説明

真空バルブ用接点材料及びその製造方法

【課題】 優れた遮断特性と耐電圧特性とを兼備した真空バルブ用接点材料及びその製造方法を得る。
【解決手段】 Cu粉体とCr粉体の混合粉体を原料とする真空バルブ用接点材料において、前記Crの含有量が23〜50wt%であって、前記混合粉体は、アトマイズ法により水を冷却媒体として製造された第1の粉体と、前記アトマイズ法により不活性ガスを冷却媒体として製造された第2の粉体を混合して用いる真空バルブ用接点材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた遮断性能及び耐電圧性能を兼備した真空バルブ用接点材料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
真空バルブ用接点は、導電成分であるCuやAgに用途に応じた種々の成分が複合化された材料であり、大別すると、以下の4種類が存在する。
【0003】
1)CuBi、CuTeSeに代表される大電流遮断用接点
Bi,Te,Se等、接点材料中に、脆性相を形成する成分を含んでおり、通電性に優れ、仮に接触抵抗による溶着が発生しても、この脆性相を起点として溶着部が破断できる。一方、溶着破断面の荒れは大きく、破断面に突起が形成されて電界が集中するため、高電圧領域には使用不可能である。
【0004】
2)Cu−W等の高電圧用途に用いられる接点
高融点のWを複合化していることから、耐アーク性に優れ、大電流の投入による溶着の回避には有効な接点である。また、接点の硬度が高く、耐電圧特性に優れる。遮断性能はCu−CrやCuBiなどに比べ劣る。
【0005】
3)Ag−WC等の低裁断特性を有する接点
低裁断化作用を有するWCを多量添加することにより低裁断特性が発揮されている。この低裁断作用を有する成分は、耐電圧特性を阻害するため、高電圧領域では使用されない。
【0006】
4)Cu−Cr等の、耐電圧特性および大電流遮断特性を有する接点
CuにCrを複合化することにより優れた遮断性能を発揮する。複合量が比較的少ない接点材料は低接触抵抗特性を有する。また、複合量が比較的多い接点材料は耐電圧特性が優れ、高電圧領域でも使用可能である。
【0007】
この製造方法として、従来粉末冶金方法、溶浸方法、鋳造方法があるが、いずれもCu−Crの銅マトリックス中に微細な粒径のCrが均一に分散しないと言う欠点があった。特許文献1は、この欠点を除去するため、アトマイズ法により得られるCu−Cr合金の微粉末を焼結するに際し、加熱温度を合金微粉末の融点を基準にして所定範囲に収めるか、密度充填率が所定範囲に収まるようにCu−Cr粉末の粒度や加熱時間等を調整するか、或いは合金微粉末の融点を基準として加熱温度を制御すると共に、密度充填率が所定範囲に収まるようにすることで、前述した従来のCu−Crの製造方法における欠点を改善できると記載されている。
【0008】
特許文献2では、成形性を増すために、例えばアトマイズ法により製造したCuとCrの複合粉体をCu粉末と混合し、Cr含有量が5〜20wt%の接点材料が示されている。しかしながら、本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、特許文献2に記載の20wt%以下のCr含有量では遮断性能が不十分であることが明らかになった。
【特許文献1】特許第3067317号
【特許文献2】特許第3191382号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
近年真空開閉機器のコンパクト化の要求から、接点材料としては通電性能および遮断性能の高い接点が要望されており、CuCr系接点材料では、Cr量の低減が必要である。しかしながら、Cu−Cr系接点材料では、Crの複合量により遮断性能と耐電圧性能がトレードオフの関係で変化するため、耐電圧特性がCr量の減少とともに低下してしまう。
【0010】
そこで、本発明では、優れた遮断特性と耐電圧特性とを兼備した真空バルブ用接点材料及びその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するため、請求項1に対応する発明は、CuとCrの合金粉体を原料とする真空バルブ用接点材料において、前記Crの含有量が23〜50wt%であることを特徴とする真空バルブ用接点材料である。
【0012】
前記目的を達成するため、請求項2に対応する発明は、次のようにしたものである。すなわち、前記混合粉体は、アトマイズ法により水を冷却媒体として製造された第1の粉体と、前記アトマイズ法により不活性ガスを冷却媒体として製造された第2の粉体を混合して用いることを特徴とする請求項1に記載の真空バルブ用接点材料。
【0013】
前記目的を達成するため、請求項3に対応する発明は、次のようにしたものである。すなわち、微量添加成分として0.01〜0.2wt%のBi及び又は0.05〜1wt%のTeを新たに含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の真空バルブ用接点材料である。
【0014】
前記目的を達成するため、請求項4に対応する発明は、アトマイズ法により水を冷却媒体として製造された第1のCuCr粉体と、前記アトマイズ法により不活性ガスを冷却媒体として製造された第2のCuCr粉体を混合してCuCr粉体を得る第1の工程と、前記第1の工程で得られたCuCr粉体に圧力を加えて成形体を得る第2の工程と、前記第2の工程で得られた成形体を焼結して接点材料を得る第3の工程と、からなることを特徴とする真空バルブ用接点材料の製造方法である。
【0015】
前記目的を達成するため、請求項5に対応する発明は、次のようにしたものである。すなわち、前記第1の工程で得られるCuCr粉体は、65〜75wt%のCuと25〜35wt%のCrを含有している場合、前記CuCr粉体のうちの20〜50wt%は水を冷却媒体としたアトマイズ法により製造し、残りを不活性ガスを冷却媒体としたアトマイズ法により製造することを特徴とする請求項4に記載の真空バルブ用接点材料の製造方法である。
【0016】
前記目的を達成するため、請求項6に対応する発明は、次のようにしたものである。すなわち、水を冷却媒体として製造された粉体のCr量を15wt%以下(0を含まず)とした請求項4又は請求項5に記載の真空バルブ用接点材料の製造方法である。
【0017】
前記目的を達成するため、請求項7に対応する発明は、次のようにしたものである。すなわち、前記第3の工程において、500〜800℃の温度領域において水素雰囲気にて焼結を行った後に、雰囲気中の水素を排気して1.0×10−2Paより高い真空雰囲気とし、950〜1050℃の温度領域まで昇温して焼結することを特徴とする請求項4〜6のいずれか1項に記載の真空バルブ用接点材料の製造方法である。
【0018】
前記目的を達成するため、請求項8に対応する発明は、次のようにしたものである。すなわち、前記第2の工程において、1〜4ton/cm2で成形し、前記第3の工程において、500〜800℃の温度領域において水素雰囲気にて焼結を行った後に、雰囲気中の水素を排気して1.0×10−2Paより高い真空雰囲気とし、950〜1050℃の温度領域まで昇温して焼結した後に、6〜10ton/cm2で再度成形する第4の工程と、前記再成形体を1.0×10−2Paより高い真空雰囲気とし、950〜1050℃の温度領域まで昇温して再度焼結する第5の工程とを追加した請求項4に記載の真空バルブ用接点材料の製造方法である。
【0019】
前記目的を達成するため、請求項9に対応する発明は、次のようにしたものである。すなわち、前記第1の工程において、水を冷却媒体として製造された粉体と、前記不活性ガスを冷却媒体として製造された粉体からなる2種類のアトマイズ粉体と、Bi及び又はTeを添加することを特徴とする請求項4〜8のいずれか1項に記載の真空バルブ用接点材料の製造方法である。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、CuとCrの合金粉体を原料とする真空バルブ用接点材料において、前記Crの含有量が23〜50wt%であることを特徴とする真空バルブ用接点材料である。
【0021】
また、本発明は、アトマイズ法により水を冷却媒体として製造された第1のCuCr粉体と、前記アトマイズ法により不活性ガスを冷却媒体として製造された第2のCuCr粉体を混合してCuCr粉体を得る第1の工程と、前記第1の工程で得られたCuCr粉体に圧力を加えて成形体を得る第2の工程と、前記第2の工程で得られた成形体を焼結して接点材料を得る第3の工程と、からなることを特徴とする真空バルブ用接点材料の製造方法である。
【0022】
本発明は、このように構成することにより、遮断特性および耐電圧特性を同時に満足できる真空バルブ用接点材料及びその製造方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施例を具体的には表1、表2を参照して説明する。表1には、本発明の各実施例及び比較例の製造条件を示し、また表2には、本発明の各実施例及び比較例の特性を示している。
【表1】

【0024】
【表2】

【0025】
[接点材料の製造方法]
(接点材料の製造工程)
実施例1〜11、実施例16〜17及び比較例1〜8については、以下に示す第1〜第3の工程からなる製造方法を標準として実施した。
【0026】
第1の工程は、ともに30wt%のCrを含むガスアトマイズCuCr粉末と水アトマイズCuCr粉末を60:40の体積比で混合して混合粉体(混合粉末)を得る。
【0027】
第2の工程は、第1の工程で得た混合粉末を8ton/cmの圧力にて成形して成形体を得る。
【0028】
第3の工程は、第2の工程で得た成形体をカーボン製の坩堝内の設置し、水素雰囲気下において600℃にて1時間熱処理した後、水素を排気し、1×10−2Torrより高真空の真空雰囲気内において、1000℃にて2時間保持する。
【0029】
また、実施例12〜15については、前述の実施例の第1〜第3の工程に以下に述べる第4及び第5の工程を付加したものを標準として実施した。前述の第2の工程での成形圧力を変えて成形して焼結しさらに、成形工程、焼結工程を1回ずつ追加している。
【0030】
第4の工程は、
前記第1の工程で得た混合粉体を5〜10ton/cmの圧力にて成形し成形体を得る。
【0031】
第5の工程は、第4の工程で得た成形体をカーボン製の坩堝内の設置し、1×10−2Torrより高真空の真空雰囲気内において、1000℃にて2時間保持する。
【0032】
実施例18〜21および比較例9〜12では、第1の工程において、Bi及びまたはTeをアトマイズCuCr粉末とともに混合している。
【0033】
各実施例および比較例では、上記標準製造条件と部分的に異なる条件にて接点材料を製造し、組成、組織などの特性が異なる材料として、材料的特性および電気的特性の評価を行った。
【0034】
[電気的特性評価用真空バルブの構成]
前述のように製造した接点材料の電気的特性評価を実施するために、接点材料を所定の形状に加工し、真空バルブに組み込んだ。
【0035】
図1は、本実施例を説明するための真空バルブの断面図、図2は図1の電極部分の拡大断面図である。
【0036】
図1において、遮断室1は、絶縁材料によりほぼ円筒状に形成された絶縁容器2と、この両端に封止金具3a、3bを介して設けた金属製の蓋体4a、4bとで真空気密に構成されている。
【0037】
遮断室1内には、導電棒5,6の対向する端部に取付けられた一対の電極7,8が配設され、上部の電極7を固定電極、下部の電極8を可動電極としている。またこの電極8の電極棒6には、ベローズ9が取付けられ遮断室1内を真空気密に保持しながら電極8の軸方向の移動を可能にしている。また、このベローズ9上部には金属製のアークシールド10が設けられ、ベローズ9がアーク蒸気で覆われることを防止している。また、電極7,8を覆うように、遮断室1内に金属製のアークシールド11が設けられ、これにより絶縁容器2がアーク蒸気で覆われることを防止している。
【0038】
さらに、電極8は、図2に拡大して示す如く、導電棒6にろう付け部12によって固定されるか、又はかしめによって圧着接続されている。接点13aは電極8にろう付け14によってろう付けで取付けられる。なお、接点13bは、電極7にろう付けにより取付けられる。
【0039】
[評価方法および評価条件]
本発明の実施例および比較例の特性評価結果を表2に示す。これらのデータを得た評価方法、および評価条件について説明する。
【0040】
(材料特性評価)
(1)相対密度
アルキメデス法により密度を測定して組成比から真密度を求めて相対密度に換算し、
92%以上を合格とした。
【0041】
(2)ガス含有量
酸素含有量および水素含有量を化学分析によって求め、表2に示した。
【0042】
(電気特性評価)
(1)遮断特性
前記真空バルブに各実施例、比較例の接点を組み込み、遮断試験をJEC規格の5号試験により行い、これにより遮断特性を評価し、合格したものについては、表2に合格Aと示した。さらに、遮断電流値を通常の試験の1.2倍に増大した場合においても試験に合格した場合を合格Bとして表2に示した。
【0043】
(2)耐電圧特性
進み小電流試験における再点弧発生確率にて評価した。電流は500Aであり、回復電圧は12.5kVである。試験回数は2000回である。実施例2の再点弧発生確率を1.0とした場合の相対値を示し、この相対値が1.2以下のものを合格とした。
【0044】
(3)耐溶着特性
それぞれ平面および曲率半径50mmの球面の接触面を有する1対の接点を真空チャンバー内にセットし、接点を200Nの力で接触させ、15kAを通電して溶着させた後の引き外しに必要な力を測定する。3対の接点での試験を実施し、平均値を実施例18と相対比較した値を表2に示す。この値が1.0以下を合格とした。
【0045】
[実施例]
次に、表1の各接点の製造条件および、これらに対応する表2の材料的特性および電気的特性データを参照しながら考察する。
【0046】
(実施例1〜3および比較例1〜2)
標準製造条件におけるアトマイズ粉末のCr含有量を変えて、Cr含有量の異なる接点材料の試作を実施した。接点材料のCr含有量が23〜35(正確には22.8〜35.2)wt%の範囲にある実施例1〜3では、良好な遮断性能および耐電圧性能を示すが、Cr含有量が20(正確には19.9)wt%の比較例1では、耐アーク性が低いため遮断特性が不合格であった。また、Cr含有量が40(正確には39.9)wt%の比較例2では、酸素含有量が高すぎるため、遮断性能が不十分である。
【0047】
(実施例4〜6)
ガスアトマイズ粉末のCr含有量を水アトマイズ粉末Cr含有量より多くし、ガスアトマイズ粉末と水アトマイズ粉末の割合を調整して全体のCr含有量を標準条件で製造した場合と同じ70wt%とした接点材料を試作して評価した。水アトマイズ粉体のCr量を20wt%とした実施例4に比べ実施例5〜6はいずれも酸素含有量が低く、その結果、遮断性能極めて良好であり、通常の試験の1.2倍の電流値の遮断にも成功している。
【0048】
(実施例7〜9および比較例3〜4)
ガスアトマイズ粉体と水アトマイズ粉体との比を標準条件と変えた接点材料を試作し、評価を行った。ガスアトマイズ粉体の割合が50〜80wt%の範囲にある実施例7〜9では良好な遮断性能および耐電圧特性を示したが、ガスアトマイズ粉体の割合が40wt%と少ない比較例3では、酸素含有量が高いため、遮断特性が不十分であった。また、ガスアトマイズ粉体の割合が85wt%と多い比較例4では、相対密度が低く、接点材料中の酸素含有量が高くなるため、同様に遮断特性が不合格となった。
【0049】
(実施例10〜11および比較例5〜6)
第3の工程での第1段階の焼結温度を標準の製造条件と変えた試作を行い、接点材料を評価した。第1段階の焼結温度が500〜800℃の範囲にある実施例10〜11では、良好な遮断性能および耐電圧特性を示しているが、この温度が低い比較例5では、第1段階終了後の相対密度が低く、材料内部が大気に一旦さらされてしまうため、酸素含有量が高くなり、遮断性能は不十分となる。一方、第1段階の焼結温度が900℃と高い比較例6では、雰囲気の水素が気孔内部に閉じ込められてしまうため、水素含有量が高く、遮断特性は不合格となった。
【0050】
(実施例12〜15)
成形と焼結を繰り返し2回実施した試作を行い、接点材料を評価した。第2の工程での成形の際に低い圧力で加圧した実施例12〜15はいずれも実施例2に比べ、酸素含有量が低く、良好な遮断特性および耐電圧特性を示した。特に2〜4tonの範囲の圧力で加圧した実施例13および14は、相対密度も十分高く、通常の試験の1.2倍の電流値の遮断にも成功している。
【0051】
以上では、遮断特性および耐電圧特性の向上を目的とした接点材料およびその製造方法の実施例を示したが、以下の実施例、比較例では、さらに耐溶着特性についても評価した例について示す。
【0052】
(実施例16〜17および比較例7〜8)
第3の工程の第2段階の焼結温度を900〜1050℃の範囲で変化させて試作し、接点材料を評価した。この温度が950〜1000℃の範囲にある実施例16〜17では、遮断性能と耐電圧特性を満足すると同時に、適当な空隙を材料内部に分散していることにより、優れた耐溶着特性を示した。これに対して900℃で焼結した比較例7では、十分な相対密度とならず、酸素含有量が高いため、遮断性能が不十分であった。一方、1050℃で焼結した比較例8では、相対密度が高すぎ、耐溶着性能が不充分であった。
【0053】
(実施例18〜19および比較例9〜10)
第1の工程において、アトマイズCuCr粉体と合わせてBiを添加した接点材料を試作し、評価を実施した。Biの添加量が0.01〜0.2wt%の範囲にある実施例18〜19では、遮断性能と耐電圧特性を満足すると同時に、脆化相を形成することにより、優れた耐溶着特性を示した。これに対してBiの添加量が0.005wt%の比較例9では、脆化相の形成量が少なく、耐溶着特性が不十分であった。一方、Bi添加量が0.4wt%の比較例10では、高蒸気圧のBiの添加量が多く、遮断特性が不合格となっている。
【0054】
(実施例20〜21および比較例11〜12)
第1の工程において、アトマイズCuCr粉体と合わせてTeを添加した接点材料を試作し、評価を実施した。Teの添加量が0.05〜1wt%の範囲にある実施例20〜21では、遮断性能と耐電圧特性を満足すると同時に、脆化相を形成することにより、優れた耐溶着特性を示した。これに対してTeの添加量が0.02wt%の比較例11では、脆化相の形成量が少なく、耐溶着特性が不十分であった。一方、Te添加量が2wt%の比較例12では、高蒸気圧のTeの添加量が多く、遮断特性が不合格となっている。
【0055】
以上述べた本発明の真空バルブ用接点材料は、概略CuとCrの合金粉体を原料とし、かつ、Cr含有量が23〜50wt%となるようにしたものである。このようにすることにより、前述した特許文献2の発明では、アトマイズ法により製造したCuとCrの複合粉体をCu粉末と混合し、Cr含有量が20wt%以下の接点材料が示されているが、20wt%以下のCr含有量では遮断性能が不十分であり、本発明のように、23〜50wt%において良好な遮断性能を示す。このアトマイズ法により製造された粉末のうち不活性ガスを冷却媒体として用いたいわゆるガスアトマイズ粉体(ガスアトマイズ粉末)はガス含有量が低いが成形性が悪く、一方、水を冷却媒体として用いたいわゆる水アトマイズ粉末水アトマイズ粉末は成形性は良好であるがガス含有量が高い。成形性が悪い場合には残存空隙中の吸着ガスが問題となり、一方、ガス含有量が高い場合は、原料粉末表面に酸化物または水酸化物が形成されているため、いずれの場合も遮断性能低下の原因となる。請求項2で示したように、この両粉末を適正な割合で混合した本発明では、優れた遮断性能を発揮することが可能となっている。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の一実施例を示す真空バルブ用接点材料が適用される真空バルブの断面図。
【図2】図1の要部拡大断面図。
【符号の説明】
【0057】
1 遮断室, 2 絶縁容器, 3a,3b 封止金具, 4a,4b 蓋体, 5,6 導電棒
7,8 電極, 9 ベローズ, 10,11 アークシールド, 13a,13b 接点
14 ろうづけ層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
CuとCrの合金粉体を原料とする真空バルブ用接点材料において、
前記Crの含有量が23〜50wt%であることを特徴とする真空バルブ用接点材料。
【請求項2】
前記合金粉体は、アトマイズ法により水を冷却媒体として製造された第1の合金粉体と、前記アトマイズ法により不活性ガスを冷却媒体として製造された第2の合金粉体を混合して用いることを特徴とする請求項1に記載の真空バルブ用接点材料。
【請求項3】
微量添加成分として0.01〜0.2wt%のBi及び又は0.05〜1wt%のTeを新たに含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の真空バルブ用接点材料。
【請求項4】
アトマイズ法により水を冷却媒体として製造された第1のCuCr粉体と、前記アトマイズ法により不活性ガスを冷却媒体として製造された第2のCuCr粉体を混合してCuCr粉体を得る第1の工程と、
前記第1の工程で得られたCuCr粉体に圧力を加えて成形体を得る第2の工程と、
前記第2の工程で得られた成形体を焼結して接点材料を得る第3の工程と、
からなることを特徴とする真空バルブ用接点材料の製造方法。
【請求項5】
前記第1の工程で得られるCuCr粉体は、65〜75wt%のCuと25〜35wt%のCrを含有している場合、前記CuCr粉体のうちの20〜50wt%は水を冷却媒体としたアトマイズ法により製造し、残りを不活性ガスを冷却媒体としたアトマイズ法により製造することを特徴とする請求項4に記載の真空バルブ用接点材料の製造方法。
【請求項6】
水を冷却媒体として製造された粉体のCr量を15wt%以下(0を含まず)とした請求項4又は請求項5に記載の真空バルブ用接点材料の製造方法。
【請求項7】
前記第3の工程において、500〜800℃の温度領域において水素雰囲気にて焼結を行った後に、雰囲気中の水素を排気して1.0×10−2Paより高い真空雰囲気とし、950〜1050℃の温度領域まで昇温して焼結することを特徴とする請求項4〜6のいずれか1項に記載の真空バルブ用接点材料の製造方法。
【請求項8】
前記第2の工程において、1〜4ton/cm2で成形し、前記第3の工程において、500〜800℃の温度領域において水素雰囲気にて焼結を行った後に、雰囲気中の水素を排気して1.0×10−2Paより高い真空雰囲気とし、950〜1050℃の温度領域まで昇温して焼結した後に、6〜10ton/cm2で再度成形する第4の工程と、前記再成形体を1.0×10−2Paより高い真空雰囲気とし、950〜1050℃の温度領域まで昇温して再度焼結する第5の工程とを追加した請求項4に記載の真空バルブ用接点材料の製造方法。
【請求項9】
前記第1の工程において、水を冷却媒体として製造された粉体と、前記不活性ガスを冷却媒体として製造された粉体からなる2種類のアトマイズ粉体と、Bi及び又はTeを添加することを特徴とする請求項4〜8のいずれか1項に記載の真空バルブ用接点材料の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−66753(P2007−66753A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−252416(P2005−252416)
【出願日】平成17年8月31日(2005.8.31)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】