移動局の状態検出システム
【課題】移動局を設けた設置対象の状態を推定する。
【解決手段】移動局タグTは偏波方向が固定であるタグアンテナ32を備える。固定局リーダRは、互いに交差する2つの偏波面を生成可能な備えたリーダアンテナ12と、電波信号の受信時刻を検出する到来時間検出部19と、リーダアンテナ12の2つの偏波方向における受信信号強度をそれぞれ検出するRSSI部17とを備える。管理サーバSは、到来時間検出部19で検出した受信時刻に基づき移動局タグTから固定局リーダRまでの距離を検出し、かつRSSI部17で検出した2つの偏波方向での受信信号強度に基づき移動局タグTの姿勢を検出し、それら距離及び姿勢検出結果に応じ移動局タグTの状態判定を行う。
【解決手段】移動局タグTは偏波方向が固定であるタグアンテナ32を備える。固定局リーダRは、互いに交差する2つの偏波面を生成可能な備えたリーダアンテナ12と、電波信号の受信時刻を検出する到来時間検出部19と、リーダアンテナ12の2つの偏波方向における受信信号強度をそれぞれ検出するRSSI部17とを備える。管理サーバSは、到来時間検出部19で検出した受信時刻に基づき移動局タグTから固定局リーダRまでの距離を検出し、かつRSSI部17で検出した2つの偏波方向での受信信号強度に基づき移動局タグTの姿勢を検出し、それら距離及び姿勢検出結果に応じ移動局タグTの状態判定を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動局と基地局との間で行なわれる無線通信の結果に基づき、移動局の状態を検出する移動局の状態検出システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
無線通信機能を備えた移動局を、移動する物品などの設置対象に取り付け、この移動局に対する固定側からの無線通信結果に基づき、設置対象の向きや姿勢を検出するものとして、例えば特許文献1記載の技術が既に提唱されている。
【0003】
この従来技術では、荷物やボール等の設置対象に対し、所定の配置態様で複数の無線タグ回路素子(移動局)が設けられている。そして、アンテナを介したそれら複数の無線タグ回路素子との通信結果に基づき、制御装置のCPUが荷物やボール等の姿勢(正立しているか横倒しになっているか、回転しているか等)を検出するようになっている。
【0004】
【特許文献1】特開2007−80102号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来技術では、移動局の設置対象がどのような姿勢となっているかを検出することはできる。しかしながら、(例えばある程度広い領域の中で)設置対象がどの位置においてその姿勢をとっているのかはわからなかった。すなわち、設置対象の姿勢と位置との両方の検出は困難であり、このため当該設置対象の正確な状態を推定するのが困難であるという問題があった。
【0006】
本発明の目的は、設置対象の姿勢及び位置の両方を検出することで、設置対象の状態を推定することができる、移動局の状態検出システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、第1の発明は、所定の移動可能領域を移動可能な移動局と、既知の位置に固定に配置された基地局と、前記移動局から送信され前記基地局で受信した電波信号に基づき、前記移動局の状態判定を行う状態判定手段とを有する移動局の状態検出システムであって、前記移動局は、偏波面が固定の直線偏波である送信アンテナ手段と、前記送信アンテナ手段を介し電波信号を送信する第1送信部と、電波信号を受信する第1受信部とを備えており、前記基地局は、電波信号を送信する第2送信部と、互いに交差する2つの偏波面を生成可能な受信アンテナ手段と、前記受信アンテナ手段を介し電波信号を受信する第2受信部と、前記第2受信部で受信した電波信号の到来時間を検出する到来時間検出部と、前記受信アンテナ手段で生成された前記2つの偏波面における前記受信部での受信信号強度をそれぞれ検出する強度検出手段とを備えており、前記状態判定手段は、前記基地局の前記到来時間検出部で検出した前記到来時間に基づき、前記移動局から前記基地局までの距離検出処理を行う距離検出手段と、前記強度検出手段で検出した前記2つの偏波面での前記受信信号強度の大小に基づき、前記移動局の姿勢検出処理を行う姿勢検出手段とを備え、前記距離検出手段の検出結果と前記姿勢検出手段の検出結果とに応じて、前記移動局の状態判定を行うことを特徴とする。
【0008】
移動局の送信アンテナ手段から電波信号が送信されると、その電波信号が基地局の第2受信部にて受信され、このときの電波信号の到来時間が到来時間検出部で検出される。これにより、移動局と基地局との時計合わせを行わず複数の基地局同士で時計あわせを行う場合(いわゆるTDOA方式)には、同一の電波信号に対する各基地局の受信時刻同士の比較(言い換えれば到来時間同士の比較)により、状態判定手段の距離検出手段で距離検出処理を行うことができる。移動局と基地局との時計合わせを行う場合(いわゆるTOA方式)には、移動局の送信時刻と基地局の受信時刻とにより移動局から基地局までの到来時間(伝搬時間)を算出し、これに基づき状態判定手段の距離検出手段で距離検出処理を行うことができる。
【0009】
ここで、無線通信における電波信号の送受信においては、(同一送信強度の条件では)送信側と受信側との偏波面の方向が一致しているほど受信側での受信信号強度が大きくなり、送信側と受信側との偏波面の方向が不一致となる(ずれる)ほど受信側での受信信号強度が小さくなる。本願第1発明では、移動局の送信アンテナ手段の偏波面が固定の直線偏波であるのに対し、基地局の受信アンテナ手段では互いに交差する2つの偏波面が生成可能である。そして各偏波面における受信信号強度が強度検出手段で検出される。この結果、受信アンテナ手段の一方の偏波面での受信信号強度が、交差する他方の偏波面での受信信号強度よりも大きければ、送信アンテナ手段の偏波面の方向は当該受信アンテナ手段の一方の偏波面に近い方向であることが推定される。上記のように送信側アンテナ手段の偏波面は移動局において固定であることから、この推定された送信アンテナ手段の偏波面の方向は、移動局自体の姿勢に一対一に対応しているはずである。そこで、本願第1発明においては、上記2つの偏波面における受信信号強度の大小(いずれの偏波面において受信信号強度が大であったか)に応じて、状態判定手段の姿勢検出手段が移動局(言い換えれば設置対象。以下同様)の姿勢検出処理を行う。
【0010】
以上のようにして、距離検出手段によって移動局の位置検出(基地局から移動局までの距離検出)を行え、姿勢検出手段によって移動局の姿勢検出を行うことができる。この結果、移動局を所定の設置対象(人間や物体)の適宜の部位に設けることで、当該設置対象の状態(人間の着座・横臥状態や物体の正立・横転状態等)を推定することが可能となる。
【0011】
第2発明は、上記第1発明において、前記基地局は3局以上配設されており、前記距離検出手段は、前記3局以上の基地局それぞれの前記到来時間検出部で検出した前記移動局の到来時間に基づき、前記移動局の位置を判定する位置判定手段であり、前記状態判定手段は、前記姿勢検出手段による前記移動局の姿勢検出処理と、前記位置判定手段による前記位置判定を、同時に行うことを特徴とする。
【0012】
3局以上の基地局での検出結果に基づき移動局の位置を位置判定手段で精度よく判定できるので、姿勢検出手段で検出した姿勢と併せ、設置対象の状態を精度よく推定することが可能となる。
【0013】
第3発明は、上記第2発明において、前記3局以上の基地局を構成する基地局ごとに、前記強度検出手段での前記2つの偏波面での前記受信信号強度の大小比較結果を取得する受信信号強度取得手段を有し、前記姿勢検出手段は、前記受信信号強度取得手段で取得した、各基地局ごとの前記大小比較結果に基づき、前記移動局の姿勢を決定することを特徴とする。
【0014】
基地局を複数局設けた場合、各基地局における2つの偏波面での受信信号強度の大小が、全局で完全に一致せずばらついたり、特定の基地局がマルチパスによる影響を受け本来とは異なる結果となる可能性がある。そこで本願第3発明においては、(このような複数基地局での差異の存在を前提として)基地局ごとの2つの偏波面での受信信号強度の大小結果を受信信号強度取得手段で取得し、それらを集計した各基地局ごとの大小比較結果に基づいて、姿勢検出手段が移動局の姿勢を検出する。これにより、上記ばらついた受信信号強度の大小比較結果の中から適宜のものを選択したり、上記マルチパスの影響を受けた基地局での大小比較結果を除外する等が可能となるので、さらに精度のよい姿勢検出を行うことができる。
【0015】
第4発明は、上記第3発明において、前記姿勢検出手段は、前記3局以上の基地局における前記大小比較結果が全局で一致しなかった場合、所定の優先度に沿って少なくとも1つの前記大小比較結果を選択し、当該選択された大小比較結果に応じて前記移動局の姿勢を決定することを特徴とする。
【0016】
これにより、各基地局における2つの偏波面での受信信号強度の大小が、全局で完全に一致せずばらついた場合であっても、あらかじめ設定された所定の優先度に沿って受信信号強度の大小比較結果を選択し、これを用いて姿勢検出を行うことで、確実に高精度の姿勢検出を行うことができる。
【0017】
第5発明は、上記第4発明において、前記姿勢検出手段は、前記位置判定手段で判定された前記移動局の位置と各基地局の位置とにより決定される、前記所定の優先度に沿って、前記少なくとも1つの大小比較結果を選択し、当該選択された大小比較結果に応じて前記移動局の姿勢を決定することを特徴とする。
【0018】
移動局の送信アンテナ手段は、アンテナ種類によって固有の指向性がある(例えばダイポールアンテナの場合にはドーナッツ状の指向性となる)。このため、その固有の指向性の態様(形状)によっては、ある位置の基地局では2つの偏波面での受信信号強度の大小比較結果が本来検出したい移動局の姿勢に良好に対応するが、別の位置の基地局では2つの偏波面での受信信号強度の大小比較結果が本来検出したい移動局の姿勢にあまり良好に対応しない可能性がある。そこで本願第5発明においては、移動局と各基地局の位置とに応じて所定の優先度を決定しておき、その優先度に沿って受信信号強度の大小比較結果を選択し姿勢検出を行う。これにより、最適な基地局での大小比較結果を利用し、確実に高精度の姿勢検出を行うことができる。
【0019】
第6発明は、上記第2乃至第5発明のいずれかにおいて、前記基地局は、前記受信アンテナ手段を前記2つの偏波面にそれぞれ切り替え制御する偏波面制御手段を有し、前記強度検出手段は、前記偏波面制御手段により切り替えられた前記2つの偏波面における前記受信部での受信信号強度をそれぞれ検出することを特徴とする。
【0020】
偏波面制御手段は受信アンテナ手段を互いに交差する2つの偏波面に切り替え可能である。そして、互いに交差する2つの偏波面に切り替えられるごとに、各偏波面における受信信号強度が強度検出手段で検出される。この結果、検出される強度の大小に基づき、送信アンテナ手段の偏波面の方向を、当該受信アンテナ手段の偏波面との関係において推定することができる。
【0021】
第7発明は、上記第2乃至第6発明のいずれかにおいて、前記基地局の到来時間検出部は、前記第1送信部から送信され前記第2受信部で受信された距離検出用の前記電波信号の到来時間を検出し、前記状態判定手段の前記位置判定手段は、前記距離検出用電波信号に基づき前記到来時間検出部で検出された到来時間に基づき、前記位置判定を行い、前記基地局の前記強度検出手段は、前記距離検出用の電波信号の送信後に、前記第1送信部から送信された偏波面探索用の電波信号が、前記切り替えられた前記2つの偏波面を介し前記受信部で受信されたときの受信信号強度をそれぞれ検出し、前記状態判定手段の前記姿勢検出手段は、前記偏波面探索用電波信号に基づき前記強度検出手段で検出された受信信号強度の大小に基づき、前記姿勢検出処理を行うことを特徴とする。
【0022】
移動局が移動中であれば、その移動動作によって姿勢が刻々と変化し、静的な姿勢を検出するのは困難である可能性が高い。そこで本願第3発明においては、まず、距離検出用の電波信号を第1送信部より送信してその到来時間に基づき位置判定手段で位置判定を行い、その後偏波面探索用の電波信号を第1送信部より送信してその受信信号強度に基づき姿勢検出手段で姿勢検出処理を行うようにする。このように処理を前後2つに分けることにより、最初の位置判定によって位置が時間的に変化する、すなわち移動局が移動していることが検出されている場合には、偏波面探索用の電波信号を送信せず姿勢検出処理を行わないようにすることが可能となる。これにより、無駄な姿勢検出処理を行うのを防止し、制御の安定化や通信効率の向上を図ることができる。
【0023】
第8発明は、上記第7発明において、前記基地局は、前記移動局の前記第1送信部へ前記距離検出用電波信号を要求するための距離検出用送信要求信号を送信した後、前記移動局の前記第1送信部へ前記偏波面探索用電波信号を要求するための偏波面探索用送信要求信号を送信するように、前記第2送信部を制御する送信制御手段を有することを特徴とする。
【0024】
基地局の第2送信部から距離検出用送信要求信号を送信し、これに応じる形で移動局の第1送信部から距離検出用電波信号を送信させて位置判定を行う。また同様に、基地局の第2送信部から偏波面探索用送信要求信号を送信し、これに応じる形で移動局の第1送信部から偏波面探索用電波信号を送信させて姿勢検出処理を行う。このように、基地局からの要求にその都度応じて移動局側から電波信号を送信させることにより、基地局から常時電波信号を送信する場合に比べ、無駄を省きつつ通信を円滑かつ効率的に行うことができる。
【0025】
第9発明は、上記第8発明において、前記送信制御手段の制御に基づく前記第2送信部からの前記距離検出用送信要求信号の送信後、前記位置判定手段による前記位置判定結果に基づき、前記移動局が静止状態であるかどうかを判定する静止判定手段を有し、前記送信制御手段は、前記静止判定手段で前記移動局が静止状態であると判定された場合に、前記偏波面探索用送信要求信号を送信するように前記第2送信部を制御することを特徴とする。
【0026】
最初の位置判定によって移動局が移動していることが検出された場合には、静止判定手段の判定が満たされず、偏波面探索用の電波信号を送信せず姿勢検出処理を行わない。これにより、無駄な姿勢検出処理を行うのを確実に防止し、制御の安定化や通信効率の向上を図ることができる。
【0027】
第10発明は、上記第2乃至第9発明のいずれかにおいて、前記基地局の受信アンテナ手段は、互いに偏波面の向きが直交するように配置された2つの受信アンテナを備えており、前記偏波面制御手段は、前記2つの受信アンテナと前記第2受信部とを選択的に接続する切替手段を備えることを特徴とする。
【0028】
偏波面の向きがある方向である1つの受信アンテナと、偏波面の向きがそのアンテナとは直交する方向である別の受信アンテナとを用意し、それらを選択的に切り替えて第2受信部と接続する。これにより、受信アンテナ手段における直交する2つの偏波面の切り替えを実現することができる。また、アンテナの単純な切り替えだけで足りることから、1つのアンテナにおける偏波面方向の制御を行う場合に比べ、制御を簡素化することができる。
【0029】
第11発明は、上記第2乃至第9発明のいずれかにおいて、前記基地局の受信アンテナ手段は、偏波面の向きを、互いに直交する2つの方向に切り替え可能な1つの受信アンテナであり、前記偏波面制御手段は、前記1つの受信アンテナの前記偏波面を前記直交する2つの偏波面にそれぞれ切り替え制御することを特徴とする。
【0030】
1つの受信アンテナの偏波面の向きを切り替え制御することで、受信アンテナ手段における直交する2つの偏波面の切り替えを実現することができる。また、2つの受信アンテナを切り替えて第2受信部に接続する場合に比べ、アンテナが1つで足りることから、基地局の構成部品数を低減でき小型化も可能となる。
【0031】
第12発明は、上記第10又は第11発明において、前記状態判定手段の前記姿勢検出手段における姿勢検出結果に応じて、対応する報知を行うための報知信号を出力する報知信号生成手段を有することを特徴とする。
【0032】
これにより、例えば移動局の状態が(想定されていない)異常な挙動を示した場合等において、その旨を直ちに管理者等に対し報知することが可能となる。
【0033】
第13発明は、上記第10乃至第12発明のいずれかにおいて、前記状態判定手段は、少なくとも、前記位置判定手段の判定結果及び前記姿勢検出手段の検出結果と、時刻情報とに応じて、前記移動局の状態判定を行うことを特徴とする。
【0034】
これにより、移動局の状態を時間の流れ(午前か午後か、その他具体的な時刻、期日等)と関連づけて管理することが可能となる。
【0035】
第14発明は、上記第13発明において、前記状態判定手段は、前記位置判定手段の判定結果と前記時刻情報とに基づき算出される、前記移動局の移動量に基づき、前記移動局の状態判定を行うことを特徴とする。
【0036】
これにより、移動局の状態を、その移動量や移動速度と関連づけて管理することが可能となる。また例えば、移動局の移動量や移動速度が(想定されている)所定の範囲を逸脱するような異常な挙動を示した場合等において、その旨を直ちに管理者等に対し報知することも可能となる。
【0037】
第15発明は、上記第13又は第14発明において、前記状態判定手段は、あらかじめ設定された移動パターン情報又はあらかじめ検出され蓄積された移動履歴情報に応じて、前記移動局の状態判定を行うことを特徴とする。
【0038】
これにより、移動局の状態を、あらかじめ設定された移動パターンや蓄積された移動履歴と関連づけて管理することが可能となる。例えば、移動局の挙動がそれら移動パターンや移動履歴から大きく逸脱している場合には、その旨を直ちに管理者等に対し報知することも可能となる。
【0039】
第16発明は、上記第13乃至第15発明のいずれかにおいて、前記状態判定手段は、前記時刻情報に従ってあらかじめ定められた移動予定情報又は姿勢予定情報に応じて、前記移動局の状態判定を行うことを特徴とする。
【0040】
これにより、移動局の状態を、あらかじめ定められた移動予定や姿勢予定と関連づけて管理することが可能となる。そして、移動局の移動や姿勢がそれらの予定と異なっている場合には、その旨を直ちに管理者等に対し報知することも可能である。
【0041】
第17発明は、上記第13乃至第16発明のいずれかにおいて、前記状態判定手段は、前記位置判定手段の判定結果及び前記姿勢検出手段の検出結果と、前記所定の移動可能領域の地図情報とに基づき、前記移動局の状態判定を行うことを特徴とする。
【0042】
地図情報を参照して判定を行うことで、地図上に表されるどの場所に移動局が存在し、その場所で移動局がどのような姿勢にあるかを検出することができるので移動局の位置・姿勢状態を正しく判定することができる(例えば同じ横向きでもベッドなら寝ているがトイレでは倒れているなどの判定が可能となる)。
【発明の効果】
【0043】
本発明によれば、設置対象の姿勢及び位置の両方を検出することで、設置対象の状態を推定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
以下、本発明の一実施の形態を図面を参照しつつ説明する。なお、この実施形態では、前述のTDOA方式により距離検出を行う場合を例にとって説明する。
【0045】
図1は、本発明の移動局の状態検出システムの一実施形態である、入院患者管理システムの全体構成を概略的に示す説明図である。
【0046】
図1において、この例では、本実施形態の入院患者管理システム1を、病院病棟の1フロア(患者Mが通常移動可能な範囲)全体に適用した場合を示している。当該フロアにある病室と、トイレと、休憩室と、検査室と、食堂と、それら複数の部屋を連絡する廊下とが、管理対象領域(所定の移動可能領域)となっている。また、それらとは別に、管理担当の操作者(図示せず、以下管理者という)が待機する管理室が、同じフロアに設けられている。上記病室内に設置されたベッドの一つを割り当てられた特定の患者M(この例では一人)が、この入院患者管理システム1の管理対象として設定されている。
【0047】
そして、本実施形態の入院患者管理システム1は、管理対象の患者Mが所持する移動局タグ(移動局)Tと、フロア内で上記管理対象領域となる各部屋に設置された複数(図示の例では5つ)の固定局リーダ(基地局)R1,R2,R3,R4,R5と、管理室内に設置されて上記各固定局リーダR1〜R5と通信ネットワークNWを介して接続されている管理サーバSとを有している。
【0048】
各固定局リーダR1〜R5は、各部屋の例えば壁面に設置され、互いに同じ構成となっている。そして、各固定局リーダR1〜R5は、管理対象領域内を患者Mとともに移動する移動局タグTに対し、無線通信を介して情報を送受信できるようになっている(詳細については後述する)。
【0049】
管理サーバSは、当該フロアの地図情報と入院患者のスケジュール情報とを記憶している。そして管理サーバSは、各固定局リーダR1〜R5にそれぞれ検出させた移動局タグTまでの距離に基づく、移動局タグTのフロア内存在位置(つまり患者Mの存在位置)の監視(検出)を(例えば所定時間ごとに)行う。また管理サーバSは、各固定局リーダR1〜R5に検出させた移動局タグTの姿勢(つまり患者Mの身体の姿勢)の監視も(必要に応じて適宜)併せて行う。そして、管理サーバSは、それら監視結果に応じた報知処理を実行する(詳しくは後述する)。なお、管理対象領域には例えば平面座標系が設定され、あらかじめ各部屋が占有する座標領域及び各固定局リーダR1〜R5の設置位置が図1に示すような地図情報として管理サーバSに記憶されている。
【0050】
図2は、本実施形態の入院患者管理システム1の機能的構成を表す機能ブロック図である。なお、図示の煩雑を回避するために固定局リーダは一つのみ示す。
【0051】
図2において、入院患者管理システム1は、前述したように、患者Mが所持する上記移動局タグTと、この移動局タグTと無線通信を行う上記複数の固定局リーダR1〜R5と、これら固定局リーダR1〜R5に適宜の通信ネットワークNWでそれぞれ接続された上記管理サーバSとを有している。
【0052】
固定局リーダR1〜R5(以下、単体を指す場合は単に「固定局リーダR」と称する)は、リーダ本体部11と、リーダアンテナ(1つの受信アンテナ、受信アンテナ手段)12とを有している。
【0053】
リーダ本体部11は、水平偏波制御部13と、垂直偏波制御部14と、偏波合成部15と、無線部(第2送信部、第2受信部)16と、RSSI部(強度検出手段)17と、ネットワーク通信制御部18と、時計部19Aと、到来時間検出部19と、制御部(偏波面制御手段、送信制御手段)20とを有する。
【0054】
水平偏波制御部13及び垂直偏波制御部14は、リーダアンテナ12が送受する電波信号の水平偏波成分と垂直偏波成分をそれぞれ制御する。偏波合成部15は、上記水平偏波制御部13及び垂直偏波制御部14からのそれぞれの受信信号を一つに合成(又は一つの送信信号を各偏波成分に分割)する。無線部16は、電波信号を送受信するための変調、復調、増幅などの無線機能を実行する。RSSI部17は、受信信号の信号強度を検出する。
【0055】
ネットワーク通信制御部18は、上記通信ネットワークNWを介して管理サーバSとの制御信号及び情報信号の授受の制御を行う。時計部19Aは、現在時刻(時刻情報)を出力する機能を備えており、全固定局リーダR1〜R5の時計部19A同士の間で、公知の適宜の手法により互いの時刻合わせを行うことができる。なお、本実施形態では、通信ネットワークNWにケーブル等を使用した有線ネットワークを想定しているが、これに限らず、無線ネットワークを用いてもよい。
【0056】
制御部20は、上記水平偏波制御部13、垂直偏波制御部14、偏波合成部15、無線部16、RSSI部17、ネットワーク通信制御部18、到来時間検出部19、及び時計部19Aを含む固定局リーダR全体の動作を制御する。すなわち、制御部20は、RAMの一時記憶機能を利用しつつROMにあらかじめ記憶されたプログラムに従って信号処理を行う。具体的には、制御部20は、管理サーバSからの検出処理の実行命令の入力を受け付け、リーダアンテナ12を介した無線通信により移動局タグTの検出処理を行い、その検出結果を上記通信ネットワークNWを介して管理サーバSへ出力する。
【0057】
リーダアンテナ12は、この例では、略正方形形状の平面型アンテナ(いわゆるパッチアンテナ)で構成されている。そして、リーダアンテナ12は、その略正方形形状の面方向が当該固定局リーダRの設置空間に対し鉛直方向となる姿勢で立設されている。リーダアンテナ12の上記略正方形の下辺中央位置近傍には、上記垂直偏波制御部14に接続する垂直偏波用給電点Pvが設けられている。リーダアンテナ12の上記略正方形の一方の側辺中央位置近傍には、上記水平偏波制御部13に接続する水平偏波用給電点Phが設けられている。そして、垂直偏波制御部14及び水平偏波制御部13からリーダアンテナ12の各給電点Pv,Phに高周波電力が供給されると、それぞれ対応する偏波方向成分の電波信号が生成されて、リーダアンテナ12から送信される。逆に、リーダアンテナ12が電波信号を受信すると、その受信された電波信号の各偏波方向成分が、それぞれ対応する給電点Pv,Phに入力され、垂直偏波制御部14及び水平偏波制御部13へと出力される。
【0058】
管理サーバSは、CPU(中央演算装置)21と、メモリ22と、操作部23と、表示部24と、大容量記憶装置25と、ネットワーク通信制御部26とを備えている。
【0059】
メモリ22は、例えばRAMやROM等から構成される。操作部23には、管理者からの指示や情報が入力される。表示部24では、各種情報やメッセージを表示される。大容量記憶装置25は、ハードディスク装置からなり、フロアの地図情報や患者Mなどに関する各種情報を記憶するデータベースとして機能する。ネットワーク通信制御部26は、上記通信ネットワークNWを介し、各固定局リーダR1〜R5との制御信号及び情報信号の授受の制御を行う。
【0060】
移動局タグTは、IC回路部31と、タグアンテナ(送信アンテナ手段)32とを有している。なお、時計部35については後述する。
【0061】
IC回路部31は、電波信号を送受信するための変調、復調、増幅などの無線機能を実現する無線部(第1送信部、第1受信部)33と、この無線部33を含む移動局タグT全体の動作を制御する制御部34とを有する。
【0062】
タグアンテナ32は、例えば直線型アンテナ(いわゆるダイポールアンテナ)で構成されている。このタグアンテナ32は、例えば、当該移動局タグTを所持する患者Mの上半身(背骨)の長手方向に対して常に平行な配置関係を維持するよう所持(固定)される(後述の図5参照)。タグアンテナ32の中央部には、給電点Pcが設けられ、IC回路部31の無線部33に接続されている。そして、送信時にはこのタグアンテナ32の方向と平行な偏波方向(つまり電位が変化する偏波面に沿う方向)で電波信号を送信し、受信時にはタグアンテナ32の方向と平行な偏波方向成分の電波信号に対して高い感度で受信するようになっている。
【0063】
なお、この例で用いる移動局タグTは、その内部に独自に備えた電源(特に図示せず)により駆動するアクティブタグである。この結果、移動局タグTは、比較的弱い電波信号も受信可能である。
【0064】
以上において、本実施形態の最も大きな特徴は、移動局タグTの位置及び姿勢の両方の検出を行うことで、移動局タグTを所持している患者Mの状態を検出することにある。以下、その詳細を順次説明する。
【0065】
(A)移動局の位置検出の手法原理
図3は、本実施形態の入院患者管理システム1において移動局タグTの位置を検出する方法の原理を説明する図である。なお、図3中においては、図示の煩雑を避けるために3つの固定局リーダR1〜R3によって一つの移動局タグTの位置を検出する例を示している。
【0066】
この図3において、患者Mが所持する移動局タグTは上述したように平面座標系が設定されている管理対象領域内を自由な座標位置に移動できるのに対し、3つの固定局リーダR1〜R3は同じ管理対象領域内でそれぞれ既知の設置位置に固定的に配置されている。そして各固定局リーダR1〜R3は通信ネットワークNWを介して一つの管理サーバSに情報を送受可能に接続されている。
【0067】
この構成において、各固定局リーダR1〜R3での移動局タグTからの電波信号の受信時刻差に基づき、管理サーバSは、各固定局リーダR1〜R3から移動局タグTまでの距離をそれぞれ測定検出する。つまり、各固定局リーダR1〜R3の少なくとも1つが移動局タグTに対し所定の送信要求信号を送信し、それに対応して移動局タグTが電波信号(距離検出用の電波信号)を各固定局リーダR1〜R3に向けて送信する。このとき、移動局タグTが距離検出用の電波信号が送信してから固定局リーダRにおいて受信されるまでの時間(到来時間)は、固定局リーダRと移動局タグTとの空間的な距離に比例する。各固定局リーダRから移動局タグTまでの距離が異なる場合には、上記到来時間は、各固定局リーダRごとに異なる値となって時間差が生じる。管理サーバSは、その時間差に基づいて各固定局リーダRと移動局タグTとの間の距離を算出することができる。
【0068】
すなわち、例えば座標(x1,y1)に位置する第1固定局リーダR1と座標(x,y)に位置する移動局タグTとの距離をr1、座標(x2,y2)に位置する第2固定局リーダR2と移動局タグTとの距離をr2、座標(x3,y3)に位置する第3固定局リーダR3と移動局タグTとの距離をr3とする。また、固定局リーダR1〜R3の時計部19Aがそれぞれ有する時刻のずれに基づく誤差sとする。そして、第1固定局リーダR1、第2固定局リーダR2、第3固定局リーダR3それぞれにおいて、移動局タグTから時刻T0で送信された距離検出用の電波信号を受信した受信時刻をT1,T2,T3とする。
【0069】
以上のような条件においては、図3において、
r1+s=√{(x−x1)2+(y−y1)2} ・・(1A)
r2+s=√{(x−x2)2+(y−y2)2} ・・(1B)
r3+s=√{(x−x3)2+(y−y3)2} ・・(1C)
が成り立つ。
【0070】
すると、式(1A)から式(1B)を減じることで、
|r1-r2|=c×|T1-T2| …(1D)
また、式(1A)から式(1C)を減じることで、
|r1-r3|=c×|T1-T3| …(1E)
で表される関係が成り立つ。なお、cは電波速度(光速:約3.0×108[m/s])である。
【0071】
このとき、(受信時刻T1,T2,T3は測定値として既知であり)変数はr1,r2,r3の3つのみであるから、上記(1D)(1E)の2つの式を例えばニュートンラプソン法などにより解くことにより、移動局タグTの位置のx,y座標(x,y)を特定することができる。なお、本実施形態のように5つの固定局リーダR1〜R5を設けることで、さらに精度のよい位置検出を行うことができる。
【0072】
なお、上記の例では、各固定局リーダR1〜R3は電波信号の受信時刻を検出し管理サーバSに送信するのみであり、測距処理(固定局リーダR1〜R3から移動局タグTまでの距離の算出及び位置判定)は管理サーバSが行うが、これに限られない。すなわち、各固定局リーダR1〜R3の制御部20同士でお互いの受信時刻情報の送受信を行い、各固定局リーダR1〜R3が移動局タグTまでの距離の算出まで行って、その算出結果(距離データ)を管理サーバSへ送信するようにしてもよい。管理サーバSでは、それら各固定局リーダR1〜R3からの3つの距離データを集計して、移動局タグTの位置検出を行う(位置判定手段としての機能)。
【0073】
(B)移動局の姿勢検出の手法原理
図4(a)〜(c)は、本実施形態の入院患者管理システム1において移動局タグTの姿勢を検出する手法原理を説明するための説明図である。なお、図中、図示の煩雑を避けるために、固定局リーダRの構成のうちリーダアンテナ12、水平偏波制御部13、垂直偏波制御部14、偏波合成部15、及び制御部20だけを示している。
【0074】
これら図4(a)〜(c)において、上述したように、移動局タグTは患者Mの上半身に対して一体となるよう固定されている。そして、移動局タグTのタグアンテナ32の長手方向は、患者Mの背骨(上半身の長手方向)と平行な配置関係を維持している。この結果、図4(a)や図4(b)に示すように、患者Mが、部屋の移動などで直立姿勢となっている場合(又はベッドやイスなどの上で着座姿勢となっている場合。以下直立姿勢等という)には、タグアンテナ32の長手方向は鉛直方向とほぼ平行となり、つまりタグアンテナ32の偏波方向が鉛直方向となる。また、図4(c)に示すように、患者Mが横姿勢(何らかの病的不具合などによりベッドなどに横臥している状態や床面に転倒している姿勢)となっている際には、タグアンテナ32の長手方向は水平方向とほぼ平行となり、つまりタグアンテナ32の偏波方向が水平方向となっている。
【0075】
本実施形態では、上記を利用し、移動局タグTの偏波方向を検出することによって患者Mの姿勢を検知する。すなわち、リーダアンテナ12の偏波方向がタグアンテナ32の偏波方向に近いほど、より高い受信信号強度で移動局タグTからの電波信号を受信できる。固定局リーダRは、前述したように、制御部20が水平偏波制御部13及び垂直偏波制御部14を制御することで、リーダアンテナ12(パッチアンテナ)における偏波方向を制御可能である。したがって、リーダアンテナ12の偏波方向を垂直方向及び水平方向に切り替え、それぞれで受信した移動局タグTからの電波信号の受信信号強度を比較する。その比較結果に基づき、その時点でのタグアンテナ32の長手方向(姿勢)が垂直方向と水平方向のいずれに近いかの比較検知を行うことができる。この結果、移動局タグTの姿勢、ひいては患者Mの姿勢を検出することができるのである。
【0076】
例えば固定局リーダRの制御部20が垂直偏波制御部14を作動させると、リーダアンテナ12で生成する偏波面が垂直偏波状態となる。この状態では、上記図4(a)に示すように、患者Mが直立姿勢等の場合(タグアンテナ32の偏波方向はほぼ鉛直方向)に、固定局リーダRと移動局タグTのそれぞれの偏波方向がかなり近い(ほぼ平行一致する)関係となる。この結果、固定局リーダRは移動局タグTからの電波信号を高い受信信号強度で受信できる。一方、固定局リーダRの制御部20が水平偏波制御部13を作動させると、リーダアンテナ12で生成する偏波面は水平偏波状態となる。この状態では、患者Mが直立姿勢等の場合(タグアンテナ32の偏波方向はほぼ鉛直方向)には、上記図4(b)に示すように、固定局リーダRと移動局タグTの偏波方向が大きく異なる(ほぼ直交する)関係となる。このため、固定局リーダRは移動局タグTからの電波信号を低い受信信号強度でしか受信できない。
【0077】
したがって、上記の、垂直偏波状態で大きな受信信号強度が得られ、水平偏波状態で小さな受信信号強度しか得られなかったという結果に基づき、患者Mが直立姿勢等であることを検出することができる。
【0078】
上記同様、患者Mが横姿勢等の場合(タグアンテナ32の偏波方向はほぼ水平方向)には、リーダアンテナ12の偏波面が水平偏波状態のときに、図4(c)に示すように固定局リーダRと偏波方向が一致する。この結果、固定局リーダRは移動局タグTからの電波信号を高い受信信号強度で受信することができる。逆にリーダアンテナ12の偏波面が垂直偏波状態の時には固定局リーダRと偏波方向が一致せず、移動局タグTからの受信信号強度が小さくなる(図示省略)。
【0079】
したがって、上記の、水平偏波状態で大きな受信信号強度が得られ、垂直偏波状態で小さな受信信号強度しか得られなかったという結果に基づき、患者Mが横姿勢等であることを検出することができる。
【0080】
なお、特に図示しないが、固定局リーダRの制御部20は、水平偏波制御部13及び垂直偏波制御部14における搬送波の振幅と位相差を制御することで、リーダアンテナ12における偏波方向を任意の角度に合成することや、あらゆる角度に対応可能ないわゆる円偏波を合成することも可能である。これらの各偏波方向を必要に応じて移動局タグTの姿勢検出に利用するようにしてもよい。
【0081】
なお、上記の例では、各固定局リーダRは電波信号の受信信号強度を検出し管理サーバSに送信するのみであり、姿勢検出処理(偏波面ごとの受信信号強度の比較により移動局タグTの姿勢の検出)は管理サーバSが行うが、これに限られない。すなわち、各固定局リーダRごとに2つの偏波面における受信信号強度の送受信を行い、その比較に基づく姿勢の検出まで行って(=姿勢検出手段としての機能)、その算出結果(距離データ)を管理サーバSへ送信するようにしてもよい。この場合、管理サーバSでは、それら各固定局リーダRからの姿勢検出結果を集計して、最終的な移動局タグTの姿勢を決定する。
【0082】
また、移動局タグTを患者Mの手足に取り付けると、移動局タグTの姿勢と患者Mの姿勢とが異なる可能性がある。これを回避して患者Mの姿勢と移動局タグTの姿勢との一致性を確保するには、例えば図5に示すように、移動局タグT(平板形状に形成可能)を患者Mの脇腹などの胴部に配置させ、ベルト41などで上半身に固定するようにしてもよい。
【0083】
(C)状態検出のための制御
【0084】
図6及び図7は、管理サーバS、固定局リーダR1〜R5、及び移動局タグTの間で送受される各種信号の送受と制御動作の一例を表すシーケンス図である。これら図6及び図7において、基本的に図中上側から下側に向かっての時系列変化で各手順を表している。上述したように、管理サーバSと固定局リーダR1〜R5(複数設置しているうちの一つのみ図示)との間は、通信ネットワークNWを介した信号の送受である。また、固定局リーダR1〜R5と移動局タグTとの間は、無線通信を介した信号の送受となっている。
【0085】
まず最初に、図6に示すステップSS10において、管理サーバSのCPU21がネットワーク通信制御部26を介し、各固定局リーダR1〜R5(あるいは特定の1つの固定局リーダRのみでもよい)に対し、移動局タグTへの距離検出用の電波送信要求を送信するよう指示信号を出力する。これにより、ステップSR10で、対応する固定局リーダRの無線部16がリーダアンテナ12を介し移動局タグTに向けて電波送信要求信号(距離検出用送信要求信号)を送信する。
【0086】
そして、この送信要求信号を受信した移動局タグTの無線部33が、ステップST10において、タグアンテナ32を介し、対応する電波信号(距離検出用の電波信号)を送信する。各固定局リーダR1〜R5の無線部16は、ステップSR20で、リーダアンテナ12を介しそれぞれ距離検出用の電波信号を受信する。そして、到来時間検出部19がそのときの受信時刻情報を検出し、制御部20がその受信時刻情報をネットワーク通信制御部18を介して管理サーバSに出力する。
【0087】
そして管理サーバSのCPU21が、ステップSS20において、各固定局リーダR1〜R5から入力した受信時刻の差(=到来時間の差)に基づき、それぞれの移動局タグTとの間の距離・位置を算出する。
【0088】
なお、上記ステップST10では、固定局リーダRからの送信要求に応じて距離検出用の電波信号を移動局タグTから送信するようにしたが、これに限られない。すなわち、移動局タグTが一定時間間隔で自発的に電波信号を発信し続け、各固定局リーダRがその発信し続ける電波信号を受信し、これに基づき管理サーバSで距離検出を行うようにしてもよい。
【0089】
次にステップSS40で、管理サーバSのCPU21は、上記ステップSS20で算出した移動局タグTの位置座標と、あらかじめ大容量記憶装置25に記憶している当該フロアの地図情報(管理対象領域内において各部屋が占有する座標領域などが記録されている情報)に基づき、患者Mがその時点で所在している部屋(または廊下)を判別する。
【0090】
次に管理サーバSのCPU21は、ステップSS50で、移動局タグTが前回検出された位置座標から大きく移動しているか否かを(例えば移動量に関してあらかじめ設定記憶されたしきい値との大小比較により)判定する。移動局タグTの大きな移動、すなわち患者Mの移動がない場合、判定が満たされず、次のステップSS60へ移る。
【0091】
ステップSS60では、管理サーバSのCPU21が、当該患者Mに対してあらかじめ設定記憶された所定のスケジュールテーブル(後述の図8参照)を参照し、上記ステップSS40で判別された部屋がその時点に対応して設定されている行き先候補の部屋に含まれているか否か(すなわち患者Mがその時点で適切とされている部屋に所在しているか否か)を判定する。その時点で患者Mが所在している部屋が、上記スケジュールテーブルにおいてその時点に対応して行き先候補となっている部屋であった場合、判定は満たされず、図7のステップSS80へ移る。一方、判別された部屋が行き先候補の部屋に含まれている場合、判定が満たされ、ステップSS70へ移る。
【0092】
ステップSS70では、管理サーバSのCPU21が、上記スケジュールテーブルを参照して、その時点で患者Mが所在していると判別された部屋が横姿勢を取りうる部屋であるか否かを判定する。スケジュールテーブルにおいて当該所在中の部屋では患者Mが横姿勢となる可能性がない場合、判定が満たされず、図7のステップSS80へ移る。
【0093】
なお、上記判定ステップSS50において患者Mの移動が確認されて判定が満たされた場合、又は、上記判定ステップSS70において患者Mがその時点に所在する部屋が横姿勢を取りうる部屋であって判定が満たされる場合には、管理サーバSの上記ステップ10に戻り、同様の制御動作を繰り返す。
【0094】
図7において、ステップSS80では、管理サーバSのCPU21が、ネットワーク通信制御部26を介し、各固定局リーダR1〜R5(あるいは特定の1つの固定局リーダRのみでもよい)に対し、移動局タグTへの偏波面探索用の電波送信要求を送信するよう指示信号を出力する。これにより、ステップSR30で、対応する固定局リーダRの無線部16がリーダアンテナ12を介し移動局タグTに向けて電波送信要求信号(偏波面探索用送信要求信号)を送信する。
【0095】
そして、この送信要求信号を受信した移動局タグTの無線部33が、ステップST20で、タグアンテナ32を介し対応する電波信号(偏波面探索用の電波信号)を送信する。各固定局リーダR1〜R5の制御部20は、ステップSR40で、垂直偏波制御部14によりリーダアンテナ12を垂直偏波状態としてこの電波信号を受信する。そしてそのときの受信信号強度をRSSI部17が検出し、検出結果をネットワーク通信制御部18を介し管理サーバSに出力し、管理サーバSがその出力された受信信号強度を取得する(受信信号強度取得手段)。
【0096】
次に、管理サーバSは、ステップSS90で、上記同様、管理サーバSが、各固定局リーダR1〜R5(あるいは特定の固定局リーダR)に対し、移動局タグTへの偏波面探索用の電波送信要求を送信するよう指示信号を出力する。これにより、対応する固定局リーダRがステップSR50で移動局タグTに向けて電波送信要求信号(偏波面探索用送信要求信号)を送信する。送信要求信号を受信した移動局タグTはステップST30で対応する電波信号(偏波面探索用の電波信号)を送信し、各固定局リーダR1〜R5がステップSR60でリーダアンテナ12を(水平偏波制御部13により)水平偏波状態としてこの電波信号を受信する。そして、RSSI部17よりその受信信号強度を検出して管理サーバSに出力し、管理サーバSがその出力された受信信号強度を取得する(受信信号強度取得手段)。
【0097】
なお、上記ステップST20やステップST30では、固定局リーダRからの送信要求に応じて偏波面探索用の電波信号を移動局タグTから送信するようにしたが、これに限られない。すなわち、移動局タグTが一定時間間隔で自発的に電波信号を発信し続け、各固定局リーダRがその発信し続ける電波信号を受信し、これに基づき管理サーバSで偏波面を探索するようにしてもよい。
【0098】
その後、管理サーバSのCPU21が、ステップSS100で、上記ステップSR40において入力した各固定局リーダR1〜R5における垂直偏波状態での受信信号強度と、上記ステップSR60において入力した各固定局リーダR1〜R5における水平偏波状態での受信信号強度とを比較する。そして、その時点での移動局タグTからの偏波面探索用電波信号が、垂直偏波状態での受信より水平偏波状態での受信の方が受信信号強度が高いか否か(=言い換えれば、移動局タグTや患者Mの姿勢が垂直よりも水平に近いか否か)を判定する。このときの判定は、まず全体的に受信信号強度が最大の固定局リーダRを1つ特定し、その固定局リーダRについて垂直偏波状態と水平偏波状態とを比較してもよい。あるいは、全固定局リーダR1〜R5のうちいずれかについて垂直偏波状態での受信信号強度の最大値と、全固定局リーダR1〜R5のうちいずれかについて水平偏波状態での受信信号強度の最大値とを比較するようにしてもよい。
【0099】
上記のような比較手法に基づき、水平偏波状態での受信信号強度が、垂直偏波状態での高い場合、判定が満たされ、移動局タグT及び患者Mの姿勢が垂直よりも水平に近いとみなされ、ステップSS110に移る。ステップSS110では、管理サーバSのCPU21が表示部24に報知信号を出力し、患者Mが横転し異常状態となっている可能性が高い旨を表示させ、管理者に報知する。そしてこのフローを終了する。
【0100】
なお、上記ステップSS100において、移動局タグT及び患者Mの姿勢が水平よりも垂直に近く判定が満たされない場合、図6に示した管理サーバSの上記ステップ10に戻り、同様の制御動作を繰り返す。
【0101】
以上により、患者Mがその時点でスケジュールテーブルに設定されていない不適切な部屋で横姿勢状態となっていることが検出された場合(又はスケジュールテーブルで横姿勢となる可能性がないとされている部屋において患者Mが横姿勢状態となっていることが検出された場合)に、患者Mが何らかの病的な原因により横転している異常状態を、管理者に報知することが可能となる。
【0102】
図8は、前述した、各時間区分における患者Mの適切な所在位置を管理するスケジュールテーブルを表す説明図である。
【0103】
図8において、このスケジュールテーブルは、管理サーバSの上記大容量記憶装置25に格納保持されている。この例では、10分ごとに患者Mが通常の場合に所在すると予想される行き先候補(移動予定情報)が3つまで設定されている。そして、それぞれの行き先候補に対応して、患者Mが横姿勢となりうる可能性の有無の情報(姿勢予定情報)が記載されている。例えば、図示する例において患者Mは7:00まで病室のベッドで就寝している予定となっており、7:00以降に起床して7:20から30分間で食堂で朝食を取り、8:00から30分間の間は検査室で検査を受けるスケジュールとなっている。そして常にトイレが2つ目の行き先候補として設定されており、また就寝時間と検査時間以外には患者Mが休憩室へ行く可能性があるものとして3つ目の行き先候補として設定されている。
【0104】
管理サーバSは、このスケジュールテーブルを参照することで、患者Mがその時点において不適切な位置に不必要な時間滞在したままとなっていないか、さらに不適切な位置で横姿勢となっていないかを判断し、例えば患者Mが病的原因により床に横転しているなどの異常状態が発生している可能性を検知することができる。
【0105】
以上において、上記図6及び図7において実行される、ステップSS20、及びステップSS100が各請求項記載の状態判定手段を構成する。またそのうちステップSS20が距離検出手段を構成するとともに、位置判定手段をも構成する。またステップSS100が姿勢検出手段を構成する。また、図7のステップSS110が、報知信号生成手段を構成する。また、図6のステップSS50が、静止判定手段を構成する。
【0106】
以上のように構成した本実施形態においては、移動局タグTのタグアンテナ32から電波信号が送信されると、その電波信号が固定局R1〜R5の無線部16にて受信され、このときの電波信号の受信時刻が到来時間検出部19で検出される。これにより、管理サーバSが、固定局リーダR1〜R5の受信時刻差情報に基づき位置判定を行う(ステップSS20)。
【0107】
一方、移動局タグTのタグアンテナ32の偏波方向はタグ自体に固定であるのに対し、固定局リーダR1〜R5のリーダアンテナ12の偏波方向は互いに交差する(この例では直交する)2つの偏波方向に切り替え可能である。そしてこの切り替え時において、各偏波方向における受信信号強度はRSSI部17で検出される。そして、無線通信における電波信号の送受信において、送信側と受信側との偏波方向が一致しているほど受信側での受信信号強度が大きくなる性質を利用し、上記2つの偏波方向における受信信号強度の大小(いずれの偏波方向において受信信号強度が大であったか)に応じて、管理サーバSが移動局タグTの姿勢検出処理を行う(ステップSS100)。
【0108】
以上のようにして、移動局タグT(言い換えれば患者M。以下同様)の位置判定と姿勢検出との両方を併せて行うことができる。この結果、移動局タグTを所持する患者Mの正確な状態を推定することができる。
【0109】
また、本実施形態では特に、姿勢検出処理結果に応じて対応する報知を行うための報知信号を出力する。これにより、患者Mの状態が(想定されていない)異常な挙動を示した場合等において、その旨を直ちに管理者等に対し報知することができる。
【0110】
また、本実施形態では特に、位置判定及び姿勢検出処理のそれぞれの検出結果に加え、(例えば固定リーダRの時計部19Aや管理サーバS内で取得した)時刻情報を用い患者Mの状態判定を行う。これにより、移動局タグTを所持する患者Mの状態を時間の流れと関連づけて管理することができる。詳細には、図8に示したように、時刻情報に従ってあらかじめ定められた予定が記載されているスケジュールテーブルを参照して患者Mの状態判定を行っている。これにより、患者Mの状態を、あらかじめ定められた移動予定(この例では行き先候補の部屋)や姿勢予定(この例では部屋に対応する横姿勢の有無)と関連づけて管理することができる。この結果、移動局タグTを所持する患者Mの移動や姿勢がそれらの予定と異なっている場合には、その旨を直ちに管理者等に対し報知することができる。
【0111】
なお、上記スケジュールテーブルは、標準的に設定された情報だけでなく、さらにあらかじめ設定された患者M個人の移動パターン情報やあらかじめ検出され蓄積された移動履歴情報(午前中は時折惰眠・昼寝する傾向がある、春先は800〜815頃に起床する傾向にある、等)を付加するようにしてもよい。これにより、患者Mの状態を、あらかじめ設定された個人特有の移動パターンや蓄積された移動履歴と関連づけて管理することが可能となる。そして、例えば、患者Mの挙動がそれら移動パターンや移動履歴から大きく逸脱している場合には、その旨を直ちに管理者等に対し報知することも可能である。
【0112】
さらにこのとき、位置判定結果と上記時刻情報とに基づき算出される、移動局タグT(患者M)の移動量(又は移動速度)に基づき、状態判定を行うようにしてもよい。これにより、患者Mの状態を、その移動量や移動速度と関連づけて管理できる。したがって、想定されている所定の範囲を逸脱するような異常な挙動を示した場合(例えば、夜中に歩いた距離が不自然に遠くないか、歩いているにしては移動速度があまりにも遅くないか、通常の動きにしては移動が急激過ぎて不自然である、等)において、その旨を直ちに管理者等に対し報知することができる。さらに、移動量や移動速度が所定のしきい値を超えた場合(異常動作や所定の注目動作に対応するようにあらかじめ設定しておく)にのみ、状態判定を行ったり、報知を行うようにしてもよい。
【0113】
また、本実施形態では特に、管理サーバSの大容量記憶装置25が記憶した地図情報(図1参照)を参照して移動局タグTの状態判定を行う。これにより、地図上に表されるどの場所に移動局タグTが存在し、その場所で移動局タグTがどのような姿勢にあるかを検出することができる。
【0114】
また、移動局タグTが移動中であれば、その移動動作によって姿勢が刻々と変化し、静的な姿勢を検出するのは困難である可能性が高い。そこで、本実施形態では特に、まず、距離検出用の電波信号を移動局タグTより送信して(ステップST10)位置判定を行い、その後偏波面探索用の電波信号を移動局タグTより送信して(ステップST20及びステップST30)姿勢検出処理を行うようにする。このように処理を前後2つに分けることにより、最初の位置判定によって移動局タグTが移動していた場合には、偏波面探索用の電波信号を送信せず姿勢検出処理を行わないようにする(ステップSS50)。これにより、無駄な姿勢検出処理を行うのを防止し、制御の安定化や通信効率の向上を図ることができる。
【0115】
また、本実施形態では特に、固定局リーダRから距離検出用電波信号の送信要求を送信し(ステップSS10)、これに応じる形で移動局タグTから距離検出用の電波信号を送信させて位置判定を行う。また同様に、固定局リーダRから偏波面探索用電波信号の送信要求を送信し(ステップSS80及びステップSS90)、これに応じる形で移動局タグTから偏波面探索用の電波信号を送信させて姿勢検出処理を行う。このように、固定局リーダRからの要求にその都度応じて移動局タグT側から電波信号を送信させることにより、固定局リーダRから常時電波信号を送信する場合に比べ、無駄を省きつつ通信を円滑かつ効率的に行うことができる。
【0116】
また、本実施形態では特に、少なくとも3つの固定局リーダR1〜R5(この例では5つ)で位置判定を行う。これにより、管理サーバSにおいて、移動局タグTが各固定局リーダR1〜R5からどれだけの距離に位置するかを合算し、移動局タグTの存在位置を特定して位置検出を行うことができる。なお、本発明はこれに限られず、距離検出処理を例えば1つの固定局リーダRのみで行うようにしてもよい(但しこの場合はTDOA方式ではなく、後述のTOA方式による測距処理を行う)。この場合、例えば、移動局タグTが当該固定局リーダRからどれだけの距離に位置するか、すなわち所定の近傍領域(つまり当該固定局リーダRが設置されている部屋など)に移動局タグTが存在するかどうかを検出することとなる。
【0117】
また、上記実施形態では特に、1つのリーダアンテナ12において直交する2つの偏波方向の切り替えを行う。これにより、複数のリーダアンテナ12を用意してそれらを切り替える場合に比べ、アンテナが1つで足りることから、固定局リーダRの構成部品数を低減でき小型化も可能となる。なお、本発明はこれに限られない。すなわち、例えば図4に相当する図9に示すように、固定局リーダRに、互いに偏波面の向きが交差する(この例では直交する)ように配置された2つの受信アンテナ12A,12Bを受信アンテナ手段として設けてもよい。つまり、偏波方向がある方向に向く1つの受信アンテナ12Aと、偏波方向がそのアンテナ12Aとは直交する方向に向く別の受信アンテナ12Bとを用意し、それらを選択的に切り替えて無線部16と接続する。これにより、固定局リーダRにおける直交する2つの偏波方向の切り替えを実現することができる(偏波面制御手段としての機能)。そして、アンテナの単純な切り替えだけで足りることから、前述のように1つのアンテナにおける偏波面方向の制御を行う場合に比べ、制御を簡素化できる。また、この変形例において、2つの受信アンテナ12A,12Bに対応して強度検出手段としてのRSSI部をそれぞれ別々に設け、(アンテナを切り替えることなく)同時にそれぞれの受信信号強度を検出するようにしてもよい(偏波面制御手段を省略した構成)。この場合も、上記実施形態と同等の効果を得る。
【0118】
なお、以上においては、移動局タグTからの距離検出用の電波信号に対する各固定局リーダRの受信時刻差により測距処理を行う、いわゆるTDOA方式を例にとって説明した。しかしながら本発明はこれに限られず、TOA方式を用いて測距処理することもできる。
【0119】
図10は、TOA方式を行う本変形例における測距原理の手法を説明するための説明図であり、上記図3に対応する図である。図3と同様、3つの固定局リーダR1〜R3を用いる場合を例にとって説明する。
【0120】
図10において、前述の図3と同様、座標(x1,y1)に位置する第1固定局リーダR1と座標(xt,yt)に位置する移動局タグT(後述のようにTOA方式の場合には時計部35を備えている。図2参照)との距離をr1、座標(x2,y2)に位置する第2固定局リーダR2と移動局タグTとの距離をr2、座標(x3,y3)に位置する第3固定局リーダR3と移動局タグTとの距離をr3とすると、下記の式(2)で表される関係が成り立つ。
(x−x1)2+(y−y1)2=r12
(x−x2)2+(y−y2)2=r22
(x−x3)2+(y−y3)2=r32 …(2)
【0121】
これらの3つの式を解くことにより、x,yの値を算出し、移動局タグTの位置のx,y座標(xt,yt)を特定することができる。
【0122】
前述の図2において、本変形例では、移動局タグTの時計部35が必須の構成となる。そして、この移動局タグTの時計部35と各固定局リーダR1〜R5の時計部19Aとは、所定の方法で時刻合わせが行われる。本変形例では、固定局リーダR1〜R5に備えられた到来時間検出部19(図2参照)が、移動局タグTから距離検出用の電波信号が送信された時刻と、その距離検出用電波信号が固定局リーダR1〜R5で受信された時刻とを検出する。移動局タグTからの距離検出用電波信号の送信時刻は、例えば、制御部20に備えられたベースバンド信号生成復元部(図示せず)が距離検出用電波信号に含まれるベースバンド信号を復元することによって取得することができる。なお、例えば移動局タグTと各固定局リーダR1〜R5とで、あらかじめ所定の時隔で移動局タグTから送信する旨の事前設定をしておき、これに基づき固定局リーダR1〜R5側で移動局タグTからの送信時刻を決定する等、他の手法でもよい。このようにして得られた移動局タグTの送信時刻と各固定局リーダR1〜R5の受信時刻とが管理サーバSへ出力される。管理サーバSは、その送信時刻と受信時刻との差で距離検出用電波信号の伝搬時間を求める。そして、この伝搬時間に電波速度(光速)c(=3.0×108[m/s])を乗じることで、移動局タグTと各固定局リーダR1〜R5との距離(上記のr1,r2,r3等)を算出することができる。なお、前述と同様、上記伝搬時間の算出や距離算出を固定局リーダR1〜R5側で実行するようにしてもよい。
【0123】
本変形例によっても、上記実施形態や各変形例と同様の効果を得る。
【0124】
なお、以上では触れなかったが、例えば上記のように複数個の固定局リーダR1〜R5を設けた場合、各固定局リーダRにおける受信信号強度の大小(上記の例では水平偏波状態での値と垂直偏波状態での値との大小関係)が、全ての固定局リーダRで完全には一致せずばらつく可能性がある。また、特定の固定局リーダRの周囲でマルチパスによる影響によりある偏波方向の強度が低下する場合等もある。そこでこれに対応し、各固定局リーダRごとの上記水平偏波状態・垂直偏波状態での受信信号強度の(大小の)結果を上記ステップSR40及びステップSR60で取得して集計し、その各固定局リーダRごとの大小比較結果を参酌して、移動局タグTの姿勢を検出するようにしてもよい。
【0125】
このとき、5つの固定局リーダR1〜R5に含まれる異なる受信信号強度の大小比較結果から、適宜の規則性に沿って固定局リーダRの優先度を設定することで、上記ばらついた受信信号強度の大小比較結果の中から適宜のものを選択したり、上記マルチパスの影響を受けた基地局での大小比較結果を除外する等が可能となる。優先度設定の一例としては、例えば多数決とし、該当する固定局リーダRの数が最も多数である受信信号強度の大小比較結果を優先して選択する手法がある。
【0126】
あるいは、移動局タグTと各固定局リーダRとの位置関係を考慮に入れるようにしてもよい。すなわち、移動局タグTのアンテナは、アンテナ種類によって固有の指向性がある(例えば上記のダイポールアンテナの場合にはドーナッツ状の指向性となる)。このため、その固有の指向性の態様(形状)によっては、ある位置の固定局リーダRでは水平偏波状態・垂直偏波状態の受信信号強度の大小比較結果が本来検出したい移動局タグTの姿勢に良好に対応するが、別の位置の固定局リーダRでは上記受信信号強度の大小比較結果が本来検出したい移動局タグTの姿勢にあまり良好に対応しない可能性がある。そこで、移動局タグTと各固定局リーダRの位置関係に応じてあらかじめ所定の優先度を決定しておき、その優先度に沿って、5つの固定局リーダR1〜R5に含まれる異なる受信信号強度の大小比較結果から適宜のものを選択し、それに基づいて姿勢検出を行う。
【0127】
以上のようにして、最適な固定局リーダRでの受信信号強度の大小比較結果を利用し、確実に高精度の姿勢検出を行うことができる。
【0128】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。
【0129】
その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0130】
【図1】本発明の移動局の状態検出システムの一実施形態である入院患者管理システムの全体構成を概略的に示す説明図である。
【図2】入院患者管理システムの機能的構成を表す機能ブロック図である。
【図3】移動局タグの位置検出の手法原理を説明するための説明図である。
【図4】移動局タグの姿勢検出の手法原理を説明するための説明図である。
【図5】入院患者の身体に対する移動局タグの取り付け構成の一例を示す図である。
【図6】管理サーバ、固定局リーダ、及び移動局タグの間で送受される各種信号の送受と制御動作の一例を表すシーケンス図である。
【図7】管理サーバ、固定局リーダ、及び移動局タグの間で送受される各種信号の送受と制御動作の一例を表すシーケンス図である。
【図8】各時間区分における入院患者の適切な所在位置を管理するスケジュールテーブルを概念的に表す図である。
【図9】固定局リーダのリーダアンテナをそれぞれ偏波方向が直交する2つの独立したアンテナで構成した場合を示す図である。
【図10】TOA方式を行う変形例における移動局タグの位置検出の手法原理を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0131】
1 入院患者管理システム(移動局の状態検出システム)
12 リーダアンテナ(1つの受信アンテナ、受信アンテナ手段)
12A,12B 受信アンテナ(受信アンテナ手段)
13 水平偏波制御部
14 垂直偏波制御部
15 偏波合成部
16 無線部(第2送信部、第2受信部)
17 RSSI部(強度検出手段)
18 ネットワーク通信制御部
19 到来時間検出部
19A 時計部
20 制御部(偏波面制御手段、送信制御手段)
32 タグアンテナ(送信アンテナ手段)
33 無線部(第1送信部、第1受信部)
T 移動局タグ(移動局)
R,R1〜5 固定局リーダ(基地局)
S 管理サーバ
M 患者(設置対象)
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動局と基地局との間で行なわれる無線通信の結果に基づき、移動局の状態を検出する移動局の状態検出システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
無線通信機能を備えた移動局を、移動する物品などの設置対象に取り付け、この移動局に対する固定側からの無線通信結果に基づき、設置対象の向きや姿勢を検出するものとして、例えば特許文献1記載の技術が既に提唱されている。
【0003】
この従来技術では、荷物やボール等の設置対象に対し、所定の配置態様で複数の無線タグ回路素子(移動局)が設けられている。そして、アンテナを介したそれら複数の無線タグ回路素子との通信結果に基づき、制御装置のCPUが荷物やボール等の姿勢(正立しているか横倒しになっているか、回転しているか等)を検出するようになっている。
【0004】
【特許文献1】特開2007−80102号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来技術では、移動局の設置対象がどのような姿勢となっているかを検出することはできる。しかしながら、(例えばある程度広い領域の中で)設置対象がどの位置においてその姿勢をとっているのかはわからなかった。すなわち、設置対象の姿勢と位置との両方の検出は困難であり、このため当該設置対象の正確な状態を推定するのが困難であるという問題があった。
【0006】
本発明の目的は、設置対象の姿勢及び位置の両方を検出することで、設置対象の状態を推定することができる、移動局の状態検出システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、第1の発明は、所定の移動可能領域を移動可能な移動局と、既知の位置に固定に配置された基地局と、前記移動局から送信され前記基地局で受信した電波信号に基づき、前記移動局の状態判定を行う状態判定手段とを有する移動局の状態検出システムであって、前記移動局は、偏波面が固定の直線偏波である送信アンテナ手段と、前記送信アンテナ手段を介し電波信号を送信する第1送信部と、電波信号を受信する第1受信部とを備えており、前記基地局は、電波信号を送信する第2送信部と、互いに交差する2つの偏波面を生成可能な受信アンテナ手段と、前記受信アンテナ手段を介し電波信号を受信する第2受信部と、前記第2受信部で受信した電波信号の到来時間を検出する到来時間検出部と、前記受信アンテナ手段で生成された前記2つの偏波面における前記受信部での受信信号強度をそれぞれ検出する強度検出手段とを備えており、前記状態判定手段は、前記基地局の前記到来時間検出部で検出した前記到来時間に基づき、前記移動局から前記基地局までの距離検出処理を行う距離検出手段と、前記強度検出手段で検出した前記2つの偏波面での前記受信信号強度の大小に基づき、前記移動局の姿勢検出処理を行う姿勢検出手段とを備え、前記距離検出手段の検出結果と前記姿勢検出手段の検出結果とに応じて、前記移動局の状態判定を行うことを特徴とする。
【0008】
移動局の送信アンテナ手段から電波信号が送信されると、その電波信号が基地局の第2受信部にて受信され、このときの電波信号の到来時間が到来時間検出部で検出される。これにより、移動局と基地局との時計合わせを行わず複数の基地局同士で時計あわせを行う場合(いわゆるTDOA方式)には、同一の電波信号に対する各基地局の受信時刻同士の比較(言い換えれば到来時間同士の比較)により、状態判定手段の距離検出手段で距離検出処理を行うことができる。移動局と基地局との時計合わせを行う場合(いわゆるTOA方式)には、移動局の送信時刻と基地局の受信時刻とにより移動局から基地局までの到来時間(伝搬時間)を算出し、これに基づき状態判定手段の距離検出手段で距離検出処理を行うことができる。
【0009】
ここで、無線通信における電波信号の送受信においては、(同一送信強度の条件では)送信側と受信側との偏波面の方向が一致しているほど受信側での受信信号強度が大きくなり、送信側と受信側との偏波面の方向が不一致となる(ずれる)ほど受信側での受信信号強度が小さくなる。本願第1発明では、移動局の送信アンテナ手段の偏波面が固定の直線偏波であるのに対し、基地局の受信アンテナ手段では互いに交差する2つの偏波面が生成可能である。そして各偏波面における受信信号強度が強度検出手段で検出される。この結果、受信アンテナ手段の一方の偏波面での受信信号強度が、交差する他方の偏波面での受信信号強度よりも大きければ、送信アンテナ手段の偏波面の方向は当該受信アンテナ手段の一方の偏波面に近い方向であることが推定される。上記のように送信側アンテナ手段の偏波面は移動局において固定であることから、この推定された送信アンテナ手段の偏波面の方向は、移動局自体の姿勢に一対一に対応しているはずである。そこで、本願第1発明においては、上記2つの偏波面における受信信号強度の大小(いずれの偏波面において受信信号強度が大であったか)に応じて、状態判定手段の姿勢検出手段が移動局(言い換えれば設置対象。以下同様)の姿勢検出処理を行う。
【0010】
以上のようにして、距離検出手段によって移動局の位置検出(基地局から移動局までの距離検出)を行え、姿勢検出手段によって移動局の姿勢検出を行うことができる。この結果、移動局を所定の設置対象(人間や物体)の適宜の部位に設けることで、当該設置対象の状態(人間の着座・横臥状態や物体の正立・横転状態等)を推定することが可能となる。
【0011】
第2発明は、上記第1発明において、前記基地局は3局以上配設されており、前記距離検出手段は、前記3局以上の基地局それぞれの前記到来時間検出部で検出した前記移動局の到来時間に基づき、前記移動局の位置を判定する位置判定手段であり、前記状態判定手段は、前記姿勢検出手段による前記移動局の姿勢検出処理と、前記位置判定手段による前記位置判定を、同時に行うことを特徴とする。
【0012】
3局以上の基地局での検出結果に基づき移動局の位置を位置判定手段で精度よく判定できるので、姿勢検出手段で検出した姿勢と併せ、設置対象の状態を精度よく推定することが可能となる。
【0013】
第3発明は、上記第2発明において、前記3局以上の基地局を構成する基地局ごとに、前記強度検出手段での前記2つの偏波面での前記受信信号強度の大小比較結果を取得する受信信号強度取得手段を有し、前記姿勢検出手段は、前記受信信号強度取得手段で取得した、各基地局ごとの前記大小比較結果に基づき、前記移動局の姿勢を決定することを特徴とする。
【0014】
基地局を複数局設けた場合、各基地局における2つの偏波面での受信信号強度の大小が、全局で完全に一致せずばらついたり、特定の基地局がマルチパスによる影響を受け本来とは異なる結果となる可能性がある。そこで本願第3発明においては、(このような複数基地局での差異の存在を前提として)基地局ごとの2つの偏波面での受信信号強度の大小結果を受信信号強度取得手段で取得し、それらを集計した各基地局ごとの大小比較結果に基づいて、姿勢検出手段が移動局の姿勢を検出する。これにより、上記ばらついた受信信号強度の大小比較結果の中から適宜のものを選択したり、上記マルチパスの影響を受けた基地局での大小比較結果を除外する等が可能となるので、さらに精度のよい姿勢検出を行うことができる。
【0015】
第4発明は、上記第3発明において、前記姿勢検出手段は、前記3局以上の基地局における前記大小比較結果が全局で一致しなかった場合、所定の優先度に沿って少なくとも1つの前記大小比較結果を選択し、当該選択された大小比較結果に応じて前記移動局の姿勢を決定することを特徴とする。
【0016】
これにより、各基地局における2つの偏波面での受信信号強度の大小が、全局で完全に一致せずばらついた場合であっても、あらかじめ設定された所定の優先度に沿って受信信号強度の大小比較結果を選択し、これを用いて姿勢検出を行うことで、確実に高精度の姿勢検出を行うことができる。
【0017】
第5発明は、上記第4発明において、前記姿勢検出手段は、前記位置判定手段で判定された前記移動局の位置と各基地局の位置とにより決定される、前記所定の優先度に沿って、前記少なくとも1つの大小比較結果を選択し、当該選択された大小比較結果に応じて前記移動局の姿勢を決定することを特徴とする。
【0018】
移動局の送信アンテナ手段は、アンテナ種類によって固有の指向性がある(例えばダイポールアンテナの場合にはドーナッツ状の指向性となる)。このため、その固有の指向性の態様(形状)によっては、ある位置の基地局では2つの偏波面での受信信号強度の大小比較結果が本来検出したい移動局の姿勢に良好に対応するが、別の位置の基地局では2つの偏波面での受信信号強度の大小比較結果が本来検出したい移動局の姿勢にあまり良好に対応しない可能性がある。そこで本願第5発明においては、移動局と各基地局の位置とに応じて所定の優先度を決定しておき、その優先度に沿って受信信号強度の大小比較結果を選択し姿勢検出を行う。これにより、最適な基地局での大小比較結果を利用し、確実に高精度の姿勢検出を行うことができる。
【0019】
第6発明は、上記第2乃至第5発明のいずれかにおいて、前記基地局は、前記受信アンテナ手段を前記2つの偏波面にそれぞれ切り替え制御する偏波面制御手段を有し、前記強度検出手段は、前記偏波面制御手段により切り替えられた前記2つの偏波面における前記受信部での受信信号強度をそれぞれ検出することを特徴とする。
【0020】
偏波面制御手段は受信アンテナ手段を互いに交差する2つの偏波面に切り替え可能である。そして、互いに交差する2つの偏波面に切り替えられるごとに、各偏波面における受信信号強度が強度検出手段で検出される。この結果、検出される強度の大小に基づき、送信アンテナ手段の偏波面の方向を、当該受信アンテナ手段の偏波面との関係において推定することができる。
【0021】
第7発明は、上記第2乃至第6発明のいずれかにおいて、前記基地局の到来時間検出部は、前記第1送信部から送信され前記第2受信部で受信された距離検出用の前記電波信号の到来時間を検出し、前記状態判定手段の前記位置判定手段は、前記距離検出用電波信号に基づき前記到来時間検出部で検出された到来時間に基づき、前記位置判定を行い、前記基地局の前記強度検出手段は、前記距離検出用の電波信号の送信後に、前記第1送信部から送信された偏波面探索用の電波信号が、前記切り替えられた前記2つの偏波面を介し前記受信部で受信されたときの受信信号強度をそれぞれ検出し、前記状態判定手段の前記姿勢検出手段は、前記偏波面探索用電波信号に基づき前記強度検出手段で検出された受信信号強度の大小に基づき、前記姿勢検出処理を行うことを特徴とする。
【0022】
移動局が移動中であれば、その移動動作によって姿勢が刻々と変化し、静的な姿勢を検出するのは困難である可能性が高い。そこで本願第3発明においては、まず、距離検出用の電波信号を第1送信部より送信してその到来時間に基づき位置判定手段で位置判定を行い、その後偏波面探索用の電波信号を第1送信部より送信してその受信信号強度に基づき姿勢検出手段で姿勢検出処理を行うようにする。このように処理を前後2つに分けることにより、最初の位置判定によって位置が時間的に変化する、すなわち移動局が移動していることが検出されている場合には、偏波面探索用の電波信号を送信せず姿勢検出処理を行わないようにすることが可能となる。これにより、無駄な姿勢検出処理を行うのを防止し、制御の安定化や通信効率の向上を図ることができる。
【0023】
第8発明は、上記第7発明において、前記基地局は、前記移動局の前記第1送信部へ前記距離検出用電波信号を要求するための距離検出用送信要求信号を送信した後、前記移動局の前記第1送信部へ前記偏波面探索用電波信号を要求するための偏波面探索用送信要求信号を送信するように、前記第2送信部を制御する送信制御手段を有することを特徴とする。
【0024】
基地局の第2送信部から距離検出用送信要求信号を送信し、これに応じる形で移動局の第1送信部から距離検出用電波信号を送信させて位置判定を行う。また同様に、基地局の第2送信部から偏波面探索用送信要求信号を送信し、これに応じる形で移動局の第1送信部から偏波面探索用電波信号を送信させて姿勢検出処理を行う。このように、基地局からの要求にその都度応じて移動局側から電波信号を送信させることにより、基地局から常時電波信号を送信する場合に比べ、無駄を省きつつ通信を円滑かつ効率的に行うことができる。
【0025】
第9発明は、上記第8発明において、前記送信制御手段の制御に基づく前記第2送信部からの前記距離検出用送信要求信号の送信後、前記位置判定手段による前記位置判定結果に基づき、前記移動局が静止状態であるかどうかを判定する静止判定手段を有し、前記送信制御手段は、前記静止判定手段で前記移動局が静止状態であると判定された場合に、前記偏波面探索用送信要求信号を送信するように前記第2送信部を制御することを特徴とする。
【0026】
最初の位置判定によって移動局が移動していることが検出された場合には、静止判定手段の判定が満たされず、偏波面探索用の電波信号を送信せず姿勢検出処理を行わない。これにより、無駄な姿勢検出処理を行うのを確実に防止し、制御の安定化や通信効率の向上を図ることができる。
【0027】
第10発明は、上記第2乃至第9発明のいずれかにおいて、前記基地局の受信アンテナ手段は、互いに偏波面の向きが直交するように配置された2つの受信アンテナを備えており、前記偏波面制御手段は、前記2つの受信アンテナと前記第2受信部とを選択的に接続する切替手段を備えることを特徴とする。
【0028】
偏波面の向きがある方向である1つの受信アンテナと、偏波面の向きがそのアンテナとは直交する方向である別の受信アンテナとを用意し、それらを選択的に切り替えて第2受信部と接続する。これにより、受信アンテナ手段における直交する2つの偏波面の切り替えを実現することができる。また、アンテナの単純な切り替えだけで足りることから、1つのアンテナにおける偏波面方向の制御を行う場合に比べ、制御を簡素化することができる。
【0029】
第11発明は、上記第2乃至第9発明のいずれかにおいて、前記基地局の受信アンテナ手段は、偏波面の向きを、互いに直交する2つの方向に切り替え可能な1つの受信アンテナであり、前記偏波面制御手段は、前記1つの受信アンテナの前記偏波面を前記直交する2つの偏波面にそれぞれ切り替え制御することを特徴とする。
【0030】
1つの受信アンテナの偏波面の向きを切り替え制御することで、受信アンテナ手段における直交する2つの偏波面の切り替えを実現することができる。また、2つの受信アンテナを切り替えて第2受信部に接続する場合に比べ、アンテナが1つで足りることから、基地局の構成部品数を低減でき小型化も可能となる。
【0031】
第12発明は、上記第10又は第11発明において、前記状態判定手段の前記姿勢検出手段における姿勢検出結果に応じて、対応する報知を行うための報知信号を出力する報知信号生成手段を有することを特徴とする。
【0032】
これにより、例えば移動局の状態が(想定されていない)異常な挙動を示した場合等において、その旨を直ちに管理者等に対し報知することが可能となる。
【0033】
第13発明は、上記第10乃至第12発明のいずれかにおいて、前記状態判定手段は、少なくとも、前記位置判定手段の判定結果及び前記姿勢検出手段の検出結果と、時刻情報とに応じて、前記移動局の状態判定を行うことを特徴とする。
【0034】
これにより、移動局の状態を時間の流れ(午前か午後か、その他具体的な時刻、期日等)と関連づけて管理することが可能となる。
【0035】
第14発明は、上記第13発明において、前記状態判定手段は、前記位置判定手段の判定結果と前記時刻情報とに基づき算出される、前記移動局の移動量に基づき、前記移動局の状態判定を行うことを特徴とする。
【0036】
これにより、移動局の状態を、その移動量や移動速度と関連づけて管理することが可能となる。また例えば、移動局の移動量や移動速度が(想定されている)所定の範囲を逸脱するような異常な挙動を示した場合等において、その旨を直ちに管理者等に対し報知することも可能となる。
【0037】
第15発明は、上記第13又は第14発明において、前記状態判定手段は、あらかじめ設定された移動パターン情報又はあらかじめ検出され蓄積された移動履歴情報に応じて、前記移動局の状態判定を行うことを特徴とする。
【0038】
これにより、移動局の状態を、あらかじめ設定された移動パターンや蓄積された移動履歴と関連づけて管理することが可能となる。例えば、移動局の挙動がそれら移動パターンや移動履歴から大きく逸脱している場合には、その旨を直ちに管理者等に対し報知することも可能となる。
【0039】
第16発明は、上記第13乃至第15発明のいずれかにおいて、前記状態判定手段は、前記時刻情報に従ってあらかじめ定められた移動予定情報又は姿勢予定情報に応じて、前記移動局の状態判定を行うことを特徴とする。
【0040】
これにより、移動局の状態を、あらかじめ定められた移動予定や姿勢予定と関連づけて管理することが可能となる。そして、移動局の移動や姿勢がそれらの予定と異なっている場合には、その旨を直ちに管理者等に対し報知することも可能である。
【0041】
第17発明は、上記第13乃至第16発明のいずれかにおいて、前記状態判定手段は、前記位置判定手段の判定結果及び前記姿勢検出手段の検出結果と、前記所定の移動可能領域の地図情報とに基づき、前記移動局の状態判定を行うことを特徴とする。
【0042】
地図情報を参照して判定を行うことで、地図上に表されるどの場所に移動局が存在し、その場所で移動局がどのような姿勢にあるかを検出することができるので移動局の位置・姿勢状態を正しく判定することができる(例えば同じ横向きでもベッドなら寝ているがトイレでは倒れているなどの判定が可能となる)。
【発明の効果】
【0043】
本発明によれば、設置対象の姿勢及び位置の両方を検出することで、設置対象の状態を推定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
以下、本発明の一実施の形態を図面を参照しつつ説明する。なお、この実施形態では、前述のTDOA方式により距離検出を行う場合を例にとって説明する。
【0045】
図1は、本発明の移動局の状態検出システムの一実施形態である、入院患者管理システムの全体構成を概略的に示す説明図である。
【0046】
図1において、この例では、本実施形態の入院患者管理システム1を、病院病棟の1フロア(患者Mが通常移動可能な範囲)全体に適用した場合を示している。当該フロアにある病室と、トイレと、休憩室と、検査室と、食堂と、それら複数の部屋を連絡する廊下とが、管理対象領域(所定の移動可能領域)となっている。また、それらとは別に、管理担当の操作者(図示せず、以下管理者という)が待機する管理室が、同じフロアに設けられている。上記病室内に設置されたベッドの一つを割り当てられた特定の患者M(この例では一人)が、この入院患者管理システム1の管理対象として設定されている。
【0047】
そして、本実施形態の入院患者管理システム1は、管理対象の患者Mが所持する移動局タグ(移動局)Tと、フロア内で上記管理対象領域となる各部屋に設置された複数(図示の例では5つ)の固定局リーダ(基地局)R1,R2,R3,R4,R5と、管理室内に設置されて上記各固定局リーダR1〜R5と通信ネットワークNWを介して接続されている管理サーバSとを有している。
【0048】
各固定局リーダR1〜R5は、各部屋の例えば壁面に設置され、互いに同じ構成となっている。そして、各固定局リーダR1〜R5は、管理対象領域内を患者Mとともに移動する移動局タグTに対し、無線通信を介して情報を送受信できるようになっている(詳細については後述する)。
【0049】
管理サーバSは、当該フロアの地図情報と入院患者のスケジュール情報とを記憶している。そして管理サーバSは、各固定局リーダR1〜R5にそれぞれ検出させた移動局タグTまでの距離に基づく、移動局タグTのフロア内存在位置(つまり患者Mの存在位置)の監視(検出)を(例えば所定時間ごとに)行う。また管理サーバSは、各固定局リーダR1〜R5に検出させた移動局タグTの姿勢(つまり患者Mの身体の姿勢)の監視も(必要に応じて適宜)併せて行う。そして、管理サーバSは、それら監視結果に応じた報知処理を実行する(詳しくは後述する)。なお、管理対象領域には例えば平面座標系が設定され、あらかじめ各部屋が占有する座標領域及び各固定局リーダR1〜R5の設置位置が図1に示すような地図情報として管理サーバSに記憶されている。
【0050】
図2は、本実施形態の入院患者管理システム1の機能的構成を表す機能ブロック図である。なお、図示の煩雑を回避するために固定局リーダは一つのみ示す。
【0051】
図2において、入院患者管理システム1は、前述したように、患者Mが所持する上記移動局タグTと、この移動局タグTと無線通信を行う上記複数の固定局リーダR1〜R5と、これら固定局リーダR1〜R5に適宜の通信ネットワークNWでそれぞれ接続された上記管理サーバSとを有している。
【0052】
固定局リーダR1〜R5(以下、単体を指す場合は単に「固定局リーダR」と称する)は、リーダ本体部11と、リーダアンテナ(1つの受信アンテナ、受信アンテナ手段)12とを有している。
【0053】
リーダ本体部11は、水平偏波制御部13と、垂直偏波制御部14と、偏波合成部15と、無線部(第2送信部、第2受信部)16と、RSSI部(強度検出手段)17と、ネットワーク通信制御部18と、時計部19Aと、到来時間検出部19と、制御部(偏波面制御手段、送信制御手段)20とを有する。
【0054】
水平偏波制御部13及び垂直偏波制御部14は、リーダアンテナ12が送受する電波信号の水平偏波成分と垂直偏波成分をそれぞれ制御する。偏波合成部15は、上記水平偏波制御部13及び垂直偏波制御部14からのそれぞれの受信信号を一つに合成(又は一つの送信信号を各偏波成分に分割)する。無線部16は、電波信号を送受信するための変調、復調、増幅などの無線機能を実行する。RSSI部17は、受信信号の信号強度を検出する。
【0055】
ネットワーク通信制御部18は、上記通信ネットワークNWを介して管理サーバSとの制御信号及び情報信号の授受の制御を行う。時計部19Aは、現在時刻(時刻情報)を出力する機能を備えており、全固定局リーダR1〜R5の時計部19A同士の間で、公知の適宜の手法により互いの時刻合わせを行うことができる。なお、本実施形態では、通信ネットワークNWにケーブル等を使用した有線ネットワークを想定しているが、これに限らず、無線ネットワークを用いてもよい。
【0056】
制御部20は、上記水平偏波制御部13、垂直偏波制御部14、偏波合成部15、無線部16、RSSI部17、ネットワーク通信制御部18、到来時間検出部19、及び時計部19Aを含む固定局リーダR全体の動作を制御する。すなわち、制御部20は、RAMの一時記憶機能を利用しつつROMにあらかじめ記憶されたプログラムに従って信号処理を行う。具体的には、制御部20は、管理サーバSからの検出処理の実行命令の入力を受け付け、リーダアンテナ12を介した無線通信により移動局タグTの検出処理を行い、その検出結果を上記通信ネットワークNWを介して管理サーバSへ出力する。
【0057】
リーダアンテナ12は、この例では、略正方形形状の平面型アンテナ(いわゆるパッチアンテナ)で構成されている。そして、リーダアンテナ12は、その略正方形形状の面方向が当該固定局リーダRの設置空間に対し鉛直方向となる姿勢で立設されている。リーダアンテナ12の上記略正方形の下辺中央位置近傍には、上記垂直偏波制御部14に接続する垂直偏波用給電点Pvが設けられている。リーダアンテナ12の上記略正方形の一方の側辺中央位置近傍には、上記水平偏波制御部13に接続する水平偏波用給電点Phが設けられている。そして、垂直偏波制御部14及び水平偏波制御部13からリーダアンテナ12の各給電点Pv,Phに高周波電力が供給されると、それぞれ対応する偏波方向成分の電波信号が生成されて、リーダアンテナ12から送信される。逆に、リーダアンテナ12が電波信号を受信すると、その受信された電波信号の各偏波方向成分が、それぞれ対応する給電点Pv,Phに入力され、垂直偏波制御部14及び水平偏波制御部13へと出力される。
【0058】
管理サーバSは、CPU(中央演算装置)21と、メモリ22と、操作部23と、表示部24と、大容量記憶装置25と、ネットワーク通信制御部26とを備えている。
【0059】
メモリ22は、例えばRAMやROM等から構成される。操作部23には、管理者からの指示や情報が入力される。表示部24では、各種情報やメッセージを表示される。大容量記憶装置25は、ハードディスク装置からなり、フロアの地図情報や患者Mなどに関する各種情報を記憶するデータベースとして機能する。ネットワーク通信制御部26は、上記通信ネットワークNWを介し、各固定局リーダR1〜R5との制御信号及び情報信号の授受の制御を行う。
【0060】
移動局タグTは、IC回路部31と、タグアンテナ(送信アンテナ手段)32とを有している。なお、時計部35については後述する。
【0061】
IC回路部31は、電波信号を送受信するための変調、復調、増幅などの無線機能を実現する無線部(第1送信部、第1受信部)33と、この無線部33を含む移動局タグT全体の動作を制御する制御部34とを有する。
【0062】
タグアンテナ32は、例えば直線型アンテナ(いわゆるダイポールアンテナ)で構成されている。このタグアンテナ32は、例えば、当該移動局タグTを所持する患者Mの上半身(背骨)の長手方向に対して常に平行な配置関係を維持するよう所持(固定)される(後述の図5参照)。タグアンテナ32の中央部には、給電点Pcが設けられ、IC回路部31の無線部33に接続されている。そして、送信時にはこのタグアンテナ32の方向と平行な偏波方向(つまり電位が変化する偏波面に沿う方向)で電波信号を送信し、受信時にはタグアンテナ32の方向と平行な偏波方向成分の電波信号に対して高い感度で受信するようになっている。
【0063】
なお、この例で用いる移動局タグTは、その内部に独自に備えた電源(特に図示せず)により駆動するアクティブタグである。この結果、移動局タグTは、比較的弱い電波信号も受信可能である。
【0064】
以上において、本実施形態の最も大きな特徴は、移動局タグTの位置及び姿勢の両方の検出を行うことで、移動局タグTを所持している患者Mの状態を検出することにある。以下、その詳細を順次説明する。
【0065】
(A)移動局の位置検出の手法原理
図3は、本実施形態の入院患者管理システム1において移動局タグTの位置を検出する方法の原理を説明する図である。なお、図3中においては、図示の煩雑を避けるために3つの固定局リーダR1〜R3によって一つの移動局タグTの位置を検出する例を示している。
【0066】
この図3において、患者Mが所持する移動局タグTは上述したように平面座標系が設定されている管理対象領域内を自由な座標位置に移動できるのに対し、3つの固定局リーダR1〜R3は同じ管理対象領域内でそれぞれ既知の設置位置に固定的に配置されている。そして各固定局リーダR1〜R3は通信ネットワークNWを介して一つの管理サーバSに情報を送受可能に接続されている。
【0067】
この構成において、各固定局リーダR1〜R3での移動局タグTからの電波信号の受信時刻差に基づき、管理サーバSは、各固定局リーダR1〜R3から移動局タグTまでの距離をそれぞれ測定検出する。つまり、各固定局リーダR1〜R3の少なくとも1つが移動局タグTに対し所定の送信要求信号を送信し、それに対応して移動局タグTが電波信号(距離検出用の電波信号)を各固定局リーダR1〜R3に向けて送信する。このとき、移動局タグTが距離検出用の電波信号が送信してから固定局リーダRにおいて受信されるまでの時間(到来時間)は、固定局リーダRと移動局タグTとの空間的な距離に比例する。各固定局リーダRから移動局タグTまでの距離が異なる場合には、上記到来時間は、各固定局リーダRごとに異なる値となって時間差が生じる。管理サーバSは、その時間差に基づいて各固定局リーダRと移動局タグTとの間の距離を算出することができる。
【0068】
すなわち、例えば座標(x1,y1)に位置する第1固定局リーダR1と座標(x,y)に位置する移動局タグTとの距離をr1、座標(x2,y2)に位置する第2固定局リーダR2と移動局タグTとの距離をr2、座標(x3,y3)に位置する第3固定局リーダR3と移動局タグTとの距離をr3とする。また、固定局リーダR1〜R3の時計部19Aがそれぞれ有する時刻のずれに基づく誤差sとする。そして、第1固定局リーダR1、第2固定局リーダR2、第3固定局リーダR3それぞれにおいて、移動局タグTから時刻T0で送信された距離検出用の電波信号を受信した受信時刻をT1,T2,T3とする。
【0069】
以上のような条件においては、図3において、
r1+s=√{(x−x1)2+(y−y1)2} ・・(1A)
r2+s=√{(x−x2)2+(y−y2)2} ・・(1B)
r3+s=√{(x−x3)2+(y−y3)2} ・・(1C)
が成り立つ。
【0070】
すると、式(1A)から式(1B)を減じることで、
|r1-r2|=c×|T1-T2| …(1D)
また、式(1A)から式(1C)を減じることで、
|r1-r3|=c×|T1-T3| …(1E)
で表される関係が成り立つ。なお、cは電波速度(光速:約3.0×108[m/s])である。
【0071】
このとき、(受信時刻T1,T2,T3は測定値として既知であり)変数はr1,r2,r3の3つのみであるから、上記(1D)(1E)の2つの式を例えばニュートンラプソン法などにより解くことにより、移動局タグTの位置のx,y座標(x,y)を特定することができる。なお、本実施形態のように5つの固定局リーダR1〜R5を設けることで、さらに精度のよい位置検出を行うことができる。
【0072】
なお、上記の例では、各固定局リーダR1〜R3は電波信号の受信時刻を検出し管理サーバSに送信するのみであり、測距処理(固定局リーダR1〜R3から移動局タグTまでの距離の算出及び位置判定)は管理サーバSが行うが、これに限られない。すなわち、各固定局リーダR1〜R3の制御部20同士でお互いの受信時刻情報の送受信を行い、各固定局リーダR1〜R3が移動局タグTまでの距離の算出まで行って、その算出結果(距離データ)を管理サーバSへ送信するようにしてもよい。管理サーバSでは、それら各固定局リーダR1〜R3からの3つの距離データを集計して、移動局タグTの位置検出を行う(位置判定手段としての機能)。
【0073】
(B)移動局の姿勢検出の手法原理
図4(a)〜(c)は、本実施形態の入院患者管理システム1において移動局タグTの姿勢を検出する手法原理を説明するための説明図である。なお、図中、図示の煩雑を避けるために、固定局リーダRの構成のうちリーダアンテナ12、水平偏波制御部13、垂直偏波制御部14、偏波合成部15、及び制御部20だけを示している。
【0074】
これら図4(a)〜(c)において、上述したように、移動局タグTは患者Mの上半身に対して一体となるよう固定されている。そして、移動局タグTのタグアンテナ32の長手方向は、患者Mの背骨(上半身の長手方向)と平行な配置関係を維持している。この結果、図4(a)や図4(b)に示すように、患者Mが、部屋の移動などで直立姿勢となっている場合(又はベッドやイスなどの上で着座姿勢となっている場合。以下直立姿勢等という)には、タグアンテナ32の長手方向は鉛直方向とほぼ平行となり、つまりタグアンテナ32の偏波方向が鉛直方向となる。また、図4(c)に示すように、患者Mが横姿勢(何らかの病的不具合などによりベッドなどに横臥している状態や床面に転倒している姿勢)となっている際には、タグアンテナ32の長手方向は水平方向とほぼ平行となり、つまりタグアンテナ32の偏波方向が水平方向となっている。
【0075】
本実施形態では、上記を利用し、移動局タグTの偏波方向を検出することによって患者Mの姿勢を検知する。すなわち、リーダアンテナ12の偏波方向がタグアンテナ32の偏波方向に近いほど、より高い受信信号強度で移動局タグTからの電波信号を受信できる。固定局リーダRは、前述したように、制御部20が水平偏波制御部13及び垂直偏波制御部14を制御することで、リーダアンテナ12(パッチアンテナ)における偏波方向を制御可能である。したがって、リーダアンテナ12の偏波方向を垂直方向及び水平方向に切り替え、それぞれで受信した移動局タグTからの電波信号の受信信号強度を比較する。その比較結果に基づき、その時点でのタグアンテナ32の長手方向(姿勢)が垂直方向と水平方向のいずれに近いかの比較検知を行うことができる。この結果、移動局タグTの姿勢、ひいては患者Mの姿勢を検出することができるのである。
【0076】
例えば固定局リーダRの制御部20が垂直偏波制御部14を作動させると、リーダアンテナ12で生成する偏波面が垂直偏波状態となる。この状態では、上記図4(a)に示すように、患者Mが直立姿勢等の場合(タグアンテナ32の偏波方向はほぼ鉛直方向)に、固定局リーダRと移動局タグTのそれぞれの偏波方向がかなり近い(ほぼ平行一致する)関係となる。この結果、固定局リーダRは移動局タグTからの電波信号を高い受信信号強度で受信できる。一方、固定局リーダRの制御部20が水平偏波制御部13を作動させると、リーダアンテナ12で生成する偏波面は水平偏波状態となる。この状態では、患者Mが直立姿勢等の場合(タグアンテナ32の偏波方向はほぼ鉛直方向)には、上記図4(b)に示すように、固定局リーダRと移動局タグTの偏波方向が大きく異なる(ほぼ直交する)関係となる。このため、固定局リーダRは移動局タグTからの電波信号を低い受信信号強度でしか受信できない。
【0077】
したがって、上記の、垂直偏波状態で大きな受信信号強度が得られ、水平偏波状態で小さな受信信号強度しか得られなかったという結果に基づき、患者Mが直立姿勢等であることを検出することができる。
【0078】
上記同様、患者Mが横姿勢等の場合(タグアンテナ32の偏波方向はほぼ水平方向)には、リーダアンテナ12の偏波面が水平偏波状態のときに、図4(c)に示すように固定局リーダRと偏波方向が一致する。この結果、固定局リーダRは移動局タグTからの電波信号を高い受信信号強度で受信することができる。逆にリーダアンテナ12の偏波面が垂直偏波状態の時には固定局リーダRと偏波方向が一致せず、移動局タグTからの受信信号強度が小さくなる(図示省略)。
【0079】
したがって、上記の、水平偏波状態で大きな受信信号強度が得られ、垂直偏波状態で小さな受信信号強度しか得られなかったという結果に基づき、患者Mが横姿勢等であることを検出することができる。
【0080】
なお、特に図示しないが、固定局リーダRの制御部20は、水平偏波制御部13及び垂直偏波制御部14における搬送波の振幅と位相差を制御することで、リーダアンテナ12における偏波方向を任意の角度に合成することや、あらゆる角度に対応可能ないわゆる円偏波を合成することも可能である。これらの各偏波方向を必要に応じて移動局タグTの姿勢検出に利用するようにしてもよい。
【0081】
なお、上記の例では、各固定局リーダRは電波信号の受信信号強度を検出し管理サーバSに送信するのみであり、姿勢検出処理(偏波面ごとの受信信号強度の比較により移動局タグTの姿勢の検出)は管理サーバSが行うが、これに限られない。すなわち、各固定局リーダRごとに2つの偏波面における受信信号強度の送受信を行い、その比較に基づく姿勢の検出まで行って(=姿勢検出手段としての機能)、その算出結果(距離データ)を管理サーバSへ送信するようにしてもよい。この場合、管理サーバSでは、それら各固定局リーダRからの姿勢検出結果を集計して、最終的な移動局タグTの姿勢を決定する。
【0082】
また、移動局タグTを患者Mの手足に取り付けると、移動局タグTの姿勢と患者Mの姿勢とが異なる可能性がある。これを回避して患者Mの姿勢と移動局タグTの姿勢との一致性を確保するには、例えば図5に示すように、移動局タグT(平板形状に形成可能)を患者Mの脇腹などの胴部に配置させ、ベルト41などで上半身に固定するようにしてもよい。
【0083】
(C)状態検出のための制御
【0084】
図6及び図7は、管理サーバS、固定局リーダR1〜R5、及び移動局タグTの間で送受される各種信号の送受と制御動作の一例を表すシーケンス図である。これら図6及び図7において、基本的に図中上側から下側に向かっての時系列変化で各手順を表している。上述したように、管理サーバSと固定局リーダR1〜R5(複数設置しているうちの一つのみ図示)との間は、通信ネットワークNWを介した信号の送受である。また、固定局リーダR1〜R5と移動局タグTとの間は、無線通信を介した信号の送受となっている。
【0085】
まず最初に、図6に示すステップSS10において、管理サーバSのCPU21がネットワーク通信制御部26を介し、各固定局リーダR1〜R5(あるいは特定の1つの固定局リーダRのみでもよい)に対し、移動局タグTへの距離検出用の電波送信要求を送信するよう指示信号を出力する。これにより、ステップSR10で、対応する固定局リーダRの無線部16がリーダアンテナ12を介し移動局タグTに向けて電波送信要求信号(距離検出用送信要求信号)を送信する。
【0086】
そして、この送信要求信号を受信した移動局タグTの無線部33が、ステップST10において、タグアンテナ32を介し、対応する電波信号(距離検出用の電波信号)を送信する。各固定局リーダR1〜R5の無線部16は、ステップSR20で、リーダアンテナ12を介しそれぞれ距離検出用の電波信号を受信する。そして、到来時間検出部19がそのときの受信時刻情報を検出し、制御部20がその受信時刻情報をネットワーク通信制御部18を介して管理サーバSに出力する。
【0087】
そして管理サーバSのCPU21が、ステップSS20において、各固定局リーダR1〜R5から入力した受信時刻の差(=到来時間の差)に基づき、それぞれの移動局タグTとの間の距離・位置を算出する。
【0088】
なお、上記ステップST10では、固定局リーダRからの送信要求に応じて距離検出用の電波信号を移動局タグTから送信するようにしたが、これに限られない。すなわち、移動局タグTが一定時間間隔で自発的に電波信号を発信し続け、各固定局リーダRがその発信し続ける電波信号を受信し、これに基づき管理サーバSで距離検出を行うようにしてもよい。
【0089】
次にステップSS40で、管理サーバSのCPU21は、上記ステップSS20で算出した移動局タグTの位置座標と、あらかじめ大容量記憶装置25に記憶している当該フロアの地図情報(管理対象領域内において各部屋が占有する座標領域などが記録されている情報)に基づき、患者Mがその時点で所在している部屋(または廊下)を判別する。
【0090】
次に管理サーバSのCPU21は、ステップSS50で、移動局タグTが前回検出された位置座標から大きく移動しているか否かを(例えば移動量に関してあらかじめ設定記憶されたしきい値との大小比較により)判定する。移動局タグTの大きな移動、すなわち患者Mの移動がない場合、判定が満たされず、次のステップSS60へ移る。
【0091】
ステップSS60では、管理サーバSのCPU21が、当該患者Mに対してあらかじめ設定記憶された所定のスケジュールテーブル(後述の図8参照)を参照し、上記ステップSS40で判別された部屋がその時点に対応して設定されている行き先候補の部屋に含まれているか否か(すなわち患者Mがその時点で適切とされている部屋に所在しているか否か)を判定する。その時点で患者Mが所在している部屋が、上記スケジュールテーブルにおいてその時点に対応して行き先候補となっている部屋であった場合、判定は満たされず、図7のステップSS80へ移る。一方、判別された部屋が行き先候補の部屋に含まれている場合、判定が満たされ、ステップSS70へ移る。
【0092】
ステップSS70では、管理サーバSのCPU21が、上記スケジュールテーブルを参照して、その時点で患者Mが所在していると判別された部屋が横姿勢を取りうる部屋であるか否かを判定する。スケジュールテーブルにおいて当該所在中の部屋では患者Mが横姿勢となる可能性がない場合、判定が満たされず、図7のステップSS80へ移る。
【0093】
なお、上記判定ステップSS50において患者Mの移動が確認されて判定が満たされた場合、又は、上記判定ステップSS70において患者Mがその時点に所在する部屋が横姿勢を取りうる部屋であって判定が満たされる場合には、管理サーバSの上記ステップ10に戻り、同様の制御動作を繰り返す。
【0094】
図7において、ステップSS80では、管理サーバSのCPU21が、ネットワーク通信制御部26を介し、各固定局リーダR1〜R5(あるいは特定の1つの固定局リーダRのみでもよい)に対し、移動局タグTへの偏波面探索用の電波送信要求を送信するよう指示信号を出力する。これにより、ステップSR30で、対応する固定局リーダRの無線部16がリーダアンテナ12を介し移動局タグTに向けて電波送信要求信号(偏波面探索用送信要求信号)を送信する。
【0095】
そして、この送信要求信号を受信した移動局タグTの無線部33が、ステップST20で、タグアンテナ32を介し対応する電波信号(偏波面探索用の電波信号)を送信する。各固定局リーダR1〜R5の制御部20は、ステップSR40で、垂直偏波制御部14によりリーダアンテナ12を垂直偏波状態としてこの電波信号を受信する。そしてそのときの受信信号強度をRSSI部17が検出し、検出結果をネットワーク通信制御部18を介し管理サーバSに出力し、管理サーバSがその出力された受信信号強度を取得する(受信信号強度取得手段)。
【0096】
次に、管理サーバSは、ステップSS90で、上記同様、管理サーバSが、各固定局リーダR1〜R5(あるいは特定の固定局リーダR)に対し、移動局タグTへの偏波面探索用の電波送信要求を送信するよう指示信号を出力する。これにより、対応する固定局リーダRがステップSR50で移動局タグTに向けて電波送信要求信号(偏波面探索用送信要求信号)を送信する。送信要求信号を受信した移動局タグTはステップST30で対応する電波信号(偏波面探索用の電波信号)を送信し、各固定局リーダR1〜R5がステップSR60でリーダアンテナ12を(水平偏波制御部13により)水平偏波状態としてこの電波信号を受信する。そして、RSSI部17よりその受信信号強度を検出して管理サーバSに出力し、管理サーバSがその出力された受信信号強度を取得する(受信信号強度取得手段)。
【0097】
なお、上記ステップST20やステップST30では、固定局リーダRからの送信要求に応じて偏波面探索用の電波信号を移動局タグTから送信するようにしたが、これに限られない。すなわち、移動局タグTが一定時間間隔で自発的に電波信号を発信し続け、各固定局リーダRがその発信し続ける電波信号を受信し、これに基づき管理サーバSで偏波面を探索するようにしてもよい。
【0098】
その後、管理サーバSのCPU21が、ステップSS100で、上記ステップSR40において入力した各固定局リーダR1〜R5における垂直偏波状態での受信信号強度と、上記ステップSR60において入力した各固定局リーダR1〜R5における水平偏波状態での受信信号強度とを比較する。そして、その時点での移動局タグTからの偏波面探索用電波信号が、垂直偏波状態での受信より水平偏波状態での受信の方が受信信号強度が高いか否か(=言い換えれば、移動局タグTや患者Mの姿勢が垂直よりも水平に近いか否か)を判定する。このときの判定は、まず全体的に受信信号強度が最大の固定局リーダRを1つ特定し、その固定局リーダRについて垂直偏波状態と水平偏波状態とを比較してもよい。あるいは、全固定局リーダR1〜R5のうちいずれかについて垂直偏波状態での受信信号強度の最大値と、全固定局リーダR1〜R5のうちいずれかについて水平偏波状態での受信信号強度の最大値とを比較するようにしてもよい。
【0099】
上記のような比較手法に基づき、水平偏波状態での受信信号強度が、垂直偏波状態での高い場合、判定が満たされ、移動局タグT及び患者Mの姿勢が垂直よりも水平に近いとみなされ、ステップSS110に移る。ステップSS110では、管理サーバSのCPU21が表示部24に報知信号を出力し、患者Mが横転し異常状態となっている可能性が高い旨を表示させ、管理者に報知する。そしてこのフローを終了する。
【0100】
なお、上記ステップSS100において、移動局タグT及び患者Mの姿勢が水平よりも垂直に近く判定が満たされない場合、図6に示した管理サーバSの上記ステップ10に戻り、同様の制御動作を繰り返す。
【0101】
以上により、患者Mがその時点でスケジュールテーブルに設定されていない不適切な部屋で横姿勢状態となっていることが検出された場合(又はスケジュールテーブルで横姿勢となる可能性がないとされている部屋において患者Mが横姿勢状態となっていることが検出された場合)に、患者Mが何らかの病的な原因により横転している異常状態を、管理者に報知することが可能となる。
【0102】
図8は、前述した、各時間区分における患者Mの適切な所在位置を管理するスケジュールテーブルを表す説明図である。
【0103】
図8において、このスケジュールテーブルは、管理サーバSの上記大容量記憶装置25に格納保持されている。この例では、10分ごとに患者Mが通常の場合に所在すると予想される行き先候補(移動予定情報)が3つまで設定されている。そして、それぞれの行き先候補に対応して、患者Mが横姿勢となりうる可能性の有無の情報(姿勢予定情報)が記載されている。例えば、図示する例において患者Mは7:00まで病室のベッドで就寝している予定となっており、7:00以降に起床して7:20から30分間で食堂で朝食を取り、8:00から30分間の間は検査室で検査を受けるスケジュールとなっている。そして常にトイレが2つ目の行き先候補として設定されており、また就寝時間と検査時間以外には患者Mが休憩室へ行く可能性があるものとして3つ目の行き先候補として設定されている。
【0104】
管理サーバSは、このスケジュールテーブルを参照することで、患者Mがその時点において不適切な位置に不必要な時間滞在したままとなっていないか、さらに不適切な位置で横姿勢となっていないかを判断し、例えば患者Mが病的原因により床に横転しているなどの異常状態が発生している可能性を検知することができる。
【0105】
以上において、上記図6及び図7において実行される、ステップSS20、及びステップSS100が各請求項記載の状態判定手段を構成する。またそのうちステップSS20が距離検出手段を構成するとともに、位置判定手段をも構成する。またステップSS100が姿勢検出手段を構成する。また、図7のステップSS110が、報知信号生成手段を構成する。また、図6のステップSS50が、静止判定手段を構成する。
【0106】
以上のように構成した本実施形態においては、移動局タグTのタグアンテナ32から電波信号が送信されると、その電波信号が固定局R1〜R5の無線部16にて受信され、このときの電波信号の受信時刻が到来時間検出部19で検出される。これにより、管理サーバSが、固定局リーダR1〜R5の受信時刻差情報に基づき位置判定を行う(ステップSS20)。
【0107】
一方、移動局タグTのタグアンテナ32の偏波方向はタグ自体に固定であるのに対し、固定局リーダR1〜R5のリーダアンテナ12の偏波方向は互いに交差する(この例では直交する)2つの偏波方向に切り替え可能である。そしてこの切り替え時において、各偏波方向における受信信号強度はRSSI部17で検出される。そして、無線通信における電波信号の送受信において、送信側と受信側との偏波方向が一致しているほど受信側での受信信号強度が大きくなる性質を利用し、上記2つの偏波方向における受信信号強度の大小(いずれの偏波方向において受信信号強度が大であったか)に応じて、管理サーバSが移動局タグTの姿勢検出処理を行う(ステップSS100)。
【0108】
以上のようにして、移動局タグT(言い換えれば患者M。以下同様)の位置判定と姿勢検出との両方を併せて行うことができる。この結果、移動局タグTを所持する患者Mの正確な状態を推定することができる。
【0109】
また、本実施形態では特に、姿勢検出処理結果に応じて対応する報知を行うための報知信号を出力する。これにより、患者Mの状態が(想定されていない)異常な挙動を示した場合等において、その旨を直ちに管理者等に対し報知することができる。
【0110】
また、本実施形態では特に、位置判定及び姿勢検出処理のそれぞれの検出結果に加え、(例えば固定リーダRの時計部19Aや管理サーバS内で取得した)時刻情報を用い患者Mの状態判定を行う。これにより、移動局タグTを所持する患者Mの状態を時間の流れと関連づけて管理することができる。詳細には、図8に示したように、時刻情報に従ってあらかじめ定められた予定が記載されているスケジュールテーブルを参照して患者Mの状態判定を行っている。これにより、患者Mの状態を、あらかじめ定められた移動予定(この例では行き先候補の部屋)や姿勢予定(この例では部屋に対応する横姿勢の有無)と関連づけて管理することができる。この結果、移動局タグTを所持する患者Mの移動や姿勢がそれらの予定と異なっている場合には、その旨を直ちに管理者等に対し報知することができる。
【0111】
なお、上記スケジュールテーブルは、標準的に設定された情報だけでなく、さらにあらかじめ設定された患者M個人の移動パターン情報やあらかじめ検出され蓄積された移動履歴情報(午前中は時折惰眠・昼寝する傾向がある、春先は800〜815頃に起床する傾向にある、等)を付加するようにしてもよい。これにより、患者Mの状態を、あらかじめ設定された個人特有の移動パターンや蓄積された移動履歴と関連づけて管理することが可能となる。そして、例えば、患者Mの挙動がそれら移動パターンや移動履歴から大きく逸脱している場合には、その旨を直ちに管理者等に対し報知することも可能である。
【0112】
さらにこのとき、位置判定結果と上記時刻情報とに基づき算出される、移動局タグT(患者M)の移動量(又は移動速度)に基づき、状態判定を行うようにしてもよい。これにより、患者Mの状態を、その移動量や移動速度と関連づけて管理できる。したがって、想定されている所定の範囲を逸脱するような異常な挙動を示した場合(例えば、夜中に歩いた距離が不自然に遠くないか、歩いているにしては移動速度があまりにも遅くないか、通常の動きにしては移動が急激過ぎて不自然である、等)において、その旨を直ちに管理者等に対し報知することができる。さらに、移動量や移動速度が所定のしきい値を超えた場合(異常動作や所定の注目動作に対応するようにあらかじめ設定しておく)にのみ、状態判定を行ったり、報知を行うようにしてもよい。
【0113】
また、本実施形態では特に、管理サーバSの大容量記憶装置25が記憶した地図情報(図1参照)を参照して移動局タグTの状態判定を行う。これにより、地図上に表されるどの場所に移動局タグTが存在し、その場所で移動局タグTがどのような姿勢にあるかを検出することができる。
【0114】
また、移動局タグTが移動中であれば、その移動動作によって姿勢が刻々と変化し、静的な姿勢を検出するのは困難である可能性が高い。そこで、本実施形態では特に、まず、距離検出用の電波信号を移動局タグTより送信して(ステップST10)位置判定を行い、その後偏波面探索用の電波信号を移動局タグTより送信して(ステップST20及びステップST30)姿勢検出処理を行うようにする。このように処理を前後2つに分けることにより、最初の位置判定によって移動局タグTが移動していた場合には、偏波面探索用の電波信号を送信せず姿勢検出処理を行わないようにする(ステップSS50)。これにより、無駄な姿勢検出処理を行うのを防止し、制御の安定化や通信効率の向上を図ることができる。
【0115】
また、本実施形態では特に、固定局リーダRから距離検出用電波信号の送信要求を送信し(ステップSS10)、これに応じる形で移動局タグTから距離検出用の電波信号を送信させて位置判定を行う。また同様に、固定局リーダRから偏波面探索用電波信号の送信要求を送信し(ステップSS80及びステップSS90)、これに応じる形で移動局タグTから偏波面探索用の電波信号を送信させて姿勢検出処理を行う。このように、固定局リーダRからの要求にその都度応じて移動局タグT側から電波信号を送信させることにより、固定局リーダRから常時電波信号を送信する場合に比べ、無駄を省きつつ通信を円滑かつ効率的に行うことができる。
【0116】
また、本実施形態では特に、少なくとも3つの固定局リーダR1〜R5(この例では5つ)で位置判定を行う。これにより、管理サーバSにおいて、移動局タグTが各固定局リーダR1〜R5からどれだけの距離に位置するかを合算し、移動局タグTの存在位置を特定して位置検出を行うことができる。なお、本発明はこれに限られず、距離検出処理を例えば1つの固定局リーダRのみで行うようにしてもよい(但しこの場合はTDOA方式ではなく、後述のTOA方式による測距処理を行う)。この場合、例えば、移動局タグTが当該固定局リーダRからどれだけの距離に位置するか、すなわち所定の近傍領域(つまり当該固定局リーダRが設置されている部屋など)に移動局タグTが存在するかどうかを検出することとなる。
【0117】
また、上記実施形態では特に、1つのリーダアンテナ12において直交する2つの偏波方向の切り替えを行う。これにより、複数のリーダアンテナ12を用意してそれらを切り替える場合に比べ、アンテナが1つで足りることから、固定局リーダRの構成部品数を低減でき小型化も可能となる。なお、本発明はこれに限られない。すなわち、例えば図4に相当する図9に示すように、固定局リーダRに、互いに偏波面の向きが交差する(この例では直交する)ように配置された2つの受信アンテナ12A,12Bを受信アンテナ手段として設けてもよい。つまり、偏波方向がある方向に向く1つの受信アンテナ12Aと、偏波方向がそのアンテナ12Aとは直交する方向に向く別の受信アンテナ12Bとを用意し、それらを選択的に切り替えて無線部16と接続する。これにより、固定局リーダRにおける直交する2つの偏波方向の切り替えを実現することができる(偏波面制御手段としての機能)。そして、アンテナの単純な切り替えだけで足りることから、前述のように1つのアンテナにおける偏波面方向の制御を行う場合に比べ、制御を簡素化できる。また、この変形例において、2つの受信アンテナ12A,12Bに対応して強度検出手段としてのRSSI部をそれぞれ別々に設け、(アンテナを切り替えることなく)同時にそれぞれの受信信号強度を検出するようにしてもよい(偏波面制御手段を省略した構成)。この場合も、上記実施形態と同等の効果を得る。
【0118】
なお、以上においては、移動局タグTからの距離検出用の電波信号に対する各固定局リーダRの受信時刻差により測距処理を行う、いわゆるTDOA方式を例にとって説明した。しかしながら本発明はこれに限られず、TOA方式を用いて測距処理することもできる。
【0119】
図10は、TOA方式を行う本変形例における測距原理の手法を説明するための説明図であり、上記図3に対応する図である。図3と同様、3つの固定局リーダR1〜R3を用いる場合を例にとって説明する。
【0120】
図10において、前述の図3と同様、座標(x1,y1)に位置する第1固定局リーダR1と座標(xt,yt)に位置する移動局タグT(後述のようにTOA方式の場合には時計部35を備えている。図2参照)との距離をr1、座標(x2,y2)に位置する第2固定局リーダR2と移動局タグTとの距離をr2、座標(x3,y3)に位置する第3固定局リーダR3と移動局タグTとの距離をr3とすると、下記の式(2)で表される関係が成り立つ。
(x−x1)2+(y−y1)2=r12
(x−x2)2+(y−y2)2=r22
(x−x3)2+(y−y3)2=r32 …(2)
【0121】
これらの3つの式を解くことにより、x,yの値を算出し、移動局タグTの位置のx,y座標(xt,yt)を特定することができる。
【0122】
前述の図2において、本変形例では、移動局タグTの時計部35が必須の構成となる。そして、この移動局タグTの時計部35と各固定局リーダR1〜R5の時計部19Aとは、所定の方法で時刻合わせが行われる。本変形例では、固定局リーダR1〜R5に備えられた到来時間検出部19(図2参照)が、移動局タグTから距離検出用の電波信号が送信された時刻と、その距離検出用電波信号が固定局リーダR1〜R5で受信された時刻とを検出する。移動局タグTからの距離検出用電波信号の送信時刻は、例えば、制御部20に備えられたベースバンド信号生成復元部(図示せず)が距離検出用電波信号に含まれるベースバンド信号を復元することによって取得することができる。なお、例えば移動局タグTと各固定局リーダR1〜R5とで、あらかじめ所定の時隔で移動局タグTから送信する旨の事前設定をしておき、これに基づき固定局リーダR1〜R5側で移動局タグTからの送信時刻を決定する等、他の手法でもよい。このようにして得られた移動局タグTの送信時刻と各固定局リーダR1〜R5の受信時刻とが管理サーバSへ出力される。管理サーバSは、その送信時刻と受信時刻との差で距離検出用電波信号の伝搬時間を求める。そして、この伝搬時間に電波速度(光速)c(=3.0×108[m/s])を乗じることで、移動局タグTと各固定局リーダR1〜R5との距離(上記のr1,r2,r3等)を算出することができる。なお、前述と同様、上記伝搬時間の算出や距離算出を固定局リーダR1〜R5側で実行するようにしてもよい。
【0123】
本変形例によっても、上記実施形態や各変形例と同様の効果を得る。
【0124】
なお、以上では触れなかったが、例えば上記のように複数個の固定局リーダR1〜R5を設けた場合、各固定局リーダRにおける受信信号強度の大小(上記の例では水平偏波状態での値と垂直偏波状態での値との大小関係)が、全ての固定局リーダRで完全には一致せずばらつく可能性がある。また、特定の固定局リーダRの周囲でマルチパスによる影響によりある偏波方向の強度が低下する場合等もある。そこでこれに対応し、各固定局リーダRごとの上記水平偏波状態・垂直偏波状態での受信信号強度の(大小の)結果を上記ステップSR40及びステップSR60で取得して集計し、その各固定局リーダRごとの大小比較結果を参酌して、移動局タグTの姿勢を検出するようにしてもよい。
【0125】
このとき、5つの固定局リーダR1〜R5に含まれる異なる受信信号強度の大小比較結果から、適宜の規則性に沿って固定局リーダRの優先度を設定することで、上記ばらついた受信信号強度の大小比較結果の中から適宜のものを選択したり、上記マルチパスの影響を受けた基地局での大小比較結果を除外する等が可能となる。優先度設定の一例としては、例えば多数決とし、該当する固定局リーダRの数が最も多数である受信信号強度の大小比較結果を優先して選択する手法がある。
【0126】
あるいは、移動局タグTと各固定局リーダRとの位置関係を考慮に入れるようにしてもよい。すなわち、移動局タグTのアンテナは、アンテナ種類によって固有の指向性がある(例えば上記のダイポールアンテナの場合にはドーナッツ状の指向性となる)。このため、その固有の指向性の態様(形状)によっては、ある位置の固定局リーダRでは水平偏波状態・垂直偏波状態の受信信号強度の大小比較結果が本来検出したい移動局タグTの姿勢に良好に対応するが、別の位置の固定局リーダRでは上記受信信号強度の大小比較結果が本来検出したい移動局タグTの姿勢にあまり良好に対応しない可能性がある。そこで、移動局タグTと各固定局リーダRの位置関係に応じてあらかじめ所定の優先度を決定しておき、その優先度に沿って、5つの固定局リーダR1〜R5に含まれる異なる受信信号強度の大小比較結果から適宜のものを選択し、それに基づいて姿勢検出を行う。
【0127】
以上のようにして、最適な固定局リーダRでの受信信号強度の大小比較結果を利用し、確実に高精度の姿勢検出を行うことができる。
【0128】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。
【0129】
その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0130】
【図1】本発明の移動局の状態検出システムの一実施形態である入院患者管理システムの全体構成を概略的に示す説明図である。
【図2】入院患者管理システムの機能的構成を表す機能ブロック図である。
【図3】移動局タグの位置検出の手法原理を説明するための説明図である。
【図4】移動局タグの姿勢検出の手法原理を説明するための説明図である。
【図5】入院患者の身体に対する移動局タグの取り付け構成の一例を示す図である。
【図6】管理サーバ、固定局リーダ、及び移動局タグの間で送受される各種信号の送受と制御動作の一例を表すシーケンス図である。
【図7】管理サーバ、固定局リーダ、及び移動局タグの間で送受される各種信号の送受と制御動作の一例を表すシーケンス図である。
【図8】各時間区分における入院患者の適切な所在位置を管理するスケジュールテーブルを概念的に表す図である。
【図9】固定局リーダのリーダアンテナをそれぞれ偏波方向が直交する2つの独立したアンテナで構成した場合を示す図である。
【図10】TOA方式を行う変形例における移動局タグの位置検出の手法原理を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0131】
1 入院患者管理システム(移動局の状態検出システム)
12 リーダアンテナ(1つの受信アンテナ、受信アンテナ手段)
12A,12B 受信アンテナ(受信アンテナ手段)
13 水平偏波制御部
14 垂直偏波制御部
15 偏波合成部
16 無線部(第2送信部、第2受信部)
17 RSSI部(強度検出手段)
18 ネットワーク通信制御部
19 到来時間検出部
19A 時計部
20 制御部(偏波面制御手段、送信制御手段)
32 タグアンテナ(送信アンテナ手段)
33 無線部(第1送信部、第1受信部)
T 移動局タグ(移動局)
R,R1〜5 固定局リーダ(基地局)
S 管理サーバ
M 患者(設置対象)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の移動可能領域を移動可能な移動局と、
既知の位置に固定に配置された基地局と、
前記移動局から送信され前記基地局で受信した電波信号に基づき、前記移動局の状態判定を行う状態判定手段とを有する移動局の状態検出システムであって、
前記移動局は、
偏波面が固定の直線偏波である送信アンテナ手段と、
前記送信アンテナ手段を介し電波信号を送信する第1送信部と、
電波信号を受信する第1受信部と
を備えており、
前記基地局は、
電波信号を送信する第2送信部と、
互いに交差する2つの偏波面を生成可能な受信アンテナ手段と、
前記受信アンテナ手段を介し電波信号を受信する第2受信部と、
前記第2受信部で受信した電波信号の到来時間を検出する到来時間検出部と、
前記受信アンテナ手段で生成された前記2つの偏波面における前記受信部での受信信号強度をそれぞれ検出する強度検出手段と
を備えており、
前記状態判定手段は、
前記基地局の前記到来時間検出部で検出した前記到来時間に基づき、前記移動局から前記基地局までの距離検出処理を行う距離検出手段と、
前記強度検出手段で検出した前記2つの偏波面での前記受信信号強度の大小に基づき、前記移動局の姿勢検出処理を行う姿勢検出手段とを備え、
前記距離検出手段の検出結果と前記姿勢検出手段の検出結果とに応じて、前記移動局の状態判定を行う
ことを特徴とする移動局の状態検出システム。
【請求項2】
前記基地局は3局以上配設されており、
前記距離検出手段は、
前記3局以上の基地局それぞれの前記到来時間検出部で検出した前記移動局の到来時間に基づき、前記移動局の位置を判定する位置判定手段であり、
前記状態判定手段は、
前記姿勢検出手段による前記移動局の姿勢検出処理と、前記位置判定手段による前記位置判定を、同時に行う
ことを特徴とする請求項1記載の移動局の状態検出システム。
【請求項3】
前記3局以上の基地局を構成する基地局ごとに、前記強度検出手段での前記2つの偏波面での前記受信信号強度の大小比較結果を取得する受信信号強度取得手段を有し、
前記姿勢検出手段は、
前記受信信号強度取得手段で取得した、各基地局ごとの前記大小比較結果に基づき、前記移動局の姿勢を決定する
ことを特徴とする請求項2記載の移動局の状態検出システム。
【請求項4】
前記姿勢検出手段は、
前記3局以上の基地局における前記大小比較結果が全局で一致しなかった場合、所定の優先度に沿って少なくとも1つの前記大小比較結果を選択し、当該選択された大小比較結果に応じて前記移動局の姿勢を決定する
ことを特徴とする請求項3記載の移動局の状態検出システム。
【請求項5】
前記姿勢検出手段は、
前記位置判定手段で判定された前記移動局の位置と各基地局の位置とにより決定される、前記所定の優先度に沿って、前記少なくとも1つの大小比較結果を選択し、当該選択された大小比較結果に応じて前記移動局の姿勢を決定する
ことを特徴とする請求項4記載の移動局の状態検出システム。
【請求項6】
前記基地局は、
前記受信アンテナ手段を前記2つの偏波面にそれぞれ切り替え制御する偏波面制御手段を有し、
前記強度検出手段は、
前記偏波面制御手段により切り替えられた前記2つの偏波面における前記受信部での受信信号強度をそれぞれ検出する
ことを特徴とする請求項2乃至請求項5のいずれか1項記載の移動局の状態検出システム。
【請求項7】
前記基地局の到来時間検出部は、
前記第1送信部から送信され前記第2受信部で受信された距離検出用の前記電波信号の到来時間を検出し、
前記状態判定手段の前記位置判定手段は、
前記距離検出用電波信号に基づき前記到来時間検出部で検出された到来時間に基づき、前記位置判定を行い、
前記基地局の前記強度検出手段は、
前記距離検出用の電波信号の送信後に、前記第1送信部から送信された偏波面探索用の電波信号が、前記切り替えられた前記2つの偏波面を介し前記受信部で受信されたときの受信信号強度をそれぞれ検出し、
前記状態判定手段の前記姿勢検出手段は、
前記偏波面探索用電波信号に基づき前記強度検出手段で検出された受信信号強度の大小に基づき、前記姿勢検出処理を行う
ことを特徴とする請求項2乃至請求項6のいずれか1項記載の移動局の状態検出システム。
【請求項8】
前記基地局は、
前記移動局の前記第1送信部へ前記距離検出用電波信号を要求するための距離検出用送信要求信号を送信した後、前記移動局の前記第1送信部へ前記偏波面探索用電波信号を要求するための偏波面探索用送信要求信号を送信するように、前記第2送信部を制御する送信制御手段
を有することを特徴とする請求項7記載の移動局の状態検出システム。
【請求項9】
前記送信制御手段の制御に基づく前記第2送信部からの前記距離検出用送信要求信号の送信後、前記位置判定手段による前記位置判定結果に基づき、前記移動局が静止状態であるかどうかを判定する静止判定手段を有し、
前記送信制御手段は、
前記静止判定手段で前記移動局が静止状態であると判定された場合に、前記偏波面探索用送信要求信号を送信するように前記第2送信部を制御する
ことを特徴とする請求項8記載の移動局の状態検出システム。
【請求項10】
前記基地局の受信アンテナ手段は、
互いに偏波面の向きが直交するように配置された2つの受信アンテナを備えており、
前記偏波面制御手段は、
前記2つの受信アンテナと前記第2受信部とを選択的に接続する切替手段を備える
ことを特徴とする請求項2乃至請求項9のいずれか1項記載の移動局の状態検出システム。
【請求項11】
前記基地局の受信アンテナ手段は、
偏波面の向きを、互いに直交する2つの方向に切り替え可能な1つの受信アンテナであり、
前記偏波面制御手段は、
前記1つの受信アンテナの前記偏波面を前記直交する2つの偏波面にそれぞれ切り替え制御する
ことを特徴とする請求項2乃至請求項9のいずれか1項記載の移動局の状態検出システム。
【請求項12】
前記状態判定手段の前記姿勢検出手段における姿勢検出結果に応じて、対応する報知を行うための報知信号を出力する報知信号生成手段を有する
ことを特徴とする請求項10又は請求項11記載の移動局の状態検出システム。
【請求項13】
前記状態判定手段は、
少なくとも、前記位置判定手段の判定結果及び前記姿勢検出手段の検出結果と、時刻情報とに応じて、前記移動局の状態判定を行う
ことを特徴とする請求項10乃至請求項12のいずれか1項記載の移動局の状態検出システム。
【請求項14】
前記状態判定手段は、
前記位置判定手段の判定結果と前記時刻情報とに基づき算出される、前記移動局の移動量に基づき、前記移動局の状態判定を行う
ことを特徴とする請求項13記載の移動局の状態検出システム。
【請求項15】
前記状態判定手段は、
あらかじめ設定された移動パターン情報又はあらかじめ検出され蓄積された移動履歴情報に応じて、前記移動局の状態判定を行う
ことを特徴とする請求項13又は請求項14記載の移動局の状態検出システム。
【請求項16】
前記状態判定手段は、
前記時刻情報に従ってあらかじめ定められた移動予定情報又は姿勢予定情報に応じて、前記移動局の状態判定を行う
ことを特徴とする請求項13乃至請求項15のいずれか1項記載の移動局の状態検出システム。
【請求項17】
前記状態判定手段は、
前記位置判定手段の判定結果及び前記姿勢検出手段の検出結果と、前記所定の移動可能領域の地図情報とに基づき、前記移動局の状態判定を行う
ことを特徴とする請求項13乃至請求項16のいずれか1項記載の移動局の状態検出システム。
【請求項1】
所定の移動可能領域を移動可能な移動局と、
既知の位置に固定に配置された基地局と、
前記移動局から送信され前記基地局で受信した電波信号に基づき、前記移動局の状態判定を行う状態判定手段とを有する移動局の状態検出システムであって、
前記移動局は、
偏波面が固定の直線偏波である送信アンテナ手段と、
前記送信アンテナ手段を介し電波信号を送信する第1送信部と、
電波信号を受信する第1受信部と
を備えており、
前記基地局は、
電波信号を送信する第2送信部と、
互いに交差する2つの偏波面を生成可能な受信アンテナ手段と、
前記受信アンテナ手段を介し電波信号を受信する第2受信部と、
前記第2受信部で受信した電波信号の到来時間を検出する到来時間検出部と、
前記受信アンテナ手段で生成された前記2つの偏波面における前記受信部での受信信号強度をそれぞれ検出する強度検出手段と
を備えており、
前記状態判定手段は、
前記基地局の前記到来時間検出部で検出した前記到来時間に基づき、前記移動局から前記基地局までの距離検出処理を行う距離検出手段と、
前記強度検出手段で検出した前記2つの偏波面での前記受信信号強度の大小に基づき、前記移動局の姿勢検出処理を行う姿勢検出手段とを備え、
前記距離検出手段の検出結果と前記姿勢検出手段の検出結果とに応じて、前記移動局の状態判定を行う
ことを特徴とする移動局の状態検出システム。
【請求項2】
前記基地局は3局以上配設されており、
前記距離検出手段は、
前記3局以上の基地局それぞれの前記到来時間検出部で検出した前記移動局の到来時間に基づき、前記移動局の位置を判定する位置判定手段であり、
前記状態判定手段は、
前記姿勢検出手段による前記移動局の姿勢検出処理と、前記位置判定手段による前記位置判定を、同時に行う
ことを特徴とする請求項1記載の移動局の状態検出システム。
【請求項3】
前記3局以上の基地局を構成する基地局ごとに、前記強度検出手段での前記2つの偏波面での前記受信信号強度の大小比較結果を取得する受信信号強度取得手段を有し、
前記姿勢検出手段は、
前記受信信号強度取得手段で取得した、各基地局ごとの前記大小比較結果に基づき、前記移動局の姿勢を決定する
ことを特徴とする請求項2記載の移動局の状態検出システム。
【請求項4】
前記姿勢検出手段は、
前記3局以上の基地局における前記大小比較結果が全局で一致しなかった場合、所定の優先度に沿って少なくとも1つの前記大小比較結果を選択し、当該選択された大小比較結果に応じて前記移動局の姿勢を決定する
ことを特徴とする請求項3記載の移動局の状態検出システム。
【請求項5】
前記姿勢検出手段は、
前記位置判定手段で判定された前記移動局の位置と各基地局の位置とにより決定される、前記所定の優先度に沿って、前記少なくとも1つの大小比較結果を選択し、当該選択された大小比較結果に応じて前記移動局の姿勢を決定する
ことを特徴とする請求項4記載の移動局の状態検出システム。
【請求項6】
前記基地局は、
前記受信アンテナ手段を前記2つの偏波面にそれぞれ切り替え制御する偏波面制御手段を有し、
前記強度検出手段は、
前記偏波面制御手段により切り替えられた前記2つの偏波面における前記受信部での受信信号強度をそれぞれ検出する
ことを特徴とする請求項2乃至請求項5のいずれか1項記載の移動局の状態検出システム。
【請求項7】
前記基地局の到来時間検出部は、
前記第1送信部から送信され前記第2受信部で受信された距離検出用の前記電波信号の到来時間を検出し、
前記状態判定手段の前記位置判定手段は、
前記距離検出用電波信号に基づき前記到来時間検出部で検出された到来時間に基づき、前記位置判定を行い、
前記基地局の前記強度検出手段は、
前記距離検出用の電波信号の送信後に、前記第1送信部から送信された偏波面探索用の電波信号が、前記切り替えられた前記2つの偏波面を介し前記受信部で受信されたときの受信信号強度をそれぞれ検出し、
前記状態判定手段の前記姿勢検出手段は、
前記偏波面探索用電波信号に基づき前記強度検出手段で検出された受信信号強度の大小に基づき、前記姿勢検出処理を行う
ことを特徴とする請求項2乃至請求項6のいずれか1項記載の移動局の状態検出システム。
【請求項8】
前記基地局は、
前記移動局の前記第1送信部へ前記距離検出用電波信号を要求するための距離検出用送信要求信号を送信した後、前記移動局の前記第1送信部へ前記偏波面探索用電波信号を要求するための偏波面探索用送信要求信号を送信するように、前記第2送信部を制御する送信制御手段
を有することを特徴とする請求項7記載の移動局の状態検出システム。
【請求項9】
前記送信制御手段の制御に基づく前記第2送信部からの前記距離検出用送信要求信号の送信後、前記位置判定手段による前記位置判定結果に基づき、前記移動局が静止状態であるかどうかを判定する静止判定手段を有し、
前記送信制御手段は、
前記静止判定手段で前記移動局が静止状態であると判定された場合に、前記偏波面探索用送信要求信号を送信するように前記第2送信部を制御する
ことを特徴とする請求項8記載の移動局の状態検出システム。
【請求項10】
前記基地局の受信アンテナ手段は、
互いに偏波面の向きが直交するように配置された2つの受信アンテナを備えており、
前記偏波面制御手段は、
前記2つの受信アンテナと前記第2受信部とを選択的に接続する切替手段を備える
ことを特徴とする請求項2乃至請求項9のいずれか1項記載の移動局の状態検出システム。
【請求項11】
前記基地局の受信アンテナ手段は、
偏波面の向きを、互いに直交する2つの方向に切り替え可能な1つの受信アンテナであり、
前記偏波面制御手段は、
前記1つの受信アンテナの前記偏波面を前記直交する2つの偏波面にそれぞれ切り替え制御する
ことを特徴とする請求項2乃至請求項9のいずれか1項記載の移動局の状態検出システム。
【請求項12】
前記状態判定手段の前記姿勢検出手段における姿勢検出結果に応じて、対応する報知を行うための報知信号を出力する報知信号生成手段を有する
ことを特徴とする請求項10又は請求項11記載の移動局の状態検出システム。
【請求項13】
前記状態判定手段は、
少なくとも、前記位置判定手段の判定結果及び前記姿勢検出手段の検出結果と、時刻情報とに応じて、前記移動局の状態判定を行う
ことを特徴とする請求項10乃至請求項12のいずれか1項記載の移動局の状態検出システム。
【請求項14】
前記状態判定手段は、
前記位置判定手段の判定結果と前記時刻情報とに基づき算出される、前記移動局の移動量に基づき、前記移動局の状態判定を行う
ことを特徴とする請求項13記載の移動局の状態検出システム。
【請求項15】
前記状態判定手段は、
あらかじめ設定された移動パターン情報又はあらかじめ検出され蓄積された移動履歴情報に応じて、前記移動局の状態判定を行う
ことを特徴とする請求項13又は請求項14記載の移動局の状態検出システム。
【請求項16】
前記状態判定手段は、
前記時刻情報に従ってあらかじめ定められた移動予定情報又は姿勢予定情報に応じて、前記移動局の状態判定を行う
ことを特徴とする請求項13乃至請求項15のいずれか1項記載の移動局の状態検出システム。
【請求項17】
前記状態判定手段は、
前記位置判定手段の判定結果及び前記姿勢検出手段の検出結果と、前記所定の移動可能領域の地図情報とに基づき、前記移動局の状態判定を行う
ことを特徴とする請求項13乃至請求項16のいずれか1項記載の移動局の状態検出システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2009−250661(P2009−250661A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−95981(P2008−95981)
【出願日】平成20年4月2日(2008.4.2)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年4月2日(2008.4.2)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
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