説明

第四族金属含有フィルムの堆積方法

【課題】次の式の前駆体を用いて、原子層堆積によって、金属含有フィルムを形成する方法を提供する。
【解決手段】M(OR1)(OR2)(R3C(O)C(R4)C(O)XR5y2(ここで、Mは、第四族金属であり;R1及びR2は、直鎖又は分岐鎖のC1〜10アルキル及びC6〜12アリールからなる群より、同じく又は異なって選択されることができ;R3は、直鎖又は分岐鎖のC1〜10アルキル及びC6〜12アリールからなる群より選択されることができ;R4は、水素、C1〜10アルキル及びC6〜12アリールからなる群より選択され;R5は、C1〜10の直鎖又は分岐鎖アルキル及びC6〜12アリールからなる群より選択され;XはO又はNであるが、X=Oの場合、y=1であり且つR1、2及び5が同じとなり、X=Nの場合、y=2であり、且つ各R5は同じものとなることができ、又は異なるものとなることができる)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第四族金属含有フィルム、例えば、限定されないが、酸化チタン、ドープ酸化チタン、酸化ジルコニウム、ドープ酸化ジルコニウム、チタン酸ストロンチウム及びチタン酸バリウムストロンチウムを、原子層堆積(ALD)によって形成する方法に関する。このフィルムは、例えば、半導体デバイスにおいてゲート誘電体膜又はキャパシタ誘電体膜として用いることができる。
【背景技術】
【0002】
金属酸化物半導体(MOS)集積回路(IC)の各世代で、デバイスの寸法は、連続的に縮小されて、高集積度、及び高い性能(例えば高速性及び低電力消費の要求)を与えてきた。残念なことに、電界効果半導体デバイスは、チャンネルの幅に比例する出力シグナルを生成するので、スケールの縮小は、これらの出力を低下させる。この効果は、一般的には、ゲート誘電体の厚みを減らすこと、したがってゲートをチャンネルの近くにさらに接近させて、そして電界効果を増大させ、それにより駆動電流を増加させることによって補われてきた。したがって、デバイス性能を改良するために極めて薄く、信頼性が高く、且つ低欠陥のゲート誘電体を与えることが、ますます重要になっている。
【0003】
この数十年間、熱酸化ケイ素、SiO2が、ゲート誘電体として主に使われてきたが、これは、SiO2が下地のケイ素基材と安定的であり、且つその製造プロセスが比較的単純であるからである。しかし、酸化ケイ素のゲート誘電体が、比較的低い誘電率(k)3.9を有するので、特に薄い酸化ケイ素のゲート誘電体を通るゲート−チャンネルのリーク電流に起因して、酸化ケイ素のゲート誘電体の厚みのさらなる縮小は、ますます困難になっている。
【0004】
これは、酸化ケイ素より厚い層に形成されるが、同等以上のデバイス性能も提供できる代替の誘電材料への考慮をもたらす。この性能は、「等価酸化膜厚(EOT:equivalent oxide thickness)」として表現される場合がある。代替の誘電材料層は、比較の酸化ケイ素層よりも厚くしてもよいが、これは、ずっと薄い層の酸化ケイ素層と同等の効果を有する。
【0005】
この目的を達成するために、高誘電率(high−k)金属酸化物材料が、ゲート誘電体又はキャパシタ誘電体の代替誘電材料として提案されている。第四族含有前駆体を、それら単独で用いて、又は他の金属含有前駆体と組み合わせることによって用いて、高誘電率薄膜、及び/又は強誘電体酸化物薄膜、例えばPb(Zr,Ti)O3又は(Ba,Si)(Zr,Ti)O3を作製することもできる。金属酸化物材料の誘電率は、酸化ケイ素の誘電率よりも高くすることができるので、同等のEOTを持つ比較的厚い金属酸化物層を、堆積させることができる。結果として、半導体産業は、金属含有フィルム、例えば、限定されるものではないが、酸化物、窒化物、ケイ酸塩又はこれらの組み合わせのフィルムを、基材、例えば金属窒化物又はケイ素上に堆積させることができるようにするために、第4族前駆体、例えばチタン含有前駆体、ジルコニウム含有前駆体、及びハフニウム含有前駆体並びにそれらの組み合わせを必要としている。
【0006】
残念なことに、従来の基材材料、例えばケイ素を使用する場合に、高誘電率の金属酸化物材料の使用は、幾つかの問題を提示する。ケイ素は、高誘電率の金属酸化物の堆積中に、又は次の熱プロセス中に、高誘電率の金属酸化物と反応する場合があり、又は酸化される場合があり、それにより酸化ケイ素の界面層を形成する。これは、等価酸化膜厚を増加させ、それによりデバイス性能を低下させる。さらに、高誘電率の金属酸化物層とケイ素基材との間の界面トラップ密度が増加する。これにより、キャリヤのチャンネル移動度が低下する。これは、MOSトランジスタのON/OFF電流比を低下させ、そのスイッチング特性を悪化させる。また、高誘電率の金属酸化物層、例えば酸化ハフニウム(HfO2)層又は酸化ジルコニウム(ZrO2)層は、比較的低い結晶化温度を有し、且つ熱的に不安定である。したがって、この金属酸化物層は、ソース/ドレイン領域中に注入された不純物を活性化させるための次の熱アニールプロセス中に、容易に結晶化される場合がある。これは、電流が通過する粒子境界を、金属酸化物層に形成する場合がある。この金属酸化物層の表面粗さが増加するにしたがって、リーク電流特性が悪化する場合がある。さらに、粗い表面を有するアラインメントキー(alignment key)上の光の乱反射に起因して、高誘電率の金属酸化物層の結晶化は、次のアライメントプロセス(alignment process)に悪影響を及ぼす。
【0007】
多くの様々な供給システムが、CVD又はALD反応器への前駆体の供給のために開発されてきた。例えば、直接液体注入(DLI:direct liquid injection)法では、液体前駆体又は溶媒中の前駆体の溶液を、加熱された気化システムに供給し、それによりその液体組成物を、液相から気相にする。前駆体から気化器への高度な液体計量は、前駆体供給速度の正確で安定した制御を与える。金属有機前駆体の供給に関してすでに半導体産業で幅広く用いられている他の一つの方法は、通常のバブリング器技術に基づく。ここでは不活性ガスを、高い温度でそのままの液体の前駆体又は溶融前駆体にバブリングして通す。典型的には、前駆体は、低い蒸気圧を有し、100〜200℃に加熱して、十分な前駆体蒸気を堆積反応器にバブリング法によって供給する必要がある。溶融した相から供給された固体の前駆体は、複数の冷却/加熱サイクルの間にラインを詰まらせる場合がある。前駆体が液体であるか、又はバブリング器の温度より顕著に低い融点を有する固体であることが望ましい。熱分解の生成物も、供給ラインを詰まらせ、且つ前駆体の供給速度に影響を与える場合がある。バブリング器の温度での長い時間が、前駆体の熱分解を引き起こす場合もある。前駆体は、複数の堆積サイクルの間にバブリング器に導入された微量の水分及び酸素と反応する場合もある。
【0008】
アルコキシ配位子、ジケトナート配位子、ケトエステラート配位子、シクロペンタジエニル配位子を有する多くの第四族錯体が、金属酸化物フィルムのCVDのために提案されてきた。
【0009】
本発明の分野における従来技術としては次のものが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第6,603,033号
【特許文献2】特開2007−197804号
【特許文献3】特開平10−114781号
【特許文献4】国際公開WO1984003042号
【特許文献5】日本国特許第2822946号
【特許文献6】米国特許第6,562,990号
【特許文献7】米国特許第6,117,487号
【特許文献8】国際公開WO9640690号
【特許文献9】米国特許出願公開第2010/0018439号
【特許文献10】米国特許出願公開第2007/0248754号
【特許文献11】2007年11月27日に出願された米国特許出願第11/945678号
【特許文献12】本件出願人による同時継続出願である、2008年11月11日に出願された米国特許出願第12/266,806号
【特許文献13】本件出願人による同時継続出願である、2008年10月3日に出願された米国特許出願第12/245,196号
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Chem.Vap.Deposition,9,295(2003)
【非特許文献2】J.of LessCommon Metals,3,253(1961)
【非特許文献3】J.Am.Chem.Soc.79,p4344−4348 (1957)
【非特許文献4】Journal of the Chemical Society A:Inorganic,Physical,and Theoretical Chemistry:904−907(1970)
【非特許文献5】Chemical Communications 10(14):1610−1611(2004)
【非特許文献6】Journal of Materials Chemistry 14,3231−3238(2004)
【非特許文献7】Chemical Vapor Deposition 12,172−180(2006)
【非特許文献8】Gornshtein,F., M.Kapon, M.Botoshansky及びM.S.Eisen(2007).“Titanium and Zirconium Complexes for Polymerization of Propylene and Cyclic Esters.”Organometallics26(3):pp.497−507
【非特許文献9】Bae,B.−J., K.Lee, W.S.Seo, M.A.Miah, K.−C.Kim及びJ.T.Park(2004).“Preparation of anatase TiO2 thin films with (OPri)2Ti(CH3COCHCONEt2)2 precursor by MOCVD.”Bull.Korean Chem.Soc.25(11):pp.1661−1666
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述したように、従来技術における第四族前駆体は、多くは固体であり、且つ比較的低い蒸気圧を有する(例えば、0.5torr以下)。液体形態であり、且つ従来技術で報告された第四族前駆体のいくつかについては、これらの前駆体は、150℃超の温度で明らかに熱的に安定ではなく、それゆえ半導体製造中に供給又はプロセスの問題を引き起こす。それは例えば、原料容器と反応器との間の供給ラインの目詰まり、及びウェハーに堆積した粒子が挙げられる。また、これらの前駆体は、低いALD操作サーマルウィンドウ(ALD operating thermal window)及び/又はALDの成長率/サイクルを有する。
【0013】
したがって、原子層堆積によって薄膜を堆積することができ、且つ少なくとも次の一つの特性を示す第四族前駆体、好ましくは液体の第四族前駆体を開発する必要がある:比較的低い分子量(例えば、500m.u.以下)、比較的低い融点(例えば、60℃以下)、高い蒸気圧(例えば、0.5torr以上)、また高いALDサーマルウィンドウ(例えば、300℃以上)及び0.3Å/サイクル超のALD成長率。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、金属含有フィルム、例えば、限定されないが、酸化チタン、ドープ酸化チタン、酸化ジルコニウム、ドープ酸化ジルコニウム、チタン酸ストロンチウム及びチタン酸バリウムストロンチウムを、原子層堆積(ALD)によって、次の式で表される前駆体を用いて形成する方法に関する:
【化1】

(ここで、Mは、Ti、Zr及びHfからなる群より選択される第四族金属であり;R1及びR2は、直鎖又は分岐鎖のC1〜10アルキル及びC6〜12アリールからなる群、好ましくはC1〜4アルキルからなる群より、同じく又は異なって選択されることができ;R3は、直鎖又は分岐鎖のC1〜10アルキル(好ましくはC3〜6の嵩高いアルキル)及びC6〜12アリールからなる群より選択されることができ;R4は、水素、C1〜10アルキル及びC6〜12アリールからなる群より選択され、好ましくは水素であり;R5は、直鎖又は分岐鎖のC1〜10アルキル及びC6〜12アリールからなる群より選択され、好ましくはメチル基又はエチル基であり;XはO又はNであるが、X=Oの場合、y=1であり且つR1、2及び5が同じとなり、X=Nの場合、y=2であり、且つ各R5は同じものとなることができ、又は異なるものとなることができる)。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】ビス(イソ−プロポキシ)ビス(メチル4,4−ジメチル−3−オキソペンタノアート)チタン(点線)、ビス(エトキシ)ビス(メチル4,4−ジメチル−3−オキソペンタノアート)チタン(破線)、及びビス(n−プロポキシ)ビス(メチル4,4−ジメチル−3−オキソペンタノアート)チタン(実線)に関する、熱重量分析(TGA)のグラフである。これら全ての前駆体が、揮発性であり、且つ低い残渣を有することを示している。
【図2】ビス(イソ−プロポキシ)ビス(N,N−ジメチルアセトアセトアミド)チタン及びオゾンを用いたTiO2のALDに関する、厚さ対温度のグラフである。
【図3】オゾン及びビス(メトキシ)ビス(メチル4,4−ジメチル−3−オキソペンタノアート)チタンの100回のALDサイクルを用いて堆積させた酸化チタンフィルムの熱ALDの温度依存性であり、これは、この前駆体に関するALDのサーマルウィンドウが、約370℃までであることを示している。
【図4】オゾン及びビス(エトキシ)ビス(エチル4,4−ジメチル−3−オキソペンタノアート)チタンの100回のALDサイクルを用いて堆積させた酸化チタンフィルムの熱ALDの温度依存性であり、これは、この前駆体に関するALDのサーマルウィンドウが、少なくとも約375℃までであることを示している。
【図5】2つの異なるチタン前駆体の投入時間で、オゾン及びビス(エトキシ)ビス(エチル4,4−ジメチル−3−オキソペンタノアート)チタンを用いたALDのサイクル数についての酸化チタンの厚みの依存性であり、約375℃で実際に自己制限的であるALDプロセスを裏付けている。
【図6】ビス(エトキシ)ビス(エチル4,4−ジメチル−3−オキソペンタノアート)チタンを液体のチタン前駆体として用いて、パターン化された基材上に堆積させたTiO2フィルムの透過型電子顕微鏡(TEM)画像である。これは、パターン化された基材の上部から下部までのすぐれた段差被覆率(90%超)を示している。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、第四族金属含有フィルム、例えば、限定されないが、酸化チタン、ドープ酸化チタン、酸化ジルコニウム、ドープ酸化ジルコニウム、ドープ酸化ランタニド、チタン酸ストロンチウム及びチタン酸バリウムストロンチウムを、(a)サイクリック(cyclic)化学気相成長によって、又は(b)原子層堆積によって、次の式で表される前駆体:M(OR1)(OR2)(R3C(O)C(R4)C(O)XR5y2;また二次元では次のように表わされる前駆体を用いて、形成する方法に関する:
【化2】

(ここで、Mは、Ti、Zr及びHfからなる群より選択される第四族金属であり;R1及びR2は、直鎖又は分岐鎖のC1〜10アルキル及びC6〜12アリールからなる群、好ましくはC1〜4アルキルからなる群より、同じく又は異なって選択されることができ;R3は、直鎖又は分岐鎖のC1〜10アルキル(好ましくはC3〜6アルキル)及びC6〜12アリールからなる群より選択され;R4は、水素、C1〜10アルキル及びC6〜12アリールからなる群より選択され、好ましくは水素から選択され;R5は、直鎖又は分岐鎖のC1〜10アルキル及びC6〜12アリールからなる群より選択され、好ましくはメチル基又はエチル基より選択され;XはO又はNであるが、X=Oの場合、y=1であり且つR1、2及び5が同じとなり、X=Nの場合、y=2であり、且つ各R5は同じものとなることができ、又は異なるものとなることができる)。
【0017】
さらに詳しくは、液体の第四族前駆体の一群は、次の二つの実施態様である式I及び式IIによって表される:
【化3】

(ここで、Mは、Ti、Zr及びHfを含む第四族金属であり;R1及びR2は、直鎖又は分岐鎖のC1〜10アルキル及びC6〜12アリールからなる群より、同じく又は異なって選択されることができ;R3は、直鎖又は分岐鎖のC1〜10アルキル及びC6〜12アリールからなる群より選択されることができ、好ましくは、式Iに関しては分岐鎖のC3〜6アルキルからなる群、また式IIに関しては直鎖のC1〜3アルキルからなる群より選択されることができ;R4は、水素、C1〜10アルキル及びC6〜12アリールからなる群より選択され、好ましくは水素から選択され;R5〜5’は個々に、直鎖又は分岐鎖のC1〜10アルキル及びC6〜12アリールからなる群、好ましくはメチル基又はエチル基より選択され;式Iにおいて、R1、2及び5は同じである)。
【0018】
一つの特定の実施態様において、Mはチタンであり;R1及びR2は同じであり、且つメチル基、エチル基、又はn−プロピル基からなる群より選択され;R3は、分岐鎖のC3〜6アルキルを有し、好ましくはtert−ブチル又はtert−アミルを有し;R4は、水素を有し;R5は、R1〜2と同じであり、且つメチル基、エチル基、及びn−プロピル基からなる群より選択される。典型的な前駆体は、次の式III 及び式IVで表される:
【化4】

【0019】
他の一つの実施態様において、Mは、Zr又はHfであり;R1〜2は、イソ−プロピル、tert−ブチル、sec−ブチル、イソ−ブチル、又はtert−アミルを有し;R3は、3〜6の炭素原子を有する嵩高いアルキル基を有し;R4は、水素を有し;R5は、メチル基、エチル基、又はn−プロピル基を有する。
【0020】
典型的な前駆体は、次の式V〜式VIで表される:
【化5】

【0021】
式Iの前駆体の一つの有用な特徴は、R1〜2と同じであるR5を有することであり、それによって、それらが共通のアルコキシ基だけを有し、これが比較的高い温度での隣接結合部位間でのアルコキシ基の交換による他の金属前駆体錯体の形成を防止し、そうして良好な熱安定性及び組成安定性を与える。前駆体の良好な熱安定性及び組成安定性は、蒸着チャンバーへの着実な前駆体の供給、及び着実な蒸着パラメーターを確保するために重要である。例えば、200℃での一時間の加熱前後で、ビス(メトキシ)ビス(メチル4,4−ジメチル−3−オキソペンタノアート)チタンの1H NMRスペクトル及びTGA残渣に変化は観察されなかったが、これは熱処理後にその組成に変化がないこと、それゆえ、この前駆体の非常に良好な熱安定性を示唆している。対照的に、典型的な反応A及び反応Bで示すように、200℃で1時間加熱した場合、異なるR5及びR1〜2を有する式Iの前駆体に関して、複数のアルコキシ基交換プロセスが、1H NMR及びGC−MS解析によって観察された。そのような錯体を容器中で加熱することは、結果として異なる組成及び揮発度を有する錯体の混合物を与える場合がある。
【化6】

【化7】

【0022】
本明細書で用いられる用語「アルキル」は、直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基を含み、1〜10の炭素原子、好ましくは1〜6の炭素原子、さらに好ましくは4〜6の炭素原子、さらに好ましくは3〜5の炭素原子、最も好ましくは1〜3の炭素原子、又はこれらの範囲の変型の炭素原子を有する。典型的なアルキル基としては、限定されないが、メチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、tert−アミル、n−ペンチル、n−ヘキシル、シクロペンチル、及びシクロヘキシルが挙げられる。用語「アルキル」は、他の基、例えば、ハロアルキル、アルキルアリール又はアリールアルキルに含まれているアルキル部にも適用される。
【0023】
本明細書で用いられる用語「嵩高い」は、同じ炭素原子数を有する直鎖アルキル基と比較して、立体的に障害されるアルキル基を表しており、例えば、分岐鎖アルキル基、環状アルキル基、又は一以上の側鎖及び/若しくは置換基を有するアルキル基が挙げられる。
【0024】
本明細書で用いられる用語「アリール」は、芳香族特性を有する6〜12員の炭素環を含む。典型的なアリール基としては、フェニル基及びナフチル基が挙げられる。
【0025】
用語「アルキル置換アリール」は、アルキルで置換されたアリール部位に適用される。典型的な、アルキル置換アリール基としては、トリル基及びキシリル基が挙げられる。
【0026】
用語「ハロ」及び「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素を含む。ある種の実施態様において、ここで論じたいくつかの基を、一以上の他の元素、たとえばハロゲン原子又は他のヘテロ原子、例えばO、N、Si又はSで置換することができる。
【0027】
ある種の実施態様において、式Iのβ−ジケトエステラート配位子中のR3及びR5は、異なるアルキル基である。これらβ−ジケトエステル配位子の例としては、限定されないが、メチル4,4−ジメチル−3−オキソペンタノアート(MDOP)及びエチル4,4−ジメチル−3−オキソペンタノアート(EDOP)が挙げられる。
【0028】
他の実施態様において、β−ジケトエステル配位子中のR3及びR5は、同じアルキル基である。これらのβ−ジケトエステル配位子の例としては、限定されないが、メチルアセトアセテート及びエチルアセトアセテートが挙げられる。
【0029】
本明細書で開示された方法の一実施態様において、第四族金属含有フィルムは、次のステップを有するサイクリック化学気相成長又は原子層堆積法を用いて形成される:(a)第四族金属前駆体を気相状態で反応チャンバーに導入し、加熱された基材上に金属含有前駆体を化学吸着させるステップ;(b)未反応の第四族金属含有前駆体をパージするステップ;(c)酸素源を、加熱された基材に導入して、吸着した第四族金属含有前駆体と反応させるステップ;及び(d)未反応の酸素源及び副生成物をパージするステップ。上記のステップを、本明細書に記載した方法に関する1サイクルと定義し、このサイクルを金属含有フィルムの所望の厚みが得られるまで繰り返すことができる。一回の原子層堆積サイクルの間に堆積されたフィルムの厚みは、本明細書においてALD成長率として言及され、これはALD前駆体のタイプ、ALD反応が起こる表面、及び堆積温度に依存する。
【0030】
この方法の一実施態様において、ALD成長率は、0.3Å/サイクル超である。表1は、市販のチタンジケトナート錯体(ビス(イソプロポキシ)ビス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナート)チタン)及び本発明の前駆体(ビス(メトキシ)ビス(メチル4,4−ジメチル−3−オキソペンタノアート)チタン、ビス(エトキシ)ビス(エチル4,4−ジメチル−3−オキソペンタノアート)チタン、ビス(イソ−プロポキシ)ビス(N,N−ジメチルアセトアセトアミド)チタン、及びビス(n−プロポキシ)ビス(メチル4,4−ジメチル−3−オキソペンタノアート)チタン)を用いた酸化チタンフィルムの原子層堆積を要約している。意外にも、ジケトナート構造中にエステル基又はアミド基を有する本発明の前駆体は、アルキル基のみを有する同様のチタンジケトナート錯体よりも高い原子層堆積成長率を与える。
【0031】
【表1】

【0032】
この又は他の実施態様において、本明細書に記載した方法のステップを、様々な順番で実行することができ、連続して、又は重複して(例えば、他の一つのステップの少なくとも一部の間に)、そしてこれらの任意の組み合わせで実行することができると理解される。前駆体及び酸素源ガスを供給するそれぞれのステップを、それらを供給する時間を変化させることにより実行して、生成する金属酸化物フィルムの化学量論的組成を変えることができる。多成分金属酸化物フィルムに関して、ストロンチウム含有前駆体、バリウム含有前駆体、又は両方の前駆体を、反応チャンバーに1ステップで導入することができる。
【0033】
本明細書に記載した方法の一つの実施態様において、反応器、すなわち堆積チャンバー内の基材の温度は、250℃〜400℃、好ましくは300℃〜400℃である。この又は他の実施態様において、圧力は、約0.1Torr〜約100Torr、又は約0.1Torr〜約5Torrの範囲とすることができる。
【0034】
酸化剤は、少なくとも一つの酸素源の形態で反応器に導入することができ、且つ/又は堆積プロセスで用いられる他の前駆体に付随して存在することができる。適切な酸素源ガスとしては、例えば、水(H2O)(例えば、脱イオン水、精製水、及び/又は蒸留水)、酸素(O2)、酸素プラズマ、オゾン(O3)、NO、NO2、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO2)及びこれらの混合物が挙げられる。ある種の実施態様において、酸素源は、反応器に約1〜約2000sccm又は約1〜約1000sccmの範囲の流量で導入される酸素源ガスを含む。酸素源を、約0.1〜約100秒の範囲で、好ましくは約1〜10秒の範囲の時間で導入することができる。
【0035】
本明細書で開示された堆積方法は、一以上のパージガスを用いることができる。未反応の反応物及び/又は反応副生成物をパージするために用いるパージガスは、前駆体と反応しない不活性ガスであり、好ましくはAr、N2、He、H2及びこれらの混合物からなる群より選択することができる。ある種の実施態様において、パージガス、例えばArは、約0.1秒〜1000秒の間に、好ましくは1〜50秒の間に、約10〜2000sccmの範囲を有する流量で反応器に供給され、それによって反応器中に残留している未反応材料及びあらゆる副生成物をパージする。
【0036】
一つの特定の実施態様では、第四族金属前駆体は、液体であり、これは次の特性の少なくとも一つを示す:低分子量(例えば、500m.u.以下)、低粘度(600cP以下)、低融点(例えば、60℃以下)及び高蒸気圧(例えば、0.5torr以上)。
【0037】
一実施態様において、その方法は、第四族金属含有酸化物フィルム、例えば、金属含有酸化物フィルム、金属含有窒化物フィルム、金属含有酸窒化物フィルム、金属含有ケイ酸塩フィルム、多成分金属酸化物フィルム、及びこれらの任意の組み合わせ又は積層の作製のために用いられ、これは例えば、半導体デバイスの製造で用いることができる。
【0038】
一実施態様では、本明細書で開示された方法は、第四族金属酸化物フィルム又は多成分金属酸化物フィルムを与え、これは通常の熱酸化ケイ素、窒化ケイ素、又はジルコニウム/ハフニウム酸化物誘電体のいずれの誘電率よりも実質的に高い誘電率を有する。
【0039】
本明細書で開示された方法の一実施態様では、第四族金属ケイ酸塩フィルム又は金属酸窒化ケイ素フィルムを、式Iの第四族金属含有前駆体、ケイ素含有前駆体、酸素源、及び任意的に窒素源を用いて、基材の少なくとも一つの表面に形成する。金属含有前駆体及びケイ素含有前駆体は、典型的には液体の形態又は気相のどちらかで反応し、それによってフィルム形成を妨げるが、本明細書で開示された方法は、反応器への導入前及び/又は反応器への導入中に前駆体を分離するALD法を用いることによって、金属含有前駆体又はケイ素含有前駆体の事前の反応を回避する。ある種の実施態様において、本明細書で開示された方法は、金属ケトイミナート前駆体及び酸素源を用いて金属酸化物フィルムを形成する。
【0040】
上述したように、本明細書で開示された方法は、少なくとも一つの金属前駆体(例えば、本明細書に記載された第四族金属含有前駆体)、任意的に少なくとも一つのケイ素含有前駆体、任意的に酸素源、任意的に追加の金属含有前駆体又は他の金属含有前駆体、任意的に還元剤、及び任意的に窒素源を用いて、金属含有フィルムを形成する。本明細書で用いられる前駆体及び物質源は、「ガス状」と述べられる場合があるが、前駆体は、液体又は固体のどちらかとなることができ、これは不活性ガスを用いて又は用いないで、反応器に直接気化、バブリング又は昇華によって輸送されると理解される。いくつかの場合には、気化した前駆体は、プラズマ発生器を通過することができる。
【0041】
ある種の実施態様では、他の金属含有前駆体を、本明細書に記載された第四族金属含有前駆体に追加して用いることができる。金属アミドに関する金属成分として用いることができる、半導体製造で通常用いられる金属としては、チタン、タンタル、タングステン、ハフニウム、ジルコニウム、セリウム、亜鉛、トリウム、ビスマス、ランタン、ストロンチウム、バリウム、鉛及びこれらの混合物が挙げられる。
【0042】
本明細書で開示された方法で用いることができる他の金属含有前駆体の例としては、限定されないが、テトラキス(ジメチルアミノ)ジルコニウム(TDMAZ)、テトラキス(ジエチルアミノ)ジルコニウム(TDEAZ)、テトラキス(エチルメチルアミノ)ジルコニウム(TEMAZ)、テトラキス(ジメチルアミノ)ハフニウム(TDMAH)、テトラキス(ジエチルアミノ)ハフニウム(TDEAH)、及びテトラキス(エチルメチルアミノ)ハフニウム(TEMAH)、テトラキス(ジメチルアミノ)チタン(TDMAT)、テトラキス(ジエチルアミノ)チタン(TDEAT)、テトラキス(エチルメチルアミノ)チタン(TEMAT)、tert−ブチルイミノトリ(ジエチルアミノ)タンタル(TBTDET)、tert−ブチルイミノトリ(ジメチルアミノ)タンタル(TBTDMT)、tert−ブチルイミノトリ(エチルメチルアミノ)タンタル(TBTEMT)、エチルイミノトリ(ジエチルアミノ)タンタル(EITDET)、エチルイミノトリ(ジメチルアミノ)タンタル(EITDMT)、エチルイミノトリ(エチルメチルアミノ)タンタル(EITEMT)、tert−アミルイミノトリ(ジメチルアミノ)タンタル(TAIMAT)、tert−アミルイミノトリ(ジエチルアミノ)タンタル、ペンタキス(ジメチルアミノ)タンタル、tert−アミルイミノトリ(エチルメチルアミノ)タンタル、ビス(tert−ブチルイミノ)ビス(ジメチルアミノ)タングステン(BTBMW)、ビス(tert−ブチルイミノ)ビス(ジエチルアミノ)タングステン、ビス(tert−ブチルイミノ)ビス(エチルメチルアミノ)タングステン、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナート)ストロンチウム、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナート)バリウム、M(Rn55-n2(ここで、n=1〜5、且つRは、直鎖又は分岐鎖のC1〜6アルキルから選択される)、M(Rn4NH4-n2(ここで、n=2〜4、且つRは、直鎖又は分岐鎖のC1〜6アルキルから選択される)、及びM(Rn23-n2(ここで、n=2〜3、且つRは、直鎖又は分岐鎖のC1〜6アルキルから選択される)、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0043】
一実施態様では、本明細書に記載された第四族金属前駆体に追加して用いて、金属含有フィルムを与えることができる金属含有前駆体は、多座のβ−ケトイミナートであり、これは例えば、出願人による同時継続出願US2007/0248754、2007年11月27日に出願された米国特許出願11/945678、2008年11月11日に出願された出願人による同時継続米国特許出願12/266,806、2008年10月3日に出願された出願人による同時継続米国特許出願12/245,196に記載されており、これらは全て参照として本明細書に完全に取り込まれる。
【0044】
ある種の実施態様では、多座のβ−ケトイミナートは、アルコキシ基を、イミノ基に取り込むことができる。多座のβ−ケトイミナートは、次の構造A及びBで表される群より選択される。
【0045】
構造Aは、次のように定義される:
【化8】

(ここで、Mは第二族金属、例えばマグネシウム、カルシウム、ストロンチウム及びバリウムである。好ましくは、Mはストロンチウム又はバリウムである。本発明の錯体で用いられるオルガノ基(すなわちR基)としては、様々なオルガノ基を挙げることができ、且つ直鎖又は分岐鎖となることができる。好ましい実施態様において、R1は、C1〜C10アルキル、C1〜C10アルコキシアルキル、C1〜C10アルコキシ、C1〜C10フルオロアルキル、C1〜C10脂環族及びC6〜C10アリールからなる群より選択される。本明細書で用いられる場合、基「アルコキシアルキル」は、C−O−C部を含むエーテル状部分と言及する。例としては、−CH2CH2−O−CH2CH2−O−CH3及び−CH2CH2−O−CH2−O−CH3が挙げられる。好ましくは、R1は、4〜6の炭素原子を含む嵩高いアルキル基であり、例えば、tert−ブチル基、sec−ブチル基又はtert−ペンチル基である。最も好ましいR1基は、tert−ブチル又はtert−ペンチルである。好ましくは、R2は、水素、C1〜C10アルキル、C1〜C10アルコキシアルキル、C1〜C10アルコキシ、C3〜C10脂環族及びC6〜C10アリールからなる群より選択される。さらに好ましくは、R2は、水素又はC1〜C2アルキルである。好ましくは、R3は、C1〜C10アルキル、C1〜C10アルコキシアルキル、C1〜C10アルコキシ、C3〜C10脂環族及びC6〜C10アリールからなる群より選択される。さらに好ましくは、R3は、C1〜C2アルキルである。好ましくは、R4は、C1〜C6の直鎖又は分岐鎖のアルキレンであり、そしてさらに好ましくは、R4は、3〜4の炭素原子を有する分岐鎖のアルキレンブリッジを含み、且つ少なくとも一つのキラル中心炭素原子を有する。特定の理論に拘束されることを意図していないが、配位子のキラル中心は、融点を低下させると共に錯体の熱安定性を向上させる役割を果たす。好ましくは、R5は、C1〜C10アルキル、C1〜C10フルオロアルキル、C3〜C10脂環族及びC6〜C10アリールからなる群より選択される。さらに好ましくは、R5は、C1〜C2アルキルである)。
【0046】
これらの金属含有錯体の具体的な例は、次の構造Bにより表される:
【化9】

(ここで、Mは、2〜5の価数を有する金属であり、R1は、C1〜10アルキル、C2〜10アルコキシアルキル、C1〜10フルオロアルキル、C4〜10脂環族、及びC6〜12アリールからなる群より選択される;R2は、水素、C1〜10アルキル、C1〜10アルコキシ、C4〜10脂環族及びC6〜12アリールからなる群より選択される;R3は、C1〜10アルキル、C2〜10アルコキシアルキル、C1〜10フルオロアルキル、C4〜10脂環族及びC6〜12アリールからなる群より選択される;R4は、C3〜10の直鎖又は分岐鎖のアルキレンであり、そしてさらに好ましくは、R4は、C3〜4を有する分岐鎖のアルキルブリッジであり、好ましくは少なくとも一つのキラル中心炭素原子を有する。R5〜6は、個々に、C1〜10アルキル、C1〜10フルオロアルキル、C4〜10脂環族、C6〜12アリール、及び酸素原子又は窒素原子のどちらかを含むヘテロ環族からなる群より選択され;且つnは、金属Mの価数と等しい整数である)。
【0047】
一実施態様では、本発明の金属前駆体を、少なくとも一つの金属−配位子錯体に追加して用いることができる。その金属−配位子錯体の一以上の配位子は、β−ジケトナート, β−ジケトエステラート、β−ケトイミナート、β−ジイミナート、アルキル、カルボニル、アルキルカルボニル、シクロペンタジエニル、ピロリル、イミダゾリル、アミジナート、アルコキシド及びこれらの混合物からなる群より選択され、その配位子は、一座、二座、及び多座となって金属原子に配位することができ、その金属は、元素周期律表の第二〜第十六族から選択される。これらの錯体の例としては、次のものを含む:ビス(2,2−ジメチル−5−(ジメチルアミノエチルイミノ)−3−ヘキサノナート−N,O,N’)ストロンチウム、ビス(2,2−ジメチル−5−(1−ジメチルアミノ−2−プロピルイミノ)−3−ヘキサノナート−N,O,N’)ストロンチウム、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナート)セリウム(IV)、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナート)ランタン、Sr[(tBu)3Cp]2、Ba[(tBu)3Cp]2、LaCp3、La(MeCp)3、La(EtCp)3、La(iPrCp)3、ジルコニウムtert−ブトキシド、ストロンチウムビス(2−tert−ブチル−4,5−ジ−tert−アミルイミダゾレート)、バリウムビス(2−tert−ブチル−4,5−ジ−tert−アミルイミダゾレート)、バリウムビス(2,5−ジ−tert−ブチル−ピロリル)(ここで、「Me」はメチル、「Et」はエチル、「Pr」はプロピル、且つ「Cp」はシクロペンタジエニルである)。
【0048】
一実施態様において、本発明の金属前駆体を、酸化チタン、ドープ酸化チタン、ドープ酸化ジルコニウム、チタン酸ストロンチウム(STO)及びチタン酸バリウムストロンチウム(BST)の堆積に用いることができる。
【0049】
堆積される金属フィルムが金属ケイ酸塩である一実施態様において、その堆積プロセスは、少なくとも一つのケイ素含有前駆体の導入をさらに伴う。適切なケイ素含有前駆体の例としては、モノアルキルアミノシラン前駆体、ヒドラジノシラン前駆体又はこれらの組み合わせが挙げられる。ある種の実施態様において、ケイ素含有前駆体は、少なくとも一つのN−H部及び少なくとも一つのSi−H部を有するモノアルキルアミノシラン前駆体を含む。N−H部及びSi−H部の両方を有する適切なモノアルキルアミノシラン前駆体の例としては、例えば、ビス(tert−ブチルアミノ)シラン(BTBAS)、トリス(tert−ブチルアミノ)シラン、ビス(イソ−プロピルアミノ)シラン、トリス(イソ−プロピルアミノ)シラン及びこれらの混合物が挙げられる。一実施態様において、モノアルキルアミノシラン前駆体は、式(R7NH)nSiR8m4〜(n+m)を持つ(ここで、R7及びR8は、同じであるか又は異なっており、また個々に、C1〜10アルキル、ビニル、アリル、フェニル、C4〜10環状アルキル、C1〜10フルオロアルキル及びC1〜10シリルアルキルからなる群より選択され、且つnは1〜3の数、mは0〜2の数、且つ「n+m」の合計は3以下の数である)。他の一つの実施態様において、ケイ素含有前駆体は、式(R92N−NH)xSiR10y4〜(x+y)を持つヒドラジノシランを含む(ここで、R9及びR10は、同じであるか又は異なっており、また個々に、C1〜10アルキル、ビニル、アリル、フェニル、環状アルキル、フルオロアルキル及びC1〜10シリルアルキルからなる群より選択され、且つxは1〜2の数、yは0〜2の数、且つ「x+y」の合計は3以下の数である)。適切なヒドラジノシラン前駆体の例としては、限定されないが、ビス(1,1−ジメチルヒドラジノ)−シラン、トリス(1,1−ジメチルヒドラジノ)シラン、ビス(1,1−ジメチルヒドラジノ)エチルシラン、ビス(1,1−ジメチルヒドラジノ)イソプロピルシラン、ビス(1,1−ジメチルヒドラジノ)ビニルシラン及びこれらの混合物が挙げられる。
【0050】
堆積方法に応じて、ある種の実施態様では、ケイ素含有前駆体を、反応器に所定のモル体積で、又は約0.1〜約1000マイクロモルで導入することができる。この又は他の実施態様では、ケイ素含有前駆体を、反応器に所定の時間で、又は約0.001〜約500秒の間で、導入することができる。ケイ素含有前駆体は、金属アミドと酸素源との反応によって形成された金属水酸基と反応し、そして基材の表面に化学的に吸着する。これは、金属−酸素−ケイ素及び金属−酸素−窒素−ケイ素の結合を通じて、結果として酸化ケイ素、又は酸窒化ケイ素の形成をもたらし、そうして金属ケイ酸塩フィルム又は金属酸窒化ケイ素フィルムを与える。
【0051】
ある種の実施態様、例えば、酸窒化金属−ケイ素フィルムを堆積する実施態様では、追加のガス、例えば窒素源ガスを反応器に導入することができる。窒素源ガスの例としては、NO、NO2、アンモニア、ヒドラジン、モノアルキルヒドラジン、ジアルキルヒドラジン、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0052】
前駆体、酸素源及び/又は他の前駆体若しくは物質源ガスを供給するそれぞれのステップを、それらを供給する時間を変えることで実行し、生成する金属酸化物フィルム(例えば、チタン酸ストロンチウムフィルム、チタン酸バリウムフィルム、チタン酸バリウム/ストロンチウムフィルム、ドープ酸化ランタニドフィルム、金属ケイ酸塩フィルム、金属酸窒化ケイ素フィルム、又は他の金属含有フィルム)の化学量論的組成を変えることができる。
【0053】
エネルギーを、前駆体、酸素源ガス、還元剤、又はこれらの混合物の少なくとも一つに適用して、反応を誘起し、そして金属含有フィルムを基材に形成する。そのようなエネルギーを、限定されないが、熱、プラズマ、パルスプラズマ、へリコンプラズマ、高密度プラズマ、誘導結合プラズマ、X線、電子線、光子及びリモートプラズマの方法によって与えることができる。ある種の実施態様では、二次高周波(RF:radio frequency)源を用いて、基材表面でプラズマ特性を変えることができる。堆積がプラズマを伴う実施態様において、プラズマ生成プロセスは、プラズマを反応器で直接的に生成する直接プラズマ−生成プロセス、あるいはプラズマを反応器の外部で生成し、そして反応器に供給するリモートプラズマ生成プロセスを含むことができる。
【0054】
第四族金属含有前駆体、及び/又は他の金属含有前駆体を、様々な方法で、反応チャンバー、例えばALD反応器に供給することができる。一つの実施態様において、液体供給システムを利用することができる。別の実施態様では、液体供給とフラッシュ気化プロセスユニットの組合せ、例えばターボ気化器(MSP Corporation製、ショアビュー、ミネソタ州、米国)が使用されて、低揮発度物質を、容量分析的に供給することが可能になる。これは、前駆体の熱分解がない状態で再現可能な輸送及び堆積をもたらす。
【0055】
本明細書に記載した方法の一実施態様では、オゾン、酸素プラズマ又は水プラズマを用いる。前駆体容器から反応チャンバーに繋がるガスラインを、プロセスの必要性に応じて約150℃〜約200℃の範囲となる一以上の温度に加熱し、且つ第四族金属含有前駆体を、バブリングのために、約100℃〜約190℃の範囲となる一以上の温度で維持する。ここでは、第四族金属含有前駆体を有する溶液を、直接液体注入のために、約150℃〜約180℃の範囲となる一以上の温度で維持された気化器に注入する。アルゴンガスの100sccmの流れを、キャリアガスとして用いて、前駆体パルスの間の反応チャンバーへの第四族金属前駆体の蒸気の供給を支援することができる。反応チャンバーのプロセス圧力は、約1Torrである。典型的なALDプロセスでは、初めに、基材、例えば酸化ケイ素、金属窒化物、金属又は金属酸化物を、第四族金属含有前駆体にさらす反応チャンバー内のヒーター台で加熱して、基材の表面上に錯体を化学的に吸着させる。不活性ガス、例えば、アルゴンガスは、未吸着の余分な錯体をプロセスチャンバーからパージする。十分なArパージの後で、酸素源を、反応チャンバーに導入して、吸着した表面と反応させる。続いて他の一つの不活性ガスのパージをして、反応副生成物をチャンバーから除去する。そのプロセスサイクルを繰り返して、所望のフィルム厚みを得ることができる。
【0056】
液体供給配合物では、本明細書に記載の前駆体を、そのままの液体形態で供給することができ、あるいは、溶媒配合物又は前駆体を含有する組成物で用いることができる。それゆえ、ある種の実施態様において、前駆体配合物は、所定の最終用途で望ましく且つ有利となるような適切な特性の溶媒成分(又は複数の溶媒成分)を含有して、基材にフィルムを形成することができる。堆積プロセスでの使用のために前駆体を可溶化するのに用いられる溶媒は、任意の相溶性の溶媒、又はそれらの混合物を含むことができ、例えば、脂肪族炭化水素(例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、エチルシクロヘキサン、プロピルシクロヘキサン)、芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、メシチレン、エチルトルエン及び他のアルキル置換芳香族溶媒)、エーテル、エステル、ニトリル、アルコール、アミン(例えば、トリエチルアミン、tert−ブチルアミン)、イミン、及びカルボジイミド(例えば、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド)、ケトン、アルデヒド、アミジン、グアニジン、イソ尿素等が挙げられる。適切な溶媒のさらなる例は、1〜20のエトキシ−(C24O)−繰り返し単位を有するグリム溶媒(例えば、ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、及びジグリム);プロピレングリコール群からなる群より選択される有機エーテル(例えば、ジプロピレングリコールジメチルエーテル);C2〜C12アルカノール;C1〜C6アルキル部を有するジアルキルエーテル、C4〜C8環状エーテル(例えば、テトラヒドロフラン及びジオキサン)からなる群より選択される有機エーテル;C12〜C60クラウンO4〜O20エーテル(ここで、接頭のCiの範囲は、エーテル化合物中の炭素原子の数iであり、且つ接尾のOiの範囲は、エーテル化合物中の酸素原子の数iである);C6〜C12脂肪族炭化水素;C6〜C18芳香族炭化水素;有機エステル;有機アミン、ポリアミン、アミノエーテル、及び有機アミドからなる群より選択される。利点を与える溶媒の他の一つの分類は、RCONR’R”(R及びR’は1〜10の炭素原子を有するアルキルであり、且つそれらを結合して環状基(CH2n(nは4〜6、好ましくは5)を形成することができ、またR”は、1〜4の炭素原子を有するアルキル及び環状アルキルから選択される)の形態の有機アミド類である。N−メチル−若しくはN−エチル−又はN−シクロヘキシル−2−ピロリジノン、N,N−ジエチルアセトアミド及びN,N−ジエチルホルムアミドが例である。
【0057】
特定の前駆体に関する特有の溶媒組成物の有用性を、容易に実験的に決定することができる。そして、使用される特有の第四族前駆体の液体供給気化及び輸送に関して適当な単一成分又は多成分の溶媒媒体を、選択することができる。
【0058】
他の一実施態様において、第四族金属含有前駆体を適切な溶媒又は溶媒混合物に溶解して、使用する溶媒又は混合溶媒に応じた0.01〜2Mのモル濃度を有する溶液を調製することによって、直接液体供給法を用いることができる。ここで使用される溶媒は、任意の相溶性の溶媒、又はそれらの混合物を含み、例えば、限定されないが、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、直鎖又は環状エーテル、エステル、ニトリル、アルコール、アミン、ポリアミン、アミノエーテル及び有機アミドが挙げられ、好ましくは高沸点を有する溶媒、例えば、オクタン、エチルシクロヘキサン、デカン、ドデカン、キシレン、メシチレン及びジプロピレングリコールジメチルエーテルが挙げられる。
【0059】
また、本明細書に記載された方法は、三元金属酸化物フィルムの形成のためのサイクリック堆積プロセスを含むことができ、ここでは複数の前駆体を、三元金属酸化物フィルムを形成するための条件の下で、連続的に堆積チャンバーに導入させ、気化させ、そして基材上に堆積させる。
【0060】
一つの特定の実施態様では、生成した金属酸化物フィルムを、堆積後処理、例えばプラズマ処理にさらして、フィルムの密度を高めることができる。
【0061】
前述したように、本明細書に記載した方法を用いて、金属含有フィルムを基材の少なくとも一部に堆積させることができる。適切な基材の例としては、限定されないが、半導体材料、例えばチタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウムストロンチウム、チタンドープ酸化イットリウム、チタンドープ酸化ランタン及びチタンをドープした他のランタニド酸化物が挙げられる。
【0062】
次の実施例は、本明細書で記載した第四族金属含有前駆体を調製するための方法、及び本明細書で記載されている第四族金属含有フィルムの堆積方法を例証するが、決してそれを限定することを意図していない。
【実施例】
【0063】
例1
ビス(イソ−プロポキシ)ビス(メチル4,4−ジメチル−3−オキソペンタノアート)チタンの合成
【0064】
2.00g(7.04mmol)のTi(IV)イソプロポキシドに、2.25g(14.24mmol)のメチル4,4−ジメチル−3−オキソペンタノアート(MDOP)を、25℃でゆっくりと添加した。生成する黄色の粘性溶液は、発熱反応によって43℃に熱せられ、その後25℃で2時間攪拌した。全ての揮発物の除去は、白いガラス状固体を生じさせた。その固体を、4mlのヘキサン中に再溶解し、その混合物を攪拌し、そしてヘキサンを減圧下で除去して、白い結晶性固体2.65gを得た(78%の収率)。生成物の融点は、68℃であった。2.12gの固体を、減圧下(0.2torr)で85℃で昇華精製した。昇華した生成物の2.03gを収集した(96%の昇華の収率)。
1H−NMR(核磁気共鳴)は、配位したメチル4,4−ジメチル−3−オキソペンタノアートを裏づけ、且つTiに配位したiPrOのMDOPに対する所望の比が、2つのMDOP配位子に対して2つのiPrO配位子であることを示している(iPrOは、イソ−プロポキシである)。
1H−NMR(500MHz,THF)δ(ppm):5.12(CH,MDOP),4.69(CH,O−iPr),3.55及び3.80(OCH3,MDOP),1.40[(CH32],1.05及び1.20[C(CH33及びC(CH32]。
【0065】
この材料のそのままのサンプルを、窒素雰囲気下で、密封したNMRチューブ中で、200℃で1時間加熱した。その材料は、暗い橙色に素早く変わり、ある程度の分解を示唆した。アセトンに溶解した加熱したサンプルのガスクロマトグラフ質量分析(GC−MS)は、次の両方のケトエステルの存在を示した:メチル4,4−ジメチル−3−オキソペンタノアート(57.4%)及びイソ−プロピル4,4−ジメチル−3−オキソペンタノアート(42.6%、エステル交換反応の生成物)。アセトンに溶解した加熱していないサンプルのGC−MSは、メチル4,4−ジメチル−3−オキソペンタノアートだけの存在を示した。また、d8−トルエンに溶解した加熱した材料の1H NMRスペクトルは、熱処理前には材料中に存在しない、ケトエステラート配位子及びメトキシ配位子(δ(ppm)4.25及び4.30)の両方を有する様々な錯体の存在を裏付けた。
【0066】
例2
ビス(エトキシ)ビス(メチル4,4−ジメチル−3−オキソペンタノアート)チタンの合成
【0067】
6ミリリットル(mL)のヘキサン中の2.00g(8.78mmol)のTi(IV)エトキシドの溶液に、2.75g(17.4mmol)のMDOPを添加した。生成する黄色の溶液を、室温(RT)で16時間攪拌し、そして全ての揮発物を減圧下で除去した。3.0gの橙色の液体(88%の粗収率)を、減圧下(0.2torr)で180℃で蒸留精製して、2.71gのライトイエローの粘性液を得た(79.9%の精製収率)。蒸留した生成物の1H−NMRは、エトキシド配位子、及びエステル交換反応により形成したと考えられるエチル4,4−ジメチル−3−オキソペンタノアート配位子(EDOP)からのシグナルに起因して、異なるエトキシ基の存在を示唆した。蒸留した生成物のアセトン溶液のガスクロマトグラフ−質量分析(GC−MS)は、約2:1の割合で存在しているメチル4,4−ジメチル−3−オキソペンタノアート及びエチル4,4−ジメチル−3−オキソペンタノアートの混合物の存在を裏付けた。
1H−NMR(500 MHz,C66)δ(ppm):5.40(CH,ケトエステル),4.70(OCH2,エトキシ),4.40(OCH3,メトキシ),4.0(OCH2,EDOP),3.40及び3.65(OCH3,MDOP),1.35(CH3,エトキシド),1.15及び1.26(C(CH33,MDOP)。
【0068】
例3
ビス(n−プロポキシ)ビス(メチル4,4−ジメチル−3−オキソペンタノアート)チタンの合成
【0069】
30gの無水ヘキサン中の15.1g(53.1mmol)のTi(IV)n−プロポキシドの溶液に、18.0g(113.9mmol)のMDOPを添加した。生成する溶液を、室温(RT)で16時間攪拌し、その後、2時間還流した。全ての揮発物を減圧下で除去し、そして橙色の粘性液を得た(24.74g、96.6%の粗収率)。その材料を、減圧下で190℃で蒸留して、19.2gのライトイエローの粘性液を得た(75%の精製収率)。蒸留した生成物の1H−NMRは、n−プロポキシド配位子、及びエステル交換反応により形成したと考えられるプロピル4,4−ジメチル−3−オキソペンタノアート配位子からのシグナルに起因して、異なるn−プロポキシ基の存在を示唆した。
蒸留した生成物のアセトン溶液のGC−MSは、約1:1の割合で存在しているメチル4,4−ジメチル−3−オキソペンタノアート及びプロピル4,4−ジメチル−3−オキソペンタノアートの混合物の存在を裏付けた。90%超のビス(n−プロポキシ)ビス(メチル4,4−ジメチル−3−オキソペンタノアート)チタンを含有する粗材料の1H−NMR(500MHz,d8−トルエン δ(ppm):5.20(CH,MDOP),4.47(OCH2,n−プロポキシ),3.35及び3.55(OCH3,MDOP),1.57(OCH2,n−プロポキシ),1.05及び1.29(C(CH33,MDOP),0.92(CH3,n−プロポキシ))。
【0070】
蒸留した材料の1H−NMRは、それが、メチル4,4−ジメチル−3−オキソペンタノアート配位子及びプロピル4,4−ジメチル−3−オキソペンタノアート配位子の両方を有する錯体の混合物であることを示す(500MHz,d8−トルエンδ(ppm):5.25(CH,ケトエステラート),4.50(OCH2,n−プロポキシ),4.3(OCH3,メトキシ),3.90(OCH2,ケトエステラート),3.35及び3.55(OCH3,MDOP),1.60及び1.45(OCH2,n−プロポキシ),1.05及び1.20(C(CH33, MDOP),0.75及び0.95(CH3,n−プロポキシ))。
【0071】
例4
ビス(メトキシ)ビス(n−プロピル4,4−ジメチル−3−オキソペンタノアート)チタンの合成
【0072】
5mlのヘキサン中の0.43g(2.50mmol)のTi(IV)メトキシドのスラリーに、0.93g(5.00mmol)のn−プロピル4,4−ジメチル−3−オキソペンタノアートを添加した。その反応混合物を、16時間、室温で攪拌し、そして全てのTi(IV)メトキシドが溶解した。全ての揮発物を、減圧下で蒸留して、1.0gのライトイエローの液体を、約83%の粗収率で得た。その材料を、高温減圧蒸留による精製をしないで、メトキシド配位子とエステル基の交換を回避した。
1H−NMR(500MHz,d8−toluene δ(ppm):5.27(CH,ケトエステラート),4.54(OCH3,メトキシド),4.3(OCH3,メトキシド),3.90(OCH2,ケトエステラート),1.49(OCH2,ケトエステラート),1.05及び1.20(C(CH33,ケトエステラート),0.75(CH3,ケトエステラート)。
【0073】
この材料のそのままのサンプルを、窒素雰囲気下で、密封したNMRチューブ中で、200℃で1時間加熱し、その1H−NMRスペクトルに顕著な変化を観測した。メトキシド配位子、n−プロポキシド配位子、さらにn−プロピル4,4−ジメチル−3−オキソペンタノアート配位子及びメチル4,4−ジメチル−3−オキソペンタノアート配位子を有する錯体の混合物が、熱処理後に存在した。
【0074】
例5
ビス(エトキシ)ビス(エチルアセトアセテート)チタンの合成
【0075】
50mLのテトラヒドロフラン(THF)中の5.76g(25.24mmol)Ti(IV)エトキシドの溶液に、25mLのTHF中の6.57g(50.47mmol)のエチルアセトアセテートを添加した。その反応混合物を、16時間還流し、その後、揮発物の除去は、9.9gの重さのワックス状の赤色〜橙色の固体を生成した。3.41gの粗材料を、減圧下(125mTorr)で130℃で蒸留精製して、2.90gの白い固体を得た(85%の精製収率)。融点を示差走査熱量測定(DSC:Differential scanning calorimetry)で測定したところ、52℃であった。1H−NMR(500MHz,C66)δ(ppm):5.18(CH),4.73 (OCH2CH3),3.95及び3.92(OCH2CH3,ケトエステル),1.82(CH3,ケトエステル)1.34(OCH2CH3),1.03及び0.93(OCH2CH3,ケトエステル)。
【0076】
例6
ビス(メトキシ)ビス(メチル4,4−ジメチル−3−オキソペンタノアート)チタンの合成
【0077】
175mLのTHF中の30.41g(176.76mmol)Ti(IV)メトキシドのサスペンションに、55.92g(353.52mmol)のメチル4,4−ジメチル−3−オキソペンタノアートを添加した。生成した反応混合物を加熱して、16時間還流し、その後、揮発物を除去した。ベージュ色のミルク状のオイルを単離し、且つ150mlのヘキサンで抽出した。それをその後、セリットを通してろ過した。全ての揮発物の除去は、76.05gの重さの粘性の琥珀色のオイルを生成させた。そのオイルを、100mlのヘキサンに溶解して、そして65.70gの薄黄色の固体を−78℃で沈殿させた(88%の収率)。
【0078】
融点を、10℃/分の加熱速度で示差走査熱量計(DSC)によって測定したところ、51℃であった。加圧した容器皿での10℃/分でのDSCは、約270℃まで分解に起因する熱の影響を示さない。TGA解析は、0.2wt%未満の残渣を示し、これは、それを蒸着プロセスで適切な前駆体として用いることができることを示差している。
1H−NMR(500MHz,C66)δ(ppm):5.36(CH),4.39(OCH3,メトキシ),3.29(OCH3,ケトエステル),1.19[C(CH33]。
【0079】
ビス(メトキシ)ビス(メチル4,4−ジメチル−3−オキソペンタノアート)チタンの無色のプレート状の結晶を、X線単結晶解析によって構造的に特性化した。その構造は、歪んだ8面体環境内で、シス構造の異性体として、チタン原子に、2つのメトキシ配位子及び2つのメチル4,4−ジメチル−3−オキソペンタノアート配位子が配位していることを示す。
【0080】
例7
ビス(エトキシ)ビス(エチル4,4−ジメチル−3−オキソペンタノアート)チタンの合成
【0081】
300mLのTHF中の186.53g(817.58mmol)のTi(IV)エトキシドの溶液に、300mLのTHF中の281.61g(1635.15mmol)のエチル4,4−ジメチル−3−オキソペンタノアートを室温でカニューレを通じて添加した。生成する赤橙色の溶液を、16時間還流した。揮発物の除去は、粘性の橙色の液体を生成させ、これは減圧下(0.10torr)で150℃で蒸留精製して、370.47gの黄色の粘性液体を得た。収率は93%である。
加圧した容器皿での10℃/分でのDSCは、約270℃まで分解に起因する熱の影響を示さない。TGA解析は、ほぼ残渣を残さないことを示し、これは、それが蒸着プロセスで適切な前駆体として用いることができることを示差している。
1H−NMR(500MHz,C66)δ(ppm):5.37(CH),4.70 (OCH2CH3),3.97及び3.92(OCH2CH3,ケトエステル),1.34(OCH2CH3),1.23及び1.10[C(CH33],1.03及び0.96(OCH2CH3,ケトエステル)。
【0082】
例8
ビス(n−プロポキシ)ビス(n−プロピル4,4−ジメチル−3−オキソペンタノアート)チタンの合成
【0083】
1gのヘキサン中の0.76g(2.67mmol)のTi(IV)n−プロポキシドの溶液に、1.00g(5.38mmol)のn−プロピル4,4−ジメチル−3−オキソペンタノアートを添加した。その反応混合物を、室温で一時間攪拌し、その後60℃で30分間攪拌した。全ての揮発物を、減圧下で除去して、1.1gの無色の液体を得た(約69%の単離収率)。その材料を、180℃(ポット温度:pot temperature)で減圧蒸留(0.2torr)によって精製し、透明な無色の液体を得た。高温の減圧蒸留前後で、その材料の1H NMRスペクトルについて変化が観測されなかったが、これは、この錯体の良好な熱安定性及び組成安定性を示唆している。
1H−NMR(500MHz,d8−トルエンδ(ppm):5.17(CH,ケトエステラート),4.45(OCH2,n−プロポキシ),3.86及び3.74(OCH2,ケトエステラート),1.55(CH2,n−プロポキシ),1.38(CH2,ケトエステラート),0.95及び1.12(C(CH33,ケトエステラート),0.90(CH3,n−プロポキシド),0.70(CH3,ケトエステラート)。
【0084】
例9
ビス(メトキシ)ビス(メチル4,4−ジメチル−3−オキソペンタノアート)チタンの熱安定性
【0085】
ビス(メトキシ)ビス(メチル4,4−ジメチル−3−オキソペンタノアート)チタンのサンプルを、密封したNMRチューブ中で、200℃で1時間加熱した。加熱した材料のTGAは、約0.2wt%の残渣を示したが、これは熱処理前の材料のTGA残渣と同様であった。d8−トルエンに溶解した加熱した材料の1H NMRスペクトルは、顕著な変化を示さず、200℃で1時間加熱した後のこの前駆体の組成上の完全性を裏付ける。
【0086】
例10
ビス(エトキシ)ビス(エチル4,4−ジメチル−3−オキソペンタノアート)チタンと、ビス(エトキシ)ビス(エチルアセトアセテート)チタンとの熱安定性の比較
【0087】
ビス(エトキシ)ビス(エチル4,4−ジメチル−3−オキソペンタノアート)チタン、及びビス(エトキシ)ビス(エチルアセトアセテート)チタンのサンプルを、Perkin Elmer高圧DSCカプセルの内部に窒素雰囲気下で密封し、400℃まで10℃/分で加熱した。DSCデータは、R2基(式A)が分岐鎖アルキルであるビス(エトキシ)ビス(エチル4,4−ジメチル−3−オキソペンタノアート)チタン(放熱開始が310℃)が、R2基が直鎖アルキルであるビス(エトキシ)ビス(エチルアセトアセテート)チタン(放熱開始が278℃)と比較して、さらに良好な熱安定性を有することを示した。それゆえ、ビス(エトキシ)ビス(エチル4,4−ジメチル−3−オキソペンタノアート)チタンは、ビス(エトキシ)ビス(エチルアセトアセテート)チタンと比較して、さらに高いALD操作サーマルウィンドウを与えることができる。
【0088】
例11
ビス(エトキシ)ビス(エチル4,4−ジメチル−3−オキソペンタノアート)チタンの粘度
【0089】
AR−G2レオメーター(TA Instruments、ニューキャッスル、デラウェア州、米国)を用いて粘度を測定した。ペルティエ加熱素子を用いて、温度を所望の温度で制御した。60mm径の平行板構造を用いた。サンプルを装填した後、剪断速度のスイープ測定の前に熱平衡のために600秒置いた。粘度を、1〜100s-1の範囲の剪断速度で測定した。ビス(エトキシ)ビス(エチル4,4−ジメチル−3−オキソペンタノアート)チタンは、ニュートン性の挙動を示し、25℃で107.9センチポアズ、80℃で10.1センチポアズの粘度であった。ビス(エトキシ)ビス(エチル4,4−ジメチル−3−オキソペンタノアート)チタンは、低い粘度を有する添加物、例えばオクタンを用いることで、25℃で10センチポアズ未満に低下させることができる。
【0090】
例12
ビス(イソ−プロポキシ)ビス(N,N−ジエチルアセトアセトアミド)チタンの合成
【0091】
65mLのテトラヒドロフラン(THF)中の5.94g(20.90mmol)のTi(IV)イソ−プロポキシドの溶液に、10mlのTHF中の6.57g(41.8mmol)のN,N−ジエチルアセトアセトアミドを添加した。その生成溶液を、終夜で還流した。全ての揮発物を、減圧下で除去して、9.89gの橙色の固体を与えた(約99%の粗収率)。熱重量分析/示差走査熱量測定(TGA/DSC)は、それが75℃の融点を有することを示した(Bae,B.−J.、K.Lee、W.S.Seo、M.A.Miah、K.−C.Kim及びJ.T.Park(2004).“Preparation of anatase TiO2 thin films with (OPri2Ti(CH3COCHCONEt22 precursor by MOCVD.” Bull.Korean Chem.Soc.FIELD Full Journal Title:Bulletin of the Korean Chemical Society 25(11):1661−1666.を参照)。
【0092】
例13
ビス(tert−ブトキシ)ビス(N,N−ジエチルアセトアセトアミド)チタンの合成
【0093】
65mLのTHF中の6.72g(19.74mmol)のTi(IV)tert−プロポキシドの溶液に、10mLのTHF中の6.21g(39.49mmol)のN,N−ジエチルアセトアセトアミドを、室温で滴定して添加した。その生成物を加熱して、16時間還流して、この後室温まで冷却した。全ての揮発物を、減圧下で除去して、9.85gの橙色の固体を与えた(約99%の粗収率)。TGA/DSCは、それが67℃の融点を有することを示した。
【0094】
例14
ビス(エトキシ)ビス(N,N−ジエチルアセトアセトアミド)チタンの合成
【0095】
65mLのTHF中の5.06g(22.20mmol)のTi(IV)tert−エトキシドの溶液に、10mLのTHF中の6.98g(44.41mmol)のN,N−ジエチルアセトアセトアミドを、室温で滴定して添加した。その生成物を加熱して、16時間還流して、この後、室温まで冷却した。全ての揮発物を、減圧下で除去して、9.69gの橙色の固体を与えた(約97%の粗収率)。TGA/DSCは、それが60℃の融点を有することを示した。
【0096】
例15
ビス(イソ−プロポキシ)ビス(N,N−ジメチルアセトアセトアミド)チタンの合成
【0097】
200mLのTHF中の57.08g(200.84mmol)のTi(IV)イソ−プロポキシドの溶液に、50mLのTHF中の51.88g(401.69mmol)のN,N−ジメチルアセトアセトアミドを、添加した。その生成物を終夜で還流した。この後、室温まで冷却した。全ての揮発物を、減圧下で除去して、79.84gの黄色の固体を与えた(約99%の粗収率)。TGA/DSCは、それが76℃の融点を有することを示した。
【0098】
例16
ビス(tert−ブトキシ)ビス(N,N−ジメチルアセトアセトアミド)チタンの合成
【0099】
65mlのTHF中の7.89g(23.45mmol)のTi(IV)tert−ブトキシドの溶液に、10mlのTHF中の6.06g(46.90mmol)のN,N−ジメチルアセトアセトアミドを添加した。その生成物を終夜で還流した。全ての揮発物を、減圧下で除去して、10gの黄色の固体を与えた(100%の粗収率)。TGA/DSCは、それが94℃の融点を有することを示した。(Gornshtein,F.、M.Kapon、M.Botoshansky及びM.S.Eisen(2007).“Titanium and Zirconium Complexes for Polymerization of Propylene and Cyclic Esters.”Organometallics 26(3):497−507を参照)。
【0100】
例17
ビス(イソ−プロポキシ)ビス(N,N−ジメチルアセトアセトアミド)チタンのALD
【0101】
この例では、ビス(イソ−プロポキシ)ビス(N,N−ジメチルアセトアセトアミド)チタン及びオゾンを用いた、TiO2のALD堆積について述べる。堆積温度の範囲は、200〜400℃である。堆積チャンバーの圧力は、おおよそ1.5Torrの範囲となる。ビス(イソ−プロポキシ)ビス(N,N−ジメチルアセトアセトアミド)チタン用の容器を、150℃で保持した。TiO2のALDの1サイクルは、4ステップからなる。
1.Arをキャリアガスとして用いたバブリングによりチタン前駆体を導入する;
2.Arパージして、あらゆる未吸着のチタン前駆体をArで除去する;
3.オゾンを堆積チャンバーに導入する;及び
4.Arパージして、あらゆる未反応のオゾンをArで除去する。
【0102】
この例において、生成TiO2フィルムの堆積温度依存性を示して、TiO2フィルムは得られる。典型的なALD条件は、Ti前駆体パルス時間が3秒であり、Ti前駆体パルス後のArパージ時間が8秒であり、オゾンパルス時間が5秒であり、且つオゾンパルス後のArパージ時間が10秒であった。そのサイクルを100回繰り返す。
【0103】
その結果は、図2に示されているが、ALDのプロセスウィンドウは、約300℃までであった。
【0104】
例18
ビス(メトキシ)ビス(メチル4,4−ジメチル−3−オキソペンタノアート)チタンを用いたTiO2のALD
【0105】
この例では、ビス(メトキシ)ビス(メチル4,4−ジメチル−3−オキソペンタノアート)チタン及びオゾンを用いた、TiO2のALD堆積について述べる。堆積温度の範囲は、200〜400℃である。堆積チャンバーの圧力は、おおよそ1.5Torrの範囲となる。ビス(メトキシ)ビス(メチル4,4−ジメチル−3−オキソペンタノアート)チタン用の容器を、120℃で保持した。TiO2のALDの1サイクルは、4ステップからなる。
1.Arをキャリアガスとして用いたバブリングによりチタン前駆体を導入する;
2.Arパージして、あらゆる残留チタン前駆体をArで除去する;
3.オゾンを堆積チャンバーに導入する;及び
4.Arパージして、あらゆる未反応のオゾンを除去する。
典型的なALD条件は、Ti前駆体パルス時間が4又は8秒であり、Ti前駆体パルス後のArパージ時間が10秒であり、オゾンパルス時間が5秒であり、且つオゾンパルス後のArパージ時間が10秒であった。そのサイクルを100回繰り返し、そしてTiO2フィルムを得た。酸化チタンの厚みの堆積温度の依存性(図3)は、ALDのサーマルプロセスウィンドウが、約370℃までとすることができ、ALDの率は、0.6Å/サイクルまでにもすることができることを示唆している。
【0106】
例19
ビス(エトキシ)ビス(エチル4,4−ジメチル−3−オキソペンタノアート)チタンを用いたTiO2のALD
【0107】
この例では、ビス(エトキシ)ビス(エチル4,4−ジメチル−3−オキソペンタノアート)チタン及びオゾンを用いた、TiO2のALD堆積について述べる。堆積温度の範囲は、200〜400℃である。堆積チャンバーの圧力は、おおよそ1.5Torrの範囲となる。ビス(メトキシ)ビス(メチル4,4−ジメチル−3−オキソペンタノアート)チタン用の容器を、150℃で保持した。TiO2のALDの1サイクルは、4ステップからなる。
1.Arをキャリアガスとして用いたバブリングによりチタン前駆体を導入する;
2.Arパージして、あらゆる残留チタン前駆体をArで除去する;
3.オゾンを堆積チャンバーに導入する;及び
4.Arパージして、あらゆる未反応のオゾンを除去する。
典型的なALD条件は、Ti前駆体パルス時間が4又は8秒であり、Ti前駆体パルス後のArパージ時間が10秒であり、オゾンパルス時間が5秒であり、且つオゾンパルス後のArパージ時間が10秒であった。そのサイクルを100回繰り返した。酸化チタンの厚みの堆積温度への依存性を、図4に示す。その結果は、ALDのサーマルプロセスウィンドウが、約375℃までで、ALDの率が約0.5Å/サイクルにできることを示唆している。
【0108】
例20
ビス(エトキシ)ビス(エチル4,4−ジメチル−3−オキソペンタノアート)チタンのALD
【0109】
この例は、このプロセスが、次の条件の場合に375℃で実際にALDとなることを示すために計画された。その条件とは、ビス(エトキシ)ビス(エチル4,4−ジメチル−3−オキソペンタノアート)チタンを4又は8秒のパルス時間を有するチタン前駆体とし、Ti前駆体パルス後のArパージ時間が10秒であり、オゾンパルス時間が5秒であり、且つオゾンパルス後のArパージ時間が10秒であった。そのサイクルを50、100、150回繰り返す。結果は、図5に示されているが、これは、生成するTiO2フィルムの厚みと、サイクルの回数との間で線形関係と重なることを示している。これは、375℃で実際に自己制限的であるALDプロセスを裏付ける。
【0110】
例21
パターン化された基材へのビス(エトキシ)ビス(エチル4,4−ジメチル−3−オキソペンタノアート)チタンを用いたTiO2のALD
【0111】
この例は、約550Åの間隔、20対1のアスペクト比、及び表面に窒化ケイ素を有するトレンチパターンのウェハーへの、ビス(エトキシ)ビス(エチル4,4−ジメチル−3−オキソペンタノアート)チタン及びオゾンを用いたTiO2のALD堆積について述べる。堆積温度は、375℃であった。堆積チャンバーの圧力は、約1.0Torrであった。ビス(エトキシ)ビス(エチル4,4−ジメチル−3−オキソペンタノアート)チタン用の容器を、150℃で保持した。ALD条件は、Ti前駆体パルス時間が15秒であり、Ti前駆体パルス後のArパージ時間が20秒であり、オゾンパルス時間が5秒であり、且つオゾンパルス後のArパージ時間が10秒であった。そのサイクルを200回繰り返した。図6は、トレンチの上部で8.9±0.5nm、トレンチの角で8.8±0.5nm、トレンチの中央部で8.7±0.5nm、且つトレンチの下部で8.2±0.5nmの厚みを有する堆積したTiO2フィルムの透過型電子顕微鏡(TEM)画像を示しており、パターン化された基材の上部から下部への優れた段差被覆率(90%超)を実証している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チタン、ハフニウム及びジルコニウムからなる群より選択される少なくとも一つの金属を含有するフィルムを、原子層堆積の条件の下で基材上に堆積させる方法であって、前記基材と次の式を有する組成物とを接触させることを含む、金属含有フィルムの堆積方法:
【化1】

(ここで、Mは、Ti、Zr及びHfからなる群より選択される第四族金属であり;R1及びR2は、直鎖又は分岐鎖のC1〜10アルキル基及びC6〜12アリールからなる群より、同じく又は異なって選択されることができ;R3は、直鎖又は分岐鎖のC1〜10アルキル及びC6〜12アリールからなる群より選択され;R4は、水素、C1〜3アルキル及びC6〜12アリールからなる群より選択され;R5は、C1〜10の直鎖又は分岐鎖アルキル及びC6〜12アリールからなる群より選択され;XはO又はNであるが、X=Oの場合、y=1であり且つR1、2及び5が同じとなり、X=Nの場合、y=2であり、且つ各R5は同じものとなることができ、又は異なるものとなることができる)。
【請求項2】
前記組成物が、次の群より選択される溶媒中にある、請求項1に記載の方法:ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、エチルシクロヘキサン、プロピルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、メシチレン、エチルトルエン、エーテル、エステル、ニトリル、アルコール、アミン、トリエチルアミン、tert−ブチルアミン、イミン、カルボジイミド、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド、ケトン、アルデヒド、アミジン、グアニジン、イソ尿素、1〜20のエトキシ−(C24O)−繰り返し単位を有するグリム溶媒、ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、及びジグリム、有機エーテル、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、C2〜C12アルカノール;有機エーテル、C1〜C6アルキル部を有するジアルキルエーテル、C4〜C8環状エーテル、テトラヒドロフラン及びジオキサン、C12〜C60クラウンO4〜O20エーテル、C6〜C12脂肪族炭化水素、C6〜C18芳香族炭化水素、有機エステル、有機アミン、ポリアミン、アミノエーテル、有機アミド、RCONR’R”(R及びR’は、1〜10の炭素原子を有するアルキルであり、且つそれらを結合して環状基(CH2n(nは4〜6)を形成することができ、またR”は、1〜4の炭素原子を有するアルキル及び環状アルキルから選択される)の形態の有機アミド類、N−メチル−若しくはN−エチル−又はN−シクロヘキシル−2−ピロリジノン、N,N−ジエチルアセトアミド及びN,N−ジエチルホルムアミド。
【請求項3】
チタン、ハフニウム及びジルコニウムからなる群より選択される少なくとも一つの金属を含有するフィルムを、原子層堆積の条件の下で基材上に堆積させる方法であって、前記基材と次の式Iの組成物とを接触させることを含む、金属含有フィルムの堆積方法:
【化2】

(ここで、Mは、Ti、Zr及びHfからなる群より選択される第四族金属であり;R1、R2及びR5は、直鎖又は分岐鎖のC1〜10アルキル及びC6〜12アリールからなる群より、同じく選択され;R3は、直鎖又は分岐鎖のC1〜10アルキル及びC6〜12アリールからなる群より選択され;R4は、水素、C1〜3アルキル及びC6〜12アリールからなる群より選択される)。
【請求項4】
少なくとも一つがチタン、ハフニウム及びジルコニウムからなる群より選択される金属の多成分金属酸化物を、原子層堆積の条件の下で基材上に堆積させる方法であって、前記基材と請求項3に記載の組成物とを接触させることを含む、多成分金属酸化物の堆積方法。
【請求項5】
前記多成分金属酸化物が、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウムストロンチウム、チタン酸バリウムからなる群より選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記組成物が、そのままの液体である、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記組成物が、式Iの第四族金属組成物及び溶媒からなる溶液である、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記溶媒が、オクタン、エチルシクロヘキサン、ドデカン、トルエン、キシレン、メシチレン、ジエチルベンゼン及びこれらの混合物からなる群より選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
チタン、ハフニウム及びジルコニウムからなる群より選択される少なくとも一つの金属を含有するフィルムを、原子層堆積の条件の下で基材上に堆積させる方法であって、前記基材と次の式IIの組成物とを接触させることを含む、金属含有フィルムの堆積方法:
【化3】

(ここで、Mは、Ti、Zr及びHfからなる群より選択される第四族金属であり;R1及びR2は、直鎖又は分岐鎖のC1〜10アルキル及びC6〜12アリールからなる群より、同じく又は異なって選択されることができ;R3は、直鎖又は分岐鎖のC1〜10アルキル及びC6〜12アリールからなる群より選択され;R4は、水素、C1〜10アルキル及びC6〜12アリールからなる群より選択され;R5及びR5’は、個々に、C1〜10の直鎖又は分岐鎖アルキル及びC6〜12アリールからなる群より選択される)。
【請求項10】
少なくとも一つがチタン、ハフニウム及びジルコニウムからなる群より選択される金属の多成分金属酸化物を、原子層堆積の条件の下で基材上に堆積させる方法であって、基材と請求項9に記載の組成物とを接触させることを含む多成分金属酸化物の堆積方法。
【請求項11】
前記多成分金属酸化物が、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウムストロンチウム、チタン酸バリウムからなる群より選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記多成分金属酸化物が、ランタニドドープ酸化チタン、ランタニドドープ酸化ジルコニウム、ランタニドドープ酸化ハフニウムからなる群より選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記組成物が、そのままの液体である、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記組成物が、第四族金属組成物及び溶媒からなる溶液である、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記溶媒が、オクタン、エチルシクロヘキサン、ドデカン、トルエン、キシレン、メシチレン、ジエチルベンゼン及びこれらの混合物からなる群より選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
さらに次のステップを含む、請求項1に記載の方法:(a)前記組成物を気相状態で反応チャンバーに導入し、加熱された基材上に前記組成物を化学吸着させるステップ;(b)未反応の組成物をパージするステップ;(c)酸素源を、前記加熱された基材に導入して、前記吸着した組成物と反応させるステップ;及び(d)未反応の前記酸素源及び反応副生成物をパージするステップ。
【請求項17】
(a)から(d)のステップを、所望のフィルム厚みが得られるまで繰り返す、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記組成物が、溶媒中にある、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記溶媒が、オクタン、エチルシクロヘキサン、ドデカン、トルエン、キシレン、メシチレン、ジエチルベンゼン及びこれらの混合物からなる群より選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
溶媒中の前記組成物の蒸気を、注入により、気化器に供給する、請求項18に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−256926(P2012−256926A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−179233(P2012−179233)
【出願日】平成24年8月13日(2012.8.13)
【分割の表示】特願2010−237655(P2010−237655)の分割
【原出願日】平成22年10月22日(2010.10.22)
【出願人】(591035368)エア プロダクツ アンド ケミカルズ インコーポレイテッド (452)
【氏名又は名称原語表記】AIR PRODUCTS AND CHEMICALS INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】7201 Hamilton Boulevard, Allentown, Pennsylvania 18195−1501, USA
【Fターム(参考)】