説明

硬化性樹脂組成物および層間絶縁膜

【課題】硬化収縮が小さく、耐熱性と可とう性、金属めっき層との接着性にも優れる層間絶縁膜およびそれを与える硬化性樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】
下記一般式(1)
【化1】


で表される脂環式エポキシ化合物とカチオン重合開始剤または硬化剤を含むことを特徴とする硬化性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、硬化性樹脂組成物および同組成物を硬化してなり、LSIや多層プリント配線板に使用できる耐熱性、接着性、可とう性に優れた層間絶縁膜に関するものである。
【背景技術】
【0002】
LSIや多層プリント配線板に用いられる層間絶縁膜は、従来、無機材料を蒸着やスパッタリングなどのPVD法で形成していたが、このようなPVD法による絶縁膜形成方法は多層にすることが困難で、生産性が劣りコストが高い等の問題があった。有機物材料であるポリイミド樹脂を用いた層間絶縁膜も開発されているが、溶剤を使うために膜減りが起こり平坦性が低下することと、基材等との接着性に劣る等の問題があった(特開平01−278561号公報)。そこで、これらの問題を解決するために脂環式エポキシ樹脂(化合物)を主成分とする熱硬化性樹脂を用いた層間絶縁膜が提案されている(特開平6−85091号公報)。この熱硬化性樹脂を用いた層間絶縁膜は、平坦性がよく耐熱性にも優れるが、基材との接着性、特に導体回路形成用金属めっき層との接着性がまだ不十分で信頼性を高めるまでには至っていない。
【0003】
【特許文献1】特開平01−278561号公報。
【特許文献2】特開平6−85091号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明によって解決しようとする課題は、硬化時の収縮が小さく基材との接着性、耐熱性、可とう性に優れた信頼性の高い層間絶縁膜を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意検討を進めた結果、脂環式エポキシ化合物の中でも特定の構造を有する脂環式エポキシ化合物の硬化物は、硬化収縮が小さく、耐熱性と可とう性が良好で、金属めっき層との接着性にも優れていることを見出し本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明の第1は、下記一般式(1)
【化1】

で表される脂環式エポキシ化合物とカチオン重合開始剤または硬化剤を含むことを特徴とする硬化性樹脂組成物を提供する。
本発明の第2は、カチオン重合開始剤が熱カチオン重合開始剤である上記発明1記載の硬化性樹脂組成物を提供する。本発明の第3は、カチオン重合開始剤が光カチオン重合開始剤である上記発明1記載の硬化性樹脂組成物を提供する。本発明の第4は、硬化剤が多塩基酸無水物である上記発明1記載の硬化性樹脂組成物を提供する。本発明の第5は、極性基Aがエステル基である上記発明1〜4のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物を提供する。本発明の第6は、上記発明1〜5のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物を硬化させてなる層間絶縁膜を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の硬化性樹脂組成物は、硬化収縮が小さく、耐熱性と可とう性、金属めっき層との接着性にも優れる硬化物である層間絶縁膜を与える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を詳しく説明する。
本発明に用いられる前記一般式(1)で表される脂環式エポキシ化合物は、脂環骨格を3つ有し、極性基Aで接続された構造をとる。極性基Aとしては、エーテル基、チオエーテル基、スルホニル基、カルボニル基、カーボネート基、エステル基、アセタール基から選ばれる基が挙げられる。
【0009】
前記一般式(1)で表される脂環式エポキシ化合物としては、例えば1,4−ビス(3−シクロヘキセニル)シクロヘキシルメチルエーテルを過酢酸のようなエポキシ化剤でエポキシ化したエポキシ化合物、1,4−ビス(3−シクロヘキセニル)シクロヘキシルメチルケトンをエポキシ化剤でエポキシ化したエポキシ化合物、1,4−ビス(3−シクロヘキセニルカルボキシメチル)シクロヘキサンをエポキシ化剤でエポキシ化したエポキシ化合物などが挙げられ、中でも1,4−ビス(3−シクロヘキセニルカルボキシメチル)シクロヘキサンをエポキシ化剤でエポキシ化したエポキシ化合物が好ましい。
前記一般式(1)で表される脂環式エポキシ化合物の製造方法は特開平5−170753号公報や特願2004−236505明細書に記載されているが、特に後者に記載されている方法で製造されたものが好ましい。
中でも、エポキシ化剤として過酢酸、特に実質的に無水の(具体的には、水分含有率0.8重量%未満)過酢酸を使用してエポキシ化した前記一般式(1)で表される脂環式エポキシ化合物はエポキシ化率が高く、基材との接着性等に優れた層間絶縁膜を与えるので好ましい。
【0010】
本発明の硬化性樹脂組成物におけるカチオン重合開始剤としては、光カチオン重合開始剤と熱カチオン重合開始剤があるが、前者は活性エネルギー線によりカチオン種を発生してエポキシ化合物のカチオン重合を開始させる化合物であり、例えば、下記式(2)〜(8)で示されるヨードニウム塩、スルホニウム塩、及びその他のカチオン重合開始剤を挙げることができる。
【0011】
式(2)
【化2】

式中、R2は炭素数1〜15のアルキル基又は炭素数1〜15のアルコキシ基を表わし、X-はPF6-、SbF6-又はAsF6-を表わす。
【0012】
式(3)
【化3】

式中、R2は炭素数1〜15のアルキル基又は炭素数1〜15のアルコキシ基を表わし、X-は上記と同じ意味を表わす。
【0013】
式(4)
【化4】

【0014】
式(5)
【化5】

式中、R2は炭素数1〜15のアルキル基又は炭素数1〜15のアルコキシ基を表わし、X-は上記と同じ意味を表わす。
【0015】
式(6)
【化6】

式中、R2は炭素数1〜15のアルキル基又は炭素数1〜15のアルコキシ基を表わし、X-は上記と同じ意味を表わす。
【0016】
式(7)
【化7】

式中、R2は炭素数1〜15のアルキル基又は炭素数1〜15のアルコキシ基を表わし、Arはアリール基、例えばフェニル基を表わし、X-は上記と同じ意味を表わす。
【0017】
式(8)
【化8】

式中、X-は上記と同じ意味を表わす。
【0018】
本発明の硬化性樹脂組成物における熱カチオン重合開始剤としては、加熱によりカチオン種を発生してエポキシ化合物のカチオン重合を開始させる化合物であり、例えば、下記式(9)〜(17)で示されるヘキサフルオロアンチモネート塩、ペンタフルオロヒドロキシアンチモネート塩、ヘキサフルオロホスフェート塩、ヘキサフルオロアルゼネート塩及びその他のカチオン重合開始剤を挙げることができる。
【0019】
式(9)
【化9】

式中、R20は炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数1〜12のアルコキシ基を表わし、rは0〜3の整数を表わし、X-は、上記と同じ意味を表わす。
【0020】
式(10)
【化10】

式中、Y-はPF6-、SbF6-、AsF6-又はSbF5(OH)-を表わす。
【0021】
式(11)
【化11】

式中、X-は上記と同じ意味を有する。
【0022】
式(12)
【化12】

式中、X-は上記と同じ意味を有する。
【0023】
式(13)
【化13】

(13)
式中、X-は上記と同じ意味を有する。
【0024】
式(14)
【化14】

式中、R21は炭素原子数7〜15のアラルキル基又は炭素原子数3〜9のアルケニル基を表わし、R22は炭素原子数1〜7の炭化水素基又はヒドロキシフェニル基を表わし、R23は酸素原子又は硫黄原子を含有していてもよい炭素原子数1〜5のアルキル基を表わし、X-は上記の意味を有する。
【0025】
式(15)、
【化15】

式中、R24及びR25はそれぞれ独立に炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数1〜12のアルコキシ基を表わす。
【0026】
式(16)、
【化16】

式中、R24及びR25は上記と同じ意味を有する、
【0027】
式(17)
【化17】

【0028】
熱カチオン重合開始剤としては市販品を使用することもできる。市販品としては、例えば、SI−100L、SI−60L[三新化学工業(株)製]、CP−66[旭電化工業(株)製]などを挙げることができる。
また、これらオニウム塩系の熱カチオン重合触媒以外にアルミ、又はチタンとベータジケトン類とのキレート化合物とシラノール基を持つ化合物またはビスフェノールSとの組み合わせによりカチオン重合を行う方法も使用できる。
アルミ又はチタンに配位するベータジケトン類としては、アセチルアセトン、アセト酢酸エステルが挙げられる。これらキレート化合物の商品名としては、ALCH−TR[川研ファインケミカル(株)]、DAICAT EX−1[ダイセル化学工業(株)]が挙げられる。
【0029】
本発明の硬化性樹脂組成物における硬化剤としては加熱することによりエポキシ基と反応するものであれば何でもよいが、アミン系硬化剤は硬化後の耐熱性が不良であるため望ましくない。硬化後の耐熱性がよいものとしては、例えば多塩基酸無水物が挙げられ、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、Δ4−テトラヒドロ無水フタル酸、4−メチル−Δ4−テトラヒドロ無水フタル酸、3−メチル−Δ4−テトラヒドロ無水フタル酸、無水ナジック酸、無水メチルナジック酸、水素化メチルナジック酸無水物、4−(4−メチル−3−ペンテニル)テトラヒドロ無水フタル酸、無水コハク酸、無水アジピン酸、無水マレイン酸、無水セバシン酸、無水ドデカン二酸、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸無水物、ドデセニル無水コハク酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、3−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体、アルキルスチレン無水マレイン酸共重合体等がある。また、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂等のフェノール樹脂、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテート、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテート、2−メチルイミダゾリウムイソシアヌレート、2−フェニルイミダゾリウムイソシアヌレート、2,4−ジアミノ−6−〔2−メチルイミダゾリル−(1)〕−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−〔2−エチル−4−メチルイミダゾリル−(1)〕−エチル−s−トリアジン等のイミダゾール系硬化剤、BF3−n−ヘキシルアミン、BF3−モノエチルアミン、BF3−ベンジルアミン、BF3−ジエチルアミン、BF3−ピペリジン、BF3−トリエチルアミン、BF3−アニリン、BF4−n−ヘキシルアミン、BF4−モノエチルアミン、BF4−ベンジルアミン、BF4−ジエチルアミン、BF4−ピペリジン、BF4−トリエチルアミン、BF4−アニリン、PF5−エチルアミン、PF5−イソプロピルアミン、PF5−ブチルアミン、PF5−ラウリルアミン、PF5−ベンジルアミン、AsF5−ラウリルアミン等のルイス酸−アミン錯体系硬化剤、ジシアンジアミド及びその誘導体、有機酸ヒドラジド、ジアミノマレオニトリルとその誘導体、アミンイミド等の硬化剤も挙げられる。これらの硬化剤は単独で用いてもよいし、これらの混合物として用いてもよい。
【0030】
そして、硬化促進剤として、ベンジルジメチルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン等の第3級アミン、2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール、トリフェニルホスフィン、トリス(ジメトキシ)ホスフィン等のホスフィン類、アルミニウムアセチルアセトン錯体等の金属キレート、テトラメチルホスホニウムブロマイド、テトラ−n−ブチルホスホニウムブロマイド等のホスホニウム塩、テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムブロマイド等の四級アンモニウム塩、オクチル酸錫、オクチル酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛等の有機酸金属塩、1,8−ジアザ−ビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7オクチル酸塩等のジアザビシクロアルケン有機酸塩類、三フッ化ホウ素、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート等のホウ素化合物などが挙げられる。これらの硬化促進剤は単独でも2種以上を併用してもよい。
【0031】
また、上記硬化性樹脂組成物には、必要に応じ本発明の効果を損なわない範囲で、他の各種エポキシ化合物、可塑剤、レべリング剤、消泡剤、紫外線吸収剤、難燃化剤、酸化防止剤、シランカップリング剤、顔料、さらにはポリイミド樹脂などの有機質充填剤、シリカやタルク、アルミナ、クレー、酸化チタンなどの無機質充填剤を配合することができる。しかしながら、層間絶縁膜として使用する場合、絶縁抵抗を低下させるような充填剤を配合することは好ましくない。
【0032】
光カチオン重合開始剤の使用量は、一般式(1)で示される脂環式エポキシ化合物100重量部に対して、0.1〜20重量部、好ましくは0.5〜15重量部、さらに好ましくは1〜10重量部の範囲である。
熱カチオン重合開始剤の使用量は、一般式(1)で示される脂環式エポキシ化合物100重量部に対して、0.01〜20重量部、好ましくは0.1〜10重量部、さらに好ましくは0.5〜5重量部の範囲である。
硬化剤の使用量は、一般式(1)で示される脂環式エポキシ化合物(他のエポキシ化合物を配合する場合は、合計のエポキシ基)のエポキシ基1当量に対して、0.7〜1.3当量、好ましくは0.8〜1.2当量、さらに好ましくは0.9〜1.1当量の範囲である。
硬化促進剤の使用量は、硬化剤100重量部に対して、0.1〜10重量部、好ましくは0.2〜5重量部、さらに好ましくは0.3〜3重量部の範囲である。
光または熱カチオン重合開始剤、硬化剤、硬化促進剤の使用量が上記各下限値未満では、硬化が不十分であったり、硬化に長時間を要することがあり、逆に各上限値を超える場合は得られる硬化物の物性が低下することがあるので、いずれも好ましくない。
【0033】
本発明の硬化性樹脂組成物は、以上に述べた各成分を混合し、均一な樹脂組成物となるように撹拌することにより調製することができる。例えば、各成分を混合し、必要に応じて加温(例えば40℃程度)し、ディソルバーなどの撹拌機にて均一になるまで、例えば20分間程度撹拌することにより調製することができる。
【0034】
本発明の硬化性樹脂組成物は、例えば、ロールコート塗装、スプレー塗装、ハケ塗り、バーコート塗装、ローラー塗り、シルクスクリーン印刷、スピンコーティング等の方法で基板、配線板に塗布することができる。組成物が溶剤を含有する場合には、塗布後、加熱などにより溶剤を除去した後、光あるいは熱によって硬化させる。
【0035】
光カチオン重合開始剤を用いた光カチオン硬化での紫外線のような活性エネルギー線の照射条件は、塗布された樹脂組成物の種類や膜厚等に応じて適宜変えることができる。照射する紫外線の波長としては、通常、200〜600nmの範囲内が適当であり、光カチオン重合開始剤の種類等に応じて、感度の高い波長を有する照射源を適宜選択して使用することができる。
【0036】
紫外線の照射源としては、例えば、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、カーボンアーク、メタルハライドランプ、太陽光などを挙げることができる。照射量は、通常、線量が10〜5,000mJ/cm2、特に50〜2,000mJ/cm2となる範囲内が適している。活性エネルギー線としては、紫外線以外に電子線を使用することもできる。
【0037】
また、活性エネルギー線照射後、必要に応じて組成物を加熱してもよい。加熱によって樹脂中の未反応物の低減および活性エネルギー線照射による塗膜の硬化性や成形加工によって発生した歪みの緩和を行なうことができる。この加熱によって樹脂の硬度や密着性の向上を行なうことができる場合がある。上記加熱は、通常、100〜200℃の雰囲気温度で1〜120分間の条件で行なうことができる。
【0038】
熱カチオン重合開始剤を用いた熱カチオン硬化および硬化剤を用いた熱硬化の条件は、40〜250℃、好ましくは45〜220℃の温度下で30分〜12時間程度の加熱で行なうことができる。また、同一温度で加熱するだけでなく、2段階、3段階に温度を変化させたり、徐々に温度を上げたりすることができる。
塗布した硬化性樹脂組成物をLSIや多層プリント配線板等に塗布して活性エネルギー線あるいは熱で硬化させると層間絶縁膜として利用できるようになる。
【0039】
[実施例]
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、「部」及び「%」は、いずれも重量基準によるものとする。
【0040】
層間絶縁膜としての特性は次の方法で評価した。
<ガラス転移温度Tg>
セイコーインスツルメンツ社製DSC(示差走査熱量計)により測定した。
<硬化収縮率>
硬化性樹脂組成物の比重aを比重瓶にて測定し、硬化物の比重bを水中置換法で測定し、次式により硬化収縮率を求めた。
硬化収縮率(%)=[1−(b/a)]×100
<絶縁層とめっき層との接着強度>
硬化性樹脂組成物をコーターを用いて脱脂洗浄した銅張りガラスエポキシ基板の銅(張り)面に約30μmの厚さに塗布した後に光、若しくは熱によって硬化させ絶縁層を形成した。上記絶縁層を形成した基板を膨潤液(シプレイ社製)に50℃で15分、過マンガン酸カリウム/水酸化ナトリウムの混合溶液に70℃で5分間浸漬して絶縁層の表面を粗面化しその後中和溶液(シプレイ社製)に浸漬して水洗した。次に、絶縁層の表面が粗面化された基板にパラジウム触媒(シプレイ社製)層を形成し、アクセラレータ(シプレイ社製)により表面を活性化させた後に無電解めっき液(シプレイ社製)に30分間浸漬してさらに電解めっき液(硫酸銅)に1A/dmの電流を流しながら2時間浸漬して厚さ25μmの銅めっきを施し基板を得た。絶縁層と銅めっき層との接着強度をJIS C6481に従って測定した。
【0041】
[合成例1]
10段の蒸留塔のついた10リットル反応器に出発原料である3−シクロヘキセニルメチル−3−シクロヘキセンカルボキシレートを6,110g、1,4−シクロヘキサンジメタノールを400g反応器に仕込み、90℃で溶解させた。溶解確認後、塩化スズを出発原料に対して10ppm相当仕込み、170℃、8torrまで減圧にした。副生する3−シクロヘキセニルメタノールを留出させながら反応させ、3−シクロヘキセニルメタノールの留出がほぼ停止したところで加熱を停止しエステル交換反応を終了させた。エステル交換反応終了液は、透明であった。
その後、反応粗液の0.5重量倍のイオン交換水を用いて60℃で1時間水洗を行い30分静置した。水層を分離後、薄膜蒸発機にてジャケット温度178℃、圧力3.2torrで水洗液中に残存する3−シクロヘキセニルメチル−3−シクロヘキセンカルボキシレート及び3−シクロヘキセニルメタノールを留去することにより、脂環式オレフィン多価エステル化合物が821g得られた。この化合物を200g、酢酸エチル200g、を仕込み、窒素を気相部に吹き込みながら、反応系内の温度を30℃になるように約2時間かけて実質的に無水の過酢酸401g(過酢酸濃度:29.5%、水分含量0.35%)を滴下した。過酢酸滴下終了後、40℃で3時間熟成し反応を終了した。さらに40℃で反応終了液を水洗し、70℃/10mmHgで脱低沸を行い、脂環式エポキシ化合物209.4gを得た。得られた脂環式エポキシ化合物の性状は、オキシラン酸素濃度7.92%、白色の結晶であった。1HNMRによる分析結果からδ5.0〜5.8ppm付近の二重結合に由来するピークがほとんど消失し、δ2.9〜3.11ppm付近にエポキシ基に由来するプロトンのピークの生成が確認され、前記一般式(1)で表される脂環式エポキシ化合物であることが確認された。
【0042】
[実施例1]
合成例1で得られた脂環式エポキシ化合物100重量部とダイセル・ユーシービー(株)製光カチオン重合開始剤UVACURE1591を3重量部、40℃に保持して20分間攪拌して光硬化性樹脂組成物を得た。離型フィルムで覆った基材に、得られた組成物をコーターで約30μmの厚さに塗布し、高圧水銀ランプで250mJ/cm2を照射しさらに150℃で1時間硬化させた。その後、硬化物を離型フィルムから剥がし、硬化物のガラス転移温度Tg(DSC法)と硬化収縮率を測定した。さらに、得られた組成物をコーターで脱脂洗浄した銅張りガラスエポキシ基板に約30μmの厚さで塗布し、高圧水銀ランプで250mJ/cm2を照射硬化し更に150℃で1時間硬化させた。その後、銅メッキを施して硬化絶縁層と銅めっき層との接着強度を測定した。
【0043】
[実施例2]
合成例1で得られた脂環式エポキシ化合物100重量部と三新化学工業(株)製熱カチオン重合開始剤SI−100Lを0.6重量部配合し、30℃に保持して20分間攪拌して熱硬化性樹脂組成物を得た。離型フィルムで覆った基材に、得られた組成物をコーターで約30μmの厚さに塗布し、65℃で2時間、さらに150℃で1時間加熱し硬化させた。その後、硬化物を離型フィルムから剥がし、硬化物のガラス転移温度Tgと硬化収縮率を測定した。さらに、得られた組成物をコーターで脱脂洗浄した銅張りガラスエポキシ基板に約30μmの厚さで塗布し、65℃で2時間、続いて150℃で1時間加熱し硬化させた。その後、銅メッキを施して硬化絶縁層と銅めっき層との接着強度を測定した。
【0044】
[実施例3]
合成例1で得られた脂環式エポキシ化合物100重量部と新日本理化(株)製酸無水物MH−700を83重量部、更にエチレングリコール1重量部、トリフェニルホスフィン0.5重量部配合し、40℃に保持して20分間攪拌して熱硬化性樹脂組成物を得た。離型フィルムで覆った基材に、得られた組成物をコーターで約30μmの厚さに塗布し、110℃で2時間、続いて180℃で2時間加熱し硬化させた。その後、硬化物を離型フィルムから剥がし、硬化物のガラス転移温度Tgと硬化収縮率を測定した。さらに、得られた組成物をコーターで脱脂洗浄した銅張りガラスエポキシ基板に約30μmの厚さで塗布し、110℃で2時間、続いて180℃で2時間加熱し硬化させた。その後、銅メッキを施して硬化絶縁層と銅めっき層との接着強度を測定した。
【0045】
[比較例1]
ダイセル化学工業(株)製脂環式エポキシCEL2021 P(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)を100重量部とダイセル・ユーシービー(株)製光カチオン重合開始剤UVACURE1591を3重量部、40℃に保持して20分間攪拌して光硬化性樹脂組成物を得た。離型フィルムで覆った基材に、得られた組成物をコーターで約30μmの厚さに塗布し、高圧水銀ランプで250mJ/cm2を照射し更に150℃で1時間硬化させた。その後、硬化物を離型フィルムから剥がし、硬化物のガラス転移温度Tgと硬化収縮率を測定した。更に、得られた組成物をコーターで脱脂洗浄した銅張りガラスエポキシ基板に約30μmの厚さで塗布し、高圧水銀ランプで250mJ/cm2を照射し更に150℃で1時間硬化させた。その後、銅メッキを施して硬化絶縁層と銅めっき層との接着強度を測定した。
【0046】
[比較例2]
ダイセル化学工業(株)製脂環式エポキシCEL2021 Pを100重量部と三新化学工業(株)製熱カチオン重合開始剤SI−100Lを0.6重量部配合し、30℃に保持して20分間攪拌して熱硬化性樹脂組成物を得た。離型フィルムで覆った基材に、得られた組成物をコーターで約30μmの厚さに塗布し、65℃で2時間、さらに150℃で1時間加熱し硬化させた。その後、硬化物を離型フィルムから剥がし、硬化物のガラス転移温度Tgと硬化収縮率を測定した。さらに、得られた組成物をコーターで脱脂洗浄した銅張りガラスエポキシ基板に約30μmの厚さで塗布し、65℃で2時間、続いて150℃で1時間加熱し硬化させた。その後、銅メッキを施して硬化絶縁層と銅めっき層との接着強度を測定した。
【0047】
[比較例3]
ダイセル化学工業(株)製脂環式エポキシCEL2021 Pを100重量部と新日本理化(株)製酸無水物MH−700を128重量部、さらにエチレングリコール1重量部、トリフェニルホスフィン0.5重量部配合し、40℃に保持して20分間攪拌して熱硬化性樹脂組成物を得た。離型フィルムで覆った基材に、得られた組成物をコーターで約30μmの厚さに塗布し、110℃で2時間、続いて180℃で2時間加熱し硬化させた。その後、硬化物を離型フィルムから剥がし、硬化物のガラス転移温度Tgと硬化収縮率を測定した。更に、得られた組成物をコーターで脱脂洗浄した銅張りガラスエポキシ基板に約30μmの厚さで塗布し、110℃で2時間、続いて180℃で2時間加熱し硬化させた。その後、銅メッキを施して硬化絶縁層と銅めっき層との接着強度を測定した。
【0048】
[比較例4]
ダイセル化学工業(株)製脂環式エポキシCEL2021 Pを100重量部とビニルシクロヘキセンを合成例1に準じて過酢酸でエポキシ化したEVCH(ビニルシクロヘキセンのジエポキシド)を20重量部、更にダイセル・ユーシービー(株)製光カチオン重合開始剤UVACURE1591を3重量部を配合後、40℃に保持して20分間攪拌して光硬化性樹脂組成物を得た。離型フィルムで覆った基材に、得られた組成物をコーターで約30μmの厚さに塗布し、高圧水銀ランプで250mJ/cm2を照射し更に150℃で1時間硬化させた。その後、硬化物を離型フィルムから剥がし、硬化物のガラス転移温度Tgと硬化収縮率を測定した。更に、得られた組成物をコーターで脱脂洗浄した銅張りガラスエポキシ基板に約30μmの厚さで塗布し、高圧水銀ランプで250mJ/cm2を照射し更に150℃で1時間硬化させた。その後、銅メッキを施して硬化絶縁層と銅めっき層との接着強度を測定した。
【0049】
[比較例5]
ダイセル化学工業(株)製脂環式エポキシCEL2021 Pを100重量部とビニルシクロヘキセンを合成例1に準じて過酢酸でエポキシ化したEVCH(ビニルシクロヘキセンのジエポキシド)を20重量部、ナガセケムテックス(株)製デナレックスR−45EPT(ポリブタジエンジグリシジルエーテル)を20重量部、更にダイセル・ユーシービー(株)製光カチオン重合開始剤UVACURE1591を3重量部を配合後、40℃に保持して20分間攪拌して光硬化性樹脂組成物を得た。離型フィルムで覆った基材に、得られた組成物をコーターで約30μmの厚さに塗布し、高圧水銀ランプで250mJ/cm2を照射し更に150℃で1時間硬化させた。その後、硬化物を離型フィルムから剥がし、硬化物のガラス転移温度Tgと硬化収縮率を測定した。更に、得られた組成物をコーターで脱脂洗浄した銅張りガラスエポキシ基板に約30μmの厚さで塗布し、高圧水銀ランプで250mJ/cm2を照射し更に150℃で1時間硬化させた。その後、銅メッキを施して硬化絶縁層と銅めっき層との接着強度を測定した。
表1に各実施例および比較例における配合組成と得られた硬化物の物性値をまとめて示す。
【0050】
【表1】

【0051】
表1における記号は以下の通りである。
CEL2021 P:ダイセル化学工業(株)製 脂環式エポキシ化合物
EVCH:ビニルシクロヘキセンのジエポキシド
R−45EPT:ポリブタジエンジグリシジルエーテル[ナガセケムテックス(株)製]
UVACURE1591:光カチオン重合開始剤[ダイセル・ユーシービー(株)製]
SI−100L:熱カチオン重合開始剤[三新化学工業(株)製]
MH−700:メチルヘキサヒドロ無水フタル酸[新日本理化(株)製]
EG:エチレングリコール
TPP:トリフェニルホスフィン
【0052】
表1の結果から、本発明の硬化性樹脂組成物は、硬化収縮が小さく、耐熱性と可とう性、金属めっき層との接着性にも優れる硬化物である層間絶縁膜を与えることが明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
【化1】

で表される脂環式エポキシ化合物とカチオン重合開始剤または硬化剤を含むことを特徴とする硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
カチオン重合開始剤が熱カチオン重合開始剤である請求項1記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
カチオン重合開始剤が光カチオン重合開始剤である請求項1記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
硬化剤が多塩基酸無水物である請求項1記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
極性基Aがエステル基である請求項1〜4のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物を硬化させてなる層間絶縁膜。

【公開番号】特開2006−199790(P2006−199790A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−11709(P2005−11709)
【出願日】平成17年1月19日(2005.1.19)
【出願人】(000002901)ダイセル化学工業株式会社 (1,236)
【Fターム(参考)】