説明

皮膚外用剤

【課題】 本発明は、ウルソール酸リッチのローズマリー抽出物(Rosmarinus officinalis L. Extract)の皺予防効果がいかんなく発揮できる安定な製剤を提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明によれば、特定の高級アルコールと多価アルコールとの併用によりローズマリー抽出物が安定に溶解できる技術が提供でき、当該技術を応用した各種の幅広い製剤設計が可能である。得られたクリーム、乳液などの乳化型製剤においては分離やざらつき感の発生等もなく長期にわたって安定な製剤が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウルソール酸を最高濃度で50%含有するエタノール由来のローズマリー抽出物(Rosmarinus officinalis L. Extract)を配合することを特徴とする皮膚外用剤であり、さらに詳しくは、相溶性に優れた経時的に安定なローズマリー抽出物配合の皮膚外用剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の健康志向は根強く、食生活に気を配りながら内面的に健康な肉体や精神を維持するライフスタイルが定着した感がある。健康食品や機能性食品の積極的な摂取等がその現われでもある。
【0003】
また、栄養補助食品等のいわゆるサプリメントは、病院治療における新しい食形態として専門領域を形成しつつある。
【0004】
一方、化粧品領域においては、いつまでも美しくありたいという人間の本質的な欲求を充足すべく素材の開発が希求されている。特にいわゆるアンチエイジングへの消費者の関心は高く、従来にも増して効果を実感できる素材の提供が求められるようになってきている。
【0005】
本発明者らは、このような課題を解決するために、シソ科の植物に着目し、ローズマリー(Rosmarinus officinalis L.)に関する抽出技術に着手したところ、特定の抽出分画に所望の皺予防効果を見出すことができた。さらに、研究を続けたところ、当該皺予防効果の本質は、抽出物中に存在するウルソール酸であることがわかった。
【0006】
しかしながら、本発明者らが見出したローズマリー抽出物(Rosmarinus officinalis L. Extract)は、ウルソール酸を最高濃度で50%を含む他、種々の夾雑物を含んでいた。
【0007】
そのため、製剤設計段階において種々検討してみたが、特に製剤時の溶解が困難であり、溶解不十分な状態で製剤化した場合には、ウルソール酸自体や夾雑物の成分析出が経時的に発生し、抽出物本来の機能性が発揮できないという新たな問題に直面した。
【0008】
一方、ウルソール酸類のアンチエイジングに関する効能は公知であり、その溶解技術についてもいくつかの試みがされている。
【特許文献1】特開昭58−57307号公報
【特許文献2】特開平09−143050号公報
【特許文献3】特開2006−36715号公報
【特許文献4】特開2006−36716号公報
【特許文献5】特開2007−308381号公報
【特許文献6】特開2007−308385号公報
【0009】
しかしながら、本発明者らが見出した特定の条件で製造したローズマリー抽出物(Rosmarinus officinalis L. Extract)は、これら公知の従来技術のいずれによっても十分な溶解が達成出来ず、依然として市場において耐えうる安定な製剤の提供ができないことが明らかとなった。
【0010】
そこで、このような問題を解決すべく製剤化条件を検討したところ、特定の高級アルコール及び多価アルコールとの共存下において溶解させた調製溶液を使用することで、所望のスキンケア製剤を提供しうることがわかり、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明によれば、特定のローズマリー抽出物(Rosmarinus officinalis L. Extract)を特定の高級アルコールと多価アルコール共存下において溶解させたことを特徴とする皮膚外用剤が提供される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、ウルソール酸リッチのローズマリー抽出物(Rosmarinus officinalis L. Extract)の皺予防効果がいかんなく発揮できる安定な製剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記従来の課題等を解決するために鋭意探索を続けた結果、先ずはセタノール、イソセチルアルコール、オレイルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール、ベヘニルアルコール、デシルテトラデカノール、テトラデシルオクタデカノール、ドデシルヘキサデカノールのいずれかから選ばれた1種以上の高級アルコールと、1,3ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,2ヘキサンジオール、ペンチレングリコールのいずれかから選ばれた1種以上の多価アルコールとを一定の条件で共存させることにより、最高濃度で50%のウルソール酸を含有するローズマリー抽出物(Rosmarinus officinalis L. Extract)を溶解できることを見出した。そして当該配合技術の応用性を検討した結果、ウルソール酸を高濃度に含んでいてもウルソール酸自体の析出のない長期に安定な配合製剤を提供できることを見出し、本発明を完成したものである。
【0014】
すなわち、本発明によれば、セタノール、イソセチルアルコール、オレイルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール、ベヘニルアルコール、デシルテトラデカノール、テトラデシルオクタデカノール、ドデシルヘキサデカノールのいずれかから選ばれた1種以上の高級アルコールと、1,3ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,2ヘキサンジオール、ペンチレングリコールのいずれかから選ばれた1種以上の多価アルコールとの共存下、最高濃度で50%のウルソール酸を含有するローズマリー抽出物(Rosmarinus officinalis L. Extract)を溶解し、配合したことを特徴とする皮膚外用剤が提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ローズマリー抽出物(Rosmarinus officinalis L. Extract)に含まれるウルソール酸の結晶析出がない安定な皮膚老化防止剤が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、本発明の実施形態を詳しく説明する。本発明の皮膚外用剤は、シソ科植物のうちから特定されたローズマリー(Rosmarinus officinalis L.)から独自の製法で抽出した有効成分を配合することを特徴とするものである。ここでローズマリー(Rosmarinus officinalis L.)とは、独特の芳香を持つシソ科の常緑低木であり、地中海沿岸に自生し、ヨーロッパ中部をはじめ世界各地で一般に栽培されているものである。
【0017】
本発明でいうローズマリー抽出物(Rosmarinus officinalis L. Extract)とは、特定の前処理を行ったローズマリー(Rosmarinus officinalis L.)を一定条件下、特定の溶媒で抽出することによって得られる抽出物を意味する。以下に、本発明の有効成分であるローズマリー抽出物(Rosmarinus officinalis L.)抽出物の製造方法を具体的に述べる。
【0018】
本発明では通常、ローズマリー(Rosmarinus officinalis L.)の葉を原料とする。当該使用する原料の処理工程としては、先ずはローズマリー(Rosmarinus officinalis L.)100gに対して精製水1kgを加え、121〜125℃で60分加熱後、30℃以下に冷却する。さらにローズマリー(Rosmarinus officinalis L.)を回収し、精製水で洗浄、水切り後に熱風(約80℃)で15時間以上乾燥させる。十分に乾燥させたローズマリー(Rosmarinus officinalis L.)をパワーミルで粉砕し、後の抽出処理工程用の原料として冷暗所(−20℃)で保管する。
【0019】
前項の条件で前処理したローズマリー(Rosmarinus officinalis L.)に低級アルコールを1:10〜1:1000の重量割合で添加し、約40℃の温度条件で、2〜3時間攪拌して抽出する。その抽出液をろ過または遠心分離等の精製工程を経て得たろ液に、その液量の半分から倍量の精製水を添加攪拌し、しばらく静置後に析出した成分を遠心分離して沈渣を回収する。当該残渣を80℃で乾燥させると本発明のローズマリー抽出物(Rosmarinus officinalis L. Extract)を得ることができる。
【0020】
出発原料のローズマリー(Rosmarinus officinalis L.)は、熱水で溶出される成分を予め除去したものを使用することが必須であり、使用部位も葉に限定される。
【0021】
抽出工程における溶媒は、メタノール、エタノール、プロパノールおよびブタノール等の低級アルコールがいずれも使用可能であるが、特にその中でもエタノールが本発明の目的とする有効性との関係上もっとも好ましい。エタノールの場合には少量の水との混液でも使用に供することができる。
【0022】
抽出温度と時間は有効成分の抽出効率を考えて、少なくとも40℃に維持しつつ、2時間以上攪拌抽出するのが好適である。抽出の際のpH調整は特には要しない。
【0023】
低級アルコールで抽出した液は、後の処理工程で不要な成分を除去し、ウルソール酸を高濃度で分取しやすくできるよう一旦少なくとも30℃以下に冷却し、当該溶液に容積費で少なくとも半分量の精製水を添加する。
【0024】
析出した沈殿物について遠心と洗浄を繰り返し、沈渣を回収することで本発明のウルソール酸高濃度に含むローズマリー抽出物(Rosmarinus officinalis L. Extract)を得る。
【0025】
このようにして得た本発明の抽出物は、それ自体をそのまま使用に供しても良いが、通常は製剤に配合して使用することができる。しかしながら、前述したとおり、当該抽出物の溶解性の特徴から、製剤化の際には特定の高級アルコールと多価アルコールの共存が安定な製品の提供と有効成分に係る機能性の効果的発現には不可欠である。
【0026】
すなわち、本発明によれば、ウルソール酸を最高濃度で50%含有するローズマリー抽出物(Rosmarinus officinalis L. Extract)を特定の高級アルコールと多価アルコール共存下において溶解させたことを特徴とする皮膚外用剤が提供される。
【0027】
ここで、ローズマリー抽出物(Rosmarinus officinalis L. Extract)の溶解用添加物として使用する高級アルコールと多価アルコールの条件についてさらに詳述する。
【0028】
本発明でいう高級アルコールとは、炭素数12以上のものであって、また、植物などから得られる油をケン化して得られるアルコール分画、脂肪酸を還元して得られる脂肪族アルコール」から適宜選択されるものであり、飽和・不飽和、脂肪族、芳香族いずれの使用も可能であるが、効果の点では飽和の直鎖状アルコールが好ましい。具体的には、C12−50アルコール、アブラナ種子ステロール、イソステアリルアルコール、イソセチルアルコール、オクチルドデカノール、オレイルアルコール、カプリリルグリコール、コメヌカステロール、コレステロール、シトステロール、ジヒドロキシステロール、水添ナタネ油アルコール、ステアリルアルコール、セタノール、ダイズステロール、デシルテトラデカノール、テトラデシルオクタデカノール、ドデシルヘキサデカノール、フィトステロール、ヘキシルデカノール、ベヘニルアルコール、ホホバアルコール、ミリスチルアルコール、ヤシアルコール、ラウウリルアルコール、ラノリンアルコールが挙げられ、好適にはセタノール、イソセチルアルコール、オレイルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール、ベヘニルアルコール、デシルテトラデカノール、テトラデシルオクタデカノール、ドデシルヘキサデカノールが挙げられる。
【0029】
また、一方の多価アルコールとしては、2価以上であればいずれも選択し得るが、具体的には1,3ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、プロピレングリコール、イソペンチルジオール、エリスルロース、グリセリン、ジグリセリン、1,10−デカンジオール、フィタントリオール、1,2ヘキサンジオール、ヘキシレングリコール、ペンチレングリコールが挙げられ、好適には1,3ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,2ヘキサンジオール、ペンチレングリコールが挙げられる。
【0030】
これら高級アルコールと多価アルコールはそれぞれ単独で添加しても本発明のローズマリー抽出物(Rosmarinus officinalis L. Extract)を溶解することはできないため、必ず共存させながら混合しなければならない。
【0031】
高級アルコールと多価アルコールとの配合比(重量)は、通常0.1:20〜20:0.1の範囲であり、好適には1:9〜9:1で使用するのが良い。これらは、ローズマリー抽出物(Rosmarinus officinalis L. Extract)1部に対して、通常4部以上、好適には5部以上の範囲で使用することで澄明な溶解物を得ることができる。なお、この際に適宜加温することで相溶性を向上する等の一般的な措置は任意である。
【0032】
ローズマリー抽出物(Rosmarinus officinalis L. Extract)と高級アルコールおよび多価アルコールそれぞれの添加順序は任意であるが、溶解スピード等工程面での有利性を考慮すると、好適には多価アルコールとローズマリー抽出物を先に混合し、高級アルコールを加え加温する方が良い。
【0033】
以上のようにして調製した溶解物は長期間低温で保管し、その後再度加温しても結晶の析出はなく安定であり、当該溶解物を用いて製剤化した各種の製剤についても安定であることが確認できた。すなわち本発明によれば、クリーム、乳液などの乳化型製剤においては分離やざらつき感の発生等もなく長期にわたって安定な製剤が提供される。
【0034】
本発明でいう皮膚外用剤の製剤の形態は、外用として提供し得るものであるが、化粧料一般に許容し得る基剤を選択し患部に直接塗布して使用される。この場合には、本発明の溶解技術をクリームや乳液に代表されるO/W、W/O型などの一般乳化系、W/O/W、O/W/O型の特殊な多層エマルジョン、マイクロエマルジョン、その他にもペースト剤、軟膏及びチンキ剤等の塗布剤型、エアゾール剤、スプレー剤等の噴霧剤型、パップ剤、プラスター剤等の貼付剤型など公知の形態の基礎基剤としても他の成分と組合せて幅広く応用に供され得るものであるが、本発明の溶解技術に係る効果が最も発揮され得る好適な剤型としては、クリームや乳液に代表される乳化系剤型である。
【0035】
これらの本発明の皮膚外用剤として許容し得る剤型において、高級アルコールと多価アルコールで溶解されたローズマリー抽出物(Rosmarinus officinalis L. Extract)としての配合量は、クリーム、ローション、乳液、パック、エッセンス等の化粧品の場合と、シートマスク剤、パップ剤、プラスター剤等の剤型として使用する場合のいずれにおいても、製剤全体に対して0.01〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%の範囲で配合される。
【0036】
なお、本発明においては、通常に用いられる種々の公知の有効成分、例えば、老化防止剤として公知のレチノール、レチノイン酸、美白剤として公知のコウジ酸、クエルセチン、グルタチオン、ハイドロキノン及びこれらの誘導体、縮合型タンニン類、カフェー酸、エラグ酸等のフェノール性化合物、末梢血管拡張剤としてはビタミンE、ビタミンEニコチネート、ニコチン酸、ニコチン酸アミド、ニコチン酸ベンジル等の各種ビタミン類、ショウキョウチンキ、トウガラシチンキ、消炎剤としては副腎皮質ホルモン、ε−アミノカプロン酸、塩化リゾチーム、グリチルリチン、アラントイン等の各種化合物、その他にも胎盤抽出物、甘草抽出物、紫根エキス、乳酸菌培養抽出物などの動植物・微生物由来の各種抽出物等を本発明の効果を損なわない範囲で、その時々の目的に応じて適宜添加して使用することができる。
【0037】
またさらに、本発明の化粧料にはこれら公知の有効成分に加え、油脂類などの基剤成分のほか、必要に応じて公知の保湿剤、防腐剤、酸化防止剤、キレート剤、pH調整剤、香料、着色剤等種々の添加剤を本発明の効果を損なわない範囲で併用することができる。
【実施例】
【0038】
次に実施例により本発明を説明するが、これらの開示は本発明の好適な態様を示すものであって、本発明を何ら限定するものではない。
【0039】
1.ローズマリー抽出物の製造例
<製造例1>
乾燥したローズマリー(Rosmarinus officinalis L.)の葉100gに水2000gを加え、121℃で60分間加熱した。ろ過してローズマリーを回収し、80℃で一晩乾燥させ、あらかじめ水で抽出される成分を除いたローズマリー約60gを得た。この前処理したローズマリー60gに95%エタノール600gを加え、40℃で2時間抽出した。これをろ過したろ液に1%の活性炭を加え脱色し、活性炭をろ過して除き、ろ液に水をろ液/水(2:1)の割合で加えて撹拌し、析出した成分を遠心分離して分け、沈渣を80℃で乾燥させ、約3gのローズマリー抽出物を得た。本抽出物におけるウルソール酸含有量は、40〜50%であった。
【0040】
<製造例2>
乾燥したローズマリー(Rosmarinus officinalis L.)の葉100gに95%エタノール1000gを加え、40℃で2時間抽出した。これをろ過したろ液に1%の活性炭を加え脱色し、活性炭をろ過して除き、ろ液に水をろ液/水(2:1)の割合で加えて撹拌し、析出した成分を遠心分離して分け、沈渣を80℃で乾燥させ、約4gのローズマリー抽出物を得た。本抽出物におけるウルソール酸含有量は、約30〜40%であった。
【0041】
<製造例3>
乾燥したローズマリー(Rosmarinus officinalis L.)の葉100gに95%エタノール1000gを加え、40℃で2時間抽出した。これをろ過したろ液に1%の活性炭を加え脱色し、活性炭をろ過して除き、ろ液に水をろ液/水(1:1)の割合で加えて撹拌し、析出した成分を遠心分離して分け、沈渣を80℃で乾燥させ、約6gのローズマリー抽出物を得た。本抽出物におけるウルソール酸含有量は、約20〜30%であった。
【0042】
<試験例1>「化粧品一般原料」に対する溶解性試験
a) 試験方法
本試験は、いわゆる基剤として汎用される原料との相溶性を確認することを目的に行うものの一例である。
製造例1で得た抽出物0.2g対し、疎水性の表1にあげた原料10gを添加し、徐々に温度を上げ、最大80℃まで加熱してそのときの溶解状態を確認した。
【0043】
b)試験結果と考察
表1に結果を示すとおり、ローズマリー抽出物(Rosmarinus officinalis L. Extract)は、シリコン、炭化水素、脂肪酸、エステル類には不溶であった。
【0044】
【表1】

【0045】
<試験例2>「高級アルコール又は多価アルコール」単独に対する溶解性試験
a) 試験方法
本試験は、ローズマリー抽出物の高級アルコールまたは多価アルコールそれぞれへの相溶性を確認することを目的に行うものの一例である。
製造例1で得た抽出物0.2g対し、表2にあげた高級アルコールまたは多価アルコールをそれぞれ単独で10gを添加し、徐々に温度を上げ、最大80℃まで加熱してそのときの溶解状態を確認した。
【0046】
b)試験結果と考察
表2に結果を示すとおり、ローズマリー抽出物(Rosmarinus officinalis L. Extract)は、多価アルコール、高級アルコールそれぞれの単独使用に対しては不溶であった。
【0047】
【表2】

【0048】
<試験例3>「高級アルコールと多価アルコール」併用に対する溶解性試験
a) 試験方法
本試験は、ローズマリー抽出物の溶解のために特定の高級アルコールと多価アルコールの併用が効果的であることを確認するために行うものの一例である。
製造例1で得た抽出物0.2g対し、表2にあげた高級アルコールまたは多価アルコールを組み合わせて10g(重量比1:9〜9:1の範囲)を添加し、徐々に温度を上げ、最大80℃まで加熱してそのときの溶解状態を確認した。
【0049】
b)試験結果と考察
表3に結果を示すとおり、ローズマリー抽出物(Rosmarinus officinalis L. Extract)は、多価アルコールと高級アルコールを組み合わせて使用(重量比1:9〜9:1の範囲で使用)することでいずれも澄明に溶解した。
【0050】
【表3】

【0051】
実際に本発明に基づき構成される成分を使用して、製剤化した処方例を以下にあげる。各処方例ともに、均一に溶解、均質に分散した安定な製剤を得ることが出来た。また、乳化系の製剤においては抽出物の影響による分離等は全く認められなかった。
【0052】
処方例1 クリーム1 (重量%)

1. ローズマリー抽出物(製造例1) 0.10
2. 1.3ブチレングリコール 5.00
3. セタノール 5.00
4.アルブチン 0.05
5.ポリオキシエチレンセチルエーテル 2.50
6.モノステアリン酸グリセリン 1.50
7.ベヘニルアルコール 5.00
8.流動パラフィン 7.00
9.オクタン酸セチル 5.00
10.メチルポリシロキサン 0.50
11.パラオキシ安息香酸エステル 0.70
12.カルボキシビニルポリマー 0.05
13.キサンタンガム 0.01
14.エデト酸二ナトリウム 0.01
15.精製水 適 量

予め加熱溶解した1乃至3を調製し、他の成分を添加して攪拌・乳化後、なめらかなクリームを得た。
【0053】
処方例2 クリーム2 (重量%)

1. ローズマリー抽出物(製造例2) 0.10
2. 1.3ブチレングリコール 5.00
3. セタノール 2.50
4.ベヘニルアルコール 2.50
5.アルブチン 0.05
6.ポリオキシエチレンセチルエーテル 2.50
7.モノステアリン酸グリセリン 1.50
8.ベヘニルアルコール 5.00
9.流動パラフィン 7.00
10.オクタン酸セチル 5.00
11.メチルポリシロキサン 0.50
12.パラオキシ安息香酸エステル 0.70
13.カルボキシビニルポリマー 0.05
14.キサンタンガム 0.01
15.エデト酸二ナトリウム 0.01
16.精製水 適 量

予め加熱溶解した1乃至3を調製し、他の成分を添加して攪拌・乳化後、なめらかなクリームを得た。
【0054】
処方例3 クリーム3 (重量%)

1. ローズマリー抽出物(製造例3) 0.10
2. ジプロピレングリコール 3.50
3.グリセリン 1.50
4. オクチルドデカノール 5.00
5.アルブチン 0.05
6.ポリオキシエチレンセチルエーテル 2.50
7.モノステアリン酸グリセリン 1.50
8.ベヘニルアルコール 5.00
9.流動パラフィン 7.00
10.オクタン酸セチル 5.00
11.メチルポリシロキサン 0.50
12.パラオキシ安息香酸エステル 0.70
13.カルボキシビニルポリマー 0.05
14.キサンタンガム 0.01
15.エデト酸二ナトリウム 0.01
16.精製水 適 量

予め加熱溶解した1乃至3を調製し、他の成分を添加して攪拌・乳化後、なめらかなクリームを得た。
【0055】
処方例4 クリーム4 (重量%)

1. ローズマリー抽出物(製造例1) 0.10
2. ペンチレングリコール 0.50
3.1.2ヘキサンジオール 0.50
4.ステアリルアルコール 1.00
5. ドデシルヘキサデカノール 4.00
6.アルブチン 0.05
7.ポリオキシエチレンセチルエーテル 2.50
8.モノステアリン酸グリセリン 1.50
9.ベヘニルアルコール 4.00
10.流動パラフィン 7.00
11.オクタン酸セチル 5.00
12.メチルポリシロキサン 0.50
13.パラオキシ安息香酸エステル 0.70
14.カルボキシビニルポリマー 0.05
15.キサンタンガム 0.01
16.エデト酸二ナトリウム 0.01
17.精製水 適 量

予め加熱溶解した1乃至3を調製し、他の成分を添加して攪拌・乳化後、なめらかなクリームを得た。
【0056】
処方例5 クリームパック (重量%)

1.ローズマリー抽出物(製造例2) 0.50
2. ペンチレングリコール 5.00
3. テトラデシルオクタデカノール 1.00
4.α−グルコシル−L−アスコルビン酸 3.00
5.ポリエチレングリコール1500 3.00
6.ステアリン酸ジエタノールアミド 5.00
7.ステアリン酸 5.00
8.ミリスチン酸 5.00
9.ヤシ油 15.00
10.天然ビタミンE 0.04
11.パラオキシ安息香酸エステル 0.20
12.dl−ピロリドンカルボン酸ナトリウム液
5.00
13.エデト酸二ナトリウムカルシウム 0.01
14.精製水 適 量

予め加熱溶解した1乃至3を調製し、他の成分を添加して攪拌・乳化後、適度の粘度を有するクリームパックを得た。
【0057】
処方例6 乳液1 (重量%)

1.ローズマリー抽出物(製造例3) 0.10
2. 1.3ブチレングリコール 2.50
3. グリセリン 2.50
4.ベヘニルアルコール 3.50
5.イソステアリルアルコール 1.50
6.コウジ酸 1.00
7.α−グルコシル−L−アスコルビン酸 2.00
8.オクチルドデカノール 3.00
9.ポリオキシエチレン
オレイルエーテル(20E.O.) 1.00
10.ステアリン酸 0.50
11.シアバター 1.00
12.アボガド油 4.00
13.パラオキシ安息香酸エステル 0.20
14.クインスシードエキス 5.00
15.キサンタンガム 0.15
16.フィチン酸 0.02
17.d-δ-トコフェロール 0.01
18.精製水 適 量

予め加熱溶解した1乃至3を調製し、他の成分を添加して攪拌・乳化後、なめらかで均質の乳液を得た。
【0058】
処方例7 乳液2 (重量%)

1.ローズマリー抽出物(製造例1) 0.10
2. 1.2ヘキサンジオール 5.00
3. オクチルドデカノール 2.50
4.デシルテトラデカノール 2.50
5.コウジ酸 1.00
6.α−グルコシル−L-アスコルビン 2.00
7.ポリオキシエチレン
オレイルエーテル(20E.O.) 1.00
8.ステアリン酸 0.50
9.シアバター 1.00
10.アボガド油 4.00
11.パラオキシ安息香酸エステル 0.20
12.クインスシードエキス 5.00
13.キサンタンガム 0.15
14.フィチン酸 0.02
15.d-δ-トコフェロール 0.01
16.精製水 適 量

予め加熱溶解した1乃至3を調製し、他の成分を添加して攪拌・乳化後、なめらかで均質の乳液を得た。
【0059】
処方例8 ヘアークリーム (重量%)
A成分
1.ローズマリー抽出物(製造例2) 0.20
2. ジプロピレングリコール 5.00
3. ベヘニルアルコール 5.00
4.流動パラフィン 8.00
5.スクワラン 7.00
6.ホホバ油 3.00
7.固型パラフィン 3.00
6.ポリオキシエチレンセチルエーテル 2.00
8.ソルビタンセスキオレエート 1.00
9.水酸化カリウム 0.15
10.ジトリデセン酸グリセリン 5.00

B成分
1.グリセリン 3.00
2.エチルパラベン 0.10
3.精製水 適 量

A成分のうち予め加熱溶解した1乃至3を調製し、4乃至10添加して加熱溶解する。別に、B成分を加熱溶解する。A成分にB成分を添加して撹拌、乳化後、冷却してヘアークリ−ムを得た。
【0060】
処方例9 ヘアートリートメント (重量%)

A成分
1.ローズマリー抽出物(製造例3) 0.20
2. グリセリン 5.00
3. セタノール 5.00
4.アボカド油 5.00
5.スクワラン 5.00
6.流動パラフィン 10.00
7.ステアリン酸 3.00
8.グリセリンモノステアレート 3.00
9.ラノリンアルコール 5.00
10.ジヘプタデセン酸グリセリン 2.00

B成分
1.センブリ抽出液 1.00
2.1,3−ブチレングリコール 5.00
3.トリエタノールアミン 1.00
4.メチルパラベン 0.20
5.精製水 適 量

A成分のうち予め加熱溶解した1乃至3を調製し、さらに4乃至10を添加して加熱溶解する。別に、B成分を加熱溶解する。A成分にB成分を添加して撹拌、乳化後、冷却してヘアートリートメントを得た。
【0061】
処方例10 ヘアーシャンプー (重量%)

A成分
1.ローズマリー抽出物(製造例1) 0.05
2. プロピレングリコール 1.25
3. ドデシルヘキサデカノール 1.25
4.ビタミンB12 0.05
5.N−ヤシ油脂肪酸ー
L−グルタミン酸
トリエタノールアミン(30%) 40.00
6.ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド 3.00
7.ポリオキシエチレン
ジオレイン酸メチルグルコシド
(120E.O.) 2.00
8.モノリノレン酸グリセリン 0.75

B成分
1.パラオキシ安息香酸エチル 0.30
2.エデト酸二ナトリウム 0.10
3.精製水 適 量

A成分のうち予め加熱溶解した1乃至3を調製し、さらに4乃至8を添加して均一に撹拌、溶解し、別に均一に加温溶解したB成分を徐々に加え、均一に撹拌してヘアーシャンプーを得た。
【0062】
上記の処方例1ないし10はいずれも経時的に変化がなく、本発明の目的を達成する安定な製剤であることが確認された。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウルソール酸を最高濃度で50%含有するローズマリー抽出物(Rosmarinus officinalis L. Extract)を特定の高級アルコールと多価アルコール共存下において溶解させたことを特徴とする皮膚外用剤。
【請求項2】
高級アルコールがセタノール、イソセチルアルコール、オレイルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール、ベヘニルアルコール、デシルテトラデカノール、テトラデシルオクタデカノール、ドデシルヘキサデカノールのいずれかから選ばれた1種以上であり、多価アルコールが1,3ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,2ヘキサンジオール、ペンチレングリコールのいずれかから選ばれた1種以上であることを特徴とする請求項1に記載した皮膚外用剤。



【公開番号】特開2009−249306(P2009−249306A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−96738(P2008−96738)
【出願日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【出願人】(000176110)三省製薬株式会社 (20)
【Fターム(参考)】