説明

白色光発光材料および白色光発光装置

【課題】 分光分析機器、製造管理、照明などに用いられる白色光源において、高い出力安定性、高い集光性、高い輝度を備えた白色光を提供する。
【解決手段】 AlFを20〜45モル%、アルカリ土類フッ化物としてMgFを0〜15モル%、CaFを7〜25モル%、SrFを0〜15モル%、及びBaFを5〜25モル%の範囲で且つアルカリ土類フッ化物を合計で40〜65モル%含有し、さらに、Y、La、Gd、Yb、及びLuから選ばれる一種以上の元素のフッ化物を10〜25モル%含有するハロゲン化物ガラスに、発光中心となる2価希土類イオンとしてイッテルビウムイオンを含有する白色光発光材料を増幅用媒体として用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分光分析機器、製造管理、照明などに用いられる白色光発光材料および、これを用いる白色光発光装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、白色光を得る方法としては、時間的に連続して光を得る方法と、パルス光を得る方法が知られている。連続して白色光を得る光源としては、ハロゲンランプのような熱放射型やキセノン放電ランプのような放電型などのランプ光源、LEDのような半導体光源、電子線励起の蛍光体などが知られている。また、パルス的に白色光を得る方法としては、放電フラッシュランプ、放電フラッシュランプ励起の蛍光体、ファイバの非線形光学効果を利用したスーパーコンティニュウム光源、電源をパルス変調したLEDなどのパルス化半導体光源、などが知られている。
【0003】
分光光学用途や生産管理用の分析機器、顕微鏡の照明などには、連続した出力が非常に安定な白色光が必要である。また、産業用のマシンビジョン用照明光源にはパルス化光源を用いる場合が多い。連続して白色光を得る方法の中で、ハロゲンランプなどの熱放射型のランプは出力変動が少なく、分光目的に非常に多く使用されている。しかし、ハロゲンランプの電気−光変換は熱を介して行われるために効率が低く、冷却用のファンや放熱フィンからの廃熱処理が問題となっている。また、コンデンサレンズで集光したとしても、集光性が低い上に、照射面での照度均一性が得にくい問題がある。さらに、起動から安定化するまで30分程度の時間がかかるため、生産管理用の分析機器には不向きである。
【0004】
同様の問題は、放電ランプ、LEDなどの半導体光源、フラッシュランプ、フラッシュランプ励起蛍光体、電子線励起蛍光体などにも存在し、微小領域を高効率で照明するのには不向きである。これに対し、スーパーコンティニュウム光源はファイバ出力なので微小領域に集光できる上に、均一照射を実現しやすい利点がある。しかし、スーパーコンティニュウム光源には超短パルスレーザが必要であり、システムが複雑で高価になりやすい。
【0005】
白色を発生させる蛍光体材料としては、2価希土類(Eu、Sm、Yb、Dy)などを用いる方法が知られており、結晶材料(特許文献1)、セラミック材料(特許文献1)、蛍光体粉末(特許文献2)で実用化されている。しかし、これらの材料では、紫外線励起による単純な蛍光体や蛍光管材料として提案されているだけであり、集光性や照射強度均一性の解決にはなっていない。また、これらの報告では従来の発光装置構造を踏襲しているため、電気−光変換効率も低いままである。これらの物質に対し、ハロゲン化物ガラスは耐久性に劣ることが知られており、これまでハロゲン化物ガラス中の2価希土類の発光に関する詳細な解析は行われていない。わずかに報告されている例としては、Sm、Euなどの2価発光スペクトル(特許文献4、特許文献3)、Eu2価の分光測定(非特許文献2)、Zr系フッ化物ガラス中の希土類イオンの一般的な蛍光特性の総説(非特許文献3)などが知られている。2価Ybのハロゲン化物ガラス中での分光特性は唯一、非特許文献1に述べられているが、この組成はガラス化するために急冷操作が必要で実用的でない。
【特許文献1】特開2001−322867号公報
【特許文献2】特開平10−110165号公報
【特許文献3】特開2005−255512号公報
【特許文献4】特開2006−248800号公報
【非特許文献1】J.W.M.Verwey, G.Blasse “The luminescence of divalent and trivalent rare earth ions in SYAM−fluoride glass.,” Journal of the Physics and Chemistry of Solids, 1992, vol. 53, no. 9, p. 1157−62.
【非特許文献2】N.V.Gurev, 他 ”Spectroscopic studies of the structural features of alkaline fluorozirconate glasses containing europium.,” Optics and Spectroscopy, 1991, vol. 71, no. 2, p. 184−7.
【非特許文献3】P.P.Feofilov “Luminescence of tri−and bivalent ions of the rare earths in crystals of fluorite type.,” Acta Physica Polonica, 1964 , vol. 26, no. 3−4 (9−10), p. 331−343.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述のように、出力が非常に安定な連続した白色光が要求される、分光光学用途、生産管理用の分析機器、及び顕微鏡の照明などの光源としては、ハロゲンランプなどの熱放射型のランプでは効率及び集光性が低く照射面の照度均一性や廃熱処理などに問題がある。さらに、放電ランプ、LEDなどの半導体光源、フラッシュランプ、フラッシュランプ励起蛍光体、電子線励起蛍光体なども同様な問題がある。
【0007】
また白色を発生させる蛍光体材料においても、紫外線励起による単純な蛍光体や蛍光管材料として提案されているだけであり、集光性や照射強度均一性の解決にはなっていない。特に発光中心として2価Ybを用いる場合、ガラス中に2価のYbを生成する方法として、水素などの還元ガスを含む還元雰囲気で溶融する方法、溶融前原料に還元種として炭素やアルミニウム金属を微量添加する方法、又は超短パルスレーザの光還元作用を利用する方法などが挙げられる。しかしながら酸化物結晶や酸化物ガラスにおいて、このような還元処理により希土類イオンを比較的容易に還元処理可能だが、フッ化物ガラスなどのハロゲン化物ガラスは、還元によって吸収損失が増加する問題や、結晶が発生し良質なガラスが得られない問題がある。
【0008】
本発明は、安定度が高く、しかも高効率かつ集光性や照射強度均一性に優れた産業用の白色発光材料及びこの発光材料を用いた白色光発光装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、かかる問題点に鑑み鋭意検討の結果、発光中心として2価のYbを用いる白色光発光材料において、還元処理でも良質なガラスが得られる2価のYbを含有したハロゲン化物ガラスの組成を見いだした。
【0010】
すなわち、AlFを20〜45モル%、アルカリ土類フッ化物としてMgFを0〜15モル%、CaFを7〜25モル%、SrFを0〜15モル%、及びBaFを5〜25モル%の範囲で且つアルカリ土類フッ化物を合計で40〜65モル%含有し、さらに、Y、La、Gd、Yb、及びLuから選ばれる一種以上の元素のフッ化物を10〜25モル%含有するハロゲン化物ガラスに、発光中心となる2価希土類イオンとしてイッテルビウムイオンを含有することを特徴とする白色光発光材料、又は該白色光発光材料を増幅用媒体として備え、波長が190nm以上450nm以下の励起光源が少なくとも1個以上と、該励起光源からの励起光を該白色光発光材料に結合する結合光学系と、該白色光発光材料からの発光を取り出す光学系を備えることを特徴とする白色光発光装置を提供するものである。
【0011】
また、発光中心となる2価希土類イオンのイッテルビウムイオンの含有量が、0.1〜5000重量ppmの範囲であることを特徴とする白色光発光材料、又は該白色光発光材料を増幅用媒体として備え、波長が190nm以上450nm以下の励起光源が少なくとも1個以上と、該励起光源からの励起光を該白色光発光材料に結合する結合光学系と、該白色光発光材料からの発光を取り出す光学系を備えることを特徴とする白色光発光装置を提供するものである。
【0012】
さらには、本発明の白色光発光材料をコアに用いることを特徴とする光導波路、又は該光導波路を増幅用媒体として備え、波長が190nm以上450nm以下の励起光源が少なくとも1個以上と、該励起光源からの励起光を該光導波路に結合する結合光学系と、該光導波路からの発光を取り出す光学系を備えることを特徴とする白色光発光装置を提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、高い出力安定性、高い集光性、高い輝度を備えた白色光源を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の内容を詳細に述べる。
【0015】
本発明の白色光発光材料は、AlFを20〜45モル%、アルカリ土類フッ化物としてMgFを0〜15モル%、CaFを7〜25モル%、SrFを0〜15モル%、及びBaFを5〜25モル%の範囲で且つアルカリ土類フッ化物を合計で40〜65モル%含有し、さらに、Y、La、Gd、Yb、及びLuから選ばれる一種以上の元素のフッ化物を10〜25モル%含有するハロゲン化物ガラスに、発光中心となる2価希土類イオンとしてイッテルビウムイオンを含有する材料である。特にハロゲン化物ガラスは、AlFを30〜40モル%、アルカリ土類フッ化物としてMgFを5〜12モル%、CaFを10〜20モル%、SrFを5〜12モル%、及びBaFを8〜20モル%の範囲で且つアルカリ土類フッ化物を合計で45〜60モル%含有し、さらに、Y、La、Gd、Yb、及びLuから選ばれる一種以上の元素のフッ化物を10〜20モル%含有するのが、耐還元の効果が大きく結晶化しにくいことから、特に白色光発光材料として好ましい。
【0016】
本組成のガラスの屈折率を制御するために、塩素(Cl)、ヨウ素(I)、又は臭素(Br)を添加することができる。添加方法としては、例えば、原料フッ化物の一部をこれらのハロゲン化物に置き換えて添加することができる。添加量はガラスの安定性が保たれる範囲として、15モル%以下にとどめる必要がある。
【0017】
2価のイッテルビウムイオン(Yb2+)の含有量としては、0.1〜5000重量ppmの範囲である必要がある。Yb2+の濃度がこの範囲未満では、吸収係数が低くなり、長尺の媒質が必要となって実用的でない。一方、5000重量ppmを超えるような高濃度領域では、吸収が大きくなりすぎて表面発光に近づくため、均一照射のための材料としては不適当である。
【0018】
また、本発明の白色発光材料をコアに用いる光導波路として、コアの断面形状は円形または矩形の導波路を用いることもできるし、2重クラッド構造をとることもできる。コアの屈折率調整には前述のように塩素、臭素、ヨウ素を用いる方法以外に、アルカリ土類やランタノイドの含有量を調整する方法も利用できる。クラッド材料としては、コア材料と反応せず、整形可能で、励起光と発生する発光の両方の波長領域で実用的な透明性を備えていればよい。具体的には、本発明の基本組成と同等のAl系フッ化物ガラスや、そのほかの組成としてフツリン酸塩ガラス、低融点酸化物ガラス、有機無機ハイブリッドガラス、紫外域まで透明性の高い含フッ素系樹脂材料などを挙げることができる。
【0019】
また、本発明の光導波路をファイバとして形成する場合は、熱物性が比較的近い、本発明の材料と同系列のAl系フッ化物ガラスを第一クラッドに用いるのが特に好ましい。第一クラッドの外側には、樹脂系の第二クラッドを形成することもできるし、通常の被覆樹脂をコーティングすることもできる。また、クラッドとして樹脂材料を使用する場合は、紫外線硬化型樹脂よりも熱硬化型樹脂が好ましい。
【0020】
さらに、本発明の白色発光材料又は光導波路を増幅用媒体として備え、波長が190nm以上450nm以下の励起光源が少なくとも1個以上と、該励起光源からの励起光を該白色光発光材料に結合する結合光学系と、該白色光発光材料からの発光を取り出す光学系を備えることを特徴とする、白色光発光装置において、励起光源としては、放電ランプやLED、LDなどを用いることができるし、特にビームの集光性などのビーム品質が重要である場合は、レーザ光の高調波を用いることができる。さらには、半導体レーザ励起固体レーザ(DPSSL)やYb:ファイバレーザ(YDFL)などの高調波は、紫外〜青色の単一波長で高出力が得られるため、特に有用である。
【0021】
励起波長として190nm未満では、空気中を伝搬できないだけでなく、母材料の短波長側吸収端に近づくため、高出力励起では母材が損傷を受けやすくなり、実用上好ましくない。一方、450nmを超えると、Yb2+イオンの吸収係数が極端に低下するので、効率の良い励起は困難になり、好ましくない。より好ましい波長範囲としては、励起光源の入手が容易でYb2+の吸収係数が大きい250〜380nmの範囲である。
【0022】
励起光源からの励起光を本発明の白色光発光材料に結合する結合光学系として、励起光源が放電ランプなどのランプ光源の場合は、反射鏡などを備えたハウジング内で該白色光発光材料に励起光を集中させる方法が好ましい。励起光源がLEDも同様の構成を取ることができる。また、LEDとLDの場合は光出力端に非常に近いところでビームを整えれば、本発明の材料を端面から励起する構成を取ることもできる。さらに、DPSSLやYDFLの高調波を用いる場合は元々ビームを小さく絞れるので、該白色光発光材料を端面励起する場合に特に適している。
【0023】
また、本発明の白色光発光材料をコアとして平面光導波路やファイバに用いた場合は、カットオフ波長を適切に設定することで、必要な波長範囲でシングルモード光を得ることができる。例えば、カットオフ波長を550nmに設定した場合、550nm〜800nmの広帯域にわたるシングルモード光を得ることができる。
【0024】
さらに、本発明の白色光発光材料をコアとした光導波路がファイバである場合は、カットオフ波長と曲げ半径を調整することで、特定の波長範囲の光を取り出すことも可能である。例えば、カットオフ波長550nmのファイバを直径10mmに数十回巻くことで、550nm〜750nmの範囲の光を、シングルモード光として選択的に取り出すことができる。この効果は、出力側にピグテールファイバを取り付けた場合も同様にして得ることができる。
【0025】
本発明により得られる白色光は、通常の分光手段やパワー分岐手段によって、複数の波長帯や複数の供給ラインに分割することができる。例えば、波長特性のある光学的多層膜を備えた光学部品によって、特定波長を取り出すことや、あるいは阻止することができる。また、光スプリッタなどのパワー分岐手段を用いれば、多数の光路に分割可能である。
【0026】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
【実施例1】
【0027】
母材料としてAlF系フッ化物ガラスを用い、希土類元素として二価イッテルビウム(Yb2+)を100ppm添加した。ガラス組成は35AlF−15LnF−10MgF−16.7CaF−10SrF−11.7BaF−1.6BaCl(数字は各フッ化物原料のmol%)であり、LnFは希土類を表している。Ybは三フッ化物の形でLnFの一部として添加し、LnF部分の残りはYFで補っている。Yb2+は、ガラス溶融時に雰囲気ガスにHを流通し、Yb3+を還元処理して生成した。
【0028】
還元によるYb2+の生成量は、ランバート・ベールの法則から求めた。具体的には、あらかじめ元のYb3+添加ガラスの960nm帯の吸収量から単位濃度当たりのYb3+吸収係数を求め、還元後の960nm帯吸収量から還元条件とYb3+含有量の減少傾向を関連づけておく。Yb3+の減少量はすなわちYb2+の生成量である。Yb2+の生成量と紫外吸収の増加分から紫外領域でのYb2+の単位濃度当たりの吸収係数が求められる。得られたYb2+の吸収スペクトルを図1に示す。あらかじめ求めておいた還元条件とYb2+生成量の関係から、Yb2+の生成量を制御できる。また、ガラスの厚みと紫外吸収量と図1の吸収スペクトルから、還元処理後のガラス中に含まれるYb2+含有量を直接求め、還元制御の精度を確認することができる。
【0029】
実験配置を図2に示す。厚み5mmに平行平板研磨したガラス11中に、倍率10倍の対物レンズ12で励起光源である波長365nmの紫外線ランプ13の放射を集光した。励起光除去フィルタ14を通して400nm以上の光だけを倍率10倍の対物レンズ15でコリメートし、さらに倍率10倍の対物レンズ16でマルチモード石英ファイバ17に集光し、蛍光スペクトルを光スペクトラムアナライザ18で測定した。
【0030】
光スペクトラムアナライザにより測定された蛍光スペクトルを図3に示す。Yb2+からの広帯域白色蛍光が観測された。
【実施例2】
【0031】
母材料としてAlF系フッ化物ガラスを用い、希土類元素として二価イッテルビウムイオン(Yb2+)を10重量ppm、三価イッテルビウムイオン(Yb3+)を2wt%添加した。コアのガラス組成は35AlF−15LnF−10MgF−16.7CaF−10SrF−11.7BaF−1.6BaCl、クラッドのガラス組成は35AlF−15LnF−10MgF−20CaF−10SrF−10BaF(数字は各フッ化物原料のmol%)であり、LnFは希土類を表している。Ybは三フッ化物の形でLnFの一部として添加し、LnF部分の残りはYFで補っている。Yb2+は、ガラス溶融時に雰囲気ガスにHを流通し、所定の還元比率になるように還元処理した。このファイバのNAは0.15、カットオフ波長は780nm、ファイバ長は5cmである。実験配置を図4に示す。Yb2+添加AlF系フッ化物ファイバ21の両端を8度斜め研磨し、倍率10倍の対物レンズ22で励起光源である波長340nmのYbファイバレーザ3倍波発生装置23からの放出光を集光した。励起光除去フィルタ24を通して紫外光を除去し、400nm以上の可視光だけを倍率10倍の対物レンズ25でコリメートし、さらに倍率10倍の対物レンズ26でマルチモード石英ファイバ27に集光した。このファイバからの出射光の蛍光スペクトルを光スペクトラムアナライザ28で測定した。また、ビームプロファイラ29でファイバ端からの出射光の遠視野像を観察した。
【0032】
光スペクトラムアナライザにより測定された蛍光スペクトルを図5に示す。Yb2+からの強い白色蛍光が認められる。また、ビームプロファイラにより測定された遠視野像の強度分布を図6に示す。なめらかな強度分布が得られている事が分かる。
【実施例3】
【0033】
実施例2において、マルチモード石英ファイバ27端からの出射光をパワーメータで計測し、時間変動を確認した。このときの励起光源の安定度は、RMS=0.2%程度であった。測定の結果、白色光のパワー安定度は、励起光源の安定度と同程度のRMS=0.18%と分かった。測定誤差は±0.02%程度なので、誤差が最大の時で励起光源と同じ安定度といえる。
【実施例4】
【0034】
実施例2において、Yb2+添加AlF系フッ化物ファイバ21の励起光源側に、励起光は透過し可視光は広帯域に反射するダイクロイックミラーを挿入し、白色発光がファイバ内を折り返すようにセットした。このとき光スペクトラムアナライザにより測定された、マルチモード石英ファイバ27端からの出射光の蛍光スペクトルを図7に示す。450〜600nm帯の光強度が増強されていることが分かる。また、このときのパワーの安定度はRMS<0.15%であり、励起光源の安定度よりも向上していた。これは、ファイバ中を光が折り返しているため、光の蓄積時間が長くなったためと考えられる。
【実施例5】
【0035】
実施例1と同じ組成のガラスを還元処理なしにガラス化し、その後、波長780nm、パルス幅100fs、繰り返し1kHz、1パルスエネルギーが100μJのレーザを照射して、長さ5cmのYb還元導波路を書き込んだ。書き込み深さは表面から80μmである。実験配置を図8に示す。Yb2+添加AlF系フッ化物導波路40に対し、側方からXeClレーザ41をシリンドリカルレンズ42で線状に集光して励起し、導波路の前後に設置した高反射ミラー43で発光を閉じこめた。共振器内には波長可変にするための波長可変エタロン44を設置し、出力波長を選択した。波長選択されて増強された蛍光は、10倍対物レンズ45でマルチモード石英ファイバ46に集光し、光スペクトラムアナライザ47で測定した。測定はXeClレーザ41の励起タイミングと同調し、最適な発光強度が得られるようにディレイ調整されている。光スペクトラムアナライザにより測定された同調スペクトルを図9に示す。狭帯域化した発光を波長400nmから850nmまで掃引できた。
【実施例6】
【0036】
実施例5のYb2+添加AlF系フッ化物導波路を用い、図10のように紫外LEDアレイ51を配置した。紫外LEDアレイ51は波長370〜400nmの広帯域光を発光するAlGaN系LEDを用いている。この紫外LEDアレイの消費電力は合計10Wである。Yb2+添加AlF系フッ化物導波路50の片端に広帯域高反射ミラー52を設置し、導波路内で発生した白色光を折り返している。出力端から出射した蛍光は、10倍対物レンズ53でコリメートし、さらに10倍対物レンズ54でマルチモード石英ファイバ55に集光した。この石英ファイバを光スペクトラムアナライザ56に接続して、スペクトルを測定した。光スペクトラムアナライザによる測定結果を図11に示す。広帯域の白色光が得られている事が分かる。また、この導波路からの出射光のM2は、中心波長520nmとしたとき、2以下であり、元の励起光源のLEDよりも遙かに高いビーム品質を備えている事が分かった。また、光スペクトラムアナライザ56へ接続されるマルチモード石英ファイバ55端での出力を可視光用パワーメータで測定の結果、出力は150μWであった。
【実施例7】
【0037】
水素0.5体積%の窒素ガス雰囲気で、ガラス原料をグラッシーカーボンるつぼ中、1000℃で1時間溶融して、るつぼごと銅ブロック上で冷却した。冷却後のガラスの状態を21種類の組成について観察した。21種類のガラスについて、組成と観察結果を表1に示す。表中の組成の数値の単位はモル%であるが、YbFについてのみ、2価Ybの吸収スペクトルから換算して含有量を求めその単位は重量ppmである。また表中の観察後の結果は、目視で白濁または結晶化したものを×、一部に白濁部分や結晶が含まれるものを△、完全に透明なものを○とした。さらに、全ての組成について波長365nmで励起した蛍光分光測定を実施し、Yb2+起因の広帯域蛍光を観測しており、Ybが2価に還元されていることを確認している。
【0038】
ガラス化の結果、本発明の範囲内のガラス(表中のNo.1〜3、5、7〜9、及び16〜21のガラス)で透明なガラスが得られた。また表中のNo.4はAlF及びMgFの含有量が本発明の範囲外、No.6はAlFの含有量及びMgF、CaF、SrF、BaFの含有量の合計が本発明の範囲外、No.10はCaFの含有量及びMgF、CaF、SrF、BaFの含有量の合計が本発明の範囲外、No.11はSrFの含有量及びMgF、CaF、SrF、BaFの含有量の合計が本発明の範囲外、No.12はCaFの含有量が本発明の範囲外、No.13はBaFの含有量及びMgF、CaF、SrF、BaFの含有量の合計が本発明の範囲外、No.14とNo.15はY、La、及びYbのフッ化物の含有量の合計が本発明の範囲外のガラスで、いずれも透明なガラスは得られなかった。
【0039】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、分光分析機器、製造管理、照明などに用いられる白色光源に関して、理化学用の分光測定装置、微細領域や狭窄エリアの分光測定装置や照明光源、産業用の色識別や形状識別用光源、顕微鏡光源、広帯域の色素励起光源、胃カメラなどの内視鏡用の照明光源、その他医療用の光源、美容などの分野での光源など、幅広い用途での利用が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】実施例1のYb2+吸収スペクトルを示す図である。
【図2】実施例1の実験配置図である。
【図3】実施例1のスペクトル測定結果である。
【図4】実施例2の実験配置図である。
【図5】実施例2のスペクトル測定結果である。
【図6】実施例2の出射光の遠視野像である。
【図7】実施例4のスペクトル測定結果である。
【図8】実施例5の実験配置図である。
【図9】実施例5の波長同調結果を示す図である。
【図10】実施例6の実験配置図である。
【図11】実施例6のスペクトル測定結果である。
【符号の説明】
【0042】
11 Yb2+添加AlF系フッ化物ガラス試料
12 10倍対物レンズ
13 波長365nmの紫外線ランプ
14 励起光除去フィルタ
15 10倍対物レンズ
16 10倍対物レンズ
17 マルチモード石英ファイバ
18 光スペクトラムアナライザ
21 Yb2+添加AlF系フッ化物ファイバ
22 10倍対物レンズ
23 波長340nmのYbファイバレーザ3倍波発生装置
24 励起光除去フィルタ
25 10倍対物レンズ
26 10倍対物レンズ
27 マルチモード石英ファイバ
28 光スペクトラムアナライザ
29 ビームプロファイラ
40 Yb2+添加AlF系フッ化物導波路
41 XeClレーザ
42 シリンドリカルレンズ
43 高反射ミラー
44 波長可変エタロン
45 10倍対物レンズ
46 マルチモード石英ファイバ
47 光スペクトラムアナライザ
50 Yb2+添加AlF系フッ化物ガラス導波路
51 紫外LEDアレイ
52 広帯域高反射ミラー
53 10倍対物レンズ
54 10倍対物レンズ
55 マルチモード石英ファイバ
56 光スペクトラムアナライザ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
AlFを20〜45モル%、アルカリ土類フッ化物としてMgFを0〜15モル%、CaFを7〜25モル%、SrFを0〜15モル%、及びBaFを5〜25モル%の範囲で且つアルカリ土類フッ化物を合計で40〜65モル%含有し、さらに、Y、La、Gd、Yb、及びLuから選ばれる一種以上の元素のフッ化物を10〜25モル%含有するハロゲン化物ガラスに、発光中心となる2価希土類イオンとしてイッテルビウムイオンを含有することを特徴とする、白色光発光材料。
【請求項2】
発光中心となる2価希土類イオンのイッテルビウムイオンの含有量が、0.1〜5000重量ppmの範囲であることを特徴とする、請求項1に記載の白色光発光材料。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の材料をコアに用いることを特徴とする光導波路。
【請求項4】
増幅用媒体として請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の発光材料を備え、波長が190nm以上450nm以下の励起光源が少なくとも1個以上と、該励起光源からの励起光を該白色光発光材料に結合する結合光学系と、該白色光発光材料からの発光を取り出す光学系を備えることを特徴とする、白色光発光装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−201610(P2008−201610A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−38133(P2007−38133)
【出願日】平成19年2月19日(2007.2.19)
【出願人】(000002200)セントラル硝子株式会社 (1,198)
【Fターム(参考)】