説明

積層樹脂成形品及びその製造方法

【課題】 主体樹脂層を繊維層の空隙を埋める態様により溶着してなる積層樹脂成形品を構成することによって、特に剛性及び軽量性に優れた樹脂製ボード等の積層樹脂成形品を得る。
【解決手段】 積層樹脂成形品であるカーゴフロアボード1は、その樹脂成形品の本体を構成する主体樹脂層2と、主体樹脂層2の外側を構成する表皮層3と、主体樹脂層2に積層する繊維層4、4との層構成からなり、主体樹脂層2と表皮層3との間には熱溶着層5が積層されている。繊維層4、4は主体樹脂層2の表面および裏面側にそれぞれ配置されている。表皮層3は不織布であって主体樹脂層2の表面の装飾層をなしている。主体樹脂層2と繊維層4、4とは一体に加熱状態で圧着して、主体樹脂層2を繊維層4、4の空隙を埋める態様により溶着してなるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に剛性及び軽量性に優れた樹脂製ボード等の積層樹脂成形品及びその製造方法に関するものである。
【0002】
本発明に係る積層樹脂成形品は、例えば、カーゴフロアボード(自動車荷室の蓋パネルまたはラゲージボード)、リアパーセルシェルフなどの自動車用内装品または内装壁パーティションなどに用いられるものである。
【背景技術】
【0003】
樹脂製ボードの剛性を向上するには、ボードの構成材料を改善するか、またはボードの形状を改善することにより行われる。そして、ボードの構成材料の改善策は次の(1)ないし(4)の通りであり、ボードの形状についての改善策は(5)及び(6)の通りである。
(1)機械的強度の優れた樹脂を使用する。
(2)機械的強度を向上させるため樹脂に充填材を配合する。
(3)金属パイプ等の棒状リンフォース部材をボードに取り付ける。
(4)プラスチック板等の面上リンフォース部材をボードに取り付ける。
(5)補強リブを設ける。
(6)剛性に優れた断面形状とする。
【0004】
従来、強度に優れた樹脂組成物を使用して樹脂製ボードを構成するものとして、樹脂にフィラーを混入することが知られており、特表2001−514589公報は「ブロー成形パレット」を、特開平11−348104号公報は「フィルムインサートブロー」をそれぞれ紹介している。また、強度性に優れた補強材を樹脂製ボードの構成部材として、補強材として補強のための金属パイプをインサートした梁構成によるもの、あるいは補強材として表皮層または芯層によるものが知られており、特開2003−266526公報は「ブロー成形ダクト」を、特公平6−74072号公報は「自転車フレーム」を、特表2001−524898公報は「ブロー成形中空体」を、特許第3408627号公報は「表皮貼り時に水で湿潤する方法」を、特開平7−223255号公報は「ゴルフシャフト等」を、特公平5−213号公報は「ブロー成形タンク」をそれぞれ紹介している。
【特許文献1】特表2001−514589公報
【特許文献2】特開平11−348104号公報
【特許文献3】特開2003−266526公報
【特許文献4】特公平6−74072号公報
【特許文献5】特表2001−524898公報
【特許文献6】特許第3408627号公報
【特許文献7】特開平7−223255号公報
【特許文献8】特公平5−213号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前掲の背景技術(1)のように機械的強度の優れた樹脂を使用したり、背景技術(2)のように機械的強度を向上させるため樹脂に充填材を配合する技術では、樹脂成形品の成形性に制約あるうえ材料自体が高価であり、期待するほどの剛性改善の効果が得られない。また、前掲の背景技術(3)のように金属パイプ等の棒状リンフォース部材をボードに取り付けたり、背景技術(4)のようにプラスチック板等の面上リンフォース部材をボードに取り付ける技術では、リンフォース自体の重量のため軽量化が困難であり、取り付けのための手段も煩雑である。さらに、背景技術(5)のように補強リブを設けたり、背景技術(6)のように剛性に優れた断面形状とする技術では、使用空間が限定されたり成形性の維持等のうえで形状に制約がある等の問題点がある。
【0006】
カーゴフロアボード(自動車荷室の蓋パネルまたはラゲージボード)、リアパーセルシェルフなどの自動車用内装品または内装壁パーティションなどに用いられる樹脂成形品は、優れた撓み強度を要求されるので、撓み強度向上のため金属パイプ等のリンフォースをボード裏面に嵌め込んでいるが、撓み強度向上の反面、軽量性は失われる。このため、リンフォースを使用することなく、剛性と軽量性を共に満足させたいとの強い要望があり、そのためにそれ自体では撓み強度を向上しなくとも、組み合わせにより撓み強度の向上を実現できないかが課題となるが、それに用いようとするポリエステル繊維・ガラス繊維・炭素繊維は、それ自体では撓み強度を有しないので、ボードの上面に荷重が掛かった際、繊維が伸びることや繊維がずれることは好ましくなく、これらの材料を樹脂成形品に対してしっかり固定しなくてはならないことになる。
【0007】
そこで本発明は、このような技術的課題に対し断面二次モーメントが高くなれば撓み強度が向上するとの知見に基づき、技術的要求を満たしてしかも簡単な手段により実現しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は、(1)樹脂成形品の本体を構成する主体樹脂層と上記主体樹脂層に積層される繊維層との少なくとも2層構成からなり、前記繊維層は引張弾性率が0.3GPa以上の繊維が成形品の層面方向で交差するように多数配列して構成され、且つ層面と直交する方向に繊維の隙間が多数構成されその目開き率が10%以上であり、その繊維層と上記主体樹脂層とを一体に加熱状態で圧着して、主体樹脂層が繊維層の空隙を埋めるように溶着してなる積層樹脂成形品に存する。
【0009】
本発明は、(2)樹脂成形品の本体を構成する主体樹脂層と上記主体樹脂層の外側を構成する表皮層と上記主体樹脂層と表皮層との間に介在する繊維層との少なくとも3層構成からなり、上記主体樹脂層と表皮層とが繊維層の空隙を埋めるように溶着してなる上記(1)記載の積層樹脂成形品に存する。
【0010】
本発明は、(3)主体樹脂層は熱可塑性樹脂をブロー成形することにより一体に成形された二重壁中空体である上記(1)または(2)記載の積層樹脂成形品に存する。
【0011】
本発明は、(4)表皮層は、ポリエステル繊維かポリプロピレン繊維で構成された不織布であって主体樹脂層に熱溶着された層をなしている上記(2)または(3)の積層樹脂成形品に存する。
【0012】
本発明は、(5)表皮層は、熱可塑性プラスチックシート層である上記(2)または(3)記載の積層樹脂成形品に存する。
【0013】
本発明は、(6)表皮層は、装飾層と熱溶着層からなる上記(2)ないし(5)のいずれかに記載の積層樹脂成形品に存する。
【0014】
本発明は、(7)樹脂成形品は、外側から表皮層、繊維層、主体樹脂層、繊維層の順で積層した構成である上記(2)ないし(6)のいずれかに記載の積層樹脂成形品に存する。
【0015】
本発明は、(8)主体樹脂層は発泡樹脂を圧縮成形された発泡樹脂で構成されていることを特徴とする上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の積層樹脂成形品に存する。
【0016】
本発明は、(9)上記(1)ないし(7)のいずれかの積層樹脂成形品を製造する方法であって、可塑化溶融状態の樹脂を押出ヘッドより筒状またはシート状の予備成形体として押し出し、上記予備成形体と繊維層と表皮層を分割形式の金型で挟む態様に配置して型締した後、予備成形体をブロー成形することによって二重壁中空体からなる主体樹脂層を成形するとともに、予備成形体の熱により予備成形体を繊維層の空隙を埋めるように溶着してなる積層樹脂成形品の製造方法に存する。
【0017】
本発明は、(10)上記(8)の積層樹脂成形品を製造する方法であって、可塑化溶融状態の発泡樹脂を押出ヘッドより筒状またはシート状の予備成形体として押し出し、上記予備成形体と繊維層と表皮層を分割形式の金型で挟む態様に配置して型締することにより発泡樹脂からなる予備成形体を圧縮成形して主体樹脂層を成形するとともに、予備成形体の熱により予備成形体を繊維層の空隙を埋めるように溶着してなる積層樹脂成形品の製造方法に存する。
【0018】
以下に、本発明における用語の説明を示す。
1.繊維層
本発明において、繊維層とは、引張弾性率が0.3GPa以上、好ましくは10Gpa以上の繊維が成形品の層面方向で交差するように多数配列して構成され、且つ層面と直交する方向に繊維の隙間が多数構成されその目開き率が10%以上、好ましくは20%〜90%の層である。
2.引張弾性率
本発明において、繊維層を構成する繊維の引張弾性率とは、JIS R7606のA法に準拠して測定された値を示す。
3.目開き率
本発明において、繊維層の目開き率とは、シート状に構成された繊維層を上記層面と直交する方向(真上)から写真撮影し、所定の面積Sb、及びその領域内に存在する繊維層を構成する互いに交差する糸と糸との隙間が形成する空隙部の総和Saを測定し、下記式を用いて算出した値を示す。本発明においては、繊維層の異なる箇所10箇所について、それぞれ写真撮影を行い、各算出した値の相加平均値を繊維層の目開き率とした。
4.繊維層を構成する繊維の材料
繊維層を構成する繊維の材料は、無機系繊維及び/又は有機系繊維で構成される。無機系繊維としては、ガラス繊維、PAN系およびピッチ系炭素繊維、ボロン繊維、窒化ケイ素繊維、ステンレススチール繊維、アルミナ繊維、チタン酸カリウム繊維、シリカ繊維、ジルコニア繊維、金属繊維等が使用できる。また、有機系繊維としては、アラミド系繊維、ポリアリレート系繊維、ポリアゾール系系繊維、超高分子量ポリエチレン系繊維、ポリケトン系繊維、PVA系繊維等が使用できる。アラミド系繊維としては、DuPont製「Kevlar」、Teijin−Twaron製「Twaron」、帝人製「Technora」が使用できる。ポリアリレート系繊維としては、クラレ製「Vectran」が使用できる。ポリアゾール系繊維としては、東洋紡製「ザイロンAS」及び「ザイロンHT」が使用できる。超高分子量ポリエチレン系繊維としては、東洋紡製「ダイニーマSK60」、DSM製「SK70」が使用できる。PVA系繊維としては、クラレ製「クラロン−KII」が使用できる。また、繊維層を構成する繊維は、繊維長2cm以上の繊維、特に成形品の層面全体に亘り連続した繊維を選択することが、軽量で且つ高剛性の成形品を得る目的から好ましい。
5.繊維層を構成する繊維の生地
繊維層を構成する繊維の生地は、織物、編物、又は不織布である。織物としては、平織、目抜平織、メッシュクロス(モノフィラメント)、朱子織、綾織等が使用できる。編物としては、トリコットの経編、メリヤス(平編)の横編等が使用できる。不織布としては、ランダム状のチョップドストランドマットが使用できる。チョップドストランドマットは、ストランドを約50mmにカットし、無方向に均一に分散させ、ポリエステルバインダーでマット状に接着成形したものが、強度に方向性がない点で好適に使用できる。上記の生地のなかでも、目抜平織、メッシュクロス(モノフィラメントまたは樹脂でコーティングされたマルチフィラメントからの織物)、トリコット等の経編を選択することにより、主体樹脂層が繊維層の空隙を埋めるように溶着して高剛性の成形品を得る観点より好適である。
6.主体樹脂層
本発明において、主体樹脂層とは、エチレン、プロピレン、ブテン、イソプレンペンテン、メチルペンテン等のオレフィン類の単独重合体あるいは共重合体であるポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン、高密度ポリエチレン)、ポリアミド、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、エチレン−エチルアクリレート共重合体等のアクリル誘導体、ポリカーボネート、エチレン−酢酸ビニル共重合体等の酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、エチレン−プロピレン−ジエン類等のターポリマー、ABS樹脂、ポリオレフィンオキサイド、ポリアセタール等の熱可塑性樹脂が挙げられる。なお、これらは一種類を単独で用いても、二種類以上を混合して用いてもよい。特に、熱可塑性樹脂のなかでもでオレフィン系樹脂またはオレフィン系樹脂を主体にした樹脂、ポリプロピレン系樹脂またはポリプロピレン系樹脂を主体にした樹脂が、繊維層との溶着性、機械的強度および成形性のバランスに優れている点で好ましい。主体樹脂層は、添加剤が含まれていてもよい。かかる添加剤としては、シリカ、マイカ、タルク、炭酸カルシウム、ガラス繊維、カーボン繊維等の無機フィラー、可塑剤、安定剤、着色剤、帯電防止剤、難燃剤、発泡剤等が挙げられる。
7.表皮層
本発明において、表皮層とは、外観性向上、装飾性、成形品と接触する物(例えば、カーゴフロアボードの場合、ボード上面に載置される荷物など)の保護を目的として構成されるものである。表皮層の材質は、繊維表皮材、シート状表皮材、フィルム状表皮材等が適用される。かかる繊維表皮材の素材としては、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリウレタン、アクリル、ビニロン等の合成繊維、アセテート、レーヨン等の半合成繊維、ビスコースレーヨン、銅アンモニアレーヨン等の再生繊維、綿、麻、羊毛、絹等の天然繊維、又はこれらのブレンド繊維が挙げられる。これらの中でも、触感、耐久性及び成形性の観点から、ポリプロピレン又はポリエステルであることが好ましく、ポリエステルであることがより好ましい。繊維表皮材に用いられる糸は、例えば、ポリエステル:(3〜5)デニール×(50〜100)mm等の繊度が3〜15デニール、繊維長さが2〜5インチ程度のステープルの紡績糸と、細い柔軟なフィラメントを束にしたポリエステル:約5デニール×(約30〜200本)=約150〜1000デニール/1等のマルチフィラメント、又は、ポリエステル:400〜800デニール/1等の太いモノ・フィラメントと、を組み合わせて用いることが好ましい。繊維表皮材の組織としては、不織布、織物、編物、それらを起毛した布地等が挙げられる。なお、織物には、織組織が縦糸、横糸が順次上下に交絡する平組織のほか、何本かの糸を跳び越して交絡する種々の変化織も含まれる。これらの中でも、伸びに対する方向性がないため、立体形状に成形し易く、且つ表面の触感、風合いに優れることから、不織布であることが好ましい。ここで、不織布とは、繊維を平行に又は交互させて積上げるか又はランダムに散布してウエブを形成し、次いでウエブとなった繊維を接合してなる布状品を意味する。これらの中でも、成形品の立体形状再現性及び外観特性の観点から、ニードルパンチ法により製造された不織布であることが好ましい。また、ニードルパンチ法により得られた不織布は、織物に比べて強度が小で伸度が大であり任意方向に対する変形度合いが大きいので、不織布としての強度を向上させると共に寸法の安定化を図るために、不織布にバインダーを付着させる、又は、ウエブと不織布を重ね針でパンチさせておくことがより好ましい。これらのことから、繊維表皮材は、ポリプロピレン不織布又はポリエステル不織布であることがより好ましい。この場合、繊維表皮材自体が熱可塑性であるので、剥離回収後、加熱して変形させることによって、別の用途に用いることも可能である。例えば主体樹脂層をポリプロピレンで構成し、繊維表皮材をポリプロピレン不織布で構成すると、成形品の主体樹脂層と繊維表皮材とが同じ素材であることから、リサイクルが容易になる。一方、繊維表皮材がポリエステル不織布であると、ポリプロピレンで構成した主体樹脂層と繊維表皮材との融点が異なるので、成形品に繊維表皮材を接着する際、熱により変質、変形したり、正しい位置に接着できない等の不具合が生じるのを抑制できる。また、この場合、成形性、剛性、外観及び耐久性にも優れる。また、繊維表皮材の引張強度は、立体形状再現性及び成形性の観点から、15kg/cm2以上であることが好ましく、伸度は、30%以上であることが好ましい。なお、かかる引張強度及び伸度の値は、温度20℃で、JIS−K−7113に準拠して測定したものである。シート状表皮材、フィルム状表皮材としては、熱可塑性エラストマ−、エンボス加工された樹脂層、印刷層が外面に付された樹脂層、合成皮革、滑り止め用メッシュ形状の表皮層等が使用できる。
8.熱溶着層
本発明において熱溶着層は、アクリル系、ポリ酢酸ビニル系、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル系、ブタジエン−スチレン共重合体系、ポリエチレン系、エチレン−アクリル酸共重合体系、エチレン−アクリル酸塩共重合体系、エチレン−メタクリル酸共重合体系、エチレン−メタクリル酸塩共重合体系等が挙げられる。なお、不織布からなる繊維表皮材の裏面に、予めバインダーとして熱溶着層を設ける場合は、立体形状からなるキャビティ面を有する金型内における、不織布成形時の空気溜まり防止のための通気性を防げない状態で不織布に積層することが好ましく、且つ成形される主体樹脂層との親和性を考慮してバインダーを選定することがより好ましい。
9.積層樹脂成形品
本発明において、積層樹脂成形品とは、カーゴフロアボード、フットレスト、サイドドアトリム、シートバック、リアーパーセルシェルフ、ドアパネル、座席シート等の自動車内装材、機械器具のキャリングケース、弱電製品の部品、壁材、パーティション等の建築用内装材、椅子等の家具、その他にも、タンク、ダスト、ケース、ハウジング、トレイ、コンテナ等の用途に好適に用いられる。例えば、積層樹脂成形品を自動車用カーゴフロアボードに適用する場合、ボードの表壁に繊維表皮材が貼り付けられ、ボードの裏壁は繊維表皮材を貼り付けず、金型によって成形された樹脂面で構成される。また、ボードの表壁の一部を繊維表皮材で覆うこともできる。本発明の積層樹脂成形品は、軽量で且つ高剛性を発揮する効果を有するので、上面に何らかの荷重が作用し、耐撓み強度の要求される平面上に設置して使用される、例えばカーゴフロアボード等のボード状の製品に好適である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、樹脂成形品の本体を構成する主体樹脂層と主体樹脂層に積層する繊維層との層構成からなり、主体樹脂層と繊維層とを一体に加熱状態で圧着して、主体樹脂層を繊維層の空隙を埋める態様により溶着してなる積層樹脂成形品を構成することによって、特に剛性及び軽量性に優れた樹脂製ボード等の積層樹脂成形品を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1は本発明に係る積層樹脂成形品の一例としてカーゴフロアボードの一部を破断して示す斜視図、図2は同上裏面から見た斜視図、図3は本発明に係る積層樹脂成形品の積層構成を示す積層前及び積層後の断面図、図4は同上積層構成の他例を示す積層前及び積層後の断面図、図5は同上さらに他例を示す積層前及び積層後の断面図、図6は繊維層の繊維構成を示す平面図及び側面図、図7は図1及び図2のカーゴフロアボードをブロー成形する態様の型開状態を示す断面図、図8は同上型締状態を示す断面図である。図9はカーゴフロアボードの他例であって一部を破断して示す斜視図、図10は図9のカーゴフロアボードをブロー成形する態様の型開状態を示す断面図、図11は同上型締状態を示す断面図である。
【0021】
図1及び図2において、カーゴフロアボード1は、その樹脂成形品の本体を構成する主体樹脂層2と、主体樹脂層2の外側を構成する表皮層3と主体樹脂層2に積層する繊維層4、4との層構成からなり、主体樹脂層2と表皮層3との間には熱溶着層5が積層されている。上記繊維層4、4は主体樹脂層2の表面および裏面側にそれぞれ配置されている。表皮層3は不織布であって主体樹脂層2の表面の装飾層を成している。6は手掛部、7は枠状突起部である。
【0022】
繊維層4、4は連続した繊維が層の層面方向に多数配列され、上記多数配列された連続した繊維が層面方向で交差するように構成されており、且つ層面と直交する方向に多数の空隙8が構成された層である(図6参照)。主体樹脂層2と繊維層4、4とは一体に加熱状態で圧着して、主体樹脂層2を繊維層4、4の空隙を埋める態様により溶着してなるものである。図1に示すカーゴフロアボード1は、その表面側と裏面側とに繊維層4、4を配置しているが、図3及びに示すように主体樹脂層2の表面側にだけ繊維層4を配置してもよく、この態様においては図3に示すように表面側に配置した繊維層4を装飾層を兼ねるものとすることができる。
【0023】
熱可塑性樹脂の主体樹脂層2と、主体樹脂層2の外側を構成する不織布の表皮層3と、繊維層4、4との層構成からなる樹脂成形品は、図7及び図8に示すようにブロー成形によって一体に成形された二重壁中空体である。9は中空部、10はパーティングラインである。表皮層3は、ポリオレフィン系エラストマ層である。図4に示すように、主体樹脂層2の表面側に配置した繊維層4は、主体樹脂層2が繊維層4の空隙8を埋めるとともに表皮層3が繊維層4の空隙8を埋める態様で溶着一体化した構成とするのが好適である。また、主体樹脂層2と表皮層3との間の熱溶着層5が繊維層4の空隙を埋める態様で溶着一体化した構成とするものも同様に好適である。
【0024】
図1及び図2に示すカーゴフロアボード1は、図7及び図8に示す態様でブロー成形される。図7及び図8において、11、11は分割形式の金型、12は押出ヘッドである。最終的に主体樹脂層2となる可塑化溶融状態の樹脂であるパリソン13を押出ヘッド12より筒状(またはシート状)の予備成形体として押し出し、パリソン13と繊維層4、4となる繊維体14、14及び表皮層3となる不織布15を金型11、11で挟む態様に配置して型締する。パリソン13は予め膨張させて型締前から繊維体14、14及び不織布15と接触させ、型締後に、パリソン13内に加圧流体を導入してブロー成形することにより、キャビティ16、16に沿った二重壁中空体を成形するとともに、パリソン13の熱によりパリソン13を繊維体14、14の空隙を埋める態様に溶着し、不織布15を溶着して、図1及び図2に示すカーゴフロアボード1を成形する。
【0025】
図9に示すカーゴフロアボード1は、主体樹脂層2が発泡体でなるものである。すなわち、カーゴフロアボード1は、不織布の表皮層3、繊維層14、14及び発泡体の主体樹脂層2の積層構成であって、このカーゴフロアボード1は、図10及び図11に示すように圧縮成形により一体化される。なお、図9に示すカーゴフロアボード1のその他の構成は図1及び図2に示すものと同等であるから、同符号を付して説明を省略する。
【0026】
図10及び図11において、最終的に主体樹脂層2となる可塑化溶融状態の発泡樹脂である発泡体17を押出ヘッド12より筒状(またはシート状)の予備成形体として押し出し、予備成形体と繊維層と表皮層を分割形式の金型11、11で挟む態様に配置して型締することにより発泡樹脂からなる予備成形体を圧縮成形するとともに、予備成形体の熱により予備成形体を繊維層4、4となる繊維体14、14の空隙を埋める態様に溶着してカーゴフロアボード1が成形されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る積層樹脂成形品の一例としてカーゴフロアボードの一部を破断して示す斜視図である。
【図2】同上裏面から見た斜視図である。
【図3】本発明に係る積層樹脂成形品の積層構成を示す積層前及び積層後の断面図である。
【図4】同上積層構成の他例を示す積層前及び積層後の断面図である。
【図5】同上さらに他例を示す積層前及び積層後の断面図である。
【図6】繊維層の繊維構成を示す平面図及び側面図である。
【図7】図1及び図2のカーゴフロアボードをブロー成形する態様の型開状態を示す断面図である。
【図8】同上型締状態を示す断面図である。
【図9】カーゴフロアボードの他例であって一部を破断して示す斜視図である。
【図10】図9のカーゴフロアボードをブロー成形する態様の型開状態を示す断面図である。
【図11】同上型締状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0028】
1 カーゴフロアボード
2 主体樹脂層
3 表皮層
4、4 繊維層
5 熱溶着層
6 手掛部
7 枠状突起部
8 多数の空隙
9 中空部
10 パーティングライン
11、11 分割形式の金型
12 押出ヘッド
13 パリソン
14、14 繊維体
15 不織布
16、16 キャビティ
17 発泡体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂成形品の本体を構成する主体樹脂層と上記主体樹脂層に積層される繊維層との少なくとも2層構成からなり、前記繊維層は引張弾性率が0.3GPa以上の繊維が成形品の層面方向で交差するように多数配列して構成され、且つ層面と直交する方向に繊維の隙間が多数構成されその目開き率が10%以上であり、その繊維層と上記主体樹脂層とを一体に加熱状態で圧着して、主体樹脂層が繊維層の空隙を埋めるように溶着してなることを特徴とする積層樹脂成形品。
【請求項2】
樹脂成形品の本体を構成する主体樹脂層と上記主体樹脂層の外側を構成する表皮層と上記主体樹脂層と表皮層との間に介在する繊維層との少なくとも3層構成からなり、上記主体樹脂層と表皮層とが繊維層の空隙を埋めるように溶着してなることを特徴とする請求項1記載の積層樹脂成形品。
【請求項3】
主体樹脂層は、熱可塑性樹脂をブロー成形することにより一体に成形された二重壁中空体であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の積層樹脂成形品。
【請求項4】
表皮層は、ポリエステル繊維かポリプロピレン繊維で構成された不織布であって主体樹脂層に熱溶着された層をなしていることを特徴とする請求項2または請求項3記載の積層樹脂成形品。
【請求項5】
表皮層は、熱可塑性プラスチックシート層であることを特徴とする請求項2または請求項3記載の積層樹脂成形品。
【請求項6】
表皮層は、装飾層と熱溶着層からなることを特徴とする請求項2ないし請求項5のいずれかに記載の積層樹脂成形品。
【請求項7】
樹脂成形品は、外側から表皮層、繊維層、主体樹脂層、繊維層の順で積層した構成であることを特徴とする請求項2ないし請求項6のいずれかに記載の積層樹脂成形品。
【請求項8】
主体樹脂層は、発泡樹脂を圧縮成形された発泡樹脂で構成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の積層樹脂成形品。
【請求項9】
請求項1ないし請求項7のいずれかの積層樹脂成形品を製造する方法であって、可塑化溶融状態の樹脂を押出ヘッドより筒状またはシート状の予備成形体として押し出し、上記予備成形体と繊維層と表皮層を分割形式の金型で挟む態様に配置して型締した後、予備成形体をブロー成形することによって二重壁中空体からなる主体樹脂層を成形するとともに、予備成形体の熱により予備成形体を繊維層の空隙を埋めるように溶着してなることを特徴とする積層樹脂成形品の製造方法。
【請求項10】
請求項8記載の積層樹脂成形品を製造する方法であって、可塑化溶融状態の発泡樹脂を押出ヘッドより筒状またはシート状の予備成形体として押し出し、上記予備成形体と繊維層と表皮層を分割形式の金型で挟む態様に配置して型締することにより発泡樹脂からなる予備成形体を圧縮成形して主体樹脂層を成形するとともに、予備成形体の熱により予備成形体を繊維層の空隙を埋めるように溶着してなることを特徴とする積層樹脂成形品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−202564(P2009−202564A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−154265(P2008−154265)
【出願日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【出願人】(000104674)キョーラク株式会社 (292)
【Fターム(参考)】