説明

磁気抵抗効果素子、磁気ヘッド、磁気記録再生装置、および磁気メモリ

【課題】低抵抗を維持したまま、高密度記録に対応した高いMR変化率が得られる磁気抵抗効果素子を提供する。
【解決手段】3層以上の金属磁性層と、前記3層以上の金属磁性層の間に設けられた接続層と、前記金属磁性層および接続層に対して垂直方向に電流を通電させる電極とを具備し、前記3層以上の金属磁性層のうち最下層または最上層の金属磁性層は磁化方向が固着され、外部磁界がゼロのときに最下層の金属磁性層の磁化方向と最上層の金属磁性層の磁化方向がほぼ直交するように中間の金属磁性層の磁化方向がねじれている磁気抵抗効果素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜面に対して垂直方向に電流を通電する構造の磁気抵抗効果素子、ならびにこれを用いた磁気ヘッド、磁気再生装置、および磁気メモリに関する。
【背景技術】
【0002】
磁性体の積層構造体における巨大磁気抵抗効果(Giant MagnetoResistive Effect:GMR)の発見により、磁気デバイスの性能が飛躍的に向上している。特に、スピンバルブ膜(Spin-Valve:SV膜)は磁気デバイスに容易に適用できる構造を有し、GMR効果を有効に発揮させることができるので、磁気ヘッドおよびMRAM(Magnetic Random Access Memory)などの磁気デバイスに大きな技術的進歩をもたらした。
【0003】
「スピンバルブ膜」とは、2つの強磁性層の間に非磁性金属スペーサー層を挟んだ構造を有し、一方の強磁性層(「ピン層」や「磁化固着層」などと称される)の磁化を反強磁性層などで固着し、もう一方の強磁性層(「フリー層」や「磁化自由層」などと称される)の磁化を外部磁界(たとえば媒体磁界)に応じて回転するようにした積層膜をいう。スピンバルブ膜では、ピン層とフリー層の磁化方向の相対角度が変化することによって、巨大な磁気抵抗変化が得られる。
【0004】
従来のスピンバルブ膜は、膜面に平行にセンス電流を通電するCIP(Current In Plane)−GMR素子であった。近年、CIP−GMR素子よりも大きなGMR効果を発現することから、膜面にほぼ垂直方向にセンス電流を通電するCPP(Current Perpendicular to the Plane)−GMR素子(以下、「CPP素子」と呼ぶ)が注目されている。
【0005】
これらの磁気抵抗効果素子を磁気ヘッドに応用することを考慮した場合、素子抵抗が高くなるとショットノイズおよび高周波応答の点で問題が生じる。素子抵抗に関しては、AR(通電面積×抵抗)で評価するのが妥当である。具体的には、200Gbpsi(Gigabit per square inch)の記録密度で、ARは1Ωμm2以下であることが必要とされている。
【0006】
このような要求に対して、CPP素子は、素子の抵抗が素子面積に依存し、素子を微細化した場合に抵抗変化量が増大するという利点を有し、磁気デバイスがますます微細化される傾向下では有利に適用できる。このような背景から、CPP素子およびそれを用いた磁気ヘッドは、200Gbpsi〜1Tbpsi(Terabit per square inch)の記録密度を実現するための有力候補と考えられる。ただし、非磁性金属からなるスペーサー層を用いたメタルCPP素子は、抵抗変化量自体かなり小さいため、大きな再生出力信号を得ることが困難である。
【0007】
この問題を一部解決するために、絶縁層中にこれを貫通する非磁性金属からなる微細な電流パス(電流狭窄部)を形成したスペーサー層を用いたCPP素子が提案されている。このようなCPP素子は、電流狭窄[CCP(Current-confined-path)]効果を示し、非磁性金属スペーサー層を用いた単純なCPP素子よりも大きな再生出力信号を得ることができる(以下、CCP−CPP素子という)。しかし、高記録密度対応の磁気ヘッド応用を考えた場合、CCP−CPP素子でもMR変化率が不足する可能性がある。
【0008】
そのため、高記録密度に対応できる巨大なMR変化率を実現する構造として、新たな機構のMR素子が熱望されている。
【特許文献1】特開2003−204095号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、従来とは全く異なる原理によって、低抵抗を維持したまま、高密度記録に対応した高いMR変化率が得られる磁気抵抗効果素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の実施形態に係る磁気抵抗効果素子は、3層以上の金属磁性層と、前記3層以上の金属磁性層の間に設けられた接続層と、前記金属磁性層および接続層に対して垂直方向に電流を通電させる電極とを具備し、前記3層以上の金属磁性層のうち最下層または最上層の金属磁性層は磁化方向が固着され、外部磁界がゼロのときに最下層の金属磁性層の磁化方向と最上層の金属磁性層の磁化方向がほぼ直交するように中間の金属磁性層の磁化方向がねじれていることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る磁気ヘッドは、上記の磁気抵抗効果素子を具備したことを特徴とする。本発明に係る磁気記録再生装置は、磁気記録媒体と、上記の磁気ヘッドとを具備したことを特徴とする。本発明に係る磁気メモリは、上記の磁気抵抗効果素子を具備したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の実施形態に係る磁気抵抗効果素子は、スピンのねじれた部分を電流が垂直に通電することによって、低抵抗ARを維持したまま、高密度記録に対応した高MR変化率を得ることができる。さらに、このような磁気抵抗効果素子を用いて、高密度記録に対応した磁気ヘッドおよびそれを搭載した磁気記録再生装置(Hard Disk Driveなど)や、高密度記録に対応した磁気メモリ(MRAM)を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1に本発明の一実施形態に係る磁気抵抗効果素子の斜視図を示す。図2に、図1においてMR変化率を生じさせる領域(以下、スプリングスピンバルブ膜という場合がある)を模式的に示す。
【0014】
図1の磁気抵抗効果素子は、下電極11、バッファ層12、反強磁性層13、強磁性層14、Ru層15、スプリングスピンバルブ膜16(金属磁性層1a、接続層2a、金属磁性層1b、接続層2b、金属磁性層1c)、キャップ層17、および上電極18を積層した構造を有する。
【0015】
この図では、スプリングスピンバルブ膜16は、金属磁性層1a、接続層2a、金属磁性層1b、接続層2b、および金属磁性層1cが積層された構造を有する。接続層2a、2bは、磁性酸化物または金属反強磁性体で形成されている。スプリングスピンバルブ膜16に含まれる、互いに隣接する2層の金属磁性層は、両層の間に挟まれた接続層を介して磁気的に弱く結合している。なお、図1では、反強磁性層13、強磁性層14およびRu層15の積層膜がピニング層として機能し(いわゆるシンセティックピニング層)、スプリングスピンバルブ膜16のうち最下層の金属磁性層1aの磁化を固着させる。図1の磁気抵抗効果素子において、電流は下電極11および上電極18を通して、両電極の間の積層膜の膜面に対して垂直方向に通電される。
【0016】
図2(A)〜(C)を参照して、外部磁化(媒体磁界)がゼロの場合および外部磁界(媒体磁界)が印加された場合の金属磁性層1a〜1cの磁化方向について説明する。
【0017】
最下層の金属磁性層1aは磁化方向が固着されてピン層として機能し、最上層の金属磁性層1cは外部磁界に応じて磁化方向が変化しフリー層として機能する。なお、最下層の金属磁性層1aと最上層の金属磁性層1cとの中間にある金属磁性層1bおよび接続層2a、2bの機能については、通常のスピンバルブ膜のようなピン層、スペーサー層またはフリー層としての機能に単純に分類できない。1つの見方をすれば、フリー層に近接して積層された接続層および金属磁性層はフリー層の一部として機能し、ピン層に近接して積層された接続層および金属磁性層はピン層の一部として機能する。別の見方をすれば、ピン層として機能する金属磁性層1aおよびフリー層として機能する金属磁性層1c以外は磁化方向がピン層ともフリー層とも微妙に異なるので、磁性をもつスペーサー層ということもできる。このように本発明の磁気抵抗効果素子においては、従来の定義にならってピン層、スペーサー層、フリー層を明確に定義するのが困難である。そこで、本明細書においては磁化方向が実質的に外部磁界を印加しても変化しない一層の金属磁性層をピン層(磁化固着層、ここでは1aのみ)、外部磁界を印加したときに最も磁化方向が変化する金属磁性層をフリー層(磁化自由層、ここでは1cのみ)と呼ぶことにする。
【0018】
図2(A)に示すように、外部磁界がゼロのときには、最上層の金属磁性層1cの磁化方向は最下層の金属磁性層1aの磁化方向とほぼ直交しており、最下層の金属磁性層1aと最上層の金属磁性層1cとの間にある中間の金属磁性層1bの磁化方向は少しねじれている。このように、3層以上の金属磁性層同士が互いに弱く磁気結合し、これら複数の金属磁性層の磁化方向がスプリング状に少しずつねじれているので、本発明の実施形態に係る磁気抵抗効果を積層スプリングスピンバルブ膜と命名している。
【0019】
図2(B)および(C)に示すように、外部磁界が印加されたときには、最上層の金属磁性層1cの磁化方向が外部磁界の方向に従って変化し、それに応じて中間の金属磁性層1bの磁化方向も変化する。そして、図2(B)に示す方向(ここでは+方向と表示する)の媒体磁界が印加され、最上層の金属磁性層1cの磁化方向と最下層の金属磁性層1aの磁化方向とが平行になった場合には、膜面垂直方向にセンス電流を通電したときに低抵抗になる(ただし、材料の組み合わせによっては、この磁化配列状態のときに高抵抗になる場合もある)。一方、図2(C)のように上記と反対方向(ここでは−方向と表示する)の媒体磁界が印加された場合には、最上層の金属磁性層1cの磁化方向と最下層の金属磁性層1aの磁化方向が反平行になり、膜面垂直方向にセンス電流を通電したときに高抵抗になる(ただし、材料の組み合わせによっては、この磁化配列状態のときに低抵抗になる場合もある)。
【0020】
以上のような原理により、本発明に係る磁気抵抗効果素子は、スピンバルブ膜としての実用的な動作と高いMR変化率とを両立できる。
【0021】
次に、本発明の磁気抵抗効果素子に用いられる材料について説明する。
【0022】
(i)下電極はCu、Au、Cr、Taなどから形成される。
【0023】
(ii)バッファ層(下地層)は下記のような材料から形成される。
【0024】
Ti,Ta,W,Cr,Mo,Nb,V,Zr,Hfからなる群より選択される金属またはこれらの金属を含む合金[厚さ3〜10nm]、
Ta[3〜5nm]/Ru[2nm]、
NiFeCr[3〜5nm]、
Ta[3nm]/NiFeCr[3〜5nm]、
Ta[3nm]/NiFe[3〜5nm]。
【0025】
(iii)ピニング層は下記のような材料から形成される。
【0026】
IrMn,PtMn,PdPtMnなどの反強磁性層、
CoPt,CoPrCr,FePtなどのハード層、
IrMn,PtMn,PdPtMnなどの反強磁性層/強磁性層/Ru、
CoPt,CoPrCr,FePtなどのハード層/強磁性層/Ru。
【0027】
たとえば、PtMn/CoFe[3nm]/Ruのような積層構造のピニング層は、Ruを介して上下の金属磁性層が反強磁性的に磁気結合するので、いわゆるシンセティックピニング層と呼ばれる。ピニング層としてはIrMn、PtMn、PdPtMnからなる単層ピニング層やハード層からなる単層ピニング層を用いてもよいが、シンセティックピニング層を用いればピン層の実質的なネット磁気モーメントをゼロにしてピン層からの漏洩磁界の影響を防ぐことができる。なお、シンセティックピニング層に含まれる強磁性層の材料は、後述するスプリングスピンバルブ膜中の金属磁性層の材料と同様のものを用いることができるので、その説明を参照されたい。
【0028】
シンセティックピニング層に含まれるRuより下に形成されている金属磁性層の膜厚は、Ruより上のスプリングスピンバルブ膜に含まれる金属磁性層の合計膜厚の1/2以下であることが望ましい。また、Ruより下に形成されている金属磁性層の膜厚は、1〜10nmであることが望ましく、1〜5nmであることがさらに望ましい。
【0029】
(iv)金属磁性層は下記のような材料から形成される。磁性層単層でもよいし、磁性層と非磁性層との積層膜でもよい。
【0030】
Fe、Co、Ni、Co−Fe、Ni−Fe、Ni−Co、Fe−Co−Ni、Coを含む合金、Niを含む合金、Feを含む合金、
(FeCo/Cu)×n周期、
(CoNi/Cu)×n周期、
(NiFe/Cu)×n周期、
(FeCoNi/Cu)×n周期。
【0031】
(FeCo/Cu)×nなどの積層膜では、FeリッチすなわちFe濃度が50%以上の磁性層を用いることが好ましい。このような金属磁性層では、バルク散乱を増す効果が得られる。Cuなどの非磁性層の膜厚は、上下の金属磁性層の磁気結合を強くするためにあまり厚くすることは好ましくなく、0.1nm〜1nmが好ましく、0.1nm〜0.5nmがより好ましい。また、CoMnGe,NiMnSb、CoMnAlなどのホイスラー合金材料を用いても構わない。
【0032】
また、以上の磁性材料に添加元素を添加してもよい。添加元素としては、Cu、Cr、Ti、V、Mn、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、W、Ptなどが挙げられる。特にFeCoにCuを添加したFeCoCu合金はバルク散乱効果が増すので好ましい。非磁性添加元素の濃度は、1〜50原子%が好ましく、2〜20原子%がより好ましい。また、これらの金属磁性材料を窒化したものを用いてもよい。
【0033】
金属磁性層の厚さtmは0.5nm〜10nmが望ましく、0.5nm〜5nmがより望ましい。複数の金属磁性層には、同じ材料を用いてもよいし、異なる材料を用いてもよい。ただし、ピニング層から離れた金属磁性層は、媒体磁界に対して容易に磁化回転する機能を有する必要があるので、NiFe、CoFe、NiCo、Fe、NiFeCo、CoFeNi合金や、これらに添加元素を添加して軟磁性材料で形成することが好ましい。一方、ピニング層に近い金属磁性層の材料は、軟磁性材料に限定する必要はなく、高いMR変化率を得るのに有利な磁性材料を用いることが好ましい。
【0034】
金属磁性層の層数が3層以上であれば、積層スプリングスピンバルブ膜としての機能を発揮する。金属磁性層の層数は、3層〜20層が好ましく、3層〜10層がより好ましい。金属磁性層の合計膜厚は、約3nm〜30nmが好ましく、約5nm〜20nmがより好ましい。金属磁性層の合計膜厚が厚すぎると、MR変化率は大きくなるが、抵抗も上昇するため、高周波応答の点で好ましくない。金属磁性層の合計膜厚が薄いと、磁気ヘッドやMRAMを作製するプロセス上の観点からは好ましい。しかし、金属磁性層の合計膜厚を薄くしすぎると、MR変化率が大きな値を示す材料が限定されるおそれがある。
【0035】
金属磁性層の結晶構造は、fcc構造の場合にはfcc(111)配向性、bcc構造の場合にはbcc(110)配向性、hcp構造の場合にはhcp(001)配向性またはhcp(110)配向性をもつことが望ましい。結晶配向性は、配向のばらつき角度が4.0°以内であることが望ましく、3.5°以内がより好ましく、3.0°以内がさらに好ましい。これは、例えばX線回折でθ−2θ測定により得られたピーク位置でのロッキングカーブの半値幅として測定可能な値である。磁気ヘッドにおいては、断面のナノディフラクションスポットの分散角度として検知することができる。
【0036】
(v)接続層は、それを挟む上下2層の金属磁性層の磁化方向を傾けて結合させるようなスプリング機能を発現する。このような機能は、接続層が完全な非磁性層だと実現することができない。接続層は、磁性をもつ層であることが必要であり、特に、原子レイヤー毎にスピン磁化配列が反平行状態になるようなアンチフェロ材料(反強磁性材料)、またはフェリ磁性をもつ材料(スピネル酸化物など)が好ましい。
【0037】
接続層に用いられる具体的な材料およびその膜厚を下記に示す。
【0038】
(v1)磁性酸化物
(v1a)反強磁性材料
α−Fe23を含む酸化物[0.5〜5nm]、
NiOを含む酸化物[0.5〜5nm]、
Co34を含む酸化物[0.5〜5nm]。
【0039】
(v1b)スピネル酸化物(反強磁性スピン配列をもつ)
MFe24(M=Fe,Co,Ni,Cu,Mn,Cr,V,Znなど)を含む酸化物[0.5〜5nm]、
γ−Fe34を含む酸化物[0.5〜5nm]。
【0040】
(v2)反強磁性的スピン配列を有する金属材料
Mn,Cr,V(少なくとも10atomic%以上)を含む合金[0.5〜5nm]、
IrMn,PrMn,PdPtMn,CrMn,NiMn,RuRhMn,RuMnなど[0.5〜5nm]。
【0041】
これらの金属材料に、Fe,Co,Ni,Cu,Cr,Ti,V,Mn,Zr,Nb,Mo,Hf,Ta,W,Al,Siなどの添加元素を加えてもよい。
【0042】
上記の材料からなる接続層の厚さが厚いと、その上下2層の金属磁性層の磁化方向のなす相対角度差は大きくなる。ここで、本発明とは概念が異なるものの、磁性酸化物層を介した上下2層の金属磁性層で磁化方向が角度をなす現象は、 H. Fukuzawa et al., J. Appl. Phys. 91, 6684 (2002) に開示されている。この論文は、酸素暴露量を増加させて磁性酸化物層の膜厚を増加させると、上下2層の金属磁性層の磁化方向がなす角度が、0°から、30°、60°、90°へと変化していくことを報告している。
【0043】
本発明の実施形態においては、3層以上の金属磁性層を用いてスピンバルブとしての機能を発揮させるので、媒体磁界が印加されない状態では、図2に示したように、1層の接続層を挟む上下2層の金属磁性層の磁化方向がなす角度(以下、磁化配列角度という場合がある)は0<θ<90°の範囲にある。2つの接続層が存在する場合には、単純には1層の接続層あたりの磁化配列角度は90°/2=45°になるが、2つの接続層の間で必ずしも磁化配列角度の値が同じでなくてもかまわない。好ましい磁化配列角度の範囲は、1層の接続層あたりで30°〜60°である。この範囲の磁化配列角度であれば、積層スプリングスピンバルブ膜としての機能を発揮しやすい。
【0044】
接続層は以下のような方法により形成することができる。
接続層を金属反強磁性体で形成する場合には、スパッタリング、MBE、CVD、蒸着、PLDなどで成膜することが考えられる。
【0045】
接続層を磁性酸化物で形成する場合には、金属材料をスパッタリング、MBE、CVD、蒸着などによって成膜した後に、酸化処理を施して金属材料を酸化物にする方法を用いることができる。酸化方法としては、自然酸化、ラジカル酸化、イオンビーム酸化、RFプラズマ酸化などが用いられる。酸化処理時に酸化活性を上げるために、UV照射や基板加熱などを行ってもよい。イオンビーム酸化を行う場合には、酸素ガスをイオンソースに導入するか、または酸素ガスを酸化チャンバーに直接導入してもよい。イオンビームの加速エネルギーは50〜100Vに設定することが好ましい。また、酸化物ターゲットを用い、RFスパッタリングやイオンビームデポジションなどを行ってもよい。
【0046】
(vi)キャップ層は下記のような材料から形成される。
【0047】
Cu[0〜10nm]/Ta[1〜5nm]
Cu[0〜10nm]/Ru[0〜10nm]。
【0048】
(vii)上電極は、下電極と同様に、Cu、Au、Cr、Taなどから形成される。
【0049】
本発明の実施形態に係る磁気抵抗効果素子を磁気ヘッドに適用する場合、スプリングスピンバルブ膜16の幅Wをトラック幅に対応させて加工する。幅Wは0.1μm以下、高記録密度のためには50nm以下に設定される。スプリングスピンバルブ膜16の奥行きhも幅Wとほぼ同じサイズに加工される。なお、フリー層の磁化方向をピン層の磁化方向と直交する方向にバイアスするために、例えばスプリングスピンバルブ膜16の横にハード層を設けるか、またはスプリングスピンバルブ膜16の上にインスタックバイアス層を設けてもよい。ただし、本発明の実施形態においては、必ずしもバイアス層を設ける必要はない。
【0050】
従来のスピンバルブ膜ではピン層とフリー層の間の磁気的結合は非常に弱く、フリー層の磁化方向を一方向にするためにはアバッテッド接合を用いたバイアス磁界印加膜を必ず用いる必要があった。しかし、本発明によるスプリングスピンバルブ膜では、ピン層(最も磁化固着層に近い金属磁性層)とフリー層(最も磁化固着層から離れた金属磁性層)の間が接続層を介して磁気的に結合しているため、フリー層の磁化方向がピン層の磁化で決定される。適切な接続層を用いることで、バイアス磁界印加膜を設けなくてもピン層とフリー層の磁化配列を90度になる。このようにバイアス磁界印加膜を設ける必要がなくなると、高密度記録の再生ヘッドとして、ヘッド構造が簡単になるというメリットが非常に大きい。高記録密度の再生ヘッドにおいては少なくとも80nm以下とトラック幅が小さくなるため、アバッテッド接合を作製するリフトオフプロセスが非常に難しくなるからである。また、バイアス磁界印加膜による磁界によってヘッドの再生感度が低下し、ヘッド出力はある程度は低下してしまっているが、本発明によってバイアス磁界印加膜を取り除くことが可能になると、バイアス磁界印加膜による出力低下の問題が解決されるため、バルクハウゼンノイズの発生ない良好なバイアス状態で、大きなヘッド出力を得ることが可能となる。つまり、高密度記録再生ヘッドに適した構造となる。
【0051】
本発明の実施形態に係る磁気抵抗効果素子を磁気メモリ(MRAM)に適用する場合、磁気ヘッドの場合よりも大きな素子サイズを採用することができ、スプリングスピンバルブ膜16の幅Wおよび奥行きhを1μm以下に加工すればよい。また、バイアス層は一般的には設けられず、スプリングスピンバルブ膜16の形状を工夫することによって一軸異方性を付与してスイッチング動作が可能にする。
【0052】
本発明の実施形態に係る磁気抵抗効果素子を用いれば、20〜1000%の高いMR変化率と、60〜1000mΩμm2の低いRAを実現することができる。
【0053】
図3(A)〜(C)を参照して、5層の金属磁性層1a〜1eと4層の接続層2a〜2dを含む積層スプリングスピンバルブ膜について、外部磁化(媒体磁界)がゼロの場合および外部磁界(媒体磁界)が印加された場合の金属磁性層の磁化方向について説明する。
【0054】
図3の積層スプリングスピンバルブ膜でも、基本的な原理は図2の場合と全く同様である。ただし、媒体磁界が印加されない状態においてピン層からフリー層までの5層の金属磁性層1a〜1eで磁化方向を90°回転させればよいので、1層の接続層を挟む2層の金属磁性層の磁化方向のなす角度(磁化配列角度)は、平均で90/4=22.5°となる。しかし、1層の接続層あたりの磁化配列角度は同じである必要はないので、磁化配列角度の好ましい範囲はやはり30°〜60°程度である。
【0055】
また、図2および図3のいずれでも共通であるが、異なる組成をもつ2層の金属磁性層を積層した場合には、その金属磁性層間の交換結合は極めて強いため一体の金属磁性層とみなすことができ、磁化配列角度に分散はないものと考えることができる。つまり、図2および図3における各々の金属磁性層を、金属磁性層の積層膜で形成してもよい。
【0056】
次に、図1の構造を有する磁気抵抗効果素子の具体例を説明する。膜構成は以下のとおりである。
【0057】
下電極(11):Cu
バッファ層(12):Ta[5nm]/NiFeCr[5nm]
ピニング層(13、14、15):PtMn[15nm]/CoFe[3nm]/Ru[1nm]
金属磁性層(1a):CoFe[2nm]
接続層(2a):Fe80Co20酸化物[1.5nm]
金属磁性層(1b):CoFe[2nm]
接続層(2b):Fe80Co20酸化物[1.5nm]
金属磁性層(1c):CoFe[1nm]/NiFe[3nm]
キャップ層(17):Cu[1nm]/Ru[5nm]
上電極(18):Cu。
【0058】
この磁気抵抗効果素子は以下のような方法により製造できる。基板上に下電極11となるCuを成膜してパターニングする。この基板を、DCマグネトロンスパッタリング装置に装入する。この装置は、スパッタリング室に真空バルブを介して接続された酸化室を有する。バッファ層12、ピニング層13、14、15、および金属磁性層1aを形成するために、Ta/NiFeCr、PtMn/CoFe/Ru、およびCoFeを成膜する。ここで、反強磁性層としてPtMnのかわりにIrMnを用いてもよい。IrMnは10nm程度の膜厚(PtMnの15nmよりも薄い)で用いることができるので、デバイス動作上のメリットがあり、高記録密度を実現するのに有利になる。
【0059】
接続層2aを形成するためにFe80Co20を1nmの厚さに成膜し、この段階で基板を酸化室に搬送して、イオンビーム酸化、RFプラズマ酸化またはラジカル酸化を行う。この酸化処理により、FeCoが酸化されてスピネル結晶構造を有するFeCo酸化物が形成される。接続層の厚さtcは0.5〜5nmが好ましく、1〜2nmがより好ましい。接続層の厚さがこの範囲であれば、1層の接続層あたりの磁化配列角度を30〜60°の範囲にすることができる。
【0060】
基板を再度スパッタリング室へ搬送し、金属磁性層1bを形成するためにCoFeを成膜する。その後、接続層2bを形成するために、FeCoを成膜した後、上記と同様に基板を酸化室に搬送して酸化する。基板を再度スパッタリング室に搬送し、金属磁性層1cおよびキャップ層17を形成するために、CoFe/NiFeおよびCu/Ruを成膜する。
【0061】
成膜後の基板を、290℃において、10kOe程度の磁場中で4時間熱処理する。その後、フォトリソグラフィーによってスプリングスピンバルブ膜の素子幅をトラック幅とほぼ等しくなるように微細加工する。具体的には、素子の一辺のサイズが100〜20nmになるようにパターニングする。このようなスプリングスピンバルブ膜では、60〜300mΩμm2程度の面積抵抗RAと、20%以上の高いMR変化率が得られる。
【0062】
以上では、接続層にFeCo系酸化物を用いた例を説明したが、接続層に金属反強磁性体たとえばIr22Mn78などを2nm程度の膜厚で用いることもできる。接続層に金属反強磁性層を用いた場合、FeCo系酸化物を用いた場合と比較して、CPP素子としての抵抗の上昇を避けることができるというメリットがある。高記録密度においては、高周波応答速度を上げるために素子抵抗をできるだけ下げることが重要である。具体的には、面積抵抗RAを40〜300mΩμm2程度に抑える必要がある。接続層に金属反強磁性体を用いた場合、40〜200mΩμm2の面積抵抗RAを容易に実現できるため、高周波応答速度の観点から望ましい。接続層にIrMnを用いた場合、約60mΩμm2の面積抵抗RAと、約20%という高いMR変化率を得ることができた。
【0063】
図2および図3に示したように、本発明の実施形態に係るスプリングスピンバルブ膜において全ての金属磁性層が磁気的に弱く結合した状態を実現するには、接続層の層数が2層以上であることが必要である。これは、接続層が1層のみでは、磁気結合の影響が大きくなりすぎるためである。すなわち、1層の接続層を挟む上下2層の金属磁性層どうしを金属磁性層内における磁気結合よりも弱く磁気結合させる接続層または非磁性層の層数を増加させることにより、図2および図3のように段階的にねじれた磁化回転を実現でき、スプリングスピンバルブ膜としての動作が可能となる。
【0064】
以下、本発明の実施形態に係る磁気抵抗効果素子の応用について説明する。
【0065】
図4および図5は、本発明の実施形態に係る磁気抵抗効果素子を磁気ヘッドに組み込んだ状態を示している。図4は、磁気記録媒体(図示せず)に対向する媒体対向面に対してほぼ平行な方向に磁気抵抗効果素子を切断した断面図である。図5は、この磁気抵抗効果素子を媒体対向面Pに対して垂直な方向に切断した断面図である。
【0066】
図4および図5に例示した磁気ヘッドは、いわゆるハード・アバッテッド(hard abutted)構造を有する。磁気抵抗効果膜10は、たとえば図1に示した構造を有するものである。磁気抵抗効果膜10の上下には、下電極11と上電極18とがそれぞれ設けられている。図4において、磁気抵抗効果膜10の両側面には、バイアス磁界印加膜21と絶縁膜22とが積層して設けられている。図5に示したように、磁気抵抗効果膜10の媒体対向面には保護層23が設けられている。
【0067】
磁気抵抗効果膜10に対するセンス電流は、その上下に配置された電極11、18によって矢印Aで示したように、膜面に対してほぼ垂直方向に通電される。また、左右に設けられた一対のバイアス磁界印加膜21、21により、磁気抵抗効果膜10にはバイアス磁界が印加される。このバイアス磁界により、磁気抵抗効果膜10のフリー層の磁気異方性を制御して単磁区化することによりその磁区構造が安定化し、磁壁の移動に伴うバルクハウゼンノイズ(Barkhausen noise)を抑制することができる(前述のように、金属磁性層および接続層の材料によっては、スプリングスピンバルブ膜においてバイアス磁界印加膜を取り除くことが可能な場合もある)。
【0068】
本発明によれば、磁気抵抗効果膜のMR変化率が向上しているので、磁気ヘッドに応用した場合に高感度の磁気再生が可能となる。
【0069】
図4および図5に示した磁気ヘッドは、記録再生一体型の磁気ヘッドアセンブリに組み込んで、磁気記録再生装置に搭載することができる。
【0070】
図6は、このような磁気記録再生装置の概略構成を例示する要部斜視図である。すなわち、本発明の磁気記録再生装置150は、ロータリーアクチュエータを用いた形式の装置である。同図において、磁気ディスク200は、スピンドル152に装着され、図示しない駆動装置制御部からの制御信号に応答する図示しないモータにより矢印Aの方向に回転する。本発明の磁気記録再生装置150は、複数の磁気ディスク200を備えたものとしてもよい。
【0071】
磁気ディスク200に格納する情報の記録再生を行うヘッドスライダ153は、サスペンション154の先端に取り付けられている。ヘッドスライダ153は、上述したいずれかの実施形態に係る磁気抵抗効果素子を含む磁気ヘッドをその先端付近に搭載している。
【0072】
磁気ディスク200が回転すると、ヘッドスライダ153の媒体対向面(ABS)は磁気ディスク200の表面から所定の浮上量をもって保持される。あるいはスライダが磁気ディスク200と接触するいわゆる「接触走行型」であってもよい。
【0073】
サスペンション154は、図示しない駆動コイルを保持するボビン部などを有するアクチュエータアーム155の一端に接続されている。アクチュエータアーム155の他端には、リニアモータの一種であるボイスコイルモータ156が設けられている。ボイスコイルモータ156は、アクチュエータアーム155のボビン部に巻き上げられた図示しない駆動コイルと、このコイルを挟み込むように対向して配置された永久磁石および対向ヨークからなる磁気回路とから構成される。
【0074】
アクチュエータアーム155は、スピンドル157の上下2箇所に設けられた図示しないボールベアリングによって保持され、ボイスコイルモータ156により回転摺動が自在にできるようになっている。
【0075】
図7は、アクチュエータアーム155から先の磁気ヘッドアセンブリをディスク側から眺めた拡大斜視図である。すなわち、磁気ヘッドアッセンブリ160は、例えば駆動コイルを保持するボビン部などを有するアクチュエータアーム155を有し、アクチュエータアーム155の一端にはサスペンション154が接続されている。
【0076】
サスペンション154の先端には、上述したいずれかの実施形態に係る磁気抵抗効果素子を含む磁気ヘッドを具備するヘッドスライダ153が取り付けられている。サスペンション154は信号の書き込みおよび読み取り用のリード線164を有し、このリード線164とヘッドスライダ153に組み込まれた磁気ヘッドの各電極とが電気的に接続されている。図中165は磁気ヘッドアッセンブリ160の電極パッドである。
【0077】
本発明によれば、上述した本発明の実施形態に係る磁気抵抗効果素子を含む磁気ヘッドを具備することにより、従来よりも高い記録密度で磁気ディスク200に磁気的に記録された情報を確実に読み取ることが可能となる。
【0078】
次に、本発明の実施形態に係る磁気抵抗効果素子を搭載した磁気メモリについて説明する。すなわち、本発明の実施形態に係る磁気抵抗効果素子を用いて、例えばメモリセルがマトリクス状に配置されたランダムアクセス磁気メモリ(magnetic random access memory、MRAM)などの磁気メモリを実現できる。
【0079】
図8は、本発明の実施形態に係る磁気メモリのマトリクス構成の一例を示す図である。この図は、メモリセルをアレイ状に配置した場合の回路構成を示す。アレイ中の1ビットを選択するために、列デコーダ350、行デコーダ351が備えられており、ビット線334とワード線332によりスイッチングトランジスタ330がオンになり一意に選択され、センスアンプ352で検出することにより磁気抵抗効果素子10中の磁気記録層(フリー層)に記録されたビット情報を読み出すことができる。ビット情報を書き込むときは、特定の書き込みワード線323とビット線322に書き込み電流を流して発生する磁場を印加する。
【0080】
図9は、本発明の実施形態に係る磁気メモリのマトリクス構成の他の例を示す図である。この場合、マトリクス状に配線されたビット線322とワード線334とが、それぞれデコーダ360、361により選択されて、アレイ中の特定のメモリセルが選択される。それぞれのメモリセルは、磁気抵抗効果素子10とダイオードDとが直列に接続された構造を有する。ここで、ダイオードDは、選択された磁気抵抗効果素子10以外のメモリセルにおいてセンス電流が迂回することを防止する役割を有する。書き込みは、特定のビット線322と書き込みワード線323とにそれぞれに書き込み電流を流して発生する磁場により行われる。
【0081】
図10は、本発明の実施形態に係る磁気メモリの要部を示す断面図である。図11は、図10のA−A’線に沿う断面図である。これらの図に示した構造は、図8または図9に示した磁気メモリに含まれる1ビット分のメモリセルに対応する。このメモリセルは、記憶素子部分311とアドレス選択用トランジスタ部分312とを有する。
【0082】
記憶素子部分311は、磁気抵抗効果素子10と、これに接続された一対の配線322、324とを有する。磁気抵抗効果素子10は、上述した実施形態に係る磁気抵抗効果素子である。
【0083】
一方、選択用トランジスタ部分312には、ビア326および埋め込み配線328を介して接続されたトランジスタ330が設けられている。このトランジスタ330は、ゲート332に印加される電圧に応じてスイッチング動作をし、磁気抵抗効果素子10と配線334との電流経路の開閉を制御する。
【0084】
また、磁気抵抗効果素子10の下方には、書き込み配線323が、配線322とほぼ直交する方向に設けられている。これら書き込み配線322、323は、例えばアルミニウム(Al)、銅(Cu)、タングステン(W)、タンタル(Ta)あるいはこれらいずれかを含む合金により形成することができる。
【0085】
このような構成のメモリセルにおいて、ビット情報を磁気抵抗効果素子10に書き込むときは、配線322、323に書き込みパルス電流を流し、それら電流により誘起される合成磁場を印加することにより磁気抵抗効果素子の記録層の磁化を適宜反転させる。
【0086】
また、ビット情報を読み出すときは、配線322と、磁気記録層を含む磁気抵抗効果素子10と、下電極324とを通してセンス電流を流し、磁気抵抗効果素子10の抵抗値または抵抗値の変化を測定する。
【0087】
本発明の実施形態に係る磁気メモリは、上述した実施形態に係る磁気抵抗効果素子を用いることにより、セルサイズを微細化しても、記録層の磁区を確実に制御して確実な書き込みを確保でき、且つ、読み出しも確実に行うことができる。
【0088】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、磁気抵抗効果膜の具体的な構造や、その他、電極、バイアス印加膜、絶縁膜などの形状や材質に関しては、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる。
【0089】
例えば、磁気抵抗効果素子を再生用磁気ヘッドに適用する際に、素子の上下に磁気シールドを付与することにより、磁気ヘッドの検出分解能を規定することができる。
【0090】
また、本発明は、長手磁気記録方式のみならず垂直磁気記録方式の磁気ヘッドあるいは磁気再生装置についても同様に適用して同様の効果を得ることができる。
【0091】
さらに、本発明の磁気再生装置は、特定の記録媒体を定常的に備えたいわゆる固定式のものでも良く、一方、記録媒体が差し替え可能ないわゆる「リムーバブル」方式のものでも良い。
【0092】
その他、本発明の実施形態として上述した磁気ヘッドおよび磁気記憶再生装置を基にして、当業者が適宜設計変更して実施しうるすべての磁気抵抗効果素子、磁気ヘッド、磁気記憶再生装置および磁気メモリも同様に本発明の範囲に属する。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明の実施形態に係る磁気抵抗効果素子の斜視図。
【図2】本発明の実施形態に係る磁気抵抗効果素子に印加される外部磁化がゼロの場合および媒体磁界が印加された場合の金属磁性層の磁化方向について説明する図。
【図3】本発明の他の実施形態に係る磁気抵抗効果素子に印加される外部磁化がゼロの場合および媒体磁界が印加された場合の金属磁性層の磁化方向について説明する図。
【図4】本発明の実施形態に係る磁気ヘッドの断面図。
【図5】本発明の実施形態に係る磁気ヘッドの断面図。
【図6】本発明の実施形態に係る磁気記録再生装置の斜視図。
【図7】本発明の実施形態に係る磁気ヘッドアセンブリの斜視図。
【図8】本発明の実施形態に係る磁気メモリのマトリクス構成の一例を示す図。
【図9】本発明の実施形態に係る磁気メモリのマトリクス構成の他の例を示す図。
【図10】本発明の実施形態に係る磁気メモリの要部を示す断面図。
【図11】図10のA−A’線に沿う断面図。
【符号の説明】
【0094】
1a〜1e…金属磁性層、2a〜2d…接続層、10…磁気抵抗効果素子、11…下電極、12…バッファ層、13…反強磁性層、14…強磁性層、15…Ru層、16…スプリングスピンバルブ膜、17…キャップ層、18…上電極、21…バイアス磁界印加膜、22…絶縁膜、23…保護層、150…磁気記録再生装置、152…スピンドル、153…ヘッドスライダ、154…サスペンション、155…アクチュエータアーム、156…ボイスコイルモータ、157…スピンドル、160…磁気ヘッドアッセンブリ、164…リード線、200…磁気記録磁気ディスク、311…記憶素子部分、312…アドレス選択用トランジスタ部分、312…選択用トランジスタ部分、321…磁気抵抗効果素子、322…ビット線、322…配線、323…ワード線、323…配線、324…下部電極、326…ビア、328…配線、330…スイッチングトランジスタ、332…ゲート、332…ワード線、334…ビット線、334…ワード線、350…列デコーダ、351…行デコーダ、352…センスアンプ、360…デコーダ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3層以上の金属磁性層と、前記3層以上の金属磁性層の間に設けられた接続層と、前記金属磁性層および接続層に対して垂直方向に電流を通電させる電極とを具備し、
前記3層以上の金属磁性層のうち最下層または最上層の金属磁性層は磁化方向が固着され、外部磁界がゼロのときに最下層の金属磁性層の磁化方向と最上層の金属磁性層の磁化方向がほぼ直交するように中間の金属磁性層の磁化方向がねじれていることを特徴とする磁気抵抗効果素子。
【請求項2】
前記3層以上の金属磁性層のうち、1層の接続層を挟む2層の金属磁性層の磁化方向は30〜60°の角度をなすことを特徴とする請求項1に記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項3】
前記接続層は、厚さが0.5nm以上5.0nm以下の、Co、Fe、Ni、MnおよびCrからなる群より選択される少なくとも一つの元素を含む磁性酸化物または磁性窒化物で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項4】
前記接続層は、α−Fe23、またはスピネル結晶構造もしくは逆スピネル結晶構造を有するγ−Fe23もしくはXFe24(X=Fe,Co,Ni,Mn,Cr)で形成されていることを特徴とする請求項3に記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項5】
前記接続層は、厚さが0.5nm以上5nm以下の、金属反強磁性体で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項6】
前記接続層は、MnおよびXMn(ここでXはNi、Ir,Pt,Pd,Cr、Ru,またはRh)からなる群より選択される金属反強磁性体で形成されていることを特徴とする請求項5に記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項7】
前記金属磁性層は、厚さが0.5nm以上5nm以下の、Co、FeおよびNiからなる群より選択される少なくとも一つの元素を含む材料で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1項に記載の磁気抵抗効果素子を具備したことを特徴とする磁気ヘッド。
【請求項9】
磁気記録媒体と、請求項8に記載の磁気ヘッドとを具備したことを特徴とする磁気記録再生装置。
【請求項10】
請求項1ないし7のいずれか1項に記載の磁気抵抗効果素子を具備したことを特徴とする磁気メモリ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−332340(P2006−332340A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−154023(P2005−154023)
【出願日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】