説明

移動無線端末装置

【課題】消費電力を低減しつつも、所要の精度で測位を行うことが可能な移動無線端末装置を提供する。
【解決手段】制御部100は、GPS測位で求めた位置情報を、他の手法で検出した動きに関する情報で更新して現在位置の情報を取得するとともに、この現在位置の情報に含まれる誤差(累積位置誤差)を監視する。そして、やがてこの誤差が、アプリ許容誤差を満たさなくなった場合には、再びGPS測位を行って、高い精度の位置情報を取得するようにしたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ネットワークに接続される無線基地局と無線通信する移動無線端末装置に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、携帯電話機などの移動無線端末装置は、本来の通信機能の他に、GPS(Global Positioning System)機能などの測位機能を備え、自己の位置を測位し、この測位結果をアプリケーションソフトウェアなどで用いることで、ユーザの利便性を高めている。
【0003】
移動無線端末装置のような携帯型の電子機器にあっては、バッテリ駆動であることより、消費電力の低減が重要である。GPS測位においても、消費電力の低減のために、種々の提案がなされている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
上記特許文献1では、移動速度が予め設定された閾値を超えた場合に、測位を行うことで、消費電力の低減を行うようにしている。しかしながら、測位誤差を考慮せず移動速度を契機に測位を行うため、適切なタイミングで測位が行われないことがあり、測位性能に問題があった。
【特許文献1】特開2007−312165公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の移動無線端末装置では、移動速度が予め設定された閾値を超えた場合に、測位を行うことで、消費電力の低減を行うようにしているが、測位誤差を考慮せず移動速度を契機に測位を行うため、適切なタイミングで測位が行われないことがあり、測位性能に問題があった。
この発明は上記の問題を解決すべくなされたもので、消費電力を低減しつつも、所要の精度で測位を行うことが可能な移動無線端末装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、この発明は、ネットワークに収容される無線基地局を通じて通信を行う移動無線端末装置において、複数の人工衛星からそれぞれ送信される無線信号を受信し、この受信した複数の信号に基づく測位により、現在位置を示す位置情報を求める衛星測位手段と、当該移動無線端末装置の移動距離と移動方向を検出する移動検出手段と、移動検出手段の検出結果に含まれる誤差を検出する誤差検出手段と、衛星測位手段による測位で求めた位置情報を、移動検出手段の検出結果に基づいて更新して位置情報を求める測位制御手段と、測位制御手段による更新に合わせて、誤差検出手段が検出した誤差を累積する誤差累積手段と、誤差累積手段が求めた累積誤差が予め設定した閾値を超えたか否かを判定する判定手段とを具備し、測位制御手段は記判定手段が閾値を超えたと判定した場合に、測位手段を制御して位置情報を新たに取得し、この位置情報を移動検出手段の検出結果に基づいて更新して位置情報を求め、誤差累積手段は、判定手段が閾値を超えたと判定した場合に、求めた累積誤差をリセットするようにした。
【発明の効果】
【0007】
以上述べたように、この発明では、衛星測位によって求めた位置情報を、移動検出で求めた移動距離と移動方向で更新するとともに、この更新された位置情報に含まれる累積誤差を求め、この累積誤差が予め設定した閾値を超えた場合に、再び衛星測位によって位置情報を求めるようにしている。
【0008】
したがって、この発明によれば、累積誤差が閾値を超えた場合にだけ衛星測位が行われるので、消費電力を低減しつつも、所要の精度で測位を行うことが可能な移動無線端末装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照して、この発明の一実施形態について説明する。
図1は、この発明の一実施形態に係わる移動無線端末装置の構成を示すものである。この移動無線端末装置は、移動通信網NWに収容される基地局装置BSを無線通信し、この基地局装置BSおよび移動通信網NWを通じて通信を行うものである。すなわち、以下の説明では、移動無線端末装置の例として携帯電話機を例に挙げて説明するが、公衆無線LANなどによる無線通信で通信する移動無線端末装置であってもよく、その他、無線通信機能を備えれば、PDA(Personal Digital Assistance)や携帯型ゲームなどの電子機器であってもよい。
【0010】
図1に示す移動無線端末装置は、主な構成要素として、制御部100と、無線通信部10と、表示部20と、通話部30と、操作部40と、記憶部70と、GPS受信部60とを備え、基地局装置BSおよび移動通信網NWを介して通信する機能を備える他に、GPS受信部60がGPS衛星ST1〜STnから受信した信号に基づいて測位する機能とを備える。
【0011】
無線通信部10は、制御部100の指示にしたがって、基地局装置BSと無線通信を行うものであって、この無線通信により、音声データや電子メールデータなどの送受信、Webデータやストリーミングデータなどの受信を行う。
表示部20は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)や有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイなどを用いた表示手段であって、制御部100の制御により、画像(静止画像および動画像)や文字情報などを表示して、視覚的にユーザに情報を伝達するものである。
【0012】
通話部30は、スピーカ31やマイクロホン32を備え、マイクロホン32を通じて入力されたユーザの音声を音声データに変換して制御部100に出力したり、通話相手などから受信した音声データを復号してスピーカ31から出力するものである。
操作部40は、文字や数字、所定の命令を入力するための複数のキースイッチなどを備え、これを通じてユーザから指示を受け付けるものである。
【0013】
センサ部50は、地磁気を検出する地磁気センサや、加速度を検出する加速度センサを備える。
GPS受信部60は、制御部100によって駆動制御され、複数のGPS(Global Positioning System)衛星ST1〜STnから送信されるGPS信号を受信し、制御部100に出力する。
【0014】
記憶部70は、制御部100の制御プログラムや制御データ、アプリケーションソフトウェア、通信相手ごとに名称や電話番号などを対応づけて管理するアドレスデータ、送受信した電子メールのデータ、WebブラウジングによりダウンロードしたWebデータや、ダウンロードしたコンテンツデータを記憶し、またストリーミングデータなどを一時的に記憶するものである。なお、具体的には、HDD、RAM、ROM、フラッシュメモリなどで構成され、これらの1つで、または複数を組み合わせて構成することができる。
【0015】
また記憶部70は、地図データ、地物や事象の名称、これらの位置を示す緯度・経度・高度の情報、エリアごとに繁華街か郊外かなど密集度を示す情報などを対応付けたGIS(Geographical Information System)情報を記憶する。なお、GIS情報は、予め記憶部70に記憶しておいてもよいし、移動通信網を通じてGISサーバから必要なGIS情報をダウンロードして記憶部70に記憶してもよい。
【0016】
そしてまた、記憶部70は、過去に測位した測位履歴データとして、測位した日時、測位の結果(緯度・経度・高度)を対応付けて記憶するとともに、移動手段に応じて、単位移動距離当たりの誤差値を示す誤差パラメータを記憶する。
【0017】
制御部100は、マイクロプロセッサを備え、記憶部70が記憶する制御プログラムや制御データにしたがって動作し、当該移動無線端末装置の各部を統括して制御し、音声通信やデータ通信を実現するものである。また制御部100は、電子メールの送受信や、Webブラウジング、ダウンロードしたストリーミングデータに基づいて動画像を表示部20に表示したり、音声通信を行う通信制御機能を備える。
【0018】
さらに制御部100は、記憶部70が記憶する制御プログラムや制御データにしたがって動作することで、アプリケーション実行機能101と、測位機能102と、移動手段推定機能103と、移動速度検出機能104と、移動方位検出機能105と、移動検出機能106とを実現する。
【0019】
アプリケーション実行機能101は、記憶部70が記憶するアプリケーションプログラムを実行し、例えばユーザから指示されたタイミングや、実行しているアプリケーションプログラムに応じた周期のタイミングで、測位機能102に対して測位要求を行う。このとき、アプリケーション実行機能101は、実行しているアプリケーションプログラムの種類や、現在位置を示す属性(例えば、自宅登録した場所の付近、自宅に最寄りの駅近く、繁華街か郊外、過去に訪れた頻度で分類した位置などの区別)、ユーザから指示されたタイミングでの測位要求に迅速に対応するか否か、などに応じた測位周期と測位精度を測位機能102に対して要求する。
【0020】
これは、ユーザが必要とする測位精度は、実行しているアプリケーションプログラムの種類やユーザがおかれる環境やタイミングによって異なり、常に高い測位精度が求められるとは限らない。例えば、ユーザが駅に居て電車の時刻表や乗り換え案内のWebサイトを呼び出したり、周辺に存在する各種ランドマーク、例えば所望の物が買える店舗やレストラン、気象情報、イベント情報、場所に関連する人や会社の連絡先などを表示したりすることが挙げられる。これらの例からも類推できるように、必要とされる情報の種類などによっても、アプリケーションプログラムから求められる測位精度は異なる可能性がある。
【0021】
このため、例えば、アプリケーションプログラムの1つであるナビゲーションプログラムを実行している場合、測位機能102に対して、高い精度で測位するように要求する。また現在位置が繁華街として、記憶部70が記憶するGIS情報に登録されている場合には、郊外として登録されている場合に比べて、相対的に高い精度を要求する。また現在位置の近辺における店舗や駅などの地物や事象(天気など)を検索するプログラムを実行している場合には、低い精度を測位機能102に要求する。このように、状況によって必要最低限の精度を要求することで、高い精度の測位結果を必要としない場合には、処理負荷を抑制して、より迅速に、低消費電力で測位結果を得ることが可能となる。
【0022】
測位機能102は、GPS受信部60が受信したGPS信号に基づいて測位するGPS測位機能や、無線通信部10が基地局装置BSから受信した位置情報に基づく基地局測位機能、後述する移動検出機能106が求めた検出結果(移動距離、移動方向、累積測位誤差)に基づいて、上記測位した結果を更新する測位結果更新機能を備える。
【0023】
そして、測位機能102は、アプリケーション実行機能101からの要求に応じた測位精度にしたがって、GPS測位機能、基地局測位機能あるいは測位結果更新機能を選択し、この選択した機能により測位を行い、当該移動無線端末装置の位置情報(緯度・経度・高度)と累積測位誤差を求め、測位した時刻を示す時刻情報に対応付けて、記憶部70に測位履歴データとして記録するとともに、アプリケーション実行機能101に通知する。
【0024】
なお、測位機能102は、電源投入直後のように現在位置が不明の場合や、記憶部70に測位履歴データが存在しなかったり、所定時間以上経過した古いデータの場合には、まずGPS信号または基地局測位に基づく測位を行う。また、測位機能102は、アプリケーション実行機能101からの要求に応じた精度と周期で測位を行うが、測位によって得た位置情報の精度が、要求される精度を満たさない場合や、累積測位誤差が閾値に達した場合には、GPS測位または基地局測位を実施し、要求を満たす精度の測位結果を得る。
【0025】
一般に、ユーザから指示されたタイミングでの測位要求に迅速に対応する場合、常時現在位置を測位する必要があるが、GPS信号に基づく測位では、測位精度が高い反面、電力消費が激しく、待ち受け時間が短くなる可能性が高い。一方、基地局装置BSから受信した位置情報で測位する場合は、消費電力は抑制できるものの、測位精度はGPS測位よりも低くなってしまう。
【0026】
移動手段推定機能103は、センサ部50のうち、加速度センサが検出した加速度の情報などに基づいて、当該移動無線端末装置を所持するユーザが、例えば徒歩で移動しているのか、車に乗っているのか、電車に乗って移動しているのかを推定する。具体的な判定方法としては、予め、移動手段ごとに、加速度センサが検出した加速度の時系列パターンを記憶しておき、このパターンと加速度センサが検出したパターンを比較して、最も類似するものから移動手段を推定する。
【0027】
移動速度検出機能104は、当該移動無線端末装置を所持するユーザの移動速度を検出するものであって、例えば、上記移動手段推定機能103が徒歩と推定した場合には、加速度センサの検出結果から単位時間当たりの歩数を計数し、これに基づいて、移動速度を推定する。また、上記移動手段検出機能103が車や電車と推定した場合には、加速度センサが検出した加速度を累積することで移動速度を検出する。なお、加速度センサを用いる方法以外にも、特開2007−312165に記載されるような、基地局装置BSから受信した信号のフェージングピッチに基づいて移動速度を検出するようにしてもよい。
【0028】
移動方位検出機能105は、センサ部50のうち、ジャイロセンサの検出結果に基づいて、当該移動無線端末装置を所持するユーザの移動方向を検出する。
移動検出機能106は、測位機能102からの要求にしたがって、移動速度検出機能104が検出した移動速度と、移動方位検出機能105が検出した移動方向を、経過時間に基づいて累積することで、移動距離と移動方向を求める移動検出機能と、この機能で求めた移動距離と移動方向と、上記移動手段推定機能103が推定した移動手段に応じた単位移動距離当たりの誤差値(以下、単位誤差値と略称する)とに基づいて、前回の測位から今回の測位までの測位誤差を求め、この測位誤差を、測位開始から前回の測定までの位置誤差を累積加算した累積測位誤差に加算してすることで、測位開始から現在位置までの累積測位誤差を求める誤差検出機能とを備える。
【0029】
なお、上記単位誤差値は、移動手段に応じて予め異なる値を設定したものであって、記憶部70に、誤差パラメータとして記憶しておく。また、単位誤差値は、移動手段が歩行の場合には、上下動などの移動とは異なる成分が含まれることを考慮して、他の移動手段に比べて、大きな値を設定する。
【0030】
次に、上記構成の移動無線端末装置の動作について説明する。
まず、図2を参照して、初期状態の測位制御、すなわち電源投入直後のように現在位置が不明の場合や、記憶部70に測位履歴データが存在しなかったり、所定時間以上経過した古いデータの場合の測位制御について説明する。
【0031】
上述した状況でアプリケーション実行機能101から測位要求があると、まずステップ2aにおいて測位機能102は、GPS測位機能を選択して、GPS受信部60を起動し、GPS受信部60が受信したGPS信号に基づいて測位を行い、位置情報(緯度・経度・高度)を求めて、ステップ2bに移行する。なお、ステップ2aでは、アプリケーション実行機能101からの測位要求に含まれる測位精度が低い場合には、GPS測位機能を使用せず、基地局測位による測位を行っても良い。
【0032】
ステップ2bにおいて測位機能102は、ステップ2aで行ったGPS測位が成功したか否かを判定する。ここで、緯度・経度・高度が測位できた場合には、ステップ2cに移行し、一方、GPS受信部60がGPS信号を受信できなかったり、アプリケーション実行機能101からの測位要求に含まれる測位精度を満たすことができないなど、GPS測位できない場合には、ステップ2aに移行して、再びGPS測位を行う。
【0033】
ステップ2cにおいて測位機能102は、ステップ2aで得た位置情報と、測位した時刻を示す時刻情報に対応付けて、記憶部70に測位履歴データとして記録するとともに、アプリケーション実行機能101に通知し、当該処理を終了する。
【0034】
次に、図3を参照して、図2で説明した測位制御の後に行う測位制御について説明する。この処理は、アプリケーション実行機能101から測位中止が指示されるまで繰り返し実行される。
【0035】
ステップ3aにおいて測位機能102は、前回の測位から所定周期t1が経過すると、アプリケーション実行機能101からの測位要求に含まれる測位精度にしたがって、基地局測位機能あるいは測位結果更新機能を選択し、この選択した機能を実行し、ステップ3bに移行する。
【0036】
ここで例えば、基地局測位機能を選択した場合には、無線通信部10が基地局装置BSから受信した位置情報に基づいて測位を行う。また測位結果更新機能を選択した場合には、移動検出機能106に測位するように要求し、前回から今回までの移動距離、移動方向および測位誤差を求めさせる。
【0037】
ステップ3bにおいて測位機能102は、記憶部70に測位履歴データに記録した前回の測位結果に、ステップ3aで求めた測位結果を反映させることで、現在位置の情報と、現在の累積測位誤差をそれぞれ求め、ステップ3cに移行する。
【0038】
ステップ3cにおいて測位機能102は、アプリケーション実行機能101から測位要求が生じたか否か、すなわち、測位周期t2(>t1)が到来したか否かを判定する。ここで測位要求が生じた場合には、ステップ3dに移行し、一方、測位要求が生じていない場合には、ステップ3aに移行して、再びGPS測位以外の手法により、所定周期で測位を行う。
【0039】
ステップ3dにおいて測位機能102は、ステップ3bで求めた現在の累積測位誤差が、測位要求に含まれる測位精度(以下、アプリ許容誤差と称する)を満たしているか否かを判定する。現在の累積測位誤差が測位精度を満たしていない、すなわち要求される精度が得られていない場合には、ステップ3eに移行し、一方、累積測位誤差が測位精度を満たしている、すなわち要求される精度が得られている場合には、ステップ3hに移行する。
【0040】
ステップ3eにおいて測位機能102は、GPS測位機能を選択して、GPS受信部60を起動し、GPS受信部60が受信したGPS信号に基づいて測位を行い、位置情報(緯度・経度・高度)を求めて、ステップ3fに移行する。
【0041】
ステップ3fにおいて測位機能102は、ステップ3eで行ったGPS測位が成功したか否かを判定する。ここで、緯度・経度・高度が測位できた場合には、ステップ3gに移行し、一方、GPS受信部60がGPS信号を受信できなかったり、アプリケーション実行機能101からの測位要求に含まれる測位精度を満たすことができないなど、GPS測位できない場合には、ステップ3eに移行して、再びGPS測位を行う。
【0042】
ステップ3gにおいて測位機能102は、ステップ3bで求めた累積位置誤差をリセットするとともに、ステップ3bで求めた現在位置の情報に代わって、ステップ3eで求めた測位結果に基づく位置情報を現在位置とし、ステップ3hに移行する。
【0043】
ステップ3hにおいて測位機能102は、現在位置の情報と、現在の累積位置誤差と、現在時刻とを対応付けて、記憶部70に測位履歴データとして記録するとともに、これらの情報をアプリケーション実行機能101に通知し、ステップ3aに移行する。
【0044】
次に、図4を参照して、累積位置誤差が累積される様子について説明する。
初めの測位要求401に対して、測位機能102は、GPS測位を実行し、アプリ許容誤差を満たす、ある程度の誤差で現在位置を測定する。その後、測位機能102は、GPS測位は停止し、これに代わって所定の周期t1で、測位結果更新機能により移動検出機能106による測位を行う。
【0045】
やがて、ユーザが歩行、静止の各状態を経たのち、周期t2が経過し、再びアプリケーション実行機能101から測位要求402が発生する。このとき、累積位置誤差は、アプリ許容誤差を満たしているので、所定の周期t1で、移動検出機能106による測位が継続される(ステップ3d、3h、3a)。
【0046】
その後、移動手段として電車が利用されたことを移動手段推定機能103が推定すると、累積位置誤差が急増大し、アプリ許容誤差を超える。
そして、周期t2が経過し、再びアプリケーション実行機能101から測位要求403が発生する。このとき、累積位置誤差は、アプリ許容誤差を満たしていないので、GPS測位(ステップ3e)が実行される。これにより、測位結果更新機能よりも高いGPS測位が行われたことより、累積位置誤差をリセットし、このGPS測位に基づく位置情報がアプリケーション実行機能101に通知される。その後は、再び、所定の周期t1で、移動検出機能106による測位が行われ、少しずつ、累積位置誤差が上昇する。
【0047】
以上のように、上記構成の移動無線端末装置では、GPS測位で求めた位置情報を、他の手法で検出した動きに関する情報で更新して現在位置を求めるとともに、この求めた現在位置に含まれる誤差(累積位置誤差)を監視する。そして、やがてこの誤差が、実行しているアプリケーションプログラムの許容誤差を満たさなくなった場合には、再びGPS測位を行って、高い精度で現在位置を測位するようにしている。
【0048】
したがって、上記構成の移動無線端末装置によれば、累積位置誤差がアプリ許容誤差を満たさなくなった場合に限って、GPS測位を行うにしているので、常にGPS測位を行う場合に比べて、消費電力を低減しつつも、所要の精度で測位を行うことができる。
【0049】
また、実行しているアプリケーションプログラムの種類や、現在位置の属性(例えば、自宅登録した場所の付近か否か、自宅に最寄りの駅近くか否か、繁華街か郊外か、過去に訪れた頻度で分類し頻度の高い分類の位置か否か、などの区別)、ユーザから指示のあったタイミングでの測位要求に迅速に対応するか否か、などに応じた周期で、累積位置誤差がアプリ許容誤差を満たしているか否かを判定するようにしているので、アプリ許容誤差を満たした測位が行える。
【0050】
なお、この発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。例えば、上記の例では、複数のGPS衛星からの無線信号に基づいて、移動無線端末装置自身で測位を行うこととして説明しているが、複数のGPS衛星から受信した無線信号を、基地局を介して測位機能を備えたサーバに送り、このサーバによって測位された情報を得、この情報を利用することも可能である。
【0051】
また上記実施形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることによって種々の発明を形成できる。また例えば、実施形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除した構成も考えられる。さらに、異なる実施形態に記載した構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】この発明に係わる移動無線端末装置の一実施形態の構成を示す回路ブロック図。
【図2】図1に示した移動無線端末装置の初期の測位動作を説明するためのフローチャート。
【図3】図1に示した移動無線端末装置の初期以降の測位動作を説明するためのフローチャート。
【図4】累積位置誤差とアプリ許容誤差の関係を説明するための図。
【符号の説明】
【0053】
10…無線通信部、20…表示部、30…通話部、31…スピーカ、32…マイクロホン、40…操作部、50…センサ部、60…受信部、70…記憶部、100…制御部、101…アプリケーション実行機能、102…測位機能、103…移動手段推定機能、104…移動速度検出機能、105…移動方位検出機能、106…移動検出機能、BS…基地局装置、NW…移動通信網、ST1〜STn…GPS衛星。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークに収容される無線基地局を通じて通信を行う移動無線端末装置において、
複数の人工衛星からそれぞれ送信される無線信号を受信し、この受信した複数の信号に基づく測位により、現在位置を示す位置情報を求める衛星測位手段と、
当該移動無線端末装置の移動距離と移動方向を検出する移動検出手段と、
前記移動検出手段の検出結果に含まれる誤差を検出する誤差検出手段と、
前記衛星測位手段による測位で求めた位置情報を、前記移動検出手段の検出結果に基づいて更新して位置情報を求める測位制御手段と、
前記測位制御手段による更新に合わせて、前記誤差検出手段が検出した誤差を累積する誤差累積手段と、
前記誤差累積手段が求めた累積誤差が予め設定した閾値を超えたか否かを判定する判定手段とを具備し、
前記測位制御手段は、前記判定手段が閾値を超えたと判定した場合に、前記測位手段を制御して位置情報を新たに取得し、この位置情報を前記移動検出手段の検出結果に基づいて更新して位置情報を求め、
前記誤差累積手段は、前記判定手段が閾値を超えたと判定した場合に、求めた累積誤差をリセットすることを特徴とする移動無線端末装置。
【請求項2】
前記誤差検出手段は、
移動検出手段が検出した移動速度に基づいて、移動手段を推定する移動手段推定手段と、
前記移動手段推定手段が推定した移動手段に応じた誤差を決定する誤差決定手段とを備え、
前記誤差累積手段は、前記測位制御手段による更新に合わせて、前記誤差決定手段が決定した誤差を累積することを特徴とする請求項1に記載の移動無線端末装置。
【請求項3】
前記測位制御手段は、前記衛星測位手段による測位で求めた位置情報を、前記移動検出手段の検出結果に基づいて、第1周期で更新して位置情報を求め、
前記判定手段は、前記第1周期よりも長い第2周期で、前記誤差累積手段が求めた累積誤差が予め設定した閾値を超えたか否かを判定することを特徴とする請求項1に記載の移動無線端末装置。
【請求項4】
さらに、前記第2の周期が経過した場合に、前記測位制御手段が求めた位置情報を出力する出力手段を備えることを特徴とする請求項3に記載の移動無線端末装置。
【請求項5】
前記測位制御手段は、前記衛星測位手段による測位で求めた位置情報を、前記移動検出手段の検出結果に基づいて、第1周期で更新して位置情報を求め、
前記判定手段は、前記第1周期よりも長い第2周期で行われるアプリケーションプログラムからの要求に応じて、前記誤差累積手段が求めた累積誤差が予め設定した閾値を超えたか否かを判定することを特徴とする請求項1に記載の移動無線端末装置。
【請求項6】
前記第2周期は、アプリケーションプログラムの種類に応じて可変することを特徴とする請求項5に記載の移動無線端末装置。
【請求項7】
前記閾値は、アプリケーションプログラムの種類に応じて可変することを特徴とする請求項5に記載の移動無線端末装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−139321(P2010−139321A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−314756(P2008−314756)
【出願日】平成20年12月10日(2008.12.10)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】