説明

真空処理装置

【課題】プラズマ生成領域へのエネルギ伝送の効率化と、電界強度分布の均一化を図ることにより、大面積で高品質な膜を均一に製膜することができる真空処理装置を提供する。
【解決手段】互いに対向して配置され、間にプラズマ処理が施される基板が配置される放電用のリッジ部であるリッジ電極21,21を有するリッジ導波管からなる放電室2と、高周波電力を放電室2に供給する電源5と、内部導体41および外部導体42からなり、電源5から放電室2へ高周波電力を導く同軸線路4Aと、リッジ部31,31を有するリッジ導波管からなり、放電室2が延びる方向Lに隣接して配置され、同軸線路4Aから放電室2へ高周波電力を導く変換部3Aと、が設けられ、リッジ部31,31の一方は、内部導体41と電気的に接続され、リッジ部31,31の他方は、外部導体42と電気的に接続されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空処理装置に関し、特にプラズマを用いて基板(製膜済みの基板も含む)に処理を行う真空処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、薄膜太陽電池の生産性を向上させるためには、高品質なシリコン薄膜を、高速に、かつ、大面積で製膜することが重要である。このような高速かつ大面積な製膜を行う方法としては、プラズマCVD(化学気相成長)法による製膜方法が知られている。
【0003】
プラズマCVD法による製膜を行うためには、プラズマを発生させるプラズマ生成装置が必要であり、プラズマ生成装置としては、例えば容量結合型高周波プラズマ生成装置や、誘導結合型高周波プラズマ生成装置や、マイクロ波プラズマ生成装置などが知られている。
【0004】
容量結合型高周波プラズマ生成装置や誘導結合型高周波プラズマ生成装置(以下、単に「プラズマ生成装置」と表記する。)では、プラズマ生成装置に印加される高周波電力の周波数を数十MHzから百数十MHzまで高める超高周波化(Very High Frequency:VHF)する方法(非特許文献1参照。)や、プラズマを生成する領域の高ガス圧(1kPaよりも高圧)化や、電極と基板との間の距離を狭く(狭ギャップ化)することにより(非特許文献2参照。)、高品質なシリコン薄膜を高速で製膜できることが知られている。
【0005】
その一方で、マイクロ波プラズマ生成装置では、VHFプラズマ生成装置と比較して低ガス圧(略1kPaよりも低圧)な条件において、均一な高密度のプラズマを得られることが知られている。さらに、マイクロ波プラズマ生成装置は、VHFプラズマ生成装置と比較して大電力の取り扱いに関しても有利な面を持っていることが知られている。
【0006】
さらに、リッジ導波管を利用したプラズマ生成装置も知られている(例えば、特許文献1および2参照。)。このプラズマ生成装置は、リッジ導波管の横方向に孔(結合穴)が設けられ、この孔からマイクロ波が供給されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表平04−504640号公報
【特許文献2】特公昭59−047421号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】H.Curtins,N.Wyrsch,M.Favre and A.V.Shah,Plasma Chemistry and Plasma,Processing,Vol.7,No.3,1987,p.267−273
【非特許文献2】T.Matsui,M.Kondo and A.Matsuda,Proceeding 3rd World Conference on Photovoltaic Energy Conversion,Osaka(2003),p.1548−1551
【非特許文献3】L.Sansonnens,A.Pletzer,D.Magni,A.A.Howling,Ch.Hollenstein and J.P.M.Schmitt,Plasma Sources Sci,Technol,6,(1997),170
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、VHFプラズマ生成装置は高速なシリコン薄膜の製膜に適する反面、電極上に発生する定在波の影響により大面積化が困難であるという問題があった(非特許文献3参照。)。
つまり、例えばシリコン系薄膜の製膜にあたり、定在波の影響によりプラズマ電極上に電圧分布が発生するため、大面積の均一な品質を有する製膜が困難になるという問題があった。
【0010】
定在波の影響による問題を解決する方法としては、プラズマ電極を分割する方法が考えられる。しかしながら、プラズマ電極の分割は構造が複雑となることから、薄膜製造装置のコストが高くなるという問題があった。
さらに、プラズマ電極を分割する方法では、隣接するプラズマ電極が干渉するため、プラズマ電極上の電圧分布が均一化の調整工程が煩雑で、上述の問題の解決が困難であるという問題があった。
【0011】
その一方で、シリコン薄膜の製膜面積が大きくなると、VHFプラズマ生成装置に投入される電力も大きくなる。すると、大電力を供給する給電回路における電力損失も大きくなるため、製膜に関するエネルギ伝送効率が悪化するという問題があった。
【0012】
マイクロ波プラズマ生成装置を用いた製膜においては、プラズマにより石英などから放出される不純物が膜中に混入(コンタミネーション)する問題があり、また製膜条件の選定範囲がシリコン系薄膜製造に対して適応しない場合があるという問題があるため、製膜された膜質の高品質化が図りにくいという問題があった。
【0013】
さらに、従来のマイクロ波プラズマ生成装置では、プラズマを生成する領域の圧力が低圧でないと放電できないという問題があるため、薄膜を製膜するプロセスに制限が課されるという問題があった。例えば、薄膜シリコン太陽電池に用いられる結晶質シリコン薄膜は、一般に1kPa以上の高圧環境で製膜を行うが必要とされるが、このような高圧環境では、従来のマイクロ波プラズマ生成装置は放電できないという問題があった。
【0014】
リッジ導波管を利用したプラズマ生成装置では、リッジ導波管に対して、横方向からマイクロ波電力を供給する構造になっていた。すなわち、リッジ導波管に沿った長手方向における電界強度分布は分配室と称されるリッジ導波管に併設された部分および分配室からリッジ導波管にマイクロ波を供給するための結合穴の構成により定まる。そのため、リッジ導波管と分配室は同じ長さが必要であり、かつ分配室や結合穴における取りうる構成が制限されると、電界強度分布の均一性も制限されることからプラズマの均一化が困難になるという問題があった(特許文献1参照。)。
【0015】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、プラズマ生成領域へのエネルギ伝送の効率化と、電界強度分布の均一化を図ることにより、大面積で高品質な膜を均一に製膜することができる真空処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の手段を提供する。
本発明の真空処理装置は、互いに対向して配置され、間にプラズマ処理が施される基板が配置される放電用のリッジ部であるリッジ電極を有するリッジ導波管からなる放電室と、高周波電力を前記放電室に供給する電源と、内部導体および外部導体からなり、前記電源から前記放電室へ前記高周波電力を導く同軸線路と、リッジ部を有するリッジ導波管からなり、前記放電室が延びる方向に隣接して配置され、前記同軸線路から前記放電室へ前記高周波電力を導く変換部と、が設けられ、前記リッジ部の一方は、前記内部導体と電気的に接続され、前記リッジ部の他方は、前記外部導体と電気的に接続されていることを特徴とする。
【0017】
本発明によれば、電源から供給された高周波電力は、同軸線路および変換部を介してリッジ部の間隔狭く設けることで強い電界を発生する放電室のリッジ電極に伝送され、リッジ電極の間に電離ガスを導入することでプラズマ生成に用いられる。
このように、高周波電力は内部導体および外部導体を有する同軸線路と、リッジ導波管からなる変換部を介して、同じく、リッジ導波管からなる放電室に伝送されるため、エネルギ伝送効率の良い導波管そのものを放電室に利用するのでエネルギ伝送の効率低下が防止される。
【0018】
その一方で、リッジ導波管の特性により、このリッジ電極に沿う方向(導波管に対する垂直断面方向)間では電界強度分布が均一になる。さらに、リッジ導波管を用いることにより、電界強度分布が均一化された領域を容易に大面積化できる。
そのため、基板に対して均一なプラズマを広い範囲に生成することができる。
【0019】
上記発明においては、前記変換部は、前記放電室が延びる方向の一方の端部および他方の端部に設けられ、前記一方の端部に設けられた前記変換部には、前記電源と電気的に接続された前記同軸線路が電気的に接続され、前記他方の端部に設けられた前記変換部には、当該変換部から前記放電室に向かって反射する反射電力の位相を調節する位相調整部が設けられていることが望ましい。
【0020】
本発明によれば、電源から供給された高周波電力は、同軸線路、一方の端部に接続された変換部、放電室の順に導かれてリッジ電極に伝送される。
その一方で、放電室に導かれた高周波電力の少なくとも一部は、他方の端部に接続された変換部および位相調節部にも導かれ、当該変換部および位相調節部において反射する。すると、放電室では、電源から供給された高周波電力と、反射した反射電力と、により放電室が延びる方向(導波管の長さ方向)に定在波が発生する。
【0021】
反射電力の位相を位相調整部により調節することにより、放電室における定在波の位相も調節される。例えば、反射電力の位相を時間的に変動させると、放電室における定在波の位相も時間的に変動される。その結果、リッジ電極の間の電界も時間平均的に均一化される。
【0022】
すなわち、リッジ電極では、リッジ電極に沿う方向(導波管に対し垂直断面方向)はリッジ導波管の基本特性から均一な電界強度分布になり、放電室が延びる方向(導波管の長さに対し平行断面方向)は、位相調整により時間平均的に均一化することができる。この結果リッジ電極全面において、均一なプラズマの生成が可能となる。
【0023】
上記発明においては、前記変換部は、前記放電室が延びる方向の一方の端部および他方の端部に設けられ、前記一方の端部に設けられた前記変換部には、一の電源および一の同軸線路が電気的に接続され、前記他方の端部に設けられた前記変換部には、他の電源および他の同軸線路が電気的に接続されていることが望ましい。
さらに、前記一の電源および前記他の電源の少なくとも一方は、供給する高周波電力の位相を調節可能であることが望ましい。
【0024】
本発明によれば、放電室におけるリッジ電極に対して、一の電源および他の電源から高周波電力が供給される。そのため、放電室には、一の電源に係る高周波電力と、他の電源に係る高周波電力と、により放電室が延びる方向(導波管の長さ方向)に定在波が発生する。
一の電源に係る高周波電力の位相、および、他の電源に係る高周波電力の位相の少なくとも一方を調節することにより、放電室における定在波の位相も調節される。例えば、一の電源に係る高周波電力の位相を時間的に変動させると、放電室における定在波の位相も時間的に変動される。その結果、リッジ電極の間の電界も時間平均的に均一化される。
【0025】
上記発明においては、前記放電室が延びる方向の一方の端部に設けられた前記変換部には、前記電源と電気的に接続された前記同軸線路が電気的に接続され、前記放電室が延びる方向の他方の端部には、前記放電室に向かって反射する反射電力の位相を調節する位相調整部が設けられていることが望ましい。
【0026】
本発明によれば、電源から供給された高周波電力は、同軸線路、一方の端部に接続された変換部、放電室の順に導かれてリッジ電極に伝送される。
その一方で、放電室に導かれた高周波電力の少なくとも一部は、他方の端部に接続された位相調節部にも導かれ、位相調節部から放電室に向って反射する。すると、放電室では、電源から供給された高周波電力と、反射した反射電力と、により放電室が延びる方向(導波管の長さ方向)に定在波が発生する。
【0027】
反射電力の位相を位相調整部により調節することにより、放電室における定在波の位相も調節される。例えば、反射電力の位相を時間的に変動させると、放電室における定在波の位相も時間的に変動される。その結果、リッジ電極の間の電界も時間平均的に均一化される。
【0028】
上記発明においては、前記同軸線路を介して前記電源と電気的に接続された前記変換部における少なくとも前記リッジ部の間には充填材が設けられ、該充填材が設けられていない領域と比較して、前記充填材は誘電率が高いことが望ましい。
【0029】
本発明によれば、リッジ部の間に充填材を設けることにより、充填材が設けられていない場合と比較して、リッジ部を小型化できる。例えば、放電室が延びる方向の寸法を短くすることができる。
【0030】
変換部はリッジ導波管であり、放電室のリッジ電極の間に均一な電界を形成するためには、リッジ部の寸法は供給される高周波電力の周波数に基づいて定まる。そのため、単純にリッジ部の寸法を変更することはできない。
そこで、上述のように、リッジ部の間の空間に誘電率が高い充填材を配置することにより、放電室のリッジ電極の間に均一な電界を形成するという目的を達成しつつ、リッジ部の小型化を図ることができる。
【0031】
上記発明においては、少なくとも、前記放電室は減圧容器の内部に配置されていることが望ましい。
【0032】
本発明によれば、間にプラズマを生成するリッジ電極を有する放電室は、内部が減圧された減圧容器の内部に配置されるため、放電室自体が放電室内部と外部との間の圧力差に耐える強度を備える必要がない。また、放電室自体により減圧状態となるような密閉構造にする必要もない。そのため、放電室自体が当該圧力差に耐える強度を備える場合と比較して、放電室の構成を簡素にすることができ、構成の自由度が高くなる。
【0033】
少なくとも、プラズマが生成される放電室が減圧室の内部に配置されていればよいため、例えば、放電室および変換部の全体が減圧容器の内部に配置されていてもよい。
【0034】
上記発明においては、一対の前記リッジ電極が対向して配置され、一対の前記リッジ電極の一方における内面に前記基板が配置されるとともに、前記リッジ電極の一方における外面には前記基板の温度を調節する温度調節部が設けられ、一対の前記リッジ電極の他方における外面には、前記リッジ電極の他方に沿って、前記リッジ電極の他方の少なくとも一部を通過して前記放電室内部の気体を排気する排気部、および、プラズマの生成に用いられるガスを供給する供給部が設けられていることが望ましい。
【0035】
本発明によれば、温度調節部や供給部や排気部などの設置位置と、同軸線路および変換部などの設置位置が異なるため、両者が干渉することがない。
【0036】
具体的には、温度調節部等は放電室におけるリッジ電極に隣接して配置される一方で、変換部は放電室が延びる方向に隣接して配置され、同軸線路は、変換部が延びる方向に交差する方向に延びて配置されている。そのため、配置位置に関して温度調節部等と、変換部等とが干渉することがない。
その結果、放電室等における設計の自由度が高くなる。
【0037】
上記発明においては、前記基板は、前記リッジ電極の間を、前記放電室が延びる方向に対して交差する方向に移動可能とされ、前記放電室における前記基板が移動する領域には、前記基板が前記放電室に出入りする一対の開口部が設けられていることが望ましい。
【0038】
本発明によれば、基板は一対の開口部の一方から放電室の内部に搬入され、リッジ電極の間に導かれる。リッジ電極の間では、基板に対してプラズマ処理、例えばプラズマCVDなどの処理が施される。プラズマ処理が施された基板は、一対の開口部の他方から放電室の外部に搬出される。
【0039】
さらに、基板の搬入、基板へのプラズマ処理、基板の搬出を連続して行うことができる。そのため、移動する基板に対して連続的に製膜することで、リッジ電極よりも大きな面積を有する基板に対して連続してプラズマ処理を施すことができ、生産性の向上を図ることができる。
【0040】
さらに、基板の移動方向に複数の放電室を並べ、一の基板が複数の放電室に連続して搬入されるように構成してもよい。この場合、各放電室において異なるプラズマ処理を施すことができる。
【0041】
上記発明においては、複数の前記放電室が設けられ、前記放電室に対して前記基板の搬入や搬出を行うとともに、一の放電室から他の放電室へ前記基板の搬送を行う搬送部が設けられていることが望ましい。
【0042】
本発明によれば、一の放電室においてプラズマ処理が施された基板は、搬送部により他の放電室に搬入され、他の放電室においてさらにプラズマ処理が施される。他の放電室において施されるプラズマ処理は、一の放電室におけるプラズマ処理と同一の処理であってもよいし、異なる処理であってもよい。
【発明の効果】
【0043】
本発明の真空処理装置によれば、内部導体および外部導体を有する同軸線路と、リッジ導波管からなる変換部を介して、同じく、リッジ導波管からなる放電室に高周波電力を伝送させることにより、プラズマ生成領域へのエネルギ伝送の効率化と、電界強度分布の均一化を図ることにより、大面積で高品質な膜を均一に製膜することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る製膜装置の概略構成を説明する模式図である。
【図2】図1のプロセス室の構成を説明するA−A断面視図である。
【図3】図2のプロセス室における寸法を説明する模式図である。
【図4】図1の変換器の構成を説明するB−B断面視図である。
【図5】図3のプロセス室における電界強度分布を説明するグラフである。
【図6】図3のプロセス室における電気力線の分布を説明する模式図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る製膜装置の概略構成を説明する模式図である。
【図8】本発明の第3の実施形態に係る製膜装置の概略構成を説明する模式図である。
【図9】図8の第1変換器および第2変換器の構成を説明する断面視図である。
【図10】本発明の第4の実施形態に係る製膜装置の概略構成を説明する模式図である。
【図11】図10の真空容器の他の実施例を説明する模式図である。
【図12】本発明の第5の実施形態に係る製膜装置の構成を説明する概略図である。
【図13】図12のプロセス室における構成を説明する断面視図である。
【図14】本発明の第6の実施形態に係る製膜装置の構成を説明する概略図である。
【図15】本発明の第7の実施形態に係る製膜装置の構成を説明する模式図である。
【図16】本発明の第8の実施形態に係る製膜装置の構成を説明する模式図である。
【図17】図16の終端板が移動する状態を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
〔第1の実施形態〕
以下、本発明の第1の実施形態に係る製膜装置ついて図1から図6を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る製膜装置の概略構成を説明する模式図である。図2は、図1のプロセス室の構成を説明するA−A断面視図である。図3は、図2のプロセス室における寸法を説明する模式図である。図4は、図1の変換器の構成を説明するB−B断面視図である。
【0046】
本実施形態においては、本発明を、一辺が1mを越える大面積な基板に対して、アモルファス太陽電池や微結晶太陽電池や液晶ディスプレイ用TFT(Thin Film Transistor)などに用いられる非晶質シリコン、微結晶シリコンなどの結晶質シリコン、窒化シリコン等からなる膜の製膜処理を行うことが可能な製膜装置(真空処理装置)1に適用して説明する。
【0047】
製膜装置1には、図1に示すように、プロセス室(放電室)2と、第1変換器(変換部)3Aと、第2変換器3Bと、第1同軸線(同軸線路)4Aと、電源5と、整合器6と、第2同軸線4Bと、位相調整器(位相調整部)7と、同軸短絡部8と、排気部9と、ガス供給部10と、が主に設けられている。
【0048】
プロセス室2は、図1から図3に示すように、内部に配置された基板Sに対してプラズマ処理を施す部分である。
プロセス室2は、アルミニウムやアルミニウム合金材料などの導電性を有し非磁性または弱磁性を有する材料から形成された部品であって、いわゆるダブルリッジ導波管状に形成されたものである。その一方で、プロセス室2の内部は、排気部9により0.1kPaから10kPa程度の真空状態とされるため、プロセス室2はプロセス室2内部と外部との間の圧力差に耐えうる構造とされている。
【0049】
プロセス室2には、図2および図3に示すように、一対のリッジ電極21,21が設けられている。
リッジ電極21は、ダブルリッジ導波管であるプロセス室2におけるリッジ部を構成するものであって、互いに対向して配置された平板状の部分である。
【0050】
ここで、プロセス室2が延びる方向をL方向(図1における左右方向)、一対のリッジ電極21,21に直交する方向であって、磁力線が延びる方向をE方向(図1における上下方向)、一対のリッジ電極21,21に沿う方向であって、E方向と直交する方向をH方向(図1における紙面に対して直交する方向)とする。
さらに、一方のリッジ電極21から他方のリッジ電極21までの距離であって、E方向に沿う距離をa(mm)とし、リッジ電極21におけるH方向の寸法をb(mm)とする。
【0051】
すると、一対のリッジ電極21,21に係るサイズ(a,b)は、基板Sに対して適正な膜が製膜されるように定められている。具体的には、パッシェンの法則や、適正な製膜を行うための条件などに基づいて定められている。
【0052】
例えば、一対のリッジ電極21,21の間隔aは、基板Sが配置された際に、基板Sの表面からリッジ電極21までの隙間を1mmから25mm程度に設定するために、5mmから30mm程度に設定される例を挙げることができる。
【0053】
その一方で、リッジ電極21におけるH方向の寸法bは、基板Sを移動させつつ製膜する方法を採用した場合には、寸法bの影響を受けることなく、均一な膜を製膜できるため、特に規定されない。
【0054】
図5は、図3のプロセス室における電界強度分布を説明するグラフである。図6は、図3のプロセス室における電気力線の分布を説明する模式図である。
プロセス室2における磁界強度分布は、図5に示すように、一対のリッジ電極21,21の間で磁界強度が強くなるとともに、磁界強度がほぼ一定となる。
さらに、プロセス室2における電気力線の分布は、図6に示すように、一対のリッジ電極21,21の間に集中するとともに、一対のリッジ電極21,21の間では、電気力線がほぼ平行に並ぶ。これらは、ダブルリッジ導波管を含むリッジ導波管の特性によって、もたらされるものである。
【0055】
基板Sとしては透光性ガラス基板を例示することができ、例えば、縦横の大きさが1.4m×1.1mであり、厚さが3.0mmから4.5mmのものを挙げることができる。
【0056】
第1変換器3Aは、図1および図4に示すように、電源5から供給された高周波電力が導入される部分であって、供給された高周波電力をプロセス室2に伝送するものである。
第1変換器3Aは、プロセス室2におけるプロセス室2が延びる方向(L方向)の端部に電気的に接続されたアルミニウム材料などの導電性を有し非磁性または弱磁性を有する材料から形成された部品であって、いわゆるダブルリッジ導波管状に形成されたものである。さらに第1変換器3Aは、リッジ導波管の特性を利用して、高周波電力の伝送モードを平行平板モードに変換するものである。
【0057】
その一方で、第1変換器3Aの内部は、プロセス室2と同様に、排気部9により0.1kPaから10kPa程度の真空状態とされる。そのため、第1変換器3Aは第1変換器3Aの内部と外部との間の圧力差に耐えうる構造とされている。
【0058】
第1変換器3Aには、図1および図4に示すように、一対のリッジ部31,31が設けられている。
リッジ部31は、ダブルリッジ導波管である第1変換器3Aにおけるリッジ部を構成するものであって、互いに対向して配置された平板状の部分である。
【0059】
一対のリッジ部31,31の一方、例えば図4における下側のリッジ部31には、第1同軸線4Aにおける内部導体41が電気的に接続されている。一対のリッジ部31,31の他方、例えば図4における上側のリッジ部31には、第1同軸線4Aにおける外部導体42が電気的に接続されている。
【0060】
第2変換器3Bは、図1に示すように、第2同軸線4B、位相調整器7および同軸短絡部8とともに反射電力の位相調節に係るものである。
第2変換器3Bは、プロセス室2におけるプロセス室2が延びる方向(L方向)の端部に電気的に接続されたアルミニウム材料などの導電性を有する材料から形成された部品であって、いわゆるダブルリッジ導波管状に形成されたものである。
【0061】
その一方で、第2変換器3Bの内部は、プロセス室2と同様に、排気部9により0.1kPaから10kPa程度の真空状態とされる。そのため、第2変換器3Bは第2変換器3Bの内部と外部との間の圧力差に耐えうる構造とされている。
【0062】
第2変換器3Bには、図1および図4に示すように一対のリッジ部31,31が設けられている。
リッジ部31は、ダブルリッジ導波管である第2変換器3Bにおけるリッジ部を構成するものであって、互いに対向して配置された平板状の部分である。
【0063】
一対のリッジ部31,31の一方、例えば図4における下側のリッジ部31には、第2同軸線4Bにおける内部導体41が電気的に接続されている。一対のリッジ部31,31の他方、例えば図4における上側のリッジ部31には、第2同軸線4Bにおける外部導体42が電気的に接続されている。
【0064】
なお、プロセス室2、第1変換器3Aおよび第2変換器3Bを構成するダブルリッジ導波管は、公知のものを用いることができ、特に限定するものではない。
さらに、プロセス室2、第1変換器3Aおよび第2変換器3Bは、図1から図3に示すようにダブルリッジ導波管により構成されていてもよいし、シングルリッジ導波管により構成されていてもよく、特に限定するものではない。
【0065】
第1同軸線4Aは、図1に示すように、電源5から供給された高周波電力を第1変換器3Aに導くものである。第1同軸線4Aには、電源5および整合器6が電気的に接続して設けられている。
第1同軸線4Aには、図4に示すように、内部導体41と、外部導体42とが設けられている。内部導体41は、棒状または線状に延びる金属などの導電体から形成されたものである。外部導体42は、内部に内部導体41が配置された円筒状に形成された金属などの導電体から形成されたものである。内部導体41と外部導体42との間には、誘導体(図示せず)が配置されている。さらに、図4における下側のリッジ部31には、第1同軸線4Aにおける内部導体41が電気的に接続され、上側のリッジ部31には、第1同軸線4Aにおける外部導体42が電気的に接続されている。
なお、第1同軸線4Aの構成としては、公知の構成を用いることができ、特に限定するものではない。
【0066】
電源5は、図1に示すように、プロセス室2に高周波電力を供給するものである。例えば、周波数が13.56MHz以上、好ましくは30MHzから400MHz(VHF帯からUHF帯)の高周波電力を供給するものである。
従来の同軸線を用いた給電方法と比較して、13.56MHzではダブルリッジ導波管のサイズが大きくなるため、本発明の特徴をより活用するには30MHz以上が好ましい。一方、更に高い周波数になるに従い、プロセス室2が延びる方向に生じる定在波の影響が顕著になるため、400MHz以下が好ましい。
【0067】
電源5は、第1同軸線4Aと電気的に接続され、整合器6と第1同軸線4Aを介して第1変換器3Aに高周波電力を供給するものである。第1変換器3Aに供給された高周波電力は、伝送モードが平行平板モードに変換された後にプロセス室2に伝送される。
なお、電源5としては、公知の高周波電源を用いることができ、特に限定するものではない。
【0068】
第2同軸線4Bは、図1に示すように、第2変換器3B、位相調整器7および同軸短絡部8とともに反射電力の位相調節に係るものである。
第2同軸線4Bには、図4に示すように、内部導体41と、外部導体42とが設けられている。内部導体41は、棒状または線状に延びる金属などの導電体から形成されたものである。外部導体42は、内部に内部導体41が配置された円筒状に形成された金属などの導電体から形成されたものである。内部導体41と外部導体42との間には、誘導体(図示せず)が配置されている。さらに、図4における下側のリッジ部31には、第1同軸線4Bにおける内部導体41が電気的に接続され、上側のリッジ部31には、第1同軸線4Bにおける外部導体42が電気的に接続されている。
なお、第2同軸線4Bの構成としては、公知の構成を用いることができ、特に限定するものではない。
【0069】
位相調整器7は、図1に示すように、第2変換器3B、第2同軸線4Bおよび同軸短絡部8とともに、第2変換器3Bからプロセス室2に向かう反射電力の位相調整を行うものである。
位相調整器7は第2同軸線4Bと電気的に接続されるとともに、第2変換器3Bと伝送の終端となる同軸短絡部8との間に配置されている。位相調整器7としては、位相調整周期をプラズマ処理内容により数Hzから数10kHzで位相調整できるものが好ましい。
なお、位相調整器7としては、公知のものを用いることができ、特に限定するものではない。
【0070】
同軸短絡部8は、図1に示すように、第2同軸線4Bにおける内部導体41と、外部導体42とを電気的に接続して短絡させるものである。
同軸短絡部8は、第2同軸線4Bにおける端部に配置されている。同軸短絡部8としては、終端として全反射するものが好ましい。
なお、同軸短絡部8としては、公知のものを用いることができ、特に限定するものではない。
【0071】
排気部9は、図1に示すように、プロセス室2、第1変換器3Aおよび第2変換器3Bの内部から気体(流体)を排気することにより、真空状態にまで減圧するものである。
なお、排気部9としては、公知の真空ポンプなどを用いることができ、特に限定するものではない。
【0072】
ガス供給部10は、図1に示すように、プラズマの生成に用いられる基板S表面に製膜する原料ガスを含む母ガス(例えば、SiHガスなど)を、一対のリッジ電極21,21の間に供給するものである。
【0073】
次に、上記の構成からなる製膜装置1における基板Sに対するプラズマ処理である製膜処理について説明する。
基板Sは、図2に示すように、プロセス室2におけるリッジ電極21の上に配置される。その後、図1に示すように、排気部9によりプロセス室2、第1変換器3Aおよび第2変換器3Bの内部から、空気などの気体が排気される。
【0074】
さらに、電源5から周波数が13.56MHz以上、好ましくは30MHzから400MHzの高周波電力がプロセス室2のリッジ電極21に供給されるとともに、ガス供給部10から一対のリッジ電極21,21の間に、例えばSiHガスなどの母ガスが供給される。
このとき、排気部9の排気量を制御して、プロセス室2等の内部、言い換えると、一対のリッジ電極21,21の間は、0.1kPaから10kPa程度の真空状態に保たれている。
【0075】
なお、ガス供給部10と排気部9とプロセス室2の位置関係は、図1の矢印に示したような位置に特定するものではない。例えば排気部9とプロセス室2のリッジ電極21の少なくとも一部から排気して、プロセス室2の下部方向から排気するようにしても良い。
【0076】
電源5から供給された高周波電力は、第1同軸線4Aによって整合器6を介して第1変換器3Aに伝送される。整合器6では高周波電力を伝送する系統におけるインピーダンスなどの値が調節される。第1変換器3Aでは、高周波電力の伝送モードが平行平板モードに変換される。
【0077】
第1変換器3Aに供給された高周波電力はプロセス室2に伝送され、一対のリッジ電極21,21の間に、リッジ電極に沿う方向であるH方向に関して、ほぼ均一な強度分布の電界が形成される(図5および図6参照。)。
【0078】
その一方で、プロセス室2に伝送された高周波電力の一部は、第2変換器3B、第2同軸線4B、位相調整器7、および、同軸短絡部8に伝送され同軸短絡部8において反射される。プロセス室2には、電源5から供給された入力電力と、反射された反射電力とにより定在波が形成される。定在波の位置(位相)が固定されると、一対のリッジ電極21,21におけるL方向の電界強度の分布に偏りが生じる。
【0079】
そこで、位相調整器7によって反射電力の位相を調節することにより、プロセス室2に形成される定在波の位置の調節が行われる。これにより、一対のリッジ電極21,21におけるプロセス室2が延びる方向であるL方向の電界強度の分布が時間平均的に均一化される。
【0080】
具体的には、定在波の位置が、時間の経過に伴いL方向に、Sin波状や、三角波状や、階段(ステップ)状に移動するように反射電力の位相が調節される。
定在波が移動する範囲や、定在波を移動させる方式(Sin波状、三角波状、階段状等)や位相調整の周期の適正化は、電力の分布や、プラズマからの発光の分布や、プラズマ密度の分布や、製膜された膜に係る特性の分布等に基づいて行われる。膜に係る特性としては、膜厚や、膜質や、太陽電池等の半導体としての特性などを挙げることができる。
【0081】
このような状態において一対のリッジ電極21,21の間で母ガスが電離され、プラズマが形成される。形成されたプラズマにより基板Sの上に均一な膜、例えばアモルファスシリコン膜や結晶質シリコン膜が形成される。
【0082】
上記の構成によれば、電源5から供給された高周波電力は、第1同軸線4Aおよび第1変換器3Aを介してプロセス室2の一対のリッジ電極21,21に伝送され、一対のリッジ電極21,21の間におけるプラズマ生成に用いられる。
このように、高周波電力は内部導体41および外部導体42を有する第1同軸線4Aと、リッジ導波管からなる第1変換器3Aを介して、同じく、リッジ導波管からなるプロセス室2に伝送されるため、エネルギ伝送の効率化を図ることができる。
【0083】
その一方で、リッジ部を形成したリッジ導波管の特性により、この一対のリッジ電極21,21の間ではリッジ電極に沿う方向(H方向)の電界強度分布がほぼ均一になる。さらに、リッジ導波管を用いることにより、伝送損出が小さいために電界強度分布がほぼ均一化された領域を容易に大面積化できる。
【0084】
反射電力の位相を位相調整器7により調節することにより、プロセス室2における定在波の位相も調節される。例えば、反射電力の位相を時間的に変動させると、プロセス室2におけるプロセス室2が延びる方向(L方向)の定在波の位相も時間的に変動される。その結果、一対のリッジ電極21,21の間のプロセス室2が延びる方向(L方向)の電界も時間平均的に均一化することができる。
そのため、基板Sに対して均一なプラズマを広い範囲に生成することができ、大面積基板へ製膜するにあたり、高品質な膜を均一に製膜することができる。
【0085】
〔第2の実施形態〕
次に、本発明の第2の実施形態について図7を参照して説明する。
本実施形態の製膜装置の基本構成は、第1の実施形態と同様であるが、第1の実施形態とは、高周波電力の供給に関する構成が異なっている。よって、本実施形態においては、図7を用いて高周波電力の供給に関する構成のみを説明し、その他の構成要素等の説明を省略する。
図7は、本実施形態に係る製膜装置の概略構成を説明する模式図である。
なお、第1の実施形態と同一の構成については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0086】
製膜装置101には、図7に示すように、プロセス室2と、第1変換器3Aと、第2変換器(変換部)3Bと、第1同軸線(一の同軸線路)104Aと、第1電源(一の電源)105Aと、第1サーキュレータ107Aと、第1整合器106Aと、第2同軸線(他の同軸線路)104Bと、第2電源(他の電源)105Bと、第2サーキュレータ107Bと、第2整合器106Bと、排気部9と、ガス供給部10と、が主に設けられている。
【0087】
第1変換器3Aおよび第2変換器3Bは、図7に示すように、それぞれ、第1電源105Aおよび第2電源105Bから供給された高周波電力が導入される部分であって、供給された高周波電力をプロセス室2に伝送するものである。
さらに、第1変換器3Aおよび第2変換器3Bは、リッジ導波管の特性を利用して、高周波電力の伝送モードを平行平板モードに変換するものである。
【0088】
第1同軸線104Aおよび第2同軸線104Bは、図7に示すように、それぞれ、第1電源105Aおよび第2電源105Bから供給された高周波電力を、第1変換器3Aおよび第2変換器3Bに導くものである。
第1同軸線104Aには、第1電源105Aおよび第1整合器106Aが電気的に接続して設けられている。その一方で、第2同軸線104Bには、第2電源105Bおよび第2整合器106Bが電気的に接続して設けられている。
【0089】
第1電源105Aおよび第2電源105Bは、図7に示すように、プロセス室2に高周波電力を伝送するものである。例えば、周波数が13.56MHz以上、好ましくは30MHzから400MHzの高周波電力を供給するものであり、それぞれ、供給する高周波電力の位相を調節できるものである。
【0090】
第1電源105Aは、第1同軸線104Aと電気的に接続され、第1同軸線104Aを介して第1変換器3Aに高周波電力を供給するものである。その一方で、第2電源105Bは、第2同軸線104Bと電気的に接続され、第2同軸線104Bを介して第2変換器3Bに高周波電力を供給するものである。
第1変換器3Aおよび第2変換器3Bに供給された高周波電力は、伝送モードが平行平板モードに変換された後にプロセス室2に伝送される。
【0091】
第1サーキュレータ107Aおよび第2サーキュレータ107Bは、それぞれ、第1電源105Aおよび第2電源105Bから供給された高周波電力をプロセス室2に導くとともに、第1電源105Aおよび第2電源105Bに対して進行方向が違う高周波電力が入力されることを防止するものである。
【0092】
第1サーキュレータ107Aは、図7に示すように、第1同軸線104Aと電気的に接続され、かつ、第1電源105Aおよび第1整合器106Aの間に配置されている。その一方で、第2サーキュレータ107Bは、第2同軸線104Bと電気的に接続され、かつ、第2電源105Bおよび第2整合器106Bの間に配置されている。
【0093】
第1サーキュレータ107Aは、第1変換器3Aから第1電源105Aに向って進行する高周波電力を、当該電力を吸収する吸収部(図示せず)に導くことにより、第1電源105Aに高周波電力が入力されることを防止する。第2サーキュレータ107Bについても同様に、第2電源105Bに向って進行する高周波電力を吸収部(図示せず)に導くことにより、第2電源105Bに高周波電力が入力されることを防止する。
【0094】
なお、第1サーキュレータ107Aおよび第2サーキュレータ107Bとしては、公知のサーキュレータを用いることができ、特に限定するものではない。
【0095】
次に、上記の構成からなる製膜装置101における基板Sに対するプラズマ処理である製膜処理について説明する。
プロセス室2に基板Sが配置され、プロセス室2の内部から空気などの気体が排気されると、図7に示すように、第1電源105Aおよび第2電源105Bから高周波電力がプロセス室2に供給されるとともに、ガス供給部10から例えばSiHガスなどの基板S表面に製膜する原料ガスを含む母ガスが供給される。
【0096】
第1電源105Aから供給された高周波電力は、第1同軸線104Aによって第1サーキュレータ107Aおよび第1整合器106Aを介して第1変換器3Aに伝送される。第1整合器106Aでは高周波電力を伝送する系統におけるインピーダンスなどの値が調節される。第1変換器3Aでは、高周波電力の伝送モードが平行平板モードに変換される。
第1変換器3Aに供給された高周波電力はプロセス室2に伝送され、一対のリッジ電極21,21の間に、リッジ電極に沿う方向であるH方向に関して、ほぼ均一な強度分布の電界が形成される。
【0097】
その後、第1電源105Aから供給された高周波電力は、第2変換器3Bから第2同軸線104Bに進行し、第2整合器106Bを介して第2サーキュレータ107Bに入力される。当該高周波電力は、第2サーキュレータ107Bによって吸収部に導かれ、吸収部に吸収され熱などに変換される。
【0098】
第2電源105Bから供給された高周波電力は、第1電源105Aから供給された高周波電力と同様に、第2変換器3Bに伝送されて、伝送モードが平行平板モードに変換される。第2変換器3Bに供給された高周波電力はプロセス室2に伝送されて、一対のリッジ電極21,21の間に電界を形成する。
【0099】
その後、第2電源105Bから供給された高周波電力は、第1変換器3Aから第1同軸線104Aに進行し、第1整合器106Aを介して第1サーキュレータ107Aに入力される。当該高周波電力は、第1サーキュレータ107Aによって吸収部に導かれ、吸収部に吸収され熱などに変換される。
【0100】
その一方で、プロセス室2には、第1電源105Aから供給された高周波電力と、第2電源105Bから供給された高周波電力により、定在波が形成される。このとき、第1電源105Aおよび第2電源105Bから供給される高周波電力の位相が固定されていると、定在波の位置(位相)が固定され、一対のリッジ電極21,21におけるプロセス室2が延びる方向であるL方向の電界強度の分布に偏りが生じる。
【0101】
そこで、第1電源105Aおよび第2電源105Bの少なくとも一方から供給される高周波電力の位相を調節することにより、プロセス室2に形成される定在波の位置の調節が行われる。これにより、一対のリッジ電極21,21におけるL方向の電界強度の分布が時間平均的に均一化される。
定在波の位置の調節は、第1の実施形態と同一の方法により行われる。
【0102】
このような状態において一対のリッジ電極21,21の間で母ガスが電離され、プラズマが形成される。形成されたプラズマにより基板Sの上に均一な膜、例えばアモルファスシリコン膜や結晶質シリコン膜が形成される。
【0103】
上記の構成によれば、プロセス室2における一対のリッジ電極21,21に対して、第1電源105Aおよび第2電源105Bから高周波電力が供給される。そのため、プロセス室2には、第1電源105Aに係る高周波電力と、第2電源105Bに係る高周波電力と、により定在波が発生する。
第1電源105Aに係る高周波電力の位相、および、第2電源105Bに係る高周波電力の位相の少なくとも一方を調節することにより、プロセス室2における定在波の位相も調節される。例えば、第1電源105Aに係る高周波電力の位相を時間的に変動させると、プロセス室2における定在波の位相も時間的に変動される。その結果、一対のリッジ電極21,21の間の電界も時間平均的に均一化される。
【0104】
〔第3の実施形態〕
次に、本発明の第3の実施形態について図8および図9を参照して説明する。
本実施形態の製膜装置の基本構成は、第2の実施形態と同様であるが、第2の実施形態とは、第1変換器および第2変換器の構成が異なっている。よって、本実施形態においては、図8および図9を用いて第1変換器および第2変換器の構成のみを説明し、その他の構成要素等の説明を省略する。
図8は、本実施形態に係る製膜装置の概略構成を説明する模式図である。
なお、第2の実施形態と同一の構成については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0105】
製膜装置201には、図8に示すように、プロセス室2と、第1変換器(変換部)203Aと、第2変換器(変換部)203Bと、第1同軸線104Aと、第1電源105Aと、第1サーキュレータ107Aと、第1整合器106Aと、第2同軸線104Bと、第2電源105Bと、第2サーキュレータ107Bと、第2整合器106Bと、排気部9と、ガス供給部10と、が主に設けられている。
【0106】
第1変換器203Aおよび第2変換器203Bは、図8に示すように、それぞれ、第1電源105Aおよび第2電源105Bから供給された高周波電力が導入される部分であって、供給された高周波電力をプロセス室2に伝送するものである。
さらに、第1変換器203Aおよび第2変換器203Bは、リッジ導波管の特性を利用して、高周波電力の伝送モードを平行平板モードに変換するものである。
【0107】
図9は、図8の第1変換器および第2変換器の構成を説明する断面視図である。
第1変換器203Aおよび第2変換器203Bには、図9に示すように、一対のリッジ部31,31と、充填材204と、が設けられている。充填材204は、少なくとも一対のリッジ部31,31の間に配置されるものであって、充填材204が設けられていない領域と比較して誘電率が高いものである。
【0108】
本実施形態では、誘電率εが9.4のアルミナ(酸化アルミニウム)を充填材204として用いる例に適用して説明する。さらに、一対のリッジ部31,31における、第1同軸線104Aや、第2同軸線104Bが接続された領域の近傍に、充填材204が配置されている例に適用して説明する。
【0109】
上記の構成からなる製膜装置201における基板Sに対するプラズマ処理である製膜処理は、第2の実施形態における製膜処理と同様であるため、その説明を省略する。
【0110】
上記の構成によれば、一対のリッジ部31,31の間に充填材204を設けることにより、充填材204が設けられていない場合と比較して、一対のリッジ部31,31を小型化できる。本実施例の場合では、L方向の寸法を半分程度に短くすることができる。
【0111】
第1変換器203Aおよび第2変換器203Bはリッジ導波管であり、プロセス室2の一対のリッジ電極21,21の間に均一な電界を形成するためには、リッジ部31の寸法は供給される高周波電力の周波数に基づいて定まる。そのため、単純にリッジ部31の寸法を変更することはできない。
そこで、上述のように、一対のリッジ電極21,21の間に誘電率が高い充填材204を配置することにより、プロセス室2の一対のリッジ電極21,21の間に均一な電界を形成するという目的を達成しつつ、リッジ部31の小型化を図ることができる。
【0112】
例えば、本実施形態のように、高周波電力の周波数が60MHz程度であって、誘電率εが9.4の充填材204を用いた場合には、リッジ部31におけるL方向の寸法を半分程度(約2500mmから約1100mm)に短縮することができる。これにより、製膜装置201のコンパクト化を図ることができる。
【0113】
〔第4の実施形態〕
次に、本発明の第4の実施形態について図10および図11を参照して説明する。
本実施形態の製膜装置の基本構成は、第3の実施形態と同様であるが、第3の実施形態とは、プロセス室、第1変換器および第2変換器の内部における真空状態を保つ構成が異なっている。よって、本実施形態においては、図10および図11を用いて真空状態を保つ構成のみを説明し、その他の構成要素等の説明を省略する。
図10は、本実施形態に係る製膜装置の概略構成を説明する模式図である。
なお、第3の実施形態と同一の構成については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0114】
製膜装置301には、図10に示すように、プロセス室(放電室)302と、第1変換器(変換部)303Aと、第2変換器(変換部)303Bと、真空容器(減圧容器)304と、第1同軸線104Aと、第1電源105Aと、第1サーキュレータ107Aと、第1整合器106Aと、第2同軸線104Bと、第2電源105Bと、第2サーキュレータ107Bと、第2整合器106Bと、排気部9と、ガス供給部10と、が主に設けられている。
【0115】
プロセス室302は、図10に示すように、内部に配置された基板Sに対してプラズマ処理を施す部分である。
プロセス室302は、アルミニウム材料などの導電性を有し非磁性または弱磁性を有する材料から形成された部品であって、いわゆるダブルリッジ導波管状に形成されたものである。プロセス室302には、図10に示すように、一対のリッジ電極21,21が設けられている。
【0116】
第1変換器303Aおよび第2変換器303Bは、図10に示すように、それぞれ、第1電源105Aおよび第2電源105Bから供給された高周波電力が導入される部分であって、供給された高周波電力をプロセス室302に伝送するものである。
【0117】
第1変換器303Aおよび第2変換器303Bは、プロセス室2におけるプロセス室2が延びる方向(L方向)の端部に電気的に接続されたアルミニウム材料などの導電性を有する材料から形成された部品であって、いわゆるダブルリッジ導波管状に形成されたものである。さらに第1変換器303Aおよび第2変換器303Bは、リッジ導波管の特性を利用して、高周波電力の伝送モードを平行平板モードに変換するものである。
【0118】
真空容器304の内部に配置されるプロセス室302、第1変換器303Aおよび第2変換器303Bは、第1の実施形態のプロセス室2、第1変換器3Aおよび第2変換器3Bと比較して、プロセス室302の内部と外部との間の圧力差に耐える構成を必要としない。例えば、プロセス室2等の壁面厚さに関して、第1の実施形態では200mm以上の壁面厚さが必要、リブ材で補強する工夫をした構造としても略50mm以上の壁面厚さが必要なのに対して、本実施形態におけるプロセス室302等の壁面厚さは、自重による変形に耐えうる程度に薄くなっている。
【0119】
真空容器304は、図10に示すように、内部にプロセス室302、第1変換器303Aおよび第2変換器303Bが収納されるものである。
そのため、真空容器304は圧力差に耐えうる構造とされている。例えば、ステンレス鋼(JIS規格におけるSUS304材)や、一般構造用圧延材(JIS規格におけるSS材)などから形成されたものや、リブ材などで補強された構成を用いることができる。
【0120】
真空容器304には排気部9が接続されている。そのため、真空容器304の内部や、プロセス室302、第1変換器303Aおよび第2変換器303Bの内部は、排気部9の排気量を制御することにより0.1kPaから10kPa程度の真空状態とされる。
【0121】
なお、ガス供給部10と排気部9とプロセス室302の位置関係は、図10の矢印に示したような位置に特定するものではない。例えば排気部9とプロセス室2のリッジ電極21の少なくとも一部から排気して、真空容器304の上部方向から排気するようにしても良い。
【0122】
上記の構成からなる製膜装置201における基板Sに対するプラズマ処理である製膜処理は、第2の実施形態における製膜処理と同様であるため、その説明を省略する。
【0123】
上記の構成によれば、プロセス室302、第1変換器303Aおよび第2変換器303Bは、内部が真空状態にされた真空容器304の内部に配置されるため、プロセス室302、第1変換器303Aおよび第2変換器303B自体が自重による変形に耐える強度を保持し、内部と外部との間の圧力差に耐える強度を備える必要がない。そのため、プロセス室302自体が当該圧力差に耐える強度を備える場合と比較して、プロセス室302、第1変換器303Aおよび第2変換器303Bの構成を簡素にすることができ、これらの構成の自由度を高くできる。
【0124】
図11は、図10の真空容器の他の実施例を説明する模式図である。
なお、真空容器304は、図10に示すように、プロセス室302、第1変換器303Aおよび第2変換器303Bを内部に収納するものであってもよいし、図11に示すように、プロセス室302のみを内部に収納するものであってもよく、特に限定するものではない。
【0125】
この場合、プロセス室302と第1変換器303Aとの間、プロセス室302と第2変換器303Bとの間には、プロセス室302の内部における真空状態を保つ真空窓(窓部)305が設けられている。
【0126】
真空窓305は、真空容器304の真空状態を維持しながら、第1変換器303Aおよび第2変換器303Bからの高周波電力の伝送を可能とするものである。
真空窓305を形成する材料としては石英ガラスなど、真空窓として一般的に用いられる材料から形成されたものを用いることができ、特に限定するものではない。
【0127】
〔第5の実施形態〕
次に、本発明の第5の実施形態について図12および図13を参照して説明する。
本実施形態の製膜装置の基本構成は、第1の実施形態と同様であるが、第1の実施形態とは、排気部およびガス供給部に関する構成が異なっている。よって、本実施形態においては、図12および図13を用いて排気部およびガス供給部に関する構成のみを説明し、その他の構成要素等の説明を省略する。
図12は、本実施形態に係る製膜装置の構成を説明する概略図である。図13は、図12のプロセス室における構成を説明する断面視図である。
なお、第1の実施形態と同一の構成要素には、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0128】
製膜装置401には、図12に示すように、プロセス室(放電室)402と、第1変換器3Aと、第2変換器3Bと、第1同軸線4Aと、電源5と、整合器6と、第2同軸線4Bと、位相調整器7と、同軸短絡部8と、排気部409と、ガス供給部410と、が主に設けられている。
【0129】
プロセス室402は、図12および図13に示すように、内部に配置された基板Sに対してプラズマPによる処理を施す部分である。
プロセス室402は、アルミニウム材料などの導電性を有し非磁性または弱磁性を有する材料から形成された部品であって、いわゆるダブルリッジ導波管状に形成されたものである。その一方で、プロセス室402の内部は、排気部9により排気量を制御して0.1kPaから10kPa程度の真空状態とされるため、プロセス室402はプロセス室402の内部と外部との間の圧力差に耐えうる構造とされている。
【0130】
プロセス室402には、図13に示すように、一対のリッジ電極21,421と、真空容器壁402Aとが設けられている。
【0131】
リッジ電極421は、ダブルリッジ導波管であるプロセス室402におけるリッジ部を構成するものであって、リッジ電極21と対向して配置されたものである。さらに、リッジ電極421には、メッシュやパンチングメタルのように複数の貫通孔が形成されている。貫通孔は、リッジ電極421の全面に設けられていてもよいし、少なくとも後述する真空排気管409Bおよびガス供給管410Bが配置されている領域の近傍に形成されていればよく、特に限定するものではない。
【0132】
なお、貫通孔の開口面積は、供給される高周波電力の波長に対して十分に小さいことが望ましい。このようにすることで、プロセス室402の内部の電界に影響を与えることがない。
【0133】
その一方で、平板状に形成されたリッジ電極21には、リッジ電極421と対向する面に基板Sが配置される。さらに、リッジ電極21の外面には、基板Sの温度および温度分布を調節する温度調節部411が設けられている。
【0134】
温度調節部411は、内部に温度制御された熱媒体を循環したり、または温度制御されたヒータを組み込んだりすることで、自身の温度を制御して、全体が概ね均一な温度を有し、接触しているリッジ電極21を経由して基板Sの温度を所定の温度に均一化する機能を有する。
上述の熱媒体は非導電性媒体であり、水素やヘリウムなどの高熱伝導性ガス、フッ素系不活性液体、不活性オイル、及び純水等が熱媒体として使用できる。中でも150℃から250℃の範囲でも圧力が上がらずに制御が容易であることから、フッ素系不活性液体(例えば商品名:ガルデン、F05など)の使用が好適である。
【0135】
なお、温度調節部411は、リッジ電極21の外面のみに設けられていてもよいし、リッジ電極21およびリッジ電極421の外面に設けられていてもよく、特に限定するものではない。
【0136】
真空容器壁402Aは、リッジ電極421との間にプロセス室402と連通する空間を形成する壁面であって、プロセス室402と同様に内部と外部との間の圧力差に耐えうる構造を有するものである。
リッジ電極421と真空容器壁402Aとの間には、図13に示すように、排気部409の真空排気管409Bと、ガス供給部410のガス供給管410Bと、が設けられている。
【0137】
真空排気管409Bの吸引孔とガス供給管410Bの噴出し孔は、リッジ電極21に沿う方向(H方向)、ならびにプロセス室402に延びる方向(L方向)に各々が略均一な間隔で設けられていると、基板Sへの製膜の膜質分布を確保するために好ましい。
【0138】
排気部409は、図12および図13に示すように、プロセス室402、第1変換器3Aおよび第2変換器3Bの内部から気体を排気することにより、真空状態にまで減圧するものである。
排気部409には、真空ポンプ部409Aと、真空排気管(排気部)409Bと、が主に設けられている。
【0139】
真空ポンプ部409Aはプロセス室402等から離れた位置に配置され、真空排気管409Bを介してプロセス室402、第1変換器3Aおよび第2変換器3Bの内部を真空状態にまで減圧するものである。
真空排気管409Bは、真空ポンプ部409Aと接続されているとともに、真空容器壁402Aとリッジ電極421との間の空間に配置されたものである。さらに、真空排気管409Bは、リッジ電極421の貫通孔を介して、プロセス室402、第1変換器3Aおよび第2変換器3Bの内部から気体を排気するものである。
【0140】
ガス供給部410は、図12および図13に示すように、プラズマの生成に用いられる母ガス(例えば、SiHガスなど)を、一対のリッジ電極21,421の間に供給するものである。
ガス供給部410には、ガス供給源410Aと、ガス供給管(供給部)410Bと、が主に設けられている。
【0141】
ガス供給源410Aはプロセス室402等から離れた位置に配置され、ガス供給管410Bを介して一対のリッジ電極21,421の間に母ガスを供給するものである。
ガス供給管410Bは、ガス供給源410Aと接続されているとともに、真空容器壁402Aとリッジ電極421との間の空間に配置されたものである。さらに、ガス供給管410Bは、リッジ電極421の貫通孔を介して、一対のリッジ電極21,421の間に母ガスを供給するものである。
【0142】
次に、上記の構成からなる製膜装置401における基板Sに対するプラズマ処理である製膜処理について説明する。
プロセス室402に基板Sが配置され、プロセス室402の内部から空気などの気体が排気されると、図12に示すように、電源5から高周波電力がプロセス室402に供給されるとともに、ガス供給部410から例えばSiHガスなどの基板S表面に製膜する原料ガスを含む母ガスが供給される。
さらに、温度調節部411により基板Sの温度および温度分布が調節される。
【0143】
具体的には、排気部409の真空ポンプ部409Aが駆動されると、真空排気管409Bを介して真空容器壁402Aとリッジ電極421との間の空間から気体が排気される。これと同時に、リッジ電極421に形成された貫通孔を介して、プロセス室402、第1変換器3Aおよび第2変換器3Bの内部から気体が排気される。
【0144】
その一方で、ガス供給源410Aから供給された母ガスは、ガス供給管410Bを介して真空容器壁402Aとリッジ電極421との間の空間に供給される。これと同時に、リッジ電極421に形成された貫通孔を介して、一対のリッジ電極21,421の間に母ガスが供給される。
【0145】
電源5から第1変換器3Aを介してプロセス室402高周波電力が供給されると、リッジ電極421の貫通孔は高周波電力の波長に対して十分に小さいため、一対のリッジ電極21,421の間にリッジ電極に沿う方向(H方向)にほぼ均一な強度分布の電界が形成される。
以後の製膜処理については、第1の実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
【0146】
上記の構成によれば、温度調節部411やガス供給管410Bや真空排気管409Bなどの設置位置と、第1同軸線4Aおよび第1変換器3Aなどの設置位置が異なるため、両者が干渉することがない。言い換えると、温度調節部411やガス供給管410Bや真空排気管409Bなどの設置に対して、第1同軸線4Aおよび第1変換器3Aなどによる制約が無い為,自由度の高い設計が可能となる。
【0147】
具体的には、温度調節部411等はプロセス室402におけるリッジ電極21,421に隣接して配置される一方で、第1変換器3Aはプロセス室402に対してL方向に隣接して配置され、第1同軸線4Aは第1変換器3AからE方向に延びて配置されている。そのため、配置位置に関して温度調節部411等と、第1変換器3A等とが干渉することがない。
【0148】
ここで、従来のプラズマCVD装置において、母ガスはプラズマ放電電極の周辺やアンテナ電極の周辺から供給されることが一般的であった。さらに、温度調節部はプラズマ放電電極やアンテナ電極に対向して基板を保持する対向電極に組み込まれることが一般的であった。しかしながら、この構成では、プラズマ放電電極に電力を供給する構成と、母ガスを供給する構成および温度調節部とが干渉する、言い換えると、母ガスを供給する構成および温度調節部には、電力を供給する構成により配置位置の制約があった。
【0149】
本実施形態の構成では、プラズマ放電電極であるリッジ電極21,421への高周波電力の供給は、リッジ導波管である第1変換器3Aおよびプロセス室402内での高周波電力の伝播により実施される。その一方で、温度調節部411等はプロセス室402の外側に配置されるため、上述の干渉の問題が発生せず、自由度の高い設計が可能となる。
【0150】
なお、ここでは製膜装置401の全体構成を、図12に示すように、第1の実施形態の製膜装置1の全体構成(図1参照。)と類似する構成に適用して説明したが、これにかぎられることなく、第2の実施形態の製膜装置101の全体構成(図7参照。)と類似する構成に適用してもよい。
第2の実施形態の製膜装置101の全体構成と類似する構成に適用しても、第1の実施形態の製膜装置1の全体構成と類似する構成に適用した場合と、同様の効果をえることができる。
【0151】
〔第6の実施形態〕
次に、本発明の第6の実施形態について図14を参照して説明する。
本実施形態の製膜装置の基本構成は、第1の実施形態と同様であるが、第1の実施形態とは、基板の搬入搬出に関する構成が異なっている。よって、本実施形態においては、図14を用いて基板の搬入搬出に関する構成のみを説明し、その他の構成要素等の説明を省略する。
図14は、本実施形態に係る製膜装置の構成を説明する概略図である。
なお、第1の実施形態と同一の構成要素には、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0152】
製膜装置501のプロセス室(放電室)502は、図14に示すように、内部に配置された基板Sに対してプラズマPによる処理を施す部分である。
プロセス室502は、アルミニウム材料などの導電性を有し非磁性または弱磁性を有する材料から形成された部品であって、いわゆるダブルリッジ導波管状に形成されたものである。その一方で、プロセス室402の内部は、排気部9により0.1kPaから10kPa程度の真空状態とされるため、プロセス室502は内部と外部との間の圧力差に耐えうる構造とされている。
【0153】
さらに、プロセス室502の壁面であって、基板Sが延びる方向(H方向)と交差する部分には、基板Sがプロセス室502に搬入、または、プロセス室502から搬出される一対のスリット(開口部)503,503が設けられている。
【0154】
一対のスリット503,503は、プロセス室502の壁面に略長方形状に形成された貫通孔であって、基板Sが搬入または搬出される孔で、開閉が可能なことが好ましい。さらに一対のスリット503は、一対のリッジ電極21,21の間に形成される電界に影響を与えない位置、つまり、プロセス室502の側壁に形成されている。
【0155】
さらに、図14に示すように、プロセス室502における基板Sが何裕される側(図14の左側)にはロード室520が隣接して設けられ、プロセス室502における基板Sが搬出される側(図14の右側)にはアンロード室521が隣接して設けられている。
【0156】
ロード室520にはゲートバルブ530が設けられ、アンロード室521にはゲートバルブ531が設けられている。ロード室520およびアンロード室521には、図示しない真空排気装置およびベント装置が接続されている。真空排気装置およびベント装置により、ロード室520とアンロード室521内を真空状態と大気圧状態とにすることができる。
【0157】
本実施形態では、第1の実施形態と同様な基板Sや、さらにリッジ電極21よりも長尺に形成された基板Sを用いることができる。
さらに、基板Sの材料として透光性ガラス基板の他に、巻き取りが可能な柔軟性を有する材料を用いることができる。この場合には、本実施形態の製膜装置501を用いてロール・ツー・ロール方式で代表される連続的な基板供給による製膜処理を行うことができる。
【0158】
次に、上記の構成からなる製膜装置501における基板Sに対するプラズマ処理である製膜処理について説明する。
まず、図14に示すように、ロード室520を大気圧状態として、ゲートバルブ530を開にして、図示しない基板搬送装置(回転ローラーなど)により基板Sを搬入する。その後、ゲートバルブ530を閉にして真空排気しロード室520を真空状態とする。
【0159】
プロセス室502の内部は真空状態が維持されていて、ロード室520側のスリット503が開かれ、スリット503から、一対のリッジ電極21,21の間に基板Sが搬入される。そして、図14に示すように、高周波電力がプロセス室502に供給されるとともに、一対のリッジ電極21,21の間にSiHガスなどの母ガスが供給される。
【0160】
すると、一対のリッジ電極21,21の間にプラズマPが形成され、基板Sに対してプラズマ処理である製膜処理が施される。
このとき、基板Sは一方のスリット503からプロセス室502の内部に搬入され、製膜処理が施された基板Sは、他方のスリット503を開にしてプロセス室502に隣接して設けられたアンロード室521に搬出される。アンロード室521へ基板Sが搬出されると、他方のスリット503を閉にして、アンロード室521を大気圧状態にベントする。そして、ゲートバルブ531を開にして、プラズマ処理が完了した基板Sをアンロード室521から搬出する。
このようにすることで、基板Sを次々にプロセス室502へ搬送して、基板Sに対する製膜処理を連続して行うことができる。
【0161】
さらに、基板Sはリッジ電極21よりも長尺であっても、プロセス室502へ基板Sを搬送する間、スリット503を開としておくことで、基板Sに製膜処理を行うことができる。つまり、基板Sをリッジ電極21,21の間に搬送しながら基板Sに製膜処理できるので、更に大面積基板への製膜処理を行うことができる。
【0162】
上記の構成によれば、基板Sは一対のスリット503,503の一方からプロセス室502の内部に搬入され、一対のリッジ電極21,21の間に導かれる。リッジ電極21,21の間では、基板Sに対して、例えばプラズマCVDなどのプラズマ処理が施される。プラズマ処理が施された基板Sは、一対のスリット503,503の他方からプロセス室502の外部に搬出される。そのため、基板Sに対する製膜処理を連続して行うことができる。
【0163】
さらに、基板Sの搬入、基板Sへのプラズマ処理、基板Sの搬出を連続して行うことができるため、一対のリッジ電極21,21よりも大きな面積を有する基板Sに対して連続してプラズマ処理を施すことができる。そのため、アモルファスシリコン太陽電池や結晶質シリコン太陽電池などの生産性向上を図ることができる。
【0164】
さらに、基板Sの移動方向に複数のプロセス室502を並べ、一の基板Sが複数のプロセス室502に連続して搬入されるように構成してもよい。この場合、各放電室において異なるプラズマ処理、アモルファスシリコン太陽電池や結晶質シリコン太陽電池などのp層、i層およびn層の各製膜処理を行うことにより、基板Sに対して、p層、i層およびn層の各製膜処理を連続して行うことができる。
【0165】
〔第7の実施形態〕
次に、本発明の第7の実施形態について図15を参照して説明する。
本実施形態の製膜装置の基本構成は、第5の実施形態と同様であるが、第5の実施形態とは、複数のプロセス室が設けられている点が異なっている。よって、本実施形態においては、図15を用いて複数のプロセス室が設けられている点のみを説明し、その他の構成要素等の説明を省略する。
図15は、本実施形態に係る製膜装置の構成を説明する模式図である。
なお、第5の実施形態と同一の構成要素には、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0166】
製膜装置601には、図15に示すように、プロセス室402pと、プロセス室402iと、プロセス室402nと、基板搬送部(搬送部)602と、が主に設けられている。
【0167】
プロセス室402p、プロセス室402i、および、プロセス室402nは、図15に示すように、内部に配置された基板Sに対してプラズマPによる処理を施す部分である。具体的には、プロセス室402pは、基板Sに対してアモルファスや結晶質シリコン太陽電池などのp層を製膜するものであり、プロセス室402iは、基板Sに対してアモルファスや結晶質シリコン太陽電池などのi層を製膜するものであり、プロセス室402nは、基板Sに対してn層を製膜するものである。
【0168】
その一方で、プロセス室402p、プロセス室402i、および、プロセス室402nは、E方向に順に並んで配置され、H方向には基板搬送部602が隣接して配置されている。
さらに、プロセス室402p、プロセス室402i、および、プロセス室402nのそれぞれには、基板搬送部602と隣接する位置にゲートバルブ603が設けられている。
【0169】
ゲートバルブ603は、プロセス室402p等に形成された開口を開閉するものである。ゲートバルブ603が開かれることにより形成された開口を介して、プロセス室402p等と基板搬送部602との間で基板Sの搬入や搬出が行われる。
【0170】
基板搬送部602は、プロセス室402p等との間で基板Sの搬入や搬出を行うとともに、プロセス室402p、プロセス室402i、および、プロセス室402nの間で基板Sの入れ替えを行うものである。
【0171】
また、基板搬送部602は、少なくともゲートバルブ603を開閉するときには、図示しない真空排気装置により、真空状態に保たれている。このためプロセス室402p、プロセス室402i、および、プロセス室402nの内部を常に真空状態に維持できるとともに、各プロセス室間のクロスリークによるガスコンタミの発生を抑制することが出来る。
なお基板搬送部602の構成としては、公知の構成を用いることができ、特に限定するものではない。
【0172】
次に、上記の構成からなる製膜装置601における基板Sに対するプラズマ処理である製膜処理について説明する。ここでは、基板Sにp層、i層およびn層の順に製膜が行われる場合に適用して説明する。
なお、プロセス室402p等における製膜処理については、第5の実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
【0173】
基板Sは、基板搬送部602からプロセス室402pの内部に搬入される。このとき、プロセス室402pのゲートバルブ603は開かれている。プロセス室402pに基板Sが搬入されると、ゲートバルブ603が閉じられて、基板Sに対してp層の製膜処理が行われる。
【0174】
基板Sに対するp層の製膜処理が終了すると、ゲートバルブ603が開かれ、プロセス室402pから基板搬送部602に基板Sが搬出される。搬出された基板Sは、次に、プロセス室402iに搬入される。このとき、プロセス室402iのゲートバルブ603は開かれている。プロセス室402iに基板Sが搬入されると、ゲートバルブ603が閉じられて、基板Sのp層の上にi層が製膜される。
【0175】
基板Sに対するi層の製膜処理が終了すると、ゲートバルブ603が開かれ、プロセス室402iから基板搬送部602に基板Sが搬出される。搬出された基板Sは、次に、プロセス室402nに搬入される。このとき、プロセス室402nのゲートバルブ603は開かれている。プロセス室402nに基板Sが搬入されると、ゲートバルブ603が閉じられて、基板Sのi層の上にn層が製膜される。
これにより、基板Sの上にp層、i層およびn層がこの順に製膜されることになる。
【0176】
上記の構成によれば、プロセス室402p、プロセス室402i、および、プロセス室402nは、E方向に並んで配置することにより、プロセス室402pなどを設置するスペースの省スペース化を図ることができる。そのため、製膜装置601を備える工場における単位面積あたりの生産性向上を図ることができる。
【0177】
一般に、リッジ導波管の伝送方向における縦横比は、EIAJ規格では1:2と定められ,WMI規格では1:4と定められ、WFI規格では1:8.33と定められている。いずれの規格においてもリッジ導波管は横長な形状となる。そのため、多数のリッジ導波管を平置きにすると多大な設置スペースが必要となる。
しかしながら、プロセス室402p、プロセス室402i、および、プロセス室402nをE方向に並んで配置することにより、設置スペースの問題を解消することができる。
【0178】
〔第8の実施形態〕
次に、本発明の第8の実施形態について図16および図17を参照して説明する。
本実施形態の製膜装置の基本構成は、第1の実施形態と同様であるが、第1の実施形態とは、第2変換器の構成が異なっている。よって、本実施形態においては、図16および図17を用いて第2変換器の周辺構成のみを説明し、その他の構成要素等の説明を省略する。
図16は、本実施形態に係る製膜装置の構成を説明する模式図である。
なお、第1の実施形態と同一の構成要素には、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0179】
製膜装置(真空処理装置)701には、図16に示すように、プロセス室2と、変換器(変換部)703Aと、テーパ管704と、終端調整器(位相調整部)705と、第1同軸線4Aと、電源5と、整合器6と、排気部9と、ガス供給部10と、が主に設けられている。
【0180】
変換器703Aは、高周波電力の伝送経路を第1同軸線4Aから導波管に変換するものである。さらに、変換器703Aは、筒状に形成されるとともに一方の端部(図16の左側の端部)は閉じられたものである。
【0181】
変換器703Aには、図16に示すように、第1同軸線4Aと、テーパ管704とが接続されている。
具体的には、第1同軸線4Aは変換器703Aの側面に電気的に接続されるとともに、変換器703Aの内部に突出して配置されている。その一方で、テーパ管704は、変換器703Aの他方の端部(右側の端部)に電気的に接続されている。
【0182】
変換器703Aとテーパ管704との間には、真空窓706が設けられている。
真空窓706は、テーパ管704およびプロセス室2の内部の真空状態を維持するとともに、変換器703Aからテーパ管704およびプロセス室2への高周波電力の伝送を可能にするものである。
真空窓706を形成する材料としては、石英ガラスなどを例示することができる。
【0183】
テーパ管704は、導波管モードから平行平板モードに変換するものである。
テーパ管704における変換器703Aと接続される端部は、変換器703Aと同一の断面形状に形成され、プロセス室2と接続される端部は、プロセス室2と同一のダブルリッジ導波管の断面形状に形成されている。さらに、テーパ管704の断面形状は、変換器703Aと接続される端部から、プロセス室2と接続される端部に向って滑らかに変化している。
【0184】
終端調整器705は、プロセス室2に向って反射する反射電力の位相を調節するものである。終端調整器705は、テーパ管704とともにプロセス室2を間に挟む位置に配置され、プロセス室2と電気的に接続されている。さらに、終端調整器705は、プロセス室2と同一の断面形状に形成されている。
【0185】
図17は、図16の終端板が移動する状態を説明する模式図である。
終端調整器705には、図16に示すように、終端板705Aが設けられている。
終端板705Aは、終端調整器705において高周波電力が反射される部分であって、金属などの導電体から形成された板状の部材である。さらに、終端板705Aは、図17に示すように、L方向に移動可能とされている。
【0186】
次に、上記の構成からなる製膜装置701における基板Sに対するプラズマ処理である製膜処理について説明する。
基板Sは、図16に示すように、プロセス室2におけるリッジ電極21の上に配置される。ここで、プロセス室2、テーパ管704および終端調整器705は、排気部9により、その内部から空気などの気体が排気された常時真空状態にある。そのため、第6の実施形態に係る製膜装置501や、第7の実施形態に係る製膜装置601のように、ロード室などが併設されていることが好ましい。
【0187】
さらに、電源5から周波数が13.56MHz以上、好ましくは30MHzから400MHzの高周波電力がプロセス室2のリッジ電極21に供給されるとともに、ガス供給部10から一対のリッジ電極21,21の間に、例えばSiHガスなどの母ガスが供給される。
このとき、プロセス室2等の内部、言い換えると、一対のリッジ電極21,21の間は、0.1kPaから10kPa程度の真空状態に保たれている。
【0188】
電源5から供給された高周波電力は、第1同軸線4Aによって整合器6を介して変換器703Aに伝送される。整合器6では高周波電力を伝送する系統におけるインピーダンスなどの値が調節される。
高周波電力は、変換器703Aからテーパ管704に伝送され、テーパ管704において伝送モードが導波管モードから平行平板モードに変換に変換される。
【0189】
その後、高周波電力は、テーパ管704からプロセス室2に伝送され、一対のリッジ電極21,21の間に電界が形成される。
【0190】
その一方で、プロセス室2に伝送された高周波電力の一部は、終端調整器705の終端板705Aにおいて反射される。プロセス室2には、電源5から供給された入力電力と、反射された反射電力とにより定在波SWが形成される。定在波の位置(位相)が固定されると、一対のリッジ電極21,21におけるプロセス室2が延びる方向であるL方向の電界強度の分布に偏りが生じる。
【0191】
そこで、終端調整器705によって反射電力の位相を調節することにより、プロセス室2に形成される定在波SWの位置の調節が行われる。これにより、一対のリッジ電極21,21におけるL方向の電界分布、言い換えると電位分布EPが時間平均的に均一化される。
【0192】
具体的には、図17に示すように、終端板705Aの配置位置を時間の経過に伴いL方向に、Sin波状や、三角波状や、階段(ステップ)状に移動させることにより反射電力の位相が調節される。これにより、定在波SWの位置も調節され、L方向の電位分布EPの分布が時間平均的に均一化される。
【0193】
定在波が移動する範囲や、定在波を移動させる方式(Sin波状、三角波状、階段状等)や位相の調節周期の適正化は、電力の分布や、プラズマからの発光の分布や、プラズマ密度の分布や、製膜された膜に係る特性の分布等に基づいて行われる。膜に係る特性としては、膜厚や、膜質や、太陽電池等の半導体としての特性などを挙げることができる。
【0194】
このような状態において一対のリッジ電極21,21の間で母ガスが電離され、プラズマが形成される。形成されたプラズマにより基板Sの上に均一な膜、例えばアモルファスシリコン膜や結晶質シリコン膜が形成される。
【0195】
上記の構成によれば、反射電力の位相を終端調整器705により調節することにより、プロセス室2における定在波SWの位相も調節される。本実施形態では、反射電力の位相を時間的に変動させることにより、プロセス室2における定在波SWの位相も時間的に変動される。その結果、一対のリッジ電極21,21の間の電界を時間平均的に均一化することができる。
【0196】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記の実施の形態においては、この発明をプラズマCVD法による製膜装置に適用して説明したが、この発明は製膜装置に限られることなく、プラズマエッチングなどのプラズマ処理を行う装置など、その他各種の装置に適用できるものである。
【符号の説明】
【0197】
1,101,201,301,401,501,601,701 製膜装置(真空処理装置)
2,302,402,502 プロセス室(放電室)
3A,203A,303A 第1変換器(変換部)
3B,203B,303B 第2変換器(変換部)
4A 第1同軸線(同軸線路)
5 電源
7 位相調整器(位相調整部)
21,421 リッジ電極
31 リッジ部
41 内部導体
42 外部導体
104A 第1同軸線(一の同軸線路)
105A 第1電源(一の電源)
104B 第2同軸線(他の同軸線路)
105B 第2電源(他の電源)
304 真空容器(減圧容器)
305 真空窓(窓部)
409 排気部
411 温度調節部
409B 真空排気管(排気部)
410B ガス供給管(供給部)
503 一対のスリット(開口部)
602 基板搬送部(搬送部)
703A 変換器(変換部)
705 終端調整器(位相調整部)
S 基板


【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向して配置され、間にプラズマ処理が施される基板が配置される放電用のリッジ部であるリッジ電極を有するリッジ導波管からなる放電室と、
高周波電力を前記放電室に供給する電源と、
内部導体および外部導体からなり、前記電源から前記放電室へ前記高周波電力を導く同軸線路と、
リッジ部を有するリッジ導波管からなり、前記放電室が延びる方向に隣接して配置され、前記同軸線路から前記放電室へ前記高周波電力を導く変換部と、
が設けられ、
前記リッジ部の一方は、前記内部導体と電気的に接続され、前記リッジ部の他方は、前記外部導体と電気的に接続されていることを特徴とする真空処理装置。
【請求項2】
前記変換部は、前記放電室が延びる方向の一方の端部および他方の端部に設けられ、
前記一方の端部に設けられた前記変換部には、前記電源と電気的に接続された前記同軸線路が電気的に接続され、
前記他方の端部に設けられた前記変換部には、当該変換部から前記放電室に向かって反射する反射電力の位相を調節する位相調整部が設けられていることを特徴とする請求項1記載の真空処理装置。
【請求項3】
前記変換部は、前記放電室が延びる方向の一方の端部および他方の端部に設けられ、
前記一方の端部に設けられた前記変換部には、一の電源および一の同軸線路が電気的に接続され、
前記他方の端部に設けられた前記変換部には、他の電源および他の同軸線路が電気的に接続されていることを特徴とする請求項1記載の真空処理装置。
【請求項4】
前記一の電源および前記他の電源の少なくとも一方は、供給する高周波電力の位相を調節可能であることを特徴とする請求項3記載の真空処理装置。
【請求項5】
前記放電室が延びる方向の一方の端部に設けられた前記変換部には、前記電源と電気的に接続された前記同軸線路が電気的に接続され、
前記放電室が延びる方向の他方の端部には、前記放電室に向かって反射する反射電力の位相を調節する位相調整部が設けられていることを特徴とする請求項1記載の真空処理装置。
【請求項6】
前記同軸線路を介して前記電源と電気的に接続された前記変換部における少なくとも前記リッジ部の間には充填材が設けられ、
該充填材が設けられていない領域と比較して、前記充填材は誘電率が高いことを特徴とする請求項2から5のいずれかに記載の真空処理装置。
【請求項7】
少なくとも、前記放電室は減圧容器の内部に配置されていることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の真空処理装置。
【請求項8】
一対の前記リッジ電極が対向して配置され、
一対の前記リッジ電極の一方における内面に前記基板が配置されるとともに、前記リッジ電極の一方における外面には前記基板の温度を調節する温度調節部が設けられ、
一対の前記リッジ電極の他方における外面には、前記リッジ電極の他方に沿って、前記リッジ電極の他方の少なくとも一部を通過して前記放電室内部の気体を排気する排気部、および、プラズマの生成に用いられるガスを供給する供給部が設けられていることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の真空処理装置。
【請求項9】
前記基板は、前記リッジ電極の間を、前記放電室が延びる方向に対して交差する方向に移動可能とされ、
前記放電室における前記基板が移動する領域には、前記基板が前記放電室に出入りする一対の開口部が設けられていることを特徴とする請求項8記載の真空処理装置。
【請求項10】
複数の前記放電室が設けられ、
前記放電室に対して前記基板の搬入や搬出を行うとともに、一の放電室から他の放電室へ前記基板の搬送を行う搬送部が設けられていることを特徴とする請求項8記載の真空処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−35327(P2011−35327A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−182773(P2009−182773)
【出願日】平成21年8月5日(2009.8.5)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】