発泡シートの厚さは、用途により適宜決定され、数十μmから数十mmまで成形可能であるが、粘着防除クリーナーとして好適な樹脂発泡シートの厚さは100〜300μmであり、特に好ましくは150〜250μmである。
通常発泡倍率は、1.1から5倍である。また、シートは多層共押出しによる多層発泡シートとすることもできる。
【0038】
本発明で得られる樹脂発泡シートは、基材と積層した積層粘着シートとしても好適に使用できる。基材としては、アルミニュウムや鉄等の金属、熱可塑性樹脂、紙、合成紙、ガラスウール等からなる薄板状物,不織布、織布などが挙げられる。後述する粘着防塵テープ、シート用の基材としては、ポリプロピレンの延伸フイルム(シート)が好適に使用される。基材の厚さは、10〜100μm、好ましくは20〜50μmである。積層粘着シートの厚さとしては、120〜350μmのものが好適に用いられる。基材への樹脂発泡シートの積層は、Tダイから押出された発泡粘着樹脂(シート)を基材上へ直接ラミネートすることにより効率的に実施できる。
【0039】
次に、本発明の発泡粘着シートを使用した粘着防塵テープについて説明する。
粘着防塵テープは、一般には、基材の片面に粘着剤層を形成し、基材の反対側の面に剥離処理層、あるいは剥離フイルム(シート)が積層されている。また、基材との間に帯電防止剤層を設けても良い。
基材は、一般にはプラステックフイルムが用いられ、延伸ポリプロピレンフイルム(OPP)や不織布が好適に使用される。剥離処理層は電子部品の腐食や誤作動を防止する観点から非シリコーンー系のフッ素系樹脂、ポリオレフン系樹脂やアクリル系の樹脂等の剥離剤が用いられる。剥離処理層は、剥離材をTダイから押出し基材に積層することにより設けることができる。剥離シートとしては、ポリエステルフイルム等のシートが使用される。なお、剥離処理層や剥離シートは必須ではなく、必要に応じ設置又は使用される。
【0040】
本発明について、図1により簡単に説明する。スチレン系熱可塑性エラストマー、粘着付与剤および熱膨張性マイクロカプセル型発泡剤を含む組成物が押出機(1)内で溶融混練され、発泡した樹脂がTダイ(2)から押出され、別途供給される基材(OPP)(5)上へ発泡粘着樹脂(6)がラミネートされる。そして、必要に応じ別途供給する剥離シート(PETフイルム)(図示せず)を積層することにより積層粘着シート(7)が形成される。この積層粘着シートは、粘着防塵テープとして好適に使用される。
一般には、上記粘着防塵テープは芯材に粘着層側の面を外側にしてロール状に巻回された形態で使用されるが、粘着層側の面を内側にして巻回された形態や巻回せずにシート状の形態など使用目的の応じてその形態を適宜選択すればよい。
【実施例】
【0041】
以下、本発明について実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0042】
[粘着力試験方法]
発泡粘着シートの粘着力はJIS Z0237に従い、試験片の180度はがし粘着力を次の条件により測定した。
試験条件:
引張速度 300mm/min
チャック間隔 150mm
試験片 幅25mm×長さ250mm
試験板 SUS 304鋼板(鏡面仕上げ)厚さ2mm×幅50mm×長さ125mm
なお、試験板に試験片を貼り付けた後、5分間静置し測定した。
【0043】
実施例1
スチレン系熱可塑性エラストマー(A)として「タフテックH1221」(SEBS:旭化成株式会社製)50重量%、粘着付与剤(B)として水添石油樹脂「アルコンP-100」(荒川化学工業製)50重量%、スチレン系熱可塑性エラストマー(A)と粘着付与剤(B)との合計100重量部に対し、熱膨張性マイクロカプセル型発泡剤(C)としてファインセルマスターMS401(大日精化工業株式会社製、最大発泡温度:約175℃)2重量部をブレンドした樹脂組成物を、予めシリンダの温度を設定したTダイ押出機(城北製作所社製(型番:1432、シリンダ径:115mm、スクリューの長さ/直径比(L/D):29))のホッパーに投入し、押出機内で樹脂組成物を加熱溶融し、発泡を行った。発泡溶融樹脂は温度を175℃に設定したTダイにてリップ部からシート状に押し出され、別途供給された1100mm幅で40μm厚みの延伸ポリプロピレン(OPP)フイルム(東洋紡績株式会社製)上に発泡粘着シートがラミネートされた。その後、冷却ロールの冷却面により挟圧、接触させて、15℃まで冷却することで、積層粘着シート1を得た。得られた積層粘着シート1の厚みは約200μm(発泡粘着シートとしては約160μm)であり、発泡粘着シート全体が均等に発泡しているのが確認された。発泡粘着シートは、粘着性があり、180度引きはがし粘着力はシートの中央部で500g/mmであった。
【0044】
実施例2
スチレン系熱可塑性エラストマー(A)に粘着付与剤(B)が予め含有されているスチレン系熱可塑性エラストマーとしてプロペル6288(積水フーラー株式会社:商品名)を使用し、プロペル6288 100重量部に対し、熱膨張性マイクロカプセル型発泡剤(C)としてファインセルマスターMS(大日精化工業株式会社製、最大発泡温度:約230℃)2重量部をブレンドした樹脂組成物を、予めシリンダの温度を設定したTダイ押出機(城北製作所社製(型番:1432、シリンダ径:115mm、スクリューの長さ/直径比(L/D):29))のホッパーに投入し、押出機内で樹脂組成物を加熱溶融し、発泡を行った。発泡溶融樹脂は温度を215℃に設定したTダイにてリップ部からシート状に押し出され、別途供給された1100mm幅で40μm厚みの延伸ポリプロピレン(OPP)フイルム(東洋紡績株式会社製)上に発泡粘着シートがラミネートされた。その後、冷却ロールの冷却面により挟圧、接触させて、15℃まで冷却することで、積層粘着シート2を得た。得られた積層粘着シート2の厚みは約240μm(発泡粘着シートとしては約200μm)であり、発泡粘着シート全体が均等に発泡しているのが確認された。発泡粘着シートは、粘着性があることが確認された。
【0045】
実施例3
実施例2において、スチレン系熱可塑性エラストマーとしてプロペル6288を65重量%とタフテックS.O.E「SS9000」(旭化成株式会社製)を35重量%使用し、また、熱膨張性マイクロカプセル型発泡剤(C)としてファインセルマスターMSを2重量部使用した以外は、実施例2と同様に行い積層粘着シート3を得た。得られた積層粘着シート3の厚みは約250μm(発泡粘着シートとしては約210μm)であり、発泡粘着シート全体が均等に発泡しているのが確認された。発泡粘着シートの断面をデジタルマイクロスコープ(KEYENCE社、型番VHX−900)で観察したところ、直径数十μmの独立気泡が多数確認された(図2)。発泡粘着シートは、粘着性があり、180度引きはがし粘着力はシートの中央部で453g/mmであった。この粘着力は、粘着防塵テープ(シート)に好適な粘着性である。
【0046】
実施例4
実施例3において、スチレン系熱可塑性エラストマーとしてプロペル6288を75重量%とタフテックS.O.E「SS9000」(旭化成株式会社製)を25重量%使用し、また、熱膨張性マイクロカプセル型発泡剤(C)としてファインセルマスターMSを3重量部使用した以外は、実施例3と同様に行い積層粘着シート4を得た。得られた積層粘着シート4の厚みは約300μm(発泡粘着シートとしては約260μm)であり、発泡粘着シート全体が均等に発泡しているのが確認された。発泡粘着シートは、粘着性があることが確認された。
【0047】
参考例1
実施例3において、スチレン系熱可塑性エラストマーとしてプロペル6288を70重量%とタフテックS.O.E「SS9000」の代わりにポリプロピレン(サンアロマー成株式会社製、製品名;PHA03A)を30重量%使用した以外は実施例3と同様に実施し積層シートを得た。積層シートの発泡シート部分は発泡していたが、粘着性を有しなかった。
【0048】
参考例2
実施例3において、スチレン系熱可塑性エラストマーとしてプロペル6288を70重量%と、タフテックS.O.E「SS9000」の代わりにEVA(東ソ株式会社製、製品名;ウルトラセン633;VA含量20重量%)を30重量%使用した以外は実施例3と同様に実施し積層シートを得た。積層シートの発泡発シート部分は発泡していたが、粘着性を有しなかった。
【0049】
比較例1
発泡剤としてファインセルマスターMS(大日精化工業株式会社製、最大発泡温度:約230℃)に代わり、セルマイク(三協化成株式会社製、商品名:セルマイク、品番:MB−5064)を使用した以外は、実施例2と同様にして、積層粘着シートを得た。発泡粘着シートは、発泡はしたものの不均一な連続発泡であり、独立した気泡はほとんどなかった。また、シートは黄変しており、商品価値の無いものであった。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の発泡粘着シートは、発泡の均一性に優れ、十分な粘着性と化学安定性を有する。また、本発泡粘着シートは、溶剤フリーであり、特に粘着防除塵テープやシートとして好適に使用される。さらに、本発明の組成物は、Tダイ押出機にて容易に発泡シート成形や積層シート成形を行うことができ、非常に高い生産性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の積層粘着シートの製造フローを表す概略図である。
【図2】実施例3の発泡粘着シートのデジタルマイクロスコープ像である。
【符号の説明】
【0052】
1 押出機
2 Tダイ
3 プレスロール
4 冷却ロール
5 基材
6 発泡粘着樹脂(発泡粘着シート)
7 積層粘着シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレン系熱可塑性エラストマー(A)、粘着付与剤(B)および熱膨張性マイクロカプセル型発泡剤(C)の各成分を含み、スチレン系熱可塑性エラストマー(A)が10〜90重量%、粘着剤付与剤(B)が90〜10重量%(但し、成分(A)と成分(B)の合計を100重量%とする。)であり、かつ成分(A)および成分(B)の合計100重量部に対し熱膨張性マイクロカプセル型発泡剤(C)が1〜5重量部である組成物をTダイ押出機により170〜250℃で発泡成形してなることを特徴とする発泡粘着シート。
【請求項2】
熱膨張性マイクロカプセル型発泡剤(C)が、熱可塑性樹脂を殻壁として、液化した低沸点炭化水素を内包した二重構造の平均粒子径10〜40μmの微小球体であることを特徴とする請求項1記載の発泡粘着シート。
【請求項3】
発泡粘着シートの厚さが、100〜300μmである請求項1または2に記載の発泡粘着シート。
【請求項4】
スチレン系熱可塑性エラストマー(A)、粘着付与剤(B)および熱膨張性マイクロカプセル型発泡剤(C)の各成分を含み、スチレン系熱可塑性エラストマー(A)が10〜90重量%、粘着剤付与剤(B)が90〜10重量%(但し、成分(A)と成分(B)の合計を100重量%とする。)であり、かつ成分(A)および成分(B)の合計100重量部に対し熱膨張性マイクロカプセル型発泡剤(C)が1〜5重量部である組成物をTダイ押出機により170〜250℃で発泡してなる発泡粘着樹脂が基材にラミネートされてなることを特徴とする積層粘着シート。
【請求項5】
熱膨張性マイクロカプセル型発泡剤(C)が、熱可塑性樹脂を殻壁として、液化した低沸点炭化水素を内包した二重構造の平均粒子径10〜40μmの微小球体であることを特徴とする請求項4記載の積層粘着シート。
【請求項6】
積層粘着シートの厚さが、120〜350μmである請求項4または5に記載の積層粘着シート。
【請求項7】
スチレン系熱可塑性エラストマー(A)、粘着付与剤(B)および熱膨張性マイクロカプセル型発泡剤(C)の各成分を含み、スチレン系熱可塑性エラストマー(A)が10〜90重量%、粘着剤付与剤(B)が90〜10重量%(但し、成分(A)と成分(B)の合計を100重量%とする。)であり、かつ成分(A)および成分(B)の合計100重量部に対し熱膨張性マイクロカプセル型発泡剤(C)が1〜5重量部である組成物をTダイ押出機により170〜250℃で発泡成形することを特徴とする発泡粘着シートの製造方法。
【請求項8】
スチレン系熱可塑性エラストマー(A)、粘着付与剤(B)および熱膨張性マイクロカプセル型発泡剤(C)の各成分を含み、スチレン系熱可塑性エラストマー(A)が10〜90重量%、粘着剤付与剤(B)が90〜10重量%(但し、成分(A)と成分(B)の合計を100重量%とする。)であり、かつ成分(A)および成分(B)の合計100重量部に対し熱膨張性マイクロカプセル型発泡剤(C)が1〜5重量部である組成物をTダイ押出機により170〜250℃で発泡した発泡粘着樹脂を基材にラミネートすることを特徴とする積層粘着シートの製造方法。
【請求項9】
前記請求項1から3のいずれかに記載の発泡粘着シートを粘着剤層として含むことを特徴とする粘着防塵テープ。
【請求項10】
前記請求項4から6のいずれかに記載の積層粘着シートを含んでなることを特徴とする粘着防塵テープ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−70655(P2010−70655A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−239964(P2008−239964)
【出願日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願人】(308023837)株式会社イッコーズ (1)
【出願人】(508162352)株式会社イックス (3)
【Fターム(参考)】