説明

空気撹拌装置

【課題】天井に設置され、直接風による体感温度の減少や室内の空気の循環に使用される空気撹拌機において、冬季において居住者が気流感を感じることなく、快適な室内環境を提供することを目的とする。
【解決手段】室内の天井面に設けられた送風手段1と、送風手段1を天井面に取り付ける取付手段6と、を備え、送風手段1から吹き出された気流により、壁面に沿って斜め下方向に、室内全体を旋回する気流を形成するという構成にしたことにより、送風手段1から吸い込む気流温度と、送風手段1から吹き出される気流温度との差が小さくなり、送風手段1から吹き出された気流が受ける浮力作用を抑制することができるため、遅い風速で浮力に抗って送風を行うことができ、冬季において居住者が気流感を感じることなく、快適な室内環境が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天井に設置され、直接風による体感温度の減少や室内の空気の循環に使用される空気撹拌装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の空気撹拌装置は、長板状の羽根板の一端を支持する接続部材を介して、電動機により回転する回転体に固定するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
以下、その空気撹拌装置について図14を参照しながら説明する。
【0004】
図14に示すように、空気撹拌装置101の全体構成はキャノピー(上カバー)102と中カバー103と電動機の外側回転体104と下カバー105と、外側回転体104のホルダー106に羽根107が取り付けられているものからなり、キャノピー102の内部の簡易取り付け金具108が天井109にネジ止めされて空気撹拌装置101は吊り下げられている。
【0005】
上記構成において、羽根107は回転軸を中心とする径方向に所定の角度を持って取り付けられており、電動機により羽根107が回転すると、羽根107の昇圧作用により、正方向の回転では羽根107の外周から天井109と羽根107の間を通った空気が下方に送風され、逆回転では羽根107の下方から天井109と羽根107の間を通って羽根107の外周に送風される。よって、主に夏季に空気撹拌装置101の直下付近で涼を取る場合は正回転で使用され、主に冬季に、直接風で冷風感を感じないように部屋全体の空気の循環を促す場合は逆回転で使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−210678号公報(第2−4頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような従来の空気撹拌装置では、直接風で冷風感を感じないよう、逆回転による空気の撹拌を行っているものの、実際には、逆回転で室内空気の循環を十分に行える風量を得ようとすると、居住者に体感される気流が発生し、居住者が肌寒く感じるため、冬季に空気撹拌装置を運転することが敬遠されているという課題がある。逆回転時において、居住者に体感される気流が発生する理由は、以下のような原理による。
【0008】
羽根107の下方から天井109と羽根107の間に送られた空気は、天井面に衝突しつつ、天井面との摩擦を受けながら、外周側へと全周方向に吹き出す。全周方向に吹き出された気流は、床面に到達した後、空気撹拌装置の吸込気流に誘引され、空気撹拌装置の直下部で合成されるため、居住者に体感される気流が室内の中央部付近に発生することとなる。
【0009】
そこで本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、冬季において居住者が気流感を感じることなく、室内の空気の循環を行うことのできる空気撹拌装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そして、この目的を達成するために、本発明は、室内の壁面および/または天井面に設けられた少なくとも1つの送風手段と、前記送風手段を壁面および/または天井面に取り付ける取付手段と、を備え、前記送風手段から吹き出された気流により、壁面に沿って斜め下方向または斜め上方向に、室内全体を旋回する気流を形成することを特徴とする空気撹拌装置としたものであり、これにより所期の目的を達成するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、室内の壁面および/または天井面に設けられた少なくとも1つの送風手段と、前記送風手段を壁面および/または天井面に取り付ける取付手段と、を備え、前記送風手段から吹き出された気流により、壁面に沿って斜め下方向または斜め上方向に、室内全体を旋回する気流を形成するという構成にしたことにより、冬季において暖房によって生じる温度勾配を、遅い風速で是正することができるため、気流感を感じることなく、快適な室内環境を形成することができるという効果のある空気撹拌装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】(a)本発明の実施の形態1の空気撹拌装置を示す斜視図、(b)本発明の実施の形態1の空気撹拌装置を示す側面図
【図2】(a)本発明の実施の形態1の空気撹拌装置の風速ベクトルを示す斜視図、(b)本発明の実施の形態1の空気撹拌装置の風速ベクトルを示す側面図
【図3】(a)本発明の実施の形態2の空気撹拌装置を示す斜視図、(b)本発明の実施の形態1の空気撹拌装置を示す側面図
【図4】本発明の実施の形態3の空気撹拌装置を示す斜視図
【図5】本発明の実施の形態4の空気撹拌装置を示す斜視図
【図6】本発明の実施の形態4の空気撹拌装置を示す斜視図
【図7】(a)本発明の実施の形態5の空気撹拌装置を示す斜視図、(b)本発明の実施の形態5の空気撹拌装置を示す底面図
【図8】本発明の実施の形態5の空気撹拌装置における回転数と温度差の関係図
【図9】本発明の実施の形態6の空気撹拌装置を示す斜視図
【図10】(a)本発明の実施の形態7の空気撹拌装置を示す斜視図、(b)本発明の実施の形態7の空気撹拌装置を示す底面図
【図11】本発明の実施の形態6の空気撹拌装置を示す側面図
【図12】(a)本発明の実施の形態8の空気撹拌装置を示す斜視図、(b)本発明の実施の形態8の送風手段を示す斜視図
【図13】本発明の実施の形態9の空気撹拌装置を示す斜視図
【図14】従来の空気撹拌装置を示す側面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の請求項1記載の空気撹拌装置は、室内の壁面および/または天井面に設けられた少なくとも1つの送風手段と、前記送風手段を壁面および/または天井面に取り付ける取付手段と、を備え、前記送風手段から吹き出された気流により、壁面に沿って斜め下方向または斜め上方向に、室内全体を旋回する気流を形成するという構成である。
【0014】
これにより、暖房による室内の鉛直方向に生じた温度勾配に対して、送風手段より斜め下方向または斜め上方向の気流を吹き出すことにより、送風手段に吸い込む気流温度と、送風手段から吹き出される気流温度との差が小さくなり、送風手段から吹き出された気流が受ける浮力作用を抑制することができるため、遅い風速で浮力に抗って送風を行うことができる。
【0015】
さらに、送風手段より斜め下方向または斜め上方向の気流を吹き出すことによって、室内全体を大きく旋回する気流を形成することにより、室内に生じた温度勾配を、室内の上部、中部、下部のように段階的に是正することで、遅い風速で室内の温度勾配を抑制することができる。
【0016】
従って、冬季において暖房によって生じる温度勾配を、遅い風速で是正することができるため、気流感を感じることなく、快適な室内環境を形成することができるという効果を奏する。
【0017】
また、送風手段は、回転軸を中心に回転する電動機と、電動機の全部または一部を内包する回転体と、電動機または回転体に固定される複数の動翼と、を有し、取付手段は、回転軸の一端を天井面側に固定し、電動機とともに動翼が回転し、室内空気の撹拌を行う空気撹拌装置であって、動翼の回転に伴う昇圧作用を、動翼の回転方向に変換するという構成にしてもよい。
【0018】
これにより、動翼の回転に伴って、回転方向の風速成分の割合が多くなり、室内全体に斜め下方向の旋回流を形成することができる。
【0019】
また、動翼の内周側の傾き角度より、動翼の外周側の傾き角度が大きいという構成にしてもよい。
【0020】
これにより、外周側の動翼が、動翼の回転方向に気流を巻き込みながら昇圧することにより、動翼に昇圧される気流を、回転方向の風速成分の多い気流へと変換することができる。
【0021】
また、動翼の内周側から外周側にかけて、徐々に傾き角度が大きくなるという構成にしてもよい。
【0022】
これにより、傾きの大きい外周側に、徐々に気流を巻き込むことにより、回転方向成分の多い気流へと変換することができる。
【0023】
また、動翼の内周側の翼面積より、外周側の翼面積が大きいという構成にしてもよい。
【0024】
これにより、空気が物体に沿って流れる性質であるコアンダ効果が、より動翼の外周側に働くことにより、動翼の外周側で昇圧された気流の一部を、回転方向への気流へと変換することができる。
【0025】
また、動翼上に、風向変換手段を有するという構成にしてもよい。
【0026】
これにより、動翼を流れる気流は、風向変換手段により動翼の外周方向へと緩やかに誘導されるため、動翼の回転方向の風速成分を増加させることができる。
【0027】
また、風向変換手段が、動翼の内周側前縁から外周側後縁にかけて略垂直に固定された板であるという構成にしてもよい。
【0028】
これにより、動翼を流れる気流は、風向変換手段に沿って、動翼の外周方向へと緩やかに誘導されるため、動翼の回転方向の風速成分を増加させることができる。
【0029】
また、風向変換手段が、動翼の内周側前縁から外周側後縁にかけての溝であるという構成にしてもよい。
【0030】
これにより、動翼を流れる気流は、風向変換手段の溝に沿って、動翼の外周方向へと緩やかに誘導されるため、動翼の回転方向の風速成分を増加させることができる。
【0031】
また、動翼の外周側後縁が、動翼の回転方向の下流側に向かって伸びているという構成にしてもよい。
【0032】
これにより、空気が物体に沿って流れる性質であるコアンダ効果が、動翼の外周側後縁に働くことにより、動翼の外周側で昇圧された気流の一部を、回転方向への気流へと変換することができる。
【0033】
また、動翼が天井面方向に気流を昇圧する際の回転方向において、回転数を増加させるという構成にしてもよい。
【0034】
これにより、動翼の回転数の増加に伴い、動翼上を流れる気流が、動翼の径方向および回転方向への滑りが生じ、回転方向の風速成分の割合が増加させることができる。
【0035】
また、室内上部の空気温度および室内下部の空気温度を検知する第1の温度検知手段と、室内上部の空気温度と室内下部との差を演算して電動機の回転数を制御する回転数制御部と、を有するという構成にしてもよい。
【0036】
これにより、室内上部と室内下部の空気温度の差によって生じる浮力に応じた風速を適宜生成することができる。
【0037】
また、動翼の角度を変更する角度変更手段を有するという構成にしてもよい。
【0038】
これにより、例えば夏季において直接風による涼を得る場合は、動翼角度を大きくして軸方向の風速成分を増加したり、冬季において気流感を低減しつつ、室内の温度ムラを是正する場合は、動翼角度を小さくして動翼の回転数を上げ、回転方向の風速成分を増加する等、風速成分の割合を自在に調整することができる。
【0039】
また、室内上部の空気温度および室内下部の空気温度を検知する第2の温度検知手段と、室内上部の空気温度と室内下部との差を演算して角度変更手段を制御する角度制御部と、を有するという構成にしてもよい。
【0040】
これにより、室内上部と室内下部の空気温度の差によって生じる浮力に応じ、角度制御部からの信号によって動翼角度を変更し、室内環境に適した風速成分を生成することができる。
【0041】
また、動翼の外側方向に、径方向の風速成分を回転方向の風速成分に変換する静翼を有するという構成にしてもよい。
【0042】
これにより、動翼によって生成した径方向の風速成分が、静翼に沿って緩やかに回転方向へと変換されることにより、回転方向の風速成分を増加することができる。
【0043】
また、動翼の外周端部に、鉛直方向の補助翼を設けるという構成にしてもよい。
【0044】
これにより、動翼の外周方向への滑りによって生じる径方向の風速成分が、補助翼に衝突しつつ、動翼の回転に伴って動翼の後縁から剥離することにより、回転方向の風速成分を増加させることができる。
【0045】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0046】
(実施の形態1)
図1(a)に示すように、以下、送風手段1より生じる気流の風速ベクトル成分を、動翼5の回転方向と同一方向を回転方向、送風手段1の鉛直方向を軸方向、送風手段1の側面方向を径方向として説明する。
【0047】
まず、実施の形態1の構成について説明する。
【0048】
図1(a)、図1(b)に示すように、送風手段1は、回転軸2を中心に回転する電動機3と、電動機3の全部または一部を内包する回転体4と、電動機3または回転体4に固定される複数の動翼5と、を有し、取付手段6は、回転軸2の一端を天井面側に固定し、電動機3とともに動翼5が回転し、室内空気の撹拌を行う空気撹拌装置であって、動翼5の回転に伴う昇圧作用を、動翼5の回転方向に変換するという構成となっている。
【0049】
取付手段6としては、一般的な住宅の天井面に設けられる引掛シーリングや引掛ローゼット等に取付可能な引掛刃等や、天井面の梁などに直接ネジ止めされる部材等が上げられる。
【0050】
動翼5については、動翼5の内周側の水平方向からの傾き角度θinより、動翼5の外周側の傾き角度θoutが大きいという構成とした。ここでは一例として、θinを40°、θoutを45°とした。
【0051】
次に、実施の形態1の動作について説明する。
【0052】
図2(a)、図2(b)に示すように、送風手段1より斜め下方向の気流を吹き出すことによって、室内全体を大きく旋回する気流を形成することにより、室内に生じた温度勾配を、室内の上部、中部、下部のように段階的に是正することで、遅い風速で室内の温度勾配を抑制することができる。
【0053】
ここで、室内の暖房などによって生じる浮力は、空気を非圧縮性流体として、ある基準温度からの温度差を利用したブシネスク近似式を用いて算出する方法が一般的である。この場合、浮力は温度差に比例して大きくなる。つまり、重力方向の風速ベクトルを用いて室内の空気循環を行おうとすると、送風手段1から吹出された気流温度とその周辺温度との差が急拡大することとなり、送風手段1から吹出された気流が受ける浮力は、より大きくなることを意味する。
【0054】
従って、上記のように斜め下方向の気流を吹き出せば、送風手段1から吹出された気流温度とその周辺温度との差が急拡大することがなく、受ける浮力が小さくなるため、より遅い風速で室内の温度勾配を抑制することができる。
【0055】
さらに、動翼5の内周側の傾きより外周側の傾きを大きくすると、外周側の動翼5が、動翼5の回転方向に気流を巻き込みながら昇圧することにより、回転方向の風速成分の多い気流へと変換することができる。
【0056】
このように、本発明の実施の形態1によれば、冬季において暖房によって生じる温度勾配を、遅い風速で是正することができるため、気流感を感じることなく、快適な室内環境を形成することができる。
【0057】
(実施の形態2)
まず、実施の形態2の構成について説明する。
【0058】
図3(a)、図3(b)において、実施の形態1と同様の構成要素については同一の符号を付与し、その詳細な説明は省略する。
【0059】
図3(a)、図3(b)に示すように、動翼5の内周側から外周側にかけて、徐々に傾き角度が小さくなるという構成となっている。ここでは一例として、水平方向からの最内周角度θ’inを23.5°、最外周角度θ’outを57.5°とし、角度の変化は、100mmピッチごとに2°変化させている。
【0060】
この構成によれば、傾きの大きい外周側に、徐々に気流を巻き込むことにより、回転方向成分の多い気流へと変換することができる。
【0061】
このように、本発明の実施の形態2によれば、冬季において暖房によって生じる温度勾配を、遅い風速で是正することができるため、気流感を感じることなく、快適な室内環境を形成することができる。
【0062】
(実施の形態3)
まず、実施の形態3の構成について説明する。
【0063】
図4において、実施の形態1〜実施の形態2のいずれかと同様の構成要素については同一の符号を付与し、その詳細な説明は省略する。
【0064】
図4に示すように、動翼5の内周側の翼面積より、外周側の翼面積が大きいという構成となっている。ここでは一例として、内周側の翼弦長を114mm、外周側の翼弦長を140mmとしている。
【0065】
この構成によれば、空気が物体に沿って流れる性質であるコアンダ効果が、より動翼5の外周側に働くことにより、動翼5の外周側で昇圧された気流の一部を、回転方向への気流へと変換することができる。
【0066】
このように、本発明の実施の形態3によれば、冬季において暖房によって生じる温度勾配を、遅い風速で是正することができるため、気流感を感じることなく、快適な室内環境を形成することができる。
【0067】
(実施の形態4)
まず、実施の形態4の構成について説明する。
【0068】
図5において、実施の形態1〜実施の形態3のいずれかと同様の構成要素については同一の符号を付与し、その詳細な説明は省略する。
【0069】
図5に示すように、動翼5上に、風向変更手段を有するという構成にしてもよい。ここでは一例として、風向変更手段が、動翼5の内周側前縁から外周側後縁にかけて略垂直に固定された風向変更板7としている。風向変更板7は、R1000mmの湾曲状であり、1枚の動翼5に対し150mmピッチで3つずつ設置され、動翼から垂直方向に突出する高さを3mmとしている。
【0070】
これにより、動翼5を流れる気流は、風向変更板7により動翼5の外周方向へと緩やかに誘導されるため、動翼5の回転方向の風速成分を増加させることができる。
【0071】
また、風向変更手段については、図6のように動翼5の内周側前縁から外周側後縁にかけての溝8であるという構成でも同様の効果を有するものである。
【0072】
このように、本発明の実施の形態4によれば、冬季において暖房によって生じる温度勾配を、遅い風速で是正することができるため、気流感を感じることなく、快適な室内環境を形成することができる。
【0073】
(実施の形態5)
まず、実施の形態5の構成について説明する。
【0074】
図7(a)、図7(b)において、実施の形態1〜実施の形態4のいずれかと同様の構成要素については同一の符号を付与し、その詳細な説明は省略する。
【0075】
図7(a)、図7(b)に示すように、動翼5の外周側後縁が、動翼5の回転方向の下流側に向かって伸びているという構成となっている。
【0076】
また、室内上部の空気温度および室内下部の空気温度を検知する第1の温度検知手段9と、室内上部の空気温度と室内下部との差を演算して電動機3の回転数を制御する回転数制御部10と、を有するという構成となっている。第1の温度検知手段9としては、室内上部の空気温度を計測する熱電対等の各種温度センサ、室内下部の空気温度を計測するサーモパイル等の各種赤外線センサを用いることができる。
【0077】
次に、実施の形態5の動作について説明する。
【0078】
図7(a)の矢印に示すように、動翼5の外周側後縁が伸びていることにより、空気が物体に沿って流れる性質であるコアンダ効果が後縁に働き、動翼5の外周側で昇圧された気流の一部を、回転方向への気流へと変換することができる。
【0079】
また、室内上部と室内下部の空気温度の差によって生じる浮力に応じた風速を適宜生成することができる。
【0080】
図8には一例として、天井高2.5m、10畳(4500mm×3600mm)の部屋の中央部に空気撹拌装置を設置し、取付角5°、翼弦長100mm、翼幅450mm動翼5の外周側後縁長50mmの動翼5を用いた場合における、温度差と電動機回転数との関係を示す。プロットした点は、各温度差において温度ムラ改善率80%を満たす最小の回転数を示している。
【0081】
ここで、温度ムラ改善率とは、下記式で定義される。
温度ムラ改善率=(Δt−Δt´)/Δt×100[%]
【0082】
ここで、Δtは空気撹拌装置運転前における空気撹拌装置周辺温度と、部屋の床面温度との温度差を示し、Δt´は空気撹拌装置運転後における空気撹拌装置周辺温度と、部屋の床面温度との温度差を示している。ただし、回転速度の最適値は、部屋の大きさや天井高等の条件によって異なる。
【0083】
このように、本発明の実施の形態5によれば、冬季において暖房によって生じる温度勾配を、遅い風速で是正することができるため、気流感を感じることなく、快適な室内環境を形成することができる。
【0084】
(実施の形態6)
まず、実施の形態6の構成について説明する。
【0085】
図9において、実施の形態1〜実施の形態5のいずれかと同様の構成要素については同一の符号を付与し、その詳細な説明は省略する。
【0086】
図9に示すように、動翼5の外側方向に、径方向の風速成分を回転方向の風速成分に変換する静翼11を有するという構成となっている。
【0087】
次に、実施の形態6の動作について説明する。
【0088】
図9の矢印で示すように、動翼5によって生成した径方向の風速成分は、静翼11に沿って緩やかに回転方向へと変換されることにより、回転方向の風速成分を増加することができる。
【0089】
このように本発明の実施の形態6によれば、冬季において暖房によって生じる温度勾配を、遅い風速で是正することができるため、気流感を感じることなく、快適な室内環境を形成することができる。
【0090】
(実施の形態7)
まず、実施の形態7の構成について説明する。
【0091】
図10(a)、図10(b)、図11において、実施の形態1〜実施の形態6のいずれかと同様の構成要素については同一の符号を付与し、その詳細な説明は省略する。
【0092】
図10(a)に示すように、動翼5の外周端部に、鉛直方向の補助翼12を設けるという構成となっている。
【0093】
また図10(b)に示すように、室内上部の空気温度および室内下部の空気温度を検知する第2の温度検知手段13と、室内上部の空気温度と室内下部との差を演算して角度変更手段15を制御する角度制御部14と、を有した構成となっている。第2の温度検知手段13としては、室内上部の空気温度を計測する熱電対等の各種温度センサ、室内下部の空気温度を計測するサーモパイル等の各種赤外線センサを用いることができる。
【0094】
また図11に示すように、電動機3内部に動翼5の角度を変更する角度変更手段15を有している。角度変更手段15は、角度変更用電動機16の動力を第1の動力伝達手段17、および第2の動力伝達手段18に伝達し、動翼5の角度変更を行う。第2の動力伝達手段18は、動翼5毎に配置され、各々が第1の動力伝達手段17を通じて、角度変更用電動機16の動力を受ける構成となっている。
【0095】
次に、実施の形態7の動作について説明する。
【0096】
図10(a)の矢印で示すように、動翼5の外周方向への滑りによって生じる径方向の風速成分は、補助翼12に衝突しつつ、動翼5の回転に伴って動翼5の後縁から剥離することにより、回転方向の風速成分を増加させることができる。
【0097】
また、例えば夏季において直接風による涼を得る場合は、動翼5の角度を大きくして軸方向の風速成分を増加したり、冬季において気流感を低減しつつ、室内の温度ムラを是正する場合は、動翼5の角度を小さくして動翼5の回転数を上げ、回転方向の風速成分を増加する等、風速成分の割合を自在に調整することができる。
【0098】
また、室内上部と室内下部の空気温度の差によって生じる浮力に応じ、角度制御部14からの信号によって動翼5の角度を変更し、室内環境に適した風速成分を生成することができる。
【0099】
このように本発明の実施の形態7によれば、冬季において暖房によって生じる温度勾配を、遅い風速で是正することができるため、気流感を感じることなく、快適な室内環境を形成することができる。
【0100】
(実施の形態8)
まず、実施の形態8の構成について説明する。
【0101】
図12(a)に示すように、室内19の天井面中央部に送風手段20が2台設置され、室内19の側面方向に斜め下方向に吹き出すように設置されている。
【0102】
また図12(b)に示すように、送風手段20は、筐体21の内部に軸流送風機22と電動機23とを有し、吸込口24から空気を吸引し、吹出口25から空気を吹き出すような構成となっている。また、送風手段20の筐体21を天井面に取り付ける取付手段26が設置されている。
【0103】
次に、実施の形態8の動作について説明する。
【0104】
図12(a)の矢印で示すように、暖房による室内19の鉛直方向に生じた温度勾配に対して、送風手段20より斜め下方向の気流を吹き出すことにより、送風手段20から吸い込む気流温度と、送風手段20から吹き出される気流温度との差が小さくなり、送風手段20から吹き出された気流が受ける浮力作用を抑制することができるため、遅い風速で浮力に抗って送風を行うことができる。
【0105】
さらに、送風手段20より斜め下方向の気流を吹き出すことによって、室内19全体を縦方向に大きく旋回する気流を形成することにより、室内19に生じた温度勾配を、室内19の上部、中部、下部のように段階的に是正することで、少ない風速で室内19の温度勾配を抑制することができる。
【0106】
このように本発明の実施の形態8によれば、冬季において暖房によって生じる温度勾配を、遅い風速で是正することができるため、気流感を感じることなく、快適な室内環境を形成することができる。
【0107】
(実施の形態9)
まず、実施の形態9の構成について説明する。
【0108】
図13において、実施の形態8と同様の構成要素については同一の符号を付与し、その詳細な説明は省略する。
【0109】
図13に示すように、室内19の壁面に送風手段20が4台設置され、室内19の側面方向に斜め上方向に吹き出すように設置されている。
【0110】
また、送風手段20は、筐体21の内部に軸流送風機22と電動機23とを有し、吸込口24から空気を吸引し、吹出口25から空気を吹き出すような構成となっている。また、送風手段の筐体21を壁面に取り付ける取付手段26が設置されている。
【0111】
次に、実施の形態9の動作について説明する。
【0112】
図13の矢印で示すように、暖房による室内19の鉛直方向に生じた温度勾配に対して、送風手段20より斜め上方向の気流を吹き出すことにより、送風手段20から吸い込む気流温度と、送風手段20から吹き出される気流温度との差が小さくなり、送風手段20から吹き出された気流が受ける浮力作用を抑制することができるため、遅い風速で浮力に抗って送風を行うことができる。
【0113】
さらに、送風手段20より斜め上方向の気流を吹き出すことによって、室内19全体を大きく旋回する気流を形成することにより、室内19に生じた温度勾配を、室内19の上部、中部、下部のように段階的に是正することで、少ない風速で室内19の温度勾配を抑制することができる。
【0114】
このように本発明の実施の形態9によれば、冬季において暖房によって生じる温度勾配を、遅い風速で是正することができるため、気流感を感じることなく、快適な室内環境を形成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明にかかる空気撹拌装置は、少ない風量で室内空気の撹拌が行えるため、冬季において居住者が気流感を感じることなく、快適な室内環境を提供することが可能であるので、住宅用の室内空気の撹拌を目的に使用される各種送風機器等として有用である。
【符号の説明】
【0116】
1 送風手段
2 回転軸
3 電動機
4 回転体
5 動翼
6 取付手段
7 風向変更板
8 溝
9 第1の温度検知手段
10 回転数制御部
11 静翼
12 補助翼
13 第2の温度検知手段
14 角度制御部
15 角度変更手段
16 角度変更用電動機
17 第1の動力伝達手段
18 第2の動力伝達手段
19 室内
20 送風手段
21 筐体
22 軸流送風機
23 電動機
24 吸込口
25 吹出口
26 取付手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内の壁面および/または天井面に設けられた少なくとも1つの送風手段と、前記送風手段を壁面および/または天井面に取り付ける取付手段と、を備え、前記送風手段から吹き出された気流により、壁面に沿って斜め下方向または斜め上方向に、室内全体を旋回する気流を形成することを特徴とする空気撹拌装置。
【請求項2】
前記送風手段は、回転軸を中心に回転する電動機と、前記電動機の全部または一部を内包する回転体と、前記電動機または前記回転体に固定される複数の動翼と、を有し、前記取付手段は、前記回転軸の一端を天井面側に固定し、前記電動機とともに前記動翼が回転し、室内空気の撹拌を行う空気撹拌装置であって、前記動翼が、回転に伴う昇圧作用を前記動翼の回転方向に変換することを特徴とする請求項1に記載の空気撹拌装置。
【請求項3】
前記動翼の内周側の傾き角度より、前記動翼の外周側の傾き角度が大きいことを特徴とする請求項1または2に記載の空気撹拌装置。
【請求項4】
前記動翼の内周側から外周側にかけて、徐々に傾き角度が大きくなることを特徴とする請求項3に記載の空気撹拌装置。
【請求項5】
前記動翼の内周側の翼面積より、外周側の翼面積が大きいことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の空気撹拌装置。
【請求項6】
前記動翼上に、風向変換手段を有することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の空気撹拌装置。
【請求項7】
前記風向変換手段が、前記動翼の内周側前縁から外周側後縁にかけて略垂直に固定された板であることを特徴とする請求項6に記載の空気撹拌装置。
【請求項8】
前記風向変換手段が、前記動翼の内周側前縁から外周側後縁にかけての溝であることを特徴とする請求項6に記載の空気撹拌装置。
【請求項9】
前記動翼の外周側後縁が、前記動翼の回転方向の下流側に向かって伸びていることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の空気撹拌装置。
【請求項10】
前記動翼が天井面方向に気流を昇圧する際の回転方向において、回転数を増加させることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の空気撹拌装置。
【請求項11】
室内上部の空気温度および室内下部の空気温度を検知する第1の温度検知手段と、室内上部の空気温度と室内下部との差を演算して前記電動機の回転数を制御する回転数制御部と、を有することを特徴とする請求項10に記載の空気撹拌装置。
【請求項12】
前記動翼の角度を変更する角度変更手段を有することを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の空気撹拌装置。
【請求項13】
室内上部の空気温度および室内下部の空気温度を検知する第2の温度検知手段と、室内上部の空気温度と室内下部との差を演算して前記角度変更手段を制御する角度制御部と、を有することを特徴とする請求項12に記載の空気撹拌装置。
【請求項14】
前記動翼の外側方向に、径方向の風速成分を回転方向の風速成分に変換する静翼を有することを特徴とする請求項1から13のいずれか1項に記載の空気撹拌装置。
【請求項15】
前記動翼の外周端部に、鉛直方向の補助翼を設けることを特徴とする請求項1から14のいずれか1項に記載の空気撹拌装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2011−149300(P2011−149300A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−9786(P2010−9786)
【出願日】平成22年1月20日(2010.1.20)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】