説明

突き上げピンの位置決め方法およびその方法を用いた電子部品供給装置

【課題】予め突き上げピンに関するデータを持つことなく、突き上げピン先端部の中心位置を、自動的に計測することが可能な突き上げピンの位置決め方法およびそれを用いた電子部品供給装置を提供する。
【解決手段】エキスパンド台上のダイシングされたベアチップ等の部品Pを突き上げる突き上げピン45を、撮像装置25により上方より撮像し、撮像データに基づいて直交する2方向座標に対する輝度の累積値を表す累積ヒストグラムHX、HYを作成し、これら累積ヒストグラムの分布状態に基づいて各累積ヒストグラムの平均値をそれぞれ求め、これら平均値より突き上げピン先端部の中心位置を把握して位置決めする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エキスパンド台上のダイシングされたベアチップ等の部品を突き上げる突き上げピンの位置決め方法およびその方法を用いた電子部品供給装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ベアチップを基板に実装する電子部品実装装置における部品供給装置においては、ウエハを粘着シートに貼り付けた状態で、レーザカッタ等によりチップ単位に切断し、この状態で、粘着シートを放射方向に拡大してチップ相互を分離させ、しかる状態で、突き上げピンによってベアチップを突き上げて粘着シートより剥離させ、吸着ノズルによって吸着できる供給位置に供給するものがある。この種の突き上げピンによる部品供給装置として、例えば、特許文献1(図16参照)に記載されたものがある。
【0003】
この場合、突き上げピン先端部の中心位置が部品や吸着ノズルの中心位置に合っていないと、部品をうまく突き上げることができなかったり、部品を損傷してしまうことがある。このために、突き上げピン先端部の中心位置を把握することが必要となる。特に、エキスパンド台上のダイシングされた部品(ベアチップ)が非常に微小であることが多く、さらには突き上げピンの細径化に伴う先端部の磨耗あるいは曲がりに対して逐次突き上げピン先端部の位置を正確に把握する必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−193442号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、突き上げピンの先端形状は、対象チップの大きさ、形状あるいは強度等に応じて、ユーザサイドで個別に設計および製作されているのが実状であり、しかも、これらがユーザノウハウとなっているため、突き上げピンの規格化はおろか形状の開示すらなされていないのが現状である。このような事情から、電子部品実装装置の装置メーカ側として、突き上げピンのパートデータ(モデル画像)を予め作成することができなく、突き上げピン先端部の中心位置を従来の画像処理技術であるパートパターンマッチング(モデル画像との合致確認法)等によって求めることができなかった。そのために従来においては、目視によって突き上げピン先端部の中心位置を手動にて吸着ノズルの中心に位置合わせしており、機械による自動生産の効率化を妨げる要因になっていた。
【0006】
本発明は、上記した従来の課題を解決するためになされたもので、予め突き上げピンに関するデータを持つことなく、突き上げピン先端部の中心位置を、自動的に計測することが可能な突き上げピンの位置決め方法およびその方法を用いた電子部品供給装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、請求項1に係る突き上げピンの位置決め方法の発明の特徴は、エキスパンド台上のダイシングされたベアチップ等の部品を突き上げピンで突き上げる部品供給装置における突き上げピンの位置決め方法にして、前記突き上げピンを、撮像装置により上方より撮像し、撮像データに基づいて直交する2方向座標に対する輝度の累積値を表す累積ヒストグラムを作成し、これら累積ヒストグラムの分布状態に基づいて各累積ヒストグラムの平均値をそれぞれ求め、これら平均値より前記突き上げピン先端部の中心位置を把握して位置決めすることである。
【0008】
請求項2に係る突き上げピンの位置決め方法の発明の特徴は、請求項1において、前記突き上げピンにより突き上げられた前記部品を吸着保持する吸着ノズルを備え、該吸着ノズルに対して前記突き上げピン先端部の中心位置を位置決めすることである。
【0009】
請求項3に係る突き上げピンの位置決め方法の発明の特徴は、請求項1または請求項2において、前記直交する2方向座標に対する輝度の累積値を表す累積ヒストグラムの平均値を求めるに当っては、まず、前記各累積ヒストグラムの分布状態に基づいて各累積ヒストグラムの領域幅を決定し、これら領域幅の中から累積ヒストグラムの平均値をそれぞれ求めるようにしたことである。
【0010】
請求項4に係る電子部品供給装置の発明の特徴は、請求項2または請求項3において、前記吸着ノズルによって吸着保持された前記部品を、電子部品実装装置に供給することである。
【0011】
請求項5に係る電子部品供給装置の発明の特徴は、請求項2ないし請求項4のいずれか1項において、前記撮像装置は、前記吸着ノズルを備えた部品移載装置側に取付けられていることである。
【0012】
請求項6に係る電子部品供給装置の発明の特徴は、請求項1ないし請求項5のいずれか1項において、前記突き上げピンは、暗色の支持プレート上に設けられていることである。
【0013】
請求項7に係る電子部品供給装置の発明の特徴は、請求項1ないし請求項6のいずれか1項において、前記突き上げピンは、点対称もしくは線対称の一点ないしは複数点の頂点を有するものから構成されていることである。
【発明の効果】
【0014】
上記のように構成した請求項1に係る発明によれば、突き上げピンを、撮像装置により上方より撮像し、撮像データに基づいて直交する2方向座標に対する輝度の累積値を表す累積ヒストグラムを作成し、これら累積ヒストグラムの分布状態に基づいて各累積ヒストグラムの平均値をそれぞれ求め、これら平均値より前記突き上げピン先端部の中心位置を把握して位置決めするようにしたので、部品供給装置あるいは電子部品実装装置等の納入時に、メーカが突き上げピンに関するデータを全く持っていなくても、ユーザサイドで任意に選択した突き上げピン先端部の中心位置を自動的にかつ正確に求めることができる。
【0015】
請求項2に係る発明によれば、突き上げピンにより突き上げられた部品を吸着保持する吸着ノズルを備え、吸着ノズルに対して突き上げピン先端部の中心位置を位置決めするようにしたので、突き上げピン先端部の中心位置と部品を吸着保持する吸着ノズルの中心位置とを正確に合わせることが可能となり、従来のように、部品をうまく突き上げることができなかったり、部品を損傷してしまう事態を確実に防止することができる。
【0016】
請求項3に係る発明によれば、各累積ヒストグラムの平均値を求めるに当っては、まず、各累積ヒストグラムの分布状態に基づいて各累積ヒストグラムの領域幅を決定し、これら領域幅の中から累積ヒストグラムの平均値をそれぞれ求めるようにしたので、累積ヒストグラムの両端部分のノイズを除去した状態で、累積ヒストグラムの平均値を再演算することができ、累積ヒストグラムの平均値を正確に求めることができる。
【0017】
請求項4に係る発明によれば、吸着ノズルによって吸着保持された前記部品を、電子部品実装装置に供給するようにしたので、突き上げピンによって突き上げられて供給位置に供給された部品を電子部品供給装置の吸着ノズルによって電子部品実装装置に供給することができる。
【0018】
請求項5に係る発明によれば、撮像装置は、吸着ノズルを備えた部品移載装置側に取付けられているので、部品等を撮像する既存の撮像装置を利用して、突き上げピン撮像することができる。
【0019】
請求項6に係る発明によれば、突き上げピンは、暗色の支持プレート上に設けられているので、撮像された突き上げピンとその周囲の濃淡が明確となり、突き上げピンの上面画像を正確に取得することができる。
【0020】
請求項7に係る発明によれば、突き上げピンは、点対称もしくは線対称の一点ないしは複数点の頂点を有するものから構成されているので、突き上げピンの撮像データに基づいて、各種構成の突き上げピン先端部の中心位置を求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態を示す電子部品実装装置の概略図である。
【図2】図1の一部を拡大した図である。
【図3】エキスパンド台上のダイシングされたベアチップ等の部品を突き上げる突き上げピンを示す図である。
【図4】突き上げピンを上方より撮像する撮像装置を示す図である。
【図5】撮像装置によって撮像された突き上げピンの上面画像を示す図である。
【図6】突き上げピンの上面画像に基いて作成されたX方向およびY方向の累積ヒストグラムを示す図である。
【図7】突き上げピンの上面画像より累積ヒストグラムを作成するための具体的手法を示す図である。
【図8】X方向の累積ヒストグラムの平均値を求める図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、電子部品実装装置10の概要を示すもので、電子部品実装装置10の基台11上には、基板SをY方向に搬送する基板搬送装置12が設けられている。基板搬送装置12の上側には、Y方向と直交するX方向に延びる固定レール20によって移動テーブル30がX方向に移動可能に案内支持され、この移動テーブル30の下面にY方向に細長いスライド21が固定されている。スライド21のX方向移動は、ボールねじを介してサーボモータ22により制御されるようになっている。スライド21の一側面には、図2にも示すように、後述する突き上げピンを上面より撮像するZ方向と平行な光軸O1を有する撮像装置25と、部品移載装置26とを取付けた移動台24がY方向に移動可能に案内支持され、その移動はボールねじを介してサーボモータ31により制御されるようになっている。
【0023】
部品移載装置26は、移動台24に取付けられた支持ベース27と、この支持ベース27にX方向およびY方向と直角なZ方向に昇降可能に案内支持されてボールねじを介してサーボモータ32により昇降が制御される部品実装ヘッド28と、この部品実装ヘッド28の下方より突出して設けられて下端にベアチップ等の部品Pを吸着保持する円筒状の吸着ノズル29よりなるものである。この部品実装ヘッド28および吸着ノズル29の中心線O3はZ方向と平行であり、吸着ノズル29は部品実装ヘッド28に対し中心線O3回りに回転可能に支持され、図略のサーボモータにより回転角度が制御されるようになっている。
【0024】
なお、形状や大きさの異なる各種の部品Pを吸着できるように、部品移載装置26に複数の吸着ノズル29をインデックス可能に設けたり、あるいは部品移載装置26を移動台24に着脱可能に設けることにより、部品Pの変更に伴って、それに対応する吸着ノズルに容易に変更できるようになる。
【0025】
電子部品実装装置10の一端側に設けられた電子部品供給装置40には、XY方向に移動可能なXYテーブル41が配設され、このXYテーブル41上にダイシングされたウエハの状態で部品Pを導入するエキスパンド台42が設置されている。部品Pは、図3に示すように、粘着シート43に接着されてエキスパンド台42上に保持されている。エキスパンド台42の下方には、粘着シート43に接着された部品Pを突き上げる突き上げピン45が鉛直方向に配設されている。突き上げピン45は、支持プレート46上に立設され、支持プレート46は上下方向に移動可能なリフト部材47上に保持されている。突き上げピン45の上部は円錐形状をなし、その先端(上端)は、仕上げ加工により光沢のある平らあるいは円弧形状とされ、突き上げピン45によって部品Pを突き上げる際に、粘着シート43を破損しないようになっている。なお、支持プレート46の上面は暗色となっており、突き上げピン45の上面画像を取得する際に突き上げピン45と濃淡を明確に区別できるようにしてある。
【0026】
基板搬送装置12と電子部品供給装置40との間の基台11上には、図1に示すように、Z方向と平行な光軸O2を有する部品認識用カメラ48が設けられている。この部品認識用カメラ48は、認識すべき部品Pおよび吸着ノズル29の下端を下側から照明する光源(図示省略)を有している。吸着ノズル29に吸着保持された部品Pを認識するために、部品Pを電子部品供給装置40から基板Sに搬送する途中で、部品移載装置26を部品認識用カメラ48上で一旦停止させ、その状態で、部品認識用カメラ48によって部品Pを吸着ノズル29の下方より撮像することにより、吸着ノズル29に吸着された部品Pの吸着ノズル29の中心に対する芯ずれおよび中心回りの角度のずれを検出できるようになっている。
【0027】
なお、部品認識用カメラ48は、定期的(例えば、機械の停止後あるいは一定時間が経過する毎)に、部品Pを吸着保持していない吸着ノズル29の先端の画像の位置に基づいて部品認識用カメラ48の光軸O2と吸着ノズル29の中心線O3との位置関係を測定するのにも利用される。
【0028】
移動台24に部品移載装置26と一体的に取付けられた撮像装置25は、突き上げピン45の先端部の中心位置を求めるために、突き上げピン45を上方より撮像するものである。撮像装置25は、図4に示すように、カメラ51と、ハーフミラー52と、LEDよりなる光源53と、拡散プレート54によって構成されている。光源53は、カメラ51によって撮像される突き上げピン45の上面を拡散プレート54を介して上方から照射し、ハーフミラー52を介して突き上げピン45の上面画像をカメラ51によって撮像できるようになっている。撮像された突き上げピン45の上面画像は画像認識装置55に入力され、画像処理される。
【0029】
上記した構成により、エキスパンド台42上にダイシングされたウエハの状態で部品Pが導入されると、エキスパンド台42がXYテーブル41とともにXY方向に移動されて、基板Sに実装すべき部品Pが突き上げピン45の上方に位置決めされる。その状態で、突き上げピン45が上昇されることにより、粘着シート43に粘着された部品Pが突き上げられて粘着シート43より剥離され、吸着ノズル29に吸着される位置まで供給される。突き上げピン45によって突き上げられた部品Pは、吸着ノズル29によって吸着保持され、部品移載装置26が移動台24とともにXY方向に移動されることにより、基板S上の所定位置に搬送され、基板Sに部品Pを実装できるようになっている。
【0030】
なお、撮像装置25は、部品実装時に、基板S上に設けられた図略の基準マークの位置を検出する場合にも用いられ、この基準マークの位置に基づいて、スライド21および移動台24をX方向およびY方向に位置補正して、部品実装ヘッド28の吸着ノズル29の先端に吸着保持した部品Pを、基板S上の所定の座標位置に実装できるようにしている。
【0031】
次に、突き上げピン45先端部の中心位置を求める方法について説明する。突き上げピン45は、使用につれて摩耗したり、曲がったりするため、所定の頻度で交換される。このような突き上げピン45の摩耗や、曲がりや、交換等によって、突き上げピン45先端部の中心位置が変化するため、定期的(例えば、機械の停止後あるいは一定時間が経過する毎)に、突き上げピン45先端部の中心位置を計測する処理が実施される。
【0032】
突き上げピン45先端部の中心位置を求めるに当っては、まず、エキスパンド台42がXYテーブル41とともにXY方向に移動されて、突き上げピン45の上方より退避される。続いて、撮像装置25が移動台24とともにXY方向に移動されて、突き上げピン45の上方の位置に位置決めされる。しかる状態で、撮像装置25によって突き上げピン45が上方より撮像され、図5および図6に示すような突き上げピン45の上面画像(先端画像)データIDを取得できる。撮像された突き上げピン45の上面画像データIDは画像認識装置55に入力され、画像処理される。
【0033】
すなわち、光源53から照射された光は、拡散プレート54を介して突き上げピン45の先端部に照射され、その反射光がハーフミラー52により反射されてカメラ51に入射される。これにより、突き上げピン45の先端P1が最も明るく、突き上げピン45の円錐状の径が拡大されるに従って明るさが漸減し、支持プレート46領域P2では最も暗くなった上面画像データIDを取得できる。取得された上面画像データIDより、突き上げピン45の全体を包含した第1の処理領域Z1(図5の白枠)が決定される。そして、第1の処理領域Z1内の上面画像データIDをX・Y方向に投影し、図6に示すように、X方向位置に対する輝度の累積値を表すX方向累積ヒストグラムHXと、Y方向位置に対する輝度の累積値を表すY方向累積ヒストグラムHYを作成する。すなわち、直交する2方向座標に対する輝度の累積値を表す累積ヒストグラムHX、HYを作成する。
【0034】
具体的には、X方向およびY方向の累積ヒストグラムHX、HYを作成するために、例えば、図7に示すように、縦横5列の合計25の画素が使用され、突き上げピン45の上面画像の輝度(0〜255)がこれらの画素上に表される。そして、X方向に対する縦列の輝度の累積値に基づいてX方向の累積ヒストグラムHXが作成され、同様に、Y方向に対する横列の輝度の累積値に基づいてY方向の累積ヒストグラムHYが作成される。
【0035】
そして、作成されたX方向累積ヒストグラムHXの全体の領域から、図8(A)に示すように、分散あるいは標準偏差などの広がりを表わす指標(σ)と、平均値(期待値)をそれぞれ演算し、この平均値に、指標σに常数kを乗じた値(kσ)を加減算した領域を第2の処理領域Z2Xとして設定する(図8(B)参照)。しかる後、図8(C)に示すように、第2の処理領域Z2X内でのX方向累積ヒストグラムHXの平均値を再演算し、この再演算した平均値HXAによって突き上げピン45先端部のX方向の中心位置座標が求められる。
【0036】
同様にして、Y方向累積ヒストグラムHYについても、図示を省略したが、全体の領域から演算された平均値に、指標σに常数kを乗じた値(kσ)を加減算した領域を第2の処理領域Z2Yとして設定し、この第2の処理領域(Z2Y)に基づいて、Y方向累積ヒストグラムHYの平均値を再演算し、この再演算した平均値(HYA)によって突き上げピン45先端部のY方向の中心位置座標が求められる。このようにして突き上げピン45先端部の中心位置座標が認識される。
【0037】
このような2段階による累積ヒストグラムHX、HYの平均値HXA、HYAの演算によって、各累積ヒストグラムHX、HYの両端部分のよごれ等に起因するノイズが除去され、X方向およびY方向の累積ヒストグラムHX、HYの平均値を高精度に求めることができるようになる。この場合、再演算を2段階に限らず、3段階以上繰り返すことにより、X方向およびY方向の累積ヒストグラムHX、HYの平均値をより高精度に求めることが可能となる。
【0038】
このようにして、X方向およびY方向の2つの累積ヒストグラムHX、HYの平均値より、突き上げピン45先端部の中心位置(中心の座標位置)HXA、HYAが求められ、これによって、機械原点に対する突き上げピン45先端部の中心位置座標より、突き上げピン45先端部のXY方向におけるずれ量、換言すれば、誤差量を演算することができる。
【0039】
次に、上記した実施の形態における突き上げピン45の位置決め方法を実施する電子部品実装装置10の動作について説明する。
【0040】
エキスパンド台42上に導入されたウエハは、エキスパンド台42で粘着シート43を放射方向に拡大することにより、隣合う部品(ベアチップ)Pを互いに分離し、部品Pを取り出しやすくする。しかる後、エキスパンド台42がXYテーブル41とともにXY方向に移動されて、基板Sに実装すべき部品Pが突き上げピン45の上方位置に位置決めされる。次いで、突き上げピン45が上昇され、粘着シート43に粘着された部品Pを突き上げて粘着シート43より剥離するとともに、吸着ノズル29が下降され、突き上げピン45によって突き上げられた部品Pが吸着ノズル29によって吸着保持される。吸着ノズル29に部品Pが吸着保持されると、部品移載装置26が移動台24とともにXY方向に移動される。部品移載装置26は、吸着ノズル29の中心位置が部品認識用カメラ48上に一致する位置で、移動が一旦停止され、部品認識用カメラ48によって、吸着ノズル29に吸着された部品Pの吸着ノズル29の中心に対する芯ずれおよび中心回りの角度のずれを検出する。次いで、部品移載装置26が移動台24とともにXY方向に移動されて、部品Pを基板S上の所定位置に搬送し、部品Pを基板S上に実装する。この際、部品Pは基板Sに、吸着ノズル29に吸着された部品Pの吸着ノズル29の中心に対する芯ずれおよび中心回りの角度のずれ分だけ補正された位置に実装される。
【0041】
ところで、突き上げピン45の先端部は、摩耗、曲がりあるいは交換等によって中心位置が変化するため、定期的に突き上げピン45先端部の中心位置を画像処理によって求める処理が実行される。突き上げピン45先端部の中心位置を求めるために、まず、エキスパンド台42がXYテーブル41とともにXY方向に移動されて、突き上げピン45の上方より退避される。その状態で、撮像装置25が移動台24とともにXY方向に移動されて、撮像装置25が突き上げピン45の上方に位置決めされる。しかる状態で、突き上げピン45の上面画像データIDが撮像装置25によって取得され、取得された突き上げピン45の上面画像データIDは画像認識装置55に入力され、画像処理される。この場合、突き上げピン45の上面画像データIDは、図5および図6に示すように、突き上げピン45の先端部が最も明るく、突き上げピン45の円錐状の径が拡大されるに従って明るさが漸減し、突き上げピン45の径の外側においてはバックプレート47によって最も暗くなった画像となる。
【0042】
画像処理装置55は、取得された上面画像データIDより、まず、突き上げピン45の全体を包含した第1の検査領域Z1を決定し、この第1の検査領域Z1をX・Y方向に投影してX・Y方向の累積ヒストグラムHX、HYを作成する。かかるX方向累積ヒストグラムHXは、X方向位置に対する輝度の累積値に基づいて作成され、同様に、Y方向累積ヒストグラムHYは、Y方向位置に対する輝度の累積値に基づいて作成される。
【0043】
これらのX方向およびY方向の累積ヒストグラムHX、HYの領域から、分散あるいは標準偏差などの広がりを表わす指標σと、平均値(期待値)をそれぞれ演算する(図8(A)参照)。かかる平均値に、指標σに常数kを乗じた値(kσ)を加減算した領域を第2の処理領域Z2X、Z2Yとして設定する(図8(B)参照)。そして、第2の処理領域Z2X、Z2Y内でのX方向およびY方向の累積ヒストグラムHX、HYの平均値を再演算して(図8(C)参照)、この値を最終的な平均値HXA、HYAとする。これらX方向およびY方向の平均値HXA、HYAの座標位置に基づいて突き上げピン45先端部の中心位置座標が求められる。
【0044】
このようにして、新たに求められた突き上げピン45先端部の中心位置座標に基づいて、基準位置に対するずれ量(誤差値)を演算し、このずれ量を補正値として記憶する。これによって、次回突き上げピン45によって電子部品Pを突き上げる際に、ずれ量分だけ部品Pに対する突き上げピン45の相対位置を補正し、部品Pの中心位置を突き上げピン45によって正確に突き上げることができるようにする。
【0045】
上記した実施の形態によれば、撮像装置25に撮像した突き上げピン45の上面画像IDに基づいて、XY方向位置に対する輝度の累積値を表す累積ヒストグラムHX、HYをそれぞれ作成し、これら累積ヒストグラムHX、HYの分布状態に基づいて累積ヒストグラムHX、HYの平均値より突き上げピン45先端部の中心位置を求めるようにしたので、電子部品実装装置10の納入時に、メーカが突き上げピン45に関するデータを全く持っていなくても、ユーザサイドで任意に選択した突き上げピン45先端部の中心位置を自動的に、かつ正確に求めることができるようになる。
【0046】
上記した実施の形態においては、先端が円錐状の1本の突き上げピン45によって部品Pを突き上げるようにしたが、突き上げピン45は、複数のピンを中心線に対して対照に配置したものでもよく、累積ヒストグラムを用いて平均値を求めることができるものであれば、どのような形状のものであってもよい。
【0047】
また、上記した実施の形態においては、部品移載装置26に吸着ノズル29を設け、突き上げピン45によって突き上げられた部品Pを吸着ノズル29により吸着保持して、直接基板S位置まで搬送し、実装するようにしたが、突き上げピン45によって突き上げられた部品Pを、電子部品供給装置40側に設けた吸着ノズルにより吸着保持して所定の中間位置に搬送し、中間位置に搬送された部品Pを電子部品実装装置側に設けた別の吸着ノズルにより吸着保持して基板Sに実装するようにしてもよい。
【0048】
さらに、上記した実施の形態においては、突き上げピン45に対してエキスパンド台42をXY方向に移動可能に設けた例で述べたが、例えば、エキスパンド台42をY方向に移動できるようにするとともに、突き上げピン45をX方向に移動できるようにすることもできる。要は、エキスパンド台42上の各部品Pを、突き上げピン45によって突き上げることができるように、エキスパンド台42と突き上げピン45とを互いにXY方向に相対移動できる構成であればよい。
【0049】
なお、本発明の突き上げピン45の位置決め方法は、電子部品実装装置10に適用することに限定されるものではなく、突き上げピン45によって部品Pを突き上げて、吸着ノズル29によって吸着できる供給位置に部品Pを供給する広範な電子部品供給装置40に適用できるものである。
【0050】
斯様に、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々の形態を採り得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明に係る突き上げピンの位置決め方法は、突き上げピン先端部の中心位置を自動的に計測し、吸着ノズルに対して位置決めする電子部品実装装置の部品供給装置に用いるのに適している。
【符号の説明】
【0052】
10…電子部品実装装置、25…撮像装置、26…部品移載装置、28…部品実装ヘッド、29…吸着ノズル、40…電子部品供給装置、42…エキスパンド台、43…粘着シート、45…突き上げピン、46…支持プレート、51…カメラ、53…光源、55…画像処理装置、HX、HY…累積ヒストグラム、HXA…平均値、P…部品、S…基板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エキスパンド台上のダイシングされたベアチップ等の部品を突き上げピンで突き上げる部品供給装置における突き上げピンの位置決め方法にして、
前記突き上げピンを、撮像装置により上方より撮像し、撮像データに基づいて直交する2方向座標に対する輝度の累積値を表す累積ヒストグラムを作成し、これら累積ヒストグラムの分布状態に基づいて各累積ヒストグラムの平均値をそれぞれ求め、これら平均値より前記突き上げピン先端部の中心位置を把握して位置決めすることを特徴とする突き上げピンの位置決め方法。
【請求項2】
請求項1において、前記突き上げピンにより突き上げられた前記部品を吸着保持する吸着ノズルを備え、該吸着ノズルに対して前記突き上げピン先端部の中心位置を位置決めすることを特徴とする突き上げピンの位置決め方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、前記直交する2方向座標に対する輝度の累積値を表す累積ヒストグラムの平均値を求めるに当っては、まず、前記各累積ヒストグラムの分布状態に基づいて各累積ヒストグラムの領域幅を決定し、これら領域幅の中から累積ヒストグラムの平均値をそれぞれ求めるようにしたことを特徴とする突き上げピンの位置決め方法。
【請求項4】
請求項2または請求項3において、前記吸着ノズルによって吸着保持された前記部品を、電子部品実装装置に供給することを特徴とする電子部品供給装置。
【請求項5】
請求項2ないし請求項4のいずれか1項において、前記撮像装置は、前記吸着ノズルを備えた部品移載装置側に取付けられていることを特徴とする電子部品供給装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか1項において、前記突き上げピンは、暗色の支持プレート上に設けられていることを特徴とする電子部品供給装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか1項において、前記突き上げピンは、点対称もしくは線対称の一点ないしは複数点の頂点を有するものから構成されていることを特徴とする電子部品供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−186867(P2010−186867A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−30034(P2009−30034)
【出願日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(000237271)富士機械製造株式会社 (775)
【Fターム(参考)】