説明

端子付き平面回路およびその製造方法

【課題】電気的に信頼性があり、十分な機械的強度を有する端子付き平面回路およびその製造方法を提供する。
【解決手段】回路基板12の上に導体パターン13をその端末13aが前記回路基板12外に延出するように形成した平面回路を用い、端子11を前記導体パターン13の前記端末13aに回路基板12の外で溶接して接合部14を形成し、次いで、前記接合部14を前記回路基板12上に移動、載置し、次いで、前記接合部14と前記回路基板12を保護カバー15で覆い、該接合部14は前記回路基板12と保護カバー15との間に固定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,平面回路から他の平面回路あるいは周辺機器などに電気的な接続をおこなうことができる、端子付き平面回路およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、平面回路に端子を取り付ける場合、例えば、以下のような方法でおこなっていた(特許文献1参照)。即ち、図7(a)、(b)に示すように、
1)先ず、ベースフィルム2上に線状の導体部3を形成し、該導体部3に貫通孔4を設ける。次いで、ピン端子1を前記貫通孔4に貫通させて配設する(図7(a))。
2)次いで、複数の前記貫通部4を連ねる鎖線部分6で前記ベースフィルム2を折り返し、前記ベースフィルム2の前記折り返し部でピン端子1の後部を挟み込み,予め塗布された接着剤5でピン端子1を接着・固定する。最後にピン端子1の連結部1aを鎖線部分7で切断する(図7(b))。
【特許文献1】特開昭61−294706号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述の端子付き平面回路には下記の問題があった。即ち、
1)導体部3とピン端子1との接合を行う場合、信頼性の高いはんだ付け・溶接等の加熱手段を用いた接合方法で行うと、ベースフィルム2の加熱したピン端子1と接触している部分の近傍に熱的劣化を引き起こしたり、あるいは、ベースフィルム2を溶かしたりする。このような端子付き平面回路を装置に組み込むと、平面回路がその劣化部分で他の装置部品と短絡等の電気的不具合を生じる恐れがある。
2)導体部3上に貫通孔4を開けため、その機械的強度が低下する。また、導体部3が線材の場合には、導体部3上に貫通孔4を開け、その部分にピン端子1を挿入することは困難である。
本発明は、上述した問題に鑑みなされたもので、電気的に信頼性があり、十分な機械的強度を有する端子付き平面型回路基板およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の請求項1記載の発明は、端子が平面回路に取り付けられた端子付き平面回路であって、前記平面回路は回路基板上に導体パターンが形成されており、前記端子は前記導体パターンに接合されており、該接合部は保護カバーに被われて、前記回路基板と前記保護カバーとの間に固定されていることを特徴とする端子付き平面回路である。
【0005】
また、請求項2記載の発明は、端子が平面回路に取り付けられた端子付き平面回路であって、前記平面回路は回路基板上に導体パターンが形成されており、前記端子は前記導体パターンに接合されており、該接合部は接合部位が前記回路基板面に接し、端子面が露出するように前記回路基板上に固定されていることを特徴とする端子付き平面回路である。
【0006】
また、請求項3記載の発明は、端子が平面回路に取り付けられた端子付き平面回路であって、前記平面回路は回路基板上に導体パターンが形成されて保護カバーで被われており、前記端子は前記導体パターンに接合されており、該接合部は接合部位が前記回路基板面または保護カバーに接し、端子面が露出するように前記保護カバー上に固定されていることを特徴とする端子付き平面回路である。
【0007】
また、請求項4記載の発明は、請求項1、2または3記載の発明において、前記端子は前記導体パターンに溶接により接合されていることを特徴とする端子付き平面回路である。
【0008】
また、請求項5記載の発明は、端子を平面回路に取り付ける端子付き平面回路の製造方法であって、回路基板の上に導体パターンを部分的に前記回路基板外に延出するように形成した平面回路を用い、端子を前記導体パターンの前記延出部に接合する工程を有することを特徴とする端子付き平面回路の製造方法である。
【0009】
また、請求項6記載の発明は、請求項5の発明において、前記端子を前記導体パターンの前記延出部に溶接により接合することを特徴とする端子付き平面回路の製造方法である。
【0010】
さらに、請求項7記載の発明は、請求項5または6記載の発明において、前記端子を前記導体パターンの前記延出部に接合した後、該接合部を前記回路基板上に移動、載置する工程を有することを特徴とする請求項5または6記載の端子付き平面回路の製造方法である。
【0011】
なお、上記発明において溶接とは、金属を局部的に溶融接着させる方法で、アーク溶接、抵抗溶接、ろう付け(はんだ付けを含む)など加熱手段を用いる多種多様な方法を含むものとする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の発明によれば、端子と導体パターンの接合部は回路基板と保護カバーとの間に固定されているので、外力から保護され、機械的な強度を有する。
また、請求項2記載の発明によれば、端子と導体パターンの接合部は、接合部位(端子と導体パターンが接合している面)が前記回路基板面に接し、端子面が露出するように前記回路基板上に固定されているため、接合部位は外力から保護され、機械的な強度を有し、また、端子を他の平面回路などに電気的に接続することが容易にできる。
また、請求項3記載の発明によれば、端子と導体パターンの接合部は、接合部位が前記回路基板面または保護カバーに接し、端子面が露出するように前記保護カバー上に固定されているため、接合部位は外力から保護され、機械的な強度を有し、また、端子を他の平面回路などに電気的に接続することが容易にできる。
さらに、請求項4記載の発明によれば、請求項1、2または3記載の発明において、端子は導体パターンに溶接により接合されているので、両者は機械的接合よりも信頼性よく接合されている。
【0013】
また、請求項5記載の発明によれば、回路基板の上に導体パターンを部分的に回路基板外に延出するように形成し、次いで、端子を前記導体パターンの前記延出部に接合するため、端子を導体パターンに接合する際に、回路基板に損傷を与えないように接合することができる。
また、請求項6記載の発明によれば、請求項5記載の発明において、回路基板の上に導体パターンを部分的に回路基板外に延出するように形成し、次いで、端子を前記導体パターンの前記延出部に溶接により接合するため、回路基板に加熱による損傷を与えないようにすることができる。
さらに、請求項7記載の発明によれば、請求項5または6記載の発明において、前記端子を前記導体パターンの前記延出部に接合した後、該接合部を前記回路基板上に移動、載置するため、前記接合部を前記回路基板上に固定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を詳細に説明する。
図1(a)〜(g)は、本発明にかかる端子付き平面回路の一実施形態の製造工程を示す図である。その製造工程は以下の通りである。即ち、
1)先ず、連結された端子11(例えば、厚さ0.5mmのスズメッキされたりん青銅からなる)を用意する(図1(a))。
2)次いで、前記端子11の上に、回路基板となる粘着層付きPETフィルム12(例えば厚さ0.1mm)を粘着層を上側にして載置する。この際、端子11の先端部11aがPETフィルム12の外側に延出するように、PETフィルム12を位置決めする(図1(b))。
3)次いで、PETフィルム12の粘着層の上に、線材(例えば、径0.3mmの銅線)で布線装置(例えば、特開2001−126942に示すもの)を用いて導体パターン13を形成する(図1(c))。この際、導体パターン13の端末13aをPETフィルム12の外側に延出し、端子11の先端部11a上に位置するようにする。
4)次いで、端子11の先端部11aと導体パターン13の端末13aをPETフィルム12の外側で抵抗溶接にて、溶接、固定する(図1(d))。
5)次いで、連結された端子11を、PETフィルム12の側縁線(A)を軸にして上側に回転し、前記溶接部14をPETフィルム12の粘着層上に接着、固定する(図1(e))。
6)次いで、回路保護のため保護カバーとなるフィルム15を導体パターン13上および溶接部14上にラミネートし、端子11の連結部11bを切り離す(図1(f))。
7)最後に、PETフィルム12およびフィルム15を所望の形状に裁断する(図1(g))。
【0015】
本実施形態が従来例と異なる特徴的なことは、端子11の先端部11aが導体パターン13のPETフィルム12の外側に延出した端末13aに抵抗溶接にて、溶接、固定されていることである。従って、端子11と導体パターン13の溶接部14は信頼性よく接合されている。また、その溶接部14がフィルム15で覆われて、PETフィルム12とフィルム15の間に接着、固定されて、外力から保護されていることである。さらに、端子11を導体パターン13の端末13aにPETフィルム12の外側で抵抗溶接していることであり、そのために抵抗溶接の加熱によりPETフィルム12が損傷を受けることはない。
【0016】
なお、上記実施形態では、連結された端子11を用いたが、個別に分離されたばらばらな端子を用いてもよい。例えば図2(a)〜(g)に示すように、
1)先ず、ばらばらな端子11をフィルム16の上に並べ、接着固定する(図2(a))。
2)次いで、前記端子11の上に、回路基板となる粘着層付きPETフィルム12を粘着層を上側にして載置する。この際、端子11の先端部11aがPETフィルム12の外側に延出るように、PETフィルム12を位置決めする(図2(b))。
3)次いで、PETフィルム12の粘着層の上に、線材で布線装置を用いて導体パターン13を形成する(図2(c))。この際、導体パターン13の端末13aがPETフィルム12の外側に延出されて端子11の先端部11a上に位置するようにする。
4)次いで、端子11の先端部11aと導体パターン13の端末13aをPETフィルム12の外側で抵抗溶接にて、溶接、固定する(図2(d))。この際、端子11を固定しているフィルム16は加熱により損傷を受ける場合がある。
5)次いで、端子11付きフィルム16を、PETフィルム12の側縁線(A)を軸にして回転し、フィルム16と端子11の溶接部14をPETフィルム12の粘着層に接着、固定する(図2(e))。
6)次いで、導体パターン13と損傷を受けている恐れのあるフィルム16を保護するために、保護カバーとなるフィルム15を導体パターン13上および溶接部14上にラミネートする(図2(f))。
7)最後に、PETフィルム12およびフィルム15,16を所望の形状に裁断する(図2(g))。
【0017】
また、上記実施形態では、導体パターン13と溶接部14がともに保護カバーとなるフィルム15で覆われていたが、溶接部14のみを保護カバーで覆ってもよい。例えば図3(a)〜(d)に示すように、
1)先ず、フィルム17上に接着された銅箔をエッチングすることにより形成された端子11を用意する(図3(a))。
2)次いで、前記フィルム17上に、線材からなる導体パターン13を有する板状回路基板18を位置決めし、載置する(図3(b))。
3)次いで、導体パターン13の回路基板18から延出した端末13aと端子11をはんだ付けして溶接し、溶接部14を形成する(図3(c))。
4)最後に、フィルム17と端子11を回路基板18の側縁線(A)を軸にして回転し、フィルム17と回路基板18を接着し、溶接部14をフィルム17と回路基板18の間に固定して、保護する(図3(d))。
【0018】
図4(a)〜(e)は、本発明にかかる端子付き平面回路の他の実施形態の製造工程を示す図である。その製造工程は以下の通りである。即ち、
1)先ず、端子11を用意する(図4(a))。
2)次いで、上側に粘着層を塗布したABS回路基板21(厚み1mm)を前記端子11の上に、端子11の先端部11aが回路基板21の外側に延出するように位置決めし、載置する(図4(b))。
3)次いで、前記回路基板21の上に、線材(例えば径0.2mmのAl線)で導体パターン13を布線装置を用いて形成する。この際、導体パターン13の端末13aは、回路基板21の外側の端子11の先端部11a上に位置するようにする(図4(c))。
4)次いで、端子11の先端部11aと導体パターン13の端末13aを、回路基板21の外側でフュージングにより溶接固定し、溶接部14を形成する(図4(d))。
5)最後に、端子11を回路基板21の側縁線(A)を軸にして接合部位が内側になるようにU字状に折り曲げて、接合部位を前記回路基板21に接するにし、端子11を回路基板21上に接着固定する。この状態で、接合部位は回路基板21と端子11の間に位置し、端子11面が露出している(図4(e))。
【0019】
本実施形態では、端子11と導体パターン13の溶接部14は、接合部位が回路基板21と端子11の間に位置するため、外力から保護され、また端子11面が露出しているため、端子11を他の平面回路などに電気的に容易に接続することができる。
【0020】
図5(a)〜(d)は、本発明にかかる端子付き平面回路のさらなる他の実施形態の製造工程を示す図である。その製造工程は以下の通りである。即ち、
1)回路基板となる粘着層付きフィルム31の上に線材を布線して導体パターン13を形成する。この際、前記導体パターン13の端末13aがフィルム31の外側に延出するようにする(図5(a))。
2)次いで、端子11を前記端末13aの下側に位置決めし、端子11と端末13aをフィルム31の外側ではんだ接合し、溶接部14を形成する(図5(b))。
3)次いで、保護カバーとなるフィルム32をフィルム31上および溶接部14上に被せて接着し、溶接部14をフィルム32に固定する(図5(c))。
4)最後に、全体を反転させて、フィルム32を下側にし、フィルム31を上側にして、所望の形状に切り抜く。この状態で、導体パターン13はフィルム32で被われ、溶接部14は,接合部位がフィルム32と端子11の間に位置し、端子11面が露出している(図5(d))。
【0021】
本実施形態では、導体パターン13がフィルム32で被われて保護され、溶接部14は、接合部位がフィルム32と端子11の間に位置するため、外力から保護され、端子11面が露出しているため、端子11を他の平面回路などに電気的に接続することが容易にできる。
【0022】
なお、上記実施形態では、溶接部14は回路基板となるフィルム31の外側に位置しているが、溶接部14を回路基板上に配置して小型化してもよい。例えば図6(a)〜(c)に示すように、
1)先ず、回路基板となる粘着層付きフィルム31の上に線材を布線して導体パターン13を形成し、その上に保護カバーとなるフィルム32をラミネートする。この際、前記導体パターン13の端末13aがフィルム31の外側に延出するようにする。次いで、前記端末13aに端子11を接合する(図6(a))。
2)次いで、端末13aをフィルム31の側縁線を軸にして折り曲げ(図6(b))、溶接部14の接合部位がフィルム32に接するように、フィルム32上に端子11を固定し、所望の形状に切り抜く。この状態で、溶接部14は,接合部位がフィルム32と端子11の間に位置し、端子11面が露出している(図6(c))。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】(a)〜(g)は、本発明にかかる端子付き平面回路の一実施形態の製造工程を示す図である。
【図2】(a)〜(g)は、上記実施形態の一実施例の製造工程を示す図である。
【図3】(a)〜(d)は、上記実施形態の他の実施例の製造工程を示す図である。
【図4】(a)〜(e)は、本発明にかかる端子付き平面回路の他の実施形態の製造工程を示す図である。
【図5】(a)〜(d)は、本発明にかかる端子付き平面回路のさらなる他の実施形態の製造工程を示す図である。
【図6】(a)〜(c)は、上記実施形態の一実施例の製造工程を示す図である。
【図7】(a)、(b)は、従来の端子付き平面回路の製造工程を示す図である。
【符号の説明】
【0024】
11 端子
11a 先端部
11b 連結部
12、15、16、17、31、32 フィルム
13 導体パターン
13a 端末
14 溶接部
18、21 回路基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子が平面回路に取り付けられた端子付き平面回路であって、前記平面回路は回路基板上に導体パターンが形成されており、前記端子は前記導体パターンに接合されており、該接合部は保護カバーに被われて、前記回路基板と前記保護カバーとの間に固定されていることを特徴とする端子付き平面回路。
【請求項2】
端子が平面回路に取り付けられた端子付き平面回路であって、前記平面回路は回路基板上に導体パターンが形成されており、前記端子は前記導体パターンに接合されており、該接合部は接合部位が前記回路基板面に接し、端子面が露出するように前記回路基板上に固定されていることを特徴とする端子付き平面回路。
【請求項3】
端子が平面回路に取り付けられた端子付き平面回路であって、前記平面回路は回路基板上に導体パターンが形成されて保護カバーで被われており、前記端子は前記導体パターンに接合されており、該接合部は接合部位が前記回路基板面または保護カバーに接し、端子面が露出するように前記保護カバー上に固定されていることを特徴とする端子付き平面回路。
【請求項4】
前記端子は前記導体パターンに溶接により接合されていることを特徴とする請求項1、2または3記載の端子付き平面回路。
【請求項5】
端子を平面回路に取り付ける端子付き平面回路の製造方法であって、回路基板の上に導体パターンを部分的に前記回路基板外に延出するように形成した平面回路を用い、端子を前記導体パターンの前記延出部に接合する工程を有することを特徴とする端子付き平面回路の製造方法。
【請求項6】
前記端子を前記導体パターンの前記延出部に溶接により接合することを特徴とする請求項5記載の端子付き平面回路の製造方法。
【請求項7】
前記端子を前記導体パターンの前記延出部に接合した後、該接合部を前記回路基板上に移動、載置する工程を有することを特徴とする請求項5または6記載の端子付き平面回路の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−173283(P2006−173283A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−362082(P2004−362082)
【出願日】平成16年12月14日(2004.12.14)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】