説明

直動案内装置用転動体収容ベルトおよび直動案内装置

【課題】転動体収容ベルトが循環中に生じる振れを抑制するとともに、その摺動抵抗を緩和し得る直動案内装置用転動体収容ベルトおよび直動案内装置を提供する。
【解決手段】このリニアガイド10は、複数のボール46が転動しつつ循環する無限循環路28を備えており、その無限循環路28内にボール46の並び方向に連続する案内溝60を有している。さらに、隣合うボール46同士の間に介在する間座部51と、無限循環路28の幅方向の両側で間座部51を相互に連結するとともに、間座部51の端面よりも外側に張り出して案内溝60に案内される一対の連結腕部52とを有し、ボール46を無限循環路28内の並び方向で整列させる転動体収容ベルト50を備えている。そして、この転動体収容ベルト50では、その一対の連結腕部52は、その厚さ方向で案内溝60に対向する面に、案内溝60に向けて張り出す複数の突起部53を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直動案内装置用転動体収容ベルトおよび直動案内装置に関する。
【背景技術】
【0002】
直動案内装置は、無限循環路内を転動しつつ循環する複数の転動体を介してスライダを案内レールに対して相対移動させている。しかし、直動案内装置では、スライダが案内レールに対して相対移動すると、各転動体は同一方向へ回転しつつ移動するため、隣合う転動体同士が擦れ合って転動体の円滑な転動が妨げられる。そのため、騒音が大きくなり、転動体の摩耗の進行も早くなる。そこで、従来から、騒音の発生を抑制し、円滑に直動案内装置を作動させるために、転動体を無限循環路内の並び方向で整列させる転動体収容ベルトが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の技術では、隣合う転動体同士の間に介在する間座部と、その間座部を相互に連結する連結腕部とを備えた転動体収容ベルトが開示されている。そして、それぞれの連結腕部は、間座部の端面よりも外側に張り出して形成されている。さらに、無限循環路内には、転動体の並び方向に連続する案内溝が無限循環路の幅方向の両側に形成されており、この案内溝に連結腕部が案内されるようになっている。このような構成により、この転動体収容ベルトは、転動体を無限循環路内の並び方向で整列させつつ、その連結腕部が案内溝に沿って案内されて、転動体と共に無限循環路内を円滑に循環することを可能としている。
【特許文献1】特開平11−315833号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この種の直動案内装置では、その作動をより円滑にするために、油やグリースなどの潤滑剤が用いられる。そして、このような潤滑剤は、上記連結腕部と案内溝との隙間にも満たされている。ここで、例えば上記特許文献1に記載の技術では、その転動体収容ベルトが循環中に生じる振れを十分に抑えるためには、上記連結腕部と案内溝との隙間をできる限り狭く設定する必要がある。
【0005】
しかしながら、連結腕部と案内溝との隙間が狭すぎると、この隙間に満たされている潤滑剤の剪断抵抗によって転動体収容ベルトの摺動抵抗が大きくなる。逆に、この隙間を広くすれば、転動体収容ベルトの摺動抵抗を小さくすることはできるものの、転動体収容ベルトが循環中に生じる振れを十分に抑えることが困難となる。
そこで、本発明は、このような問題点に着目してなされたものであって、転動体収容ベルトが循環中に生じる振れを抑制するとともに、その摺動抵抗を緩和し得る直動案内装置用転動体収容ベルトおよび直動案内装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、複数の転動体が転動しつつ循環する無限循環路を備え、該無限循環路内に前記転動体の並び方向に連続する案内溝を有し、隣合う転動体同士の間に介在する間座部と、前記無限循環路の幅方向の両側で前記間座部を相互に連結するとともに、前記間座部の端面よりも外側に張り出して前記案内溝に案内される一対の連結腕部とを有し、前記転動体を前記無限循環路内の並び方向で整列させる転動体収容ベルトを備える直動案内装置であって、前記連結腕部と案内溝との対向する面のいずれか一方にのみ、他方に向けて張り出す1または2以上の突起部を有することを特徴としている。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、転動体収容ベルトの連結腕部または案内溝に設けた突起部は、その突起部が設けられている部分で、上記連結腕部と案内溝との隙間をできる限り狭く設定することができる。そのため、この部分では、転動体収容ベルトが循環中に生じる振れを小さくすることができる。そして、それ以外の部分では、連結腕部と案内溝との隙間を広くできるので、潤滑剤の剪断抵抗を緩和して転動体収容ベルトの摺動抵抗を小さく保つことができる。
【0008】
また、請求項2に記載の発明は、複数の転動体が転動しつつ循環する無限循環路を備え、該無限循環路内に前記転動体の並び方向に連続する案内溝を有する直動案内装置に用いられ、隣合う転動体同士の間に介在する間座部と、前記無限循環路の幅方向の両側で前記間座部を相互に連結するとともに、前記間座部の端面よりも外側に張り出して前記案内溝に案内される一対の連結腕部とを備え、前記転動体を前記無限循環路内の並び方向で整列させる転動体収容ベルトであって、前記一対の連結腕部の少なくとも一方は、その厚さ方向で前記案内溝と対向する面に、当該案内溝に向けて張り出す1または2以上の突起部を有することを特徴としている。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、転動体収容ベルトの連結腕部に設けた突起部は、その突起部が設けられている部分で、上記連結腕部と案内溝との隙間をできる限り狭く設定することができる。そのため、この部分では、転動体収容ベルトが循環中に生じる振れを小さくすることができる。そして、それ以外の部分では、連結腕部と案内溝との隙間を広くできるので、潤滑剤の剪断抵抗を緩和して転動体収容ベルトの摺動抵抗を小さく保つことができる。
【0010】
また、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の直動案内装置用転動体収容ベルトであって、前記突起部は、その形成位置が、前記間座部を前記無限循環路の幅方向の両側で連結する位置に設けられていることを特徴としている。
請求項3に記載の発明によれば、連結腕部に設ける突起部を、間座部の両側での連結位置にしている。当該突起部を設ける位置は、いわば間座部の真横になる。ここで、この部分は、転動体収容ベルトが循環する際に、間座部によって支持されるので、もともと変形しにくい部分である。そのため、突起部をこの位置に設けても、転動体収容ベルト全体の可撓性にほとんど影響を及ぼすことがない。したがって、転動体収容ベルトの循環抵抗を抑制する構成とする上でより好適である。
【0011】
また、請求項4に記載の発明は、直動案内装置であって、請求項2または3に記載の直動案内装置用転動体収容ベルトを備えていることを特徴としている。
請求項4に記載の発明によれば、請求項2または3に記載の直動案内装置用転動体収容ベルトによる作用・効果を奏する直動案内装置を提供することができる。
【0012】
また、請求項5に記載の発明は、複数の転動体が転動しつつ循環する無限循環路を備え、該無限循環路内に前記転動体の並び方向に連続する案内溝を有し、隣合う転動体同士の間に介在する間座部と、前記無限循環路の幅方向の両側で前記間座部を相互に連結するとともに、前記間座部の端面よりも外側に張り出して前記案内溝に案内される一対の連結腕部とを有し、前記転動体を前記無限循環路内の並び方向で整列させる転動体収容ベルトを備える直動案内装置であって、前記案内溝は、その幅方向で前記一対の連結腕部の少なくとも一方と対向する面に、当該連結腕部に向けて張り出す1または2以上の突起部を有することを特徴としている。
【0013】
請求項5に記載の発明によれば、案内溝に設けた突起部は、その突起部が設けられている部分で、上記連結腕部と案内溝との隙間をできる限り狭く設定することができる。そのため、この部分では、転動体収容ベルトが循環中に生じる振れを小さくすることができる。そして、それ以外の部分では、連結腕部と案内溝との隙間を広くできるので、潤滑剤の剪断抵抗を緩和して転動体収容ベルトの摺動抵抗を小さく保つことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、転動体収容ベルトが循環中に生じる振れを抑制するとともに、その摺動抵抗を緩和することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係る直動案内装置用転動体収容ベルト及びその転動体収容ベルトを備えた直動案内装置の一実施形態について図面を適宜参照しつつ説明する。
図1は、本発明に係る転動体収容ベルトを備えた直動案内装置の一実施形態のリニアガイドを示す斜視図である。また、図2は、図1のリニアガイドのエンドキャップを取り外した正面図、図3は、図2のリニアガイドでのX−X線部分における断面図である。
【0016】
図1および図2に示すように、このリニアガイド10は、転動体案内面14を有する案内レール12と、その案内レール12に対して相対移動可能に案内レール12上に跨設されるスライダ16とを備えている。
案内レール12は、ほぼ角形の断面形状を有し、その両側面にそれぞれ2条づつ計4条の転動体案内面14が、その長手方向に沿って直線状に形成されている。
スライダ16は、図1に示すように、スライダ本体17と、スライダ本体17の軸方向両端にそれぞれ装着されたエンドキャップ22とを備えて構成されている。スライダ本体17およびエンドキャップ22の軸方向に連続した形状は、ともに略コ字形の断面形状である。
【0017】
スライダ本体17には、図2に示すように、その略コ字形をした両袖部の内側に、案内レール12の各転動体案内面14にそれぞれ対向する断面ほぼ半円形の負荷転動体案内面18が計4条形成されている。また、エンドキャップ22には、図3に示すように、その負荷転動体案内面18の両端にそれぞれ連なる一対の方向転換路24が内部に形成されている。さらに、図2および図3に示すように、スライダ本体17には、その一対の方向転換路24に連通して、負荷転動体案内面18に平行で断面円形の貫通孔からなる転動体戻し通路20が袖部の内部に形成されている。
【0018】
そして、図3に示すように、案内レール12の転動体案内面14と、これに対向するスライダ本体17の負荷転動体案内面18との間に挟まれた空間が転動体軌道路26をなしている。そして、一対の方向転換路24、転動体戻し通路20、および、転動体軌道路26によって環状に連続する無限循環路28が計4本構成されている。
さらに、同図に示すように、各無限循環路28内には、転動体としてのボール46が複数装填されている。そして、各無限循環路28内の複数のボール46は、転動体収容ベルト50によって転動体収容ベルト50とともに転動体列62を構成している。
【0019】
この転動体収容ベルト50は、有端状に形成されており、無限循環路28内で隣り合うボール46同士の間に介装される間座部51と、間座部51同士を無限循環路28の幅方向の両側で連結するベルト状の一対の連結腕部52とを備えている。
そして、この転動体収容ベルト50は、間座部51および連結腕部52で画成された空間が転動体収容部になっており、その転動体収容部にボール46を個別に収容して無限循環路28内での並び方向で整列させて転動体列62を構成可能になっている。
【0020】
さらに、この転動体収容ベルト50は、図2に示すように、無限循環路28内で幅方向に張り出す連結腕部52が、スライダ16内の無限循環路28内に形成された案内溝60に、無限循環路28の幅方向の両側で案内されている。なお、転動体収容ベルト50は、方向転換路24の内部では、連結腕部52が弾性変形し、転動体列62全体が回動しつつ移動する。そのため、この連結腕部52の変形範囲に合わせた曲率を考慮して方向転換路24内では、案内溝60の溝幅を拡幅させている(図3参照)。
【0021】
次に、上記転動体収容ベルト50についてより詳しく説明する。
図4は、この転動体収容ベルト50の要部を説明する図であり、図4(a)は、転動体収容ベルト50を展開した状態で示す平面図、同図(b)はその正面図である。
この転動体収容ベルト50は、上記間座部51および連結腕部52が、可撓性をもつ合成樹脂材料から射出成形によって一体に成形されている。なお、有端状の、各端部に位置する間座部51同士の間には、ボール46が介装されるようになっている(図3参照)。
【0022】
間座部51は、図4(a)および(b)に示すように、ボール46の外径より僅かに小さい外径を有する短円柱状の部材である。間座部51は、隣合うボール46の曲面に倣う球面状の凹曲面51a,51bを、その短円柱状の両端面それぞれに、無限循環路28内でのボール46の並び方向に向けて有している。つまり、間座部51は、上記一対の連結腕部52に対し、ボール46の並び方向で各ボール収容穴55の両側にそれぞれ配置されて上記転動体収容部を構成する。なお、この間座部51は、その球面形状に倣う一対の凹曲面51a,51bが、展開状態で一方の側に開放する溝51cを有しており、図3に示すように、この溝51cは、無限循環路28内に配置した際に、各転動体収容部に収容されたボール46の移動を無限循環路28の内方側に向けてのみ許容するように形成されている。
【0023】
一対の連結腕部52は、図4(a)および(b)に示すように、その厚さTの薄肉で長尺のベルト形状の部材であり、ボール46を収容するための円形のボール収容穴55が、長手方向に並んで形成されている。そして、このボール収容穴55は、ボール46が連結腕部52の表裏の方向に自由に係合離脱可能な内径寸法をもって形成されている。
ここで、この一対の連結腕部52には、突起部53が、連結腕部52の表裏両側それぞれに対をなして各間座部51毎に設けられている。
詳しくは、この対をなす各突起部53は、連結腕部52の厚さ方向で案内溝60と対向する面に、案内溝60に向けてそれぞれ張り出して形成されている。さらに、その形成位置は、各間座部51を無限循環路28の幅方向の両側で連結腕部52が連結する位置それぞれ(両側且つその表裏)に連結腕部52の端部まで設けられている。
【0024】
そして、各突起部53の形状は、その横断面が半円弧状をなすことで突起を形成しており、この半円弧状の突起が、各間座部51の両端部から無限循環路28の幅方向に沿って延びている。そして、途中部分から端部に向けて徐々に幅を狭くすることでその端部側が略半球面になっている。この対をなす突起部53は、図4(b)に示すように、その突起部高さDPが、案内溝60の溝幅DSより僅かに小さい寸法であり、連結腕部52と案内溝60との隙間をできる限り狭く設定している。そして、その突起部高さDPは、連結腕部52の厚さTより大きい寸法になるので、それ以外の部分では、連結腕部52と案内溝60との隙間を広く確保するようになっている。なお、具体的な寸法として、本実施例では、ボール46の直径=4.7625mm、転動体収容ベルトの(連結腕部52の)厚さT=0.5mm、突起部高さDP=0.8mm、案内溝60の溝幅DS=1.0mmである。
【0025】
次に、この転動体収容ベルト50およびリニアガイド10の作用・効果について説明する。
上述の構成からなるリニアガイド10は、スライダ16を案内レール12の軸方向に相対移動させると、無限循環路28内をボール46が回転しつつ移動し、ボール46とともに転動体収容ベルト50も無限循環路28内を移動する。このとき、無限循環路28内で転動体収容ベルト50の間座部51は、自分の移動方向の前方にあるボール46を押し、さらに、ボール46は自分の移動方向の前方にある間座部51を押す。これにより、転動体列62全体が無限循環路28内を循環移動する。そして、転動体列62は、転動体軌道路26においてスライダ16とは反対方向に移動し、転動体軌道路26の一方の端部から連続する一方の方向転換路24に入って移動方向を変え、方向転換路24から転動体戻し通路20に入ってスライダ16と同じ方向に移動し、他方の方向転換路24に入って再び移動方向を変えて転動体軌道路26へ戻るという循環を繰り返すことができる。
【0026】
そして、このリニアガイド10によれば、無限循環路28内には、ボール46同士の間に間座部51が介在しているので、ボール46同士が互いに直接接触することはなく、ボール46同士の擦れ合いにより騒音や摩耗が発生することは防止されている。また、間座部51同士を連結腕部52によって連結して転動体収容ベルト50としているので、各ボール46は、所定の間隔を維持しながら無限循環路28内を転動体列62として円滑に循環することができる。
【0027】
また、このリニアガイド10によれば、各転動体収容ベルト50の連結腕部52は、案内溝60に係合している。そのため、転動体軌道路26内で各間座部51が倒れたりすることは防止されており、転動体列62の配列が乱れてその円滑な移動が妨げられることも防止される。さらに、転動体収容ベルト50の連結腕部52が案内溝60に沿って無限循環路28を案内されるので、転動体収容ベルト50が移動する際の振れは規制され、転動体収容ベルト50が連結腕部52の間に保持するボール46の振れも規制され、転動体列62全体が無限循環路28内を正確かつ円滑に移動可能となる。また、転動体収容ベルト50は、連結腕部52が案内溝60に係合するとともに、間座部51同士の間に保持されたボール46も凹曲面51a,51bによって支承し保持されているため、スライダ16を案内レール12から抜き出したときでも、スライダ16から転動体列62が脱落することが防止される。
【0028】
ここで、一般に、転動体収容ベルトが循環中に生じる振れを十分に抑えるためには、連結腕部と案内溝との隙間をできる限り狭く設定する必要がある。また、一般に、リニアガイドは、その作動をより円滑にするために、油やグリースなどの潤滑剤が用いられる。そして、このような潤滑剤は、連結腕部と案内溝との隙間にも満たされる。そのため、連結腕部と案内溝との隙間が狭すぎると、この隙間に満たされている潤滑剤の剪断抵抗によって転動体収容ベルトの摺動抵抗が大きくなる。逆に、この隙間を広くすれば、転動体収容ベルトの摺動抵抗を小さくすることはできるものの、転動体収容ベルトが循環中に生じる振れを十分に抑えることが困難となる。
【0029】
しかし、このリニアガイド10によれば、一対の連結腕部52は、その厚さT方向で案内溝60と対向する面それぞれに、案内溝60に向けて張り出す突起部53を、各間座部51毎にその両側に有している。
これにより、転動体収容ベルト50の連結腕部52に設けた突起部53は、その突起部53が設けられている部分では、上記連結腕部52と案内溝60との隙間をできる限り狭く設定することができる。そのため、この部分では、転動体収容ベルト50が循環中に生じる振れを小さくすることができる。そして、連結腕部52と案内溝60との隙間をできる限り狭く設定する部分は、この突起部53のみであり、それ以外の部分では、連結腕部52と案内溝60との隙間を広くできるため、潤滑剤の剪断抵抗を緩和して転動体収容ベルト50の摺動抵抗を小さく保つことができる。
【0030】
そして、このリニアガイド10によれば、突起部53を、間座部51を無限循環路28の幅方向の両側で連結する位置に設けている。この位置は、いわば間座部51の真横になる。すなわち、この部分は、転動体収容ベルト50が循環する際に、もともと変形しにくい部分である。そのため、突起部53をこの位置に設けても、転動体収容ベルト50全体の可撓性をほとんど低下させることがない。したがって、転動体収容ベルト50の循環抵抗を抑制する構成とする上でより好適である。
【0031】
以上説明したように、この転動体収容ベルト50およびこれを備えたリニアガイド10によれば、転動体収容ベルト50が循環中に生じる振れを抑制するとともに、その摺動抵抗を緩和することができる。
なお、本発明に係る直動案内装置用転動体収容ベルトおよび直動案内装置は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しなければ種々の変形が可能である。
【0032】
例えば、上記実施形態では、本発明に係る転動体収容ベルトを備えた直動案内装置の一実施形態として、ボールを備えたリニアガイドを例に説明したが、これに限定されず、例えば本発明を、ローラを備えたローラガイドに適用することができる。
また、例えば、上記実施形態では、一対の連結腕部52は、その厚さT方向で案内溝60と対向する面それぞれに、連結腕部52の端部まで延びて案内溝60に向けて張り出す突起部53を、各間座部51毎にその両側に対をなして有する例で説明したが、これに限定されるものではない。
【0033】
例えば、突起部53を、図5に変形例1として示すように、連結腕部52の端部からさらにその先端部53aが、案内溝60の幅方向での側面60a近傍まで突出した構成としてもよい。突起部53をこのような先端部53aを有する形状とすれば、当該突起部53が形成された部分では、この先端部53aと側面60aとによって転動体収容ベルト50の幅方向でも、上記連結腕部52と案内溝60との隙間をできる限り狭く設定することができる。したがって、転動体収容ベルト50の幅方向についても、転動体収容ベルト50が循環中に生じる振れを抑制するとともに、その摺動抵抗を緩和することができる。
【0034】
また、例えば、突起部53は、図6に変形例2として示すように、隣合う間座部51同士の間(いわばボール46の真横の位置)に形成してもよい。通常、薄肉の連結腕部52は、摺動を繰り返したときにこの薄肉の部分で最も繰り返し曲げを受ける。そのため、突起部53をこの位置に形成すれば、薄肉の連結腕部52の強度を向上させる上で好適であり、同時に上記同様に、転動体収容ベルト50が循環中に生じる振れを抑制するとともに、その摺動抵抗を緩和することができる。
【0035】
また、例えば、突起部53は、各間座部51毎にその両側に対をなして形成した例で説明したが、これに限定されず、例えば並び方向で一つおきの間座部51毎に形成してもよいし、また、連結腕部52の表裏両側で対をなす構成に限定されず、並び方向で表裏交互に形成してもよい。
さらに、上記実施形態では、各間座部51の両側に突起部53を形成した例で説明したが、一対の連結腕部52の少なくとも一方に形成してもよい。また、少なくとも連結腕部52の厚さ方向で案内溝60と対向する面に、当該案内溝60に向けて張り出す1または2以上の突起部53を有する構成であれば、本願の効果を奏するものであるが、上記実施形態、ないし各変形例に例示した構成とすれば、本願の効果を好適に奏する構成とする上でより好ましい。
【0036】
さらに、上記実施形態では、突起部53は、転動体収容ベルト50の連結腕部52に形成する例で説明したが、これに限定されず、例えば、図7に変形例3として示すように、案内溝60の、その幅DS方向で一対の連結腕部52と対向する面に、連結腕部52に向けて張り出す突起部53を、ボール46の並び方向で所定の間隔で設けるようにしてもよい。このような構成であっても、本願の効果を奏するものである。なお、この変形例3のように、突起部53を案内溝60に形成した場合でも、当該突起部53を、連結腕部52の少なくとも一方と対向する面に、当該連結腕部52に向けて張り出す1または2以上の突起部53として設ければ本願の効果を奏するものであるが、本願の効果をより好適に奏する構成とする上では、変形例3に示すように、案内溝60の、その幅DS方向で一対の連結腕部52と対向する面に、連結腕部52に向けて張り出す突起部53を、ボール46の並び方向に所定の間隔で設けることが好ましい。
【0037】
なおまた、上記実施形態並びに各変形例は、上記説明した個別の例に限定されず、本願の効果を奏する構成であれば、相互の構成要素の変更や組合わせを適宜実施可能であることは勿論である。例えば、図8に変形例4としてその組合わせ例を示すように、一対の連結腕部52の厚さ方向で案内溝60と対向する面に突起部53を形成するとともに、さらに、一対の連結腕部52と案内溝60とがその幅方向で対向する案内溝60の面に突起部53を形成する組合わせも可能である。すなわち、連結腕部52と案内溝60との対向する面(三組ある)のいずれか一方にのみ、他方に向けて張り出す1または2以上の突起部を有する構成であれば、本願の効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に係る転動体収容ベルトを備えた直動案内装置の一実施形態のリニアガイドを示す斜視図である。
【図2】図1のリニアガイドのエンドキャップを取り外した正面図である。
【図3】図2のリニアガイドでのX−X線部分における断面図である。
【図4】本発明に係る転動体収容ベルトを説明する図である。
【図5】突起部の変形例(変形例1)を説明する図である。なお、この説明図は図4に対応する。
【図6】突起部の変形例(変形例2)を説明する図である。なお、この説明図は図4に対応する。
【図7】突起部の変形例(変形例3)を説明する図である。なお、この説明図は図4に対応する。
【図8】突起部の変形例(変形例4)を説明する図である。なお、この説明図は図4に対応する。
【符号の説明】
【0039】
10 リニアガイド(直動案内装置)
12 案内レール
14 転動体案内面
16 スライダ
17 スライダ本体
18 負荷転動体案内面
20 転動体戻し通路
22 エンドキャップ
24 方向転換路
26 転動体軌道路
28 無限循環路
46 ボール(転動体)
50 転動体収容ベルト
51 間座部
52 連結腕部
53 突起部
55 ボール収容穴
60 案内溝
62 転動体列

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の転動体が転動しつつ循環する無限循環路を備え、該無限循環路内に前記転動体の並び方向に連続する案内溝を有し、隣合う転動体同士の間に介在する間座部と、前記無限循環路の幅方向の両側で前記間座部を相互に連結するとともに、前記間座部の端面よりも外側に張り出して前記案内溝に案内される一対の連結腕部とを有し、前記転動体を前記無限循環路内の並び方向で整列させる転動体収容ベルトを備える直動案内装置であって、
前記連結腕部と案内溝との対向する面のいずれか一方にのみ、他方に向けて張り出す1または2以上の突起部を有することを特徴とする直動案内装置。
【請求項2】
複数の転動体が転動しつつ循環する無限循環路を備え、該無限循環路内に前記転動体の並び方向に連続する案内溝を有する直動案内装置に用いられ、隣合う転動体同士の間に介在する間座部と、前記無限循環路の幅方向の両側で前記間座部を相互に連結するとともに、前記間座部の端面よりも外側に張り出して前記案内溝に案内される一対の連結腕部とを備え、前記転動体を前記無限循環路内の並び方向で整列させる転動体収容ベルトであって、
前記一対の連結腕部の少なくとも一方は、その厚さ方向で前記案内溝と対向する面に、当該案内溝に向けて張り出す1または2以上の突起部を有することを特徴とする直動案内装置用転動体収容ベルト。
【請求項3】
前記突起部は、その形成位置が、前記間座部を前記無限循環路の幅方向の両側で連結する位置に設けられていることを特徴とする請求項2に記載の直動案内装置用転動体収容ベルト。
【請求項4】
請求項2または3に記載の直動案内装置用転動体収容ベルトを備えていることを特徴とする直動案内装置。
【請求項5】
複数の転動体が転動しつつ循環する無限循環路を備え、該無限循環路内に前記転動体の並び方向に連続する案内溝を有し、隣合う転動体同士の間に介在する間座部と、前記無限循環路の幅方向の両側で前記間座部を相互に連結するとともに、前記間座部の端面よりも外側に張り出して前記案内溝に案内される一対の連結腕部とを有し、前記転動体を前記無限循環路内の並び方向で整列させる転動体収容ベルトを備える直動案内装置であって、
前記案内溝は、その幅方向で前記一対の連結腕部の少なくとも一方と対向する面に、当該連結腕部に向けて張り出す1または2以上の突起部を有することを特徴とする直動案内装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−132403(P2007−132403A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−324780(P2005−324780)
【出願日】平成17年11月9日(2005.11.9)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】