説明

盗難車両の犯人割り出し装置

【課題】カメラの存在を犯人に気付かれることなく、犯人の正面像を鮮明に撮影することを可能にした盗難車両の犯人割り出し装置を提供する。
【解決手段】盗難車両の犯人割り出し装置は、運転席の前方に設けられる計器盤(10)と、計器盤(10)の背後に設けられる隠しカメラ(30)と、運転席に向けて赤外線を照射する赤外線投光器(35)とを備えている。計器盤(10)の所定位置には、覗き孔(H)が設けられ、この覗き孔(H)から運転席側を臨む位置に隠しカメラ(30)が設置される。そして、覗き孔(H)は、計器盤(10)の表面色と同系色であって赤外線透過質の半透明材料からなる保護色カバー(25)で覆われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、盗難車両の犯人割り出し装置に関するもので、詳しくは、運転席に隠しカメラを備えた犯人割り出し装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現金輸送車等が盗賊に奪われる事件が起こった場合には、車の搭乗者や、現場に居合わせた目撃者が記憶していた、犯人の人相、声、着衣、或いは、犯人が残した指紋や遺留品等を、犯人割り出しの手掛かりとするのが一般的である。
しかしながら、人の記憶力はさ程当てにならないものである。ましてや、突発的に発生し、しかも、危険な事件現場では尚更である。
そして、指紋の照合や、遺留品の出所の割り出し作業等には、膨大な労力と時間を要するため、犯人未逮捕のまま、時効を迎えることも少なくない。
【0003】
従来、このような盗難車両の犯人を割り出す装置としては、犯人撮影用のカメラを車両に設置するものが提案されている。例えば、特許文献1では、車内のルームミラーに防犯カメラを取り付け、犯罪行為を記録するようにし、また、特許文献2では、ドアミラーに監視カメラを取り付けて車両の盗難を防止している。
【特許文献1】特開2000−6762号公報
【特許文献2】特開平9−193711号公報
【特許文献3】特開2001−322533号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、このような従来の犯人割り出し装置では、犯人に気付かれやすい場所にカメラが設置されるため、逃走時にカメラが破壊されるおそれがある。また、フィルムが抜かれると、証拠写真が残らない場合もある。
これに対し、トランクや座席シート、計器盤の背後(特許文献3)などの犯人に気付かれにくい場所に隠しカメラを設置することも考えられるが、このような場所にカメラを設置すると、カメラに犯人像が写らない場合があり、また、撮影時に車内が暗いと、鮮明な画像を得られず、犯人の特定が困難になるといった問題もある。
【0005】
本発明は、このような現状に鑑みなされたもので、カメラの存在を犯人に気付かれることなく、犯人の正面像を鮮明に撮影することを可能にした盗難車両の犯人割り出し装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための本発明(第1発明)による盗難車両の犯人割り出し装置は、以下の構成を備えることを特徴としている。すなわち、
運転席の前方に設けられる計器盤と、
前記計器盤の背後に設けられる隠しカメラと、
前記運転席に向けて赤外線を照射する赤外線投光器とを備え、
前記計器盤の所定位置に覗き孔を設けるとともに、この覗き孔から運転席側を臨む位置に前記隠しカメラを設置し、しかも、前記覗き孔は、前記計器盤の表面色と同系色であって赤外線透過質の半透明材料からなる保護色カバーで覆われることを特徴としている。
【0007】
本発明(第1発明)の犯人割り出し装置は、計器盤の覗き孔に隠しカメラを設置する構成であるため、運転席に座った犯人の正面像を簡単かつ確実に撮影することができる。また、赤外線投光器で運転席に赤外線を照射することにより、車内が暗い場合でも、犯人の正面像を鮮明に撮影することができる。
さらに、隠しカメラの覗き孔が計器盤の表面色と同色系の保護色カバーで覆われるため、計器盤上で覗き孔が目立ちにくくなり、隠しカメラの存在が犯人に気付かれにくくなる。
【0008】
本発明(第2発明)による盗難車両の犯人割り出し装置は、前記赤外線投光器が前記覗き孔から運転席側を臨む位置に設けられることを特徴としている。
【0009】
運転席に向けて赤外線投光器を設ける場合には、例えば計器盤上のアクセサリに赤外線投光器を内蔵させるか、エアコンやカーナビゲーション等の操作盤に赤外線投光器を取り付ける等の方法が考えられる。
しかしながら、このように赤外線投光器が計器盤の外部に設けられると、赤外線投光器が運転の邪魔になりやすく、また、犯人に不信感を与えるおそれがある。
【0010】
本発明(第2発明)によれば、赤外線投光器が隠しカメラと同様に覗き孔の後方に保護色カバーで隠される。このため、運転席側から赤外線投光器が見えなくなり、上記のような不具合を解消することができる。
【0011】
本発明(第3発明)による盗難車両の犯人割り出し装置は、前記保護色カバーが前記計器盤の数字、文字、記号等の表示の背景部分であって、これらの表示と同化する位置に設けられることを特徴としている。
【0012】
通常、計器盤には、車速やエンジン回転数を示す数字、文字、記号等が表示されている。このような表示は、計器盤の背景色に比べより目立つような配色が施されているのが一般的である。
本発明(第3発明)によれば、数字、文字、記号等の背景に同化する位置に保護色カバーが設けられることから、運転者が数字、文字、記号等の表示に注意を惹かれ、保護色カバーに目を留めにくくなる。この結果、保護色カバーの存在が犯人にさらに気付かれにくくなる。
【0013】
なお、本発明(第3発明)において、計器盤の数字、文字、記号等の背景に同化する位置の具体例としては、例えば数字の「0」や「8」などの線で囲まれる内側の部分に覗き孔および保護色カバーを設けるとよい。通常、運転者の目線は、このような数字全体を見ることが多く、数字の一部分のみを凝視することは少ない。このため、このような範囲内であれば、覗き孔および保護色カバーの存在が極めて気付かれにくくなる。
【0014】
本発明(第4発明)による盗難車両の犯人割り出し装置は、前記保護色カバーが運転席側に向けて膨らむ凸レンズ形状であることを特徴としている。
【0015】
計器盤上の覗き孔から運転席側を撮影する場合には、覗き孔と運転者との距離が近いために、視野角度が狭くなり、隠しカメラに犯人が映らないことも起こりうる。
一方、魚眼レンズ付きカメラを用いてより広範囲な角度を撮影することも可能であるが、魚眼レンズを使用すると、隠しカメラの製造コストが増大し、乗用車等の一般車両に犯人割り出し装置を搭載することが難しくなる。
【0016】
そこで、本発明(第4発明)では、前記保護色カバーを運転席側に膨らむ凸レンズ形状とすることで、覗き孔からの視野角度を180°以上に拡大し、魚眼レンズと同様に広範囲の映像を隠しカメラで撮影するようにした。これにより、犯人の体型や運転姿勢に影響されず、より確実に犯人像を撮影することが可能になり、犯人割り出し装置の信頼性を向上させることができる。
【0017】
本発明(第1〜4発明)において、前記隠しカメラは、運転席のスイッチ操作による撮影待機状態で犯人が車両のドアを開放したとき動画の撮影を開始し、かつ、前記車両の停車後にエンジンキースイッチをOFFにして犯人が前記ドアを開放したとき動画の撮影を終了するようにするとよい。
このような構成によれば、撮影待機状態で犯人が運転席に座る直前から運転席を離れる時まで犯人画像を効果的に撮影することができる。また、犯人が所定の動作をしたときに隠しカメラのスイッチがON・OFFされるため、隠しカメラの作動音等が犯人の動作音にかき消されて聞こえにくくなり、隠しカメラの存在が犯人に気付かれにくくなる。
【0018】
前記隠しカメラは、下記のいずれかの動作時に運転席の静止画像を撮影するとよい。
A.犯人が運転席に座ってエンジンキースイッチをオン接点に切り替える。
B.犯人がブレーキを踏んでストップランプスイッチをON状態にする。
このような構成によれば、犯人が車両を運転する際の所定の動作時に正面から確実に犯人画像を撮影することができる。このような動作の際の犯人の視線や癖等を知ることで犯人特定をより行いやすくすることも可能になる。さらに、犯人が所定の動作をしたときに隠しカメラのシャッターが下りるため、前記と同様に、隠しカメラの動作音が犯人に聞こえる心配がなく、隠しカメラの存在が犯人に気付かれにくくなる。
【0019】
前記隠しカメラは、車両の所有者のパソコンまたは携帯端末に運転席の静止画像を送信する送信手段を備えるとよい。
このような構成によれば、車両が盗まれた際に、所有者が携帯電話等の端末で直ぐに犯人画像を見ることができ、警察等への通報を迅速に行える。この結果、盗難事件の早期解決に繋がる。
【0020】
前記計器盤のインジケータランプケースに前記隠しカメラを収納するとともに、このインジケータランプケースのランプカバーに前記覗き孔を設け、かつ、前記ランプカバーと同系色の保護色カバーで前記覗き孔を覆うとよい。
このような構成によれば、インジケータランプケースに隠しカメラを収納することで、隠しカメラの収納スペースの確保が容易になる。また、覗き孔がランプカバーと同系色の保護色カバーで隠されるため、隠しカメラの存在が犯人に気付かれにくい。
【0021】
前記計器盤のメータハウジングの仕切壁に前記隠しカメラを固定するとよい。
このような構成によれば、メータハウジングの仕切壁にビス等で隠しカメラを安定的に固定することができるため、車両の走行時に激しい振動を受けても隠しカメラがガタ付いたり外れたりする心配がない。また、メータハウジング内の比較的広いスペースに隠しカメラを設けることができ、カメラの取付作業が簡単になる。
【0022】
前記計器盤の所定位置に前記保護色カバーのイミテーションを設けてもよい。
このような構成によれば、万一、犯人が本発明の盗難防止装置の構造を知っているような場合でも、保護色カバーのイミテーションの存在により隠しカメラの位置を特定することができない。このため、覗き孔が犯人によってシールされる弊害が少なくなる。なお、イミテーション用の保護色カバーとしては、例えば、前記保護色カバーと同一形状かつ同一色のカバーが挙げられる。
【0023】
本発明(第1〜4発明)の犯人割り出し装置は、乗用車等の一般車両の他、現金輸送車、貴重品(絵画、宝石等)の運搬車、パトロールカー等の特殊車両に適用してもよい。特に、盗難の被害に遭いやすい金銭的な価値の高い車両に適用するのが望ましい。また、電車や航空機等に本発明(第1〜4発明)を適用することもできる。
【0024】
本発明(第1〜4発明)は、必要に応じて単独で適用してもよいし、各発明を組み合わせて適用してもよい。また、本明細書に記載される他の発明を組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1実施形態による計器盤を示す正面図である。
【図2】本発明の第1実施形態による計器盤を示す断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態によるスピードメータの部分拡大正面図である。
【図4】本発明の第1実施形態による犯人割り出し装置の回路構成図である。
【図5】本発明の第1実施形態による犯人割り出し装置の犯人像の撮影手順を示したフローチャートである。
【図6】本発明の第2実施形態による計器盤を示す断面図である。
【図7】本発明の第3実施形態による計器盤を示す断面図である。
【図8】本発明の第4実施形態による計器盤を示す断面図である。
【符号の説明】
【0026】
10 計器盤
12 正面パネル
13 ケース
15 スピードメータ
16 タコメータ
21 メータパネル
22 クリアパネル
23 車速変換装置
23a メータ軸
24 メータ指針
25 保護色カバー
30 隠しカメラ
31 カメラアイ
33 画像記録装置
35 赤外線投光器
41 バッテリ
H 覗き孔
K 貫通孔
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本実施形態は、乗用車の計器盤に本発明を適用したものである。
[第1実施形態]
図1に示すように、計器盤10は、合成樹脂からなるケース13の内側に正面パネル12が設けられている。正面パネル12には、左右対称にスピードメータ15およびタコメータ16が配置され、これらのスピードメータ15の左脇に燃料ゲージ17、タコメータ16の右脇に温度ゲージ18が配置されている。正面パネル12の表面には、それぞれ窓枠12a、12b、12c、12dが開口している。これらの窓枠12a、12b、12c、12dから各メータおよびゲージの表示が見えるようになっている。
【0028】
また、正面パネル12には、各種のインジケータランプが設けられる。すなわち、スピードメータ15とタコメータ16のやや上側部分にターンシグナルランプ19A,19B、およびハイビームランプ19Cが設けられ、スピードメータ15とタコメータ16との間の隙間部分にシフトレバーランプ19Dがそれぞれ設けられている。
【0029】
図2に示すように、スピードメータ15は、メータパネル21とクリアパネル22の後方に車速信号変換器23を備えている。正面パネル12の窓枠12aにメータパネル21およびクリアパネル22が前後に僅かに隙間を保って設けられる。車速信号変換器23の前方に延びるメータ軸23aは、メータパネル21およびクリアパネル22を貫通し、その先端にメータ指針24が取り付けられている。車速信号がメータ軸23aの回転角に変換され、メータ指針24を車速に合わせて回動させる。
【0030】
メータパネル21の表面色は、正面パネル12の同一色で、暗色系(黒色、濃紺色等)に統一されている。図1に示すように、メータパネル21に表示される速度表示用の数字および目盛りは、明色系の色(例えば白色、オレンジ色)で表示され、メータパネル21上で浮き立って見える。
【0031】
クリアパネル22は、アクリル等の透明材料からなるもので、メータパネル21とほぼ同一のサイズになっている。クリアパネル22の裏側には、照明用のバックライトが設けられており(図示省略)、バックライトによる照明をクリアパネル22で拡散させてメータパネル21を照らす。これにより、運転者は、夜間であっても、メータパネル21の表示を見ることができる。
【0032】
図2に示すように、メータパネル21の上部には、覗き孔Hが形成される。覗き孔Hは、直径数mm程度でメータパネル21にほぼ垂直に貫通している。メータパネル21の表面には、覗き孔Hを覆うように保護色カバー25が貼り付けられている。
【0033】
図3に示すように、覗き孔Hおよび保護色カバー25は、スピードメータ15の上部の数字に同化する位置に設けられている。本実施形態では、“時速80km”を示す数字「0」の線で囲まれた部分に覗き孔Hおよび保護色カバー25を設けている。そして、この数字「0」の内側に接するように保護色カバー25が貼り付けられる。
【0034】
このようにスピードメータ15の比較的高い位置に覗き孔Hを設けることで、後述する隠しカメラ30によって運転者の顔を含む正面像を鮮明に写すことができる。また、数字の背景部分に保護色カバー25を同化させて設けることで、覗き孔Hや保護色カバー25から運転者の注意を逸らしやすく、これらの存在を気付かせにくくすることができる。
【0035】
保護色カバー25は、赤外線を透過する性質を備えた半透明の樹脂フィルムからなる。樹脂フィルムの色は、メータパネル21の表面色(背景色)と同系色、すなわち暗色系に統一されている。これにより、保護色カバー25の外観がメータパネル21の色調と同調し、運転席側からメータパネル21を見ても、保護色カバー25および覗き孔Hをほとんど認識することができない。
【0036】
図2に示すように、覗き孔Hの直ぐ後ろには隠しカメラ30が設けられる。クリアパネル22の貫通孔Kに隠しカメラ30の前端部が圧入される。このような固定方法により計器盤10の後方であって除き孔Hの直ぐ後ろに隠しカメラ30を安定的に固定することができる。
隠しカメラ30のカメラアイ(レンズ)31は、覗き孔Hから保護色カバー25を通して運転席側に向けられる。覗き孔Hが保護色カバー25で覆われることから、運転席側からは隠しカメラ30の存在が分からないようになっている。なお、隠しカメラ30には、市販のCCDカメラ、C−MOSカメラ等が用いられる。
【0037】
隠しカメラ30の後方には、画像記録装置33が設けられる。隠しカメラ30で撮影した映像信号がケーブル32を介して画像記録装置33に送られ、静止画または動画として記録される。画像記録装置33の記録媒体としては、例えば、デジタルカメラ等に用いられる磁性記録体が採用される。
【0038】
一方、車内の前方位置には赤外線投光器35が備え付けられる。赤外線投光器35は、専用のLEDを内蔵し、運転席に向けて赤外線を照射するようになっている。赤外線投光器35の取付位置は、例えば計器盤の周囲やダッシュボードなどの運転の邪魔になりにくい場所に設定される。
【0039】
隠しカメラ30、画像記録装置33および赤外線投光器35は、ケーブル32、34および37を介して車載バッテリ41に接続される。バッテリ41から電流が供給されると、所定のタイミングで運転席側の撮影を開始する。
【0040】
図4に犯人割り出し装置の回路構成例を示した。
図4に示す構成例の場合、エンジンキースイッチ42がオン接点になったとき、ドアスイッチ47がONになったとき、もしくはストップランプスイッチ52がONになったときのいずれかのタイミングで隠しカメラ30が作動する。
【0041】
図4に示すように、バッテリ41に接続される主電源回路aにエンジンキースイッチ42のオン接点42aが接続される。オン接点回路bには、隠しカメラ30および画像記録装置33を撮影待機状態に切り替える手動スイッチ43aが接続される。
【0042】
一方、主電源回路aには、ドアスイッチ回路cが分岐しており、このドアスイッチ回路cにルームランプヒューズ45、ルームランプ46およびドアスイッチ47を介在させている。ドアスイッチ回路cは、リレー48を備えた補助回路eを介して手動スイッチ43bに接続される。ドアスイッチ47がONになると、ルームランプ46が点灯し、リレー48が閉じてドアスイッチ回路cおよび補助回路eに電流が流れる。
【0043】
また、主電源回路aには、ストップランプ回路dが分岐しており、このストップランプ回路dには、ストップランプヒューズ51、ストップランプスイッチ52、およびストップランプ53を介在させている。ストップランプ回路dは、補助回路fを介して手動スイッチ43aに接続される。ストップランプスイッチ52がONになると、ストップランプ53が点灯し、ストップランプ回路dおよび補助回路fに電流が流れる。
【0044】
次に、犯人割り出し装置の撮影方法を図5のフローチャートに基づいて説明する。なお、以下に説明する撮影方法は、本実施形態による構成を採用する場合の一例であり、必要に応じて撮影タイミング等を変更してもよい。
まず、車両の所有者は、車から離れる前に、運転席に配備された手動スイッチ43a、43bをONにしておく。これにより、隠しカメラ30が撮影待機状態に保たれる。
【0045】
車両が奪われて犯人が無断でドアを開けると(ステップS10)、ルームランプが点灯し(ステップS11)、バッテリ41の電流が主電源回路a、ドアスイッチ回路c、補助回路eを経て隠しカメラ30、画像記録装置33および赤外線投光器35に流れる。このとき、隠しカメラ30は、運転席の動画の撮影を開始し、画像記録装置33に記録する(ステップS12)。
次いで、運転席に犯人が座ると、最初にエンジンキースイッチ42をオン接点42aに切り替える(ステップ13)。このとき、バッテリ41の電流が主電源回路aおよびオン接点回路bを経て隠しカメラ30に流れ、シャッタが下りる。そして、画像記録装置33に運転席側の静止画が記録される(ステップ14)。
【0046】
また、犯人がブレーキを踏むと、ストップランプスイッチ52がONになり(ステップS15)、バッテリ41の電流が主電源回路a、ストップランプ回路d、および補助回路fを経由して隠しカメラ30に流れ、シャッタが下りる。そして、キースイッチオン接点時(ステップ13)と同様に、画像記録装置33に静止画が記録される(ステップS16)。
なお、画像記録装置33に記録された静止画は、必要に応じてパソコンや携帯電話等の端末に送信するようにしてもよい。
【0047】
犯人が車から降りる場合には、停車してエンジンキースイッチ42をOFFにし(ステップ17のYes)、ドアを開放する(ステップS18)。このとき、隠しカメラ30、記録装置33および赤外線投光器35への通電が遮断され、隠しカメラ30による動画および静止画の撮影が終了する。運転継続中は、犯人がブレーキを踏む度にストップランプスイッチ52がONになり(ステップ17のNo)、犯人の静止画像が繰り返し画像記録装置33に記録される。
【0048】
車両を奪った犯人は、運転席で計器盤10を見ることはあっても、覗き孔Hが保護色カバー25で覆われているため、隠しカメラ30の存在に気付かない。また、保護色カバー25がスピードメータ15の数字に同化していることから、保護色カバー25の存在もほとんど気付かれることはない。
また、犯人が所定の動作を行うタイミング、すなわちエンジンキースイッチ42をオン接点に切り替える時、またはブレーキ踏み込み時に隠しカメラ30のシャッタが下りるため、シャッタの作動音が犯人の動作音にかき消されて聞き取りにくくなる。
この結果、犯人の知らない内に犯人画像を確実に隠しカメラ30で撮影することができる。
【0049】
また、夜間など車内が暗い場合でも、赤外線投光器35で運転席の犯人を照射するため、犯人像が保護色カバー25を通して隠しカメラ30に映し出される。これにより、鮮明な犯人像を確実に画像記録装置33に残すことができる。
【0050】
[第2実施形態]
次に、本発明を適用した他の実施形態を説明する。
図6に示す犯人割り出し装置は、凸レンズ形の保護色カバー61を採用したものである。
スピードメータ15は、メータパネル21に覗き孔Hが設けられている。メータパネル21の背後にあるクリアーパネル22に貫通孔Kが設けられており、この貫通孔Kに隠しカメラ30の前端部が圧入固定される。隠しカメラ30のカメラアイ31は、覗き孔Hから運転席側に向けられている。そして、メータパネル21の前面に、覗き孔Hを覆うように凸レンズ形の保護色カバー61が貼り付けられる。
【0051】
保護色カバー61は、赤外線を透過する半透明の樹脂材料からなるもので、メータパネル21の背景色と同色系の色に着色される。保護色カバー61の表面は、運転席側に向けて膨らむ凸面61aになっている。凸面61aのほぼ中心位置に隠しカメラ30のカメラ軸が一致している。なお、保護色カバー61は、例えば、アクリル等の樹脂材料で凸面61aを成形することにより比較的安価に製造することができる。
【0052】
このように凸レンズ形の保護色カバー61を採用すると、保護色カバー61が隠しカメラ30の前方で魚眼レンズと同様な作用をし、その視野角度を拡げる。すなわち、隠しカメラ30により広範囲に運転席側の様子を撮すことができ、より高い確率で犯人を撮影することができる。例えば、犯人の体格や運転姿勢が通常と異なるときなどに隠しカメラ30が犯人に真っ直ぐに向いていない場合でも、犯人特定に重要な顔画像を捉えやすくなる。
【0053】
[第3実施形態]
図7に示す犯人割り出し装置は、インジケータランプケース71に隠しカメラ30を収納したものである。
計器盤には、ヘッドライトやシートベルト等の作動状態を示すインジケータランプが並設されることがある。これらのインジケータランプは、それぞれメータハウジングに区画形成されたインジケータランプケースに収納される。このようなインジケータランプは、車種によって設定が異なっており、未使用のインジケータランプケースが存在していることも多い。第3実施形態では、このような未使用のインジケータランプを利用して隠しカメラ30を設置する。
【0054】
図7に示すように、計器盤10は、正面パネル12の後方に、計器類を格納するメータハウジング72が設けられる。メータハウジング72の内側には、インジケータランプケース71が一体に設けられている。インジケータランプケース71には、隠しカメラ30が収納され、補助具73によってインジケータランプケース71の底面に固定されている。なお、本実施形態では、インジケータランプケース71にはインジケータ照明用の光源は収納されていない。
【0055】
インジケータランプケース71の開口部にはランプカバー74が設けられている。ランプカバー74には所定の着色が施されており、運転席側からは、ランプカバー74に遮られてインジケータランプケース71内が見えないようになっている。
【0056】
隠しカメラ30の前方には、ランプカバー74に貫通する覗き孔Hが設けられる。この覗き孔Hを通して隠しカメラ30が運転席側を撮影可能になっている。ランプカバー74の前面には、覗き孔Hを覆う半透明の保護色カバー75が貼り付けられる。保護色カバー75は、ランプカバー74と同系色の樹脂フィルムからなり、赤外線を透過する性質をもつ。
【0057】
第3実施形態の犯人割り出し装置によれば、乗用車等の既存のインジケータランプケースを利用して簡単に隠しカメラを設置することができる。また、保護色カバー75がランプカバー74の色と同化しやすいため、隠しカメラ30の存在が犯人に気付かれにくい。
【0058】
[第4実施形態]
図8に示す実施形態は、メータハウジング81の仕切壁82に隠しカメラ83を取り付けたものである。
図8に示すように、メータハウジング81は、車速変換器23等の計器類を収納しており、その背板の内側に正面パネル12に向けて仕切壁82が延びている。仕切壁82の前端内側面に隠しカメラ83が補助具84を用いてビス等で固定される。
正面パネル12には、隠しカメラ83の前方に覗き孔Hが設けられる。正面パネル12の内側面には、覗き孔Hを囲むように凹溝Mが形成され、この凹溝Mに保護色カバー85が嵌まる。すなわち、覗き孔Hは、正面パネル12の裏側から保護色カバー85によって覆われている。
【0059】
保護色カバー85は、アクリル等の半透明の樹脂パネルからなる。正面パネル12の前面背景色と同系色の着色が施されており、運転席側から保護色カバー85を見ても、その存在が分かりにくくなっている。
【0060】
隠しカメラ83は、画像記録装置を内蔵しており、ケーブル87によって画像送信装置88に接続される。例えば、隠しカメラ83で動画を記録しながら、一定時間毎に静止画像を車両の所有者に送信してもよい。隠しカメラ83としては、市販のCCDカメラ、C−MOSカメラ等を使用することができる。
【0061】
隠しカメラ83のレンズ横には、赤外線投光器86が取り付けられる。赤外線投光器86から保護色カバー85を通して運転席側に赤外線を照射する。このように計器盤の背後に赤外線投光器86を設けることで、赤外線投光器86が運転者の邪魔になりにくい。また、運転席から赤外線投光器86が見えないため、車両が奪われた際に犯人割り出し装置の存在がさらに気付かれにくくなる。
【0062】
第4実施形態によれば、メータハウジング81の仕切壁82に隠しカメラ83を取り付けることにより、隠しカメラ83の取付けスペースを広く確保することができる。この結果、前述したように多機能な隠しカメラ83を使用しやすくなり、また、保護色カバー85の背後に赤外線投光器86を設置しやすくなる。
さらに、隠しカメラ83の取付位置のバリエーションが増えるため、仕様の異なる車種にも犯人割り出し装置を簡単に後付けすることができる。
【0063】
[その他の実施形態]
前記第1実施形態〜第4実施形態を説明したが、本発明の実施形態はこれらに限られることはない。覗き孔や保護色カバーの位置は、車両の仕様等に応じて変更してもよい。
また、正面パネルに保護色カバーのイミテーションを設けることで、隠しカメラの位置を特定しにくくしてもよい。例えば、前記第1実施形態では、「80」の数字に同化させるように保護色カバーを貼る構成であるが、「80」の数字だけでなく、その他の数字の「0(ゼロ)」の内側にも保護色カバーを貼り付けることで、隠しカメラ位置の特定を困難にすることができる。
また、前記第4実施形態において、保護色カバー85の内側面に接着、圧入等の方法により隠しカメラ83を一体的に固定してもよい。このような構成によれば、仕切壁82が存在しなくても、メータハウジング81の内部に隠しカメラ83を取り付けることができる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
以上説明したように、本発明の盗難車両の犯人割り出し装置によれば、次のような優れた効果を得ることができる。
(a)車両が盗難にあった場合に犯人に気付かれることなく、犯人の正面像を撮影することができる。
(b)夜間等の車内が暗い場合でも、鮮明な犯人画像を記録することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転席の前方に設けられる計器盤と、
前記計器盤の背後に設けられる隠しカメラと、
前記運転席に向けて赤外線を照射する赤外線投光器とを備え、
前記計器盤の所定位置に覗き孔を設けるとともに、この覗き孔から運転席側を臨む位置に前記隠しカメラを設置し、しかも、前記覗き孔は、前記計器盤の表面色と同系色であって赤外線透過質の半透明材料からなる保護色カバーで覆われることを特徴とする盗難車両の犯人割り出し装置。
【請求項2】
前記赤外線投光器は、前記覗き孔から運転席側を臨む位置に設けられる、請求項1記載の盗難車両の犯人割り出し装置。
【請求項3】
前記保護色カバーは、前記計器盤の数字、文字、記号等の表示の背景部分であって、これらの表示と同化する位置に設けられる、請求項1記載の盗難車両の犯人割り出し装置。
【請求項4】
前記保護色カバーは、前記計器盤の数字「0」の線の内側に接するように設けられる、請求項3記載の盗難車両の犯人割り出し装置。
【請求項5】
前記保護色カバーは、運転席側に向けて膨らむ凸レンズ形状である、請求項1記載の盗難車両の犯人割り出し装置。
【請求項6】
前記隠しカメラは、運転席のスイッチ操作による撮影待機状態で犯人が車両のドアを開放したとき動画の撮影を開始し、かつ、前記車両の停車後にエンジンキースイッチをOFFにして犯人が前記ドアを開放したとき動画の撮影を終了する、請求項1記載の盗難車両の犯人割り出し装置。
【請求項7】
前記隠しカメラは、下記のいずれかの動作時に運転席の静止画像を撮影する、請求項1記載の盗難車両の犯人割り出し装置。
A.犯人が運転席に座ってエンジンキースイッチをオン接点に切り替える。
B.犯人がブレーキを踏んでストップランプスイッチをON状態にする。
【請求項8】
前記隠しカメラは、車両の所有者のパソコンまたは携帯端末に運転席の静止画像を送信する送信手段を備える、請求項1記載の盗難車両の犯人割り出し装置。
【請求項9】
前記計器盤のインジケータランプケースに前記隠しカメラを収納するとともに、このインジケータランプケースのランプカバーに前記覗き孔を設け、かつ、前記ランプカバーと同系色の保護色カバーで前記覗き孔を覆う、請求項1記載の盗難車両の犯人割り出し装置。
【請求項10】
前記計器盤のメータハウジングの仕切壁に前記隠しカメラを固定する、請求項1記載の盗難車両の犯人割り出し装置。
【請求項11】
前記計器盤の所定位置に保護色カバーのイミテーションを設ける、請求項1記載の盗難車両の犯人割り出し装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【国際公開番号】WO2005/018997
【国際公開日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【発行日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−513247(P2005−513247)
【国際出願番号】PCT/JP2004/009559
【国際出願日】平成16年7月6日(2004.7.6)
【出願人】(500192908)名古屋トヨペット株式会社 (2)
【Fターム(参考)】