説明

積載式・移動式リサイクルプラント

【課題】排出されたプラスチック類を、排出される場所に近い場所で搬送と貯留に適した形態にすることができ、且つリサイクル工場への搬入前の段階で清浄な状態として、特に飲食に関連した用途に使用できるように処理することを可能にする。
【解決手段】プラスチック類を破砕する破砕機122と、該破砕された破砕片を洗浄する超音波洗浄機126と、該洗浄された破砕片を脱水する脱水機130と、を備えて、該破砕機122、超音波洗浄機126、及び脱水機130が、2つの運搬車196の脱着可能な荷台102A、102Bに分割されて据付られている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック類、特に飲食に関連したプラスチック類を破砕して再利用するのに好適な、積載式・移動式リサイクルプラントに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、資源の有効活用の観点から、廃棄物のリサイクルを推進していくことが重要な課題となってきている。特に、ペットボトルに代表されるプラスチック類は、日常の生活に欠かかせなくなっており、リサイクルの重要性が大きい。
【0003】
ペットボトルのリサイクルには、例えば特許文献1に示すようなリサイクル設備が用いられる。このようなリサイクル設備(リサイクルプラントと称する)においては、つぶされたペットボトルが搬入後に破砕等処理されて、最終的にはフレーク形状で貯留されて、適時出荷される。そのフレーク形状への処理品は、用途に応じた形態に加工するリサイクル工場に原料として搬入されて、そこで再加工されてリサイクル(再生)されることとなる。ここで、リサイクルプラントは、通常ペットボトルが排出される場所から遠く離れた場所に建設されている。そのため、排出されたペットボトルは、各排出場所から収集され、収集後にその場所まで運搬されることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−254430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ペットボトルに代表されるプラスチック類(そのほか、コンビニエンスストアなどで売られる弁当用のプラスチックケース等)は、軽くて、かさばる形態となっている。このため、この形態のまま(若しくはつぶした状態であっても)収集して、上述したリサイクルプラントに搬送することは大変効率の悪いものとなっていた。
【0006】
又、プラスチック類を飲食に関連した用途に再生する場合には、衛生面から清浄である必要があり、プラスチック類のリサイクル過程において食品レベルに対応可能な洗浄工程の採用が求められていた。そして、特に飲食に関連した用途で利用していたプラスチック類は、元々、それほど汚れておらず、使用(排出)直後ならば、洗剤を使わずに(若しくは、微量のみ使用して)、清浄化が可能と考えられる。しかし、時間が経つにつれて、汚れがプラスチック類にこびりついて洗浄の負荷が激増する。つまり、汚れがこびりつくと水だけではますます落としにくくなる。このため、リサイクルコストの低減という観点からもできるだけ早く洗浄することが求められていた。
【0007】
そこで、本発明は、前記問題点等を解決するべくなされたもので、排出されたプラスチック類を、排出される場所に近い場所で搬送と貯留に適した形態にすることができ、且つリサイクル工場への搬入前の段階で清浄な状態として、特に飲食に関連した用途に使用できるように処理することを可能にする積載式・移動式リサイクルプラントを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、プラスチック類を破砕する破砕機と、該破砕された破砕片を洗浄する超音波洗浄機と、該洗浄された破砕片を脱水する脱水機と、を備えて、該破砕機、超音波洗浄機、及び脱水機が、少なくとも2以上の移動手段の脱着可能な荷台に分割されて据付られていることにより、前記課題を解決したものである。
【0009】
本発明は、リサイクルプラントを移動可能としながらプラスチック類を破砕片にした段階で、超音波洗浄を行うものである。このため、本発明は通常の洗浄に比べてより破砕片を清浄にすることができる。すなわち、積載式・移動式リサイクルプラントにおける処理過程で超音波洗浄を行うことで、リサイクル工場への搬入前の段階で、食品レベルに対応可能な洗浄工程を確保することができる。
【0010】
そして、本発明に必要なスペースは、移動手段のうちの荷台のみのスペースとすることができるので、省スペースを実現することができる。本発明は、必要となる処理装置の数に従い、必要な処理装置を搭載する荷台の数を増やすものであるが、移動手段と一体の荷台で本発明と同じスペースをその荷台で確保する場合と比較すれば、リサイクルプラントの規模が大きくなるほど、省スペースの効果が大きくなる。
【0011】
同時に、必要な処理装置全てを1つの荷台に搭載せずに分割するので、荷台(移動手段)の大型化を回避して、積載式・移動式リサイクルプラントの移動と配置を容易とする。そのため、プラスチック類が排出される場所に近い場所で、各処理装置を最適に配置して積載式・移動式リサイクルプラントをコンパクトに構成することが可能である。同時に、プラスチック類の排出される場所に近い場所で処理することで、汚れのこびりつきの程度が少ない状態で洗浄などを行うことができる。このため、積載式・移動式リサイクルプラントで費やすエネルギを低減することができる。
【0012】
更に、処理すべきプラスチック類に応じて、積載式・移動式リサイクルプラントのカスタマイズが容易である。
【0013】
又、前記超音波洗浄機の前段に、更に、前記破砕された破砕片を予備洗浄する洗浄手段を備える場合には、超音波洗浄を行う前に破砕片が前もって洗浄されるので、大きな汚れが予め落とされることとなる。このため、超音波洗浄の段階で効率的に破砕片を洗浄することができる。
【0014】
又、前記超音波洗浄機に、前記洗浄手段に供給される洗浄水と同質の水が供給される場合には、超音波洗浄は洗浄手段で発生する汚れの影響を受けずに行われることとなる。このため、超音波洗浄中に汚れの再付着の心配が少なく、破砕片を更に清浄な状態とすることができる。
【0015】
又、前記超音波洗浄機で排出される処理水が前記洗浄手段に供給される場合には、超音波洗浄は洗浄手段で発生する汚れの影響を受けることなく、且つ超音波洗浄機で排出される処理水を有効利用して、節水することができる。
【0016】
又、更に、前記脱水機の後段に、前記脱水された破砕片を分別する分別機を備える場合には、分別される全ての破砕片をまとめて超音波洗浄で清浄な状態としておくことができる。このため、異なる材質の破砕片を汚れの影響を少なくして高い精度で分別を行うことができる。
【0017】
又、更に、前記移動手段が、前記荷台を自身から取外して外部に配置し、且つ該配置された荷台を自身に取付ける脱着装置を備える場合には、クレーンなどの脱着装置を別に用意する必要がないので、積載式・移動式リサイクルプラントの配置を狭い空間であっても行うことができる。
【0018】
又、更に、前記プラスチック類を処理する過程で排出される前記荷台毎の処理水を、該荷台毎に集積する脱着可能な分離槽を備える場合には、処理水に含まれる固形物や油分は分離槽でまとめて除去することができ、且つ、分離槽が満杯となった際には空の分離槽と交換できる。このため、処理水の漏れを防止して土壌の汚染や悪臭の発生を最小限とすることができる。同時に、処理水のための配管が不要なので、積載式・移動式リサイクルプラントの構築を迅速に行うことができる。又、分離槽の設置場所を荷台とは別に設ける必要は無いので、積載式・移動式リサイクルプラントに必要なスペースを最小化することができる。
【0019】
又、更に、前記プラスチック類を処理するための複数の処理装置の制御を1箇所で行う集中制御装置を備える場合には、各処理装置の制御を容易に行うことができる。
【0020】
又、更に、前記荷台に、独立して該荷台の上下方向の位置を変更可能とする複数の荷台調節手段が設けられている場合には、荷台を配置した際の地面の凹凸形状を平らにするような作業をすることなく、場所を選ばず処理装置の水平設置を確保して迅速に、且つ安定して積載式・移動式リサイクルプラントの構築を行うことができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、排出されたプラスチック類を、排出される場所に近い場所で搬送と貯留に適した形態にすることができ、且つリサイクル工場への搬入前の段階で清浄な状態として、特に飲食に関連した用途に使用できるように処理することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1実施形態に係る積載式・移動式リサイクルプラントの全体構成を示す模式図
【図2】同じく積載式・移動式リサイクルプラントの荷台と分離槽との関係を示す模式図
【図3】同じく積載した荷台を配置する際の動作を示す模式図
【図4】本発明の第2実施形態に係る積載式・移動式リサイクルプラントの全体構成を示す模式図
【図5】本発明の第3実施形態に係る積載式・移動式リサイクルプラントの荷台の構成を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して、本発明の第1実施形態の一例を詳細に説明する。
【0024】
図1は本実施形態に係る積載式・移動式リサイクルプラントの全体構成を示す模式図、図2は同じく積載式・移動式リサイクルプラントの荷台と分離槽との関係を示す模式図、図3は同じく積載した荷台を配置する際の動作を示す模式図、である。
【0025】
積載式・移動式リサイクルプラント100は、図1に示す如く、6つの荷台102A〜102F上のプラスチック類を処理するための処理装置から構成されている。即ち、荷台102Aには主に処理装置としてホッパ120と破砕機122とが、荷台102Bには主に処理装置として超音波洗浄機126と脱水機130とが、荷台102Cには主に処理装置としてエアセパレータ136と比重選別機142と脱水機152とが、荷台102Dには発電機176と集中制御装置178とが、荷台102Eには主に回収ボックス174A〜174Dとが、荷台102Fには主に処理装置としてエアセパレータ158とが、それぞれ据付けられている。
【0026】
積載式・移動式リサイクルプラント100には、図1に示す如く、図示せぬ給水設備に給水管110が接続され、バルブ110A〜110Eを介して、それぞれ破砕機122、超音波洗浄機126、脱水機130、比重選別機142、及び脱水機152に接続されている。バルブ110A〜110Eの開閉により、各処理装置への洗浄水(若しくは水)の給水量を制御する。
【0027】
荷台102A〜102Fは、図2に示す如く、鳥居部104と床部106とを有する。
【0028】
鳥居部104は、床部106に垂直に固定されており、後述する脱着装置198に設けられたフックが係合するフック受け104Aを備えている。
【0029】
床部106には、処理装置、発電機176、集中制御装置178、又は回収ボックス174A〜174E(処理装置等と称する)が据付けられて固定される。そして、図2に示す如く、床部106の外周を囲んで塀部材(アオリと称する)108が設けられ(例えば5cm程度の高さで設けられている)、処理装置から床部106の表面に飛散する洗浄水や処理水等が外部に漏洩することを防止している。床部106の下面には複数の脚部106A、106Bが設けられている。脚部106Bの先端にはころが設けられている。
【0030】
床部106には図示せぬ排水孔が設けられている。排水孔は床部106の下方に設けられた分離槽116に接続されている。又、床部106上の各処理装置の排水管は、図示せぬ床部106上の排水路を介して、分離槽116に接続されている。
【0031】
分離槽116(図1では、116A、116B、116C)は、図2に示す如く、直方体の形状であり、処理水が発生する荷台102の床部106の下方に脱着可能にそれぞれ取付けられている。分離槽116は内部で複数の処理槽部(本実施形態では2つ117A、117B)に分割されている。排水孔及び配水管から処理水が処理槽部117Aに流入して集積されて所定の水量に達すると、次の処理槽部117Bに流入する仕組みとなっている。処理槽部117A、117Bにはそれぞれ、液面の上面と接するように油分離マット119A、119Bが配置されている。このため、分離槽116にて、沈殿物を分離すると共に、油分を油分離マット119A、119Bで除去することが可能である。なお、油分離マット119A、119Bは荷台102上面から、若しくは荷台102側面から挿入、交換される。分離槽116は、所定の処理水の量(満杯)になると、荷台102から取外されて空の分離槽と交換される。満杯の分離槽116の処理水は、廃材等を破砕する際に散水されて、破砕の際に生じる塵埃を防止するよう利用される。なお、分離槽116の交換は、荷台102上面から、若しくは荷台102側面から取外されて交換される。
【0032】
又、荷台102は、図3に示す如く、脱着装置198を備える運搬車196(移動手段であり、トラックやトレーラなど)で実現することができる。運搬車196は、荷台搭載部196A上に、脱着可能な荷台102を備える。荷台102を荷台搭載部196Aから取外して外部に配置する際には、脱着装置198を作動させ脱着装置198に設けられたフックを荷台102の鳥居部104のフック受け104Aに係合させる。そして、図3(B)に示す如く、脱着装置198により荷台102を荷台搭載部196A上で水平方向に移動させると共に、鳥居部104側を上昇させる。そして、荷台102に設けられた鳥居部104の反対側の脚部106Bに設けられたころを外部の地面に接地させる。更に脱着装置198を動作させて荷台102を荷台搭載部196Aから離して、脚部106Bのころで、荷台102を地面に対して水平方向に移動させる。そして、荷台102の脚部104Aを外部の地面に接地させる。
【0033】
このような荷台102の脱着工程により、荷台102を1つ1つ順番に隙間を狭く配置していくことで、荷台102の配置するスペースを少なくして、積載式・移動式リサイクルプラント100をコンパクトに構築することができる。なお、積載式・移動式リサイクルプラント100の構築に際しては、荷台102間の破砕片の搬送路は荷台102の鳥居部104を高さ方向で回避するように配置される、若しくは、鳥居部104が障害とならないように処理装置の配置が定められる(場合によっては、鳥居部104が脱着可能、若しくは鳥居部104を搬送路に障害の出ないような形状としておいてもよい)。なお、上記配置された荷台102を運搬車196に取付けるには、上述した工程の逆を行うことで、積載式・移動式リサイクルプラント100の撤収を省スペースで行うことができる。
【0034】
次に、処理されるプラスチック類がペットボトルであるとして、図1を用いて、本実施形態による積載式・移動式リサイクルプラント100の動作の説明を、各処理装置の動作の説明と共に行う。なお、図1では、荷台102の鳥居部104の位置については図示していない。
【0035】
ペットボトルは荷台102A上のホッパ120に投入される。ペットボトルはホッパ120の下端からコンベア121上に導かれる。コンベア121(搬送路)に載せられたペットボトルは、破砕機122に搬送される。その際に、必要に応じてコンベア121上で、金属類などの異物の手選別が行われる(自動でもよい)。このため、破砕機122の異物(金属類など)による破損を防ぐことができる。そして、ペットボトルは荷台102A上の破砕機122でフレーク状に破砕される。破砕機122は湿式の破砕機であり、バルブ110Aから少量の給水を受けて、ペットボトルに散水される。これにより、ペットボトルがフレーク状に破砕されても、破砕粉が撒き散らされることがなく、且つ破砕機122のブレードの摩耗を低減することができる。なお、散水されてブレードによりペットボトルが破砕される際に、ペットボトル同士に摩擦が生じて、ペットボトルについた汚れが相応に落とされる。即ち破砕機122は予備洗浄手段としての機能も有する(相応の洗浄効果)。
【0036】
フレーク形状化されたペットボトル(破砕片)はコンベア124により、荷台102B上の超音波洗浄機126へ運ばれる。
【0037】
超音波洗浄機126には、バルブ110Bを介して洗浄水が供給される。即ち、超音波洗浄機126には、予備洗浄する洗浄手段としての破砕機122に供給される洗浄水と同質の汚れのない水が供給される。このときの洗浄水は、超音波洗浄機126の槽から減った洗浄水の量だけを追加する形態で供給がなされる。
【0038】
超音波洗浄された破砕片はコンベア128で荷台102B上の脱水機130に搬送される。脱水機130にも洗浄機能が備えられており、バルブ110Cによって供給された洗浄水によって破砕片が濯がれる。濯がれた破砕片は脱水・乾燥される。
【0039】
乾燥された破砕片は、エア搬送路132でブロア134により荷台102C上のエアセパレータ136(分別機)に搬送される。エアセパレータ136では、エア圧力が調整されて破砕片からペットボトルのフィルム部分等の軽い物を分別する。分別されたフィルム部分の破砕片は、エア搬送路138を介してブロア140によって回収ボックス174Aに搬送される。
【0040】
エアセパレータ136の下には比重選別機142(分別機)が配置されている。このため、エアセパレータ136で残った破砕片は自然落下して比重選別機142に投入される。比重選別機142は、湿式であり、破砕片の比重によって水中での浮遊状態の変化を利用して破砕片の分別を行う。なお、水はバルブ110Dから供給される。本実施形態のペットボトルにおいては、キャップ部分の比重が重く比重選別機142の底に溜まることとなる。このためキャップ部分の破砕片がスクリュ式のコンベア144によって取り出され、エア搬送路146を介してブロア148により回収ボックス174Bに搬送される。ここで、エアセパレータ136、比重選別機142で分別される全ての破砕片はまとめて超音波洗浄されている。このため、汚れによる分別精度の低下(比重の変化)が防止できるので、高い精度で安定して異なる材質の破砕片を分別することができる。
【0041】
荷台102C上の比重選別機142に残った破砕片(分別された破砕片の一部)は、コンベア150で荷台102C上の脱水機152に搬送される。脱水機152は、洗浄機能も有しており(洗浄手段)、バルブ110Eから供給される洗浄水により濯ぎを行い、その後脱水・乾燥を行う。
【0042】
乾燥された破砕片は、エア搬送路154を介してブロア156によって荷台102F上のエアセパレータ158に搬送される。エアセパレータ158では、フレーク形状の破砕片のうち、材質が混在している可能性の高い、極めて軽い状態のもの(フラワ形状)について分別するよう圧力が調整されている。そのためフラワ形状の破砕片のみが、エア搬送路160を介してブロア162により回収ボックス174Cに搬送される。
【0043】
エアセパレータ158で残った破砕片は自然落下し、ブロア166によりエアセパレータ158の直下に設けられたエア搬送路168で荷台102E上の回収ボックス174Dに搬送される。
【0044】
これらの処理装置は、荷台102D上の発電機176によって発電された電力の供給を受けている。又、これら全ての処理装置(バルブ110A〜110E、発電機176を含む)は、同じく荷台102D上の集中制御装置178によって、一括して1箇所で制御される。なお、バルブ110A〜110E、発電機176は、手動操作であってもよい。
【0045】
このようにして、積載式・移動式リサイクルプラント100は、リサイクルプラントを移動可能としながらプラスチック類を破砕片にした段階で、超音波洗浄を行うものである。このため、本発明は通常の洗浄に比べてより破砕片を清浄にすることができる。すなわち、積載式・移動式リサイクルプラント100における処理過程で超音波洗浄を行うことで、リサイクル工場への原料としての搬入前の段階で、食品レベルに対応可能な洗浄工程を確保している。そのため、リサイクル工場での洗浄工程を簡略化することもできる。或いは、リサイクル工場でも十分な洗浄を行うことで、原料をより高い清浄さを必要とするグレードの用途に展開することが可能となる。
【0046】
同時に、積載式・移動式リサイクルプラント100に必要なスペースは、ほぼ運搬車196(移動手段)のうちの荷台102A〜102Fのみのスペースとすることができるので、省スペースを実現することができる。積載式・移動式リサイクルプラント100は、必要となる処理装置の数に従い、必要な処理装置を搭載する荷台102の数を増やすものであるが、移動手段と一体の荷台で積載式・移動式リサイクルプラント100と同じスペースをその荷台で確保する場合と比較すれば、リサイクルプラントの規模が大きくなるほど、省スペースの効果を大きくすることができる。
【0047】
又、必要な処理装置全てを1つの荷台に搭載せずに分割するので、荷台102(運搬車196)の大型化を回避できる。このため、大型の運搬車では移動できない道路や場所などが通過できることなどにより、積載式・移動式リサイクルプラント100の移動と配置を容易としている。即ち、プラスチック類が排出される場所により近い場所で、各処理装置を最適に配置して積載式・移動式リサイクルプラント100をコンパクトに構成することが可能である。
【0048】
同時に、プラスチック類の排出される場所に近い場所に積載式・移動式リサイクルプラント100を構築して処理することで、汚れのこびりつきの程度が少ない早い段階で洗浄などを行うことができる。このため、積載式・移動式リサイクルプラント100で費やすエネルギを低減することができる。
【0049】
更に、処理すべきプラスチック類や、要求される処理レベルに応じて、荷台102の組合せで処理装置を簡単に変えることが可能であり、リサイクルプラントのカスタマイズが容易である。
【0050】
又、超音波洗浄機126の前段に、更に、破砕片を洗浄する洗浄手段(破砕機122)を備えているので、超音波洗浄を行う前に破砕片が前もって洗浄されることとなり、大きな汚れが予め落とされることとなる。このため、超音波洗浄の段階で効率的に破砕片を洗浄することができる。
【0051】
又、前記超音波洗浄機126に、洗浄手段である破砕機122に供給される洗浄水と同質の洗浄水が供給されているので、超音波洗浄は破砕機122で発生する汚れの影響を受けずに行われることとなる。このため、超音波洗浄中に汚れの再付着の心配が少なく、破砕片を更に清浄な状態とすることができる。
【0052】
又、更に、脱水機130の後段に、脱水された破砕片を分別する分別機であるエアセパレータ136と比重選別機142とを備えるので、分別される全ての破砕片をまとめて超音波洗浄で清浄な状態としておくことができる。そのため、エアセパレータ136や比重選別機142における汚れによる分別精度の低下を防ぐことができるので、高い精度で安定して異なる材質の破砕片を分別することができる。
【0053】
又、移動手段である運搬車196が、荷台102を自身から取外して外部に配置し、且つ配置された荷台102を自身に取付ける脱着装置198を備えているので、クレーンなどの脱着装置を別に用意する必要がない。このため、積載式・移動式リサイクルプラント100の配置と撤収を狭い空間であっても迅速に実施することができる。
【0054】
又、ペットボトルを処理する過程で排出される荷台102A〜102C毎の処理水を、荷台毎に集積する脱着可能な分離槽116を備えているので、処理水に含まれる固形物は沈殿物として、又油分は油分離マット119A、119Bに吸着されて、分離槽116でまとめて除去することができる。同時に、分離槽116が処理水で満杯となった際にあふれない状態とするように空の分離槽と交換できる。このため、処理水の漏れを防止して土壌の汚染や悪臭の発生を最小限とすることができる。同時に処理水の配管が不要なので、積載式・移動式リサイクルプラント100の構築を迅速に行うことができる。又、分離槽116の設置場所を荷台102とは別に設ける必要はないので、積載式・移動式リサイクルプラント100に必要なスペースを最小とすることができる。
【0055】
又、更に、ペットボトルを処理するための複数の処理装置の制御を1箇所で行う集中制御装置178を備えているので、各処理装置の制御を一括して容易に行うことができる。
【0056】
このようにして、本発明によれば、排出されたプラスチック類(ペットボトルなど)を、排出される場所に近い場所で搬送と貯留に適した形態にすることができ、且つリサイクル工場への搬入前の段階で清浄な状態として、特に飲食に関連した用途に使用できるように処理することが可能となる。
【0057】
次に、本発明の第2実施形態に係る積載式・移動式リサイクルプラントについて図4を用いて以下に説明する。本実施形態においては、プラスチック類を分別する必要が無い例を説明する。
【0058】
本実施形態の積載式・移動式リサイクルプラント200は、3つの荷台202A、202B、202D上のプラスチック類の処理をする処理装置で構成されている。荷台202Aには主にホッパ220と破砕機222とが、荷台202Bには主に超音波洗浄機226と脱水機230(第1の脱水機に相当)とが、荷台202Dには発電機276と集中制御装置278とが、それぞれ据付けられている。即ち、本実施形態は、第1実施形態で使用された荷台102C、102E、102Fを除いた荷台を組合せたリサイクルプラントとほぼ同一の構成である。以下に、処理するプラスチック類としてプラスチック製箸を取り上げて動作を説明する。なお、その他の構成については、符号の下2桁を同一にして、重複する説明を省略する。
【0059】
プラスチック製箸は、荷台202A上のホッパ220に投入される。プラスチック製箸はホッパ220の下端からコンベア221上に導かれる。コンベア221(搬送路)に載せられたプラスチック製箸は、破砕機222に搬送される。その際に、必要に応じてコンベア221上で、金属類などの異物の手選別が行われる(自動でもよい)。このため、破砕機222の異物(金属類など)による破損を防ぐことができる。そして、プラスチック製箸は荷台202A上の破砕機222で破砕される。破砕機222は湿式の破砕機であり、バルブ210Aから少量の給水を受けて、プラスチック製箸に散水される。これにより、プラスチック製箸が破砕されても、破砕粉が撒き散らされることがなく、且つ破砕機222のブレードの摩耗を低減することができる。なお、散水されてブレードによりプラスチック製箸が破砕される際に、プラスチック製箸同士に摩擦が生じて、プラスチック製箸についた汚れが相応に落とされる。即ち、破砕機222は予備洗浄する洗浄手段としての機能を有する(相応の洗浄効果)。
【0060】
破砕片は、コンベア224で荷台202B上の超音波洗浄機226に搬送される。超音波洗浄機226には、バルブ210Bを介して洗浄水が供給される。即ち、超音波洗浄機226には、洗浄手段としての破砕機222に供給される洗浄水と同質の汚れのない水が供給される。このときの洗浄水は、超音波洗浄機226の槽から減った洗浄水の量だけを追加する形態で供給がなされる。
【0061】
超音波洗浄された破砕片はコンベア228で荷台202B上の脱水機230に搬送される。脱水機230にも洗浄機能が備えられており、バルブ210Cによって供給された洗浄水によって破砕片が濯がれる。濯がれた破砕片は脱水・乾燥される。
【0062】
乾燥された破砕片は、回収ボックス274に回収される。
【0063】
このように、本実施形態においては選別の必要が無いため、3つの荷台202A、202B、202Dで、コンパクトに積載式・移動式リサイクルプラント200を構成することができる。
【0064】
同時に、このような、分別の必要のないプラスチック類に対しては、荷台の組合せを減らす(変える)ことで、容易に積載式・移動式リサイクルプラント200のカスタマイズが可能である。又、例えば、プラスチック製箸の汚れがひどいので、急遽、超音波洗浄機226の予備洗浄を十分に行うように積載式・移動式リサイクルプラント200を変更しようとする場合にも、他の荷台上の装置を変更することなしに新たに洗浄装置を据付けた荷台を荷台202Aと荷台202Bとの間に配置するといったことで、カスタマイズを迅速に行うことができる。
【0065】
次に、本発明の第3実施形態に係る積載式・移動式リサイクルプラントについて説明する。
【0066】
第1実施形態及び第2実施形態においては、荷台の脚部は上下方向に調整可能なものではなかったが、本実施形態においては、荷台302の脚部306A、306Bとは別に上下方向に独立して調整可能な複数(本実施形態では4つ)の油圧シリンダ305(電動シリンダであってもよい)を荷台302の4隅に設けている。このため、荷台302を脚部306A、306Bを利用して配置後に、4つの油圧シリンダ305を独立して動作させて荷台302の床部306を上昇させて、その位置を上下方向で調整することが可能となる。このため、荷台302を配置する際の外部の地面の凸凹形状を平らにするような作業をすることが無く、場所を選ばす処理装置の水平設置を確保して迅速に、且つ安定して積載式・移動式リサイクルプラントの構築を行うことができる。油圧シリンダ305は図示せぬ集中制御装置で制御してもよいし、手動で制御してもよい。なお、油圧シリンダは4つに限定されるものではなく、複数であればよい。
【0067】
本発明について本実施形態を挙げて説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。即ち本発明の要旨を逸脱しない範囲においての改良並びに設計の変更が可能ことは言うまでもない。
【0068】
例えば、上記実施形態においては、破砕機122、222は洗浄機能を有していたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、これらに洗浄機能が備わっていなくてもよい。本発明では、洗浄を従来よりも早い段階で実施でき、且つその洗浄が超音波洗浄であることから、従来の洗浄機では落とせなかった汚れを落とすことができ、従来よりも清浄な破砕片とすることが可能となる。
【0069】
又、上記実施形態においては、荷台上に複数の処理装置、例えば、荷台102B上に超音波洗浄機126と脱水機130とが据付けられていたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、1つの荷台に1つの処理装置のみが据付けられていてもよい。その際であっても、すでに各処理装置には荷台が固定されているので、積載式・移動式リサイクルプラントの構築は、従来のリサイクルプラントを現場で構築するよりも容易であり、同時に積載式・移動式リサイクルプラントの多様なカスタマイズも容易に実現することができる。
【0070】
又、上記実施形態においては、超音波洗浄機126、226に供給される洗浄水が、破砕機122、222に供給される洗浄水と同質の水であったが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、破砕機での処理水を浄化した後に超音波洗浄機の洗浄水として用いても構わない。逆に、超音波洗浄機で排出される処理水をそのまま脱水機及び破砕機に供給しても構わない。これらの場合には、超音波洗浄は洗浄手段で発生する汚れの影響を受けることなく、且つ超音波洗浄機で排出される処理水を有効利用して、節水することができる。
【0071】
又、上記実施形態においては、移動手段が脱着装置198を備えていたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えばクレーンなどの脱着装置が外部の運搬車によって運ばれ、それによって荷台が脱着され配置されても構わない。
【0072】
又、上記実施形態においては、荷台102、202、302が移動手段から取外されていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、積載式・移動式リサイクルプラントの構築スペースが、積載式・移動式リサイクルプラントに対して十分に広ければ、移動手段から取外す必要はない。
【0073】
又、上記実施形態においては、処理装置から排出される荷台毎の処理水を、荷台毎に集積する脱着可能な分離槽が設けられていたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、処理装置から排出される荷台毎の処理水を導く配管を設けて、その配管を荷台の外部に配置された分離槽に接続するようにしてもよい。又、その処理水を導く配管から、分離槽を用いずに積載式・移動式リサイクルプラントが構築される場所における排水設備に配管を直接接続しても構わない。分離槽を用いた場合であっても、分離槽で分離された処理水を積載式・移動式リサイクルプラントが構築された場所における排水設備に接続しても構わない。
【0074】
又、上記実施形態においては、集中制御装置が用いられていたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、集中制御装置を用いずに、各装置の制御盤を用いて制御しても構わない。なお、発電機についても、積載式・移動式リサイクルプラントが構築される場所における配電盤から直接、各処理装置に電源を供給しても構わない。
【0075】
又、上記実施形態においては、各処理装置に対する給水は、積載式・移動式リサイクルプラントの配置される場所における給水設備からの供給を受けていたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、給水車を別途用意して、そこから各処理装置に給水を行っても構わない。その場合には、本発明の積載式・移動式リサイクルプラントの設置場所の自由度を更に拡げることができる。
【符号の説明】
【0076】
100、200…積載式・移動式リサイクルプラント
102、102A〜102F、202A、202B、202D、302…荷台
104、304…鳥居部
106、306…床部
106A、106B、306A、306B…脚部
108…塀部材(アオリ)
110、210…給水管
110A〜110E、210A〜210C…バルブ
116、116A〜116C、216…分離槽
120、220…ホッパ
121、124、128、144、150、221、224、228…コンベア(搬送路)
122、222…破砕機
130、152、230…脱水機
132、138、146、154、160、168…エア搬送路(搬送路)
134、140、148、156、162、166…ブロア
136、158…エアセパレータ
142…比重選別機
174A〜174D、274…回収ボックス
176、276…発電機
178、278…集中制御装置
196…運搬車
198…脱着装置
305…油圧シリンダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック類を破砕する破砕機と、
該破砕された破砕片を洗浄する超音波洗浄機と、
該洗浄された破砕片を脱水する脱水機と、
を備えて、
該破砕機、超音波洗浄機、及び脱水機が、少なくとも2以上の移動手段の脱着可能な荷台に分割されて据付られている
ことを特徴とする積載式・移動式リサイクルプラント。
【請求項2】
請求項1において、
前記超音波洗浄機の前段に、更に、
前記破砕された破砕片を予備洗浄する洗浄手段を備える
ことを特徴とする積載式・移動式リサイクルプラント。
【請求項3】
請求項2において、
前記超音波洗浄機に、前記洗浄手段に供給される洗浄水と同質の水が供給される
ことを特徴とする積載式・移動式リサイクルプラント。
【請求項4】
請求項2において、
前記超音波洗浄機で排出される処理水が前記洗浄手段に供給される
ことを特徴とする積載式・移動式リサイクルプラント。
【請求項5】
請求項2乃至4のいずれかにおいて、更に、
前記脱水機の後段に、前記脱水された破砕片を分別する分別機を備える
ことを特徴とする積載式・移動式リサイクルプラント。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかにおいて、
前記移動手段は、前記荷台を自身から取外して外部に配置し、且つ該配置された荷台を自身に取付ける脱着装置を備える
ことを特徴とする積載式・移動式リサイクルプラント。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかにおいて、更に、
前記プラスチック類を処理する過程で排出される前記荷台毎の処理水を、該荷台毎に集積する脱着可能な分離槽を備える
ことを特徴とする積載式・移動式リサイクルプラント。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかにおいて、更に、
前記プラスチック類を処理するための複数の処理装置の制御を1箇所で行う集中制御装置を備える
ことを特徴とする積載式・移動式リサイクルプラント。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかにおいて、更に、
前記荷台に、独立して該荷台の上下方向の位置を変更可能とする複数の荷台調節手段が設けられている
ことを特徴とする積載式・移動式リサイクルプラント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−230371(P2011−230371A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−102637(P2010−102637)
【出願日】平成22年4月27日(2010.4.27)
【出願人】(503116073)鈴健興業株式会社 (12)
【Fターム(参考)】